説明

金属−セラミックス接合基板およびそれに用いるろう材

【課題】接合ボイドの発生が少なく且つ耐ヒートサイクル性に優れた金属−セラミックス接合基板およびその金属−セラミックス接合基板に使用するろう材を提供する。
【解決手段】5〜30質量%のCuと、0.5〜3.0質量%の活性金属と、0.05〜0.35質量%のBi系ガラス(好ましくは65質量%以上のBiを含むガラス)と、残部としてAgを含む粉体をビヒクルに添加して混練することによって作製したペースト状ろう材をセラミックス基板に塗布した後、ろう材の上に金属板を配置して加熱することによって、ろう材を介して金属板をセラミックス基板に接合して金属−セラミックス接合基板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−セラミックス接合基板およびそれに用いるろう材に関し、特に、ろう材を介して金属板がセラミックス基板に接合された金属−セラミックス接合基板およびそれに用いるろう材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電流を制御するためにパワーモジュールが使用されており、パワーモジュールには、セラミックス基板の両面に金属板が接合した金属−セラミックス接合基板が使用されている。このような金属−セラミックス接合基板の一方の面(裏面、放熱面)には、比較的厚い銅板などの放熱板(ベ−ス板)が半田付けにより固定され、他方の面(上面、パターン面)には、半導体チップが半田付けにより固定されている。
【0003】
このような金属−セラミックス接合基板のセラミックス基板として、軽量且つ高硬度で、電気絶縁性、耐熱性、耐食性などに優れた窒化アルミニウム(AlN)などの窒化物系セラミックス材料などからなる基板が使用されている。このようなAlN基板などのセラミックス基板と銅板などの金属板との間に、活性金属を含むろう材を介在させて、加熱処理により金属板をセラミックス基板を接合する方法(活性金属法)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、金属−セラミックス接合基板に放熱板(ベ−ス板)や半導体チップを半田付けする際に、金属−セラミックス接合基板の抗折強度が低下して割れ易くなるのを防止するために、Ag−Cu系ろう材にホウケイ酸鉛ガラスまたはホウケイ酸鉛亜鉛ガラスを添加することが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、アルミニウム板をAlN基板に接合する際に、ろう材中に多数のボイドが発生して接合界面の熱伝導が十分でなくなるのを防止するために、Al−Si系ろう材にホウケイ酸鉛ガラスを添加することが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−177634号公報(第2−3頁)
【特許文献2】特開2000−178081号公報(段落番号0004−0005)
【特許文献3】特開2000−226269号公報(段落番号0006−0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、環境汚染の防止の観点から、金属−セラミックス接合基板のろう材として、Pbを含まないろう材を使用することが望まれている。また、Pbを含まないろう材を使用しても、金属板をセラミックス基板に接合する際に、ろう材中に多数のボイドが発生して接合界面の熱伝導が十分でなくなるのを防止するとともに、金属−セラミックス接合基板に放熱板(ベ−ス板)や半導体チップを半田付けする際に、金属−セラミックス接合基板の抗折強度が低下して割れ易くなるのを防止することが望まれている。特に、接合欠陥であるボイドの検査装置(例えば、超音波探傷機)の進化により、従来では検出困難であった微細なボイドも容易に検出可能になったので、このような微細なボイドの発生も抑制することが望まれる。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、接合ボイドの発生が少なく且つ耐ヒートサイクル性に優れた金属−セラミックス接合基板およびその金属−セラミックス接合基板に使用するろう材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ろう材を介して金属板がセラミックス基板に接合された金属−セラミックス接合基板において、金属板をセラミックス基板に接合するためのろう材として、5〜30質量%のCuと、0.5〜3.0質量%の活性金属と、0.05〜0.35質量%のBi系ガラスと、残部としてAgを含む粉体をビヒクルに添加して混練したろう材を使用することにより、接合ボイドの発生が少なく且つ耐ヒートサイクル性に優れた金属−セラミックス接合基板を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による金属−セラミックス接合基板は、ろう材を介して金属板がセラミックス基板に接合された金属−セラミックス接合基板において、金属板をセラミックス基板に接合するためのろう材として、5〜30質量%のCuと、0.5〜3.0質量%の活性金属と、0.05〜0.35質量%のBi系ガラスと、残部としてAgを含む粉体をビヒクルに添加して混練したろう材を使用することを特徴とする。この金属−セラミックス接合基板において、Bi系ガラスが、65質量%以上のBiを含むガラスであるのが好ましい。また、金属板が銅板であり、セラミックス基板が窒化アルミニウム基板であるのが好ましい。
【0010】
また、本発明によるろう材は、5〜30質量%のCuと、0.5〜3.0質量%の活性金属と、0.05〜0.35質量%のBi系ガラスと、残部としてAgを含む粉体がビヒクルに添加されて混練されていることを特徴とする。このろう材において、Bi系ガラスが、65質量%以上のBiを含むガラスであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接合ボイドの発生が少なく且つ耐ヒートサイクル性に優れた金属−セラミックス接合基板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による金属−セラミックス接合基板の実施の形態では、ろう材を介して金属板がセラミックス基板に接合された金属−セラミックス接合基板において、金属板をセラミックス基板に接合するためのろう材として、5〜30質量%のCuと、0.5〜3.0質量%の活性金属と、0.05〜0.35質量%のBi系ガラスと、残部としてAgを含む粉体をビヒクルに添加して混練したろう材を使用する。
【0013】
ビヒクルに添加される粉体中のAgの量は、Cuと活性金属とBi系ガラスの残部の量であるが、70質量%未満や95質量%を超えると接着力が弱くなるので、70〜95質量%であるのが好ましく、80〜92.5質量%であるのがさらに好ましい。
【0014】
また、粉体中のCuの量は、5質量%未満や30質量%を超えると耐ヒートサイクル性が低下するので、5〜30質量%であるのが好ましく、5〜17質量%であるのがさらに好ましい。
【0015】
また、粉体中に添加する活性金属としては、Ti、Zr、Hfなどの少なくとも一種またはその水素化合物を使用することができる。粉体中の活性金属の量は、0.5質量%未満では金属板とセラミックス基板の間に生成される窒化物層が少なくなって接着強度が非常に弱くなり、一方、3.0質量%を超えると接着強度が高くなるが接合後に半田やセラミックス基板にクラックが生じ易くなるので、0.5〜3.0質量%であるのが好ましく、1.0〜2.5質量%であるのがさらに好ましい。
【0016】
さらに、粉体中に添加するBi系ガラスの量は、0.05〜0.35質量%であるのが好ましく、0.10〜0.35質量%であるのがさらに好ましい。また、Bi系ガラスとして、65質量%以上のBiを含むガラスを使用するのが好ましく、70質量%以上のBiを含むガラスを使用するのがさらに好ましい。
【0017】
なお、金属−セラミックス接合基板の接合界面にボイドが発生する原因は、接合の初期段階でろう材中の銀と接触している銅板が共晶組成で溶融するため、基板の表面のうねりや基板に塗布されたろう材の表面の凹凸により、ろう材の銀と接触している銅板の部分から溶融が開始し、ろう材の凸部が収縮して、銅板が表面張力によりろう材に引っ張られて、ろう材中に大きな空洞(巣)ができ、その後、接合の中期段階で銅と銀が相互に拡散して、溶解しながらろう材が収縮し、接合が進むにつれて巣が埋められていくが、埋めきれない部分がボイドとして残るためであると考えられる。
【0018】
本発明による金属−セラミックス接合基板の実施の形態では、Bi系ガラスが接合の初期段階の加熱により軟化して、ろう材成分の銀、銅、チタンなどを表面張力により引き付けることにより、ろう材が接合開始前に収縮して、ろう材の表面の凹凸をレベリングし、銅板との接触ムラを小さくするため、溶融体が均一に生成してボイドの発生が抑えられると考えられる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明による金属−セラミックス接合基板およびそれに用いるろう材の実施例について詳細に説明する。
【0020】
[比較例1]
まず、固形分として、92.20質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.8質量%のTi粉とからなる粉体100重量部に、7.2重量部のビヒクル(アクリル系のバインダと溶剤を含むビヒクル)を添加して、3本ロールで混練することによって、(後述する実施例との比較対象となる)ペースト状のろう材を作製した。
【0021】
このろう材ペーストを42mm×32mm×0.635mmのAlN基板(セラミックス基板)の両面の全体に厚さ30μmになるように塗布した後、このろう材ペーストを介してセラミックス基板の各々の面に42mm×32mm×0.3mmの銅板(金属板)を重ねて接合炉に入れ、真空中で850℃に加熱して金属板をセラミックス基板に接合した。その後、一方の金属板上に所定の回路パターン形状のエッチングレジストを形成し、薬液で不要な金属およびろう材を除去し、エッチングレジストを除去することにより、所定の回路パターンが形成された金属−セラミックス接合基板を得た。
【0022】
得られた金属−セラミックス接合基板について、超音波探傷機(日立建機ファインテック株式会社製の型番FS100II、商品名FineSAT)により周波数50MHzで測定した探傷結果の写真から、回路パターンが形成された金属板の表面(パターン面)側の接合界面のボイドの個数を求めるとともに、パターン面側および裏面(パターン面と反対側の金属板の表面)側の各々について、全接合面積に対するボイド(接合欠陥)が占める面積の割合(ボイド率)を算出した。その結果、パターン面側のボイド個数は28個であり、パターン面側のボイド率は1.00%、裏面側のボイド率は1.10%であった。
【0023】
また、得られた10枚の金属−セラミックス接合基板について、通炉処理(還元雰囲気(水素/窒素=20/80)下において350℃で10分間加熱した後に室温まで冷却する処理)を繰り返し、10回、15回、20回、25回および30回の通炉処理後に、セラミックス基板にクラックが発生するか否かを拡大鏡で外観検査して、(10枚のセラミックス基板中の)クラックが発生したセラミックス基板の枚数(通炉耐量)を調べることにより、金属−セラミックス接合基板の信頼性を評価した。その結果、10回、15回、20回、25回および30回の通炉処理後のクラック発生枚数は、それぞれ0枚、0枚、3枚、6枚および6枚であった。
【0024】
また、得られた金属−セラミックス接合基板について、パターン面を下にして配置した後にスパン間距離30mmの中間の部分に上から荷重を加えるJIS B7778に準じて、金属−セラミックス接合基板に割れ(クラック)が生じた時点の荷重から、初期および通炉3回後(還元雰囲気(水素/窒素=20/80)下において350℃で10分間加熱した後に室温まで冷却する処理を3回繰り返した後)の3点曲げ抗折強度を測定した。この通炉後の3点曲げ抗折強度が高い程、金属−セラミックス接合基板の耐ヒートサイクル性が高い。その結果、初期抗折強度は641MPa、通炉3回後の抗折強度は404MPaであった。
【0025】
また、この3点曲げ抗折強度の際に金属−セラミックス接合基板が破壊された時の金属板のたわみ量を測定したところ、初期たわみ量は0.30mm、通炉3回後のたわみ量は0.21mmであった。
【0026】
[実施例1]
固形分として、92.05質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.8質量%のTi粉と、0.15質量%のガラスA(70質量%のBiを含み、残部としてSiOとAlとBとZnOを含むガラス、軟化点445℃)とからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。
【0027】
得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、ボイド個数、ボイド率を求めたところ、パターン面側のボイド個数は6個であり、パターン面側のボイド率は0.73%、裏面側のボイド率は1.00%であり、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が抑制されていた。
【0028】
また、得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、通炉耐量(クラック発生枚数)、初期および通炉3回後の3点曲げ抗折強度、初期および通炉3回後のたわみ量を測定したところ、10回、15回、20回、25回および30回の通炉処理後のクラック発生枚数は、それぞれ0枚、0枚、2枚、2枚および2枚であり、初期抗折強度は642MPa、通炉3回後の抗折強度は474MPa、初期たわみ量は0.27mm、通炉3回後のたわみ量は0.23mmであった。
【0029】
[実施例2]
固形分として、92.00質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.8質量%のTi粉と、0.20質量%のガラスAとからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。
【0030】
得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、ボイド個数、ボイド率を求めたところ、パターン面側のボイド個数は2個であり、パターン面側のボイド率は0.83%、裏面側のボイド率は0.74%であり、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生がかなり抑制されていた。
【0031】
また、得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、通炉耐量(クラック発生枚数)、初期および通炉3回後の3点曲げ抗折強度、初期および通炉3回後のたわみ量を測定したところ、10回、15回、20回、25回および30回の通炉処理後のクラック発生枚数は、それぞれ0枚、0枚、4枚、5枚および5枚であり、初期抗折強度は530MPa、通炉3回後の抗折強度は453MPa、初期たわみ量は0.28mm、通炉3回後のたわみ量は0.21mmであった。
【0032】
[実施例3]
固形分として、91.95質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.8質量%のTi粉と、0.25質量%のガラスAとからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。この金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が抑制されていた。
【0033】
[実施例4]
固形分として、91.75質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、2.1質量%のTi粉と、0.15質量%のガラスAとからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。
【0034】
得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、ボイド個数、ボイド率を求めたところ、パターン面側のボイド個数は2個であり、パターン面側のボイド率は0.53%、裏面側のボイド率は0.84%であり、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生がかなり抑制されていた。
【0035】
また、得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、通炉耐量(クラック発生枚数)、初期および通炉3回後の3点曲げ抗折強度、初期および通炉3回後のたわみ量を測定したところ、10回、15回、20回、25回および30回の通炉処理後のクラック発生枚数は、それぞれ0枚、0枚、2枚、3枚および4枚であり、初期抗折強度は639MPa、通炉3回後の抗折強度は409MPa、初期たわみ量は0.28mm、通炉3回後のたわみ量は0.21mmであった。
【0036】
[実施例5]
固形分として、91.70質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、2.1質量%のTi粉と、0.20質量%のガラスAとからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。
【0037】
得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、ボイド個数、ボイド率を求めたところ、パターン面側のボイド個数は0個であり、パターン面側のボイド率は0.58%、裏面側のボイド率は0.63%であり、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生がかなり抑制されていた。
【0038】
また、得られた金属−セラミックス接合基板について、比較例1と同様の方法により、通炉耐量(クラック発生枚数)、初期および通炉3回後の3点曲げ抗折強度、初期および通炉3回後のたわみ量を測定したところ、10回、15回、20回、25回および30回の通炉処理後のクラック発生枚数は、それぞれ0枚、0枚、2枚、4枚および8枚であり、初期抗折強度は710MPa、通炉3回後の抗折強度は434MPa、初期たわみ量は0.29mm、通炉3回後のたわみ量は0.20mmであった。
【0039】
[実施例6〜12]
固形分として、それぞれ、91.65質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、2.1質量%のTi粉と、0.25質量%のガラスAとからなる粉体(実施例6)、92.40質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.10質量%のガラスAとからなる粉体(実施例7)、92.35質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.15質量%のガラスAとからなる粉体(実施例8)、92.30質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.20質量%のガラスAとからなる粉体(実施例9)、92.25質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.25質量%のガラスAとからなる粉体(実施例10)、92.20質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.30質量%のガラスAとからなる粉体(実施例11)、91.75質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、2.0質量%のTi粉と、0.25質量%のガラスAとからなる粉体(実施例12)を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。これらの金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が抑制されていた。
【0040】
[比較例2〜3]
固形分として、それぞれ、92.10質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.40質量%のガラスAとからなる粉体(比較例2)、92.00質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.50質量%のガラスAとからなる粉体(比較例3)を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。これらの金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が悪化していた。
【0041】
[比較例4〜5]
固形分として、それぞれ、92.40質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.10質量%のガラスB(日本フリット株式会社製のCY0037(BとZnOを含むガラス、軟化点540℃))とからなる粉体(比較例4)、92.20質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.30質量%のガラスBとからなる粉体(比較例5)を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。比較例4の金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が抑制されておらず、比較例5の金属−セラミックス接合基板では、比較例1と比べて、接合ボイドの発生が悪化していた。
【0042】
[比較例6]
固形分として、92.20質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.30質量%のガラスC(日本電子硝子株式会社製のGA−12(BとZnOとNaOを含むガラス、軟化点560℃))とからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。この金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が悪化していた。
【0043】
[比較例7]
固形分として、92.20質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.30質量%のガラスD(日本電子硝子株式会社製のGA−4(SiOとBとNaOを含むガラス、軟化点625℃))とからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。この金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が悪化していた。
【0044】
[比較例8]
固形分として、92.20質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.30質量%のガラスE(日本電子硝子株式会社製のGA−59(SiOとBとZnOを含むガラス、軟化点645℃))とからなる粉体を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。この金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が悪化していた。
【0045】
[比較例9〜10]
固形分として、それぞれ、92.35質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.15質量%のガラスF(日本フリット株式会社製のCK1149(SiOとAlとZnOとを含むガラス、軟化点480℃))とからなる粉体(比較例9)、92.25質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.25質量%のガラスFとからなる粉体(比較例10)を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。これらの金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が抑制されていなかった。
【0046】
[比較例11〜12]
固形分として、それぞれ、92.30質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.20質量%のBとからなる粉体(比較例11)、92.35質量%のAg粉と、6.0質量%のCu粉と、1.5質量%のTi粉と、0.15質量%のBとからなる粉体(比較例12)を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を得た。比較例11の金属−セラミックス接合基板では、ガラスを含まないろう材を使用した比較例1と比べて、接合ボイドの発生が悪化し、比較例12の金属−セラミックス接合基板では、比較例1と比べて、接合ボイドの発生が抑制されていなかった。
【0047】
実施例1〜12および比較例1〜12のろう材の成分および接合ボイドの抑制の評価を表1に示し、実施例1、2、4、5および比較例1のボイド個数、ボイド率、抗折強度、たわみ量および通炉耐量を表2に示す。なお、表1では、接合ボイドの発生が、比較例1と比べて、かなり抑制された場合を◎、抑制された場合を○、抑制されなかった場合を△、悪化した場合を×で示している。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう材を介して金属板がセラミックス基板に接合された金属−セラミックス接合基板において、金属板をセラミックス基板に接合するためのろう材として、5〜30質量%のCuと、0.5〜3.0質量%の活性金属と、0.05〜0.35質量%のBi系ガラスと、残部としてAgを含む粉体をビヒクルに添加して混練したろう材を使用することを特徴とする、金属−セラミックス接合基板。
【請求項2】
前記Bi系ガラスが、65質量%以上のBiを含むガラスであることを特徴とする、請求項1に記載の金属−セラミックス接合基板。
【請求項3】
前記金属板が銅板であり、前記セラミックス基板が窒化アルミニウム基板であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属−セラミックス接合基板。
【請求項4】
5〜30質量%のCuと、0.5〜3.0質量%の活性金属と、0.05〜0.35質量%のBi系ガラスと、残部としてAgを含む粉体がビヒクルに添加されて混練されていることを特徴とする、ろう材。
【請求項5】
前記Bi系ガラスが、65質量%以上のBiを含むガラスであることを特徴とする、請求項4に記載のろう材。

【公開番号】特開2010−241627(P2010−241627A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90633(P2009−90633)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】