説明

重量計測装置

【課題】故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、安全性を確保することができる重量計測装置を提供する。
【解決手段】血液浄化に使用される流体の重量を計測する重量計測装置10であって、給液容器20が取り付けられるための第一取付部111を備える第一幹体110と、第一幹体110に接続されろ液容器30が取り付けられるための第二取付部121を備える第二幹体120と、第二幹体120に接続される第三幹体130と、第一取付部111に取り付けられた給液容器20と第二取付部121に取り付けられたろ液容器30との重量の合計である合計重量を第二幹体120の変化から計測し第一合計重量として出力する第一計測器220と、合計重量を第三幹体130の変化から計測し第二合計重量として出力する第二計測器230と、出力された第一合計重量と第二合計重量とが所定の値以上異なる値となった場合に、警告を行う警告部300とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化に使用される流体が収容された容器が取り付けられ、当該流体の重量を計測する重量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば腎機能不全の患者に対して、その患者の血液を浄化するために、持続緩徐式血液ろ過法(CHF:Continuous Hemofiltration)や、持続的血液透析ろ過法(CHDF:Continuous Hemodiafiltration)を用いた治療が行なわれている。
【0003】
CHFは、ろ過を行なうための半透膜(以下、「ろ過膜」という。)が設けられた血液浄化器に患者から取り出した血液を注入してろ過膜を用いてろ過し、浄化された血液を患者に戻し、ろ過によって得られた血液の中の老廃物(例えば、尿素や塩化ナトリウム等の電解質物質)と溶媒(水分)とを廃棄する。それとともに、患者の血液の中の溶媒の減少を補うために、所定の補充液(以下、「補液」という。)を患者の血液に補充することを、持続的に緩徐に行なう方法である。なお、CHFでは、廃棄する血液の中の老廃物と溶媒とをろ過液(以下、「ろ液」という。)という。
【0004】
他方、CHDFは、CHFにおける小分子除去能力を改善するための方法であって、CHFに加えて透析処理を行なう方法である。すなわち、CHDFは、血液浄化器に透析液をも供給し、ろ過によって浄化された血液になお含まれている老廃物を透析膜を介して透析液の中に移動させることにより、血液の中から老廃物を除去する。そして、ろ過及び透析によって浄化された血液を患者に戻すとともに補液を患者の血液に補充することを、持続的に緩徐に行なう方法である。なお、CHDFでは、ろ過によって得られた血液の中の老廃物及び溶媒と、使用済みの透析液とをろ液という。
【0005】
ところで、患者の血液の量が変動すると、患者の身体に悪影響を及ぼす。それを防止するために、患者から取り出される血液の流量と、患者に戻される血液及び患者に注入される補液の流量とをバランスさせなければならない。つまり、透析液と補液との減少量の合計と、ろ液の増加量とが同じになるように、24時間連続で高度な水分管理を行う必要がある。
【0006】
しかし、当該透析液、補液及びろ液を送液するためには、複数のポンプが必要である。そして、1つのポンプでの送液の誤差が10%であるとすると、例えば2つのポンプでの送液の誤差は、最大20%となる。この誤差は、上述の液バランスの必要な治療においては、許容できないものである。
【0007】
このため、上述の血液浄化処置を行う場合に、透析液と補液との減少量の合計と、ろ液の増加量とを精度良くバランスさせることができる重量計測装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図10は、従来の重量計測装置を説明する図である。
【0009】
同図に示すように、従来の重量計測装置6を備えた血液浄化装置2では、複数のポンプ7〜9によって、透析液容器3に収容された透析液、補液容器4に収容された補液及びろ液容器5に収容されたろ液が送液される。そして、透析液容器3、補液容器4及びろ液容器5は、重量計測装置6に吊り下げられ、重量計測装置6によって当該3つの容器の重量の合計が計測される。そして、この重量の合計が一定値になるように、ポンプ7〜9が制御される。
【0010】
これにより、透析液と補液との減少量の合計と、ろ液の増加量とが同じになるように制御することができる。つまり、3つの容器の重量の合計が一定値になるようにポンプ7〜9を制御すればよいので、透析液容器3、補液容器4及びろ液容器5のそれぞれの重量を計測してそれぞれのポンプ7〜9を制御するよりも、透析液と補液との減少量の合計と、ろ液の増加量とを精度良くバランスさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−285830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の重量計測装置では、故障や計測精度の低下などが生じた場合でも計測が行われ、安全性を確保できない場合があるという問題がある。
【0013】
重量計測装置による計測結果は、治療に重大な影響を与えるため、計測の誤差が1%以下になるような精度の高い重量計測装置が必要である。このため、重量計測装置で精度良く計測することができない場合は、致命的な結果を招く。しかし、重量計測装置の故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、気付かれずに計測が行われ、安全性を確保できない場合がある。
【0014】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、安全性を確保することができる重量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る血液浄化装置は、血液浄化に使用される流体が収容された容器が取り付けられ、前記流体の重量を計測する重量計測装置であって、第一流体が収容された第一容器が取り付けられるための第一取付部を備える第一幹体と、前記第一幹体に接続され、第二流体が収容された第二容器が取り付けられるための第二取付部を備える第二幹体と、前記第二幹体に接続される第三幹体と、前記第一取付部に取り付けられた前記第一容器と前記第二取付部に取り付けられた前記第二容器との重量の合計である合計重量を、前記第二幹体の変化から計測し、第一合計重量として出力する第一計測器と、前記合計重量を、前記第三幹体の変化から計測し、第二合計重量として出力する第二計測器と、出力された前記第一合計重量と前記第二合計重量とが所定の値以上異なる値となった場合に、警告を行う警告部とを備える。
【0016】
これによれば、第一計測器と第二計測器の両方で、第一容器と第二容器との重量の合計を計測することで、2つの計測器によって相互監視を行う。そして、2つの計測器による計測値が異なる場合には警告を行う。このため、第一計測器又は第二計測器に故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、当該故障や計測精度の低下を発見することができるので、安全性を確保することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記警告部は、前記第一合計重量の初期状態からの変化量である第一変化量を算出する第一変化量算出部と、前記第二合計重量の初期状態からの変化量である第二変化量を算出する第二変化量算出部と、算出された前記第一変化量と前記第二変化量との差分を算出する差分算出部と、算出された前記差分が前記所定の値以上か否かを判断する差分判断部と、前記差分が前記所定の値以上と判断された場合に、警告を行うための警告信号を出力する警告信号出力部とを備える。
【0018】
これによれば、第一変化量と第二変化量とが所定の値以上異なる値になった場合には、警告信号が出力される。血液浄化装置は、この警告信号を受信することで、画面に警告内容を表示させたり、血液浄化を停止したり、流体の流量を調整したりすることができる。このため、第一計測器又は第二計測器に故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、当該故障や計測精度の低下をすぐに発見することができるので、安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、血液浄化に使用される流体が収容された容器が取り付けられ当該容器の重量を計測する重量計測装置において、故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における血液浄化装置を示す外観図である。
【図2】本発明の実施の形態における血液浄化装置を示すブロック構成図である。
【図3】本発明の実施の形態における重量計測装置の構成を詳細に説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態における重量計測装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態における重量計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】警告部が警告を行う処理を説明するフローチャートである。
【図7】本発明に係る重量計測装置の効果を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態における重量計測装置の第一の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における重量計測装置の第二の変形例を示す図である。
【図10】従来の重量計測装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態における血液浄化装置1を示す外観図である。
【0023】
血液浄化装置1は、腎機能不全の患者などの血液を浄化するために、浄化処理により血液の中の老廃物を除去する装置である。
【0024】
具体的には、血液浄化装置1は、透析液により血液中の老廃物を除去し、ろ液を排出する。また、血液中の溶媒の減少を補うために、補液が血液に補充される。そして、これらの透析液、補液及びろ液は、計量容器に収容され、使用される透析液及び補液の流量と、廃棄されるろ液の流量とをバランスさせるために、重量計測装置で当該計量容器の重量が計測される。
【0025】
そして、重量計測装置での計測結果などは、表示部50に表示される。この表示部50は、CRT(Cathode-Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等である。
【0026】
また、この重量計測装置は、同図のAで示される位置に配置されている。以下に、この重量計測装置について、詳細に説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態における血液浄化装置1を示すブロック構成図である。
【0028】
同図に示すように、血液浄化装置1は、重量計測装置10、透析液ポンプ21、補液ポンプ22、ろ液ポンプ31及び血液浄化器40を備えている。なお、重量計測装置10は、図1に示されたAの位置に配置されている。
【0029】
血液浄化器40は、血液を浄化する器具である。具体的には、血液浄化器40は、円筒の内部に多数の中空糸の束を貫通させ、その中空糸の内部に血液を導通させ、円筒内を流れる透析液と、中空糸膜を介して間接的に接触させることにより、血液を浄化する。拡散、限外ろ過および浸透圧の原理によって、尿素や尿酸、クレアチン、余剰水分などの血液中の老廃物は透析液中に排出され、また、透析液中の電解質などは血液中に取り込まれる。
【0030】
ここで、透析液は、血液浄化器40内で血液と物質交換をする薬液であり、補液は、血液浄化器を通過することにより失われた血液中の水分や電解質を補給する薬液であり、ともに体液と浸透圧や電解質が等しくなるよう調整された等張液などの薬液が用いられる。このため、以下では、透析液と補液とを総称して、給液という。
【0031】
重量計測装置10は、血液浄化に使用される流体が収容された容器が取り付けられ、当該流体の重量を計測する装置である。ここで、浄化に使用される流体とは、給液(透析液及び補液)及びろ液である。つまり、重量計測装置10は、給液が収容された計量容器である給液容器20と、ろ液が収容された計量容器であるろ液容器30とを吊り下げて、重量を計測する。この重量計測装置10の詳細については、後述する。
【0032】
なお、給液及び給液容器20は、それぞれ特許請求の範囲に記載の「第一流体」及び「第一容器」に包含される。また、ろ液及びろ液容器30は、それぞれ特許請求の範囲に記載の「第二流体」及び「第二容器」に包含される。
【0033】
透析液ポンプ21は、給液容器20に収容されている給液(透析液)を、血液浄化器40に送液するポンプである。透析液ポンプ21は、回転数制御により、送液する透析液の量を調整する。
【0034】
補液ポンプ22は、給液容器20に収容されている給液(補液)を、血液浄化器40出口の患者に戻される血液中に送液するポンプである。補液ポンプ22は、回転数制御により、送液する補液の量を調整する。
【0035】
ろ液ポンプ31は、血液浄化器40から排出される老廃物を含んだろ液を送液し、ろ液容器30に収容するポンプである。ろ液ポンプ31は、回転数制御により、送液するろ液の量を調整する。
【0036】
つまり、透析液ポンプ21及び補液ポンプ22による給液の送液により、給液容器20中の給液が減少する。また、ろ液ポンプ31によるろ液の送液により、ろ液容器30中のろ液が増加する。すなわち、給液容器20中の給液の減少量は、透析液ポンプ21又は補液ポンプ22の流量を制御することで調整され、ろ液容器30中のろ液の増加量は、ろ液ポンプ31の流量を制御することで調整される。
【0037】
次に、重量計測装置10の構成について、詳細に説明する。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態における重量計測装置10の構成を詳細に説明する図である。
【0039】
同図に示すように、重量計測装置10は、第一幹体110、第二幹体120、第三幹体130、支持部材140及び警告部300を備えている。
【0040】
第一幹体110は、棒状の金属製の部材であり、例えば、アルミニウム製の角棒部材である。また、第一幹体110には、第一幹体110の両側面部を貫通するように、長手方向に直交する方向かつ水平に、貫通孔が設けられている。そして、この貫通孔の断面の形状は、骨状、つまり、両端部の大きさがそれらに挟まれた中央部の大きさよりも大きい形状である。具体的には、第一幹体110は、ロバーバル型ロードセルを構成する幹体である。
【0041】
この第一幹体110は、先端部110aに第一取付部111を備え、基端部110bに第三計測器210を備えている。
【0042】
第一取付部111は、給液容器20が取り付けられるための部材である。具体的には、第一取付部111は、給液容器20を吊り下げるための針金状の金属製の部材である。なお、第一取付部111の材質及び形状は、針金状の金属製の部材に限られず、給液容器20を取り付けることができるのであれば、どのような材質及び形状であってもよい。
【0043】
第三計測器210は、第一幹体110の変化から、第一取付部111に取り付けられた給液容器20の重量を計測する機器である。具体的には、第三計測器210は、第一幹体110の歪み量から、第一取付部111に吊り下げられた給液容器20の重量を計測する。
【0044】
つまり、第一取付部111に給液容器20が吊り下げられた場合、第一幹体110には貫通孔が設けられているため、第一幹体110に歪みが生じる。第三計測器210は、この第一幹体110の歪み量に基づいて給液容器20の重量を算出することで、給液容器20の重量を計測する。
【0045】
なお、第一幹体110の材質及び形状は、棒状の金属製の部材に限られず、歪み量により第三計測器210が給液容器20の重量を計測できるのであれば、どのような材質及び形状であってもよい。
【0046】
第二幹体120は、棒状の金属製の部材であり、第一幹体110と同様に貫通孔が設けられている。この第二幹体120の材質及び形状は、第一幹体110と同じであるため、詳細な説明については省略する。
【0047】
そして、第二幹体120は、先端部120aが第一幹体110の基端部110bに接続されている。また、第二幹体120は、先端部120aに第二取付部121を備え、基端部120bに第一計測器220を備えている。
【0048】
第二取付部121は、ろ液容器30が取り付けられるための部材である。具体的には、第二取付部121は、ろ液容器30を吊り下げるための針金状の金属製の部材である。なお、第二取付部121の材質及び形状は、針金状の金属製の部材に限られず、ろ液容器30を取り付けることができるのであれば、どのような材質及び形状であってもよい。
【0049】
第一計測器220は、第二幹体120の変化から、第一取付部111に吊り下げられた給液容器20と第二取付部121に吊り下げられたろ液容器30との重量の合計である合計重量を計測し、第一合計重量として出力する機器である。具体的には、第一計測器220は、第二幹体120の歪み量から、合計重量を計測する。
【0050】
つまり、給液容器20とろ液容器30とが吊り下げられた場合、第二幹体120には貫通孔が設けられているため、第二幹体120に歪みが生じる。第一計測器220は、この第二幹体120の歪み量に基づいて第一合計重量を算出することで、第一合計重量を出力する。
【0051】
なお、第二幹体120の材質及び形状は、第一幹体110と同じ材質及び形状に限られず、歪み量により第一計測器220が合計重量を計測できるのであれば、どのような材質及び形状であってもよい。
【0052】
第三幹体130は、棒状の金属製の部材であり、第一幹体110と同様に貫通孔が設けられている。この第三幹体130の材質及び形状は、第一幹体110と同じであるため、詳細な説明については省略する。
【0053】
そして、第三幹体130は、先端部130aが第二幹体120の基端部120bに接続されている。また、第三幹体130は、基端部130bに第二計測器230を備えている。
【0054】
第二計測器230は、第三幹体130の変化から、第一取付部111に吊り下げられた給液容器20と第二取付部121に吊り下げられたろ液容器30との重量の合計である合計重量を計測し、第二合計重量として出力する機器である。具体的には、第二計測器230は、第三幹体130の歪み量から、合計重量を計測する。
【0055】
つまり、給液容器20とろ液容器30とが吊り下げられた場合、第三幹体130には貫通孔が設けられているため、第三幹体130に歪みが生じる。第二計測器230は、この第三幹体130の歪み量に基づいて第二合計重量を算出することで、第二合計重量を出力する。
【0056】
なお、第三幹体130の材質及び形状は、第一幹体110と同じ材質及び形状に限られず、歪み量により第二計測器230が合計重量を計測できるのであれば、どのような材質及び形状であってもよい。
【0057】
このように、計量するための容器を第三幹体130に吊り下げないようにすることで、第二幹体120の第一計測器220で計測される合計重量と第三幹体130の第二計測器230で計測される合計重量とが同一になり、2つの計測器による相互監視(検証)が可能となる。
【0058】
このように、それぞれの計測器は、それぞれの幹体の歪み量から重量を計測するため、簡易に精度良く計測することができる。なお、本実施の態様では、各計測器を各幹体の基端部に設けることとしたが、歪みを精度良く計測できる場所であれば、特に基端部に限定されるものではない。また、第一幹体110、第二幹体120及び第三幹体130は、別部材で形成されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0059】
支持部材140は、鉛直方向に延びる金属製の部材であり、例えば、アルミニウム製の棒状部材である。支持部材140は、第三幹体130に対して直交するように、第三幹体130の基端部130bに接続され、第三幹体を支持する。なお、支持部材140の材質及び形状は、金属製の棒状部材に限られず、第三幹体130を支持することができるのであれば、どのような材質及び形状であってもよい。
【0060】
警告部300は、第一計測器220が出力した第一合計重量と第二計測器230が出力した第二合計重量とが、所定の値以上異なる値となった場合に、警告を行う。この警告部300の詳細については、後述する。
【0061】
図4は、本発明の実施の形態における重量計測装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0062】
重量計測装置10は、第一計測器220が計測した合計重量を第一合計重量として、第二計測器230が計測した合計重量を第二合計重量として、警告部300に出力し、警告部300は、表示部50に警告内容を表示させることで、警告を行う。
【0063】
同図に示すように、警告部300は、第一変化量算出部310、第二変化量算出部320、差分算出部330、差分判断部340及び警告信号出力部350を備えている。
【0064】
第一変化量算出部310は、第一計測器220が出力した第一合計重量の初期状態からの変化量である第一変化量を算出する。具体的には、第一変化量算出部310は、第一計測器220が出力している第一合計重量の値から第一合計重量の初期値を減じることで、当該第一変化量を算出する。
【0065】
第二変化量算出部320は、第二計測器230が出力した第二合計重量の初期状態からの変化量である第二変化量を算出する。具体的には、第二変化量算出部320は、第二計測器230が出力している第二合計重量の値から第二合計重量の初期値を減じることで、当該第二変化量を算出する。
【0066】
差分算出部330は、第一変化量算出部310が算出した第一変化量と第二変化量算出部320が算出した第二変化量との差分を算出する。具体的には、差分算出部330は、第一変化量の値から第二変化量の値を減じることで、当該差分を算出する。なお、当該差分がマイナスの値となった場合は、差分算出部330は、当該差分の絶対値を当該差分として算出する。
【0067】
差分判断部340は、差分算出部330が算出した差分が所定の値以上か否かを判断する。つまり、差分が当該所定の値以上であれば、第一計測器220及び第二計測器230の少なくとも1つの計測器は間違った値を出力していることを示している。ここで、所定の値とは、状況に応じて自由に設定できる数値であり、計測精度や容器の大きさによって適宜設定される。
【0068】
警告信号出力部350は、差分判断部340によって当該差分が当該所定の値以上と判断された場合に、警告を行うための警告信号を、表示部50に出力する。つまり、差分が当該所定の値以上であれば、第一計測器220及び第二計測器230の少なくとも1つの計測器は間違った値を出力しているため、警告信号出力部350は、表示部50に警告内容を表示させるための警告信号を出力する。
【0069】
このようにして、表示部50には、第一計測器220及び第二計測器230の少なくとも1つの計測器は間違った値を出力している旨の警告内容が表示される。
【0070】
次に、重量計測装置10が行う動作の一例について説明する。
【0071】
図5は、本発明の実施の形態における重量計測装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0072】
まず、第一計測器220は、第一合計重量を計測する(S102)。具体的には、第一計測器220は、合計重量を計測し、第一合計重量として、警告部300に出力する。
【0073】
また、第二計測器230は、第二合計重量を計測する(S104)。具体的には、第二計測器230は、合計重量を計測し、第二合計重量として、警告部300に出力する。
【0074】
そして、警告部300は、第一合計重量と第二合計重量とが、所定の値以上異なる値となった場合に、警告を行う(S106)。具体的には、警告部300は、警告信号を表示部50に出力する。この警告部300が警告を行う処理の詳細については、後述する。
【0075】
そして、表示部50は、当該警告信号に基づき、警告内容を表示する(S108)。
【0076】
以上により、重量計測装置10が行う動作は終了する。
【0077】
次に、警告部300が警告を行う処理(図5のS106)について、詳細に説明する。
【0078】
図6は、警告部300が警告を行う処理(図5のS106)を説明するフローチャートである。
【0079】
まず、第一変化量算出部310は、第一計測器220が出力した第一合計重量の初期状態からの変化量である第一変化量を算出する(S202)。
【0080】
また、第二変化量算出部320は、第二計測器230が出力した第二合計重量の初期状態からの変化量である第二変化量を算出する(S204)。
【0081】
そして、差分算出部330は、第一変化量と第二変化量との差分を算出する(S206)。
【0082】
そして、差分判断部340は、差分算出部330が算出した差分が所定の値以上か否かを判断する(S208)。
【0083】
差分判断部340が、当該差分が所定の値以上であると判断した場合(S208でYES)、警告信号出力部350は、警告を行うための警告信号を、表示部50に出力する(S210)。
【0084】
また、差分判断部340が、当該差分が所定の値未満であると判断した場合(S208でNO)、処理を終了する。
【0085】
以上により、警告部300が警告を行う処理(図5のS106)は、終了する。
【0086】
次に、本発明に係る重量計測装置10の効果について説明する。
【0087】
図7は、本発明に係る重量計測装置10の効果を説明する図である。具体的には、同図は、従来の重量計測装置11の構成を示す図である。
【0088】
同図に示すように、従来の重量計測装置11は、図3に示された基端部130bに第二計測器230が設けられた第三幹体130を備えていない。
【0089】
これに対し、本発明に係る重量計測装置10では、第一計測器220と第二計測器230の両方で、給液容器20とろ液容器30との重量の合計を計測することで、2つの計測器によって相互監視を行う。また、第一計測器220と第二計測器230との計測結果が所定の値以上異なる値になった場合には、警告が行われる。
【0090】
このため、本発明に係る重量計測装置10では、第一計測器220又は第二計測器230に故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、当該故障や計測精度の低下をすぐに発見することができるので、安全性を確保することができる。
【0091】
以上、本発明に係る重量計測装置について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0092】
つまり、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0093】
例えば、上記実施の形態では、第一幹体110、第二幹体120及び第三幹体130は、直線状に接続されていた。しかし、第一幹体110、第二幹体120及び第三幹体130は、直線状に接続されることには限定されない。
【0094】
図8は、本発明の実施の形態における重量計測装置10の第一の変形例を示す図である。
【0095】
同図に示すように、第一幹体110、第二幹体120及び第三幹体130は、直線状ではなく、U字形状に接続されている。この構成によっても、上記実施の形態と同様の機能を有し、同様の効果を奏する。
【0096】
また、上記実施の形態では、第一幹体110、第二幹体120及び第三幹体130の3つの幹体が接続されて、給液容器20とろ液容器30の重量を計測することとした。しかし、幹体の数は3つには限定されず、2つでもよく、4つ以上であってもよい。特に、給液容器20が、透析液が収容された透析液容器23と補液が収容された補液容器24とに分かれている場合には、4つの幹体が必要である。
【0097】
図9は、本発明の実施の形態における重量計測装置10の第二の変形例を示す図である。
【0098】
同図に示すように、第一幹体110は、第四幹体112と第五幹体114とを備えている。つまり、重量計測装置10は、4つの幹体を備えている。
【0099】
そして、第一幹体110は、透析液容器23及び補液容器24からなる給液容器20を吊り下げるための第一取付部111を備えている。つまり、第一取付部111は、第三取付部113と第四取付部115とを備え、第三取付部113は透析液容器23を吊り下げ、第四取付部115は補液容器24を吊り下げている。
【0100】
そして、第四計測器211は、透析液容器23の重量を計測する。また、第五計測器212は、補液容器24の重量と透析液容器23の重量との合計を計測する。
【0101】
また、第一計測器220は、第三取付部113に吊り下げられた透析液容器23と、第四取付部115に吊り下げられた補液容器24と、第二取付部121に吊り下げられたろ液容器30との重量の合計である合計重量を計測し、第一合計重量として出力する。
【0102】
さらに、第二計測器230は、第三取付部113に吊り下げられた透析液容器23と、第四取付部115に吊り下げられた補液容器24と、第二取付部121に吊り下げられたろ液容器30との重量の合計である合計重量を計測し、第二合計重量として出力する。
【0103】
そして、警告部300は、第一合計重量と第二合計重量とが、所定の値以上異なる値となった場合に、警告を行う。
【0104】
また、上記実施の形態では、第一幹体110は、先端部110aに第一取付部111を備え、基端部110bに第三計測器210を備えており、第二幹体120は、先端部120aに第二取付部121を備え、基端部120bに第一計測器220を備えており、第三幹体130は、基端部130bに第二計測器230を備えていることとした。しかし、第一取付部111、第三計測器210、第二取付部121、第一計測器220及び第二計測器230が取り付けられている位置は、先端部又は基端部に限られず、幹体の中央部などであってもよい。また、第三計測器210、第一計測器220及び第二計測器230は、重量を計測できるのであれば、それぞれ第一幹体110、第二幹体120及び第三幹体130に備えられていなくともよい。
【0105】
また、上記実施の形態では、給液容器20及びろ液容器30は、第一幹体110及び第二幹体120から吊り下げられ、重量計測装置10により流体の重量が計測される。しかし、給液容器20及びろ液容器30は、第一幹体110及び第二幹体120から吊り下げられなくともよく、第一幹体110及び第二幹体120の上に載置されるように取り付けられ、重量計測装置10により流体の重量が計測されることにしてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、第一計測器220、第二計測器230及び第三計測器210は、それぞれ第二幹体120、第三幹体130及び第一幹体110の歪み量から重量を計測することとした。しかし、第一計測器220、第二計測器230及び第三計測器210は、それぞれ第二幹体120、第三幹体130及び第一幹体110の状態変化から、第二幹体120、第三幹体130及び第一幹体110が受けるトルクを検出することで、重量を計測することにしてもよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、警告信号出力部350は、警告信号を表示部50に出力して警告内容を表示させることとした。しかし、警告信号出力部350は、音声により警告を行うように警告信号を出力することにしてもよいし、血液浄化を停止させたり、給液やろ液の流量を調整したりするための警告信号を出力することにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明にかかる血液浄化装置が備える重量計測装置は、例えば腎機能不全の患者に対して、その患者の血液を浄化する際に、故障や計測精度の低下などが生じた場合でも、安全性を確保することができる重量計測装置等として有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 血液浄化装置
10 重量計測装置
20 給液容器
21 透析液ポンプ
22 補液ポンプ
23 透析液容器
24 補液容器
30 ろ液容器
31 ろ液ポンプ
40 血液浄化器
50 表示部
110 第一幹体
111 第一取付部
112 第四幹体
113 第三取付部
114 第五幹体
115 第四取付部
120 第二幹体
121 第二取付部
130 第三幹体
140 支持部材
210 第三計測器
211 第四計測器
212 第五計測器
220 第一計測器
230 第二計測器
300 警告部
310 第一変化量算出部
320 第二変化量算出部
330 差分算出部
340 差分判断部
350 警告信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化に使用される流体が収容された容器が取り付けられ、前記流体の重量を計測する重量計測装置であって、
第一流体が収容された第一容器が取り付けられるための第一取付部を備える第一幹体と、
前記第一幹体に接続され、第二流体が収容された第二容器が取り付けられるための第二取付部を備える第二幹体と、
前記第一取付部に取り付けられた前記第一容器と前記第二取付部に取り付けられた前記第二容器との重量の合計である合計重量を、前記第二幹体の変化から計測し、第一合計重量として出力する第一計測器と、
前記第二幹体に接続される第三幹体と、
前記合計重量を、前記第三幹体の変化から計測し、第二合計重量として出力する第二計測器と、
出力された前記第一合計重量と前記第二合計重量とが所定の値以上異なる値となった場合に、警告を行う警告部と
を備える重量計測装置。
【請求項2】
前記警告部は、
前記第一合計重量の初期状態からの変化量である第一変化量を算出する第一変化量算出部と、
前記第二合計重量の初期状態からの変化量である第二変化量を算出する第二変化量算出部と、
算出された前記第一変化量と前記第二変化量との差分を算出する差分算出部と、
算出された前記差分が前記所定の値以上か否かを判断する差分判断部と、
前記差分が前記所定の値以上と判断された場合に、警告を行うための警告信号を出力する警告信号出力部とを備える
請求項1に記載の重量計測装置。
【請求項3】
さらに、
前記第一取付部に取り付けられた前記第一容器の重量を、前記第一幹体の変化から計測する第三計測器を備える
請求項1又は2に記載の重量計測装置。
【請求項4】
さらに、
前記第三幹体を支持する支持部材を備え、
前記第一幹体は、先端部に前記第一取付部を備え、
前記第二幹体は、先端部が前記第一幹体の基端部に接続されるとともに、先端部に前記第二取付部を備え、
前記第三幹体は、先端部が前記第二幹体の基端部に接続されるとともに、基端部が前記支持部材に接続され、
前記第三計測器は、前記第一幹体の歪み量から前記第一容器の重量を計測し、
前記第一計測器は、前記第二幹体の歪み量から前記合計重量を計測し、
前記第二計測器は、前記第三幹体の歪み量から前記合計重量を計測する
請求項3に記載の重量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−7577(P2011−7577A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150358(P2009−150358)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【出願人】(000127570)株式会社エー・アンド・デイ (136)
【Fターム(参考)】