説明

金具の取付構造及び金具の取付方法

【課題】騒音や振動の発生を抑えると共に、コンクリート躯体内部の鉄筋や埋設配管・配線等を損傷することがない金具の取付構造及び金具の取付方法を提供する。
【解決手段】コンクリート躯体2に吊りボルト13を取り付けるための吊りボルト13の取付構造であって、コンクリート躯体2の表面に定着プレート11が接着剤10で貼り付けられており、この定着プレート11を介して吊りボルト13がコンクリート躯体2に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート躯体に吊りボルト等の金具を取り付けるための金具の取付構造及び金具の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、改修工事等で、配管、ダクト、機器等の設備構造や天井、壁等の建築構造をコンクリート躯体に固定する場合には、コンクリート躯体に穿穴し、あと施工アンカーを打ち込んでいた(例えば、特許文献1参照)。そして、かかる技術によれば、設備構造や建築構造をコンクリート躯体に強固に取り付けることが可能となる。
【特許文献1】特開平10−131302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コンクリート躯体に穿穴し、あと施工アンカーを打ち込むときには、騒音や振動が発生するので、居住者に大きな不快感を与えてしまい、また、コンクリート躯体内部の鉄筋や埋設配管・配線等を損傷する恐れもあった。
【0004】
そこで、鉄筋や埋設配管・配線等を損傷しないようにするため、事前にX線や超音波により埋設物の探査を行う方法がある。しかし、X線や超音波による探査は、金属管を検知することは容易であるが、CD管など樹脂管は不鮮明であり、これを検知することは困難である。また、アンカー打設が広範囲に亘る場合には、時間やコストの制約から実際には探査しないことも多かった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、騒音や振動の発生を抑えると共に、コンクリート躯体内部の鉄筋や埋設配管・配線等を損傷することがない金具の取付構造及び金具の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、コンクリート躯体に金具を取り付けるための金具の取付構造であって、コンクリート躯体の表面に定着プレートが接着剤で貼り付けられており、この定着プレートを介して金具がコンクリート躯体に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、コンクリート躯体に吊りボルトを取り付ける際に、コンクリート躯体に穿穴し、あと施工アンカーを打ち込む必要がない。このため、騒音や振動の発生を抑えることができると共に、コンクリート躯体内部の鉄筋や埋設配管・配線等を損傷することもないので、事前探査を必要としない。
【0008】
また、上記金具の取付構造において、コンクリート躯体の表面と定着プレートとの間に、仮留めテープを介在させたこととしてもよい。このような構成によれば、接着剤が硬化する前であっても、定着シートはコンクリート躯体から剥がれにくくなる。
【0009】
また、上記金具の取付構造において、定着プレートは、ボルト孔を有する穴あき鋼板(例えば、アンチ孔縞鋼板等)であり、ボルト孔にはコンクリート躯体側から皿ボルトが挿通されており、且つ、この皿ボルトに長ナットが設けられ、長ナットに金具がねじ込まれていることとしてもよい。このような構成によれば、吊りボルトとコンクリート躯体との接着力が向上する。
【0010】
また、上記金具の取付構造において、定着プレートには、コンクリート躯体との間で空間を構成する凹部が形成されており、凹部の底面にて定着プレートを挟み込むようにして設けられた座金と、定着プレートを空間側から貫通すると共に水平方向及び上下方向に移動可能な頭付きボルトと、を有することとしてもよい。このような構成によれば、吊りボルトに加わる衝撃力を吸収することが可能となる。この場合、座金の定着プレートと接触する側の面、または頭付きボルトの前記座金と接触する側の面が、定着プレート側に向かって凸状となるように曲面成形されていることとしてもよい。また、空間には、衝撃を吸収するための緩衝材が充填されていることとしてもよい。さらに、座金と頭付きボルトの頭部との間、またはコンクリート躯体の表面と頭付きボルトの頭部との間に、スプリング等の弾性体が設けられていることとしてもよい。
【0011】
また、上記金具の取付構造において、定着プレートを覆い囲むように耐火被覆が施されていることとしてもよい。このような構成によれば、火災時に高熱が発生したとしても、接着剤は保護される。
【0012】
また、本発明は、コンクリート躯体に金具を取り付けるための金具の取付方法であって、コンクリート躯体の表面に定着プレートを接着剤で貼り付けると共に、この定着プレートを介して金具をコンクリート躯体に取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、騒音や振動の発生を抑えつつ、コンクリート躯体内部の鉄筋や埋設配管・配線等を損傷することなく、吊りボルト等の金具をコンクリート躯体に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る金具の取付構造及び金具の取付方法を実施するための最良の形態につき、金具として吊りボルトを例に挙げつつ説明する。
【0015】
===第1実施形態(本発明の基本構成)===
まず、図1A及び図1Bを参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。
【0016】
図1Aは、本発明の第1実施形態における吊りボルトの取付構造を示す側面図である。
【0017】
図1Aに示すように、本実施形態における吊りボルトの取付構造1は、定着プレート11と、定着プレート11をコンクリート躯体2の表面に貼り付けるための接着剤10と、長ナット12と、吊りボルト13とを有する。そして、このような吊りボルトの取付構造1は、コンクリート躯体2の表面に定着プレート11を接着剤10で貼り付けた上、この定着プレート11に長ナット12を設け、さらに長ナット12に吊りボルト13をねじ込むことにより構成されるものである。なお、同図では、吊りボルト13を定着プレート11に設ける形態として、吊り金具の一種である長ナット12を介して吊りボルト13を定着プレート11に設ける形態を示しているが、長ナット等の吊り金具を介することなく直接吊りボルト13を定着プレート12に設けてもよい。また、本実施形態では、吊り金具として長ナット12を例に挙げて説明しているが、長ナット以外の吊り金具(例えば、カプラー等)を用いてもよい。
【0018】
上記構成の本実施形態において、定着プレート11の形状は、正方形若しくは長方形であるが、円形その他の形状であってもよい。
【0019】
また、接着剤10としては、エポキシ系接着剤等の構造用接着剤を用いることが好ましい。特に、コンクリート躯体の天井面等に施工する場合には、垂れなどの問題がある。このため、粘度が高めに調整された接着剤を使用することが好ましく、その場合には、仮留めも不要となり施工性が向上する。さらに、接着剤10として硬化後の硬さが低い接着剤すなわち弾性率の低い接着剤を用いる場合には、高い衝撃力吸収効果を期待することができると共に、配管等から伝わる振動の防振にも寄与するので好ましい。なお、養生時間を短縮するために、硬化時間の短い接着剤を用いたり、あるいは主剤と硬化剤を使用直前で混合するなどしてもよい。
【0020】
また、コンクリート躯体2の表面に貼り付けられた定着プレート11に、吊りボルト13を設ける方法としては、例えば、(1)定着プレートに長ナットを溶接し、この長ナットに吊りボルトをねじ込んで設ける方法、(2)定着プレートにネジ切りを設け、このねじ切りに吊りボルトをねじ込んで設ける方法、(3)定着プレートにコンクリート躯体側から皿ボルトを挿通しておき、この皿ボルトに長ナットを設け、さらにこの長ナットに吊りボルトをねじ込んで設ける方法などがある。
【0021】
上記(1)〜(3)のうち、(1)の方法によれば、溶接にて長ナットを定着プレートに取り付けるため、安定した取り付けが可能となる。また、長ナットの鉛直方向の寸法を(3)の方法と比べて短くすることができ、この場合には、横方向から物が当たったとしても長ナットが定着プレートから外れてしまうことはない。一方、(2)の方法によれば、吊りボルトの取り付けを接着剤の硬化後に行うことができるようになり、また、定着プレート面に突起がないため作業性がよい。さらに、(3)の方法では、皿ボルトの孔を若干大きくしておき、あるいは長ナットの締め付けを緩くしておく等、皿ボルトと定着プレートとの間に遊びを設けることが可能である。この場合には、配管等の取り付け作業時に横方向からボルトに水平力が作用したとしても、定着プレートに加わる衝撃を吸収し、緩和することができるようになる。
【0022】
また、定着プレート11の横幅(x)に比べ、長ナット12の鉛直方向の寸法(y)が長すぎると、例えば、物が長ナット12に当たった際に、定着プレート11がコンクリート躯体2から剥がれてしまう等の問題がある。すなわち、予め所定長さの吊りボルト13を溶接した長ナット12を用いた場合には、作業性が悪く施工時に作業者の体や物が長ナット12に当たりやすい。そして、長ナット12の鉛直方向の寸法(y)が長いほど長ナット12に当たったときに接着部11cに作用する衝撃力が大きく、しかも接着剤は横方向の力に弱いため、貼り付けた定着プレート11がコンクリート躯体2から剥がれてしまう恐れがある。また、接着剤10が硬化する前においては、定着プレート11の接着力は鉛直方向からの衝撃にも弱い。このため、長ナット12及び吊りボルト13等の重量負荷により、定着プレート11がコンクリート躯体2から剥がれてしまう恐れもある。
【0023】
そこで、長ナット12の鉛直方向の寸法(y)はできる限り短いものとし、また、吊りボルト13等は接着剤10が硬化した後に取り付けることとする。ここで、長ナット12の鉛直方向の寸法(y)は、定着プレート11の横幅(x)に対する長ナット12の鉛直方向の寸法比率が、例えば、0.5以下(y/x≦0.5)となるように設定してもよい。また、上記(1)のように長ナット12を定着プレート11に溶接して取り付ける場合には、吊りボルト径及び施工時のナットのつかみ代等の施工性を考慮し、長ナット12の鉛直方向の寸法(y)を、例えば、20mm〜25mmとする。
【0024】
なお、定着プレート11の横幅(x)、すなわち正方形の定着プレート11の一辺の長さは、例えば、アンカー金具(図示せず)の吊り下げ耐荷重等を考慮して設定する。
【0025】
また、接着剤10が硬化するまでには時間を要するため、仮留めを行う必要がある場合もある。このような場合に仮留めを行う方法としては、例えば、図1Bに示すように、コンクリート躯体2の表面と定着プレート11との間に、接着剤10と共にマジックテープやブチルゴムテープ等の仮留めテープ14を介在させる方法がある。このように仮留めを行うことにより、接着剤10の垂れや、定着プレート11の剥離等を防止することが可能となり、施工性が向上する。さらに、仮留めテープ14の厚さを適宜設計することにより、コンクリート躯体2と定着プレート11との接着部の厚さを自由に調整することもできるので、仮留めテープ14を定着プレート11の厚さを管理するために用いてもよい。
【0026】
===第2実施形態(接着力向上タイプ)===
次に、図2を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態における吊りボルトの取付構造は、特に、コンクリート躯体の表面と吊りボルトとの接着力を向上させるためのものである(接着力向上タイプ)。
【0027】
図2は、本発明の第2実施形態における吊りボルトの取付構造を説明するための説明図であり、(a)は定着プレート11をコンクリート躯体2の反対側(例えば、床面側)から見た図であり、(b)は定着プレートの一部を横側から見た図である。
【0028】
図2(a)及び(b)に示すように、本実施形態における吊りボルトの取付構造は、ボルト孔21を有する正方形の定着プレート11と、皿ボルト22と、長ナット12と、図示しない吊りボルトとを有する。かかる吊りボルトの取付構造においては、定着プレート11として穴あき鋼板であるアンチ孔縞鋼板を用いており、これらに設けられている穴をボルト孔21として利用している。すなわち、同図において、正方形の定着プレート11には、例えば、その中央部及び角部に合計5箇所の穴が設けられているが、そのうち中央部に設けられた穴をボルト孔21として利用している。そして、このボルト孔21にはコンクリート躯体側(図中の上側)から皿ボルト22を挿通し、ボルト孔21から突き出た皿ボルトの先端部22aに長ナット12を設ける。その上で、長ナット12の反対側(図中の下側)から吊りボルト(図示せず)をねじ込む。ボルト孔21にはコンクリート躯体2側からワッシャ23を設け、接着剤がボルト孔21から洩れないようにしておく。なお、定着プレート11として、通常の鋼板にボルト孔21を形成したものを用いてもよい。
【0029】
このような吊りボルトの取付構造によれば、上記(3)の場合と同様の衝撃吸収効果を期待することができる。さらに、鋼板の穴あるいは縞状の突起部24の作用によって、定着プレート11とコンクリート躯体2との一体性を強化することができるので、コンクリート躯体2と吊りボルトとの接着力を向上させることも可能となる。
【0030】
なお、本実施形態では、定着プレート11に設けられた穴のうち一部の穴(例えば、図2に示す中心部の穴)がボルト孔21として用いられているにすぎない。このため、定着プレート11とコンクリート躯体2との間に接着剤を充填する際には、ボルト孔21として用いられていない穴(例えば、図2に示す角部の穴)から接着剤が洩れ出してキノコ状に固化する。このような形状で固化した接着剤はアンカー効果を有するため、定着プレート11とコンクリート躯体2との一体性が強化される。その結果、コンクリート躯体2と吊りボルトとの接着力も向上する。
【0031】
===第3実施形態(衝撃吸収タイプ)===
次に、図3A〜図3Cを参照しながら、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態における吊りボルトの取付構造は、特に、吊りボルトに加わる衝撃を吸収するためのものである(衝撃吸収タイプ)。このタイプに属するものとしては、(A)標準型、(B)緩衝材内蔵型、(C)スプリング内蔵型がある。以下、各々説明する。
【0032】
<A.標準型>
図3A(a)は、本発明の第3実施形態における吊りボルトの取付構造(標準型)を示す側面図であり、(b)及び(c)はその変形例を示す。
【0033】
図3A(a)に示すように、本実施形態における標準型の吊りボルトの取付構造には、凹部11aが形成された定着プレート11が用いられている。凹部11aはコンクリート躯体2との間で空間31を構成する。本実施形態の吊りボルトの取付構造は、平板の座金32a(二枚)と、頭付きボルト33とを具備しており、頭付きボルト33及び吊りボルト13を長ナット12でつなぐことにより、吊りボルト13がコンクリート躯体2に取り付けられるようになっている。
【0034】
座金32aは、凹部11aの底面を挟み込むようにして設けられている。また、頭付きボルト33は、この凹部11aに形成された貫通孔11b及び座金32aを、空間31側から貫通するように設けられており、水平方向のみならず上下方向にも移動することができるようになっている。すなわち、頭付きボルト33の胴部33bと凹部11aの貫通孔11bとの間には、一定の間隙が設けられているため、頭付きボルト33は水平方向に移動することができる(同図中の矢印参照)。また、頭付きボルト33の頭部33aとコンクリート躯体2との間には、空間31によって一定の間隙が設けられているため、頭付きボルト33は上下方向に移動することもできる。
【0035】
このような構成によれば、吊りボルト13に生じる衝撃力は、頭付きボルト33の水平方向及び上下方向の動きによって吸収、分散される。このため、吊りボルト13に加えられた衝撃力は、定着プレート11とコンクリート躯体2との接着部11cには伝わりにくく、従って、定着プレート11がコンクリート躯体2から剥離されにくくなる。すなわち、上述のように接着剤は横方向の力に弱いのであるが、本実施形態では、頭付きボルト33の動きによって横方向の力を緩和できるので、定着プレート11がコンクリート躯体2から剥がれてしまうことを防止できるのである。さらに、長ナット12に対する胴部33b及び吊りボルト13のねじ込み量を変えることによって、吊りボルト13の取付強度を調整することができ、また、吊りボルト13の取付位置を上下に調整することも可能となる。このように吊りボルト13と頭付きボルト33とを長ナット12を介してつなぐことにより、容易に吊りボルトをコンクリート躯体に取り付けることができるため、現場での作業性が向上する。
【0036】
一方、図3A(b)及び(c)に示す変形例における吊りボルトの取付構造では、座金32又は頭付きボルト33の形状が図3A(a)に示す形状と異なっている。
【0037】
すなわち、図3A(b)に示すように、座金32bの形状は、定着プレート11との接触面が定着プレート11側に向かって凸状となるように曲面成形されていてもよい。また、図3A(c)に示すように、頭付きボルト33の形状は、座金との接触面すなわち頭付きボルト33の頭部33aの下面(締め付け側)が下向きに曲面成形されていてもよい。
【0038】
このような構成によれば、上下二枚の座金32bの接合部及び頭部33aの下面と座金32aとの接合部はピン接合となっており、吊りボルト13は揺動可能となる。このため、吊りボルト13から定着プレート11への衝撃力の伝達をよりいっそう抑えることができ、その結果、定着プレート11に生じる曲げを低減することが可能となる。
【0039】
<B.緩衝材内蔵型>
図3Bは、本発明の第3実施形態における吊りボルトの取付構造(緩衝材内蔵型)を示す側面図である。
【0040】
図3Bに示すように、本実施形態における吊りボルトの取付構造には、空間31に緩衝材34が充填されたものが用いられている。この緩衝材34としては、弾性型発泡ポリウレタン樹脂や、粘弾性ゴム(例えば、天然ゴム、アクリルゴム等)が好ましい。かかる緩衝材34は、衝撃吸収材として機能するため、空間31に何ら緩衝材等が充填されていない場合(図3A参照)と比べると、よりいっそう衝撃を吸収しやすくなる。このため、定着プレート11はコンクリート躯体2から剥がれにくくなる。
【0041】
なお、同図に示す座金32の形状は、図3A(a)に示す座金32aの形状(平板)と同一であるが、図3A(b)に示す座金32bの形状(曲面成形された形状)であってもよい。また、同図に示す頭付きボルトの形状は、図3A(c)に示す変形例であってもよい。
【0042】
<C.スプリング内蔵型>
図3Cは、本発明の第3実施形態における吊りボルトの取付構造(スプリング内蔵型)を示す側面図である。
【0043】
図3Cに示すように、本実施形態における吊りボルトの取付構造には、上側の座金32と頭付きボルトの頭部33aとの間に、スプリング等の弾性体35が設けられている。かかる弾性体35としては、スプリングのみに限らず、バネ等を用いてもよい。また、コンクリート躯体2の表面と頭付きボルトの頭部33aとの間に、弾性体が設けられていてもよい(図示せず)。
【0044】
このような弾性体35は、吊りボルト13から頭付きボルト33に伝達した衝撃を弾性作用によって吸収する。このため、空間31に何ら弾性体が設けられていない場合(図3A参照)と比べると、よりいっそう衝撃を吸収しやすくなり、定着プレート11はコンクリート躯体2から剥がれにくくなる。
【0045】
なお、同図に示す座金32の形状は、図3A(a)に示す座金32aの形状(平板)と同一であるが、図3A(b)に示す座金32bの形状(曲面成形された形状)であってもよい。また、同図に示す頭付きボルトの形状は、図3A(c)に示す変形例であってもよい。さらに、同図に示す空間31には、緩衝材が充填されていないが、図3Bに示す緩衝材34が充填されていてもよい。
【0046】
ところで、本実施形態における吊りボルトの取付構造は、第1実施形態における吊りボルトの取付構造1と組み合わせてもよい。すなわち、定着プレート11のうちコンクリート躯体2との接着部11cは、第2実施形態に示すような接着力向上タイプとしてもよい。この場合には、吊りボルト13に加わる衝撃を定着プレート11によって吸収すると共に、定着プレート11とコンクリート躯体2との接着力が向上する。
【0047】
===第4実施形態(耐火被覆併用タイプ)===
次に、図4を参照しながら、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態における吊りボルトの取付構造は、特に、定着プレートに耐火被覆を施すためのものである(耐火被覆併用タイプ)。
【0048】
図4は、本発明の第4実施形態における吊りボルトの取付構造(耐火被覆併用タイプ)を示す説明図である。
【0049】
図4に示すように、本実施形態の吊りボルトの取付構造には、定着プレート11を覆い囲むように耐火被覆が施されている。耐火被覆を施すには、まず丸形の接着治具41内に半球型に成形された耐火被覆体42を装着した後、この耐火被覆体42を装着した接着治具41を、定着プレート11及び長ナット12を覆うようにしてコンクリート躯体2の表面に接着する。かかる耐火被覆体42としては、珪酸カルシウム、石膏等の無機系のものと、加熱発泡樹脂等の有機系のものとがある。加熱発泡樹脂としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム混練PIBゴム等がある。なお、同図では、第2実施形態の定着プレート11に耐火被覆を施したものを示しているが、第1実施形態の定着プレート11に耐火被覆を施したものであってもよい。また、耐火被覆体42の形状としては、同図に示すような半球型のみに限らず、箱型等の他の形状であってもよい。さらに、本実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。
【0050】
ところで、コンクリート躯体2の表面と定着プレート11とを貼り合わせる際に、接着剤10としてエポキシ系等の有機系接着剤を用いる場合がある。この場合には、火災時に直に炎に曝され、あるいは接着剤10の熱劣化が予想される約200℃以上の熱に曝されると、有機系接着剤は熱に弱く、定着プレート11や頭付きボルト33等の取付治具がコンクリート躯体2から剥がれ落ちてしまうことがある。このため、別途、耐火被覆や遮熱材を施す必要がある。しかし、本実施形態では、耐火被覆又は遮熱材を取付治具と一体化することにより、かかる施工を簡略化することができ、少なくとも約30分乃至1時間は、接着剤10を保護することが可能となる。
【0051】
なお、以上の実施形態では、金具として吊りボルトを例に挙げて説明しているが、本発明は、吊りボルト以外の金具の場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】本発明の第1実施形態における吊りボルトの取付構造を示す側面図である。
【図1B】本発明の第1実施形態における仮留めテープを介在させた場合の説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態における吊りボルトの取付構造を説明するための説明図であり、(a)は定着プレート11をコンクリート躯体2の反対側(例えば、床面側)から見た図であり、(b)は定着プレートの一部を横側から見た図である。
【図3A】本発明の第3実施形態における吊りボルトの取付構造(標準型)を示す側面図である。
【図3B】本発明の第3実施形態における吊りボルトの取付構造(緩衝材内蔵型)を示す側面図である。
【図3C】本発明の第3実施形態における吊りボルトの取付構造(スプリング内蔵型)を示す側面図である。
【図4】本発明の第4実施形態における吊りボルトの取付構造(耐火被覆併用タイプ)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 吊りボルトの取付構造
2 コンクリート躯体
10 接着剤
11(11a,11b,11c) 定着プレート(凹部,貫通孔,接着部)
12 長ナット
13 吊りボルト
14 仮留めテープ
21 ボルト孔
22(22a) 皿ボルト(先端部)
23 ワッシャ
24 突起部
31 空間
32(32a,32b) 座金(平板,曲面成形)
33(33a,33b) 頭付きボルト(頭部,胴部)
34 緩衝材
35 弾性体
41 接着治具
42 耐火被覆体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体に金具を取り付けるための金具の取付構造であって、
前記コンクリート躯体の表面に定着プレートが接着剤で貼り付けられており、この定着プレートを介して前記金具が前記コンクリート躯体に取り付けられていることを特徴とする金具の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の金具の取付構造において、
前記コンクリート躯体の表面と前記定着プレートとの間に、仮留めテープを介在させたことを特徴とする金具の取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金具の取付構造において、
前記定着プレートは、ボルト孔を有する穴あき鋼板であり、前記ボルト孔には前記コンクリート躯体側から皿ボルトが挿通されており、且つ、この皿ボルトに長ナットが設けられ、該長ナットに前記金具がねじ込まれていることを特徴とする金具の取付構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の金具の取付構造において、
前記定着プレートには、前記コンクリート躯体との間で空間を構成する凹部が形成されており、該凹部の底面にて前記定着プレートを挟み込むようにして設けられた座金と、該定着プレートを前記空間側から貫通すると共に水平方向及び上下方向に移動可能な頭付きボルトと、を有することを特徴とする金具の取付構造。
【請求項5】
請求項4記載の金具の取付構造において、
前記座金の前記定着プレートと接触する側の面、または前記頭付きボルトの前記座金と接触する側の面が、前記定着プレート側に向かって凸状となるように曲面成形されていることを特徴とする金具の取付構造。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の金具の取付構造において、
前記空間には、衝撃を吸収するための緩衝材が充填されていることを特徴とする金具の取付構造。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の金具の取付構造において、
前記座金と前記頭付きボルトの頭部との間、または前記コンクリート躯体の表面と前記頭付きボルトの頭部との間に、スプリング等の弾性体が設けられていることを特徴とする金具の取付構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の金具の取付構造において、
前記定着プレートを覆い囲むように耐火被覆が施されていることを特徴とする金具の取付構造。
【請求項9】
コンクリート躯体に金具を取り付けるための金具の取付方法であって、
前記コンクリート躯体の表面に定着プレートを接着剤で貼り付けると共に、この定着プレートを介して前記金具を前記コンクリート躯体に取り付けることを特徴とする金具の取付方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−183323(P2006−183323A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377768(P2004−377768)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】