説明

重量物運搬車のサイドミラーステー機構

【課題】車両本体の左右方向に対して移動可能なサイドミラーステー機構において、運転者の利便性を向上させるだけでなく、安全性確保にも優れたサイドミラーステー機構を提供する。
【解決手段】車両本体の左右方向に対して移動可能なサイドミラーステー機構において、ミラー角度調整リンクが設けられ、ミラー角度調整リンクに接続されるプッシュプルロッドが設けられ、このプッシュプルロッドには、プッシュプルロッド位置決め用部材が設けられていて、サイドミラーステーが左右方向に移動した際に、空車時と積載時とでプッシュプルロッド位置決め用部材が接触する空車時用プッシュプルロッド動作用部材及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材が設けられ、これらプッシュプルロッド動作用部材に、プッシュプルロッド位置決め用部材が接触することで、ミラー角度調整リンクが回動して、自動で空車時及び積載時のサイドミラー後方視野が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばキャリアパレットを積載するキャリアパレット車などの重量物運搬車で、後方視野を確保するために使用するサイドミラーが設けられたサイドミラステー機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばキャリアパレット車などの重量物運搬車が知られている。この種の重量物運搬車において、キャリアパレットなどの積載物の全幅は、空車時の車両本体全幅に対して大きいのが一般的であるため、積載物を積載する積載時と、これを積載していない空車時とでは車両全幅が相違しているのが一般的である。ここで、この種の重量物運搬車であっても、安全性確保の観点から、通常の自動車などと同様に運転室からの後方視野を確保するためのサイドミラーが設けられなければならないが、上記したようにこの種の重量物運搬車は、空車時と積載時とで車両全幅が相違するため、車両が確保するべき後方視野が相違してしまう。
【0003】
したがって、従来公知の重量物運搬車においては、キャリアパレットなどの積載物を搭載したとしても後方視野を確保できるように、運転室から大きく張り出したサイドミラーステーに2種類のサイドミラーを取り付け、一方のサイドミラーは空車時用に、他方のサイドミラーは積載時用に設けられている方式のものが知られている。しかしながら、このようなサイドミラーステーの場合、キャリアパレットを積載していない空車時には、当該サイドミラーステーが大きく運転室から張り出してしまうという問題があると共に、空車時乃至積載時には、サイドミラーを手動で調整する必要があり、運転者にとっては非常に煩わしく、利便性に劣るという問題があった。また、空車時用及び積載時用の2種類のサイドミラーを備えなければならず、その分だけ重量物運搬車の製作コストが高くなるという問題もあった。
【0004】
これらの問題点を解決するために、空車時用及び積載時用で共通のサイドミラーを設けたサイドミラーステーを車体の左右方向に(すなわち全幅方向に)伸縮式に移動させることが可能なサイドミラーステー機構が知られている。この種のサイドミラーステー機構を用いれば、共通のサイドミラーを用いることで製作コストの低減を図り、さらにはサイドミラーステーを空車時には車両本体そばの適切な乃至妥当な位置に保持することができるようになるため、サイドミラーステーが空車時に車両本体の全幅から大きく張り出してしまうことはない。しかしながら、キャリアパレットなどの積載物を積載した際にサイドミラーステーを移動させた場合には、移動したサイドミラーステーに取り付けられたサイドミラーの確保されるべき後方視野が空車時とはずれてしまうため、改めてサイドミラーを手動で位置調整をしなければならず、運転者には煩わしいとの問題点までは解決することができない。
【0005】
そこで、サイドミラーが取り付けられたサイドミラーステーの位置を空車時と積載時とで変更するための旋動可能なミラーステー機構であって、旋動後の当該サイドミラーの後方視野を調整するための角度調整機構が設けられるサイドミラーステー機構が特許文献1に開示されている。確かに、特許文献1に開示されるサイドミラーステー機構を用いれば、空車時であってもサイドミラーステーが車両本体の全幅を大きく超えることがなく、且つ、旋動後のサイドミラーの位置調整を運転者は運転室から調整することが可能であるが、やはり運転者自らが操作する必要があり、煩わしさを軽減できたとしても未だ十分ではない。また、サイドミラーステーの旋動後に、運転者がサイドミラーの調整を行わずに運転を開始してしまうと、適切な後方視野が確保されていないまま車両を運転することになるため、安全性確保の観点からも問題が残ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2001−171432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、空車時用及び積載時用とで共通のサイドミラーを使用するサイドミラーステー機構であって、車両本体の左右方向に対して移動可能なサイドミラーステー機構において、運転者の利便性を向上させるだけでなく、安全性確保にも優れたサイドミラーステー機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、
空車時用及び積載時用で共通に使用するサイドミラー、及び、鉛直方向に伸びたサイドミラーポストであって、前記サイドミラーが取り付けられるサイドミラーポストを有するサイドミラーステーと、
前記サイドミラーステーが取り付けられるスライダビームであって、車両本体に対して左右方向にスライド動作可能なスライダビームと、
前記スライダビームに、一端部で接続されるスライダビーム駆動用ロッドと、
前記スライダ駆動用ロッドの他端部でスライダ駆動リンク支点を介して接続されるスライダ駆動用リンクであって、前記スライダ駆動リンク支点で前記スライダ駆動用ロッドを回動自在に支持するスライダ駆動用リンクと、
前記スライダ駆動用リンクに接続されるリンク駆動部であって、当該スライダ駆動用リンクを旋回動作させるリンク駆動部と、を備えて成り、
前記リンク駆動部からの駆動力によって、前記スライダ駆動用リンクを旋回動作させることで、前記リンク支点を中心に前記スライダ駆動用ロッドが回動して、前記スライダ駆動用ロッドが接続される前記スライダビームを左右方向にスライド動作させることが可能なサイドミラーステー機構において、
前記サイドミラーポストには、ミラー角度調整リンク支点を備えたミラー角度調整リンクが設けられ、
前記ミラー角度調整リンク支点で、ミラー角度調整リンクに接続されるプッシュプルロッドが設けられ、
前記プッシュプルロッドには、プッシュプルロッド位置決め用部材が設けられ、
前記スライダビームが空車時と積載時とで、車両本体に対して左右方向に動作することに伴って前記サイドミラーステーが左右方向に移動した際に、空車時と積載時とで前記プッシュプルロッド位置決め用部材が接触する空車時用プッシュプルロッド動作用部材及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材がそれぞれ設けられ、
前記空車時用プッシュプルロッド動作用部材又は積載時用プッシュプルロッド動作用部材に、前記プッシュプルロッド位置決め用部材が接触することで、前記ミラー角度調整リンクが、前記ミラー角度調整リンク支点を中心に回動し、その際に、前記ミラー角度調整リンクが接続される前記ミラーポストが回動して、自動で空車時及び積載時のサイドミラー後方視野が調整されることを特徴とする重量物運搬車のサイドミラーステー機構、を提案する。
【0009】
さらに、本発明では、前記プッシュプルロッド位置決め部材が、板形状部材であることを提案する。
【0010】
さらに、本発明では、前記空車時用プッシュプルロッド動作用部材及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材がスプリングプランジャであることを提案する。
【0011】
さらに、本発明では、前記リンク駆動部が、電動モータと、歯車減速機とで構成されることを提案する。
【0012】
さらに、本発明では、前記ミラー角度調整リンクの動作範囲を調整することが可能なミラー角度調整ネジが設けられていると有利である。
【0013】
なお、本発明において、前記スライダビームにストッパー部材を設け、当該ストッパー部材で、空車時と積載時との間のスライダビームのスライド量を規制すると有利である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スライダビーム駆動用リンク機構によって、スライダビームがそれぞれ空車時と積載時とで車両本体に対して左右方向にスライド動作する際に、このスライダビームのスライド動作と共に移動するプッシュプルロッドを設け、当該プッシュプルロッドに接続されているプッシュプルロッド位置決め部材が、空車時用プッシュプルロッド動作用部材又は積載時用プッシュプルロッド動作用部材と接触して、やはり当該プッシュプルロッドと接続されるミラー角度調整リンクを自動で回動動作させるので、当該ミラー角度調整リンクに接続されているサイドミラーポストがスライダビームの伸縮動作と連動して自動で回動して、当該サイドミラーポストに取り付けられたサイドミラーの後方視野角度を所望の位置に調整変位させることが可能となる。したがって、空車時と積載時との間で、サイドミラーステーを左右方向に移動させた場合に、運転者が自らサイドミラーの後方視野を調整する必要がなくなり、運転者の利便性を向上させることが可能になる。また、サイドミラーステー機構を空車時又は積載時でスライド動作させれば、必ず自動でサイドミラーの後方視野が調整されるので、運転者が後方視野を調整し忘れたままで運転を開始することがなくなり、安全性をより高く確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】重量物運搬車を概略で示す図であり、a)は側面図を、b)は上面図を示す。
【図2】重量物運搬車を概略で示す図であり、a)は正面図を、b)は後方図を示す。
【図3】サイドミラーステーのスライド動作乃至スライド機構を説明するための概略断面図である。
【図4】本発明に係るミラー角度調整リンクまわりの構成を概略で示す図であり、a)は上面図を、b)は正面図を示す。
【図5】本発明にかかるミラー角度調整リンクの動作を概略で示す模式図であり、a)はスライダビームが伸長した状態を示し、b)は、スライダビームが伸長乃至格納される途中の状態を示し、c)は、スライダビームが格納された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
図1及び図2は、本願発明のサイドミラーステー機構が取り付けられるような重量物運搬車100を示す図であり、図1a)は側面図を、図1b)は上面図を示している一方で、図2a)は、運転室などを搭載している車両本体100を正面から眺めた正面図を、図2b)は、車両本体100に対して図2a)とは逆方向から眺めた当該車両100の後方図を示している。なお、図1及び図2に示されるキャリアパレット車は、その積載物であるキャリアパレットが積載されていない状態を図示していることに注意されたい。この種のキャリアパレット車に積載されるキャリアパレットなどの積載物は、図2a)に示される正面図で見て、運転室などを搭載している車両本体100の全幅(すなわち、図2a)における左右方向の幅)よりも大きく、キャリアパレットを積載した際には、当該キャリアパレットの全幅は、車両本体100の車幅を大きく超えてしまう。
【0018】
したがって、本願発明のサイドミラー2を備えたサイドミラーステー3は、車両本体100正面から見て伸縮するかの如く左右方向にスライドが可能な構成を採用している。このスライド動作を説明するための図が図3に示されていて、この図3を参照して、以下にまずサイドミラーステー機構のスライド動作を説明する。
【0019】
図3に示されているように、本願発明のサイドミラーステー機構は、空車時用及び積載時用で共通に使用するサイドミラー2を備えて成り、図3に示した例では上下方向に2つのサイドミラー2を備えている。なお、図示した例では、2つのサイドミラー2を設けているが、空車時用及び積載時用で共通に使用するのであればサイドミラー2の個数には原則的に制限がなく、したがって、後述する図5などに示されているようにサイドミラー2を一つだけ設けることもできる。この種の重量物運搬車では、当業者には明らかなように、適切な後方視野を確保するために、空車時と積載時とで共通に使用する複数個のサイドミラーを用いることは珍しいことではない。このサイドミラー2は、鉛直方向に伸びたサイドミラーポスト3に取り付けられており、これらサイドミラー2とサイドミラーポスト3とでサイドミラーステー10を構成している。
【0020】
このサイドミラーステー10を車両本体100正面から見て左右方向にスライドさせるために、当該サイドミラーステー10は、スライダビームガイドに沿って左右方向にスライド可能なスライダビーム5に接続乃至取り付けられている。このスライダビーム5のスライド動作を達成するために、本願発明のスライダビーム5には、スライダビーム駆動用ロッド6がその一端部において接続され、スライダビーム駆動用ロッド6の他端部には、スライダ駆動リンク支点8を介してスライダ駆動用リンク9が接続されている。なお、スライダビーム駆動用ロッド6は、当該スライダ駆動リンク支点8でスライダ駆動用リンク9と回動自在に支持されている。また、スライダ駆動用リンク9には、当該スライダ駆動用リンク9を旋回動作させるためのリンク駆動部7が接続されていて、図示した例では、このリンク駆動部7は、電動モータと、歯車減速機とで構成され、当該電動モータによる旋回駆動力は、歯車減速機を介して所望の旋回速度まで減速され、スライダ駆動用リンク9の端部に伝達される。なお、リンク駆動部7は、スライダ駆動用リンク9を旋動させることが可能であれば、どのような駆動部乃至駆動機構を用いても発明の目的を達成することが可能であるが、モータの回転によって回転駆動力を発生させる電動モータであれば、スライダ駆動用リンクを旋動動作させるのに好都合であり、歯車減速機を用いれば、簡易且つ安価な構成でモータの回転を所望の旋動速度に調整しやすいため、好適である。
【0021】
このように構成されるサイドミラーステー機構では、リンク駆動部7からの駆動力によって、スライダ駆動用リンク9を図中両矢印で示すように旋回動作させ、それに伴ってスライダビーム5をスライダビームガイドに沿わせて車両方向で見て左右方向に移動させ、当該スライダビーム5に取り付けられているサイドミラーステー10も併せてスライド動作させることが可能である。例えば、サイドミラーステー10を図中右方向へスライド動作させたい場合には、リンク駆動部7に接続されるスライダ駆動用リンク9を時計回りに旋回動作させて、これにリンク支点8を介して回動自在に接続されているスライダビーム駆動用ロッド6を図中右方へリンク支点8を中心に回動させながら移動させる。その際、スライダビーム5は、スライダビーム駆動用ロッド6に接続されているので、当該スライダビーム駆動用ロッド6の変位に伴って、図中二点鎖線で示される位置までスライダビームガイドに沿ってスライドして移動させられ、これに伴って、スライダビーム5に取り付けられているサイドミラーステー10も移動することになる。サイドミラーステー10を図中二点鎖線で示される位置から実線で示される左方位置へスライド動作させたい場合には、上記とはまるで正反対に、リンク駆動部7に接続されるスライダ駆動用リンク9を反時計まわりに旋回動作させることで、これに接続されるスライダビーム用駆動用ロッド6を図中左方へリンク支点8を中心に回動させながら移動させ、その結果、スライダビーム5をスライダビームガイドに沿って、図中左方へスライド移動させ、サイドミラーステー10も併せてスライド移動させる。なお、図示した例では、スライダ駆動用ロッド6の一端部に、スライダビーム5の一端部を接続しているが、本願発明はこれに限定されるものではない。所望のスライダビーム5のスライド量が得られるのであれば、スライダ駆動用ロッド6の一端部ではなく、その途中でスライダビーム5に接続することが可能であるし、あるいは、スライダ駆動用ロッド6の一端部を、スライダビーム5の中間位置に接続することも可能である。さらに、当然ながら、スライダ駆動用ロッド6の中間位置をスライダビーム5の中間位置に接続することも可能である。
【0022】
このようにスライド動作させるサイドミラーステー機構において、本願発明では、サイドミラー2の後方視野調整をこのスライド動作に連動させることに大きな特徴がある。この連動動作を図4及び図5を用いて説明する。図4は、サイドミラー2の後方視野自動調整を達成するために設けられるミラー角度調整リンク1まわりの構成を概略で示す図であり、a)は上方から眺めた上面図を、b)は正面図を示している。また、図5は、当該ミラー角度調整リンク1の動作を概略で示す模式図であり、a)はスライダビームが伸長した状態(すなわち、キャリアパレットなどの積載物を車両本体100に積載した後でサイドミラー2を積載時用に調整した状態)を示し、b)は、スライダビームが伸長乃至格納されるいずれかの途中の状態を示し、c)は、スライダビームが格納された状態(すなわち、空車時用の状態にサイドミラー2を調整した状態)を示す。
【0023】
図4に示されるように、本願発明のミラー角度調整リンク1は、サイドミラー2が取り付けられるサイドミラーポスト3に相対位置変動しないように位置固定式に取り付けられる。このミラー角度調整リンク1には、ミラー角度調整リンク支点15が設けられていて、このミラー角度調整リンク支点15を介して、当該ミラー角度調整リンク1に接続されるプッシュプルロッド20が設けられている。すなわち、このプッシュプルロッド20は、ミラー角度調整リンク支点15及びミラー角度調整リンク1を介してサイドミラーポスト3に接続されているので、サイドミラーポスト3が接続されるスライダビーム5にも当該サイドミラーポスト3を介して連結されていて、スライダビーム5のスライド動作に伴って、スライダビーム5と共に左右方向にスライド移動する。また、プッシュプルロッド20には、図示した例ではその末端部に、プッシュプルロッド位置決め用部材21が設けられている。このプッシュプルロッド位置決め用部材21は、スライダビーム5がスライドして移動した際に共に移動するプッシュプルロッド20が所定の位置に達すると、すなわち空車時のサイドミラーステー位置又は積載時のサイドミラーステー位置にスライダビーム5及びプッシュプルロッド20が達すると、車両本体側に設けられた空車時用プッシュプルロッド動作用部材22又は積載時用プッシュプルロッド動作用部材23と接触する。この際に、空車時用プッシュプルロッド動作用部材22は、当該プッシュプルロッド位置決め用部材21の図4b)中左側側面を、積載時用プッシュプルロッド動作用部材23は、当該プッシュプルロッド位置決め用部材21の図4b)中右側側面を、押圧する。したがって、それぞれ空車時用又は積載時用にスライド移動させられたプッシュプルロッド20は、そのそれぞれの場合に、空車時用プッシュプルロッド動作用部材22又は積載時用プッシュプルロッド動作用部材23に押圧されるので、このプッシュプルロッド20に接続されるサイドミラー角度調整リンク1は、サイドミラー角度調整リンク支点15を介して、図4a)の両矢印方向に示されるように回動させられ、ひいては、このサイドミラー角度調整リンク1が位置固定式に接続されているサイドミラーポスト3を回動させる。このミラー角度調整リンク1の回動動作範囲を予め所望の後方視野を確保できるように調整しておけば、所望の位置にサイドミラー2を回転させることが可能となるため、サイドミラーステー10を空車時と積載時とでスライド動作させるのと連動して、自動でサイドミラー2の後方視野を調整・確保することが可能となる。なお、本実施例で用いられたプッシュプルロッド位置決め用部材21は、図4の紙面に平行及び垂直な両方の方向において断面四角形状である板形状部材を用いたが、空車時のサイドミラーステー位置又は積載時のサイドミラーステー位置にスライダビーム5及びプッシュプルロッド20が達する際に、車両本体側に設けられた空車時用プッシュプルロッド動作用部材22又は積載時用プッシュプルロッド動作用部材23と接触する関係にあれば、この形状に限定されることなく様々な断面形状を採用することが可能である。
【0024】
ここで、このミラー角度調整リンク1の回動範囲を調整するにあたっては、空車時用プッシュプルロッド動作用部材22及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材23の両者の配置位置を、車両本体100に対して左右方向にずらすことで対応することが可能である。あるいは、これら空車時用プッシュプルロッド動作用部材22及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材23を位置固定式に配置しておき、例えば、プッシュプルロッド20の途中に雄ネジと雌ネジとで構成される長さ調整機構を配置させて、プッシュプルロッド20の長さを調整してもよい。さらには、空車時用プッシュプルロッド動作用部材22及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材23を例えばスプリングプランジャのような弾性を有する部材で構成しておき、この弾性を利用して、プッシュプルロッド位置決め部材21が空車時用プッシュプルロッド動作用部材22及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材23に接触した際の動作範囲に、ある程度の遊び範囲を設けておいて、この遊び範囲内でミラー角度調整リンク1の回動範囲を調整できるように、当該ミラー角度調整リンク1の回動範囲を制限する制限部材を設けてもよい。図4及び図5において示した例では、この制限部材は、ミラー角度調整用ネジ28として示されていて、当該ミラー角度調整ネジ28の端部でミラー角度調整リンク1の回動範囲を押さえることにより、その回動範囲を規制している。
【0025】
次いで、このミラー角度調整リンク1の回動動作を図5の模式図を参照して説明する。なお、図5において、ミラー角度調整リンク1は、図4に示されるようにプッシュプルロッド20とは配置的に離れて図解されているが、これは発明の理解を深めるために分解して示したものであることに注意されたい。まず、図5のb)は、スライダビーム5が伸長乃至格納されるいずれかの途中の状態を示している。この図5b)の状態にあるときには、プッシュプルロッド位置決め部材21は、いかなる部材とも接触していないので、プッシュプルロッド20は、いわばフリーな状態であり、スライダビーム5のスライド動作に伴って共に左右方向に移動している。
【0026】
次いで、図5a)に示されるように、積載時の、スライダビーム5が伸長した状態では、プッシュプルロッド位置決め部材21は、この例ではスプリングプランジャとして構成されている積載時用プッシュプルロッド動作部材23に接触し、このスプリングプランジャ23との接触後もスライダビーム5がスライド動作することによってスライダビーム5から引き出されるかの如く、図で見て左側方向の力を受ける。この際、プッシュプルロッド20に接続されるミラー角度調整リンク1がミラー角度調整リンク支点15を介して回動させられるので、このミラー角度調整リンク1が接続されるサイドミラーポスト3を、図示した例では反時計回りに回動させる。その一方で、図5c)に示されるように、空車時の、スライダビーム5が格納された状態では、先の図5a)とはまるで逆に、プッシュプルロッド位置決め部材21は、やはりスプリングプランジャとして構成されている空車時用プッシュプルロッド動作部材22に接触し、このスプリングプランジャ22との接触後もスライダビーム5がスライド動作することによってスライダビーム5に押し込まれるかの如く、図で見て右側方向の力を受ける。この際、プッシュプルロッド20に接続されるミラー角度調整リンク1がミラー角度調整リンク支点15を介して回動させられるので、このミラー角度調整リンク1が接続されるサイドミラーポスト3を、図示した例では時計回りに回動させる。
【0027】
なお、図5に示されるように、スライダビーム5本体にストッパー部材25を設けることもできる。このストッパー部材25は、スライダビーム5のスライド量を規制するために、すなわちスライダビーム5が所定のスライド量を超えてスライドしすぎないように設けられるものであり、仮にスライダビーム5が所定のスライド量を超えてスライドしようとしても、当該ストッパー部材25が車両本体側と接触することにより、過剰なスライド移動を防止する。このようにストッパー部材25を設けておけば、スライダビーム5のスライド量を所定量までに規制することができるので、過剰なスライドによる他の構成部材の破損を効果的に防止することが可能となり好適である。
【符号の説明】
【0028】
1 ミラー角度調整リンク
2 サイドミラー
3 サイドミラーポスト
5 スライダビーム
6 スライダビーム駆動用ロッド
7 リンク駆動部
8 スライダ駆動リンク支点
9 スライダ駆動用リンク
10 サイドミラーステー
15 ミラー角度調整リンク支点
20 プッシュプルロッド
21 プッシュロッド位置決め用部材
22 空車時用プッシュプルロッド動作用部材
23 積載時用プッシュプルロッド動作用部材
25 ストッパー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空車時用及び積載時用で共通に使用するサイドミラー、及び、鉛直方向に伸びたサイドミラーポストであって、前記サイドミラーが取り付けられるサイドミラーポストを有するサイドミラーステーと、
前記サイドミラーステーが取り付けられるスライダビームであって、車両本体に対して左右方向にスライド動作可能なスライダビームと、
前記スライダビームに、一端部で接続されるスライダビーム駆動用ロッドと、
前記スライダ駆動用ロッドの他端部でスライダ駆動リンク支点を介して接続されるスライダ駆動用リンクであって、前記スライダ駆動リンク支点で前記スライダ駆動用ロッドを回動自在に支持するスライダ駆動用リンクと、
前記スライダ駆動用リンクに接続されるリンク駆動部であって、当該スライダ駆動用リンクを旋回動作させるリンク駆動部と、を備えて成り、
前記リンク駆動部からの駆動力によって、前記スライダ駆動用リンクを旋回動作させることで、前記リンク支点を中心に前記スライダ駆動用ロッドが回動して、前記スライダ駆動用ロッドが接続される前記スライダビームを左右方向にスライド動作させることが可能なサイドミラーステー機構において、
前記サイドミラーポストには、ミラー角度調整リンク支点を備えたミラー角度調整リンクが設けられ、
前記ミラー角度調整リンク支点で、ミラー角度調整リンクに接続されるプッシュプルロッドが設けられ、
前記プッシュプルロッドには、プッシュプルロッド位置決め用部材が設けられ、
前記スライダビームが空車時と積載時とで、車両本体に対して左右方向に動作することに伴って前記サイドミラーステーが左右方向に移動した際に、空車時と積載時とで前記プッシュプルロッド位置決め用部材が接触する空車時用プッシュプルロッド動作用部材及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材がそれぞれ設けられ、
前記空車時用プッシュプルロッド動作用部材及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材に、前記プッシュプルロッド位置決め用部材が接触することで、前記ミラー角度調整リンクが、前記ミラー角度調整リンク支点を中心に回動し、その際に、前記ミラー角度調整リンクが接続される前記ミラーポストが回動して、自動で空車時及び積載時のサイドミラー後方視野が調整・確保されることを特徴とする重量物運搬車のサイドミラーステー機構。
【請求項2】
前記プッシュプルロッド位置決め部材が、板形状部材であることを特徴とする請求項1に記載のサイドミラーステー機構。
【請求項3】
前記空車時用プッシュプルロッド動作用部材及び積載時用プッシュプルロッド動作用部材がスプリングプランジャであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載のサイドミラーステー機構。
【請求項4】
前記リンク駆動部が、電動モータと、歯車減速機とで構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のサイドミラーステー機構。
【請求項5】
前記ミラー角度調整リンクの動作範囲を調整することが可能なミラー角度調整ネジが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のサイドミラーステー機構。
【請求項6】
前記スライダビームにストッパー部材を設け、当該ストッパー部材で、空車時と積載時との間のスライダビームのスライド量を規制することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のサイドミラーステー機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148386(P2011−148386A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10876(P2010−10876)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(591117631)株式会社日本除雪機製作所 (18)
【Fターム(参考)】