説明

野菜類スライサーにおける回転駆動力減速伝達機構

【課題】比較的高価なギアードモーターを用いることなく、モーター軸の回転をその伝達過程において減速して伝達することを可能にし、以て対コスト効果の向上を図れる回転駆動力減速伝達機構を提供する。
【解決手段】モーターハウジング10に設けられる軸筒15と、軸筒15内を通って延びるモーターの駆動軸と、回転基板11が設置されていて、軸筒15との間に配備される軸受22と駆動軸の先端部との間に配備される軸受23とを介して前記軸筒及び前記駆動軸に軸支される回転ケース16と、軸筒15の先端部に設置される固定太陽歯車30と、駆動軸と回転ケース16の縁部において軸支される丸刃14の自転軸19との間に配置される回転伝達手段26、27、28と、自転軸19に取り付けられて固定太陽歯車30に噛合する遊星歯車31とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜類スライサーにおける回転駆動力減速伝達機構に関するものであり、より詳細には、キャベツ、ニンジン、ごぼう、長ネギ、タマネギ、きゅうりその他の野菜、果実類、キノコ類その他の食材(以下「野菜類」とする)のスライス加工品を量産するための野菜類スライサーにおいて、モーター軸の回転速度を、その伝達過程において減速して供給することを可能にした回転駆動力減速伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は先に、非常に簡単な装備で野菜類のスライス加工を効率よく行うことができる野菜類切断機を開発した(特許文献1:特許第3817588号公報)。この野菜類切断機は、モーター軸の貫通突出部に遊嵌した固定太陽歯車(18)を機枠(1)に固着し、円形回転盤(25)が取り付けられていて固定太陽歯車(18)を被覆する中空回転盤(19)をビス(20)によってモーター軸(17)に固定し、中空回転盤(19)内に固定太陽歯車(18)に噛合する遊星歯車(21)を持つ丸刃(26)の回転軸(22)を設けたものである(図5、6参照)。
【0003】
この従来の野菜類切断機においては、ビス(20)によってモーター軸(17)に固定された中空回転盤(19)とそれに取り付けられている円形回転盤(25)とが、モーター軸(17)の回転に伴って直接回転駆動される。そして、その中空回転盤(19)の回転に伴って丸刃の回転軸(22)がモーター軸(17)の周りを公転しようとし、その際回転軸(22)に設置されている遊星歯車(21)が固定太陽歯車(18)に噛合している関係から、丸刃(26)がその公転動作に伴って高速に自転し、低速回転する円形回転盤(25)との間隙において野菜類をスライスする。
【0004】
このように従来の野菜切断機の場合は、モーター軸(17)がそれに直結されている中空回転盤(19)と円形回転盤(25)、並びに、中空回転盤(19)に軸支されている丸刃の回転軸(22)を直接回転駆動し、固定太陽歯車(18)とこれに噛合する遊星歯車(21)の関係から、円板状回転刃(16)を間接的に高速回転(自転)駆動する方式であるため、モーターとして比較的高価なギアードモーターを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3817588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、上記従来の野菜類切断機の場合は、モーター軸に取り付けられている中空回転盤と円形回転盤が直接回転駆動される方式であって、モーターとして比較的高価なギアードモーターを用いる必要があるため、その分コストが嵩んでいた。そこで本発明は、ギアードモーターを用いることなく、モーター軸の回転をその伝達過程において減速して伝達することを可能にし、以て、対コスト効果の向上を図ることができる野菜類スライサーにおける回転駆動力減速伝達機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、偏心的に円形開口を設けた回転基板と、前記円形開口の内縁部との間に適宜間隙を保持して前記円形開口内に臨むように配置される丸刃とを備えていて、前記丸刃が自転すると共に公転することにより、投入された野菜類を前記間隙に対応する厚さにスライスする野菜類スライサーにおける回転駆動力減速伝達機構であって、該機構は、モーターハウジングに設置されてモーターの駆動軸を挿通させる軸筒と、前記回転基板が設置されていて、前記軸筒との間に配備される軸受と前記駆動軸の先端部との間に配備される軸受とを介して前記軸筒及び前記駆動軸に軸支される回転ケースと、前記回転ケース内に臨む前記軸筒の先端部に固定設置される固定太陽歯車と、前記回転ケース内において前記駆動軸と前記回転ケースの縁部において軸支される前記丸刃の自転軸との間に配置される回転伝達手段と、前記自転軸に取り付けられて前記固定太陽歯車に噛合する遊星歯車とから成り、前記回転伝達手段は、ベルトとプーリの組み合わせ、駆動ギアと被動ギアの組み合わせ、チェーンとスプロケットの組み合わせのいずれかである、野菜類スライサーにおける回転駆動力減速伝達機構である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係る機構の場合は、モーターの駆動軸の回転は、低速回転させる回転基板を支持する回転ケースには直接作用せず、駆動軸と丸刃の自転軸との間に配置される回転伝達手段を介して自転軸に伝達され、それに取り付けられている遊星歯車とそれが噛合する固定太陽歯車との関係から、遊星歯車が固定太陽歯車に沿って公転しつつ自転し、回転ケースは、その遊星歯車の公転に伴って回転駆動される。従って、回転ケースの回転は、上記伝達過程において駆動軸の回転より減速されたものとなるため、本発明に係る機構は、比較的高価なギアードモーターを用いることなく構成することができ、以て、対コスト効果の向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る回転駆動力減速伝達機構を組み込んだ野菜類スライサーの一実施形態の全体斜視図である。
【図2】本発明に係る回転駆動力減速伝達機構を組み込んだ野菜類スライサーの一実施形態の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る回転駆動力減速伝達機構の要部の部分破断斜視図である。
【図4】本発明に係る回転駆動力減速伝達機構の要部の縦断面図である。
【図5】従来の野菜類切断機の構成を示す斜視図である。
【図6】従来の野菜類切断機の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態につき、添付図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る回転駆動力減速伝達機構が組み込まれた野菜類スライサーの全体斜視図、図2はその分解斜視図である。そこに示されるように、本スライサーは、スタンド1に支持される本体部2と、本体部2に脱着可能に被装される外装カバー3とから構成され、外装カバー3には、野菜類を投入するための投入部4と、加工済みスライス品を供出するための供出部5が設けられる。外装カバー3は、固定ネジ8を締め又は緩めることにより、本体部2に対して脱着可能である。
【0011】
本体部2は、刃駆動用のモーター10aを収容するモーターハウジング10と、偏心的に円形開口12を設けた回転基板11と、円形開口12の内縁部との間に適宜間隔の間隙13を保持して円形開口12内に臨むように配置される丸刃14と、回転基板11及び丸刃14を支持する回転ケース16とから成り、回転ケース16内に、本発明に係る回転駆動力減速伝達機構が組み込まれる。回転基板11は、その裏面に固定した数本の支持軸17が、回転ケース16の側面に設けた軸支持部18に支持されて、回転ケース16に取り付けられる。
【0012】
モーター10aから延びる駆動軸21は、モーターハウジング10の端面に設けられた軸筒15内に挿通されて回転ケース16内に臨む(図4参照)。回転ケース16の両側面に軸受22、23が配備され、モーターハウジング10側の側面に設置される軸受22には軸筒15が嵌め込まれ、他方の軸受23には駆動軸21の先端部が嵌め込まれる。かくして回転ケース16は、軸筒15並びに駆動軸21に回転自在に支持されることになるが、後述するように、駆動軸21の回転が直接回転ケース16に伝達されることはない。
【0013】
回転ケース16の縁部両側面に軸受24、25が配備され、これらの軸受24、25によって丸刃14の自転軸が軸支される。丸刃14は、回転ケース16から突出する自転軸19の外端部に固定される。
【0014】
本発明に係る機構における駆動軸21から自転軸19への回転伝達手段としては、ベルトとプーリの組み合わせ、駆動ギアと被動ギアの組み合わせ、あるいは、チェーンとスプロケットの組み合わせが考えられる。図示した例はベルトとプーリの組み合わせであり、その場合好ましくは、ベルトとして滑りにくい歯付きベルト28を用い、プーリとして歯付きプーリ26、27を用いる。
【0015】
一方の歯付きプーリ26は、駆動軸21の、回転ケース6内において軸筒15から突出する先端部分に設置され、他方の歯付きプーリ27は、丸刃14の自転軸19に設置され、これら歯付きプーリ26と歯付きプーリ27との間に歯付きベルト28が掛け回される。自転軸19は、歯付きプーリ26と歯付きプーリ27の歯数調整により、駆動軸21の回転速度と同速に、あるいは、低速又は高速に回転駆動させることができる。
【0016】
また、駆動ギアと被動ギアの組み合わせを用いる場合は、回転ケース16内における駆動軸21に駆動ギアが設置され、自転軸19に該駆動ギアに噛合する被動ギアが設置される。この場合も、駆動ギアと被動ギアの歯数調整により、駆動軸21の回転を変速して自転軸19に伝達することができる。更に、チェーンとスプロケットの組み合わせを用いる場合も同様である。
【0017】
回転ケース16内に延出する軸筒15の先端部には、固定太陽歯車30が固定設置される。また、自転軸19に、固定太陽歯車30に噛合する遊星歯車31が取り付けられる。
【0018】
上記構成においてモーター10aを作動させると、その駆動軸21の回転は、歯付きプーリ26、27と歯付きベルト28を介して自転軸19に伝達され、軸筒15に対してはもちろん、軸受23を介して接している回転ケース16に直接伝達されることはない。駆動軸21の回転が自転軸19に伝達されると、自転軸19は自転しようとし、それに取り付けられている遊星歯車31が、それが噛合する固定太陽歯車30を回転させようと作用する。しかし、固定太陽歯車30は軸筒15に固定されていて回転しないため、結果として遊星歯車31は固定太陽歯車30に沿って、自転しつつ公転することになる。
【0019】
このようにして自転軸19が公転する結果、軸受24、25を介して自転軸19を軸支している回転ケース16が、駆動軸21(軸筒15)を軸にして回転するが、当然その回転は、駆動軸21の回転速度に対してかなり減速されたものとなる。また、支持軸17及び軸支持部18を介して回転ケースに一体化されている回転基板11も、駆動軸21(軸筒15)を軸にして減速されて回転することになる。かくして、自転軸19に設置されている丸刃14は、固定太陽歯車30に沿って公転しつつ、その公転方向と同一方向に高速に自転して、投入されてくる野菜類を、連続的にその間隙13に対応する厚みにスライスする。
【0020】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなく、更に異なる実施形態を構成することができることは明白である。従って、この発明は、添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0021】
1 スタンド
2 本体部
3 外装カバー
4 投入部
5 供出部
8 固定ネジ
10 モーターハウジング
10a モーター
11 回転基板
12 円形開口
13 間隙
14 丸刃
15 軸筒
16 回転ケース
17 支持軸
18 軸支持部
19 自転軸
21 駆動軸
22−25 軸受
26、27 歯付きプーリ
28 歯付きベルト
30 固定太陽歯車
31 遊星歯車


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心的に円形開口を設けた回転基板と、前記円形開口の内縁部との間に適宜間隙を保持して前記円形開口内に臨むように配置される丸刃とを備えていて、前記丸刃が自転すると共に公転することにより、投入された野菜類を前記間隙に対応する厚さにスライスする野菜類スライサーにおける回転駆動力減速伝達機構であって、
該機構は、モーターハウジングに設置されてモーターの駆動軸を挿通させる軸筒と、前記回転基板が設置されていて、前記軸筒との間に配備される軸受と前記駆動軸の先端部との間に配備される軸受とを介して前記軸筒及び前記駆動軸に軸支される回転ケースと、前記回転ケース内に臨む前記軸筒の先端部に固定設置される固定太陽歯車と、前記回転ケース内において前記駆動軸と前記回転ケースの縁部において軸支される前記丸刃の自転軸との間に配置される回転伝達手段と、前記自転軸に取り付けられて前記固定太陽歯車に噛合する遊星歯車とから成り、
前記回転伝達手段は、ベルトとプーリの組み合わせ、駆動ギアと被動ギアの組み合わせ、チェーンとスプロケットの組み合わせのいずれかである、野菜類スライサーにおける回転駆動力減速伝達機構。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−250305(P2012−250305A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123531(P2011−123531)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(591065158)
【Fターム(参考)】