説明

重合可能な複合材料

本発明は、重合可能な複合材料に関し、また、約10%〜約85%の範囲の濃度のモノマー、約1%〜約80%の範囲の濃度の非反応性の充填材、約1.5%〜15%の範囲の濃度の重合系、ならびに約0.1%〜25%の範囲の濃度の水を含有する、少なくとも1つの多官能性の酸を含む複合材料の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合可能な複合材料に関し、より詳細には、修復歯科での適応において有用な歯科用修復材料に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野においては、修復材料および結合材(多くの場合、接着材と呼ばれる)を含む様々な材料が、失われた歯牙構造の代わりに置き換えるためまたはその置き換えを補助するために使用される。修復材料は、典型的には歯牙構造の一部の代わりに設けられ、一方、結合材は、歯牙構造と修復材料との結合部として機能する。修復材料および結合材は、その使用方法が異なるので、異なる特性および品質を備えていることがある。例えば、結合材は、十分な流動性を有していなくてはならず、多くの場合、それを効果的にするための溶媒、例えば水、アセトンまたはアルコールの存在を必要とする。典型的には、結合材は、充填材料を含んでいないか、または5重量%よりも小さい充填材含有量しか有していない。したがって、結合材は、より大きな修復量を必要とするような場合に修復材料として使用するための十分な強度または審美性を有していない。修復材料は、圧縮強度が大きいことおよび摩滅が少ないこと等の物理的特性、ならびに好ましくは許容できる審美的外観、例えば歯のような外観を有していなくてはならない。
【0003】
歯科材料の1つの種類は、レジン強化型グラスアイオノマーを含む。グラスアイオノマーは、その全体もしくは一部が硬化するまたは固まるという機構のために水を必要としており、さらに使用直前に2つ以上の材料を混合する必要がある。しかし、この材料が固まる時に水を取り込むこと、これにより膨張もしくは収縮すること、および審美的外観に関する総合的な性能が一般的には良好でないことによって、修復材料としてのグラスアイオノマーの使用は限定されている。Kunioの米国特許第5264513号明細書参照。
【0004】
別の種類の結合材または接着材は、酸性モノマーを含有する歯科材料を含む。酸性モノマーは、酸基、例えばリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硫酸、スルホン酸またはスルフィン酸部分を有する重合可能な化合物である。酸性モノマー、例えばリン酸エステルが知られている。Buonocoreは、1956年に既に、J. Dent. Res.、1956年、846〜851頁中でこのような材料について議論している。さらに、リン酸エステルを含有する溶媒ベースの材料が、Adhesive Restorative Dental Materials、1961年、195〜198頁に記載されている。典型的には、これらの材料は、揮発性溶媒を高い含有量で含有しており、無機充填材料をほとんどまたは全く含有していない。Eppingerらの米国特許第5089051号明細書およびFreyらの米国特許第6245872号明細書参照。一般に、酸性モノマーは、高濃度での重合が難しくかつ/または得られる物理的特性が低下するので、これまでは、40重量%よりも大きい量の組合せでは使用されてこなかった。Imazatoらの米国特許第5733949号明細書参照。
【0005】
歯科用修復材料の1つの部類は、レジンベースの複合材料を含む。この複合材料は、典型的には、反応性のモノマーおよび非反応性の充填材の両方を含有している。また、この複合材料は、典型的には疎水性であり、歯牙構造にあまり良好には結合しない。歯自体は、水5〜20%を含有しており、水性の口腔内環境に置かれている。非酸性モノマーを含む、イオンを放出するレジンベースの修復材料は、Rheinbergerらの米国特許第6180688号明細書に記載されている。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
一般的には、一態様において、本発明は、酸を含有する少なくとも1つの多官能性のモノマーを約10%〜約85%の濃度範囲で、充填材を約1%〜約80%の濃度範囲で、重合系を約1.5%〜約15%の濃度範囲で、および水を約0.1%〜約25%の濃度範囲で含む重合可能な複合材料に関する。
【0007】
一般的には、別の態様において、本発明は、重合可能な複合材料の製造方法に関する。この方法では、多官能性の少なくとも1つの酸性モノマーを約10%〜約85%の濃度範囲となるように使用する。非反応性の充填材を約1%〜約80%の濃度範囲となるように添加する。重合系を約1.5%〜約15%の濃度範囲となるように添加する。水を約0.1%〜約25%の濃度範囲となるようにさらに添加する。
【0008】
本発明の利点は、本発明により、口腔内の環境に適合可能でかつ口腔内の環境中で審美的にも許容可能な歯科用修復材料が提供されることである。さらに、本発明の一態様により、歯をシールおよび保護し、同時に歯科用の修復用途で使用されるのに適切な強度を提供する重合可能な複合材料が提供される。
【0009】
本発明の1つ以上の態様を、添付図面および以下の記述により詳説する。本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の記述および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、重合可能な複合材料およびこのような材料の製造方法に関し、この方法により、強く、審美的に許容可能な歯科用修復材料が製造される。重合可能な複合材料は、少なくとも1つの多官能性の酸性モノマー、この酸性モノマーと反応しない充填材、および重合系を含んでおり、さらに水を含んでいることもできる。複合材料は、処理上の扱いやすい性質および安全に固めるもしくは硬化させるのに必要な要素、ならびに修復歯科において有用なその他の適切な性質を付与する別の添加物をさらに含むこともできる。例えば、この複合材料は、材料の強度および反応性を増大させるためのコモノマー、フッ化ナトリウムのような水溶性の塩、ならびに光硬化または自家重合のいずれかによるレジンの重合を可能にする化合物を含有することができる。
【0011】
重合系は、典型的には、高濃度でかつコモノマーの存在下で使用する場合、酸性モノマーの重合を可能にする開始剤および促進剤を含む。
【0012】
本発明の重合系は、1つ以上のアミンを、歯科用複合材料において従来使用されてきた濃度よりも高い濃度で含有している。歯科用複合材料において従来使用されてきた濃度と比較して高い濃度でアミンを組み合わせることにより、酸性モノマーの含有量が高いにもかかわらず、歯科用途に十分に固く固まる。
【0013】
さらに使用されるコモノマーにより、酸を組み込んだレジンネットワークが強化され、また、このコモノマーを、水の取込みを制御するため、表面の性質、例えば材料の親水性/疎水性を制御するため、および酸性モノマーの反応性を増大させるために使用することができる。水に溶解するフッ化ナトリウムの存在によって、材料のシール品質をさらに増大させることができる。
【0014】
酸性モノマーとコモノマーとの間には共生的な関係(互いに影響を及ぼし合う関係)があると考えられる。上記の特徴に加えて、コモノマーは、酸性モノマーによって作られる酸性環境によって、より高い割合でのその二重結合の変換を得ていると考えられる。
【0015】
このようなレジンベースの歯科用修復組成物は、歯牙構造および他の歯科材料と一体化することができ、混合の必要もなく(デュアルキュア(二段硬化)型材料の場合を除く)、放射線不透過性であり、フッ化物を放出することができ、必要に応じて簡単に光硬化させることができる。この組成物は、歯科修復に適切な圧縮強度をさらに有しており、十分な品質で境界のシールを形成し、これにより、材料の境界を見極めるのが極めて難しくなる(多くの場合、不可能となる)。
【0016】
この材料へ水を混合することによって、酸基が活性となり、歯の良好なシール(結合)を増大させるような溶解したイオン化合物を提供することが分かった。この溶解したイオン化合物は、再石灰化を可能にすることもできる。水の量は、強度、最終的な水の取込みの減少、イオンの可溶化および酸性モノマー活性を最適化するために重要であることが分かった。非反応性の充填材を適切に選択することにより、上記材料に強度および凝集性を付与し、この材料が修復材料として使用することが可能となる。
【0017】
本発明に使用されるコモノマーは、重合可能な化合物、例えばジウレタンジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチオールプロパントリメタクリレート、1,6−ジヒドロキシヘキサメチレンジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートおよびビスグリシジルジメタクリレート(BIS−GMA)であるが、これらに限定されることはない。
【0018】
本発明に適した非反応性充填材は、酸基と反応しないものである。モノマーの酸強度に関連して、適切な充填材は、シリカ、ケイ酸バリウムアルミニウム、シラン化処理したシリカ、アルミナ、石英、放射線不透過性ガラスおよび当業者によく知られた他の材料である。
【0019】
充填材は、粒子からなっており、複合構造に強度を付与するために使用される。充填材は、様々な寸法の粒子を含有することができる。例えば、充填材は、ミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのシリカ粒子(SiO)を含有していることができる。ミクロンサイズの粒子は、典型的には、密度の増大を提供し、一方、サブミクロンサイズの粒子は、典型的には、増粘剤および懸濁化剤として作用する。さらに、粒子は、シラン化処理されている、つまりシランの被覆層を有していてもよい。充填材または充填粒子が酸性モノマーと反応しなくても、シランが、酸性モノマーと反応することができ、複合材料の強度を増大させる。
【0020】
本発明のための重合促進剤は、アミン化合物、例えばN,N−ジメチルアミノ−p−トルイジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、4−エチルジメチルアミノベンゾエートおよび促進剤として広く認識されている他の多数の化合物を含む。p−トルエンスルフィン酸およびナトリウム塩を含むスルフィン酸促進剤も使用することができる。その他の促進剤は、当業者に知られている。
【0021】
光硬化化合物または光開始剤は、カンホルキノン、アシルホスフィンオキシド、ベンゾインおよびメチルベンジルエーテルのような化合物を含む。その他の光開始剤は、当業者に知られている。
【0022】
本発明の2つの硬化用の化学物質は、重合促進剤から開始剤を分けることを必要としている。このような開始剤は、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルペルオキシドまたはフリーラジカルまたはカチオン/アニオン重合反応に使用される広く認識された多数のあらゆる過酸化物を含むことができる。
【0023】
水溶性の塩は、フッ化水素、フッ化スズ、フッ化鉄、フッ化カルシウムおよびフッ化アルミニウムのような化合物を含む。その他の適切な水溶性の塩は、当業者に知られている。
【0024】
以下に示す実施例で、本発明の組成物をより詳細に説明する。これらの実施例は、異なる修復歯科での用途のためのものである。したがって、添加する充填材の量は、咀嚼に抵抗するためまたは十分な材料の流動性を提供するために必要な強度に応じて、大きく変化させることができる。酸性モノマーおよびコモノマーの量も、歯に適用する親水性に応じて異なる。さらに、水の量も、水和の度合いを制御するために異なっている。これらの材料が、一般的に水を含有しており、水と混合可能であるので、材料は、水による口腔内部の汚染の影響は受けない。
【0025】
充填材の量は、材料を、復元部分の境界をシールするためまたは不安定なレジンをシールするために適したグレージング材として使用するか、またはClass IもしくはClass II修復のような高い強度および低い摩耗の用途に適した高充填の修復材料として使用するかに応じて、1重量%〜80重量%に変化させる。25〜50重量%の範囲の中間程度に充填された充填材は、ピット&フィッシャーシーラント(小窩裂溝填塞)、およびClass I、Class III、Class IV、Class Vの修復材料を装着するのに適している。
【0026】
多官能性の酸性モノマーの量は、10〜85重量%で変化させることができる。この方法では、酸エッチングおよび重合前のレジンの歯への浸透のために、より多量の酸性モノマーが使用される。最終材料の付加的な強度を得るためにより高い充填材含有量を必要とする場合には、より低量の酸性モノマーを使用することができる。
【0027】
水の量は、0.0〜80%の範囲で変化させることができ、これにより、より高い酸性度が得られ、水和が制御される。
【0028】
コモノマーの量は、5〜80%の範囲で変化させることができ、これにより、共重合を通して材料の強度、酸を増大させたコモノマーの重合および酸性モノマーの反応を制御し、さらにいくらかの親水性もしくは疎水性を材料に付与する。2−ヒドロキシエチルメタクリレートは、このような親水性のコモノマーの例である。1,6−ジヒドロキシヘキサメチレンジメタクリレートは、疎水性のコモノマーの例である。酸性モノマーとコモノマーとの共生的な関係は前述した通りである。
【0029】
この複合材料の使用方法は、複合材料を得るステップ、複合材料を歯に塗布するステップ、および重合系を活性化させることによって、例えば光を適用させて光硬化化合物を活性化することによって複合材料を固めるもしくは硬化させるステップを含む。デュアルキュアの形成ためには、歯に塗布する前に材料を互いに混合する。
【0030】
本発明をさらに説明するために、図1の表にもまとめた実施例を以下に示すが、本発明は、これらの実施例は、制限されたものとして解釈されるべきではない。別途に記載しない限り、全てのパーセントは重量%である。以下の記号および定義は、表中で用いられているものであり、実施例中に記載された複合材料の様々な成分を表している。
B ビス−2(メタクリロキシ)エチルホスフェート(酸性モノマー)
U ジウレタンジメタクリレート
H ヒドロキシエチルメタクリレート
T トリメチロールプロパントリメタクリレート
D ジメチルアミノエチルメタクリレート
O 水
E エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート
A アクリルホスフィンオキシド
CQ カンホルキノン
NaF フッ化ナトリウム
実施例では、圧縮強度は、Delrin(TM)(6mm×4mm直径)厚みのある分割金型で注型した試験品を使用して測定した。Instron機械試験装置を使用して、試料を1.27cm/min(0.5in/min)のクロスヘッド速度で評価した。試験前には、全ての試験品を37℃の水中で24時間保存した。得られた圧縮強度値は、平均、正または負でその標準偏差を括弧内に示した。
【0031】
界面の結合強度は、試験材料をPulpdent Corporation、Watertown、MAから販売されているFlows-Riteとして知られる材料からなる複合試験品に結合させることによって測定した。複合試験品は、上記の6mm×4mm金型を用いて形成した。試験材料を、この複合試験品の円形の界面に結合した。3点結合装置を用いて、複合試験品と試験材料との間の界面に破壊点まで負荷を与える。この値は、界面結合強度として示す。
【0032】
フッ化物は、試験材料からなる25mm×1mm厚みのディスクで測定した。このような2つのディスクを別個にそれぞれ試験した。硬化後、これらのディスクを蒸留水25.0mlが入っているプラスチックの容器内に懸架した。フッ化物イオン濃度は、フッ化物イオン特定電極(フッ化物イオン選択電極、Orion Researchより入手可能)を用いて測定し、TISAB緩衝溶液(Orion Researchより入手可能)を含むフッ化物イオン標準溶液を使用して標準調整した。
【0033】
歯のシールは、ピット&フィッシャーシーラントとしての材料を使用することによって測定した。10本の歯をその方式でシールした。このような適用における慣習的な方法と同様に、材料を装着する前に歯の表面をエッチングするためにリン酸を使用した。それらの歯を、5〜55℃で温度を周期的に1500回変化させ、歯/材料の界面を試験した。温度を周期的に変化させた後、歯を硝酸銀水溶液中に2時間晒し、これにより、境界領域の開いているあらゆる箇所へと色素が浸透する。色素を浸透させた後、歯を完全にシールし、続いて1つの歯につき3〜5回区切った。歯への色素の浸透量および材料の浸透の広がった量を測定した。
【0034】
以下の全ての実施例で使用した材料は、歯に組み込まれる良好な特性を備えており、臨床的に適切な時間内で固まって固い塊体を形成する。
【実施例】
【0035】
実施例1
実施例1は、酸性モノマー48.3%、充填材36.0%、水0.37%およびフッ化ナトリウム1.1%を含有している。この材料は、22,400(1200)psiもしくは155(8)MPaという良好な圧縮強度を有しており、中程度に充填されており、良好な流動性を有し、かつピット&フィッシャーシーラント材料として適していた。この材料は、フッ化物を放出し、歯科用光硬化装置によって10〜15秒以内で硬化させると、固まって固い塊体を形成した。
【0036】
実施例2
実施例2は、酸性モノマー43.2%、充填材45.0%、水0.33%およびフッ化ナトリウム1.1%を含有している。この材料は、実施例1よりもより高度に充填されており、より低い流動性を有していた。この材料は、フッ化物を放出し、歯科用硬化光によって10〜15秒以内で硬化した。
【0037】
実施例3
実施例3は、酸性モノマー42%、充填材49.6%および水4.9%を含有しているが、コモノマーおよびフッ化ナトリウムを含有していない。この重合系(光受容体としてのカンホルキノンおよびアミンを含むもの)は、歯科用硬化光を用いて10〜15秒以内で固まり、固い塊体を形成した。この材料は、さらにより高度に充填されており、なお水をほぼ5%含有しており、歯科用セメントとして許容できる圧縮強度を有している。
【0038】
実施例4
実施例4は、酸性モノマー78%およびサブミクロンの充填材のみを含有し、水4.9%を含有している。この材料はフッ化物を放出し、重合系によって10〜15秒以内で硬化し、固くかつ透明な塊体を形成した。この材料は、歯に組み込まれる特性を有しており、良好なシールを提供し、他の複合材料に極めて良好に結合した。この材料は、複合シーラントまたは歯科用グレージング材料として有益な特性も有していた。
【0039】
実施例5
実施例5は、酸性モノマー43%、サブミクロン充填材のみおよび水5.0%を含有している。この材料は、フッ化ナトリウムを0.5%含有しており、フッ化物を放出する。この材料は、歯科用硬化光を用いて10〜15秒以内で固まり、固く透明な塊体を形成した。この材料は、複合シーラントまたは歯科用グレージング材としても適している。
【0040】
実施例6
実施例6は、酸性モノマー46%およびサブミクロンの充填材のみを含有している。この材料には、水およびフッ化ナトリウムは添加されていない。40%より大きな酸性モノマー含有量を有しており、この材料は、歯科用硬化光を用いて固まり、固い透明な塊体となる。この材料は、フッ化物を放出しない。しかし、複合シーラントまたはグレージング材として、この材料は良好な界面結合を形成する。
【0041】
実施例7
実施例7は、酸性モノマー49%および充填材36.6%を含有している。この材料は、フッ化物を放出し、中程度の充填レベルを有し、歯科用セメントまたはベース/ライナー材料として適切な圧縮強度を有している。この材料は、重合系を使用して重合する。
【0042】
実施例8
実施例8は、酸性モノマー27.3%および充填材36.6%を含有している。この材料は、フッ化物を放出し、中程度の充填レベルを有しており、ピット&フィッシャーシーラントに適する圧縮強度を有している。この材料は、重合系を使用して重合する。
【0043】
ピット&フィッシャーシーラントの例としてのこの材料の、その歯のシール能を評価した。全ての歯の表面について評価を行ったが、その65%には、色素浸透が全く見られなかった。表面の35%には色素浸透が見られたが、外周縁部のみであり、フィッシャー(小窩裂溝)自体への色素浸透はなかった。また、フィッシャーの底部までの色素浸透が起こった表面はなかった。フィッシャーへの材料浸透という点では、この材料は、フィッシャーの範囲へと流動しやすかった。この結果は、良好なシーリングおよび流体浸透からの歯の保護の両方が得られることを示している。
【0044】
実施例9
実施例9は、酸性モノマーが42.7%であり、充填材を含有していない。1,6−ジヒドロキシヘキサメチレンジメタクリレートをヒドロキシエチルメタクリレートの代わりに使用し、材料により強い疎水性を付与した。
【0045】
実施例10
実施例10は、デュアルキュアの(光によって硬化可能であるかまたは混合後に自家重合させることが可能であるか、もしくはその両方である)2つの成分の組成物である。成分Aおよび成分Bを同じ部で混合する。その混合物を、要求に応じて光硬化させることができる。自家重合を制御することができ、この実施例では、4:30分で開始し、10:00分までに完了させる。成分Aは、酸性モノマー48.4%および充填材37.2%を含有しており、フッ化ナトリウム(1.10%)および水(0.73%)の両方を含有している。成分A中には、1−アセチル−2−チオ尿素が、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートの代わりに使用されており、成分B中では、クメンヒドロペルオキシドが、カンホルキノンの代わりに使用されている。この材料は、自家硬化または光硬化のいずれかの方式によって固まり、極めて強度の大きな固い塊体を形成した。この材料は、粉末冶金および歯牙構造に関連した極めて良好な修復特性を有している。
【0046】
実施例11
実施例11は、より高度に充填された材料である。充填材の割合は60.0%であり、フッ化ナトリウム1.10%および水0.24%を含有している。酸性モノマーの割合は、全体に対して10.55%であるか、または一次モノマーのみに対して28.54%である。260(20)MPaの圧縮強度が示しているように、この材料の強度は大きい。
【0047】
実施例12
実施例12は、酸性モノマー41.7%および水10.14%を含有しており、37.3%充填されている。この材料は、歯科用硬化光によって10〜15秒以内で固い塊体を形成した。この材料は、71(4)MPaの圧縮強度を有していた。この材料は、象牙質の代替材料としてまたは修復におけるベース/ライナーとして使用することができる。
【0048】
実施例13
実施例13は、酸性モノマー42%、水15%および充填材22.85%を含有している。この材料は、NaFを含有しており、フッ化物イオンを放出する。この材料は、43(2)MPaの圧縮強度を有していた。
【0049】
実施例14
実施例14は、酸性モノマー42.68%、水5%およびフッ化ナトリウムのみを含有しており、不溶性の充填材を含有していない。この材料は、ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりに、1,6−ジヒドロキシヘキサメチレンジメタクリレート5.00%を含有している。この材料は、グレージング材として使用することができる。この材料は、フッ化物を放出する。
【0050】
本発明の範囲および思想を逸脱することがなければ、本発明の様々な変形および変更は、当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書で説明の目的のためのみに示した態様に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本出願の実施例において説明した複合材料の成分をまとめた表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸を含有している少なくとも1つの多官能性のモノマーを約10重量%から約85重量%の濃度範囲で、
非反応性の充填材を約1重量%から約80重量%の濃度範囲で、
重合系を約1.5重量%から15重量%の濃度範囲で、ならびに
水を約0.1重量%から25重量%の濃度範囲で含んでいる重合可能な複合材料。
【請求項2】
前記多官能性の酸性モノマーが、ビス−2(メタクリロキシ)エチルホスフェートである、請求項1に記載の重合可能な複合材料。
【請求項3】
非酸性コモノマーを約5重量%から約80重量%の濃度範囲でさらに含んでいる、請求項1に記載の重合可能な複合材料。
【請求項4】
前記非酸性コモノマーが、ジウレタンジメタクリレートである、請求項4に記載の重合可能な複合材料。
【請求項5】
前記非反応性の充填材が、シリカまたは放射線不透過性のガラス、もしくはこれらの組合せである、請求項1に記載の重合可能な複合材料。
【請求項6】
前記重合系が、開始剤、促進剤またはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の重合可能な複合材料。
【請求項7】
前記開始剤が、光開始剤または自家硬化開始剤である、請求項6に記載の重合可能な複合材料。
【請求項8】
前記光開始剤が、カンホルキノンである、請求項7に記載の重合可能な複合材料。
【請求項9】
前記自家硬化開始剤がクメンヒドロペルオキシドである、請求項7に記載の重合可能な複合材料。
【請求項10】
イオン性化合物を約0.01重量%から10重量%の濃度範囲でさらに含んでいる、請求項1に記載の重合可能な複合材料。
【請求項11】
前記イオン性化合物がフッ化ナトリウムである、請求項10に記載の重合可能な複合材料。
【請求項12】
酸を含有している少なくとも1つの多官能性のモノマーを約40重量%から約85重量%の濃度範囲で、
非反応性の充填材を約1重量%から約80重量%の濃度範囲で、
重合系を約1.5重量%から約15重量%の濃度範囲で含んでいる、重合可能な複合材料。
【請求項13】
水を約0.1重量%から約25重量%の濃度範囲でさらに含む、請求項12に記載の重合可能な複合材料。
【請求項14】
重合可能な複合材料の製造方法であって、
約10重量%から約85重量%の濃度範囲の、酸を含有している少なくとも1つの多官能性のモノマーを準備するステップ、
約1重量%から約80重量%の濃度範囲の非反応性の充填材を添加するステップ、
約1.5重量%から15重量%の濃度範囲の重合系を添加するステップ、および
約0.1重量%から25重量%の濃度範囲の水を添加するステップ
を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−512466(P2006−512466A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566618(P2004−566618)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/041523
【国際公開番号】WO2004/063274
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505253293)パルプデント コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】