説明

金具の取出搬送方法

【課題】搬送ベルトに取り付けた磁石による金具吸着によって金具搬送するに際し、金具重量の軽重に拘らず確実に金具を1つだけ吸着搬送でき、且つ吸着した1つの金具を搬送過程で脱落させてしまうのを防止できる金具の取出搬送方法を提供する。
【解決手段】収容部14にランダム状態に収容した金具群から搬送ベルト16に取り付けた磁石ごとに金具を吸着して取り出し、次工程に搬送するに際し、磁石を搬送ベルト16の搬送面に向けて進退可能に取り付けておく一方、搬送路に沿った所定位置に磁石を後退方向に位置調節して吸着力を弱め、余分の金具を離脱させる金具離脱装置20を設けておく。そして磁石が金具離脱装置20を通過する際に余分の金具を離脱させ、通過後に磁石を再び自動的に前進させて吸着力を強めるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収容部に収容した金具群から磁石の吸着力によって金具を取り出し、次工程へと搬送する金具の取出搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石(永久磁石、以下単に磁石とする)による吸着力を利用して磁性材から成る被処理品を保持し、所定位置に停止させたり或いは所定配列状態に配列させたり、これを搬送したりすることが行われている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、条鋼を搬送装置にて搬送するに際し、ストッパによるストッパ位置の直前位置で、磁石により条鋼を吸着して搬送面への載置圧を高め、条鋼が重なりあってしまうのを防止する点が開示されている。
【0004】
また下記特許文献2,特許文献3には、異形棒鋼の上方に電磁石或いは永久磁石を配置し、その磁石の磁力線を棒鋼に通して、棒鋼間に発生する磁気的な反発力にて複数の棒鋼を離間させ、それぞれをローラ上に配列状態とする点が開示されている。
【0005】
更に下記特許文献4には、金具の整列方法についての発明が示され、そこにおいて収容部に収容した金具群から搬送ベルトに取り付けた磁石の吸着力を利用して金具を1つずつ取り出し、これを搬送ベルトの移動によって搬送するようになした点が開示されている。
【0006】
ところでこの特許文献4に開示の金具の取出搬送方法の場合、磁石の磁力即ち金具に対する吸着力が一定であるため、種類の異なった金具即ち重量の重い金具と重量の軽い金具とを取り出し搬送するに際して、同一の装置にて対応することが難しいといった問題がある。
【0007】
例えば磁石として軽量の金具を吸着するのに適した磁力を有するものを用いた場合、重量の重い金具の取出搬送用に用いたときに金具を良好に吸着し取り出すことができず、逆に重量の重い金具を吸着するのに適した強い磁力を有するものを用いた場合には、軽量の金具の取出搬送用に用いたとき、金具を2つ若しくはそれ以上の個数を同時に吸着してしまい、収容部に収容した金具群から磁石により1つずつ金具を取り出して搬送することができない。
【0008】
この場合、搬送ベルトに取り付けてある磁石を金具の種類、即ち重量に応じた適正な磁力を有する磁石と取り替えたり、或いは予定された最も重い金具を吸着できるような強い磁力を持った磁石を搬送ベルトに取り付けておき、そして金具の重量に応じて搬送ベルトに取り付けた磁石の全てを搬送面から離す方向に位置調節してその調節位置に固定しておき、これにより磁石と金具との間の距離を一律に大きくすることによって、金具に対する各磁石の吸着力を丁度1つの金具を吸着するのに適した吸着力とするといったことが考えらえる。
【0009】
しかしながら前者の場合、金具の種類即ち金具の重量が変るごとに磁石の取替えを行わなければならず、また後者の場合においても、搬送ベルトに取り付けた磁石を全て位置移動可能に取り付けた上で、金具の種類が異なるごとに全ての磁石について位置調節を行わなければならず、金具の種類の変更に際して多大な手間と時間とを要してしまう。
【0010】
またこのようになした場合、金具の取出しから搬送の全行程を通じて磁石による金具の吸着力が一定に維持されるため、吸着した金具を搬送する過程で搬送路に金具が脱落し易い個所があったりすると、例えば搬送路の一部が途中で大きく曲っていたりすると、そこで金具が搬送ベルトから脱落してしまい易いといった別の問題も生ずる。
【0011】
即ち金具を磁石により吸着して取り出し、その後これを搬送するに際しては、金具取出しのときには金具1つだけを吸着できるような適当な吸着力とし、その後の搬送時には金具に対する吸着力を強くしておけるようにすると良いが、金具の重量が変化するごとに磁石を取り替えたり、搬送ベルトに取り付けた磁石を1つずつ位置調節してその調節位置に固定する方法ではこうしたことは実現できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭60−6217号公報
【特許文献2】特開平11−292260号公報
【特許文献3】特開平11−292261号公報
【特許文献4】特開2006−206305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情を背景とし、搬送ベルトに取り付けた磁石によって金具を搬送面上に吸着して取り出し、搬送ベルトにてこれを搬送するに際し、金具が重量の重いものであってもまた軽いものであっても適正に1つの金具を吸着状態で搬送でき、且つ吸着した1つの金具を搬送過程で脱落させてしまうのを良好に防止することのできる金具の取出搬送方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して請求項1のものは、搬送路に沿って移動する搬送ベルトに磁石を移動方向に間隔を隔てて複数取り付け、該搬送ベルトの移動により、収容部にランダム状態に収容した金具群から各磁石ごとに搬送ベルトの搬送面上に金具を吸着して取り出し、次工程に搬送する金具の取出搬送方法であって、前記磁石は、前記搬送ベルトの前記搬送面に向けて裏側から接近する前進方向と離間する後退方向とに位置移動可能に取り付けておく一方、前記搬送路に沿った所定位置に余分の金具を離脱させる金具離脱位置を設定して、該金具離脱位置に、前記磁石を前記搬送面に最も接近した前進端から後退移動させて前記金具に対する吸着力を弱める方向に位置調節可能な磁石位置調節装置を設けておき、前記前進端に位置した磁石の吸着力が搬送対象となる前記金具の重量に対して過大であるとき、前記収容部で前記金具を吸着した磁石が前記搬送ベルトとともに前記金具離脱位置を通過する際、各磁石に対して、該磁石を前記後退方向に移動させる位置調節を前記磁石位置調節装置により一律に行った上、該金具離脱位置を通過したところで磁石位置を再び前記搬送面に最も接近した原位置である前進端まで自動復帰させることを特徴とする。
【0015】
請求項2のものは、請求項1において、前記磁石の前記搬送ベルトへの取付装置が、前記磁石を保持して該磁石を前記前進方向と後退方向とに進退させる進退部材と、該磁石を前進させる方向に該進退部材を付勢する付勢部材とを有しており、前記磁石位置調節装置が、前記付勢部材の付勢力に抗して前記進退部材を、前記磁石を前記後退方向に移動させる向きに強制動作させるものであることを特徴とする。
【0016】
請求項3のものは、請求項2において、前記搬送ベルトに対して前記磁石位置調節装置とは反対側の位置に、該磁石位置調節装置による前記進退部材の強制動作の際の力を搬送ベルトを介して受ける受部材が該磁石位置調節装置に対向して配置してあることを特徴とする。
【0017】
請求項4のものは、請求項2,3の何れかにおいて、前記進退部材は、前記磁石を保持する先端側と後端側との中間でレバー軸周りに揺動可能なレバー式となしてあって、該後端側にカム面に従動して該レバー軸周りに回動する従動部が設けてあり、一方前記磁石位置調節装置は、前記搬送路に沿って延びるカムレールを有していて該カムレールに、前記搬送ベルトの移動につれて前記磁石を後退移動させる向きに前記従動部を押動し且つ押動量を漸次多くする第1カム面が備えてあることを特徴とする。
【0018】
請求項5のものは、請求項4において、前記カムレールには、前記第1カム面に続いて該第1カム面による最大押動量を維持する、前記搬送ベルトと平行に直線状に延びる第2カム面が備えてあることを特徴とする。
【0019】
請求項6のものは、請求項4,5の何れかにおいて、前記カムレールは操作部の操作によって前記搬送ベルトに対し接近離間方向に位置調節可能となしてあることを特徴とする。
【0020】
請求項7のものは、請求項6において、前記カムレールはレール保持部材にて保持されており、且つ該レール保持部材は一端側を支点として揺動可能となしてあって、他端側が前記操作部によって移動操作されるものとなしてあり、該一端側と他端側との中間に前記カムレールを一体移動状態に保持していることを特徴とする。
【0021】
請求項8のものは、請求項1〜7の何れかにおいて、前記搬送ベルトは、該搬送ベルトの一部にて前記収容部の底部を形成しつつ前記搬送路に沿って移動するものであることを特徴とする。
【0022】
請求項9のものは、請求項8において、前記搬送ベルトは前記収容部の上方且つ前記金具離脱位置において、鉛直方向に対し該収容部側に傾斜して延びていることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように本発明では、磁石を搬送ベルトの搬送面に向けて裏側から接近する前進方向と、離間する後退方向とに位置移動可能に取り付けておく一方、搬送路に沿った所定位置に、余分の金具を離脱させる金具離脱位置を設定して、その金具離脱位置に、磁石を上記搬送面に最も接近した前進端から後退移動させて金具に対する吸着力を弱める方向に位置調節可能な磁石位置調節装置を設けておき、収容部で金具を吸着した磁石が搬送ベルトとともに金具離脱位置を通過する際、各磁石に対する位置調節を磁石位置調節装置により一律に行う。
【0024】
即ち本発明では、搬送ベルトに取り付けた全ての磁石を、個々の磁石それぞれに位置調節を行ってその調節位置に固定しておくのではなく、搬送ベルトに取り付けた磁石が金具を吸着した後に金具離脱位置を通過する際、そこに設けた磁石位置調節装置により一律に位置調節を行う。
【0025】
本発明では、磁石として取出搬送の予定される金具のうち最も重量の重いものを吸着できるような強い磁力を有するものを用いておき、そして磁石が搬送ベルトとともに金具離脱位置を通過する際に、そこで磁石位置調節装置により磁石を後退方向に移動させることで金具に対する磁石の吸着力を弱く調節し、金具を1つだけ磁石により吸着した状態で次工程へと搬送するようになすことができる。
【0026】
この場合、磁石の吸着力にて収容部の金具群から金具を吸着し取り出す際には磁石は前進端の位置にあって強い吸着力を発揮し、従って金具が軽量のものである場合には2つ以上の金具を同時に吸着する場合が生じる(磁石により吸着された1つの金具が磁化して、その金具に別の金具が吸着される現象を生じる)。
【0027】
収容部で例えば2つの金具を吸着した磁石は、そのまま金具離脱位置まで移動するが、その金具離脱位置で磁石が後退方向に位置調節されることで、そこで磁石の吸着力が弱くなり、余分に吸着していた金具がそこで振り落とされ離脱せしめられる。
【0028】
即ち本発明は、収容部において磁石により確実に金具を1つだけ吸着し取り出すものではなく、一旦は2つ以上の金具を磁石で吸着した場合においても、後の金具離脱位置で余分の金具を離脱させ振り落とし、その後においては磁石により金具を1つだけ吸着し保持した状態で、搬送ベルトとともに次工程へと搬送するようになしたものである。
【0029】
本発明では、金具離脱位置を通過した磁石は再び搬送面に最も接近した原位置即ち前進端まで自動的にその位置を復帰し、ここにおいて再び金具に対する吸着力を高める。
そしてその強い吸着力で1つの金具を保持して、コンベアの移動とともに次工程まで搬送する。
【0030】
従って金具離脱位置で余分の金具を振り落とし離脱させた後においては、搬送路の一部に曲りが大きい個所等金具が脱落し易い個所があったとしても、そこを通過する際に金具が磁石から脱落してしまうのを防止し得て、確実に吸着した金具を最終まで搬送して行くことが可能となる。
【0031】
本発明によれば、取出搬送すべき金具の品種が変り、その重量が変った場合においても、磁石位置調節装置を適正に設定しておくことで、種類、重量の異なった金具の取出搬送に際しても同一の装置にて対応することができ、金具の品種ごとに装置を別途に開発し用意しておくことを不要化でき、装置に要するコストを削減することができる効果を奏する。
更に搬送ベルトに取り付けた磁石の全てを個々に手作業で位置調節する場合のような余分且つ多大な手間や時間を不要化でき、品種変えに際して速やかに対応することが可能となる。
【0032】
本発明では、磁石を搬送ベルトに取り付ける取付装置を、磁石を保持してこれを上記の前進方向と後退方向とに進退させる進退部材と、磁石を前進させる方向に進退部材を付勢する付勢部材とを有するものとなし、また磁石位置調節装置を、付勢部材の付勢力に抗して進退部材を、磁石を後退方向に移動させる向きに強制動作させるものとなしておくことができる(請求項2)。
このようにしておけば、単に磁石位置調節装置により進退部材を付勢力に抗して後退方向に移動させるだけで、磁石位置を適正位置に位置調節することができる。
【0033】
この場合において、搬送ベルトに対し磁石位置調節装置とは反対側の位置に、磁石位置調節装置による進退部材の強制動作の際の力を受ける受部材を磁石位置調節装置に対向して配置しておくことができる(請求項3)。
【0034】
磁石位置調節装置により進退部材を付勢部材の付勢力に抗して強制動作させたとき、搬送ベルトが撓んでしまったりすると磁石位置を正確に調節することができないが、この請求項3に従って受部材を設け、その受部材によって搬送ベルトを磁石位置調節装置とは反対側で受けるようにしておくことで、磁石位置調節装置により進退部材を強制動作させた分だけ確実に磁石位置を調節でき、このことによって磁石の金具に対する吸着力を精度高く適正に調節することが可能となる。
【0035】
請求項4は、その進退部材を、磁石を保持する先端側と後端側との中間でレバー軸周りに揺動可能なレバー式となして、その後端側にカム面に従動してレバー軸周りに回動する従動部を設けておく一方、上記の磁石位置調節装置は、搬送路に沿って延びるカムレールを有するものとなし、そしてそのカムレールに、搬送ベルトの移動につれて磁石を後退方向に移動させる向きに従動部を押動し且つ押動量を漸次多くする第1カム面を具備させたものである。
【0036】
この請求項4によれば、金具離脱位置に到った進退部材の従動部が、磁石位置調節装置のカムレールのカム面に沿って移動することで、搬送ベルトの搬送の力を利用して自動的に磁石を後退移動させ、その位置を適正な位置に自動調節することができる。
【0037】
即ち進退部材が磁石とともに磁石位置調節装置を通過することで、自動的にそこで磁石位置が調節され、金具に対する吸着力が自動調節される。このとき磁石が余分の金具を吸着していると、そこでその余分の金具が自動的に離脱せしめられる。
【0038】
またこの請求項4では、搬送ベルトの搬送力を利用して磁石位置を調節するため、磁石位置調節のための別の駆動源を必要とせず、装置構成を簡素化でき且つ装置を安価に構成することができる。
【0039】
請求項5は、上記カムレールに、第1カム面に続いて第1カム面による最大押動量を維持する、搬送ベルトと平行に直線状に延びる第2カム面を備えたもので、この請求項5によれば、レバー式となした進退部材の後端側の従動部を、第1カム面を通過した後も一定走行距離に亘って最大押動量に押動維持することができ、その間に搬送ベルトの振動等により余分の金具をより確実に離脱させることが可能となる。
【0040】
この場合において、カムレールには、前記第2カム面に続いて前記従動部に対する押動量を搬送ベルトの移動とともに漸次減少する第3カム面を備えておくことができる。
【0041】
このようにすれば、レバー式となした進退部材の後端側の従動部を、最大押動量まで押動された後に円滑に非押動位置まで復帰させることができる。即ち後退移動した磁石を円滑に前進端の原位置まで戻すことができる。
【0042】
請求項6は、カムレールを操作部の操作により搬送ベルトに対し接近離間方向に位置調節可能となしたもので、この請求項6によれば、カムレールの位置を調節することで、磁石が金具離脱位置を通過する際の磁石の吸着力を、様々な重さの金具に対応した適正な吸着力に調節することが可能となる。
即ちカムレールの位置を単に調節するだけで種々異なった重さの金具に対して容易に対応することができる。
【0043】
請求項7は、カムレールをレール保持部材にて保持するようになし、そしてそのレール保持部材を、一端側を支点として揺動可能となした上で、他端側を操作部により移動操作するようになすとともに、一端側と他端側との中間にカムレールを一体移動状態に保持するものとなしたもので、この請求項7によれば、操作部により他端側を移動操作したときにカムレールの移動量を操作量よりも少なくすることができ、その分カムレールの移動量を微妙且つ正確に移動調節することが可能となり、ひいては磁石位置を微妙に高精度で位置調節することが可能となる。
【0044】
本発明において、上記搬送ベルトはその一部にて収容部の底部を形成しつつ搬送路に沿って移動するものとなしておくことができる(請求項8)。
このようにすることで、搬送ベルトが収容部を通過して移動する際に、良好に磁石にて収容部にランダム状態に収容されている金具をその吸着力により取り出し、搬送して行くことができる。
【0045】
この場合においてその搬送ベルトは、収容部の上方且つ上記の金具離脱位置において鉛直方向に対し収容部側に傾斜して延びるものとなしておくことができる(請求項9)。
このようにしておくことで、金具離脱位置で離脱させた余分の金具を、その下方の収容部へと落下させ、収容部に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態の金具の取出搬送方法の適用対象の装置の全体構成を示した図である。
【図2】図1の装置の左側面図である。
【図3】図1の要部を拡大して示した図である。
【図4】同実施形態で用いる搬送ベルトの構成を示した図である。
【図5】同実施形態で用いる搬送ベルトが収容部を形成している部分を模式的に表した図である。
【図6】(A)図1のロボットハンドを模式的に示した図である。(B)同実施形態にて搬送される金具の磁石による保持状の一例を正規の向きとともに表した図である。
【図7】同実施形態で用いる取付装置の斜視図である。
【図8】図7の取付装置の断面図である。
【図9】図3のIX−IX断面図である。
【図10】同実施形態で用いる金具離脱装置の要部を磁石の取付装置とともに拡大して示した斜視図である。
【図11】同実施形態で用いる金具離脱装置のカムレール位置調節の作用説明図である。
【図12】同実施形態の金具離脱動作の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次に本発明を防振ゴム品における円筒形状の金具の整列送出し方法、詳しくは多数の金具群から金具を取り出して1つずつ搬送し、更に金具を正規の向きに揃えて、これを次工程へと移送する移送装置上に整列状態で送り出す金具の整列方法における金具の取出搬送方法に適用した場合の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
尚この実施形態において、金具の取出搬送工程以外の各工程及びそれら工程に用いる装置については特許文献4に開示のものと基本的に同様のものである。
【0048】
この例では、図3に示す供給装置10により容器12内部の金具15(図6参照)を収容部14に供給する供給工程を実行した後、搬送ベルト16及びそこにベルト長手方向に所定間隔ごとに取り付けた後述の磁石(永久磁石)60を有する取出搬送装置17にて、収容部14から金具15を取り出し且つ搬送する取出搬送工程を実行し、更に図1に示す金具整列送出し装置18により金具15の1つ1つを正規の向きに揃えた上で、これを次工程へと移送する移送装置108(図6(B)参照)に整列状態で送り出す金具整列送出し工程を実行する。
【0049】
そしてこの例では、更に加えて搬送ベルト16による金具の搬送路に沿った所定位置に、余分の金具を離脱させる金具離脱位置を設定して、そこに設けた金具離脱装置20により余分の金具を離脱させる金具離脱工程を実行する。
【0050】
図3において、容器12には図中右端側にシュート22が設けられている。シュート22は上面及び図中右端面が開放された断面U字状をなしている。
24は、このシュート22と容器12とを仕切る仕切板で、その下端が容器12及びシュート22の底部から所定距離上方に位置させられている。
仕切板24は、その下端と容器12及びシュート22の底部との間に開口26を形成しており、容器12内部に蓄えられた金具がこの開口26を通じてシュート22側へと移動可能とされている。
【0051】
容器12及びシュート22は基台28上に配置されており、そしてその基台28と容器12とが進退シリンダ30にて互いに連結されている。
ここで進退シリンダ30は、シリンダ本体の図中左端が基台28に固定され、そしてシリンダ本体から図中右方に突き出したロッド32が容器12の底部に固定されている。
容器12は、この進退シリンダ30によって図3中左右方向に所定ストロークで進退移動せしめられる。
【0052】
詳しくは、進退シリンダ30のロッド32の突出し運動によって容器12が図中右方に所定ストロークで前進移動させられ、その後ロッド32の引込みによって容器12が図中左方に後退移動させられる。
そしてそのことによって、容器12内部の金具15が開口26を通じてシュート22側に移動させられ、またシュート22内の金具が上記の収容部14に向けて落下せしめられる。
尚、容器12の図3中左端側と右端側とにはプーリ34が、図2に示す取付板38及び取付ブラケット36を介して取り付けられている。
【0053】
一方基台28の側には対応するプーリ40が、取付ブラケット42を介して取り付けられており、そして左端側の各一対ずつのプーリ34と40とにまたがってベルト44が、また図中右端側の各一対ずつのプーリ34と40とにまたがってベルト44が無端環状に巻が掛けられている。
これらベルト44は、容器12の図3中左右方向の前進後退時に容器12の図3中紙面と直交方向の不要な動きを抑制する働きをなす。
【0054】
基台28の下方において、図2に示しているように一対の側板46の一方には電動モータ48が固定されており、その電動モータ48によって、図3に示すスプロケット50が回転駆動されるようになっている。
【0055】
取出搬送装置17の主要素をなす搬送ベルト16は、図4に示しているように搬送方向に間隙Sを隔てて連続的に配列された多数の支持板52を有している。
各支持板52は平面形状が矩形の長手形状をなしており、それぞれの長手方向の各端部が、一対のチェーン54のそれぞれに固定され、チェーン54とともに一体に移動するようになっている。
【0056】
この搬送ベルト16にはまた、支持板52の上面側即ち搬送面の側に複数枚のゴムシート56が、搬送方向に連続する状態で設けられている。
ここで1枚1枚のそれぞれのゴムシート56は、図4に示しているように7枚の支持板52にまたがる長さとされている。但しゴムシート56は搬送方向の各端が、対応する支持板52の幅方向中間に位置している。
このゴムシート56は図4(B)に示すようにボルト58にて支持板52に固定されている。
【0057】
一方ゴムシート56とは反対側即ち搬送面とは反対側において、6枚の支持板52ごとに後述の図8に示す磁石60が取付装置62にて支持板52に取り付けられている。
【0058】
図3に示しているように、取出搬送装置17は板状且つ円板状をなす大径のスプロケット64,これよりも小径をなすスプロケット66,68,70,72,74をそれぞれ搬送ベルト16の幅方向に一対ずつ有しており、それらスプロケットに搬送ベルト16が一対のチェーン54を噛み合せる状態に無端環状に巻き掛けられている。
【0059】
搬送ベルト16は、これらスプロケット64,66,68,70,72,74の回転により連続移動する。
尚スプロケット66と、電動モータ48により回転駆動される上記のスプロケット50とには別途のチェーン55が巻き掛けられており、電動モータ48によりスプロケット66が回転駆動されることで、搬送ベルト16が連続移動せしめられる。
ここで小径をなす各スプロケット66,68,70,72,74は、それぞれ搬送ベルト16の幅方向に延びて各端部が一対の側板76に取り付けられた回転軸78に回転可能に設けられている。
【0060】
一方大径をなすスプロケット64は、その中心部に配置された筒体80を介して側板76に回転可能に取り付けられている。
ここで筒体80は搬送ベルト16の幅方向に延びていて、各端部が側板76に取り付けられている。
【0061】
上記搬送ベルト16は、図3に示しているように大径をなす一対のスプロケット64の略下半部に巻き掛けられており、図5にも示しているようにスプロケット64の略下半部とともに、略半円筒状をなす収容部14を形成し、そこに容器12からシュート22を経て落下供給された多数の金具を収容する。
【0062】
大径をなす一対のスプロケット64には、同一円周上に小孔からなる多数の透光窓82が一定ピッチで円環状をなすように設けられている。
一方、一対の側板76の一方の側には透光窓82の最下端の位置において発光素子が、また他方の側には受光素子が光軸を一致させる状態で設けられており、それらが収容部14内の金具の収容量を検知する検知装置を成している。
【0063】
搬送ベルト16は、大径のスプロケット64を通過する過程で、即ち収容部14を形成している部分で、そこに収容された金具群から磁石60の磁力によって搬送面上に(ゴムシート56上に)金具15を吸着して取り出し、その後これを図3中上端のスプロケット68と70との間の金具整列送出し位置へと持ち来す。
尚このスプロケット68と70との間の部分においては、搬送ベルト16は水平方向に延びている。
【0064】
磁石60の磁力により搬送ベルト16の搬送面上に吸着された金具15は、搬送面上で様々な姿勢で様々な方向を向いて保持され、搬送ベルト16によって搬送されて行く。
【0065】
従ってそのままでは搬送面上に吸着され保持された金具15を、予め定めた一定の正規の向きに揃えた状態で送り出すことができない。
そこでこの例では様々な方向を向いた金具15を、搬送ベルト16の水平部の上方に配置した金具整列送出し装置18により、金具15の向きを正規の向きに揃えた上で、次工程へと移送する移送装置108上に送り出す。
【0066】
この金具整列送出し装置18は、図1に示しているようにロボットハンド84と、これを支持して上下移動及び軸周りに回転移動させ、また図中左右方向に延びる第1ガイド部90に沿って移動することでロボットハンド84を一体に移動させるハンド駆動部86を備えたロボット88を有している。
【0067】
金具の整列送出し装置18は、上記第1ガイド部90に加えて、ロボット88を第1ガイド部90とともに図1中紙面と直交方向に移動ガイドする第2ガイド部92、更にロボット88を第1ガイド部とともに第2ガイド部92に沿って紙面と直角方向に駆動するガイド駆動部94、及びそれら全体の動作を制御する制御部96を有している。
【0068】
上記ロボットハンド84は、図6に示しているようにその中心に位置する円筒状の基部98と、一対のフィンガー100とを有しており、それらフィンガー100にて金具15を把持するようになっている。
ここでフィンガー100は、金具15を直接把持する下部104と、上部102とを有しており、その上部102に対して下部104が図6中紙面と直交方向に回動可能とされている。
また上部102は、図中左右方向に延びる伸縮軸105にて基部98に連結されている。
【0069】
整列送出し装置18にはまた、図1に示しているように搬送ベルト16のスプロケット68と70との間の水平部中間位置(金具整列送出し装置)に持ち来された金具15を撮像するカメラ106がロボット88の上部に下向きに設けられている。
カメラ106は、その撮像したデータを制御部96へと入力する。制御部96はその撮像データに基づいて金具15が現在どのような方向を向いて搬送ベルト16上に保持されているかを認識し、これに基づいてロボット88を動作させる。
【0070】
ロボット88は制御部96による動作制御の下で、一対のフィンガー100により金具15を把持し、そしてその向きを図6(イ)に示す正規の向きに揃えた上で、移送装置108上に載置する。
金具15を受けた移送装置108はこれを次工程へと移送する。
【0071】
尚、搬送ベルト16は保持した金具15をスプロケット68と70との間の中間位置、即ち金具整列送出し位置に持ち来したところで、一旦そこで図示を省略する別の制御部によって停止せしめられる。
金具の整列送出し装置18は搬送ベルト16即ち金具15の停止状態の下で上記の動作を行う。
そして金具整列送出し装置18が金具15を移送装置108上に載置したところで、再び搬送ベルト16が搬送開始する。
この制御部にはまた、収容部14内部の金具15の収容量を検知する上記の検知装置からの信号も入力され、而して収容部14内の金具量が不足しているとき、制御部は、進退シリンダ30を作動させて容器12から収容部14に金具を供給させる。
【0072】
図3のスプロケット68と70との中間位置において、搬送ベルト16の下側には位置検出センサ110が上向きに設けられている。
一方搬送ベルト16には、磁石60を取り付けて成る支持板52に被検出部112が設けられている。
搬送ベルト16は、磁石60により保持された金具15がスプロケット68と70との間の中間位置即ち整列送出し位置に到ったときに、被検出部112が位置検出センサ110により検知されることで、移動停止せしめられる。
【0073】
図7及び図8に、搬送ベルト16の支持板52に対し磁石60を取り付ける取付装置62の構成が具体的に示してある。
図において125は進退部材で、この進退部材125は、保持部114と進退駆動部128とを有している。
保持部114は磁石60を保持する部分で図中下端が開口形状の円筒状をなす筒状部116を有しており、その筒状部116の内部に磁石(ここでは磁力の強い希土類焼結磁石)60が内嵌状態に保持されている。
尚この実施形態では、何れの磁石60も同一の磁力を有している。
【0074】
115は外筒部で、保持部114はこの外筒部115内部を図中上下方向に移動せしめられる。そして図中上向きの移動によって磁石60を一体に上方即ち搬送面から離間させる後退方向に移動させ、また下向きの移動によって磁石60を搬送面に接近させる方向に前進移動させる。
尚、外筒部115にはリング状をなす掻取部材118が径方向内方に突出状態で設けられていて、その内周面が保持部114における筒状部116の外周面に摺接せしめられている。
【0075】
保持部114には、筒状部116の図中上側に突出する形態で円形且つリング状の突出部120が一体に設けられており、そこに突出部120を貫通する状態で軸122が取り付けられている。
尚、外筒部115は図7に示しているように下端側にフランジ状の固定部124を有していて、その固定部124において支持板52に着座状態にボルト126にて固定されている。
【0076】
上記進退駆動部128は、保持部114を磁石60とともに後退及び前進移動させるレバー式のもので、互いに離隔して設けられた一対のレバーアーム130と、それらを一端側(図中右端側)で連結する基部132とを有しており、全体として平面形状がコ字形状をなしている。
【0077】
134は、レバー式の進退駆動部128を揺動可能に支持する支持部材であって、一対の支持片136を有しており、それら一対の支持片136及び進退駆動部128の一対のレバーアーム130を貫通する状態でレバー軸138が掛け渡されている。
進退駆動部128はこのレバー軸138周りに揺動運動せしめられる。
この支持部材134には、基端部に固定部137が設けられ、その固定部137においてボルト126により支持板52に固定されている。
【0078】
レバー軸138には、一対の支持片136と136との間において複数個(ここでは4個)のねじりコイルばね140が嵌装されている。
各ねじりコイルばね140は、その一端142が進退駆動部128における基部132の固定孔に挿入されて固定され(図8(A)参照)、また他端144が、支持部材134の、支持片136と136との間の部分の固定孔に挿入されて固定され、それぞれの付勢力を進退駆動部128に対し、基部132を図中右向きに移動させる向きに及ぼしている。
【0079】
即ち保持部114を磁石60とともに図中下向き、即ち磁石60を搬送面に接近させる前進方向に、進退駆動部128に対し付勢力を及ぼしている。
尚、レバー軸138は止め輪148にて進退駆動部128から抜け止めされている。
【0080】
進退駆動部128の一対のレバーアーム130の先端部には、長孔からなる挿通孔146が設けられ、そこに上記の保持部114の突出部120を貫通した軸122の両端部が挿通され、止め輪148にて抜け止めされている。
ここで挿通孔146は円弧形状をなしており、進退駆動部128がレバー軸138周りに揺動する際、軸122がこの円弧形状の挿通孔146に沿って相対移動せしめられる。
【0081】
進退駆動部128には、基部132側においてローラ軸150が突設され、そこに後述のカム面に対する従動部となるローラ152が回転可能に装着されている。
この例において、取付装置62は通常時は図8(A)に示しているように、磁石60を支持板52に形成した凹部154の底面に当接させた状態、即ち磁石60を搬送面に最も接近した前進端の位置に位置させた状態にあり、この状態でローラ152がねじりコイルばね140による付勢力に抗して図中下向きに押動されると、図8(B)に示すように進退駆動部128がレバー軸138周りに図中時計方向に回動して、磁石60を図中上方即ち搬送面から離間する後退方向に移動させる。
【0082】
図3において、金具離脱位置に配置された金具離脱装置20は、図10に示すカムレール158を保持した板状のレール保持部材160を有している。
このレール保持部材160は、図9に示しているように搬送ベルト16の搬送方向と直角方向の幅方向に長手状に延びており、その一端(図9中下端)がヒンジ162により、一対の側板76の一方に回動可能に取り付けられている。
即ちレール保持部材160が長手方向の一端を支点として揺動可能に側板76に取付固定されている。
【0083】
上記カムレール158は直動カム形式のもので、図10に示しているように傾斜形状の第1カム面164と、これに続いて搬送ベルト16と平行に直線状に延びる第2カム面166と、更に第2カム面166に続いて第1カム面164とは逆方向に傾斜する第3カム面168とを有している。
【0084】
図3に示しているように、搬送ベルト16は上記の収容部14の上方且つ金具離脱装置20を設けた金具離脱位置において、鉛直方向から収容部14側に傾斜して直線状に延びており、そしてカムレール158の第1カム面164は、図10中下端から上方に進むにつれて、搬送ベルト16における傾斜部16Aに接近する方向の傾斜形状の面とされている。
【0085】
そしてこれに続く第2カム面166は、その搬送ベルト16の傾斜部16Aと同じ角度で、即ち傾斜部16Aと平行をなすように直線状に延びており、またこれに続く第3カム面168は、第2カム面166から図中上方に進むにつれて搬送ベルト16の傾斜部16Aから図3中右方、即ち傾斜部16Aから離間する方向に傾斜する形状の面となしてある。
【0086】
従って第1カム面164,第2カム面166,第3カム面168を、ローラ152が搬送ベルト16とともに図中上方に金具離脱位置を通過して移動する際にローラ152に接触させる位置に位置させておくと、収容部14を通過した搬送ベルト16が図中上方に移動する際にローラ152が先ず第1カム面164に接触して図8(B)中下向きに押動され且つ第1カム面164に沿って移動するにつれ図中下向きの押動量が漸次増大する。
【0087】
ここにおいて進退駆動部128の図8(B)中の時計方向の回動量が連続的に増大し、磁石60が前進端から連続的に図8中上方に後退移動する。
即ち磁石60と、磁石60により搬送ベルト16の搬送面上に吸着され保持された金具15との間の距離が増大し、金具15に対する磁石60の吸着力が連続的に減少変化せしめられる。
【0088】
従って磁石60の後退端において、磁石60による吸着力が金具15を1つだけ吸着するのに適した吸着力となるように定めておくことで、磁石60が収容部14において搬送面上に2つ若しくはそれ以上の金具15を吸着したとしても、ローラ152がカムレール158の第1カム面164の面上を転動し、押動されることで、余分の金具15がそこで搬送ベルト16の搬送面上から離脱せしめられる。
ここで搬送ベルト16は、この金具離脱装置20の位置において収容部14側に傾斜しているため、そこで離脱した余分の金具15はそのまま収容部14内に落下し、そこに回収される。
【0089】
図12(I)の状態からローラ152が図12(II)に示しているように第1カム面164の面上を移動することによって後退移動させられた磁石60は、ローラ152が続いて第2カム面166の面上を走行する間、ローラ152が引き続き最大押動量に維持されることで、そのまま後退端に保持される。
【0090】
従って、ローラ152が第1カム面164の面上を走行する際に余分の金具15が離脱しなかった場合であっても、第2カム面166の面上をローラ152が引き続いて走行する間に、搬送ベルト16の振動等によって余分の金具15が確実に搬送ベルト16から振り落とされ離脱せしめられる。
【0091】
図12(III)に示しているように、第2カム面166を走行したローラ152は、更に続いて第3カム面168の面上を走行する。
このとき、カムレール158によるローラ152の押動量が漸次減少変化し、これに伴って後退端に保持されていた磁石60が漸次前進移動し、そしてローラ152が第3カム面168を通過したところで、磁石60が再び図8(A)に示す原位置即ち搬送面に最も接近した前端位置に復帰する。
【0092】
ここにおいて磁石60による吸着力が元の強い吸着力に復帰し、搬送ベルト16の搬送面上に1つだけ残った金具15に対する吸着力を強くして、搬送ベルト16の移動とともに保持した金具15を上記の金具整列送出し装置18まで持ち来す。
このようにカムレール158に第3カム面168を設けておくことで、磁石60を円滑に図8(A)に示す原位置へと復帰させることができる。
【0093】
尚、金具離脱位置においては図3に示しているように、金具離脱装置20に対して搬送ベルト16を間にして反対側に受部材170が、その受面を搬送ベルト16と平行に向けて配置してあり、上記のローラ152がカムレール158にて押動される間、この受部材170がその力を受けるようになしてある。
【0094】
従ってカムレール158がローラ152を押動することによって搬送ベルト16が撓むのが防止され、ローラ152に対する押動量だけ正確に磁石60を後退移動させ得、磁石60を後退方向に正確に位置調節することができる。
【0095】
図1に示すように収容部14の下流側に金具整列送出し装置18が設けてある本例において、収容部14において磁石60が搬送ベルト16の搬送面上に2つ以上の金具15を吸着保持し、これをそのまま金具整列送出し装置18の位置まで持ち来してしまうと、そこで金具整列送出し装置18にて金具15を正しく把持し、移送装置108へとその向きを揃えて載置することができなくなってしまう場合が生ずる。
【0096】
例えば図6(ロ),(ハ)に示しているように2つの金具15が外周面において磁着した状態で搬送されて来た場合、その金具15をロボットハンド84にて把持し、向きを揃えて移送装置108へと載置することができない。
【0097】
しかるにこの実施形態では、磁石60が搬送ベルト16の搬送面上に2つ以上の金具15を吸着し保持した状態で搬送して来たとき、収容部14の下流側に設定した金具離脱位置において、余分の金具15を金具離脱装置20にて搬送ベルト16から自動的に離脱させることができるため、下流側の金具整列送出し装置18にて確実に1つだけの金具15を正規の向きに揃え、移送装置108上へと載置することができる。
【0098】
図9に示しているようにカムレール158を保持したレール保持部材160は、ヒンジ162による固定側とは反対側の端部が、操作部172によって図中左右方向に移動操作されるようになっている。
【0099】
上記カムレール158は、レール保持部材160の図9中両端間の中間部に取り付けられており、レール保持部材160の他端側が操作部172にて図中左右方向に移動操作された際、カムレール158もまた図9中左右方向にレール保持部材160と一体に移動され、その位置が調節される。
【0100】
但しその際のカムレール158の図中左右方向の移動量は、レール保持部材160の上記他端側の移動量よりも少なく、従って操作部172にてレール保持部材160の他端側を移動操作してカムレール158を図中左右方向に位置調節する際、微妙な位置調節が可能である。
【0101】
ここで操作部172は、側板76の外側(図9中上側で図3中紙面と直角方向の外側)に配置された雄ねじ軸174と、側板76に取り付けられて雄ねじ軸174に螺合する雌ねじ筒部材176と、雄ねじ軸174を自身の貫通の挿通孔に挿通させて、雄ねじ軸174の図中左端側を側板76にて支持させる支持筒部材178と、雄ねじ軸174の図9中右端に設けられた回転摘み180とを有している。
【0102】
ここで雄ねじ軸174の図9中左端は、側板76の外側に突き出した上記のレール保持部材160の他端部に固定の軸181に対して、連結部182にて相対傾動可能に連結されている。
また回転摘み180に近い位置には、雄ねじ軸174の移動位置を指し示す指示部186が設けられており、そしてその指示部186に対応して目盛部184が位置固定に設けられている。
【0103】
図11に示しているように、この実施形態では回転摘み180を回転操作すると、雄ねじ軸174が雌ねじ筒部材176との螺合によるねじ送りで図中左右方向に進退移動せしめられる。
これによりレール保持部材160の上記の他端側が図中左右方向に移動し、これとともにレール保持部材160に保持されたカムレール158が、同じく図中左右方向に移動させられて、その位置が調節される。
【0104】
従って対象とする金具15の重量に応じて、操作部172によりカムレール158の位置を調節することで、磁石60の後退端の位置を金具15の種類や重量ごとに変更し、調節することができる。
これにより何れの種類,重量の金具を対象とする場合においても、金具離脱位置における磁石60の位置を適正に調節することができ、従って磁石60による金具15に対する吸着力を、金具離脱位置において適正な吸着力となすことができ、搬送ベルト16に2つ以上の金具15が吸着され搬送されて来た場合においても、金具15が金具離脱位置を通過する過程で確実に余分の金具15を離脱させることができる。
【0105】
以上のような本実施形態にあっては、搬送ベルト16に取り付けた全ての磁石60を、個々の磁石60それぞれに位置調節を行ってその調節位置に固定しておくのではなく、搬送ベルト16に取り付けた磁石60が金具15を吸着した後に金具離脱位置を通過する際、そこに設けた金具離脱装置20により一律に位置調節を行う。
【0106】
そしてそこで余分の金具15を離脱させ、金具15を1つだけ吸着した状態で次工程へと搬送することができる。
【0107】
また本実施形態では、金具離脱位置を通過した磁石60が再び搬送面に最も接近した原位置即ち前進端まで自動的にその位置を復帰し、再び金具15に対する吸着力を高める。
そしてその強い吸着力で1つの金具15を保持して、搬送ベルト16の移動とともに次工程まで搬送する。
【0108】
従って金具離脱位置で余分の金具15を振り落とし離脱させた後においては、搬送路の一部に曲りが大きい個所等金具15が脱落し易い個所があったとしても、そこを通過する際に金具15が磁石60から脱落してしまうのを防止し得て、確実に吸着した金具15を最終まで搬送して行くことができる。
【0109】
本実施形態によれば、取出搬送すべき金具15の品種が変り、その重量が変った場合においても、金具離脱装置20による磁石60の後退位置を適正に設定しておくことで、種類、重量の異なった金具15の取出搬送に際しても同一の装置にて対応することができ、金具15の品種ごとに装置を別途に開発し用意しておくことを不要化でき、装置に要するコストを削減することができる効果を奏する。
更に搬送ベルト16に取り付けた磁石60の全てを個々に手作業で位置調節する場合のような余分且つ多大な手間や時間を不要化でき、品種変えに際して速やかに対応することができる。
【0110】
また本実施形態では、搬送ベルト16に対し金具離脱装置20とは反対側の位置に、金具離脱装置20による進退部材125の強制動作の際の力を受ける受部材170が金具離脱装置20に対向して配置してあるため、金具離脱装置20により進退部材125を強制動作させた分だけ確実に磁石60位置を調節でき、このことによって磁石60の金具15に対する吸着力を精度高く適正に調節することができる。
【0111】
更に本実施形態によれば、搬送ベルト16の搬送の力を利用して金具離脱装置20により自動的に磁石60を後退移動させ、その位置を適正な位置に自動調節することができ、磁石60位置調節のための別の駆動源を必要とせず、装置構成を簡素化でき且つ装置を安価に構成することができる。
【0112】
また本実施形態では、搬送ベルト16を収容部14の上方且つ金具離脱位置において鉛直方向に対し収容部14側に傾斜させていることから、金具離脱位置で離脱させた余分の金具15を、その下方の収容部14へとそのまま落下させ、収容部14に回収することができる。
【0113】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上例の整列方法の場合に限らず、収容部に収容した金具群から金具を磁石の吸着力により取り出して次工程へと搬送する場合の何れにも適用することが可能であるし、また上記例示した形態の金具のみならず、他の様々な金具の取出搬送に際して適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0114】
14 収容部
15 金具
16 搬送ベルト
20 金具離脱装置
60 磁石
62 取付装置
114 保持部
125 進退部材
128 進退駆動部
152 ローラ
158 カムレール
160 レール保持部材
164 第1カム面
166 第2カム面
168 第3カム面
170 受部材
172 操作部
180 回転摘み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って移動する搬送ベルトに磁石を移動方向に間隔を隔てて複数取り付け、該搬送ベルトの移動により、収容部にランダム状態に収容した金具群から各磁石ごとに搬送ベルトの搬送面上に金具を吸着して取り出し、次工程に搬送する金具の取出搬送方法であって、
前記磁石は、前記搬送ベルトの前記搬送面に向けて裏側から接近する前進方向と離間する後退方向とに位置移動可能に取り付けておく一方、
前記搬送路に沿った所定位置に余分の金具を離脱させる金具離脱位置を設定して、該金具離脱位置に、前記磁石を前記搬送面に最も接近した前進端から後退移動させて前記金具に対する吸着力を弱める方向に位置調節可能な磁石位置調節装置を設けておき、
前記前進端に位置した磁石の吸着力が搬送対象となる前記金具の重量に対して過大であるとき、前記収容部で前記金具を吸着した磁石が前記搬送ベルトとともに前記金具離脱位置を通過する際、各磁石に対して、該磁石を前記後退方向に移動させる位置調節を前記磁石位置調節装置により一律に行った上、
該金具離脱位置を通過したところで磁石位置を再び前記搬送面に最も接近した原位置である前進端まで自動復帰させることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項2】
請求項1において、前記磁石の前記搬送ベルトへの取付装置が、前記磁石を保持して該磁石を前記前進方向と後退方向とに進退させる進退部材と、該磁石を前進させる方向に該進退部材を付勢する付勢部材とを有しており、
前記磁石位置調節装置が、前記付勢部材の付勢力に抗して前記進退部材を、前記磁石を前記後退方向に移動させる向きに強制動作させるものであることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項3】
請求項2において、前記搬送ベルトに対して前記磁石位置調節装置とは反対側の位置に、該磁石位置調節装置による前記進退部材の強制動作の際の力を搬送ベルトを介して受ける受部材が該磁石位置調節装置に対向して配置してあることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項4】
請求項2,3の何れかにおいて、前記進退部材は、前記磁石を保持する先端側と後端側との中間でレバー軸周りに揺動可能なレバー式となしてあって、該後端側にカム面に従動して該レバー軸周りに回動する従動部が設けてあり、
一方前記磁石位置調節装置は、前記搬送路に沿って延びるカムレールを有していて該カムレールに、前記搬送ベルトの移動につれて前記磁石を後退移動させる向きに前記従動部を押動し且つ押動量を漸次多くする第1カム面が備えてあることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項5】
請求項4において、前記カムレールには、前記第1カム面に続いて該第1カム面による最大押動量を維持する、前記搬送ベルトと平行に直線状に延びる第2カム面が備えてあることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項6】
請求項4,5の何れかにおいて、前記カムレールは操作部の操作によって前記搬送ベルトに対し接近離間方向に位置調節可能となしてあることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項7】
請求項6において、前記カムレールはレール保持部材にて保持されており、且つ該レール保持部材は一端側を支点として揺動可能となしてあって、他端側が前記操作部によって移動操作されるものとなしてあり、該一端側と他端側との中間に前記カムレールを一体移動状態に保持していることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかにおいて、前記搬送ベルトは、該搬送ベルトの一部にて前記収容部の底部を形成しつつ前記搬送路に沿って移動するものであることを特徴とする金具の取出搬送方法。
【請求項9】
請求項8において、前記搬送ベルトは前記収容部の上方且つ前記金具離脱位置において、鉛直方向に対し該収容部側に傾斜して延びていることを特徴とする金具の取出搬送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−215388(P2010−215388A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66379(P2009−66379)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】