説明

重合性化合物および液晶ディスプレイにおけるそれらの使用

【課題】重合性化合物および液晶ディスプレイにおけるそれらの使用を提供する。
【解決手段】本発明は、重合性化合物と、重合性化合物を調製するための方法および中間体と、光学的、電気光学的および電子的目的のためで、より特には、液晶(LC:liquid−crystal)媒体およびLCディスプレイにおける、特に、PSまたはPSA(「ポリマー維持(polymer sustained)」または「ポリマー維持配向(polymer sustained alignment)」)タイプのLCディスプレイにおける重合性化合物の使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物と、重合性化合物を調製するための方法および中間体と、光学的、電気光学的および電子的目的のためで、特には、液晶(LC:liquid−crystal)媒体およびLCディスプレイにおける、特に、PS(「ポリマー維持(polymer sustained)」)またはPSA(「ポリマー維持配向(polymer sustained alignment)」)タイプのLCディスプレイにおける重合性化合物の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている液晶ディスプレイ(LCディスプレイ:liquid−crystal display)は、通常、TN(「twisted nematic:ツイストネマチック」)タイプのものである。しかしながら、これらは、コントラストの視野角依存性が強い不都合を有する。加えて、より広い視野角を有する所謂VA(「vertical alignment:垂直配向」)ディスプレイが知られている。VAディスプレイのLCセルは2つの透明電極の間にLC媒体の層を含有しており、そこでは、通常、LC媒体は負の値の誘電(DC:dielectric)異方性を有する。スイッチが切れている状態で、LC層の分子は電極表面に垂直に配向しているか(ホメオトロピック的)、または、チルトホメオトロピック配向を有している。2つの電極に電圧を印加すると、電極表面に平行なLC分子の再配向が起きる。
【0003】
更に、複屈折効果に基づいており、所謂「ベンド(bend)」配向で通常は正の(DC)異方性のLC層を有しているOCB(「optically compensated bend:光学補償ベンド」)ディスプレイが知られている。電圧を印加すると、電極表面に垂直なLC分子の再配向が起きる。加えて、暗状態においてベンドセルの光に対する望ましくない透明性を防ぐために、通常、OCBディスプレイは1枚以上の複屈折光学的リターデーションフィルムを含有する。OCBディスプレイは、TNディスプレイと比較して、より広い視野角および、より短い応答時間を有する。
【0004】
また、2枚の基板の間にLC層を含有し、2つの電極が2枚の基板の一方のみの上に配置されており、好ましくは、相互に噛み合った櫛形の構造を有する所謂IPS(in−plane switching:面内スイッチング)ディスプレイも知られている。電極に電圧を印加すると、それによりLC層に平行な有意な成分を有する電界が電極間に生成される。このため、層面内においてLC分子の再配向が生じる。
【0005】
更に、所謂FFS(「fringe field switching:フリンジ場スイッチング」)ディスプレイが提案されており(とりわけ、S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁を参照;非特許文献1)、同様に同一の基板上に2つの電極を含有するが、IPSディスプレイとは対照的に、2つの電極の一方のみが櫛形の態様に構造化された電極の形状であり、他方の電極は構造化されていない。それにより、強力な所謂「フリンジ場」、即ち、電極端の近傍における強力な電界およびセル全体にわたって強力な垂直成分および強力な水平成分の両者ともを有する電界が生成される。IPSディスプレイおよびFFSディスプレイの両者とも、コントラストの低い視野角依存性を有する。
【0006】
より最近のタイプのVAディスプレイにおいて、LC分子の均一な配向は、LCセル内の複数の比較的小さなドメインに限定されている。チルトドメインとしても知られるこれらのドメイン間には、ディスクリネーションが存在する場合がある。従来のVAディスプレイと比較して、チルトドメインを有するVAディスプレイは、より大きなコントラストおよび中間調(灰色遮光)の視野角非依存性を有する。加えて、スイッチが入っている状態での分子の均一配向のための電極表面の追加処理、例えばラビングなどが、もはや必要ないため、このタイプのディスプレイの製造は、より簡便である。代わりに、チルトまたはプレチルト角の優先的方向は、電極の特別な設計により制御される。
【0007】
所謂MVA(「multidomain vertical alignment:マルチドメイン垂直配向」)ディスプレイにおいては、通常、これは突起を有する電極によって達成され、局所的なプレチルトが生じる。結果として、電圧を印加すると、LC分子は電極表面に平行に、セルで異なって定義される領域中で異なる方向に配向する。それによって「制御された」スイッチングが達成され、干渉するディスクリネーション線の形成が予防される。この配向によってディスプレイの視野角が改良されるが、しかしながら、光に対する透明性が低下する結果となる。MVAの更なる開発のために片方の電極側のみの突起が使用され、一方で反対側の電極はスリットを有しており、光に対する透明性が改良されている。電圧を印加するとスリットが施された電極はLCセル内に不均質な電界を生じ、制御されたスイッチングが更に達成されることを意味する。光に対する透明性を更に改良するためにスリットと突起との間隔を大きくすることもできるが、これにより応答時間が長くなる結果となる。所謂PVA(patterned VA:パターン化VA)においては、両電極が対向する側のスリットによって構造化されていて、突起は完全に不要になり、コントラストの増加および光に対する透明性が改良される結果となるが、技術的に困難でありディスプレイが機械的影響(「タッピング」など)により敏感となる。しかしながら、例えばモニターおよび特にTVスクリーンなどの多くの用途においては、ディスプレイの応答時間を短縮しコントラストおよび輝度(透過性)を改良することが要求されている。
【0008】
更なる開発は、所謂PSまたはPSA(polymer sustained:ポリマー維持またはpolymer sustained alignment:ポリマー維持配向)ディスプレイであり、それらについては、用語「ポリマー安定化(polymer stabilised)」も使用されることがある。これらにおいては、少量(例えば、0.3重量%、典型的には1重量%未満)の1種類以上の重合性化合物(1種類または多種類)をLC媒体に添加し、LCセルに導入後、電極間に電圧を印加するか印加せずに、通常UV光重合により、その場で重合または架橋する。反応性メソゲンまたは「RM(reactive mesogen)」としても知られる重合性メソゲンまたは液晶化合物をLC混合物に添加することが、特に適切であることが証明されている。
【0009】
他に示さない限り、下では、用語「PSA」を、PSディスプレイおよびPSAディスプレイを代表して使用する。
【0010】
当面のところ、PS(A)の原理は、さまざまな古典的LCディスプレイ中で使用されている。よって、例えば、PSA−VA、PSA−OCB、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−TNディスプレイが知られている。PSA−VAおよびPSA−OCBディスプレイの場合、好ましくは、電圧を印加し、PSA−IPSディスプレイの場合は、電圧を印加するか印加せずに、好ましくは、印加せずに、重合性化合物(1種類または多種類)の重合を起こす。試験用セルにおいて示される通り、PS(A)法は、結果としてセル中にプレチルトを生じる。例えば、PSA−OCBディスプレイの場合、オフセット電圧が不必要となるか低減できるように、ベンド構造を安定化することが可能である。PSA−VAディスプレイの場合、プレチルトは応答時間に対して正の効果を有する。PSA−VAディスプレイに対しては、標準的なMVAまたはPVAピクセルおよび電極レイアウトを使用できる。加えて、しかしながら、また、例えば、電極の一方側のみを構造化して突起を設けないで操作することも可能であり、製造が著しく簡略化され、同時に結果としてコントラストが非常に良好となり、同時に光に対する透明性が非常に良好となる。
【0011】
更に、所謂、正−VAディスプレイ(「正VA」)が、特に適切なモードであることが証明されてきた。古典的なVAディスプレイと同様に、電圧が印加されていない場合の初期状態において、正−VAディスプレイにおけるLC分子の初期配向はホメオトロピックであり、即ち、基板に対して実質的に垂直である。しかしながら、古典的なVAディスプレイとは対照的に、正−VAディスプレイにおいては、正の誘電異方性を有するLC媒体が使用される。通常使用されるIPSディスプレイと同様に、正−VAディスプレイにおける2つの電極は2枚の基板の一方のみに配置されており、好ましくは、相互に噛み合った櫛形の(インターデジタル)構造をとる。インターデジタル電極に電圧を印加することで、電極はLC媒体の層に実質的に平行な電界を生成し、LC分子は基板に実質的に平行な方向に転換される。また、正−VAディスプレイにおいても、ポリマー安定化(PSA)、即ち、セル内で重合されるRMをLC媒体に加えることが有利であり、スイッチ時間の著しい短縮を実現できることが証明されてきた。
【0012】
PSA−VAディスプレイは、例えば、特開平10−036847号公報(特許文献1)、欧州特許出願公開第1 170 626号公報(特許文献2)、米国特許第6,861,107号明細書(特許文献3)、米国特許第7,169,449号明細書(特許文献4)、米国特許出願公開第2004/0191428号公報(特許文献5)、米国特許出願公開第2006/0066793号公報(特許文献6)および米国特許出願公開第2006/0103804号公報(特許文献7)に記載されている。PSA−OCBディスプレイは、例えば、T.−J−Chenら、Jpn.J.Appl.Phys.45巻、2006年、2702〜2704頁(非特許文献2)およびS.H.Kim、L.−C−Chien、Jpn.J.Appl.Phys.43巻、2004年、7643〜7647頁(非特許文献3)に記載されている。PSA−IPSディスプレイは、例えば、米国特許第6,177,972号明細書(特許文献8)およびAppl.Phys.Lett.1999年、75巻(21号)、3264頁(非特許文献4)に記載されている。PSA−TNディスプレイは、例えば、Optics Express 2004年、12巻(7号)、1221頁(非特許文献5)に記載されている。
【0013】
上記従来のLCディスプレイと同様に、PSAディスプレイは、アクティブマトリクスまたはパッシブマトリクスディスプレイとして動作できる。アクティブマトリクスディスプレイの場合、個々のピクセルは、通常、例えば、トランジスタ(例えば、薄膜トランジスタ(「TFT(thin−film transistor)」))などの集積非線形活性素子によってアドレスされ、一方、パッシブマトリクスディスプレイの場合、個々のピクセルは、通常、先行技術より既知の通りのマルチプレックス法によってアドレスされる。
【0014】
特に、モニターおよび特にはテレビ用途向けには、LCディスプレイの応答時間のみならずコントラストおよび輝度(よって、透過性)も最適化することが引き続き要求されている。ここで、PSA法は重要な利点を提供できる。特に、PSA−VA、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−正−VAディスプレイの場合、他のパラメータに著しい悪影響を及ぼすことなく、試験用セルにおける測定可能なプレチルトと相関して、応答時間の短縮を達成できる。
【0015】
先行技術においては、例えば、米国特許第7,169,449号明細書(特許文献9)に記載される通り、例えば、以下の式の重合性化合物が使用される。
【0016】
【化1】

式中、Pは、重合性基、通常、アクリレートまたはメタクリレート基を表す。
【0017】
しかしながら、例えば、不適切なチルトが確立されるようになるか、全くチルトが確立されないようになるため、または、例えば、所謂「電圧保持率」(VHRまたはHR(voltage holding ratio))がTFTディスプレイ用途にとって不適切であるため、LC混合物(下では「LCホスト混合物」とも呼ぶ)+重合性成分(典型的には、RM)から成る全ての組み合わせがPSAディスプレイに適しているわけではない問題が生じる。加えて、先行技術から既知のLC混合物およびRMは、PSAディスプレイにおいて使用する際に、幾つかの不都合を依然として有することが見出されてきた。よって、LC混合物に可溶性の全ての既知のRMが、PSAディスプレイにおける使用に適しているわけではない。加えて、PSAディスプレイにおけるプレチルトを直接測定することに加え、RMに関する適切な選択要件を見出すことは、しばしば困難である。光開始剤を添加することなくUV光を用いて重合することが望ましい場合、特定の用途に好都合のことがあるが、適切なRMの選択の余地は更に狭くなる。
【0018】
加えて、LCホスト混合物/RMの選択された組み合わせは、可能な限り低い回転粘度および可能な限り良好な電気特性を有していなければならない。特に、組み合わせは、可能な限り高いVHRを有していなければならない。PSAディスプレイにおいては、UV曝露がディスプレイの製造工程において不可欠な部分であるが、また、製造終了後のディスプレイを動作する際にも通常の曝露としてUV曝露が起こるため、UV光照射後の高いVHRが特に必要である。
【0019】
特に、小さいプレチルト角を生成するPSAディスプレイ用の新規な材料が入手可能となるのは、特に望ましい。ここで、好ましい材料は、同一の曝露時間での重合の際に、今日までに既知の材料よりも小さいプレチルト角を生成するもの、および/または、それを使用して、既知の材料で達成できる(より高い)プレチルト角を、より短い曝露時間後に既に達成できるものである。よって、ディスプレイの製造時間(タクトタイム)を短縮でき、製造プロセスのコストを低減できる。
【0020】
PSAディスプレイの製造における更なる問題は、特に、ディスプレイ内にプレチルト角を生成するための重合工程後における、残存量の未重合のRMの存在または除去である。例えば、ディスプレイの製造終了後の動作の際に、制御されていない態様で重合するために、例えば、このタイプの未反応のRMは、ディスプレイの特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0021】
よって、先行技術より既知のPSAディスプレイは、しばしば、望ましくない効果である所謂「画像の固着」または「画像の焦付き」を示し、即ち、個々のピクセルの一時的なアドレスによってLCディスプレイ内に生成された画像が、これらのピクセル内の電界のスイッチが切られた後、または、他のピクセルがアドレスされた後においてすら、依然として目に見えている。
【0022】
一方で、低いVHRを有するLCホスト混合物を使用すると、この「画像の固着」が発生することがある。昼光またはバックライトのUV成分が混合物中のLC分子の望ましくない分解反応を引き起こすことがあり、よって、イオン性またはフリーラジカルの不純物の生成が開始されることがある。これらは、特に、電極または配向層において蓄積されることがあり、そこで、それらのために、有効印加電圧が低下することがある。また、この効果は、ポリマー成分を有さない従来のLCディスプレイにおいても観察されることがある。
【0023】
加えて、PSAディスプレイにおいて、未重合のRMが存在することによって生じる追加の「画像の固着」の効果が、しばしば観察される。ここでは、残存するRMの制御されていない重合が、環境から、または、バックライトによるUV光によって開始される。このため、スイッチが入っているディスプレイ領域において、多数のアドレスサイクル後にチルト角が変化する。結果として、スイッチが入っている領域において、透過率の変化が生じることがあり、一方、スイッチが入っていない領域においては、透過率は不変のままである。
【0024】
従って、PSAディスプレイを製造する際には、RMの重合が可能な限り完全に進むこと、および、ディスプレイにおける未重合のRMの存在が可能な限り排除されているか最小限まで低減されていることが望ましい。このためには、高効率で完全な重合を可能とする材料が要求される。加えて、これらの残存量のものの制御された反応が望ましいであろう。今日までに既知の材料よりも迅速で効果的にRMが重合するのであれば、この制御された反応は、より簡便であろう。
【0025】
よって、上記の不都合を示さないか僅かな程度にのみ示し改良された特性を有する、特に、VAおよびOCBタイプのPSAディスプレイと、その様なディスプレイにおいて使用するための重合性化合物とに対する強い要求が依然としてある。特に、高い比抵抗と同時に、広い動作温度範囲、低温においてすら短い応答時間、および、低い閾電圧、低いプレチルト角、複数の中間調(灰色遮光)、高いコントラストおよび広い視野角、および、UV曝露後の高い値の「電圧保持率(VHR:voltage holding ratio)」を可能とするPSAディスプレイと、PSAディスプレイにおいて使用するための材料とに対する強い要求がある。
【0026】
本発明は、上に示される不都合を有していないか、または、低減された程度にのみ有しており、可能な限り迅速および完全に重合し、可能な限り迅速に低いプレチルト角の確立が可能となり、ディスプレイにおける「画像の固着」の発生を低減または防止し、好ましくは同時に、非常に高い比抵抗値、低い閾電圧および短い応答時間が可能となる、PSAディスプレイにおいて使用するための新規で適切な材料、特にRM、およびRMを含むLC媒体を提供する目的に基づく。
【0027】
本発明の更なる目的は、特に、光学的、電気光学的および電子的用途のため新規なRMと、それらの調製に適する方法および中間体とを提供することである。
【0028】
特に、本発明は、光重合後に、より大きな最大プレチルトを生成する重合性化合物を提供する目的に基づいており、それにより、所望のプレチルトが、より迅速に達成される結果となり、よって、LCディスプレイの製造時間が著しく短縮される結果となる。
【0029】
この目的は、本出願において記載される通りの材料、方法およびLCディスプレイを提供することにより、本発明に従って達成された。特に、驚くべきことに、このタイプのPSAディスプレイを製造するために、本発明による1種類以上の重合性化合物を含有するPSAディスプレイを提供するか、本発明による1種類以上の重合性化合物を含むLC媒体を使用することにより、上記の目的の幾つかまたは全てを達成できることが見出された。本発明による重合性化合物は1個のメソゲン基および1個以上の重合性基を含有しており、ただし、これらの重合性基の少なくとも1個はスペーサー基を介してメソゲン基に連結されており、ただし、これらのスペーサー基の少なくとも1個はC−C三重結合を含有している。
【0030】
本発明によるLC媒体およびPSAディスプレイにおいて、このタイプの重合性化合物を使用することにより、特に迅速に所望のプレチルトが達成される結果となり、ディスプレイの製造時間が著しく短縮される結果となる。このことは、VAチルト測定用セルにおいて曝露時間に依存するプレチルトの測定を用いて、LC媒体に関して示された。特に、光開始剤を加えることなくプレチルトを達成することが可能であった。
【0031】
PSAディスプレイにおいて、本発明による重合性化合物は著しく、より高い重合速度を示すため、また、より少ない残存量の未反応物しかLCセル内に残らず、セルの電気光学的特性が改良され、これらの残存量のものを制御して反応することが、より簡便となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開平10−036847号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 170 626号公報
【特許文献3】米国特許第6,861,107号明細書
【特許文献4】米国特許第7,169,449号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0191428号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0066793号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0103804号公報
【特許文献8】米国特許第6,177,972号明細書
【特許文献9】米国特許第7,169,449号明細書
【特許文献10】米国特許第6,369,262号明細書
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁
【非特許文献2】T.−J−Chenら、Jpn.J.Appl.Phys.45巻、2006年、2702〜2704頁
【非特許文献3】S.H.Kim、L.−C−Chien、Jpn.J.Appl.Phys.43巻、2004年、7643〜7647頁
【非特許文献4】Appl.Phys.Lett.1999年、75巻(21号)、3264頁
【非特許文献5】Optics Express 2004年、12巻(7号)、1221頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
C−C三重結合を含有するスペーサー基を含有する重合性化合物は、先行技術において他の目的のために記載されてきた。よって、米国特許第6,369,262号明細書(特許文献10)には、特に高温におけるステレオリソグラフィー用途のために、高いガラス転移温度を有し高度に架橋された異方性ポリマーを調製するためで、スペーサー基中にC−C三重結合を含有するメソゲン性のジアクリレートモノマーが開示されている。しかしながら、電界内におけるその場の重合によってチルト角を迅速に確立するために、PSAディスプレイにおいて、その様なモノマーを使用することは、記載されておらず提案もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0035】
よって、本発明は、1個のメソゲン基および1個以上の重合性基を含有する重合性化合物(ただし、これらの重合性基の少なくとも1個はスペーサー基を介してメソゲン基に連結されており、ただし、これらのスペーサー基の少なくとも1個はC−C三重結合を含有している。)(また、下では「本発明による重合性化合物」とも呼ぶ。)を、PSまたはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)タイプの液晶(LC:liquid−crystal)媒体およびLCディスプレイにおいて使用することに関する。
【0036】
本発明は、更に、本発明による1種類以上の重合性化合物と、1種類以上の追加の化合物(該化合物は、また、メソゲン、液晶および/または重合性でよい。)とを含むLC媒体に関する。
【0037】
本発明は、更に、本発明による1種類以上の重合性化合物と、1種類以上の追加の化合物(該化合物は、また、メソゲン、液晶および/または重合性でよい。)とを重合して得ることができるポリマーを含むLC媒体に関する。
【0038】
本発明は、更に、
−本発明による1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分A)と、
−上および下に記載される通りで、1種類以上、好ましくは、2種類以上の低分子量(モノマーおよび非重合性)化合物を含み、下では、また「LCホスト混合物」とも呼ばれる液晶成分B)と
を含むLC媒体に関する。
【0039】
本発明は、更に、上および下に記載される通りのLC媒体を調製する方法であって、上および下に記載される通りの1種類以上の低分子量液晶化合物またはLCホスト混合物を、本発明による1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合する方法に関する。
【0040】
本発明は、更に、好ましくは、電界または磁界を印加して、PSAディスプレイにおいて式Iの化合物(1種類または多種類)をその場で重合することによりLC媒体中にチルト角を生成するために、PSおよびPSAディスプレイにおいて本発明による重合性化合物および本発明によるLC媒体を使用すること、特に、LC媒体を含有するPSおよびPSAディスプレイにおいて使用することに関する。
【0041】
本発明は、更に、本発明による1種類以上の重合性化合物または本発明によるLC媒体を含有するLCディスプレイ、特に、PSまたはPSAディスプレイ、特に好ましくは、PSA−VA、PSA−OCB、PSA−IPS、PS−FFS、PSA−正−VAまたはPSA−TNディスプレイに関する。
【0042】
本発明は、更に、2枚の基板および2つの電極(ただし、少なくとも一方の基板は光に対して透明であり、少なくとも一方の基板は1つまたは2つの電極を有する。)と、基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含むLC媒体層(ただし、重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、LCセルの基板間においてLC媒体中で、好ましくは電極に電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、少なくとも1種類の重合性化合物は、本発明による重合性化合物より選択される。)とを有するLCセルを含有するPSまたはPSAタイプのLCディスプレイに関する。
【0043】
本発明は、更に、上および下に記載される通りのLCディスプレイを製造する方法であって、上および下に記載される通りの1種類以上の低分子量液晶化合物またはLCホスト混合物と、本発明による1種類以上の重合性化合物とを含むLC媒体を、上および下に記載される通りの2枚の基板および2つの電極を有するLCセル内に導入し、好ましくは、電極に電圧を印加しながら重合性化合物を重合する方法に関する。
【0044】
本発明によるPSおよびPSAディスプレイは、好ましくは、透明層の形態で、LCセルを形成する一方または両方の基板上に塗工される2つの電極を有する。それぞれの場合において、例えば、本発明によるPSA−VA、PSA−OCBまたはPSA−TNディスプレイにおいては、2枚の基板のそれぞれに1つの電極が塗工されているか、または、本発明によるPSA−正−VA、PSA−IPSまたはPSA−FFSディスプレイにおいては、2枚の基板の一方のみに両方の電極が塗工されており、一方、他方の基板は電極を有していないかのいずれかである。
【0045】
本発明は、更に、本発明による新規な重合性化合物と、それらを調製する方法と、これらの方法において使用されるか得られる新規な中間体とに関する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の意味を上および下で適用する。
【0047】
用語「チルト」および「チルト角」は、LCディスプレイ(本明細書において、好ましくは、PSまたはPSAディスプレイ)においてLC媒体のLC分子がセル表面に対してチルトした配向に関する。本明細書において、チルト角は、LC分子の分子長軸(LCダイレクタ)と、LCセルを形成する平坦で平行な外板の表面との間の平均角(90°未満)を表す。本明細書においては、低い値のチルト角(即ち、角度90°から大きく外れている)は、大きいチルトに対応する。チルト角を測定する適切な方法は、例において与えられている。他に示さない限り、上および下で開示される角度の値は、この測定方法に関する。
【0048】
用語「メソゲン基」は当業者に既知で文献に記載されており、その引力および斥力的相互作用の異方性によって、低分子量または高分子物質中で液晶(LC:liquid−crystalline)相の発生に本質的に寄与する基を表す。メソゲン基を含有する化合物(メソゲン化合物)は、それ自身では必ずしもLC相を有する必要はない。また、他の化合物と混合後および/または重合後のみに、メソゲン化合物がLC相挙動を示すことも可能である。典型的なメソゲン基は、例えば、剛直な棒状または円盤状の形状の単位である。メソゲンまたはLC化合物に関して使用される用語および定義の概説は、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁において与えられている。
【0049】
用語「スペーサー基」は、上および下で「Sp」とも呼ばれ、当業者に既知で文献に記載されており、例えば、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照。他に示さない限り、用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、上および下において、重合性メソゲン化合物中でメソゲン基および重合性基(1個または複数)を互いに連結している柔軟性の基を表す。
【0050】
用語「反応性メソゲン」または「RM(reactive mesogen)」は、1個のメソゲン基および重合に適切な1個以上の官能基(重合性基または基Pとも呼ばれる)を含有する化合物を表す。
【0051】
用語「低分子量化合物」および「非重合性化合物」は、通常、モノマー性で、当業者に既知の通常の条件下、特にRMの重合のために使用される条件下において重合に適する官能基を含有しない化合物を表す。
【0052】
用語「有機基」は、炭素または炭化水素基を表す。
【0053】
用語「炭素基」は、少なくとも1個の炭素原子を含有する一価または多価の有機基を表し、ただし、これは、更なる種類の原子を含有しない(例えば、−C≡C−など)か、または、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1種類以上の更なる原子を含有していてもよい(例えば、カルボニルなど)かのいずれかである。用語「炭化水素基」は、1個以上のH原子を追加的に含有しており、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1種類以上のヘテロ原子を含有していてもよい炭素基を表す。
【0054】
「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを表す。
【0055】
「共役基(conjugated radical)」または「共役基(conjugated group)」は、sp−混成(またはsp−混成でもよい)の炭素原子を主に含有する基(radicalまたはgroup)を表し、また、炭素原子は対応するヘテロ原子で置き換えられていてもよい。最も単純な場合、これは、二重および単結合が交互に存在することを意味する。この文意において、「主に」は、自然に(作為的に)生じる欠陥(その結果、共役が中断する。)のために、用語「共役」を過小に評価しないことを意味する。更に、例えば、アリールアミン単位または特定のヘテロ環(即ち、N、O、PまたはS原子を介する共役)が該基(radicalまたはgroup)内に位置している場合、本出願の文章において、用語「共役」を同様に使用する。
【0056】
炭素または炭化水素基は、飽和または不飽和基のいずれでもよい。不飽和基は、例えば、アリール、アルケニルまたはアルキニル基である。3個より多いC原子を有する炭素または炭化水素基は、直鎖状、分岐状および/または環状のいずれでもよく、また、スピロ連結または縮合環を含有していてもよい。
【0057】
また、用語「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」などは、多価の基、例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンなども包含する。
【0058】
用語「アリール」は、芳香族炭素基またはそれらより誘導される基を表す。用語「ヘテロアリール」は、1個以上のヘテロ原子を含有し、上で定義される通りの「アリール」を表す。
【0059】
好ましい炭素および炭化水素基は、置換されていてもよく、1〜40個、好ましくは1〜25個、特に好ましくは1〜18個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ、または、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、アルキルアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシである。
【0060】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリル、C〜C40アルキルジエニル、C〜C40ポリエニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、C〜C40アリールアルキル、C〜C40アルキルアリールオキシ、C〜C40アリールアルキルオキシ、C〜C40ヘテロアリール、C〜C40シクロアルキル、C〜C40シクロアルケニルなどである。C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アルキニル、C〜C22アリル、C〜C22アルキルジエニル、C〜C12アリール、C〜C20アリールアルキルおよびC〜C20ヘテロアリールが特に好ましい。
【0061】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状で、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子を有するアルキル基であり、該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよい。
【0062】
は、好ましくは、H、ハロゲン、直鎖状、分岐状または環状で1〜25個のC原子を有するアルキル鎖(ただし加えて、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子はフッ素により置き換えられていてもよい。)、置換されていてもよく6〜40個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ基、または置換されていてもよく2〜40個のC原子を有するヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表す。
【0063】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシ、n−ウンデコキシ、n−ドデコキシなどである。
【0064】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロヘキシルなどである。
【0065】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルなどである。
【0066】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルなどである。
【0067】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシ、n−ウンデコキシ、n−ドデコキシなどである。
【0068】
好ましいアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなどである。
【0069】
アリールおよびヘテロアリール基は単環でも多環でもよく、即ち、それらは1個の環(例えば、フェニルなど)または2個以上の環を含有してもよく、また、該基は縮合されていてもよく(例えば、ナフチルなど)または共有結合によって連結されていてもよく(例えば、ビフェニルなど)、または、縮合および連結された環の組み合わせを含有していてもよい。ヘテロアリール基は、好ましくは、O、N、SおよびSeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。
【0070】
6〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式アリール基および5〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式ヘテロアリール基が特に好ましく、該基は縮合された環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員または7員のアリールおよびヘテロアリール基が好ましく、ただし加えて、1個以上のCH基は、O原子および/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、N、SまたはOで置き換えられていてもよい。
【0071】
好ましいアリール基は、例えば、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、[1,1’:3’,1”]ターフェニル−2’−イル、ナフチル、アントラセン、ビナフチル、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどである。
【0072】
好ましいヘテロアリール基は、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどの5員環;ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジンなどの6員環;またはインドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフタイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリダイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェンなどの縮合基;またはこれらの基の組み合わせである。
【0073】
また、上および下で述べるアリールおよびヘテロアリール基は、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、フッ素、フルオロアルキルまたは更なるアリールまたはヘテロアリール基で置換されてよい。
【0074】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、飽和環、即ち、排他的に単結合を含有するものと、また、部分的に不飽和な環、即ち、多重結合も含有してよいものとの両者を包含する。ヘテロ環式環は、好ましくは、Si、O、N、SおよびSeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。
【0075】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、単環式、即ち、1個のみの環を含有(例えば、シクロヘキサンなど)してもよく、または、多環式、即ち、複数の環を含有(例えば、デカヒドロナフタレンまたはビシクロオクタンなど)していてもよい。飽和基が、特に好ましい。更に、単環式、二環式または三環式で、5〜25個の環原子を有する基が好ましく、該基は縮合環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員、7員または8員の炭素環式基が好ましく、ただし加えて、1個以上のC原子はSiで置き換えられていてもよく、および/または、1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよく、および/または、1個以上の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよい。
【0076】
好ましい脂環式およびヘテロ環式基は、例えば、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジンなどの5員基、シクロヘキサン、シリナン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジンなどの6員基、シクロヘプタンなどの7員基、および、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイルなどの縮合基である。
【0077】
好ましい置換基は、例えば、アルキルまたはアルコキシなどの溶解促進基、フッ素、ニトロまたはニトリルなどの電子吸引基、または、ポリマーにおいてガラス転移温度(Tg)を上昇させるための置換基、特に、例えば、t−ブチルまたは置換されていてもよいアリール基などの嵩高い基である。
【0078】
上および下で「L」とも呼ばれる好ましい置換基は、例えば、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R(ただし、Rは上で示される意味を有し、Yはハロゲンを表す。)、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜20個のC原子を有するシリルまたはアリール、および、直鎖状または分岐状で、1〜25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよい。)である。
【0079】
「置換されたシリルまたはアリール」は、好ましくは、ハロゲン、−CN、R、−OR、−CO−R、−CO−O−R、−O−CO−Rまたは−O−CO−O−Rによる置換を意味し、ただし、Rは上で示される意味を有する。
【0080】
特に好ましい置換基Lは、例えば、F、Cl、CN、NO、CH、C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OC、更に、フェニルである。
【0081】
【化2】

式中、Lは上で示される意味の1つを有する。
【0082】
重合性基Pは、例えば、フリーラジカルまたはイオン性連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に適するか、または、例えば、ポリマー主鎖上への付加または縮合といったポリマー類似反応に適する基である。連鎖重合のための基、特に、C=C二重結合またはC≡C三重結合を含有するもの、および、例えば、オキセタンまたはエポキシド基などの開環重合に適する基が特に好ましい。
【0083】
好ましい基Pは、CH=CW−CO−O−、CH=CW−CO−、
【0084】
【化3】

CH=CW−(O)k3−、CW=CH−CO−(O)k3−、CW=CH−CO−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−から成る群より選択され、式中、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルを表し、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキルを表し、Pheは、上で定義される通りであるがP−Spとは異なる1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、k、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、kは、好ましくは、1を表し、kは1〜10の整数を表す。
【0085】
特に好ましい基Pは、CH=CW−CO−O−、CH=CW−CO−、
【0086】
【化4】

CH=CW−O−、CW=CH−CO−(O)k3−、CW=CH−CO−NH−、CH=CW−CO−NH−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−およびWSi−から成る群より選択され、式中、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルを表し、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキルを表し、Pheは1,4−フェニレンを表し、k、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、kは、好ましくは、1を表し、kは1〜10の整数を表す。
【0087】
非常に特に好ましい基Pは、CH=CW−CO−O−、特に、CH=CH−CO−O−、CH=C(CH)−CO−O−およびCH=CF−CO−O−、更に、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−O−CO−、(CH=CH)CH−O−、
【0088】
【化5】

から成る群より選択される。
【0089】
更に非常に特に好ましい基Pは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシド基から成る群より選択され、特に好ましくは、アクリレートまたはメタクリレート基を表す。
【0090】
単結合以外の好ましいスペーサー基Spは、基P−Sp−が式P−Sp”−X”−と合致するように式Sp”−X”より選択され、ただし、
Sp”は、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレンを表し、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−N(R)−、−Si(R00000)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−N(R00)−CO−O−、−O−CO−N(R00)−、−N(R00)−CO−N(R00)−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X”は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R00)−、−N(R00)−CO−、−N(R00)−CO−N(R00)−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−または単結合を表し、
00およびR000は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、および
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表す。
【0091】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−または単結合である。
【0092】
典型的なスペーサー基Sp”は、例えば、−(CHp1−、−(CHCHO)q1−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−、−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00000−O)p1−であり、式中、p1は1〜12の整数であり、q1は1〜3の整数であり、R00およびR000は上で示される意味を有する。
【0093】
特に好ましい基−Sp”−X”−は、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−(CHp1−O−CO−、−(CHp1−O−CO−O−であり、式中、p1およびq1は上で示される意味を有する。
【0094】
特に好ましい基Sp”は、例えば、それぞれの場合で直鎖状のエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0095】
本発明の更に好ましい実施形態において、式IにおけるRおよび/またはRは、2個以上の重合性基を含有する基(多官能重合性基)を表す。このタイプの適切な基およびそれらを含有する重合性化合物およびそれらの調製は、例えば、米国特許第7,060,200号明細書または米国特許出願公開第2006/0172090号公報に記載されている。以下の式より選択される多官能重合性基が特に好ましい。
【0096】
【化6】

式中、
alkylは、単結合、または、直鎖状または分岐状で、1〜12個のC原子を有するアルキレンを表し、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはCNで置き換えられていてもよく、ただし、R00およびR000は上で示される意味を有し、
aaおよびbbは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3、4、5または6を表し、
Xは、X’に示される意味の1つを有し、および
1〜5は、それぞれ互いに独立に、上でPに示される意味の1つを有する。
【0097】
本発明による特に好ましい重合性化合物は、式Iのものである:
【0098】
【化7】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
、Rは、それぞれ互いに独立に、P−Sp−、H、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、SF、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、アリーレン、−C(R)=C(R00)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、または、好ましくは、2〜25個のC原子を有するアリールまたはヘテロアリール(該基は、また、2個以上の縮合環を含有してもよく、該基はLにより一置換または多置換されていてもよい。)を表し、ただし、基RおよびRの少なくとも一方は基P−Sp−を表すか含有し、
Pは、それぞれの出現において同一または異なって、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において同一または異なって、スペーサー基または単結合を表し、
、Aは、それぞれ互いに独立に、好ましくは、4〜25個のC原子を有する芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ環式基を表し、また、該基は縮合環を含有してもよく、該基はLにより一置換または多置換されていてもよく、
Lは、それぞれの出現において同一または異なって、P−Sp−、H、OH、CHOH、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、
は、それぞれの場合において互いに独立に、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−OCO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−(CH−、−CFCH−、−CHCF−、−(CF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CF=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH−CH−COO−、−OCO−CH−CH−、−C(R00)−、−C(R)−または単結合を表し、
、R00は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一または異なって、H、または、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
、Rは、それぞれ互いに独立に、H、F、CHまたはCFを表し、
mは、0、1、2、3または4を表し、
nは、それぞれの出現において同一または異なって、1、2、3または4を表し、
p、qは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、ただし、p+qは1以上である。
【0099】
式Iの特に好ましい化合物は、
およびAは、それぞれ互いに独立に、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,4−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイル(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよい。)、シクロヘキサン−1,4−ジイル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよい。)、1,4−シクロヘキセニレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、ピペリジン−1,4−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,5−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイル、アントラセン−2,7−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイル、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル、6H−ベンゾ[c]クロメン−3,8−ジイル、9H−フルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル、ジベンゾフラン−3,7−ジイル、2−オキソ−2H−クロメン−7−イル、4−フェニル−2−オキソ−2H−クロメン−7−イル、4−オキソ−4H−クロメン−6−イル、4−フェニル−4−オキソ−4H−クロメン−6−イルを表し、ただし、これらの全ての基は無置換でもLで一置換または多置換されていてもよく、ただし、これらの全ての基の中でも、シクロヘキサンおよび芳香族基が非常に特に好ましく、
Lは、P、P−Sp−、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R、置換されていてもよいシリル、6〜20個のC原子を有し置換されていてもよいアリール、1〜25個、好ましくは1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、2〜25個、好ましくは2〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、ただし加えて、これらの全ての基における1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、
はハロゲンを表し、
は、P、P−Sp−、H、ハロゲン、1〜25個、好ましくは1〜12個のC原子を有する直鎖状、分岐状または環状のアルキルを表し、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、また、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。
【0100】
式Iおよびそのサブ式の化合物において、メソゲン基−(A−Z−A−および−(C≡C)−(A−Z−A−(C≡C)−は、好ましくは、共役基を表す。共役メソゲン基を含有する本発明による重合性化合物は、重合のために通常使用されるUV放射の波長範囲において特に高い吸収を有し、また、特に光開始剤を使用しなくとも迅速で完全な重合を促進することが見出された。従って、本発明による重合性化合物は、特に、PSAディスプレイにおける使用に適している。
【0101】
上および下で示される式Iおよびそのサブ式の更に好ましい化合物は、以下のものである。
【0102】
−基RおよびRの一方はP−Sp−を表し、他方はP−Sp−以外である。
【0103】
−RおよびRは、同一または異なる基P−Sp−を表す。
【0104】
−RおよびRはP−Sp−を表し、ただし、基RおよびRの一方におけるSpは単結合を表し、基RおよびRの他方におけるSpは単結合以外であり、好ましくは、この基P−Sp−が式P−Sp”−X”−と合致するように式Sp”−X”の基を表す。
【0105】
−RおよびRは同一または異なる基P−Sp−を表し、ただし、両方の基Spは単結合を表す。
【0106】
−基RおよびRの一方は基P−Sp−を表すか含有し、他方は非重合性基を表し、好ましくは、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよい。)より選択される。
【0107】
−RおよびRは、H以外である。
【0108】
−基RおよびRの一方はP−Sp−を表し、他方はH以外である。
【0109】
−P−Sp−以外である基RまたはRは、1〜12個、好ましくは、5〜12個のC原子を有するアルキル、1〜12個のC原子を有するアルコキシ、または、2〜11個のC原子を有するアルケニルを表し、ただし加えて、これらの全ての基における1個以上のH原子はFで置き換えられていてもよい。
【0110】
−RまたはRは、1〜25個、好ましくは、1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよい。
【0111】
−Spは単結合を表す。
【0112】
−Spは、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−(CHp1−O−CO−、−(CHp1−O−CO−O−、好ましくは、−(CHp1−または−(CHp1−O−を表し、ただし、p1は、1〜12、好ましくは、1〜5、特に好ましくは、1〜3の整数を表す。
【0113】
−SpまたはSp”は、1〜5個、好ましくは、1〜3個のC原子を有する基である。
【0114】
−AおよびAは、フェニレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイル、アントラセン−2,7−ジイル、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル、6H−ベンゾ[c]クロメン−3,8−ジイル(該基は、6位においてRで一置換または二置換されていてもよい。)、9H−フルオレン−2,7−ジイル(該基は、9位においてRで一置換または二置換されていてもよい。)、ジベンゾフラン−3,7−ジイル(該基は、6位においてRで一置換または二置換されていてもよい。)から成る群より選択され、ただし加えて、上記の全ての環または環系における1個または2個のCH基はNで置き換えられていてもよく、ただし、個々の環は上および下で記載される通りのLで一置換または多置換されていてもよく、ただし、Rは、好ましくは、上および下で示される好ましい意味の1つを有する。
【0115】
−Lは重合性基を表さず、含有もしない。
【0116】
−Lは非重合性基であり、好ましくは、F、Cl、−CN、および、1〜25個、特に好ましくは、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルより選択され、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよい。
【0117】
−Lは、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCNまたは−SCN、好ましくは、Fを表す。
【0118】
−Lは、1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、2〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、ただし加えて、これらの全ての基における1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。
【0119】
−LはPまたはP−Sp−を表す。
【0120】
−Zは、−O−、−CO−O−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CF=CH−、−C≡C−、単結合から成る群より選択される。
【0121】
−Zは単結合を表す。
【0122】
−mは、0、1または2、好ましくは、0または1を表す。
【0123】
−pおよびqは1を表す。
【0124】
−pおよびqの一方は0を表し、他方は1を表す。
【0125】
式Iの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0126】
【化8】

【0127】
【化9】

【0128】
【化10】

式中、P、SpおよびLは上および下で示される意味の1つを有し、基Rは、それぞれ互いに独立に、上および下でRに示される意味の1つを有し、P’は上および下でPに示される意味の1つを有し、Sp’は上および下でSpに示される意味の1つを有し、rは、0、1、2、3または4を表し、sは、0、1、2または3を表し、tは、0、1または2を表す。
【0129】
基SpおよびSp’の一方は単結合を表し、他方は単結合以外である式I1〜I11の化合物が特に好ましい。
【0130】
式Iの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0131】
【化11】

【0132】
【化12】

式中、P、P’、Sp、R、Lおよびrは、上で示される意味を有する。
【0133】
式Iおよびそのサブ式の化合物におけるPおよびP’は、好ましくは、アクリレート、フルオロアクリレートまたはメタクリレート基を表す。
【0134】
式Iおよびそのサブ式の化合物におけるSpおよびSp’は、好ましくは、−(CHp1−、−O−(CHp1−、−(CHp1−O−、−O−CO−(CHp1−、−(CHp1−O−CO−、−O−CO−O−(CHp1−、−(CHp1−O−CO−O−または単結合を表し、ただし、p1は、1〜12、好ましくは、1〜6の整数、非常に特に好ましくは、1、2または3を表し、ただし、これらの基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、PまたはP’に連結されている。
【0135】
本発明は、更に、式Iおよびそのサブ式の新規な化合物に関し、ただし、p=q=1およびR=R=P−Sp−の場合で、特に、Pが、アクリレート、グリシジルまたはエポキシド基であり、Spが1〜20個のC原子を有するアルコキシまたはオキサアルキルまたは単結合を表す場合、−(A−Z−A−は以下の基以外の基を表すことを条件として、個々の基は、上および下で示される意味または好ましい意味を有する。
【0136】
【化13】

式中、Xは、CH、NH、O、SまたはSOを表す。
【0137】
が単結合を表す式Iおよびそのサブ式の新規な化合物、特に、mが0または1のもの、および、特に、好ましくはp=q=1の場合、基−(A−Z−A−は、ビフェニル、ターフェニル、フルオレン(好ましくは、置換フルオレンを含む)、およびジベンゾフラン以外のものが特に好ましい。
【0138】
本発明は、更に、式Iの化合物を調製するための新規な中間体(式IIより選択される。)に関する。
【0139】
【化14】

式中、A1、2、Z、Sp、Sp’、p、qおよびmは、式Iまたは上および下で示される意味を有し、GおよびG’は、それぞれ互いに独立に、H原子または保護基を表す。
【0140】
適切な保護基Gは当業者に既知である。好ましい保護基は、アルキル、アシルおよびアルキルシリルまたはアリールシリル基、2−テトラヒドロピラニルまたはメトキシメチルである。
【0141】
式IIの特に好ましい中間体は、上述のサブ式I1〜I15およびI1a〜I15a(ただし、それぞれの場合においてPはG−Oを表し、それぞれの場合においてP’はO−G’を表し、ただし、GおよびG’は、好ましくは、Hを表す。)から成る群より選択される。
【0142】
これらの好ましい中間体においては、基SpおよびSp’の一方、好ましくは、Spが単結合を表し、他方、好ましくは、Sp’が単結合以外の基を表すことが好ましい。
【0143】
これらの好ましい化合物の中でも、基SpおよびSp’の一方、好ましくは、Spが単結合を表し、他方、好ましくは、Sp’が−(CHp1−を表し、ただし、p1は上で定義される通りのものが特に好ましい。
【0144】
本発明の更に好ましい実施形態において、本発明による重合性化合物は式IIIの基を含有しないか、または、式IおよびIIにおけるAおよびAは、式III以外の基を表す。
【0145】
【化15】

式中、Wは、−C(R)−、−CHCH−、−CH−O−、−O−、−CO−、−CO−O−、−S−または−N(R)−を表し、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、式IにおいてRに対して示されるP−Sp−以外の意味の1つを有するか、または、P−Sp−を表す。
【0146】
式IおよびIIおよびそれらのサブ式の化合物および中間体を調製する特に適切で好ましい方法が以下のスキームにおいて例示的に図示されており、好ましくは、下記の1つ以上の工程を含む。
【0147】
式IおよびIIおよびそれらのサブ式の化合物および中間体は、当業者に既知で、例えば、Houben−Weyl、Methoden der organi−schen Chemie [Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag、Stuttgartなどの有機化学の標準的な著作に記載される方法に類似して調製できる。
【0148】
例えば、基Pを含有し対応する酸、酸誘導体またはハロゲン化された化合物を使用し、式IIの中間体をエステル化またはエーテル化して、式Iの化合物を合成する。スキーム1(式中、RはHまたはCHを表す。)において例示的に図示される通り、塩基および任意成分として4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下において、例えば、(メタ)アクリロイルクロリドまたは(メタ)アクリル酸無水物などの酸誘導体を使用し、式IIの対応するアルコール(ただし、G=G’=H)をエステル化することによって、式Iの化合物(ただし、RおよびRがP−Sp−を表し、基Pがアクリレートまたはメタクリレート基を表す。)を得ることができる。更に、また、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を使用するシュテークリヒ法により、脱水試薬の存在下において、(メタ)アクリル酸を使用しても、アルコールをエステル化できる。
【0149】
【化16】

例えば、E.Negishi、L.Anastasia、Chem.Rev.2003年、103巻、1979頁において記載される通り、例えば、薗頭反応によって、アルキン基を導入できる(スキーム2)。スキーム2(X=ハロゲン、トリフラート)に示される通り、適切なアリールハライドを末端アルキノールと反応させることによって、化合物IIを得ることができる。対称的に置換された場合に対応する状況を適用する(スキーム3)。
【0150】
【化17】

【0151】
【化18】

異なる反応性の異なるハロゲン置換基、例えば、X=臭素、X’=ヨウ素を有する二ハロゲン化された構築ブロックを使用し、同様の態様によって、異なるスペーサー基を含有するジアルキンを得ることができ(スキーム3)、それにより、2種類の異なるアルキンの段階的な導入が可能となる。あるいは、一ハロゲン化されたヒドロキシル化合物より反応を開始でき、アルキンに転化後、それを引き続いて変性できて、トリフラートを与え、それを、薗頭反応において、それ自身で反応できる(スキーム4)。
【0152】
【化19】

PSAディスプレイを製造するために、電圧を印加して、LCディスプレイの基板間でLC媒体中において、その場での重合により、重合性化合物を重合または架橋(1つの化合物が2個以上の重合性基を含有する場合)する。重合は1つの工程で行うことができる。また、最初に、プレチルト角を生成するために電圧を印加して第1工程における重合を行い、続いて、第2重合工程において電圧を印加せずに、第1工程において反応しなかった化合物を重合または架橋する(「最終硬化」)ことも可能である。
【0153】
適切で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合で、好ましくは光重合であり、特にはUV光重合である。また、任意成分として、ここに1種類以上の開始剤を加えることもできる。重合に適切な条件および開始剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、商業的に入手可能な光重合開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba社)がフリーラジカル重合に適する。開始剤を用いる場合、開始剤の割合は、好ましくは、0.001〜5重量%、特に好ましくは、0.001〜1重量%である。
【0154】
また、本発明による重合性化合物は開始剤のない重合にも適しており、このことは、例えば、材料費がより低く、特に、開始剤またはその劣化生成物の残存し得る量によるLC媒体の不純物がより少ないなどの特筆すべき利点を伴う。よって、また、開始剤を加えることなく、重合を行うこともできる。よって、好ましい実施形態において、LC媒体は重合開始剤を含まない。
【0155】
また、例えば、保存または輸送中におけるRMの好ましくない自発的な重合を防止するために、重合性成分A)またはLC媒体は1種類以上の安定剤を含んでもよい。安定剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba社)からの商業的に入手可能な安定剤、例えば、Irganox(登録商標)1076などが特に適切である。安定剤を用いる場合、安定剤の割合は、RMまたは重合性成分A)の総量を基礎として、好ましくは、10〜10,000ppm、特に好ましくは、50〜500ppmである。
【0156】
PSAディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体は、好ましくは、5重量%未満、特に好ましくは、1重量%未満、非常に特に好ましくは、0.5重量%未満の重合性化合物、特には、上で与えられる式の重合性化合物を含む。
【0157】
1種類、2種類または3種類の本発明による重合性化合物を含むLC媒体が特に好ましい。
【0158】
更に、重合性成分(成分A)が本発明による重合性化合物を排他的に含むLC媒体が好ましい。
【0159】
更に、成分B)がネマチック液晶層を有するLC化合物またはLC混合物であるLC媒体が好ましい。
【0160】
更に、本発明によるアキラルな重合性化合物と、成分A)および/またはB)の化合物がアキラルな化合物から成る群より排他的に選択されるLC媒体とが好ましい。
【0161】
更に、重合性成分または成分A)が、1個の重合性基を含有する本発明による1種類以上の重合性化合物(一反応性)と、2個以上、好ましくは2個の重合性基を含有する本発明による1種類以上の重合性化合物(二反応性または多反応性)とを含むLC媒体が好ましい。
【0162】
更に、重合性成分または成分A)が、2個の重合性基を含有する本発明による重合性化合物(二反応性)を排他的に含むPSAディスプレイおよびLC媒体が好ましい。
【0163】
本発明によるLC媒体における重合性成分または成分A)の割合は、好ましくは、5%未満、特に好ましくは、1%未満、非常に特に好ましくは、0.5%未満である。
【0164】
本発明によるLC媒体における液晶成分または成分B)の割合は、好ましくは、95%より多く、特に好ましくは、99%より多い。
【0165】
本発明による重合性化合物は個別に重合できるが、また、本発明による2種類以上の重合性化合物を含む混合物、または、本発明による1種類以上の重合性化合物と、好ましくは、メソゲンまたは液晶である1種類以上の更なる重合性化合物(コモノマー)とを含む混合物を重合することも可能である。そのような混合物を重合する場合、コポリマーが形成される。本発明は、更に、上および下で述べる重合性混合物に関する。重合性化合物およびコモノマーはメソゲンまたは非メソゲン、好ましくは、メソゲンまたは液晶である。
【0166】
特に、PSAディスプレイにおける使用に適切で好ましいメソゲンコモノマーは、例えば、以下の式より選択される。
【0167】
【化20】

【0168】
【化21】

【0169】
【化22】

【0170】
【化23】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
およびPは、それぞれ互いに独立に、重合性基(好ましくは、Pに対して、上および下で示される意味の1つを有する。)、特に好ましくは、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、オキセタン、ビニルオキシまたはエポキシド基を表し、
SpおよびSpは、それぞれ互いに独立に、単結合またはスペーサー(好ましくは、Spに対して、上および下で示される意味の1つを有する。)を表し、特に好ましくは、−(CHp1−、−(CHp1−O−、−(CHp1−CO−O−または−(CHp1−O−CO−O−を表し、式中、p1は1〜12の整数であり、ただし、最後に述べた基において隣接する環への連結はO原子を介して起こり、
ただし加えて、存在する基P−Sp−およびP−Sp−の少なくとも1つがRaaを表さないことを条件として、1個以上の基P−Sp−およびP−Sp−は基Raaを表してもよく、
aaは、H、F、Cl、CN、または、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、C(R)=C(R00)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、CNまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、特に好ましくは、直鎖状または分岐状で一フッ素化または多フッ素化されていてもよく1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし、アルケニルおよびアルキニル基は少なくとも2個のC原子を有し、分岐状の基は少なくとも3個のC原子を有する。)を表し、
、R00は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一または異なって、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、F、CHまたはCFを表し、
は、−O−、−CO−、−C(R)−または−CFCF−を表し、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CO−O−、−O−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−または−(CH−を表し、ただし、nは、2、3または4であり、
Lは、それぞれの出現において同一または異なって、F、Cl、CN、または、直鎖状または分岐状で一フッ素化または多フッ素化されていてもよく1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、好ましくは、Fを表し、
L’およびL”は、それぞれ互いに独立に、H、FまたはClを表し、
rは、0、1、2、3または4を表し、
sは、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、
xは、0または1を表す。
【0171】
式M1〜M29の化合物において、
【0172】
【化24】

ただし、Lは、それぞれの出現において同一または異なって、上および下で与えられる意味の1つを有し、好ましくは、F、Cl、CN、NO、CH、C、C(CH、CH(CH、CHCH(CH)C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OCまたはP−Sp−、非常に好ましくは、F、Cl、CN、CH、C、OCH、COCH、OCFまたはP−Sp−、より好ましくは、F、Cl、CH、OCH、COCHまたはOCF、特に、FまたはCHである。
【0173】
上記の重合性化合物に加え、本発明によるLCディスプレイにおいて使用するためのLC媒体は、1種類以上、好ましくは2種類以上の低分子量(即ち、モノマーまたは非重合の)化合物を含むLC混合物(「ホスト混合物」)を含む。低分子量化合物は、重合性化合物の重合のために使用される条件下において重合反応に対して安定または非反応性である。原理的には、従来のVAおよびOCBディスプレイにおける使用に適する任意のLC混合物がホスト混合物として適する。適切なLC混合物は当業者に既知で文献に記載されており、例えば、欧州特許出願公開第1 378 557号公報におけるVAディスプレイ中の混合物、および、欧州特許出願公開第1 306 418号公報およびドイツ国特許出願公開第102 24 046号公報におけるOCBディスプレイ中の混合物である。
【0174】
第1の好ましい実施形態において、LC媒体は、負の誘電異方性を有する化合物を基礎とするLCホスト混合物を含有する。その様なLC媒体は、特に、PSA−VAディスプレイにおける使用に適する。その様なLC媒体の特に好ましい実施形態を、以下の項目a)〜x)に述べる。
【0175】
a)式CYおよび/またはPYの1種類以上の化合物を含むLC媒体。
【0176】
【化25】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
aは、1または2を表し、
bは、0または1を表し、
【0177】
【化26】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキル(ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよい。)、好ましくは、1〜6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを表し、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CO−O−、−O−CO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CH−CHO−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。
【0178】
好ましくは、基LおよびLの両方がFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表すか、または、基LおよびLの両方がFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表す。
【0179】
式CYの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0180】
【化27】

【0181】
【化28】

【0182】
【化29】

【0183】
【化30】

【0184】
【化31】

式中、aは1または2を表し、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0185】
式PYの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0186】
【化32】

【0187】
【化33】

【0188】
【化34】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0189】
b)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0190】
【化35】

式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【0191】
【化36】

【0192】
【化37】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−O−CO−または−CO−O−で置き換えられていてもよく、
は、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CO−O−、−O−CO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−または単結合、好ましくは、単結合を表す。
【0193】
式ZKの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0194】
【化38】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0195】
c)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0196】
【化39】

式中、個々の基は、それぞれの出現において同一または異なって、以下の意味を有する:
およびRは、それぞれ互いに独立に、上でRに示される意味の1つを有し、
【0197】
【化40】

【0198】
【化41】

および、
eは、1または2を表す。
【0199】
式DKの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0200】
【化42】

【0201】
【化43】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0202】
d)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0203】
【化44】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
【0204】
【化45】

fは、0または1を表し、
およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CO−O−、−O−CO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
およびLは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。
【0205】
好ましくは、基LおよびLの両方がFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表す。
【0206】
式LYの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0207】
【化46】

【0208】
【化47】

【0209】
【化48】

式中、Rは上で示される意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表し、vは1〜6の整数を表す。Rは、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル、または、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル、特に、CH、C、n−C、n−C、n−C11、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0210】
e)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0211】
【化49】

式中、alkylはC1〜6−アルキルを表し、LはHまたはFを表し、Xは、F、Cl、OCF、OCHFまたはOCH=CFを表す。XがFを表す式G1の化合物が特に好ましい。
【0212】
f)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0213】
【化50】

【0214】
【化51】

式中、RはRに上で示される意味の1つを有し、alkylはC1〜6−アルキルを表し、dは0または1を表し、zおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6の整数を表す。これらの化合物におけるRは、特に好ましくは、C1〜6−アルキルまたは−アルコキシまたはC2〜6−アルケニルであり、dは、好ましくは、1である。本発明によるLC媒体は、好ましくは、上述の式の1種類以上の化合物を、5重量%以上の量で含む。
【0215】
g)以下の式から成る群より選択される1種類以上のビフェニル化合物を追加的に含むLC媒体。
【0216】
【化52】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0217】
LC混合物における式B1〜B3のビフェニル類の割合は、好ましくは、少なくとも3重量%、特に5重量%以上である。
【0218】
式B2の化合物が特に好ましい。
【0219】
式B1〜B3の化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0220】
【化53】

式中、alkylは、1〜6個のC原子を有するアルキル基を表す。本発明による媒体は、特に好ましくは、式B1aおよび/またはB2cの1種類以上の化合物を含む。
【0221】
h)以下の式の1種類以上のターフェニル化合物を追加的に含むLC媒体。
【0222】
【化54】

式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、上でRに示される意味の1つを有し、および
【0223】
【化55】

式中、Lは、FまたはCl、好ましくは、Fを表し、Lは、F、Cl、OCF、CF、CH、CHFまたはCHF、好ましくは、Fを表す。
【0224】
式Tの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0225】
【化56】

【0226】
【化57】

【0227】
【化58】

式中、Rは1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、Rは2〜7個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表し、mは1〜6の整数を表す。Rは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0228】
Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを表す。
【0229】
本発明によるLC媒体は、好ましくは、式Tおよびその好ましいサブ式のターフェニルを、0.5〜30重量%、特に、1〜20重量%の量で含む。
【0230】
式T1、T2、T3およびT21の化合物が特に好ましい。これらの化合物において、Rは、好ましくは、それぞれ1〜5個のC原子を有するアルキル、更に、アルコキシを表す。
【0231】
混合物のΔnの値が0.1以上となる場合、好ましくは、本発明による混合物中においてターフェニルを用いる。好ましい混合物は、好ましくは、化合物T1〜T22の群より選択され、2〜20重量%の1種類以上の式Tのターフェニル化合物を含む。
【0232】
i)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0233】
【化59】

【0234】
【化60】

式中、RおよびRは上で示される意味を有し、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニルを表す。
【0235】
好ましい媒体は、式O1、O3およびO4より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0236】
k)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に、好ましくは3重量%より多く、特には5重量%以上、非常に特に好ましくは5〜30重量%の量で含むLC媒体。
【0237】
【化61】

式中、
【0238】
【化62】

は、H、CH、Cまたはn−Cを表し、(F)は任意成分としてのフッ素置換基を表し、qは、1、2または3を表し、RはRに示される意味の1つを有する。
【0239】
式FIの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0240】
【化63】

【0241】
【化64】

式中、Rは、好ましくは、直鎖状のアルキルを表し、Rは、CH、Cまたはn−Cを表す。式FI1、FI2およびFI3の化合物が特に好ましい。
【0242】
m)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0243】
【化65】

式中、RはRに示される意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0244】
n)例えば、以下の式から成る群より選択される化合物などのテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含有する1種類以上化合物を追加的に含むLC媒体。
【0245】
【化66】

【0246】
【化67】

式中、R10およびR11は、それぞれ互いに独立に、Rに示される意味の1つを有し、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニルを表し、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、−C−、−CH=CH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CHCHCH−、−CHCHCH=CH−、−CHO−、−OCH−、−CO−O−、−O−CO−、−C−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CH−または単結合を表す。
【0247】
o)以下の式の1種類以上のジフルオロジベンゾクロマンおよび/またはクロマンを追加的に、好ましくは3〜20重量%の量、特に3〜15重量%の量で含むLC媒体。
【0248】
【化68】

式中、
11およびR12は、それぞれ互いに独立に、上で示される意味を有し、
環Mは、トランス−1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、
は、−C−、−CHO−、−OCH−、−CO−O−または−O−CO−であり、
cは、0または1である。
【0249】
式BC、CRおよびRCの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0250】
【化69】

【0251】
【化70】

【0252】
【化71】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表し、cは1または2であり、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0253】
1種類、2種類または3種類の式BC−2の化合物を含む混合物が、非常に特に好ましい。
【0254】
p)以下の式の1種類以上のフッ素化されたフェナントレンおよび/またはジベンゾフランを追加的に含むLC媒体。
【0255】
【化72】

式中、R11およびR12は、それぞれ互いに独立に、上で示される意味を有し、bは0または1を表し、LはFを表し、rは1、2または3を表す。
【0256】
式PHおよびBFの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0257】
【化73】

式中、RおよびR’は、それぞれ互いに独立に、1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表す。
【0258】
q)特に、式Iまたはそのサブ式の本発明による重合性化合物およびコモノマーは別として、末端ビニルオキシ基(−O−CH=CH)を含有する化合物を含まないLC媒体。
【0259】
r)好ましくは、特に、式Iまたはそのサブ式の本発明による重合性化合物より選択され、1〜5種類、好ましくは、1、2または3種類の重合性化合物を含むLC媒体。
【0260】
s)特に、式Iまたはそのサブ式の重合性化合物の割合は、混合物全体において、0.05〜5%、好ましくは、0.1〜1%であるLC媒体。
【0261】
t)1〜8種類、好ましくは1〜5種類の式CY1、CY2、PY1および/またはPY2の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の混合物全体における割合は、好ましくは5〜60%、特に好ましくは10〜35%である。これらの個々の化合物の含有量は、好ましくは、それぞれの場合で2〜20%である。
【0262】
u)1〜8種類、好ましくは1〜5種類の式CY9、CY10、PY9および/またはPY10の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の混合物全体における割合は、好ましくは5〜60%、特に好ましくは10〜35%である。これらの個々の化合物の含有量は、好ましくは、それぞれの場合で2〜20%である。
【0263】
v)1〜10種類、好ましくは1〜8種類の式ZKの化合物、特に、式ZK1、ZK2および/またはZK6の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の混合物全体における割合は、好ましくは3〜25%、特に好ましくは5〜45%である。これらの個々の化合物の含有量は、好ましくは、それぞれの場合で2〜20%である。
【0264】
w)混合物全体における式CY、PYおよびZKの化合物の割合は70%を超え、好ましくは、80%を超えるLC媒体。
【0265】
x)プレチルト角が、好ましくは、85°以下、特に好ましくは、80°以下であるPSA−VAディスプレイ。
【0266】
第2の好ましい実施形態において、LC媒体は、正の誘電異方性を有する化合物を基礎とするLCホスト混合物を含有する。その様なLC媒体は、特に、PSA−OCB−、PSA−TN−、PSA−正−VA−、PSA−IPS−またはPSA−FFS−ディスプレイにおける使用に適している。
【0267】
式AAおよびBBの化合物から成る群より選択される1種類以上の化合物を含有し、任意成分として、式AAおよび/またはBBの化合物に加え、式CCの1種類以上の化合物を含有する、この第2の好ましい実施形態であるLC媒体が特に好ましい。
【0268】
【化74】

【0269】
【化75】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
【0270】
【化76】

【0271】
【化77】

21、R31、R41、R42は、それぞれ互いに独立に、1〜9個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルまたはフルオロアルキル、または、2〜9個のC原子を有するアルケニルであり、
は、F、Cl、1〜6個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2〜6個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシであり、
31は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−−CH=CH−、トランス−−CF=CF−、−CHO−または単結合、好ましくは、−CHCH−、−COO−、トランス−−CH=CH−または単結合、特に好ましくは、−COO−、トランス−−CH=CH−または単結合であり、
41、Z42は、−CHCH−、−COO−、トランス−−CH=CH−、トランス−−CF=CF−、−CHO−、−CFO−、−C≡C−または単結合、好ましくは、単結合であり、
21、L22、L31、L32は、HまたはFであり、
gは、1、2または3であり、
hは、0、1、2または3であり、
は、好ましくは、F、Cl、CF、CHF、OCF、OCHF、OCFHCF、OCFHCHF、OCFHCHF、OCFCH、OCFCHF、OCFCHF、OCFCFCHF、OCFCFCHF、OCFHCFCF、OCFHCFCHF、OCFCFCF、OCFCFCClF、OCClFCFCFまたはCH=CF、非常に好ましくは、FまたはOCFである。
【0272】
式AAの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0273】
【化78】

式中、A21、R21、X、L21およびL22は、式AAにおいて与えられる意味を有し、L23およびL24は、それぞれ互いに独立に、HまたはFであり、Xは、好ましくは、Fである。式AA1およびAA2の化合物が特に好ましい。
【0274】
式AA1の特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0275】
【化79】

式中、Rは式AA1においてR21に与えられる意味の1つを有し、X、L21およびL22は、式AA1において与えられる意味を有し、L23、L24、L25およびL26は、それぞれ互いに独立に、HまたはFであり、Xは、好ましくは、Fである。
【0276】
式AA1の非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0277】
【化80】

式中、Rは式AA1においてR21に与えられる意味を有する。
【0278】
式AA2の非常に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0279】
【化81】

【0280】
【化82】

式中、Rは式AA1においてR21に与えられる意味を有し、X、L21およびL22は、式AAにおいて与えられる意味を有し、L23、L24、L25およびL26は、それぞれ互いに独立に、HまたはFであり、Xは、好ましくは、Fである。
【0281】
式AA2の非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0282】
【化83】

【0283】
【化84】

式中、Rは式AA1においてR21に与えられる意味を有する。
【0284】
式AA3の特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0285】
【化85】

式中、Rは式AA1においてR21に与えられる意味を有し、X、L21およびL22は、式AA3において与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、Fである。
【0286】
式AA4の特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0287】
【化86】

式中、Rは式AA1においてR21に与えられる意味を有する。
【0288】
式BBの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0289】
【化87】

式中、A31、A32、R31、X、L31およびL32は、式BBにおいて与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、Fである。式BB1およびBB2の化合物が特に好ましい。
【0290】
式BB1の特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0291】
【化88】

式中、Rは式BB1においてR31に与えられる意味を有し、X、L31およびL32は、式BB1において与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、Fである。
【0292】
式BB1の非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0293】
【化89】

式中、Rは式BB1においてR31に与えられる意味を有する。
【0294】
式BB1bの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0295】
【化90】

式中、Rは式BB1においてR31に与えられる意味を有する。
【0296】
式BB2の特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0297】
【化91】

【0298】
【化92】

式中、Rは式BB2においてR21に与えられる意味の1つを有し、X、L31およびL32は、式BB2において与えられる意味を有し、L33、L34、L35およびL36は、それぞれ互いに独立に、HまたはFであり、Xは、好ましくは、Fである。
【0299】
式BB2の非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0300】
【化93】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0301】
式BB2bの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0302】
【化94】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0303】
式BB2cの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0304】
【化95】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0305】
式BB2dおよびBB2eの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0306】
【化96】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0307】
式BB2fの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0308】
【化97】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0309】
式BB2gの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0310】
【化98】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0311】
式BB2hの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0312】
【化99】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0313】
式BB2iの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0314】
【化100】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0315】
式BB2kの非常に特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0316】
【化101】

式中、Rは式BB2においてR31に与えられる意味を有する。
【0317】
式BB1および/またはBB2の化合物に代えるか加えて、また、LC媒体は、上で定義される通りの式BB3の1種類以上の化合物を含んでもよい。
【0318】
式BB3の特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0319】
【化102】

式中、Rは式BB3においてR31に与えられる意味を有する。
【0320】
好ましくは、この第2の好ましい実施形態によるLC媒体は、式AAおよび/またはBBの化合物に加えて、−1.5〜+3の範囲内の誘電異方性を有し、好ましくは、上で定義される通りの式CCの化合物群より選択される1種類以上の誘電的に中性の化合物を含む。
【0321】
式CCの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0322】
【化103】

【0323】
【化104】

式中、R41およびR42は式CCにおいて与えられる意味を有し、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、または、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを表し、LはHまたはFである。
【0324】
好ましくは、この第2の好ましい実施形態によるLC媒体は、式CCの誘電的に中性な化合物に加えるか代えて、−1.5〜+3の範囲内の誘電異方性を有し、式DDの化合物群より選択される1種類以上の誘電的に中性の化合物を含む。
【0325】
【化105】

式中、A41、A42、Z41、Z42、R41、R42およびhは、式CCにおいて与えられる意味を有する。
【0326】
式DDの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0327】
【化106】

式中、R41およびR42は式DDにおいて与えられる意味を有し、R41は、好ましくは、アルキルを表し、式DD1において、R42は、好ましくは、アルケニル、特に好ましくは、−(CH−CH=CH−CHを表し、式DD2において、R42は、好ましくは、アルキル、−(CH−CH=CHまたは(CH−CH=CH−CHを表す。
【0328】
本発明によるLC媒体において、式AAおよびBBの化合物は、混合物全体において、好ましくは、2%〜60%、より好ましくは、3%〜35%、非常に特に好ましくは、4%〜30%の濃度において使用する。
【0329】
本発明によるLC媒体において、式CCおよびDDの化合物は、混合物全体において、好ましくは、2%〜70%、より好ましくは、5%〜65%、更により好ましくは、10%〜60%、非常に特に好ましくは、10%〜、好ましくは、15%〜55%の濃度において使用する。
【0330】
上記の重合された化合物と、上述の好ましい実施形態a)〜y)の化合物を組み合わせることにより、本発明によるLC媒体において、低い閾電圧、低い回転粘度および非常に良好な低温安定性と、同時に、常に高い透明点および高いHR値とが生じ、PSAディスプレイにおいて特に低いプレチルト角を迅速に確立できる。特に、先行技術からの媒体と比較し、PSAディスプレイにおいて、LC媒体は、著しく短縮された応答時間、また、特に、短縮された中間調(灰色遮光)応答時間を示す。
【0331】
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも80K、特に好ましくは、少なくとも100Kのネマチック相範囲、および、20℃において、250mPa・s以下、好ましくは、200mPa・s以下の回転粘度を有する。
【0332】
本発明によるVAタイプのディスプレイにおいては、スイッチが切れている状態で、LC媒体層における分子は電極表面に垂直に配向しているか(ホメオトロピック的)、または、チルトホメオトロピック配向を有している。電極に電圧を印加すると、分子長軸が電極表面に平行なLC分子の再配向が起きる。
【0333】
特に、PSA−VAタイプのディスプレイにおいて使用するためで、第1の好ましい実施形態による負の誘電異方性を有する化合物を基礎とする本発明によるLC媒体は、20℃および1kHzにおいて、好ましくは、−0.5〜−10、特に、−2.5〜−7.5の負の誘電異方性Δεを有する。
【0334】
PSA−VAタイプのディスプレイにおいて使用するためで、本発明によるLC媒体における複屈折率Δnは、好ましくは、0.16未満、特に好ましくは、0.06〜0.14、非常に特に好ましくは、0.07〜0.12である。
【0335】
本発明によるOCBタイプのディスプレイにおいては、LC媒体層における分子は「ベンド(bend)」配向を有している。電圧を印加すると、分子長軸が電極表面に垂直なLC分子の再配向が起きる。
【0336】
PSA−OCBタイプのディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体は、好ましくは、第2の好ましい実施形態による正の誘電異方性を有する化合物を基礎とし、20℃および1kHzにおいて、好ましくは、+4〜+17の正の誘電異方性Δεを有するのものである。
【0337】
PSA−OCBタイプのディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体における複屈折率Δnは、好ましくは、0.14〜0.22、特に好ましくは、0.16〜0.22である。
【0338】
PSA−TN−、PSA−正−VA−、PSA−IPS−またはPSA−FFS−タイプのディスプレイにおいて使用するためで、第2の好ましい実施形態による正の誘電異方性を有する化合物を基礎とする本発明によるLC媒体は、20℃および1kHzにおいて、好ましくは、+2〜+30、特に好ましくは、+3〜+20の正の誘電異方性Δεを有する。
【0339】
PSA−TN−、PSA−正−VA−、PSA−IPS−またはPSA−FFS−タイプのディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体における複屈折率Δnは、好ましくは、0.07〜0.15、特に好ましくは、0.08〜0.13である。
【0340】
また、本発明によるLC媒体は、当業者に既知で文献に記載されている、例えば、重合開始剤、禁止剤、安定剤、表面活性化物質またはキラルドーパントなどの更なる添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は重合性でも非重合性でもよい。従って、重合性の添加剤は重合性成分または成分A)に属すると見なす。従って、非重合性の添加剤は非重合性成分または成分B)に属すると見なす。
【0341】
LC媒体は、例えば、1種類以上のキラルドーパント、好ましくは、下の表Bからの化合物から成る群より選択されるものを含有してよい。
【0342】
更に、例えば、0〜15重量%の多色性色素、更に、導電性を向上するために、ナノ粒子、導電性塩、好ましくは、エチルジメチルドデシルアンモニウム4−ヘキソキシベンゾエート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.24巻、249〜258頁(1973年)参照)、または、ネマチック相の誘電異方性、粘度および/または配向を改変するための物質をLC媒体に加えることも可能である。このタイプの物質は、例えば、独国特許出願公開第22 09 127号公報、独国特許出願公開第22 40 864号公報、独国特許出願公開第23 21 632号公報、独国特許出願公開第23 38 281号公報、独国特許出願公開第24 50 088号公報、独国特許出願公開第26 37 430号公報および独国特許出願公開第28 53 728号公報に記載されている。
【0343】
本発明によるLC媒体の好ましい実施形態a)〜z)の個々の成分は既知であるか、それらを調製する方法は文献に記載されている標準的な方法に基づいているため、それらを調製する方法は当業者によって先行技術より容易に導くことができるかの何れかである。式CYの対応する化合物は、例えば、欧州特許出願公開第0 364 538号公報に記載されている。式ZKの対応する化合物は、例えば、独国特許出願公開第26 36 684号公報および独国特許出願公開第33 21 373号公報に記載されている。
【0344】
本発明に従って使用できるLC媒体は、例えば、1種類以上の上述の化合物を、上で定義される通りの1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として、更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することで、それ自身は従来の様式によって調製される。一般に、より少量で使用される成分の所望量を、主要な構成成分を構成する成分に、有利には昇温して、溶解する。また、有機溶媒中における、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール中における成分の溶液を混合し、完全に混合後、例えば蒸留により、溶媒を再び除去することも可能である。本発明は、更に、本発明によるLC媒体を調製する方法に関する。
【0345】
また、本発明によるLC媒体が、例えば、H、N、O、Cl、Fが対応する同位体に置き換えられた化合物も含んでよいことは、当業者に言うまでもない。
【0346】
本発明によるLCディスプレイの構造は、冒頭で引用した先行技術に記載される通りのPSAディスプレイにおける通常の構成に対応している。突起のない構成が好ましく、特に加えて、カラーフィルター側の電極が構造化されておらず、TFT側の電極のみがスロットを有するものが好ましい。PSA−VAディスプレイ用に特に適切で好ましい電極構造は、例えば、米国特許出願公開第2006/0066793号公報に記載されている。
【0347】
以下の例は、本発明を限定することなく本発明を説明する。しかしながら、それらは、当業者に対して、好ましく用いられる化合物、それらのそれぞれの濃度およびそれらの互いの組み合わせの好ましい混合の考え方を示す。加えて、例は、どのような特性および特性の組み合わせが利用できるかを例示する。
【0348】
以下の略称を使用する:
(n、m、z:それぞれの場合において互いに独立に、1、2、3、4、5または6)
<表A>
【0349】
【表1】

【0350】
【表2】

【0351】
【表3】

【0352】
【表4】

本発明の好ましい実施形態において、本発明によるLC媒体は、表Aからの化合物から成る群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0353】
表Bに、本発明によるLC媒体に添加できる可能なキラルドーパントを示す。
<表B>
【0354】
【表5】

【0355】
【表6】

LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特には0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%のドーパントを含む。LC媒体は、好ましくは、表Bからの化合物から成る群より選択される1種類以上のドーパントを含む。
【0356】
表Cに、本発明によるLC媒体に添加できる可能な安定剤を示す(nは、ここで、1〜12の整数、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7または8を表し、末端のメチル基は示していない)。
<表C>
【0357】
【表7】

【0358】
【表8】

【0359】
【表9】

【0360】
【表10】

【0361】
【表11】

LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特には1ppm〜5重量%、特に好ましくは1ppm〜1重量%の安定剤を含む。LC媒体は、好ましくは、表Cからの化合物から成る群より選択される1種類以上の安定剤を含む。
【0362】
表Dに、本発明に従うLC媒体において、好ましくは、反応性メソゲン化合物として使用できる例示化合物を示す。
<表D>
【0363】
【表12】

【0364】
【表13】

【0365】
【表14】

【0366】
【表15】

【0367】
【表16】

【0368】
【表17】

本発明の好ましい実施形態において、メソゲン媒体は、表Dからの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0369】
加えて、以下の略称および記号を使用する:
は20℃における容量閾電圧[V]であり、
は20℃および589nmにおける異常屈折率であり、
は20℃および589nmにおける通常屈折率であり、
Δnは20℃および589nmにおける光学的異方性であり、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに垂直な誘電率であり、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに平行な誘電率であり、
Δεは20℃および1kHzにおける誘電異方性であり、
cl.p.、T(N,I)は透明点[℃]であり、
γは20℃における回転粘度[mPa・s]であり、
は20℃における「スプレイ(splay)」変形に対する弾性定数[pN]であり、
は20℃における「ツイスト(twist)」変形に対する弾性定数[pN]であり、
は20℃における「ベンド(bend)」変形に対する弾性定数[pN]である。
【0370】
他に明記しない限り、本出願において全ての濃度は重量パーセントで示され、対応する混合物全体に関し、全ての固体または液晶成分を含み、溶媒を含まない。
【0371】
他に明記しない限り、例えば、融点T(C,N)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの本出願において示される全ての温度の値は摂氏度(℃)で示される。m.p.は融点を表し、cl.p.は透明点である。更に、Cは結晶状態であり、Nはネマチック相であり、Sはスメクチック相であり、Iは等方相である。これらの記号の間のデータは、転移温度を表す。
【0372】
全ての物理的特性は「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月、ドイツ国メルク社に従って決定されるか決定されたものであり、それぞれの場合で他に明示しない限り、20℃の温度が適用され、Δnは589nmで決定され、Δεは1kHzで決定される。
【0373】
本発明については、用語「閾電圧」は、他に明示しない限り、フレデリックス閾値としても既知の容量閾値(V)に関する。また、例において、一般的に通常であるが、10%相対コントラストに対する光学的閾値(V10)も示す場合がある。
【0374】
容量閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは20μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行なガラス製外板から成り、それぞれの外板は内側に電極層および最上部にラビングされていないポリイミド配向層を有しており、配向層には液晶分子のホメオトロピックエッジ配向に効果がある。
【0375】
チルト角の測定用に使用されるディスプレイまたは試験用セルは4μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行なガラス製外板から成り、それぞれの外板は内側に電極層および最上部にポリイミド配向層を有しており、ただし、2つのポリイミド層は互いに逆平行にラビングされており、液晶分子のホメオトロピックエッジ配向に効果がある。
【0376】
重合性化合物は、所定の時間で規定の強度のUVA光(通常、365nm)での照射によって、同時に電圧をディスプレイに印加(通常、10V〜30Vの交流、1kHz)して、ディスプレイまたは試験用セル内で重合する。例においては、他に示さない限り、28mW/cmの水銀蒸気ランプを使用し、365nmの帯域通過フィルターが装着された標準的なUVメーター(モデル Ushio UNIメーター)を使用して強度を測定する。
【0377】
チルト角は、結晶回転実験(Autronic−Melchers TBA−105)によって決定される。ここで、低い値(即ち、角度90°から大きく外れている)が大きなチルトに対応する。
【0378】
VHR値を以下の通り測定する:0.3%の重合性モノマー化合物をLCホスト混合物に加え、結果として生じる混合物をTN−VHR試験用セル(90°においてラビング、TN−ポリイミド配向層、層厚dは、およそ4μm)中に導入する。1V、60Hz、64μ秒パルスにおいて2時間のUV曝露(日照試験)の前後における、100℃での5分後のHR値を決定する(測定装置:Autronic−Melchers VHRM−105)。
【実施例】
【0379】
<例1>
<4’−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ビフェニル−4−イル2−メチルアクリレート(1)>
<1.1 4’−(4−ヒドロキシブタ−1−イニル)ビフェニル−4−オール>
【0380】
【化107】

17.2g(69.0mmol)の4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル、10.0g(143mmol)のブタ−3−イン−1−オール、2.00g(2.85mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、0.7gのヨウ化銅(I)および25ml(178mmol)のジイソプロピルアミンを、150mlのTHF中において一晩、還流下で加熱する。引き続き、バッチを200mlのMTBエーテルに加え、400mlの水を加え、塩酸を使用して混合物を酸性とする。水相を分離し、酢酸エチルで3回抽出する。合わされた有機相を真空中で蒸発させ、残渣をシリカゲルに通し、ジクロロメタン/酢酸エチル(3:1)で濾過する。トルエンより粗生成物を結晶化し、無色の固体として、4’−(4−ヒドロキシブタ−1−イニル)ビフェニル−4−オールを与える。
【0381】
<1.2 4’−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ビフェニル−4−イル2−メチルアクリレート(1)>
【0382】
【化108】

13.2g(55.4mmol)の4’−(4−ヒドロキシブタ−1−イニル)ビフェニル−4−オールを100mlのジクロロメタン中に溶解し、22ml(159mmol)トリエチルアミンを氷冷しながら添加後、10mlのジクロロメタン中の14.0g(134mmol)の塩化アクリロイルの溶液を添加する。1時間後、塩基性酸化アルミニウムおよびシリカゲルに通してバッチを濾過し、蒸発させる。エタノールより結晶化し、融点が86℃の無色の結晶として、4’−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ビフェニル−4−イル2−メチルアクリレート(1)を与える。
【0383】
【表18】

【0384】
<例2>
<4−{4’−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ビフェニル−4−イル}ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(2)>
【0385】
【化109】

例1に類似して、4,4’−ジブロモビフェニルより、融点が86℃の無色の固体として、4−{4’−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ビフェニル−4−イル}ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(2)を与える。
【0386】
【表19】

【0387】
<例3>
<4−{6−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ナフタレン−2−イル}ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(3)>
【0388】
【化110】

例2に類似して、2,5−ジブロモナフタレンより、融点が93℃の無色の固体として、4−{6−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ナフタレン−2−イル}ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(3)を与える。
【0389】
<例4>
<4’−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)プロパ−1−イニル]ビフェニル−4−イル2−メチルアクリレート(4)>
【0390】
【化111】

4’−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]ビフェニル−4−イル2−メチルアクリレート(4)を例1に類似して調製し、融点が80℃の無色の結晶を与える。
【0391】
【表20】

【0392】
<例5>
<6−[3−(2−メチルアクリロイルオキシ)プロパ−1−イニル]ナフタレン−2−イル2−メチルアクリレート(5)>
<5.1 6−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)ナフタレン−2−オール>
【0393】
【化112】

9.00g(40.3mmol)の6−ブロモナフタレン−2−オール、3.5g(62.4mmol)のプロパ−2−イン−1−オール、1.00g(1.43mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、0.5g(2.63mmol)のヨウ化銅(I)および10mlのジイソプロピルアミンを、60mlのDMF中において80℃で一晩、攪拌して放置する。引き続き、バッチを200mlの酢酸エチルに加え、400mlの水を加え、塩酸を使用して混合物を酸性とする。水相を分離し、酢酸エチルで3回抽出する。合わされた有機相を真空中で蒸発させ、残渣をシリカゲルに通し、トルエン/酢酸エチル(2:1)で濾過する。トルエン/ヘプタンより粗生成物を結晶化し、無色の固体として、6−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)ナフタレン−2−オールを与える。
【0394】
【表21】

【0395】
<5.2 6−[3−(2−メチルアクリロイルオキシ)プロパ−1−イニル]ナフタレン−2−イル2−メチルアクリレート(5)>
【0396】
【化113】

例1.2に類似して、6−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)ナフタレン−2−オールより、融点が60℃の無色の結晶として、6−[3−(2−メチルアクリロイルオキシ)プロパ−1−イニル]ナフタレン−2−イル2−メチルアクリレート(5)を与える。
【0397】
【表22】

【0398】
<例6>
<4−[7−(2−メチルアクリロイルオキシ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−イル]ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(6)>
<6.1 7−ヨード−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−オール>
【0399】
【化114】

8.8g(20.4mmol)の2,7−ジヨード−9,10−ジヒドロフェナントレンを250mlのTHF中に溶解し、−70℃において7.0ml(30.5mmol)のホウ酸トリイソプロピルを添加後、ヘキサン中15パーセントのn−ブチルリチウム溶液16.5mlを加える。1時間後、2Nの塩酸を使用してバッチを加水分解し、室温まで温める。MTBエーテルで溶液を2回抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で溶媒を除去し、得られる粗生成物を80mlのトルエンおよび30mlの2N水酸化ナトリウム溶液中で激しく攪拌しながら懸濁する。8mlの30パーセント過酸化水素を添加後、冷却しながら30分間30〜40℃においてバッチ攪拌し、200mlの水を加え、2Nの塩酸を使用して混合物を酸性とする。水相を分離し、酢酸エチルで3回抽出する。合わされた有機相を希硫酸アンモニウム鉄(II)溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルに通してジクロロメタンで濾過し、無色の固体として、7−ヨード−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−オールを与える。
【0400】
【表23】

【0401】
<6.2 7−(4−ヒドロキシブタ−1−イニル)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−オール>
【0402】
【化115】

9.0g(24.6mmol)の7−ヨード−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−オールを100mlのTHF中に最初に導入し、1.0g(1.43mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、0.3g(1.58mmol)のヨウ化銅(I)および11mlのジイソプロピルアミンを加え、引き続いて、20mlのTHF中の3.0g(42.8mmol)の1−ブチンの溶液を、最高30℃で冷却しながら滴下で加える。1.5時間、室温においてバッチを攪拌して放置し、水に加え、2Nの塩酸を使用して酸性にする。水相を分離し、酢酸エチルで3回抽出する。合わされた有機相を水洗し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で溶媒を除去する。粗生成物をシリカゲルに通し、ジクロロメタン/酢酸エチル(3:1)で濾過し、トルエンより再結晶化し、無色の固体として、7−(4−ヒドロキシブタ−1−イニル)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−オールを与える。
【0403】
<6.3 4−[7−(2−メチルアクリロイルオキシ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−イル]ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(6)>
【0404】
【化116】

例1.2に類似して、7−(4−ヒドロキシブタ−1−イニル)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−オールより、融点が72℃の無色の固体として、4−[7−(2−メチルアクリロイルオキシ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−イル]ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(6)を与える。
【0405】
【表24】

【0406】
<例7>
<4−[7−(2−メチルアクリロイルオキシ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−イル]プロパ−1−イニル2−メチルアクリレート(7)>
【0407】
【化117】

例6に対応する態様において、4−[7−(2−メチルアクリロイルオキシ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2−イル]プロパ−1−イニル2−メチルアクリレート(7)を調製し、融点が103℃の無色の結晶を与える。
【0408】
<例8>
<7−[3−(2−メチルアクリロイルオキシ)プロパ−1−イニル]フェナントレン−2−イル2−メチルアクリレート(8)>
<8.1 2−ブロモ−7−ジヒドロキシフェナントレン>
【0409】
【化118】

25.0g(74.4mmol)の2,7−ジブロモフェナントレン(CAS No.62325−30−8)および24.0ml(104mmol)のホウ酸トリイソプロピルを750mlのTHF中に最初に導入し、ヘキサン中15パーセントのn−ブチルリチウム溶液61ml(97mmol)を−70℃において滴下で加える。添加が完了すれば、バッチを攪拌して更に1時間放置し、2Nの塩酸を使用して加水分解し、冷却を取り外す。MTBエーテルを添加後、水相を取り除き、MTBエーテルで抽出する。合わされた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、残渣をヘプタンより再結晶する。350mlのトルエンおよび150mlの2N水酸化ナトリウム溶液中の結果として得られるボロン酸に、激しく攪拌しながら、温度が45℃を超えないような速さで、30mlの30パーセント過酸化水素を加える。添加が完了すれば、バッチを攪拌して更に30分放置し、200mlの水に加え、2Nの塩酸を使用して酸性とする。水相を分離し、酢酸エチルで3回抽出する。合わされた有機相を希硫酸アンモニウム鉄(II)溶液および水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルに通してジクロロメタンで濾過し、トルエンより再結晶して、無色の結晶として、2−ブロモ−7−ジヒドロキシフェナントレンを与える。
【0410】
【表25】

【0411】
<8.2 7−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)フェナントレン−2−オール>
【0412】
【化119】

37.2g(133mmol)の7−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)フェナントレン−2−オールおよび10.0g(178mmol)の2−プロピン−1−オールを400mlのDMFおよび40mlのトリエチルアミン中に最初に導入し、7.0g(10.0mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよび2.0g(10.5mmol)のヨウ化銅(I)を添加後、80℃において混合物を攪拌し一晩放置する。引き続いて、バッチを水に加え、2Nの塩酸を使用して酸性とし、酢酸エチルで3回抽出する。合わされた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーによってジクロロメタン/酢酸エチル(9:1)で残渣を精製する。トルエンより結晶化し、無色の結晶として、7−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)フェナントレン−2−オールを与える。
【0413】
【表26】

【0414】
<8.3 7−[3−(2−メチルアクリロイルオキシ)プロパ−1−イニル]フェナントレン−2−イル2−メチルアクリレート(8)>
【0415】
【化120】

例1.2に類似して、7−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)フェナントレン−2−オールより、融点が105℃の無色の結晶として、7−[3−(2−メチルアクリロイルオキシ)プロパ−1−イニル]フェナントレン−2−イル2−メチルアクリレート(8)を与える。
【0416】
【表27】

【0417】
<例9>
<7−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]フェナントレン−2−イル2−メチルアクリレート(9)>
【0418】
【化121】

例8に類似して7−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]フェナントレン−2−イル2−メチルアクリレート(9)を調製し、融点が91℃の無色の結晶を与える。
【0419】
<例10>
<3−[3−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ−2H−クロメン−7−イル]プロパ−2−イニル(2−メチルアクリレート)(10)>
<10.1 3−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ−2H−クロメン−7−イルトリフルオロメタンスルホネート>
【0420】
【化122】

7.0g(26.1mmol)の7−ヒドロキシ−3−(4−メトキシフェニル)クロメン−2−オンを200mlのジクロロメタン中に懸濁し、5ml(36mmol)のトリエチルアミンおよび100mg(0.819mmol)のDMAPを氷冷しながら添加後、5.3ml(32.3mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物を滴下で加える。2時間後、溶液を氷水で洗浄し、真空中で溶媒を除去する。トルエン/酢酸エチルでシリカゲル上において粗生成物をクロマトグラフィーすることにより、黄色の固体として、3−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ−2H−クロメン−7−イルトリフルオロメタンスルホネートを与える。
【0421】
【表28】

【0422】
<10.2 7−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)−3−(4−メトキシフェニル)クロメン−2−オン>
【0423】
【化123】

6.90g(17.2mmol)の3−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ−2H−クロメン−7−イルトリフルオロメタンスルホネート、1.5ml(25.4mmol)のプロピン−1−オール、12.0g(36.8mmol)の炭酸セシウム、150mg(0.578mmol)のビス(アセトニトリル)パラジウム(II)クロリドおよび800mg(1.68mmol)の2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニルを100mlのジオキサン中において攪拌し、60℃で3時間放置し、400mlの水に加え、2Nの塩酸を使用して酸性とする。水相を酢酸エチルで3回抽出し、合わされた有機相を水洗し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルに通し、トルエン/酢酸エチル(4:1)で濾過する。粗生成物をトルエン/酢酸エチル(10:1)より結晶化し、黄色の結晶として、7−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)−3−(4−メトキシフェニル)クロメン−2−オンを与える。
【0424】
【表29】

【0425】
<10.3 3−[3−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ−2H−クロメン−7−イル]プロパ−2−イニル2−メチルアクリレート(10)>
【0426】
【化124】

700mg(2.29mmol)の7−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)−3−(4−メトキシフェニル)クロメン−2−オンを15mlのジクロロメタン中に懸濁し、0.3ml(3.7mmol)のピリジンおよび10mgのDMAPを加え、5mlのジクロロメタン中の450mg(2.9mmol)のメタクリル酸無水物の溶液を氷冷しながら滴下で加える。30分後、冷却を取り外し、室温においてバッチを攪拌し、3.5時間放置する。真空中で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルに通し、ジクロロメタン/酢酸エチル(95:5)で濾過し、粗生成物をジエチルエーテル/酢酸エチル(2:3)より再結晶化し、融点が143℃の黄色の結晶として、3−[3−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ−2H−クロメン−7−イル]プロパ−2−イニル2−メチルアクリレートを与える。
【0427】
<例11>
<3−{4−[6−(2−メチルアクリロイルオキシ)ナフタレン−2−イル]フェニル}プロパ−2−イニル2−メチルアクリレート(11)>
<11.1 6−[4−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)フェニル]ナフタレン−2−オール>
【0428】
【化125】

13.0g(0.047mol)のメタホウ酸ナトリウム八水和物を100mlの水に最初に導入し、200mlのTHF中の7.00g(33.1mmol)の3−(4−ブロモフェニル)プロパ−2−イン−1−オール(CAS No.37614−58−7)および9.00g(33.3mmol)の6−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ナフタレン−2−オール(CAS No.269410−21−1)の溶液を加える。1.00g(1.40mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドを添加後、バッチを還流下で5時間加熱し、100mlの酢酸エチルを引き続いて添加し、2Mの塩酸を使用して混合物を酸性とする。有機相を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させる。残渣をシリカゲルに通し、トルエン/酢酸エチル(3:2)で濾過し、粗生成物をトルエン/酢酸エチルより再結晶化し、無色の固体として、6−[4−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)フェニル]ナフタレン−2−オールを与える。
【0429】
<11.2 3−{4−[6−(2−メチルアクリロイルオキシ)ナフタレン−2−イル]フェニル}プロパ−2−イニル2−メチルアクリレート>
【0430】
【化126】

例1に類似して、6−[4−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)フェニル]ナフタレン−2−オールより、無色の結晶として、3−{4−[6−(2−メチルアクリロイルオキシ)ナフタレン−2−イル]フェニル}プロパ−2−イニル2−メチルアクリレートを与える。
【0431】
相挙動Tg−23C110SmE110SmA159I(分解)。
【0432】
<例12>
例11に類似して、6−{4−[4−(2−メチルアクリロイルオキシ)ブタ−1−イニル]フェニル}ナフタレン−2−イル2−メチルアクリレート(12)を調製する。
【0433】
相挙動C108Sm(89)SmE(107)SmA170I(分解)。
【0434】
【化127】

【0435】
<例13>
<3−[2’,3’−ジフルオロ−4−(2−メチルアクリロイルオキシ)−[1,1’;4’,1”]ターフェニル−4”−イル]プロパ−2−イニル2−メチルアクリレート(13)>
<13.1 4’−ベンジルオキシ−2,3−ジフルオロビフェニル−4−ボロン酸>
【0436】
【化128】

32.0g(106mmol)の4’−ベンジルオキシ−2,3−ジフルオロビフェニル(CAS No.305366−70−5)を250mlのTHF中に溶解し、ヘキサン中15%のn−ブチルリチウム溶液75.0ml(119mmol)を−70℃において滴下で加える。添加が完了すれば、混合物を更に1時間攪拌し、50mlのTHF中13.5ml(119mmol)のホウ酸トリメチルの溶液を滴下で加える。1時間後、バッチを放置して解凍し、MTBエーテルを加え、2Mの塩酸を使用して混合物を酸性とする。有機相を分離し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、200mlのヘプタン/トルエン(1:1)中で攪拌しながら残渣を70℃まで加熱し、冷却後に吸引濾別し、無色の固体として、4’−ベンジルオキシ−2,3−ジフルオロビフェニル−4−ボロン酸を与え、これを更に精製することなく、次の工程において用いる。
【0437】
<13.2 4’−ヒドロキシ−2,3−ジフルオロビフェニル−4−ボロン酸>
【0438】
【化129】

27.0g(79.4mmol)の4’−ベンジルオキシ−2,3−ジフルオロビフェニル−4−ボロン酸を、THF中パラジウム/活性炭触媒上において完全に水素化する。触媒を濾別し、真空中で溶媒を除去する。110mlのトルエン/酢酸エチル(10:1)で攪拌しながら粗生成物を80℃まで加熱し、冷却後に吸引濾別し、無色の固体として、4’−ヒドロキシ−2,3−ジフルオロビフェニル−4−ボロン酸を与え、これを更に精製することなく、次の工程において用いる。
【0439】
<13.3 2’,3’−ジフルオロ−4”−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)−[1,1’;4’,1”]ターフェニル−4−オール>
【0440】
【化130】

例11.2に類似して、4’−ヒドロキシ−2,3−ジフルオロビフェニル−4−ボロン酸および3−(4−ブロモフェニル)プロパ−2−イン−1−オールより、無色の結晶として、2’,3’−ジフルオロ−4”−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)−[1,1’;4’,1”]ターフェニル−4−オールを与える。
【0441】
<13.4 3−[2’,3’−ジフルオロ−4−(2−メチルアクリロイルオキシ)−[1,1’;4’,1”]ターフェニル−4”−イル]プロパ−2−イニル2−メチルアクリレート>
【0442】
【化131】

例1に類似して、2’,3’−ジフルオロ−4”−(3−ヒドロキシプロパ−1−イニル)−[1,1’;4’,1”]ターフェニル−4−オールより、無色の結晶として、3−[2’,3’−ジフルオロ−4−(2−メチルアクリロイルオキシ)−[1,1’;4’,1”]ターフェニル−4”−イル]プロパ−2−イニル2−メチルアクリレートを与える。
【0443】
相挙動C122N133I。
【0444】
<例14>
【0445】
【化132】

例13に類似して、4−[2’,3’−ジフルオロ−4−(2−メチルアクリロイルオキシ)−[1,1’;4’,1”]ターフェニル−4”−イル]ブタ−3−イニル2−メチルアクリレート(14)を調製する。
【0446】
相挙動C112N150(分解)。
【0447】
<混合物例A>
以下の通り、ネマチックLC混合物N1を配合する。
【0448】
【表30】

それぞれの場合において、例1〜10より下に示す通りの式M1〜M10の重合性モノマー化合物0.3%をLC混合物N1に加え、結果として得られる混合物(表1および2参照)をVAe/o試験用セル(逆平行にラビング、VA−ポリイミド配向層、層厚dは、およそ4μm)中に導入する。24V(交流)の電圧を印加し、表示の時間で、50mW/cmの強度を有するUV光によってセルを照射し、モノマー化合物の重合を起こす。UV照射の前後において、結晶回転実験(Autronic−Melchers TBA−105)でチルト角を決定する。
【0449】
重合速度を決定するために、種々の曝露時間後においてHPLC法により、試験用セル内における未重合のRMの残存含有量(重量%)を測定する。このために、表記の条件下で試験用セル内において、それぞれの混合物を重合する。次いで、MEK(メチルエチルケトン)を使用して試験用セルより混合物を濯ぎ流し、測定する。
【0450】
比較の目的のために、先行技術(例えば、国際特許出願公開第2009/030329号パンフレット)より既知で構造的に類似する重合性化合物C1〜C10によって、上記の実験を行う。
【0451】
【化133】

【0452】
【化134】

【0453】
【化135】

【0454】
モノマーM1〜M10およびC1〜C10について、チルト角の比較結果を表1および2に示す。種々の曝露時間後におけるRMの濃度を、表3および4にまとめる。
【0455】
【表31】

【0456】
【表32】

【0457】
【表33】

【0458】
【表34】

【0459】
表1および2より見て取れる通り、先行技術による対応する構造的に類似な飽和のモノマーC1〜C10を含有するPSAディスプレイにおいてよりも、本発明によるモノマーM1〜M10を含有するPSAディスプレイにおいて、より迅速に重合後の小さいチルト角が達成されている。
【0460】
表3および4より見て取れる通り、先行技術による対応する構造的に類似な飽和のモノマーC1〜C9を含有するPSAディスプレイにおいてよりも、本発明によるモノマーM1〜M9を含有するPSAディスプレイにおいて、著しく更に迅速で完全な重合が達成されている。
【0461】
<混合物例B>
例11〜14からのモノマー11〜14と、例AからのネマチックLC混合物N1とを使用して、例Aに記載される通り試験用セルを製造し、チルト角および残存RM含有量を決定する。結果を表5および6にまとめる。
【0462】
【表35】

【0463】
【表36】

【0464】
表5および6より見て取れる通り、例11〜14からのモノマーによって、迅速で完全な重合および重合後の小さいチルト角が達成されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PSまたはPSAタイプのLC媒体およびLCディスプレイにおける、1個のメソゲン基および1個以上の重合性基を含有する重合性化合物(ただし、これらの重合性基の少なくとも1個はスペーサー基を介してメソゲン基に連結されており、ただし、これらのスペーサー基の少なくとも1個はC−C三重結合を含有している。)の使用。
【請求項2】
重合性化合物が式Iより選択されることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【化1】

(式中、個々の基は以下の意味を有する:
、Rは、それぞれ互いに独立に、P−Sp−、H、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、SF、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、アリーレン、−C(R)=C(R00)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、または、好ましくは、2〜25個のC原子を有するアリールまたはヘテロアリール(該基は、また、2個以上の縮合環を含有してもよく、該基はLにより一置換または多置換されていてもよい。)を表し、ただし、基RおよびRの少なくとも一方は基P−Sp−を表すか含有し、
Pは、それぞれの出現において同一または異なって、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において同一または異なって、スペーサー基または単結合を表し、
、Aは、それぞれ互いに独立に、好ましくは、4〜25個のC原子を有する芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ環式基を表し、また、該基は縮合環を含有してもよく、該基はLにより一置換または多置換されていてもよく、
Lは、それぞれの出現において同一または異なって、P−Sp−、H、OH、CHOH、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、
は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−(CH−、−CFCH−、−CHCF−、−(CF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CF=CH−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−、−CH−CH−CO−O−、−O−CO−CH−CH−、−C(R00)−、−C(R)−または単結合を表し、
、R00は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一または異なって、H、または、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
、Rは、それぞれ互いに独立に、H、F、CHまたはCFを表し、
mは、0、1、2、3または4を表し、
nは、それぞれの出現において同一または異なって、1、2、3または4を表し、
p、qは、それぞれ互いに独立に、0、1、2または3を表す。)
【請求項3】
式Iの化合物が以下の式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【化2】

【化3】

【化4】

(式中、P、SpおよびLは請求項2において示される意味を有し、基Rは、それぞれ互いに独立に、請求項2においてRに示される意味の1つを有し、P’は請求項2においてPに示される意味の1つを有し、Sp’は請求項2においてSpに示される意味の1つを有し、rは、0、1、2、3または4を表し、sは、0、1、2または3を表し、tは、0、1または2を表す。)
【請求項4】
2枚の基板および2つの電極(ただし、少なくとも一方の基板は光に対して透明であり、少なくとも一方の基板は1つまたは2つの電極を有する。)と、基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含むLC媒体層(ただし、重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、LCセルの基板間においてLC媒体中で、好ましくは電極に電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、少なくとも1種類の重合性化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合性化合物である。)とを有するLCセルを含有するPSまたはPSAタイプのLCディスプレイにおける、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項5】
LC媒体が式CYおよび/またはPYの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【化5】

(式中、個々の基は以下の意味を有する:
aは、1または2を表し、
bは、0または1を表し、
【化6】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−O−CO−または−CO−O−で置き換えられていてもよく、
は、−CH=CH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−O−、−CH−、−CHCH−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。)
【請求項6】
LC媒体が以下の式の1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【化7】

(式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【化8】

【化9】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−O−CO−または−CO−O−で置き換えられていてもよく、
は、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−または単結合を表す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のLCディスプレイ。
【請求項8】
PSA−VA、PSA−OCB、PS−IPS、PS−FFSまたはPS−TNディスプレイであることを特徴とする請求項7に記載のLCディスプレイ。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の1種類以上の重合性化合物を含むLC媒体。
【請求項10】
−1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分A)と、および
−1種類以上の低分子量化合物を含む液晶成分B)とを含み、
成分A)が請求項1〜3のいずれか一項に記載の1種類以上の重合性化合物を含むことを特徴とする請求項9に記載のLC媒体。
【請求項11】
成分B)が請求項6または7に記載の式CY、PYおよびZKより選択される1種類以上の化合物を含む請求項9または10に記載のLC媒体。
【請求項12】
p=q=1およびR=R=P−Sp−の場合で、特に、Pが、アクリレート、グリシジルまたはエポキシド基を表し、Spが1〜20個のC原子を有するアルコキシまたはオキサアルキルまたは単結合を表す場合、−(A−Z−A−は以下の基以外の基を表すことを条件として、請求項2において定義される通りの式Iの化合物。
【化10】

(式中、Xは、CH、NH、O、SまたはSOを表す。)
【請求項13】
式IIの化合物。
【化11】

(式中、A1、2、Z、Sp、Sp’、p、qおよびmは請求項3において示される意味を有し、GおよびG’は、それぞれ互いに独立に、H原子または保護基を表す。)
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、脱水試薬の存在下において、基Pを含有し対応する酸、酸誘導体またはハロゲン化された化合物を使用して、請求項13に記載の化合物をエステル化またはエーテル化する方法。
【請求項15】
PSまたはPSAタイプのLCディスプレイを製造する方法であって、請求項9〜11のいずれか一項に記載のLC媒体を、2枚の基板および2つの電極(ただし、少なくとも一方の基板は光に対して透明であり、少なくとも一方の基板は1つまたは2つの電極を有する。)を有するLCセル中に導入し、好ましくは、電極に電圧を印加しながら重合性化合物を重合する方法。

【公表番号】特表2013−506015(P2013−506015A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530144(P2012−530144)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005315
【国際公開番号】WO2011/035842
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】