金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングアッセイ、キット及び試薬
金属イオンリン酸リガンドの特異的結合及び蛍光性ポリマースーパークエンチングを用いた、キナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼ酵素活性のための試薬及びアッセイについて説明する。本アッセイは、ペプチド及びタンパク質基質を用いて、キナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼ酵素活性を測定するための一般的なプラットホームを提供する。DNAハイブリダイゼーションをベースとした試薬及びアッセイ、並びにアプタマー、抗体及び他のリガンドを用いたタンパク質用の試薬及びアッセイについても説明する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年12月12日付けで出願された米国特許仮出願第60/528,792号;2004年3月8日付けで出願された米国特許仮出願第60/550,733号;及び、2004年8月27日付けで出願された米国特許仮出願第60/604,813号の利益を主張するものである。前述の各出願は、その全部が本明細書中で参考文献として組み込まれている。
【0002】
本出願は、一般的に生体分子の検出のための試薬、キット及びアッセイに関し、特に、金属イオン結合及び蛍光性ポリマースーパークエンチングを組み合わせた生体分子の検出のための試薬、キット及びアッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
酵素免疫測定法(すなわち、ELISA)は、広範囲のタンパク質、抗体、細胞、ウイルスなどの存在及び生体活性を同定するための、最も広く用いられ且つ許容された技術である。ELISAは、最初に分析対象である生体分子が表面に付着(attach)された抗体に結合する、多段階の「サンドイッチ(sandwich)アッセイ」である。次に、二次抗体が生体分子に結合する。いくつかの場合においては、この二次抗体はその後増大反応を「展開する」触媒酵素に付着される。他の場合においては、この二次抗体は、3番目のタンパク質(例えば、アビジン又はストレプトアビジン)に結合するためにビオチン化される。このタンパク質は、比色変化を増大するための化学的カスケードを引き起こす酵素、又は蛍光タギングのための蛍光団のいずれかに付着される。
【0004】
広範に使用されているにもかかわらず、ELISAには多くの不都合な点がある。例えば、多段階の手順は試薬と展開時間の双方に渡って厳密な制御を要するため、時間がかかり、「偽陽性」になりやすい。更に、非特異的吸着試薬を除去するために慎重な洗浄が必要である。
【0005】
蛍光共鳴エネルギー移動(即ち、FRET)法は、ポリメラーゼ連鎖反応をベースとした(PCR)遺伝子配列決定及び免疫測定法の双方に適用されている。FRETは分析対象である生体分子の同種(homogenous)結合を用いて、オフ状態ではクエンチングされる色素の蛍光を活性化する。FRET技術の典型的な例においては、蛍光色素は抗体に連結(link)され(F−Ab)、そしてこの2分子がクエンチャー(quencher)に連結している抗原(Ag−Q)に結合する。結合複合体(F−Ab:Ag−Q)はエネルギー移動によりクエンチングされる(即ち、非蛍光)。Qにテザリングしていない同一の分析対象抗原(Ag)の存在下では、Ag−Qの2分子は相対濃度([Ag−Q]/[Ag])により決定される平衡結合確率により定量的に置換される。これによりFRET法は、抗原が既に十分特定されている定量的アッセイに制限されており、抗原をQに連結させる化学をそれぞれの新しい場合について解決しなければならない。
【0006】
他のFRETの基質及びアッセイは、米国特許第6,291,201号及び以下の文献に開示されている:Anne,他,「High Throughput Fluorogenic Assay for Determination of Botulinum Type B Neurotoxin Protease Activity」(Analytical Biochemistry,291,253−261(2001));Cummings,他,「A Peptide Based Fluorescence Resonance Energy Transfer Assay for Bacillus Anthracis Lethal Factor Protease」(Proc.Natl.Acad.Scie.99,6603−6606(2002));Mock,他,「Progress in Rapid Screening of Bacillus Anthracis Lethal Activity Factor」(Proc.Natl.Acad.Sci.99,6527−6529(2002));Sportsman他,(Assay Drug Dev.Technol., 2004,2,205);及びRodems他,(Assay Drug Dev.Technol., 2002,1,9)。
【0007】
分子内でクエンチングされる蛍光基質を用いた他のアッセイは、以下の文献に開示されている:Zhong,他,「Development of an Internally Quenched Fluorescent Substrate for Escherichia Coli Leader Peptidase」(Analytical Biochemistry 255,66−73(1998));Rosse,他,「Rapid Identification of Substrates for Novel Proteases Using a Combinatorial Peptide Libray」(J.Comb.Chem.,2,461−466(2000);及びThompson,他,「A BODIPY Fluorescent Microplate Assay for Measuring Activity of Calpains and Other Proteases」(Analytical Biochemistry,279,170−178(2000))。
【0008】
蛍光分極の変化を測定し、分析物の量を定量するために使用するアッセイも開発されている。例えば、Levine,他,「Measurement of Specific Protease Activity Utilizing Fluorescence Polarization」(Analytical Biochemistry 247,83−88(1997))を参照されたい。また、Schade,他,「BODIPY−α−Casein,a pH−Independent Protein Substrate for Protease Assays Using Fluorescence Polarization」(Analytical Biochemistry 243,1−7(1996))を参照されたい。
【0009】
しかしながら、高い感度で、酵素及び核酸などの生物学的に関連のある分子を迅速且つ正確に検出して定量することが、なお必要とされている。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
1番目の実施態様によると:
ビオチン化ポリペプチド(ここで、ポリペプチドは1又は複数のリン酸基を含む);及び
ポリペプチドのリン酸基と会合(associate)する金属カチオン、
を含んで成る複合体が提供される。
【0011】
2番目の実施態様によると、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供される。
この実施態様に従った方法は:
a)サンプルを、ビオチン化ポリペプチドとインキュベートすること(ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、又はホスファターゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る);
b)サンプルに金属カチオンを添加すること(ここで、金属カチオンはクエンチャーであるか、又はこの方法は金属カチオンと会合することができるクエンチャーをサンプルに添加することを更に含んで成る)
c)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように、互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している);及び
d)蛍光を検出すること、
を含んで成り、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0012】
3番目の実施態様によると、キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性の阻害剤としての化合物をスクリーニングする方法が提供される。この実施態様に従った方法は:
a)サンプル中で、ビオチン化ポリペプチドをこの化合物の存在下でキナーゼ又はホスファターゼ酵素とインキュベートすること(ここで、キナーゼ酵素アッセイの場合には、このポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、且つ、ホスファターゼ酵素アッセイの場合には、このポリペプチド分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る);
b)サンプルに金属カチオンを添加すること(ここで、金属カチオンはクエンチャーであるか、又は該方法は金属カチオンと会合することができるクエンチャーをサンプルに添加することを更に含んで成る)
c)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように、互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している);及び
d)化合物の存在下でサンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
ここで、化合物の存在下で検出される蛍光の量は、キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における化合物の阻害効果を示す。
【0013】
4番目の実施態様によると:
1又は複数のリン酸化可能な又は脱リン酸化可能な基を含んで成るポリペプチド;及び
ポリペプチドに接合(conjugate)するクエンチング部分、
を含んで成るバイオコンジュゲート(bioconjugate)が提供される。クエンチング部分は、ローダミン又は類似のスペクトル特性を有する別の色素であることができる。
【0014】
5番目の実施態様によると、上記のバイオコンジュゲートは、1又は複数のリン酸基及び切断部位を更に含んで成ることができる(ここで、クエンチング部分及びリン酸基は切断部位の反対側に存在する)。好ましくは、クエンチング部分が接合する切断部位の側には、リン酸基は存在しない。
【0015】
6番目の実施態様によると:
a)サンプルを、上記の切断部位及び1又は複数のリン酸基を含んで成るバイオコンジュゲートとインキュベートすること(ここで、プロテアーゼ酵素は切断部位でポリペプチドを切断する);
b)クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、クエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンが蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を示す。
【0016】
7番目の実施態様によると:
上記のバイオコンジュゲートを含んで成る第一の成分;及び
蛍光剤を含んで成る第二の成分(該蛍光剤は、クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、バイオコンジュゲートのクエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している))
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はプロテアーゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出するためのキットが提供される。
【0017】
8番目の実施態様によると:
a)サンプルを、上記のバイオコンジュゲートとインキュベートすること(ここで、バイオコンジュゲートのポリペプチドは、酵素分析物によりリン酸化可能な又は脱リン酸化可能な基を含んで成る);
b)クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、クエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0018】
9番目の実施態様によると:
クエンチャーを含んで成る第一の成分;及び
ビオチン化ポリペプチドを含んで成る第二の成分(ここで、ポリペプチドは分析物により修飾されることができ、且つ分析物により修飾されたポリペプチドはクエンチャーと会合している)
を含んで成る、サンプル中の分析物の存在を検出するためのキットが提供される。
【0019】
10番目の実施態様によると:
a)サンプルを、サイクリックAMP又はサイクリックGMPと接合したクエンチャーを含んで成るバイオコンジュゲートとインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を示す。
【0020】
11番目の実施態様によると:
a)1又は複数のリン酸化可能な基を含んで成るポリペプチド基質及びクエンチャー標識ポリペプチドを、キナーゼ酵素を含んで成るサンプルとインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性を検出する方法が提供され、
ここで、ポリペプチド基質のリン酸化は、蛍光の増加をもたらし;且つ
ここで、検出される蛍光の量は、ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性の存在及び/又は量を示す。
【0021】
12番目の実施態様によると:
a)ポリヌクレオチドの第一末端領域にポリペプチドに接合したクエンチャーを、且つポリヌクレオチドの第二末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとともに、サンプルをインキュベートすること(ここで、ポリヌクレオチドの第一及び第二末端領域の少なくとも1つの部分が互いにハイブリダイズしてヘアピン構造を形成することができ、且つ末端領域の間のポリヌクレオチドの中心領域が、核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成り、それによりヘアピン構造を崩壊させて、ポリヌクレオチドのクエンチャーとリン酸基の分離をもたらす);
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す。
【0022】
13番目の実施態様によると:
a)サンプル中の核酸をクエンチャーで標識すること;
b)サンプルを、ポリヌクレオチドの第一末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとインキュベートすること(ここで、ポリヌクレオチドは、核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成る);
c)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
d)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、核酸分析物のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが、蛍光の減少をもたらし;且つ
ここで、蛍光の減少は、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す。
【0023】
14番目の実施態様によると:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る第一のポリヌクレオチド、及び末端領域において第二のポリヌクレオチドに接合したクエンチャーを含んで成る第二のポリヌクレオチドとともに、サンプルをインキュベートすること(ここで、第二のポリヌクレオチド及び核酸分析物は、第一のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる);
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、核酸分析物の第一のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、蛍光の増大をもたらし;且つ
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す。
【0024】
15番目の実施態様によると:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る核酸アプタマー(ここで、核酸アプタマーはポリペプチド分析物に結合することができる)、及びクエンチャーを含んで成るポリヌクレオチド(ここで、ポリヌクレオチドは核酸アプタマーにハイブリダイズすることができる)とともに、サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、ポリペプチド分析物の核酸アプタマーへの結合は、蛍光の増大をもたらし;且つ
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を示す。
【0025】
16番目の実施態様によると:
ビオチン部分を含んで成るポリペプチド(ここで、ポリペプチドの1又は複数のアミノ酸残基は、リン酸化又は脱リン酸化が可能である);及び
クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質、
を含んで成る複合体が提供され、
ここで、ポリペプチドのビオチン部分は、タンパク質−タンパク質相互作用によってビオチン結合性タンパク質と会合し;且つ
ここで、クエンチング部分は、蛍光剤と会合する際に蛍光剤のスーパークエンチングを増大することが可能である。
【0026】
17番目の実施態様によると:
a)上記の複合体(ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、ホスファターゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る)とともに、サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0027】
18番目の実施態様によると:
a)キナーゼ酵素分析物のアッセイの場合には、分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチド、或いは、ホスファターゼ酵素分析物のアッセイの場合には、分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチドのいずれかとともに、サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質を、インキュベートしたサンプルに添加すること;
c)クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、クエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
d)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0028】
発明の詳細な説明
バイオセンシング(biosensing)に対するクエンチャー−テザリング−リガンド(QTL)アプローチは、電子及びエネルギー移動クエンチャーによる蛍光性高分子電解質のスーパークエンチングを利用する。QTLアッセイのプラットホームは、接合したポリマーの集光能力とそれらの高く非局在化された励起状態を利用して、非常に少量の電子及びエネルギー移動種の存在に反応した増大された蛍光シグナルの変調を提供する。この新規の技術は、シグナル変調現象と抗原−レセプター、基質−酵素及びオリゴヌクレオチド−オリゴヌクレオチド結合の相互作用とを会合させることにより、タンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ及びオリゴヌクレオチドの感度の高い検出に適用されてきた。[1−9]
【0029】
1つのアプローチにおいて、蛍光性ポリマー(P)は、溶液中又は固形支持体上のいずれかにおいてビオチン結合性タンパク質とともに配置され、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質相互作用により、クエンチャー−テザリング−ビオチン(QTB)バイオコンジュゲートと会合複合体を形成する。QTBコンジュゲートは、ビオチンへの反応性テザリングにより連結したクエンチャーQを含む。ビオチンは、ポリマー(P)とともに配置されたビオチン結合性タンパク質と強く結合する。QTBバイオコンジュゲートの標的分析物との反応は、容易に検出可能な方法においてポリマー蛍光を変える。
【0030】
本明細書中で説明するように、QTLバイオコンジュゲートと蛍光性ポリマーとを会合させる代替方法が開発されてきた。代替方法は、溶液中における個々の分子又は支持体上の集合体(assembly)のいずれかとしての、蛍光性高分子電解質の金属イオンと複合する自己組織化能力を利用する。このようにして複合した金属イオンは、QTLバイオコンジュゲート中に組み込まれた配位基(例えば、リン酸基)に選択的に会合することができ、それにより、例えばタンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ及びオリゴヌクレオチドの選択的検出のための基礎を提供する。[10−11]
【0031】
アクセプタ分子(すなわち、クエンチャー)がドナー分子の効力をクエンチングすることのできる効力は、2つの実在物を隔てる距離に依存する。構成的(constructing)アッセイにおいては、分子のテザリング(アクセプタとドナーを一緒にする)は、共有結合及びビオチン−アビジン相互作用などの一般的なストラテジーにより達成されることができる。共有結合はクエンチャーを直接アクセプタ上に配置し、それらを1つの分子にするので、共有結合は共鳴エネルギー移動に対して優れたアプローチである。従って、その2つの間の距離は、単結合と同じくらいの短さであることができる。一方、ほとんどどの分子もビオチンに共有結合することができるため、ビオチンとアビジンなどのビオチン結合性タンパク質(BBP)の間の相互作用は、広範な汎用性を提供する。しかし、ビオチン結合性タンパク質は一般的に60キロダルトンより大きく、その結果として、ビオチン−BBP相互作用によりアクセプタとドナーが一緒にされる場合に、アクセプタとドナーの間の距離が大きくなり得る。
【0032】
ビオチン−BBP相互作用に対する一般的な置き換えとして、スーパークエンチングアッセイにおけるアクセプタ及びドナーの同じ場所への配置に対しては、金属イオンリン酸相互作用を提案する。多くの分子はリン酸化されることができるので、ビオチン−BBP相互作用と同様に、このストラテジーは一般的に適用可能である。さらに、そのテザリングの両端距離(すなわち、金属イオンとリン酸との間の配位距離)は著しく短いので、このストラテジーはビオチン−アビジン相互作用に対する一般的な改良である。リン酸基などのリガンドに対する金属イオンの親和性は、ビオチン−BBP相互作用の親和性より著しく低い(Ka=105-7に対して対Ka=1013-15)。
【0033】
1つの実施態様によると、溶液中で個々の分子又は金属イオンに複合した支持体上の集合体のいずれかとして、蛍光性高分子電解質を含んで成る新規のセンサーが提供される。センサーの金属イオンは更に、QTLバイオコンジュゲート中に組み込まれたリガンド(例えば、リン酸基)に選択的に会合することができ、そしてエンドポイント様式及び動態(kinetic)様式を含む(これらに限定されない)、上記と同様の分子(例えば、タンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ及びオリゴヌクレオチド)の選択的な検出に対する基礎を提供することができる。下記で説明するように、いくつかのアッセイに対して、配位基−金属イオン結合はビオチン−ビオチン結合性タンパク質会合に対する代替手段を提供する。他の実施例において、配位基をQTLのクエンチャー部分に会合するか又はQTLのクエンチャー部分から取り除いて、センサー蛍光をクエンチングし、又はセンサー蛍光を回復させる(又はその双方)。
【0034】
本明細書中に記載の様々な実施態様は、蛍光性ポリマー−QTLスーパークエンチング及び金属イオン−リン酸リガンド特異的結合を用いて、キナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼ活性に対する改良されたアッセイを提供する。蛍光性ポリマーの金属イオン介在性スーパークエンチングは、ペプチド及びタンパク質基質を用いるキナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼ酵素活性の測定に対する一般的なプラットホームを提供し、そしてDNAハイブリダイゼーションをベースとしたアッセイ並びにアプタマー、抗体及び他のリガンドを用いるタンパク質のアッセイを実施するためのより一般的なアプローチを提供する。
【0035】
ポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)ファミリー中の共役ポリマーは、芳香環に付加される様々な官能基を用いて調製することができる。ペンダントアニオン基を用いて合成されたポリマーの中には、図1A及び図1Bに示すものがある。図1Aは、スルホポリp−フェニレンエチニレン(PPE−Di−COOH)共役ポリマーの分子構造を示す。図1Bは、スフホポリp−フェニレンエチニレン(PPE)共役ポリマーの分子構造を示す。これらのポリマーの双方は、水中でカチオン性マイクロスフィアと会合して、安定なポリマー被覆を形成することができる。ポリマー被覆マイクロスフィアは、強い蛍光を示す。ポリマー被覆マイクロスフィア上の全体の電荷は、ポリマー負荷の程度を変化させること及びポリマーの構造を変化させることにより調整することができる。
【0036】
蛍光性ポリマー被覆マイクロスフィアは金属カチオンと会合することができ、そして金属カチオンの負荷はマイクロスフィア上のポリマーの負荷レベルに依存し得ることが見出された。Fe3+及びCu2+などのいくつかの金属イオンは、ポリマー蛍光をクエンチングすることができ、一方Ga3+などの他のものはポリマー蛍光をクエンチングしない。いくつかの実施態様において、金属イオンの不在下ではほとんど又は全くクエンチングが生じない条件下で、マイクロスフィア結合ポリマーの蛍光のスーパークエンチングを介在するためにGa3+が用いられる。
【0037】
例えば、色素を含有するリン酸化ペプチド:
ローダミン−LRRA(pS)LG 配列番号:1
[式中、pSはリン酸化セリン(ポリマーに対して優れたエネルギー移動クエンチャーとして働くはずである)を指す]は、ポリマー被覆マイクロスフィアの蛍光をほとんど又は全くクエンチングしないことが見出された。しかし、ポリマー被覆マイクロスフィアをGa3+の添加により「荷電」させた後では、懸濁物への同一のペプチドの添加はポリマー蛍光の顕著なクエンチングをもたらす。対照的に:
ローダミン−LRRASLG 配列番号:2
で表されるペプチドなどの、リン酸化残基のみ又はクエンチャー色素のみを含有するペプチドは、同一の条件下でポリマー蛍光にほとんど影響を与えない。リン酸化生体分子の金属で荷電したポリマーとの特異的な会合は、下記で説明するように多くのアッセイの基礎となり得る。
【0038】
図2は、キナーゼ又はホスファターゼ活性のアッセイにおいて用いることのできる、金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたセンサーを図示する。図2は、標的酵素によるローダミンペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化を、QTLセンサーの添加により検出する方法を示す。ペプチド産物をローダミンクエンチャーで標識し、Ga3+金属イオンへの特異的なリン酸結合によりポリマー表面に移動させる。その結果生じるポリマー蛍光のクエンチングは、ポリペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化と同時に起こる。このタイプのアッセイは、ペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物及びヌクレオチド又は小分子(これらに限定されない)を含む生体基質に対するリン酸化又は脱リン酸化を和らげる(moderate)酵素に対して用いることができる。
【0039】
キナーゼ/ホスファターゼアッセイ
タンパク質のリン酸化及び脱リン酸化は、細胞の代謝、成長、分化及び細胞増殖の調節を介在する。酵素機能における異常は、癌及び炎症などの疾患を引き起こし得る。500超のキナーゼ及びホスファターゼは、細胞活性の調節に関与していると考えられており、それらの多くは薬物治療の標的である。
【0040】
タンパク質キナーゼA(PKA)は、cAMP依存性タンパク質キナーゼであり、ホルモン及び神経伝達などの、多くのcAMP上昇性の最初のメッセンジャーのエフェクターとして機能する。PKAの遍在的な分布及びその柔軟な基質認識特性は、リンパ球細胞増殖及び免疫応答の阻害、海馬における長期抑制の介在並びに感覚神経伝達などにおける生きた細胞の多くのプロセスにおいて、PKAを中心的な要素とする。タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)は、インスリンシグナル伝達経路の負の調節因子であることが最近示され、これはPTP−1Bに対する阻害剤が2型糖尿病の処置において有益であるかもしれないことを示唆している。
【0041】
キナーゼのうち、90%はセリン残基をリン酸化し、10%はスレオニン残基をリン酸化し、そして0.1%はチロシン残基をリン酸化する。抗ホスホチロシン抗体の開発は可能となったが、ホスホ−セリン及びスレオニン残基に対する抗体は低親和性であり、しばしば1つだけのキナーゼに特異的である。現在、非抗体ベースのハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイは、時間分解蛍光(TRF)、蛍光偏光アッセイ(FP)又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)などの方法をベースとしている。これらのアッセイは、特殊装置を必要とし、そして/或いは酵素活性に応じた低い蛍光強度変化に苦しんでいる。
【0042】
上記のスーパークエンチングを用いた蛍光シグナルの増大により、酵素活性測定における感度の強化に努めてきた。センサーのプラットホームは、図1Aに示すポリ(フェニレンエチレン)(PPE)誘導体などの修飾アニオン性高分子電解質蛍光剤を含むことができる。PPE蛍光剤は、正に荷電したマイクロスフィア上で吸着により固定化することができる。このポリマーは、高い量子効率で光ルミネッセンスを示し、プロテアーゼ活性の検出に使用されてきた。[9]このプラットホームにおいて、N−末端のクエンチャー及びC−末端のビオチンを側面に配置する反応性ペプチド配列が用いられた。このペプチドは、ビオチン結合性タンパク質とともに配置されたPPE被覆マイクロスフィアに結合し、PPE蛍光のほぼ完全なクエンチングをもたらす。ペプチドの酵素介在性切断は、酵素活性に対して直線性を有した蛍光クエンチングの反転をもたらす。1つのエネルギーアクセプタ色素はクエンチャーあたり約49繰り返し単位からの光ルミネッセンスをクエンチングすることができることが、実証された。[9]
【0043】
蛍光性ポリマーのスーパークエンチングは、図2に示すように、キナーゼ/ホスファターゼ酵素活性のバイオディテクション(biodetection)に適応することができる。図2に示すように、多価金属イオンは、溶液中でアニオン性共役ポリマーと強く会合することができ、ポリマー蛍光の変化及び/又はクエンチングをもたらす。ポリマー−マイクロスフィアアンサンブル上の全体の電荷は調整することができるので、これらのアンサンブルは、特異的リガンドと複合する能力を保持したままポリマー蛍光を強くクエンチングせずに金属イオンがポリマーと会合するプラットホームを与えることができる。このアプローチは、低いpHでのリン酸酸素との配位によって金属イオンがリン酸化化合物を特異的にトラップすることのできる固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)で使用されるものと類似している。例えば、Morgan他,(Assay Drug Dev.Technol., 2004,2,171)を参照されたい。
【0044】
本明細書中で説明するように、ガリウムはポリマー放射をクエンチングすることなく蛍光剤(図1A及び図1Bに示すものなどのアニオン性共役ポリマー、並びに複数の蛍光種を含んで成る他の蛍光剤が挙げられるが、これらに限定されない)と会合することができる。ガリウムは、単量体のGa3+として又はポリオキソ種などの多量体アンサンブルとして存在することができる。蛍光剤会合ガリウムはまた、ペプチドがローダミンなどの色素を含む場合、金属イオン介在性ポリマースーパークエンチングが起こるように、リン酸化ペプチドと会合することもできる。蛍光剤は、マイクロスフィアなどの固形支持体の表面と会合することができる。このアプローチは、図2に示すように、感度の良い選択的なキナーゼ/ホスファターゼアッセイに対する基礎を提供する。
【0045】
蛍光クエンチング(ターンオフ(turn off))キナーゼアッセイの場合において、ポリマー蛍光のクエンチングは酵素活性に対して直線性を有する。下記の実施例で説明するように、このアッセイは、ほぼ生理学的pHで実施することができ、そして構成的リアルタイム又はエンドポイントアッセイにおいて柔軟性を許容する。このアッセイは、瞬時の「混ぜて読む(mix and read)」であり、洗浄段階又は複雑なサンプル調製を必要としない。
【実施例】
【0046】
下記の実施例1は、タンパク質キナーゼA(PKA)及びタンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTB−1B)の酵素活性に対する確固たる(robust)アッセイを示す。このアッセイは、通常10〜20%の基質転換で0.9超のZ'値を与える。下記に示す実施例において、キナーゼアッセイは酵素活性に応じた蛍光シグナルの減衰を与え、一方ホスファターゼアッセイは酵素活性の増加にともなったシグナルの増大を与える。配列番号:1などのペプチドに対しては、クエンチャーはポリマー蛍光のクエンチングの結果として感作された蛍光を示すことができるので、このアッセイは同一のサンプルにおいて、観察する波長に依存したシグナルの増大又は減少を示すことができる。これにより、レシオメトリック(ratiometric)測定が可能となる。さらに、ペプチドのクエンチャーにおける蛍光偏光の観察により検出を実施することができる。金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたタンパク質キナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼアッセイに対しては、エンドポイント及び動態アッセイの双方を実施することができる。
【0047】
実施例1−タンパク質キナーゼa(PKA)及びチロシンホスファターゼ活性1B(PTP−1B)に対するアッセイ
下記のペプチドを酵素基質及びホスホペプチドキャリブレータ(calibrator)として使用した。
【0048】
PKA活性の検出用に:
ローダミン−LRRASLG 配列番号:2
及びそのキャリブレータペプチド:
ローダミン−LRRA(pS)LG 配列番号:1
が、Anaspecにより合成された。
【0049】
ホスファターゼ活性の検出用に:
ローダミン−KVEKIGEGT(pY)GVVYK 配列番号:3
及びそのキャリブレータペプチド:
ローダミン−KVEKIGEGTYGVVYK 配列番号:4
が、American Peptide Companyにより合成された。
【0050】
組み換えPKAを、Promegaから購入した。酵素であるPTP−1B及び阻害剤であるRK682を、Biomolから購入した。PKAに対するStaurosporine阻害剤を、Sigmaから購入した。ポリスチレンアミンで官能基化されたビーズを、Interfacial Dynamicsから得た。
【0051】
アッセイバッファー中の15μLの1μMペプチド溶液(ローダミン−ホスホ−ペプチド又はローダミン−非ホスホ−ペプチドのいずれか)を、検出器(detector)バッファー中の15μLのセンサーに添加することにより、センサービーズの性能を決定した。450nmでの励起、475nmでのカットオフフィルター及び490nmでの放射にて、ウエルスキャンモードで、SpectraMax Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)を用いて、混合物の蛍光を測定した。
【0052】
2価又は3価の金属イオンが、溶液中で図1A及び図1Bに示すようなアニオン性ポリマーと強く会合することができるという発見に基づいて、図1Aに示す構造のポリマーをキナーゼ/ホスファターゼアッセイのためのセンサーとして選んだ。PPE−Di−COOHで被覆したマイクロスフィアを含んで成る溶液に、340μMの濃度のGaCl3を添加した際に、放射のクエンチングは観察されなかった。より高い濃度のGaCl3では、蛍光放射のクエンチングが観察された。しかし、最適濃度のGa3+を用いた場合、ローダミン標識ホスホ−ペプチドはポリマー蛍光を強くクエンチングし、一方、非リン酸化のローダミン標識ペプチドを用いた場合には蛍光の変調はほとんど観察されないことが見出された。
【0053】
図3は、ローダミン標識PTP−1Bホスホペプチド基質に対して得られたStern Volmerプロットを示す。Stern Volmer定数(KSV)は、クエンチングの定量的尺度を提供する(F0はクエンチャーの不在下での蛍光強度であり、Fはクエンチャーの存在下での蛍光強度である。)本明細書で決定したKSVは比較的大きい(すなわち、2×107M-1)。50%のクエンチングは(PRU/Q)50=50を与え、スーパークエンチングの発生を実証する。
【0054】
上記に示すように、クエンチャー標識基質を用いてアッセイを開発した。基質のリン酸化で、ペプチドはリン酸基によりセンサーに会合し、蛍光をクエンチングする。金属イオン配位基はリン酸と特異的に結合するので、リン酸化セリン、スレオイニン又はチロシン残基を検出することができる。
【0055】
セリン及びチロシン酵素(すなわちタンパク質キナーゼA(PKA))及びタンパク質チロシンホスファターゼ1−B(PTP−1B)に対する蛍光のスーパークエンチングをベースとしたアッセイを、下記で説明する。
【0056】
図4Aは、ポリマークエンチングの増加が酵素濃度と相互に関連がある、PKA酵素活性のエンドポイント測定を示す。Fe3+配位アッセイ(非常に低いpHを必要とする)とは違って、このプラットホームはほぼ生理学的pHで有効であり、これによりリアルタイムアッセイ又はエンドポイントアッセイの実施において研究者による柔軟な選択を許容する。リアルタイムアッセイは(酵素反応ミックスの一部分として検出(detector)ミックスを含む)は、図4Bに示すように、50%の基質リン酸化に対してエンドポイントアッセイよりも約10倍高い濃度の酵素を必要とする。
【0057】
アッセイの感度を、PKA活性の既知の阻害剤であるStaurosporineを用いて試験した。結果を図5に示す。図5に示すように、6.5μMのATP及び200mUのPKAを用いた反応において1μMの基質を使用して得たIC50は59mUであり、公開された値(18.4mU)と一致する。
【0058】
この形態(format)を、PKAに対して使用したものとは異なる長さ及び配列組成のペプチド基質上でタンパク質チロシンホスファターゼ活性1B(PTP−1B)の検出に対して試験した。図6は、125nMの基質上でのPTP−1Bを用いたエンドポイントアッセイとして又はリアルタイムにおいて測定した酵素濃度曲線のEC50及びLODの結果を示す。既知の阻害剤であるRK−682を用いた阻害剤曲線は、26.4nMの優れたIC50をもたらした。
【0059】
このアッセイで与えることのできる統計パラメーターは、ホスホペプチドキャリブレータペプチドの既知の量を8回繰り返して評価することにより決定した(図6)。このデータは優れており、このアッセイがそれぞれ0.8及び0.9のZ'因子でわずか5〜10%の基質転換を決定するのに適していることを示している。
【0060】
このPKAアッセイの性能は、商業的に入手可能なFRETアッセイ(ATP消費アッセイ及びIMACベースのアッセイ)と比較されてきた。酵素濃度曲線において最適の性能を生み出すように、そして可能であれば同一のペプチドを用いて、全てのアッセイを実施した。IMACベースのアッセイは、酵素濃度曲線において最も低い感度を与えた(20pgに比較して1ng)。このアッセイにおいては(原理上は、QTL Lightspeed(登録商標)アッセイに最も近い)、現在の形態における1:50の比率とは対照的に、センサー対検出器は1:1の比率となる。これらの結果は、スーパークエンチングで得ることのできる感度の増大を明確に実証している。
【0061】
Akt−1及びPKCαに対する基質を用いて、追加のアッセイが開発された。これらの異なった基質を用いた場合、蛍光クエンチングの基質の長さ又はペプチド配列の内容への顕著な依存は観察されなかった。この点で、金属イオン介在性スーパークエンチングアッセイは一般的であると考えることができ、クエンチングがドナーとアクセプタの間の距離に高く依存するFRETペプチドに対して大きな利点を与える。
【0062】
プロテアーゼアッセイ
プロテアーゼ酵素は、それらの基質上のアミド結合を切断する。金属イオン−蛍光性ポリマーアンサンブルとともに、切断部位の両側にクエンチャー及びリン酸基を含むペプチド又はタンパク質基質の使用することにより、プロテアーゼ酵素活性の検出のための感度の高いアッセイの開発が可能となる。
【0063】
プロテアーゼアッセイの1つの実施態様を図8に示す。図8に示すように、切断されていない(intact)基質がセンサーに結合する場合、センサー蛍光はクエンチャー色素の接近(promixity)によりクエンチングされる。酵素により基質を切断してフラグメントにすることで、リン酸基からクエンチャーを分離し、クエンチャー及びポリマーを分離させる。この分離は、酵素活性の存在下において、ポリマー蛍光のクエンチングを減少させる(すなわち、センサーからのシグナルを増大させる)。
【0064】
プロテアーゼ活性は、同種(homogeneous)又は異種(heterogeneous)の形態において、リアルタイム又はエンドポイントのいずれかで測定することができる。同種のリアルタイムアッセイにおいては、基質はポリマー−マイクロスフィアアンサンブルの表面上に存在することができる。同種のエンドポイントアッセイにおいては、基質及び酵素は溶液中で反応することができ、そして特定のインキュベーション期間の最後に、反応を止めるためにサンプルにセンサーを添加することができる。クエンチャーとして蛍光色素を用いる場合、プロテアーゼ活性はレシオメトリックに測定することができる。異種のエンドポイント形態においては、切断部位の同じ側にリン酸基とクエンチャーを含むビオチン化基質を用いることができる。切断後に、ビオチン種の結合によりペプチド種は分離し、一方、クエンチャー標識部分は移動して蛍光剤をクエンチングすることができる。
【0065】
実施例2−金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとしたプロテアーゼアッセイ
このアッセイにおいてトリプシンに対するペプチド基質は、
ローダミン−LRRApSLG (配列番号:1)
である。
【0066】
トリプシンは2つのアルギニンの箇所でペプチドを切断する。この実施例において実施されるアッセイは、下記のパラメーターを用いた:
マイクロスフィア−蛍光剤−ガリウムアンサンブル(QTLセンサー);
3μM(終濃度) Rh−LRRApSLG(配列番号:1);
1U/μL トリプシン;
40×106 マイクロスフィア(MS)/15μL;
λex430;
λem490;及び
λco475nm。
【0067】
このアッセイを、384−ウエルの白色プレートにおいて約22℃で1時間実施した。このアッセイの結果を下記の表1に示した。
【表1】
【0068】
図12は、「リアルタイム」(すなわち、動態)アッセイ形態においてトリプシン活性を測定した結果を示すグラフである。図12から分かるように、トリプシン活性の増大は時間−依存的である。これに対応して、蛍光シグナルの増大は時間とともに起こる。
【0069】
非標識ペプチド及びタンパク質を用いたブロッキングアッセイ
上記及び図2に示すアッセイの基礎は、ブロッキングアッセイに適応することができる。ブロッキングアッセイにおいては、「一般的な」リン酸化色素標識ペプチド又は色素及び金属イオン結合性リン酸(例えば、ガリウム)の双方を含む他の基質は、付加的なリン酸化基質の不在下で、蛍光性ポリマー及び金属イオンを含むポリマービーズをクエンチングするが、ペプチド又はタンパク質基質がリン酸化される場合は「ブロック」される。
【0070】
金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたブロッキングキナーゼアッセイを図示する図9において、このアッセイの原理を示す。このアッセイは、酵素及び分析物の混合物にセンサーを添加し、その後インキュベートして反応させることにより、最も慣用的に実施される。任意のリン酸化分析物は、ポリマー蛍光をクエンチングせずに、図9で説明するようにセンサーと会合するだろう。「一般的な」リン酸化色素標識ペプチドの添加は、ポリマー蛍光のクエンチングをもたらすだろう(「ブロック」されたマイクロスフィア上における「遊離の」リン酸結合部位の程度により制限される)。このアッセイは蛍光「ターン−オン(turn−on)」アッセイとして機能し、アッセイを展開する際に事前に基質を誘導体化する必要がないという付加的な利点を与える。図10は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)を用いたPKCαに対するブロッキングアッセイ(「蛍光ターン−オン」)についての実験データを示す。
【0071】
天然のタンパク質基質上でのキナーゼ活性の検出は、下記のペプチド基質を用いるよりもいくつかの利点を有する。
・518の既知のヒトキナーゼ(又は2500のアイソフォーム)の中で、ほんの約50のキナーゼに対するペプチド基質が立証されており、ほとんどの場合においては標的タンパク質が同定されている。いくつかの酵素は、効果的な基質認識、結合及びリン酸化に対して標的の非連続的な(non−continuous)アミノ酸を必要とするかもしれない。この場合、たとえ関与するアミノ酸が同定されていても、人工のペプチド配列を構築することはできない。
・天然の標的タンパク質のリン酸化は、ペプチド基質のリン酸化よりも効率的であると予想される。これは、(ペプチド基質の)コストの意味において重要であり、またHTSにおける阻害剤の同定をより正確なものともする。
・天然の標的タンパク質のリン酸化は、人工の基質のリン酸化よりもより特異的である。ペプチド基質の交差認識(cross recognition)により、細胞内キナーゼ活性を分析する将来的な試みが妨げられるだろうが、タンパク質基質については取り組むべきである。
・タンパク質のリン酸化の検出を可能にする現在の非放射性及び非抗体ベースのアッセイは、二次酵素であるルシフェラーゼによるATP消費をベースとしている。このようなアッセイは、二次酵素であるルシフェラーゼの阻害の結果として、阻害剤スクリーンにおいて偽陰性を生じやすい。FPアッセイは、シグナルを得るために分子運動における大きな変化を必要とするため、低分子量のタンパク質のみを検出することができる。
【0072】
実施例3
標準的な反応において、キナーゼPKCαによるミエリン塩基性タンパク質(MBP)のリン酸化を実施し、上記の実施例2に記載のQTLセンサーを添加した。リン酸化MBPは、金属配位イオンへの特異的なリン酸結合によりQTLセンサーに結合し、色素標識ホスホペプチド(トレーサー)の会合を濃度依存的な様式で阻害する。その結果生じる蛍光は、mbpのリン酸化の程度と相互に関連している。
【0073】
この原理を下記の実施例において実証する。1μgの濃度のmbpを、連続的に希釈したキナーゼPKCα酵素を用いて、白色の384ウエルOptiplateにおいて室温で1時間リン酸化した。インキュベーション後に、50×106のQTLセンサービーズを、約22℃で10分間添加し、その後1μMの色素標識ペプチドトレーサーを添加した。プレートを約22℃で30分間インキュベートし、そして、Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)において、475nmカットオフフィルターを用いて、450nmでの励起、490nmでの放射にて、蛍光シグナルを測定した。蛍光「ターンオン」を、図9において図示する。
【0074】
金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングにより測定した、ホスホジエステラーゼ酵素活性
3',5'−サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)は、メタロホスホヒドラーゼ(metallophosphohydrolase)のファミリーを含んで成る。メタロホスホヒドラーゼは、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)及び/又はサイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の3'結合を特異的に切断して、対応する5'−ヌクレオチドを生成する。cAMP及びcGMPに対する様々な選択性を有するPDEの11のファミリーが、哺乳動物の組織において同定された。
【0075】
PDEは、細胞内のcAMP及び/又はcGMPレベルの必須のモジュレータ(modulator)である。サイクリック−AMP又はcGMPは、重要な細胞プロセスに関与する細胞内シグナル伝達において重要な役割を果たす細胞内二次メッセンジャーである。PDEは、様々な疾患を処置するための創薬の標的であった。例えば、シデナフィル(PDE5の選択的阻害剤)は、薬剤として商品化された(すなわち、Viagra(登録商標)(Pfizer,Incの登録商標))。いくつかのPDE4阻害剤は、喘息などの疾患を処置する抗炎症剤として臨床試験中である。
【0076】
上記に説明するように、キナーゼ及びホスファターゼアッセイで実証されているようにQTLセンサーはリン酸基に対して高い結合親和性を示す。PDEアッセイは、ホスホジエステラーゼの活性を試験するために、色素標識cAMP又はcGMPを基質として用いる。ローダミン、アゾ又はフルオロセイン(これらに限定されない)を含む色素は、PDEに対する反応性を阻害することなくcAMP又はcGMPに結合することができる。cAMP又はcGMPはホスホジエステル(ガリウム−ポリマー表面に強く結合しない)として存在するので、ポリマー蛍光の初期のクエンチングはほとんど起こらない。PDEにより触媒される加水分解の間、これらの基質上のホスホジエステルはリン酸基に変換される。次に、ガリウム−リン酸の特異的相互作用により、色素はマイクロスフィア表面の周辺にもたらされ、ポリマー蛍光のクエンチングが生じる。図11は、ホスホジエステラーゼアッセイを図示する。
【0077】
核酸アッセイ
金属−リン酸介在性結合は、DNA及びRNA検出用のスーパークエンチングアッセイを作り出すために用いることができる。溶液中に存在することのできる又は固形支持体上に固定化することのできる標的核酸種への核酸種のハイブリダイゼーションをベースとした、多くの異なったアプローチを用いることができる。第一のアプローチは、その末端がリン酸化されているオリゴヌクレオチドを用いる。リン酸は、DNA鎖の接合蛍光性ポリマーとの、金属−リン酸により介在される同一場所への配置を可能にする。リン酸基がオリゴヌクレオチドの5'−末端に付着している場合、3'−末端にクエンチャーを有する相補的な標的はリン酸化鎖にハイブリダイズすることができる。これらの末端は、機能的システムを保持したまま逆にすることもできる。このハイブリダイズした構造においては、クエンチャーは接合ポリマーに配向して、スーパークエンチングを促進する。従って、クエンチャー標識標的の存在下では、ポリマー蛍光はクエンチングされる。このような系は、非標識及び標識DNA鎖をそれらのリン酸化相補鎖への結合に対して競合させることにより、非標識DNAに対するアッセイとして容易に描写することができる。
【0078】
第二のアプローチが、分子指標により用いられるアプローチに類似したストラテジーに続く。オリゴヌクレオチドの末端領域が互いに相補的であって、ハイブリダイズしたステムを形成し、同時に、オリゴヌクレオチドの中心領域が標的オリゴヌクレオチドに対して相補的であって、標的が存在しない場合に一本鎖のループを形成するように、その末端の一方にリン酸を有し、もう一方にクエンチャーを有するヘアピンオリゴヌクレオチドを設計することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、リン酸とクエンチャーをステムハイブリダイゼーションにより接近させる「ヘアピン」構造を形成するだろう。リン酸化ヘアピンオリゴヌクレオチドが、リン酸と金属との相互作用により金属−ポリマー複合体に結合している場合、クエンチャーのポリマーへの配向によりクエンチングが誘導されるだろう。リン酸/クエンチャー官能基化オリゴヌクレオチドがヘアピンのループ領域に結合する標的にハイブリダイズする場合、ループ領域はステム領域の二次構造を分裂させるリジッドロッド(rigid rod)になる。これは、アクセプタとドナーのペアを強制的に分離させ、それによりポリマーのクエンチングを減少させる。
【0079】
タンパク質及び他の標的に対する直接的なアッセイは、DNAアプタマーの結合特性を用いて多くの経路により実施することもできる。リン酸化DNAアプタマーは、金属被覆共役ポリマー表面に結合することができる。標的分子(サイズの小さな分子、サイズではタンパク質まで)の存在下では、オリゴヌクレオチドのアプタマー構造は安定化されるはずである(より低いΔG)。選択された標的の不在下においては、アプタマー鎖は弱い自己構造(self−structure)を有することができる。アプタマーの自己構造がクエンチャーで標識された相補的オリゴヌクレオチドにより侵入され得る場合には、アッセイは生み出されることができる。このようなアッセイ(アプタマーの標的が不在である場合)においては、相補的オリゴヌクレオチド−クエンチャーはアプタマーにハイブリダイズすることができる。このハイブリッドは、上記にリストした形態のもの(すなわち、5'−末端にリン酸、3'−末端にクエンチャー;又はその逆)であることができ、これにより、クエンチャーは配向して接合ポリマーをクエンチングするだろう。アプタマーの標的の存在下では、アプタマーの自己構造は安定化し、オリゴヌクレオチドクエンチャーはアプタマーにハイブリダイズすることはできないだろう。従って、アプタマーの標的の存在下では、ポリマーは蛍光を発し、そしてアプタマーの標的の不在下では、蛍光はクエンチングされるだろう。
【0080】
一般的なリン酸の修飾又は消費
任意の方法でクエンチャーにテザリングされたリン酸を含む任意の系においては、化学的手段によるリン酸の修飾はリン酸を別の官能基に変換することができ、これにより金属−ポリマー複合体へのリン酸−金属介在性結合を妨げる。同様に、リン酸の他の要素への結合は、その同一のリン酸の金属ポリマー複合体への結合を妨げることができる。これらの場合においては、クエンチャーは共役ポリマーと同じ場所に配置され、蛍光発光が起こるだろう。一般的な例として、複合体A(任意の手段によりクエンチャーにテザリングされたリン酸を含む)は、金属ポリマー複合体をクエンチングすることができる。複合体Aに対する親和性を有し且つ複合体A中に含まれるリン酸を化学的に修飾するか又は結合する要素も含む分子Bとともに存在する場合には、複合体Aは金属ポリマー複合体に結合することができず、それにより金属ポリマー複合体をクエンチングすることができない。
【0081】
ビオチン−テザー(tether)(BT)コンジュゲートを用いたアッセイ、試薬及びキット
1つの実施態様によると、標的分析物に対するアッセイを実施するためのキットが提供される。キットは2つの別個の成分を含んで成る:クエンチャー(Q)及びビオチン−テザーコンジュゲート(BT)。BTコンジュゲートのテザー(T)は、例えばタンパク質又はポリペプチド基質を含んで成ることができる。この実施態様によると、テザーは標的分子との相互作用及び標的分子による修飾でクエンチャーと会合する能力を獲得し、修飾テザー(T')を形成する。テザーの修飾後に、BTコンジュゲートの標的分析物との相互作用、そしてその後の修飾BTコンジュゲート(BT')のクエンチャー(Q)との会合の結果として、QT'Bバイオコンジュゲートが形成される。キットは蛍光剤成分(P)も含んで成ることができる。蛍光剤成分は、クエンチャーと蛍光剤が会合した場合にクエンチャーによる蛍光剤のスーパークエンチングの増幅が可能である様式において、会合した複数の蛍光種を含んで成る。蛍光剤は蛍光性ポリマーであることができる。蛍光剤は、マイクロスフィア、ビーズ又はナノ粒子などの固形支持体と会合することができる。QT'B複合体上のビオチン部分と固形支持体上のビオチン結合性タンパク質との相互作用が蛍光のクエンチングをもたらすように、固形支持体はビオチン結合性タンパク質も含んで成ることができる。
【0082】
上記に説明するように、BTコンジュゲートのテザーは認識されそして標的分析物への会合又は反応により修飾されて、BT'コンジュゲートを形成することができる。テザーの修飾は、修飾BTコンジュゲート(BT')がクエンチャー(Q)に結合しQT'B複合体を形成するのを可能にする。この一連の出来事は、ポリマー蛍光の変調へと続くことができる。特に、蛍光の変化は、サンプル中の標的分析物の存在及び/又は量を示すために用いることができる。更に、BTコンジュゲートの酵素又は他の標的分析物との特定の会合又は反応がない場合は、蛍光PはBTコンジュゲートへの会合により影響を受けない。従って、サンプル中の標的分析物の存在及び/又は量を決定するための、上記のクエンチャー(Q)及びビオチン−テザーコンジュゲート(BT)を使用する方法も提供する。
【0083】
1つの実施態様によると、BTコンジュゲートのテザー(T)の標的分析物との相互作用は、テザー上のクエンチャー結合成分の除去をもたらすことができる。この実施態様において、BTコンジュゲートのクエンチャー(Q)に結合する能力は、分析物との相互作用の結果として取り除かれ、修飾コンジュゲート(BT')を形成する。さらに、この一連の出来事は、定量的にポリマー蛍光の変調へと続くことができる。いくつかの実施態様においては、BTと標的分析物の反応は触媒的であることができ、ポリマー蛍光の変調の増大をもたらす。
【0084】
更なる実施態様によると、ポリマースーパークエンチングは、金属イオンにより介在されることができる。この実施態様によると、QTコンジュゲート(ここで、Qは電子又はエネルギー移動クエンチャーであり、Tは反応性テザーである)は、標的分析物と反応して、テザー上の官能基を導入し、修飾し又は除去することができる。官能基は、蛍光性ポリマーに会合した又は蛍光性ポリマーと同じ場所(例えば、固形支持体の表面上)に配置された金属イオンとの会合が可能な官能基であることができる。従って、修飾QTコンジュゲート(QT')は、蛍光性ポリマー及び金属イオンを含んで成るアンサンブルとの会合が可能である。その結果、テザーの修飾はポリマー蛍光における変化をもたらす。この方法は、標的分析物としてのキナーゼ、ホスファターゼ及び他の酵素に対する感度の高いアッセイにおいて用いることができる。
【0085】
翻訳後修飾イベントのバイオディテクション(biodetection)のための修飾可能なテザーをベースとしたQTBアプローチ
このアプローチは、標的分析物との相互作用で修飾されてBT'コンジュゲートを形成する、合成ビオチン化ペプチド基質又はテザー(以下、「BTコンジュゲート」と呼ぶ)を用いる。1つの実施態様において、BTコンジュゲートは非蛍光性クエンチャー(Q)に複合することが不可能であり、一方、修飾コンジュゲート(BT')は容易にクエンチャーに結合する。このタイプの相互作用は、基質転換の増加とともにポリマー蛍光が減少する蛍光「ターン−オフ」アッセイを導く。
【0086】
別の実施態様においては、BTコンジュゲートはダーク(dark)クエンチャーと容易に会合することができる。しかし、BTコンジュゲートは、標的分析物と相互作用をして修飾コンジュゲート(BT')を形成した後は会合する能力を失う。このタイプの相互作用は、蛍光「ターン−オン」アッセイをもたらす。
【0087】
更なる実施態様において、上記の実施態様におけるクエンチャーは、蛍光部分であることもできる。蛍光部分のクエンチャーとしての使用は、蛍光の感作された放射を提供することができる。全てのこれらの実施態様においては、QTBバイオコンジュゲートはポリマー−レセプターアンサンブルと複合体を形成して、スーパークエンチングプロセスにより効率的にポリマー蛍光を変調することができる。
【0088】
翻訳後修飾相互作用のためのアッセイで使用されるクエンチャー部分は、基質上に修飾される官能基に会合する特性及び近傍に存在する場合に共役ポリマーの蛍光のスーパークエンチングを増大させる特性を兼ね備える。1つの実施態様において、クエンチャーは遷移金属又は鉄(III)イミノ二酢酸(IDA)型のキレートなどの有機金属種であることができる。第二鉄はホスホペプチドに強く会合することができ、そして電子移動により蛍光性ポリマーをスーパークエンチングすることができる。別の実施態様において、クエンチャーは2つの異なる部分から成ることができる(1つはクエンチャーの修飾官能基への会合を促進し、もう1つはエネルギー移動によりポリマークエンチングを引き起こす)。
【0089】
センサーは、固形支持体上又は溶液中のいずれかのビオチン結合性タンパク質と同じ場所に配置された共役蛍光性ポリマーを含んで成ることができる。ポリマーは、非共役骨格上又はビーズ若しくはナノ粒子などの固形支持体の反対に荷電した表面上に集合した蛍光色素から構成される荷電ポリマー、中性のポリマー、又は「実質上の(virtual)」ポリマーであることができる。
【0090】
キナーゼ及びホスファターゼ酵素のバイオディテクション及びバイオアッセイ(bioassay)のための修飾テザーをベースとした(QT'B)アプローチ
QT'B形態は、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素活性の検出及び定量のために使用することができる。例えば、このアッセイは、PKAなどの標的キナーゼ及びPTP−1Bなどのホスファターゼによるビオチン化ペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化のそれぞれを測定するために使用することができる。キナーゼ又はホスファターゼ活性の検出のためのQT'B形態の使用を、図13に示す。
【0091】
QTLセンサーは、ビオチン結合性タンパク質と同じ場所に配置された(図13に示すように固形支持体(例えば、マイクロスフィア)の表面上に被覆されるか、又は溶液中で複合体として存在するかのいずれか)、高い蛍光性の接合高分子電解質を含んで成ることができる。標的キナーゼ(例えば、PKA)により特異的にリン酸化されること又は標的ホスファターゼ(例えば、PTP−1B)により特異的に脱リン酸化されることが知られているビオチン化ペプチド又はタンパク質基質を、所望の時間の間適切な酵素とインキュベートすることができる。
【0092】
図13に示すように、非リン酸化BTコンジュゲートをサンプル中に添加し、サンプルとともにインキュベートして、キナーゼ酵素活性を測定することができる。このコンジュゲートをサンプルとインキュベートした後の、ポリマーセンサー及びクエンチャーのサンプルへの添加は、ポリマー蛍光のクエンチングをもたらすことができる。蛍光の減少は、酵素活性の一次関数である。
【0093】
図14は、QT'Bアッセイを用いたタンパク質キナーゼA(PKA)活性の測定を示すグラフである。図14においては、蛍光(RFU)をPKA濃度(mU/ウエル)の関数としてプロットする。図14から分かるように、PKA濃度の増加は蛍光の減少をもたらす。
【0094】
図15は、ホール(whole)のタンパク質基質(ヒストン1)を用いたタンパク質キナーゼC活性の検出を示すグラフである。図15から分かるように、リン酸化ヒストン基質(1)と比較して非リン酸化ヒストン基質(2)は、低いレベルのポリマー蛍光が観察される。
【0095】
図13にも示すように、サンプル中のホスファターゼ酵素活性は、サンプルのリン酸化BTコンジュゲートとのインキュベーションにより測定することができる。インキュベートしたサンプルへのポリマーセンサー及びクエンチャーの添加は、PTP−1B活性に応じてポリマー蛍光の増加をもたらすことができる。
【0096】
図16は、QT'Bアッセイを用いたタンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)活性の検出を示すグラフである。図16においては、蛍光(RFU)をPTP−1B濃度(mU/ウエル)の関数としてプロットする。図16から分かるように、PTP−1B濃度の増加は蛍光の増大をもたらす。
【0097】
PKAキナーゼ活性の検出の場合には、Kemptideペプチド基質を用いることができる。この基質は、N末端にビオチンを含み、そしてPKAによりリン酸化されることのできるセリンを含む。
【0098】
PTP−1Bホスファターゼ活性の検出のために、N末端にビオチンを有するリン酸化基質を用いることができる。この基質は、PTP−1Bとの相互作用で脱リン酸化を受けることができる。
【0099】
クエンチングがドナーとアクセプターの間の等モル量のイベントであるFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイとは違って、上記のQTLキナーゼ及びホスファターゼアッセイは、機能的に優れたプラットホームを用いる。このプラットホームは、良く確立されたリン酸−金属複合体相互作用と電子及びエネルギー移動クエンチャーによる共役ポリマースーパークエンチング現象とを組み合わせることで、蛍光シグナルの増大及び酵素活性の測定における感度の増強をもたらす。
【0100】
金属イオン介在性ポリマースーパークエンチングをベースとしたバイオアッセイ
アニオン性共役ポリマーが金属カチオン及び有機カチオンと強く会合する(時おり、同時発生的にポリマー蛍光のクエンチングが起こる)ことが以前示された。[1、4]会合は、クーロン力及び疎水性相互作用の結果として起こる。以前の研究では、ポリマー及び対イオンの間の会合は、荷電した支持体(ポリスチレンマイクロスフィア、シリカ又は粘土など)又は別の荷電したポリマーとの事前の会合により制御又は調整できることも示された。[4−6]
【0101】
アニオン性ポリマー(図1Aに示した例)は、ポリマー蛍光の変化をほとんど引き起こさないプロセスにおいて金属イオンと会合することができる。このアプローチの例として、最初に図1Aに示す構造を有するポリマーをカチオン性ポリスチレンマイクロスフィア上に被覆し、次にGa3+で処理した。このプロセスを図17に示す。図17から分かるように、Ga3+はそのポリマーと会合するが、その蛍光をクエンチングしない。固形支持体(例えば、ビーズ)、ポリマー及び金属イオン(例えば、Ga3+)から成るアンサンブルは、以前実証された金属イオンの有機リン酸と会合する能力を利用する新たなセンサープラットホームを提供する。
【0102】
金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)は、リン酸化種の精製における一般的な技術である。Fe(III)、Ga(III)、Al(III)、Zr(IV)、Sc(III)及びLu(III)(硬いルイス酸)などの金属イオンは、共有結合したイミノ二酢酸(IDA)又はニトリロ三酢酸(NTA)又は他のリガンドとの会合により、アガロース、セファロースなどの樹脂ビーズの表面上に固体化することができる。次に、結合した金属イオンは、タンパク質又はペプチドなどのリン酸化種に結合することができる。タンパク質の単離におけるIMACの適用に加えて、IMAC関連技術は、リン酸化後にリン酸金属複合体を形成する際の、蛍光標識基質の蛍光偏光における変化を測定することにより、タンパク質キナーゼ酵素用の検出形態として使用することができる。
【0103】
図17に示すように、固形支持体会合Ga3+は、キナーゼ酵素(又はホスファターゼ酵素による脱リン酸化)により生み出されるリン酸化基質と複合する能力を保持している。従って、固形支持体テザリングGa3+を、QTLアッセイ用の基礎を提供するのに用いることができる。示した例においては、金属イオン(例えば、Ga3+)との会合によりポリマーの近傍にもたらされた際に、エネルギー又は電子移動クエンチングのいずれかにより蛍光性ポリマーの蛍光を減少させることのできるクエンチャーを用いて基質を機能化した。
【0104】
典型的な検出形態は、図1Aに示す構造を有するアニオン性高分子電解質(以下、「PPE」と呼ぶ)、0.55μmのカチオン性ポリスチレンマイクロスフィア、塩化ガリウム、及びローダミン標識リン酸化ペプチドを用いる。この検出形態を図17で図示する。
【0105】
最初に、アニオン性PPEポリマーを、水中における沈着(deposition)により固形支持体(すなわち、0.55μmのカチオン性ポリスチレンマイクロスフィア)上に固定化した。次に、ポリマー被覆マイクロスフィアを、pH5.5の水溶液中において塩化ガリウムで処理した。次に、過剰のGa3+を洗い流した。
【0106】
酵素リン酸化反応(例えば、キナーゼ)、プロテアーゼ切断反応、又は1つのDNA/RNA配列のいずれから作り出される、又は競合反応により作り出される色素標識リン酸化物質は、ガリウムポリマーセンサーと会合することができ、そしてポリマーからの蛍光を変調することができる。
【0107】
図18は、ペプチド基質におけるリン酸化の程度の関数としてのガリウムポリマーセンサーの蛍光を示す。図18においては、相対的な蛍光をリン酸化の程度(ホスホペプチド(%))の関数としてプロットする。
【0108】
図19は、サンプル中のタンパク質キナーゼA酵素のレベルに対する、実際の動態アッセイを実証する。このアッセイでは、基質の酵素介在性リン酸化はガリウムポリマーセンサーの存在下で起こる。図19では、相対的な蛍光をタンパク質キナーゼA(PKA)濃度(mU/Rx)の関数としてプロットする。
【0109】
蛍光変化は、様々な形態で測定することができる。一般的なアッセイは、動態及びエンドポイントアッセイの双方として、様々な基質に対する酵素介在性反応を測定するのに用いることができる。
【0110】
創薬のための阻害剤スクリーニングへのQT'B検出アプローチの適用
キナーゼ及びホスファターゼ酵素活性に対するアッセイにおける、電子又はエネルギー移動クエンチャーの存在下でスーパークエンチングを示す共役ポリマーの使用は、薬理学的に適切な酵素及び他の生体分子の効果を緩和する薬剤に対する、大きな化合物ライブラリーのスクリーンに適用することができる。酵素活性の既知の阻害剤の添加は、酵素の基質との反応を妨害し、それにより、阻害剤不在下で見られるシグナル応答を違った風に変調するだろう。阻害剤の所望の濃度に対して見られるシグナル変調の程度は、阻害剤の強さの尺度である。
【0111】
QT'Bをベースとしたアッセイは、様々なウエル濃度のマイクロタイタープレートにおいて実施し、創薬プロセスを加速することができる。1つの実施態様において、化合物のライブラリーをキナーゼ又はホスファターゼアッセイにおいてスクリーンし、リン酸化又は脱リン酸化反応の阻害をそれぞれ捜すことができる。
【0112】
ビオチン化テザー(BT)並びにクエンチャー及びビオチン結合性タンパク質のコンジュゲートを用いた、アッセイ、試薬及びキット
上記に説明したように、蛍光性ポリマーと会合したQTLバイオコンジュゲートを開発した。このQTLバイオコンジュゲートは、溶液中における個々の分子又は支持体上の集合体のいずれかとしての、蛍光性高分子電解質の金属イオンと複合する自己組織化能力を利用する。このように複合した金属イオンは、クエンチャーを含んで成るバイオコンジュゲート上の配位基(例えば、リン酸基)と選択的に会合することができ、これによりタンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ及びオリゴヌクレオチドの選択的検出のための基礎を提供する。[10−11]
【0113】
上記のアプローチは、クエンチャーで標識したバイオコンジュゲートを用いる。しかし、バイオコンジュゲートは2段階のプロセスで集合させることもできる。2段階のプロセスでは、最初の段階でビオチン化基質を酵素学的に反応させ、2番目の段階でクエンチャーと結合(couple)したビオチン結合性タンパク質分子(例えば、ストレプトアビジン)を含む検出分子を添加する。センサーを添加すると、金属イオンへのリン酸の会合が起こり、クエンチングは結合したビオチン結合性タンパク質/クエンチャーコンジュゲートにより介在される。
【0114】
この「スナップ式」のアプローチは、ビオチン化基質をストレプトアビジンクエンチャーと事前に会合させること及び集合したバイオコンジュゲートを用いて直接的に酵素と反応させることによる1段階のアッセイにおいて使用することもできる。しかし、この1段階のスナップ式アッセイアプローチの使用は、アッセイスピード及び/又は感度を落としてしまうかもしれない。
【0115】
金属イオン介在性スーパークエンチング
ポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)ファミリーにおける共役ポリマーは、芳香環に付加される様々な官能基を用いて調製することができる。使用されてきたペンダントアニオン基の中に、スルホポリp−フェニレンエチニレン(PPE−Di−COOH)共役ポリマーの分子構造を示す図1Aにおいて図示されるものもある。このポリマーは、水中でカチオン性マイクロスフィアと会合して、安定なポリマー被覆を形成することができる。被覆マイクロスフィアは、強い蛍光を示す。ポリマー被覆マイクロスフィア上の全体の電荷は、ポリマー負荷の程度により、そしてポリマーの構造を変化させることにより調整することができる。
【0116】
ポリマー被覆マイクロスフィアは金属カチオンと会合することができ、そして金属カチオンの負荷はマイクロスフィア上のポリマーの負荷レベルに依存し得ることが見出されてきた。Fe3+及びCu2+などのいくつかの金属イオンは、ポリマー蛍光をクエンチングすることができ、一方Ga3+などの他のものはポリマー蛍光をクエンチングしない。金属イオンの不在下においてほとんど又は全くクエンチングが生じない条件下において、非クエンチング金属イオンはマイクロスフィア結合ポリマーの蛍光のスーパークエンチングを介在しない。Ga3+の添加によりポリマー被覆マイクロスフィアが「荷電」された後において、懸濁物へのリン酸化ペプチドの添加はポリマー蛍光の顕著なクエンチングをもたらす。Ga3+によるペプチド上のリン酸の会合がクエンチャーをポリマーの近傍にもたらし、蛍光クエンチングを介在することが示された。
【0117】
金属イオン荷電ポリマーによるリン酸化生体分子のポリマークエンチングは、下記の2段階のプロセスにおいて達成することができる。図20は、酵素学的に反応させたビオチン化基質へのクエンチャーのその後の添加により達成される金属イオン介在性スーパークエンチング、及びキナーゼアッセイの実施例を図示する。図20は、ストレプトアビジン−クエンチャーの後にQTLセンサーを添加により検出される、標的酵素によるビオチンペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化を示す概略図である。ペプチド産物は、Ga3+金属イオンへの特異的なリン酸結合によりポリマーの表面にもたらされる。その結果生じるポリマー蛍光のクエンチングは、リン酸化又は脱リン酸化と同時に起こる。
【0118】
金属イオン介在性スーパークエンチング−キナーゼ/ホスファターゼアッセイをベースとしたバイオアッセイ
タンパク質のリン酸化及び脱リン酸化は、細胞の代謝、成長、分化及び細胞増殖の調節を介在する。酵素機能の異常は、癌及び炎症などの疾患を引き起こし得る。500超のキナーゼ及びホスファターゼは、細胞活性の調節に関与していると考えられており、薬物治療の有力な標的である。
【0119】
スーパークエンチングを用いて蛍光シグナルを増大することにより酵素活性の測定において強化された感度を示すアッセイが説明されている。[10−11]これらのアッセイで使用されるセンサープラットホームは、正に荷電したマイクロスフィア上での吸着により固定化された、修飾アニオン性高分子電解質誘導体を含んで成る。典型的な修飾アニオン性高分子電解質は、図1Aに示すポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)の誘導体である。蛍光性ポリマースーパークエンチングは、図20に示すようにキナーゼ/ホスファターゼ活性の検出に適用されてきた。2価又は3価金属イオンは溶液中でアニオン性共役ポリマーと強く会合することができ、修飾及び/又はポリマー蛍光のクエンチングをもたらす。ポリマー−マイクロスフィアアンサンブル上の全体の電荷は調整できるので、金属イオンが特定のリガンドと複合する能力を保持しながらポリマー蛍光を強くクエンチングせずにポリマーと会合することができるプラットホームを与えるように、アンサンブルを構築した。例えば、PPE会合Ga3+は、ペプチドがローダミンなどの色素を含む場合に金属イオン介在性ポリマースーパークエンチングが生じるように、リン酸化ペプチドと会合することもできることが見出された。ここで、ビオチン化ペプチド基質を検出するためのプラットホームの適用について説明する。
【0120】
例えば、シンチレーション近接(SPA)又はストレプトアビジン膜支持体(membrane support)(SAM)を用いる適用においては、洗浄段階は非結合性放射性ATP又は非結合性抗ホスホ(phospho)抗体を反応混合物から分離することを必要とされる。変換基質を保持するために、ビオチン化ペプチドが用いられ、様々なマトリクス上でストレプトアビジン又は他のビオチン結合性タンパク質により固定化されてきた。下記で説明するように、金属イオン介在性スーパークエンチングは、個々の基質又はビオチン−ペプチドライブラリーにおいてキナーゼの活性をスクリーンするのに使用することができる。このアプローチは、研究者が:
1)酵素突然変異体の基質特異性を試験すること;
2)リン酸化パターンを比較することにより、独自の(proprietary)酵素の酵素純度を評価すること;
3)キナーゼに対する蛍光ターン−オンアッセイを提供する、強化された放射を測定すること;及び
4)それにより、ライブラリー中の可視の自己蛍光化合物のスクリーニングを改良するために、検出を赤色に移す適切な色素クエンチャーによる強化された放射を使用すること、
を可能にする。
【0121】
例として、ストレプトアビジン結合フルオレセインクエンチャーを、酵素学的に反応させたビオチン化ペプチド基質に添加することができる。このアプローチは、図20において示す、感度が良くそして選択的なキナーゼ/ホスファターゼアッセイのための基礎を提供する。このアッセイは、洗浄段階又は複雑なサンプル調製を必要としない瞬時の「混ぜて読む」である。
【0122】
サンプル中におけるビオチン化ペプチド基質の酵素とのインキュベーション後に、クエンチャー及びビオチン結合性タンパク質(例えば、ストレプトアビジン)のコンジュゲートを添加し、インキュベートしたサンプルと会合させる(例えば、室温で15分間)。
【0123】
下記の実施例4は、タンパク質キナーゼA(PKA)に対する確固たるアッセイ、並びに1段階及び2段階アプローチの比較性能を示す。実施例4においては、キナーゼアッセイは蛍光「ターンオフ」アッセイとして機能する。クエンチャーがポリマー蛍光のクエンチングの結果として感作された蛍光を示すことできるので、このアッセイは測定される波長に依存してターンオン又はターンオフのいずれかとして使用することができる。更に、ポリマー及びクエンチャーの蛍光を同時に測定することは、感度の良いレシオメトリックアッセイを提供する。
【0124】
実施例4−タンパク質キナーゼA(PKA)活性のためのアッセイ
酵素基質として及びホスホ−ペプチドキャリブレータとして使用されるペプチドを下記で説明する。1段階様式におけるPKA活性の検出用に、
ローダミン−LRRASLG 配列番号:2
及びキャリブレータペプチド
ローダミン−LRRA(pS)LG配列番号:1
が、Anaspecにより合成された。
【0125】
2段階様式にけるPKA活性の検出用に、
ビオチン−LRRASLG 配列番号:5
及び
ビオチン−LRRA(pS)LG 配列番号:6
を、Anaspecから購入した。組み換え体PKAをPromegaから購入した。ストレプトアビジン結合蛍光剤をMolecular Probeから得た。ポリスチレン官能基化ビーズをInterfacial Dynamicsから得た。
【0126】
CRTで60分間アッセイバッファー中において1μMのペプチド(ローダミン−ペプチド又はビオチン−ペプチドのいずれか)を反応させることにより、1段階アプローチ対2段階アプローチの性能を決定した。2段階プロセスに対しては、5μLのストレプトアビジン−フルオレセインを添加し、CRTで15分間インキュベートした。最後に、検出器バッファー中の15μLのセンサーを添加した。450nmでの励起、475nmでのカットオフフィルター及び490nmでの放射にて、ウエルスキャンモードで、SpectraMax Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)を用いて、混合物の蛍光を測定した。
【0127】
図21A及び図21Bに示すように、N末端にクエンチャーを有する合成基質、又はストレプトアビジン−フルオレセインコンジュゲートを添加したビオチン化基質のいずれかを用いて、アッセイを実施した。基質のリン酸化において、ペプチドはリン酸基によりセンサーに会合して蛍光をクエンチングする。
【0128】
図21A及び図21Bは、2段階アプローチにおけるローダミン標識基質又はビオチン化基質を用いたPKAに対する酵素濃度曲線を示すグラフである。このアッセイにおいて得られたRFUを図21Aに示し、標準曲線からのバックカリキュレーション(backcalculation)後のリン酸化(%)を図21Bに示す。図21A及び図21Bにおいては、384ウエルの白色Optiplateにおいて室温で1時間、連続希釈したキナーゼPKA酵素を用いて、1μMの濃度の基質をリン酸化した。インキュベーション後に、5pmolのストレプトアビジン−ローダミンコンジュゲートを添加し、約22℃で15分間インキュベートし、その後約100×106のQTLセンサービーズを添加し、そして約22℃で10分間インキュベートした。プレートを約22℃で30分間インキュベートし、Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)で、475nmでのカットオフフィルターを用いて、450nmでの励起及び490nmでの放射にて、蛍光シグナルを測定した。
【0129】
実施例5−PKA、PKCα又はPTP−1Bに対する基質をスクリーニングするためのアッセイ
基質スクリーニングに対しては、1μMのビオチン−ペプチドを、約22℃で60分間アッセイバッファー中において反応させた。コントロール反応は、酵素を含まなかった。その後、5μLのストレプトアビジン−フルオロセインコンジュゲートを添加し、約22℃で15分間インキュベートした。最後に、検出器バッファー中の15μLのセンサーを添加した。450nmでの励起、475nmでのカットオフフィルター及び490nmでの放射にて、ウエルスキャンモードで、SpectraMax Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)を用いて、混合物の蛍光を測定した。
【0130】
図22は、酵素PTP−1B、PKCα及びPKAを用いて、キナーゼ又はホスファターゼに対する7つの異なるビオチン化基質のスクリーニングを示す棒グラフである。酵素を用いて又は用いないで反応を行い、RFUにおける差異を計算しプロットした。図22から分かるように、リン酸化依存性蛍光クエンチングは適切な基質を含む反応においてのみ検出され、非特異的基質を含む反応では検出されなかった。
【0131】
1つの実施態様によると、Stern−Volmerクエンチング定数により測定した増幅されたスーパークエンチングのクエンチング感度は、少なくとも500である。更なる実施態様によると、Stern−Volmerクエンチング定数により測定した増幅されたスーパークエンチングのクエンチング感度は、少なくとも1000、2000、5000、10000、100000又は1×106である。
【0132】
典型的な蛍光剤としては、蛍光性ポリマーが挙げられる。典型的な蛍光性ポリマーとしては、例えばポリ(フェニレンビニレン)などの発光性共役物質が挙げられる。ポリ(フェニレンビニレン)としては、例えばポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、ポリ(p−ナフタレンビニレン)、ポリ(2,5−ピリジルビニレン)及びそれらの誘導体である。それらの誘導体としては、例えばポリ(2,5−メトキシプロピルオキシスルホネートフェニレンビニレン)(MPS−PPV)、ポリ(2,5−メトキシブチルオキシスルホネートフェニレンビニレン)(MBS−PPV)などである。水溶解性に対しては、誘導体としてスルホン酸塩及びメチルアンモニウムなどの、1又は複数のペンダントイオン基を挙げることができる。典型的なペンダント基としては:
−O−(CH2)n−OSO3-(M+)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、M+はカチオン(例えば、Na+又はLi+);
−(CH2)n−OSO3-(M+)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、M+はカチオン(例えば、Na+又はLi+);
−O−(CH2)n−N+(CH3)3(X-)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、X-はアニオン(例えば、Cl-);及び
−(CH2)n−N+(CH3)3(X-)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、X-はアニオン(例えば、Cl-)、
が挙げられる。
【0133】
前述の明細書は本適用の原理を教示するが(説明を目的として提供される例とともに)、一方で、本開示を読むことで、開示の真の範囲から逸脱することなく形態及び細部において様々な変更が可能であるあることが、当業者により十分に理解されるだろう。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1A】図1A及び図1Bは、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングアッセイにおいて使用することのできるポリマーの化学的構造を示す。
【図1B】図1A及び図1Bは、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングアッセイにおいて使用することのできるポリマーの化学的構造を示す。
【図2】図2は、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとした、酵素介在性リン酸化又は脱リン酸化活性のためのアッセイの概略図である。
【図3】図3は、ローダミン標識リン酸化ペプチドによるガリウムセンサーのクエンチングに対するStern−Volmerプロットである。
【図4A】図4A及び図4Bは、タンパク質キナーゼA(PKA)に対する、エンドポイント及び動態アッセイを示すグラフである。
【図4B】図4A及び図4Bは、タンパク質キナーゼA(PKA)に対する、エンドポイント及び動態アッセイを示すグラフである。
【図5】図5は、阻害剤の存在下でのタンパク質キナーゼA(PKA)アッセイの応答を示すグラフである。
【図6】図6は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTB−1B)のホスファターゼアッセイに対するEC50及び検出の限界を実証するグラフである。
【図7】図7は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTB−1B)活性の阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとしたプロテアーゼアッセイの概略図である。
【図9】図9は、金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたタンパク質及びペプチド基質を用いたブロッキングキナーゼアッセイの概略図である。
【図10】図10は、例としてPKCαを用いた蛍光ターンオンブロッキングキナーゼアッセイを示すグラフである。
【図11】図11は、金属イオン介在性スーパークエンチングを用いたホスホジエステラーゼアッセイの概略図である。
【図12】図12は、リアルタイム又は動態アッセイ形態における、トリプシン活性の測定結果を示すグラフである。
【図13】図13は、1つの実施態様に従った、リン酸化ポリペプチドの検出を示す。
【図14】図14は、1つの実施態様に従った、ビオチン化ペプチド基質(BT)を用いたアッセイにおける、タンパク質キナーゼA(PKA)濃度の関数とした相対的な蛍光を示すグラフである。
【図15】図15は、リン酸化及び非リン酸化ヒストンに応答した相対的な蛍光を示す図である。
【図16】図16は、更なる実施態様に従った、ビオチン化ペプチド基質(BT)を用いたアッセイにおける、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)濃度の関数とした相対的な蛍光を示すグラフである。
【図17】図17は、クエンチャー−テザーコンジュゲート(QT)が金属イオン及び蛍光性ポリマーアンサンブルと会合し、蛍光性ポリマーのスーパークエンチングの増大をもたらすアッセイを示す。
【図18】図18は、金属イオン介在性スーパークエンチングアッセイに対するリン酸化ペプチドの較正曲線を示すグラフである。
【図19】図19は、金属イオン介在性スーパークエンチングアッセイから得られるタンパク質キナーゼAの濃度曲線を示す。
【図20】図20は、キナーゼ反応への第二段階において添加されるストレプトアビジンクエンチング分子の会合による、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとしたキナーゼ酵素活性センサーに対する概略図である。
【図21A】図21A及び図21Bは、ビオチン化基質及びクエンチャー(例えば、ローダミン)標識基質を用いた2段階アプローチを用いたPKAに対するエンドポイントアッセイを比較したグラフである。ここで、図21Aは、PKA濃度の関数としてのRFUを示す。
【図21B】図21A及び図21Bは、ビオチン化基質及びクエンチャー(例えば、ローダミン)標識基質を用いた2段階アプローチを用いたPKAに対するエンドポイントアッセイを比較したグラフである。ここで、図21Bは、PKA濃度の関数としてのリン酸化(%)を示す。
【図22】図22は、3つの異なる酵素(すなわち、PTP−1B、PKCα及びPKA)を用いてそれぞれ反応させた、7つの異なるビオチン化ペプチド基質を用いたスクリーンの結果を示す棒グラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年12月12日付けで出願された米国特許仮出願第60/528,792号;2004年3月8日付けで出願された米国特許仮出願第60/550,733号;及び、2004年8月27日付けで出願された米国特許仮出願第60/604,813号の利益を主張するものである。前述の各出願は、その全部が本明細書中で参考文献として組み込まれている。
【0002】
本出願は、一般的に生体分子の検出のための試薬、キット及びアッセイに関し、特に、金属イオン結合及び蛍光性ポリマースーパークエンチングを組み合わせた生体分子の検出のための試薬、キット及びアッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
酵素免疫測定法(すなわち、ELISA)は、広範囲のタンパク質、抗体、細胞、ウイルスなどの存在及び生体活性を同定するための、最も広く用いられ且つ許容された技術である。ELISAは、最初に分析対象である生体分子が表面に付着(attach)された抗体に結合する、多段階の「サンドイッチ(sandwich)アッセイ」である。次に、二次抗体が生体分子に結合する。いくつかの場合においては、この二次抗体はその後増大反応を「展開する」触媒酵素に付着される。他の場合においては、この二次抗体は、3番目のタンパク質(例えば、アビジン又はストレプトアビジン)に結合するためにビオチン化される。このタンパク質は、比色変化を増大するための化学的カスケードを引き起こす酵素、又は蛍光タギングのための蛍光団のいずれかに付着される。
【0004】
広範に使用されているにもかかわらず、ELISAには多くの不都合な点がある。例えば、多段階の手順は試薬と展開時間の双方に渡って厳密な制御を要するため、時間がかかり、「偽陽性」になりやすい。更に、非特異的吸着試薬を除去するために慎重な洗浄が必要である。
【0005】
蛍光共鳴エネルギー移動(即ち、FRET)法は、ポリメラーゼ連鎖反応をベースとした(PCR)遺伝子配列決定及び免疫測定法の双方に適用されている。FRETは分析対象である生体分子の同種(homogenous)結合を用いて、オフ状態ではクエンチングされる色素の蛍光を活性化する。FRET技術の典型的な例においては、蛍光色素は抗体に連結(link)され(F−Ab)、そしてこの2分子がクエンチャー(quencher)に連結している抗原(Ag−Q)に結合する。結合複合体(F−Ab:Ag−Q)はエネルギー移動によりクエンチングされる(即ち、非蛍光)。Qにテザリングしていない同一の分析対象抗原(Ag)の存在下では、Ag−Qの2分子は相対濃度([Ag−Q]/[Ag])により決定される平衡結合確率により定量的に置換される。これによりFRET法は、抗原が既に十分特定されている定量的アッセイに制限されており、抗原をQに連結させる化学をそれぞれの新しい場合について解決しなければならない。
【0006】
他のFRETの基質及びアッセイは、米国特許第6,291,201号及び以下の文献に開示されている:Anne,他,「High Throughput Fluorogenic Assay for Determination of Botulinum Type B Neurotoxin Protease Activity」(Analytical Biochemistry,291,253−261(2001));Cummings,他,「A Peptide Based Fluorescence Resonance Energy Transfer Assay for Bacillus Anthracis Lethal Factor Protease」(Proc.Natl.Acad.Scie.99,6603−6606(2002));Mock,他,「Progress in Rapid Screening of Bacillus Anthracis Lethal Activity Factor」(Proc.Natl.Acad.Sci.99,6527−6529(2002));Sportsman他,(Assay Drug Dev.Technol., 2004,2,205);及びRodems他,(Assay Drug Dev.Technol., 2002,1,9)。
【0007】
分子内でクエンチングされる蛍光基質を用いた他のアッセイは、以下の文献に開示されている:Zhong,他,「Development of an Internally Quenched Fluorescent Substrate for Escherichia Coli Leader Peptidase」(Analytical Biochemistry 255,66−73(1998));Rosse,他,「Rapid Identification of Substrates for Novel Proteases Using a Combinatorial Peptide Libray」(J.Comb.Chem.,2,461−466(2000);及びThompson,他,「A BODIPY Fluorescent Microplate Assay for Measuring Activity of Calpains and Other Proteases」(Analytical Biochemistry,279,170−178(2000))。
【0008】
蛍光分極の変化を測定し、分析物の量を定量するために使用するアッセイも開発されている。例えば、Levine,他,「Measurement of Specific Protease Activity Utilizing Fluorescence Polarization」(Analytical Biochemistry 247,83−88(1997))を参照されたい。また、Schade,他,「BODIPY−α−Casein,a pH−Independent Protein Substrate for Protease Assays Using Fluorescence Polarization」(Analytical Biochemistry 243,1−7(1996))を参照されたい。
【0009】
しかしながら、高い感度で、酵素及び核酸などの生物学的に関連のある分子を迅速且つ正確に検出して定量することが、なお必要とされている。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
1番目の実施態様によると:
ビオチン化ポリペプチド(ここで、ポリペプチドは1又は複数のリン酸基を含む);及び
ポリペプチドのリン酸基と会合(associate)する金属カチオン、
を含んで成る複合体が提供される。
【0011】
2番目の実施態様によると、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供される。
この実施態様に従った方法は:
a)サンプルを、ビオチン化ポリペプチドとインキュベートすること(ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、又はホスファターゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る);
b)サンプルに金属カチオンを添加すること(ここで、金属カチオンはクエンチャーであるか、又はこの方法は金属カチオンと会合することができるクエンチャーをサンプルに添加することを更に含んで成る)
c)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように、互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している);及び
d)蛍光を検出すること、
を含んで成り、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0012】
3番目の実施態様によると、キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性の阻害剤としての化合物をスクリーニングする方法が提供される。この実施態様に従った方法は:
a)サンプル中で、ビオチン化ポリペプチドをこの化合物の存在下でキナーゼ又はホスファターゼ酵素とインキュベートすること(ここで、キナーゼ酵素アッセイの場合には、このポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、且つ、ホスファターゼ酵素アッセイの場合には、このポリペプチド分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る);
b)サンプルに金属カチオンを添加すること(ここで、金属カチオンはクエンチャーであるか、又は該方法は金属カチオンと会合することができるクエンチャーをサンプルに添加することを更に含んで成る)
c)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように、互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している);及び
d)化合物の存在下でサンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
ここで、化合物の存在下で検出される蛍光の量は、キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における化合物の阻害効果を示す。
【0013】
4番目の実施態様によると:
1又は複数のリン酸化可能な又は脱リン酸化可能な基を含んで成るポリペプチド;及び
ポリペプチドに接合(conjugate)するクエンチング部分、
を含んで成るバイオコンジュゲート(bioconjugate)が提供される。クエンチング部分は、ローダミン又は類似のスペクトル特性を有する別の色素であることができる。
【0014】
5番目の実施態様によると、上記のバイオコンジュゲートは、1又は複数のリン酸基及び切断部位を更に含んで成ることができる(ここで、クエンチング部分及びリン酸基は切断部位の反対側に存在する)。好ましくは、クエンチング部分が接合する切断部位の側には、リン酸基は存在しない。
【0015】
6番目の実施態様によると:
a)サンプルを、上記の切断部位及び1又は複数のリン酸基を含んで成るバイオコンジュゲートとインキュベートすること(ここで、プロテアーゼ酵素は切断部位でポリペプチドを切断する);
b)クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、クエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンが蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を示す。
【0016】
7番目の実施態様によると:
上記のバイオコンジュゲートを含んで成る第一の成分;及び
蛍光剤を含んで成る第二の成分(該蛍光剤は、クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、バイオコンジュゲートのクエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している))
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はプロテアーゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出するためのキットが提供される。
【0017】
8番目の実施態様によると:
a)サンプルを、上記のバイオコンジュゲートとインキュベートすること(ここで、バイオコンジュゲートのポリペプチドは、酵素分析物によりリン酸化可能な又は脱リン酸化可能な基を含んで成る);
b)クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、クエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0018】
9番目の実施態様によると:
クエンチャーを含んで成る第一の成分;及び
ビオチン化ポリペプチドを含んで成る第二の成分(ここで、ポリペプチドは分析物により修飾されることができ、且つ分析物により修飾されたポリペプチドはクエンチャーと会合している)
を含んで成る、サンプル中の分析物の存在を検出するためのキットが提供される。
【0019】
10番目の実施態様によると:
a)サンプルを、サイクリックAMP又はサイクリックGMPと接合したクエンチャーを含んで成るバイオコンジュゲートとインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を示す。
【0020】
11番目の実施態様によると:
a)1又は複数のリン酸化可能な基を含んで成るポリペプチド基質及びクエンチャー標識ポリペプチドを、キナーゼ酵素を含んで成るサンプルとインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性を検出する方法が提供され、
ここで、ポリペプチド基質のリン酸化は、蛍光の増加をもたらし;且つ
ここで、検出される蛍光の量は、ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性の存在及び/又は量を示す。
【0021】
12番目の実施態様によると:
a)ポリヌクレオチドの第一末端領域にポリペプチドに接合したクエンチャーを、且つポリヌクレオチドの第二末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとともに、サンプルをインキュベートすること(ここで、ポリヌクレオチドの第一及び第二末端領域の少なくとも1つの部分が互いにハイブリダイズしてヘアピン構造を形成することができ、且つ末端領域の間のポリヌクレオチドの中心領域が、核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成り、それによりヘアピン構造を崩壊させて、ポリヌクレオチドのクエンチャーとリン酸基の分離をもたらす);
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す。
【0022】
13番目の実施態様によると:
a)サンプル中の核酸をクエンチャーで標識すること;
b)サンプルを、ポリヌクレオチドの第一末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとインキュベートすること(ここで、ポリヌクレオチドは、核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成る);
c)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
d)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、核酸分析物のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが、蛍光の減少をもたらし;且つ
ここで、蛍光の減少は、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す。
【0023】
14番目の実施態様によると:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る第一のポリヌクレオチド、及び末端領域において第二のポリヌクレオチドに接合したクエンチャーを含んで成る第二のポリヌクレオチドとともに、サンプルをインキュベートすること(ここで、第二のポリヌクレオチド及び核酸分析物は、第一のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる);
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、核酸分析物の第一のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、蛍光の増大をもたらし;且つ
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す。
【0024】
15番目の実施態様によると:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る核酸アプタマー(ここで、核酸アプタマーはポリペプチド分析物に結合することができる)、及びクエンチャーを含んで成るポリヌクレオチド(ここで、ポリヌクレオチドは核酸アプタマーにハイブリダイズすることができる)とともに、サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、ポリペプチド分析物の核酸アプタマーへの結合は、蛍光の増大をもたらし;且つ
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を示す。
【0025】
16番目の実施態様によると:
ビオチン部分を含んで成るポリペプチド(ここで、ポリペプチドの1又は複数のアミノ酸残基は、リン酸化又は脱リン酸化が可能である);及び
クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質、
を含んで成る複合体が提供され、
ここで、ポリペプチドのビオチン部分は、タンパク質−タンパク質相互作用によってビオチン結合性タンパク質と会合し;且つ
ここで、クエンチング部分は、蛍光剤と会合する際に蛍光剤のスーパークエンチングを増大することが可能である。
【0026】
17番目の実施態様によると:
a)上記の複合体(ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、ホスファターゼ酵素分析物の場合には、ポリペプチドは分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る)とともに、サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、クエンチャーが蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
c)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光の量は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0027】
18番目の実施態様によると:
a)キナーゼ酵素分析物のアッセイの場合には、分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチド、或いは、ホスファターゼ酵素分析物のアッセイの場合には、分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチドのいずれかとともに、サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質を、インキュベートしたサンプルに添加すること;
c)クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、クエンチング部分が蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、サンプルに添加すること(ここで、蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは蛍光剤のアニオン基と会合している);及び
d)サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法が提供され、
ここで、検出される蛍光は、サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す。
【0028】
発明の詳細な説明
バイオセンシング(biosensing)に対するクエンチャー−テザリング−リガンド(QTL)アプローチは、電子及びエネルギー移動クエンチャーによる蛍光性高分子電解質のスーパークエンチングを利用する。QTLアッセイのプラットホームは、接合したポリマーの集光能力とそれらの高く非局在化された励起状態を利用して、非常に少量の電子及びエネルギー移動種の存在に反応した増大された蛍光シグナルの変調を提供する。この新規の技術は、シグナル変調現象と抗原−レセプター、基質−酵素及びオリゴヌクレオチド−オリゴヌクレオチド結合の相互作用とを会合させることにより、タンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ及びオリゴヌクレオチドの感度の高い検出に適用されてきた。[1−9]
【0029】
1つのアプローチにおいて、蛍光性ポリマー(P)は、溶液中又は固形支持体上のいずれかにおいてビオチン結合性タンパク質とともに配置され、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質相互作用により、クエンチャー−テザリング−ビオチン(QTB)バイオコンジュゲートと会合複合体を形成する。QTBコンジュゲートは、ビオチンへの反応性テザリングにより連結したクエンチャーQを含む。ビオチンは、ポリマー(P)とともに配置されたビオチン結合性タンパク質と強く結合する。QTBバイオコンジュゲートの標的分析物との反応は、容易に検出可能な方法においてポリマー蛍光を変える。
【0030】
本明細書中で説明するように、QTLバイオコンジュゲートと蛍光性ポリマーとを会合させる代替方法が開発されてきた。代替方法は、溶液中における個々の分子又は支持体上の集合体(assembly)のいずれかとしての、蛍光性高分子電解質の金属イオンと複合する自己組織化能力を利用する。このようにして複合した金属イオンは、QTLバイオコンジュゲート中に組み込まれた配位基(例えば、リン酸基)に選択的に会合することができ、それにより、例えばタンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ及びオリゴヌクレオチドの選択的検出のための基礎を提供する。[10−11]
【0031】
アクセプタ分子(すなわち、クエンチャー)がドナー分子の効力をクエンチングすることのできる効力は、2つの実在物を隔てる距離に依存する。構成的(constructing)アッセイにおいては、分子のテザリング(アクセプタとドナーを一緒にする)は、共有結合及びビオチン−アビジン相互作用などの一般的なストラテジーにより達成されることができる。共有結合はクエンチャーを直接アクセプタ上に配置し、それらを1つの分子にするので、共有結合は共鳴エネルギー移動に対して優れたアプローチである。従って、その2つの間の距離は、単結合と同じくらいの短さであることができる。一方、ほとんどどの分子もビオチンに共有結合することができるため、ビオチンとアビジンなどのビオチン結合性タンパク質(BBP)の間の相互作用は、広範な汎用性を提供する。しかし、ビオチン結合性タンパク質は一般的に60キロダルトンより大きく、その結果として、ビオチン−BBP相互作用によりアクセプタとドナーが一緒にされる場合に、アクセプタとドナーの間の距離が大きくなり得る。
【0032】
ビオチン−BBP相互作用に対する一般的な置き換えとして、スーパークエンチングアッセイにおけるアクセプタ及びドナーの同じ場所への配置に対しては、金属イオンリン酸相互作用を提案する。多くの分子はリン酸化されることができるので、ビオチン−BBP相互作用と同様に、このストラテジーは一般的に適用可能である。さらに、そのテザリングの両端距離(すなわち、金属イオンとリン酸との間の配位距離)は著しく短いので、このストラテジーはビオチン−アビジン相互作用に対する一般的な改良である。リン酸基などのリガンドに対する金属イオンの親和性は、ビオチン−BBP相互作用の親和性より著しく低い(Ka=105-7に対して対Ka=1013-15)。
【0033】
1つの実施態様によると、溶液中で個々の分子又は金属イオンに複合した支持体上の集合体のいずれかとして、蛍光性高分子電解質を含んで成る新規のセンサーが提供される。センサーの金属イオンは更に、QTLバイオコンジュゲート中に組み込まれたリガンド(例えば、リン酸基)に選択的に会合することができ、そしてエンドポイント様式及び動態(kinetic)様式を含む(これらに限定されない)、上記と同様の分子(例えば、タンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ及びオリゴヌクレオチド)の選択的な検出に対する基礎を提供することができる。下記で説明するように、いくつかのアッセイに対して、配位基−金属イオン結合はビオチン−ビオチン結合性タンパク質会合に対する代替手段を提供する。他の実施例において、配位基をQTLのクエンチャー部分に会合するか又はQTLのクエンチャー部分から取り除いて、センサー蛍光をクエンチングし、又はセンサー蛍光を回復させる(又はその双方)。
【0034】
本明細書中に記載の様々な実施態様は、蛍光性ポリマー−QTLスーパークエンチング及び金属イオン−リン酸リガンド特異的結合を用いて、キナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼ活性に対する改良されたアッセイを提供する。蛍光性ポリマーの金属イオン介在性スーパークエンチングは、ペプチド及びタンパク質基質を用いるキナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼ酵素活性の測定に対する一般的なプラットホームを提供し、そしてDNAハイブリダイゼーションをベースとしたアッセイ並びにアプタマー、抗体及び他のリガンドを用いるタンパク質のアッセイを実施するためのより一般的なアプローチを提供する。
【0035】
ポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)ファミリー中の共役ポリマーは、芳香環に付加される様々な官能基を用いて調製することができる。ペンダントアニオン基を用いて合成されたポリマーの中には、図1A及び図1Bに示すものがある。図1Aは、スルホポリp−フェニレンエチニレン(PPE−Di−COOH)共役ポリマーの分子構造を示す。図1Bは、スフホポリp−フェニレンエチニレン(PPE)共役ポリマーの分子構造を示す。これらのポリマーの双方は、水中でカチオン性マイクロスフィアと会合して、安定なポリマー被覆を形成することができる。ポリマー被覆マイクロスフィアは、強い蛍光を示す。ポリマー被覆マイクロスフィア上の全体の電荷は、ポリマー負荷の程度を変化させること及びポリマーの構造を変化させることにより調整することができる。
【0036】
蛍光性ポリマー被覆マイクロスフィアは金属カチオンと会合することができ、そして金属カチオンの負荷はマイクロスフィア上のポリマーの負荷レベルに依存し得ることが見出された。Fe3+及びCu2+などのいくつかの金属イオンは、ポリマー蛍光をクエンチングすることができ、一方Ga3+などの他のものはポリマー蛍光をクエンチングしない。いくつかの実施態様において、金属イオンの不在下ではほとんど又は全くクエンチングが生じない条件下で、マイクロスフィア結合ポリマーの蛍光のスーパークエンチングを介在するためにGa3+が用いられる。
【0037】
例えば、色素を含有するリン酸化ペプチド:
ローダミン−LRRA(pS)LG 配列番号:1
[式中、pSはリン酸化セリン(ポリマーに対して優れたエネルギー移動クエンチャーとして働くはずである)を指す]は、ポリマー被覆マイクロスフィアの蛍光をほとんど又は全くクエンチングしないことが見出された。しかし、ポリマー被覆マイクロスフィアをGa3+の添加により「荷電」させた後では、懸濁物への同一のペプチドの添加はポリマー蛍光の顕著なクエンチングをもたらす。対照的に:
ローダミン−LRRASLG 配列番号:2
で表されるペプチドなどの、リン酸化残基のみ又はクエンチャー色素のみを含有するペプチドは、同一の条件下でポリマー蛍光にほとんど影響を与えない。リン酸化生体分子の金属で荷電したポリマーとの特異的な会合は、下記で説明するように多くのアッセイの基礎となり得る。
【0038】
図2は、キナーゼ又はホスファターゼ活性のアッセイにおいて用いることのできる、金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたセンサーを図示する。図2は、標的酵素によるローダミンペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化を、QTLセンサーの添加により検出する方法を示す。ペプチド産物をローダミンクエンチャーで標識し、Ga3+金属イオンへの特異的なリン酸結合によりポリマー表面に移動させる。その結果生じるポリマー蛍光のクエンチングは、ポリペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化と同時に起こる。このタイプのアッセイは、ペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物及びヌクレオチド又は小分子(これらに限定されない)を含む生体基質に対するリン酸化又は脱リン酸化を和らげる(moderate)酵素に対して用いることができる。
【0039】
キナーゼ/ホスファターゼアッセイ
タンパク質のリン酸化及び脱リン酸化は、細胞の代謝、成長、分化及び細胞増殖の調節を介在する。酵素機能における異常は、癌及び炎症などの疾患を引き起こし得る。500超のキナーゼ及びホスファターゼは、細胞活性の調節に関与していると考えられており、それらの多くは薬物治療の標的である。
【0040】
タンパク質キナーゼA(PKA)は、cAMP依存性タンパク質キナーゼであり、ホルモン及び神経伝達などの、多くのcAMP上昇性の最初のメッセンジャーのエフェクターとして機能する。PKAの遍在的な分布及びその柔軟な基質認識特性は、リンパ球細胞増殖及び免疫応答の阻害、海馬における長期抑制の介在並びに感覚神経伝達などにおける生きた細胞の多くのプロセスにおいて、PKAを中心的な要素とする。タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)は、インスリンシグナル伝達経路の負の調節因子であることが最近示され、これはPTP−1Bに対する阻害剤が2型糖尿病の処置において有益であるかもしれないことを示唆している。
【0041】
キナーゼのうち、90%はセリン残基をリン酸化し、10%はスレオニン残基をリン酸化し、そして0.1%はチロシン残基をリン酸化する。抗ホスホチロシン抗体の開発は可能となったが、ホスホ−セリン及びスレオニン残基に対する抗体は低親和性であり、しばしば1つだけのキナーゼに特異的である。現在、非抗体ベースのハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイは、時間分解蛍光(TRF)、蛍光偏光アッセイ(FP)又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)などの方法をベースとしている。これらのアッセイは、特殊装置を必要とし、そして/或いは酵素活性に応じた低い蛍光強度変化に苦しんでいる。
【0042】
上記のスーパークエンチングを用いた蛍光シグナルの増大により、酵素活性測定における感度の強化に努めてきた。センサーのプラットホームは、図1Aに示すポリ(フェニレンエチレン)(PPE)誘導体などの修飾アニオン性高分子電解質蛍光剤を含むことができる。PPE蛍光剤は、正に荷電したマイクロスフィア上で吸着により固定化することができる。このポリマーは、高い量子効率で光ルミネッセンスを示し、プロテアーゼ活性の検出に使用されてきた。[9]このプラットホームにおいて、N−末端のクエンチャー及びC−末端のビオチンを側面に配置する反応性ペプチド配列が用いられた。このペプチドは、ビオチン結合性タンパク質とともに配置されたPPE被覆マイクロスフィアに結合し、PPE蛍光のほぼ完全なクエンチングをもたらす。ペプチドの酵素介在性切断は、酵素活性に対して直線性を有した蛍光クエンチングの反転をもたらす。1つのエネルギーアクセプタ色素はクエンチャーあたり約49繰り返し単位からの光ルミネッセンスをクエンチングすることができることが、実証された。[9]
【0043】
蛍光性ポリマーのスーパークエンチングは、図2に示すように、キナーゼ/ホスファターゼ酵素活性のバイオディテクション(biodetection)に適応することができる。図2に示すように、多価金属イオンは、溶液中でアニオン性共役ポリマーと強く会合することができ、ポリマー蛍光の変化及び/又はクエンチングをもたらす。ポリマー−マイクロスフィアアンサンブル上の全体の電荷は調整することができるので、これらのアンサンブルは、特異的リガンドと複合する能力を保持したままポリマー蛍光を強くクエンチングせずに金属イオンがポリマーと会合するプラットホームを与えることができる。このアプローチは、低いpHでのリン酸酸素との配位によって金属イオンがリン酸化化合物を特異的にトラップすることのできる固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)で使用されるものと類似している。例えば、Morgan他,(Assay Drug Dev.Technol., 2004,2,171)を参照されたい。
【0044】
本明細書中で説明するように、ガリウムはポリマー放射をクエンチングすることなく蛍光剤(図1A及び図1Bに示すものなどのアニオン性共役ポリマー、並びに複数の蛍光種を含んで成る他の蛍光剤が挙げられるが、これらに限定されない)と会合することができる。ガリウムは、単量体のGa3+として又はポリオキソ種などの多量体アンサンブルとして存在することができる。蛍光剤会合ガリウムはまた、ペプチドがローダミンなどの色素を含む場合、金属イオン介在性ポリマースーパークエンチングが起こるように、リン酸化ペプチドと会合することもできる。蛍光剤は、マイクロスフィアなどの固形支持体の表面と会合することができる。このアプローチは、図2に示すように、感度の良い選択的なキナーゼ/ホスファターゼアッセイに対する基礎を提供する。
【0045】
蛍光クエンチング(ターンオフ(turn off))キナーゼアッセイの場合において、ポリマー蛍光のクエンチングは酵素活性に対して直線性を有する。下記の実施例で説明するように、このアッセイは、ほぼ生理学的pHで実施することができ、そして構成的リアルタイム又はエンドポイントアッセイにおいて柔軟性を許容する。このアッセイは、瞬時の「混ぜて読む(mix and read)」であり、洗浄段階又は複雑なサンプル調製を必要としない。
【実施例】
【0046】
下記の実施例1は、タンパク質キナーゼA(PKA)及びタンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTB−1B)の酵素活性に対する確固たる(robust)アッセイを示す。このアッセイは、通常10〜20%の基質転換で0.9超のZ'値を与える。下記に示す実施例において、キナーゼアッセイは酵素活性に応じた蛍光シグナルの減衰を与え、一方ホスファターゼアッセイは酵素活性の増加にともなったシグナルの増大を与える。配列番号:1などのペプチドに対しては、クエンチャーはポリマー蛍光のクエンチングの結果として感作された蛍光を示すことができるので、このアッセイは同一のサンプルにおいて、観察する波長に依存したシグナルの増大又は減少を示すことができる。これにより、レシオメトリック(ratiometric)測定が可能となる。さらに、ペプチドのクエンチャーにおける蛍光偏光の観察により検出を実施することができる。金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたタンパク質キナーゼ、ホスファターゼ及びプロテアーゼアッセイに対しては、エンドポイント及び動態アッセイの双方を実施することができる。
【0047】
実施例1−タンパク質キナーゼa(PKA)及びチロシンホスファターゼ活性1B(PTP−1B)に対するアッセイ
下記のペプチドを酵素基質及びホスホペプチドキャリブレータ(calibrator)として使用した。
【0048】
PKA活性の検出用に:
ローダミン−LRRASLG 配列番号:2
及びそのキャリブレータペプチド:
ローダミン−LRRA(pS)LG 配列番号:1
が、Anaspecにより合成された。
【0049】
ホスファターゼ活性の検出用に:
ローダミン−KVEKIGEGT(pY)GVVYK 配列番号:3
及びそのキャリブレータペプチド:
ローダミン−KVEKIGEGTYGVVYK 配列番号:4
が、American Peptide Companyにより合成された。
【0050】
組み換えPKAを、Promegaから購入した。酵素であるPTP−1B及び阻害剤であるRK682を、Biomolから購入した。PKAに対するStaurosporine阻害剤を、Sigmaから購入した。ポリスチレンアミンで官能基化されたビーズを、Interfacial Dynamicsから得た。
【0051】
アッセイバッファー中の15μLの1μMペプチド溶液(ローダミン−ホスホ−ペプチド又はローダミン−非ホスホ−ペプチドのいずれか)を、検出器(detector)バッファー中の15μLのセンサーに添加することにより、センサービーズの性能を決定した。450nmでの励起、475nmでのカットオフフィルター及び490nmでの放射にて、ウエルスキャンモードで、SpectraMax Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)を用いて、混合物の蛍光を測定した。
【0052】
2価又は3価の金属イオンが、溶液中で図1A及び図1Bに示すようなアニオン性ポリマーと強く会合することができるという発見に基づいて、図1Aに示す構造のポリマーをキナーゼ/ホスファターゼアッセイのためのセンサーとして選んだ。PPE−Di−COOHで被覆したマイクロスフィアを含んで成る溶液に、340μMの濃度のGaCl3を添加した際に、放射のクエンチングは観察されなかった。より高い濃度のGaCl3では、蛍光放射のクエンチングが観察された。しかし、最適濃度のGa3+を用いた場合、ローダミン標識ホスホ−ペプチドはポリマー蛍光を強くクエンチングし、一方、非リン酸化のローダミン標識ペプチドを用いた場合には蛍光の変調はほとんど観察されないことが見出された。
【0053】
図3は、ローダミン標識PTP−1Bホスホペプチド基質に対して得られたStern Volmerプロットを示す。Stern Volmer定数(KSV)は、クエンチングの定量的尺度を提供する(F0はクエンチャーの不在下での蛍光強度であり、Fはクエンチャーの存在下での蛍光強度である。)本明細書で決定したKSVは比較的大きい(すなわち、2×107M-1)。50%のクエンチングは(PRU/Q)50=50を与え、スーパークエンチングの発生を実証する。
【0054】
上記に示すように、クエンチャー標識基質を用いてアッセイを開発した。基質のリン酸化で、ペプチドはリン酸基によりセンサーに会合し、蛍光をクエンチングする。金属イオン配位基はリン酸と特異的に結合するので、リン酸化セリン、スレオイニン又はチロシン残基を検出することができる。
【0055】
セリン及びチロシン酵素(すなわちタンパク質キナーゼA(PKA))及びタンパク質チロシンホスファターゼ1−B(PTP−1B)に対する蛍光のスーパークエンチングをベースとしたアッセイを、下記で説明する。
【0056】
図4Aは、ポリマークエンチングの増加が酵素濃度と相互に関連がある、PKA酵素活性のエンドポイント測定を示す。Fe3+配位アッセイ(非常に低いpHを必要とする)とは違って、このプラットホームはほぼ生理学的pHで有効であり、これによりリアルタイムアッセイ又はエンドポイントアッセイの実施において研究者による柔軟な選択を許容する。リアルタイムアッセイは(酵素反応ミックスの一部分として検出(detector)ミックスを含む)は、図4Bに示すように、50%の基質リン酸化に対してエンドポイントアッセイよりも約10倍高い濃度の酵素を必要とする。
【0057】
アッセイの感度を、PKA活性の既知の阻害剤であるStaurosporineを用いて試験した。結果を図5に示す。図5に示すように、6.5μMのATP及び200mUのPKAを用いた反応において1μMの基質を使用して得たIC50は59mUであり、公開された値(18.4mU)と一致する。
【0058】
この形態(format)を、PKAに対して使用したものとは異なる長さ及び配列組成のペプチド基質上でタンパク質チロシンホスファターゼ活性1B(PTP−1B)の検出に対して試験した。図6は、125nMの基質上でのPTP−1Bを用いたエンドポイントアッセイとして又はリアルタイムにおいて測定した酵素濃度曲線のEC50及びLODの結果を示す。既知の阻害剤であるRK−682を用いた阻害剤曲線は、26.4nMの優れたIC50をもたらした。
【0059】
このアッセイで与えることのできる統計パラメーターは、ホスホペプチドキャリブレータペプチドの既知の量を8回繰り返して評価することにより決定した(図6)。このデータは優れており、このアッセイがそれぞれ0.8及び0.9のZ'因子でわずか5〜10%の基質転換を決定するのに適していることを示している。
【0060】
このPKAアッセイの性能は、商業的に入手可能なFRETアッセイ(ATP消費アッセイ及びIMACベースのアッセイ)と比較されてきた。酵素濃度曲線において最適の性能を生み出すように、そして可能であれば同一のペプチドを用いて、全てのアッセイを実施した。IMACベースのアッセイは、酵素濃度曲線において最も低い感度を与えた(20pgに比較して1ng)。このアッセイにおいては(原理上は、QTL Lightspeed(登録商標)アッセイに最も近い)、現在の形態における1:50の比率とは対照的に、センサー対検出器は1:1の比率となる。これらの結果は、スーパークエンチングで得ることのできる感度の増大を明確に実証している。
【0061】
Akt−1及びPKCαに対する基質を用いて、追加のアッセイが開発された。これらの異なった基質を用いた場合、蛍光クエンチングの基質の長さ又はペプチド配列の内容への顕著な依存は観察されなかった。この点で、金属イオン介在性スーパークエンチングアッセイは一般的であると考えることができ、クエンチングがドナーとアクセプタの間の距離に高く依存するFRETペプチドに対して大きな利点を与える。
【0062】
プロテアーゼアッセイ
プロテアーゼ酵素は、それらの基質上のアミド結合を切断する。金属イオン−蛍光性ポリマーアンサンブルとともに、切断部位の両側にクエンチャー及びリン酸基を含むペプチド又はタンパク質基質の使用することにより、プロテアーゼ酵素活性の検出のための感度の高いアッセイの開発が可能となる。
【0063】
プロテアーゼアッセイの1つの実施態様を図8に示す。図8に示すように、切断されていない(intact)基質がセンサーに結合する場合、センサー蛍光はクエンチャー色素の接近(promixity)によりクエンチングされる。酵素により基質を切断してフラグメントにすることで、リン酸基からクエンチャーを分離し、クエンチャー及びポリマーを分離させる。この分離は、酵素活性の存在下において、ポリマー蛍光のクエンチングを減少させる(すなわち、センサーからのシグナルを増大させる)。
【0064】
プロテアーゼ活性は、同種(homogeneous)又は異種(heterogeneous)の形態において、リアルタイム又はエンドポイントのいずれかで測定することができる。同種のリアルタイムアッセイにおいては、基質はポリマー−マイクロスフィアアンサンブルの表面上に存在することができる。同種のエンドポイントアッセイにおいては、基質及び酵素は溶液中で反応することができ、そして特定のインキュベーション期間の最後に、反応を止めるためにサンプルにセンサーを添加することができる。クエンチャーとして蛍光色素を用いる場合、プロテアーゼ活性はレシオメトリックに測定することができる。異種のエンドポイント形態においては、切断部位の同じ側にリン酸基とクエンチャーを含むビオチン化基質を用いることができる。切断後に、ビオチン種の結合によりペプチド種は分離し、一方、クエンチャー標識部分は移動して蛍光剤をクエンチングすることができる。
【0065】
実施例2−金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとしたプロテアーゼアッセイ
このアッセイにおいてトリプシンに対するペプチド基質は、
ローダミン−LRRApSLG (配列番号:1)
である。
【0066】
トリプシンは2つのアルギニンの箇所でペプチドを切断する。この実施例において実施されるアッセイは、下記のパラメーターを用いた:
マイクロスフィア−蛍光剤−ガリウムアンサンブル(QTLセンサー);
3μM(終濃度) Rh−LRRApSLG(配列番号:1);
1U/μL トリプシン;
40×106 マイクロスフィア(MS)/15μL;
λex430;
λem490;及び
λco475nm。
【0067】
このアッセイを、384−ウエルの白色プレートにおいて約22℃で1時間実施した。このアッセイの結果を下記の表1に示した。
【表1】
【0068】
図12は、「リアルタイム」(すなわち、動態)アッセイ形態においてトリプシン活性を測定した結果を示すグラフである。図12から分かるように、トリプシン活性の増大は時間−依存的である。これに対応して、蛍光シグナルの増大は時間とともに起こる。
【0069】
非標識ペプチド及びタンパク質を用いたブロッキングアッセイ
上記及び図2に示すアッセイの基礎は、ブロッキングアッセイに適応することができる。ブロッキングアッセイにおいては、「一般的な」リン酸化色素標識ペプチド又は色素及び金属イオン結合性リン酸(例えば、ガリウム)の双方を含む他の基質は、付加的なリン酸化基質の不在下で、蛍光性ポリマー及び金属イオンを含むポリマービーズをクエンチングするが、ペプチド又はタンパク質基質がリン酸化される場合は「ブロック」される。
【0070】
金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたブロッキングキナーゼアッセイを図示する図9において、このアッセイの原理を示す。このアッセイは、酵素及び分析物の混合物にセンサーを添加し、その後インキュベートして反応させることにより、最も慣用的に実施される。任意のリン酸化分析物は、ポリマー蛍光をクエンチングせずに、図9で説明するようにセンサーと会合するだろう。「一般的な」リン酸化色素標識ペプチドの添加は、ポリマー蛍光のクエンチングをもたらすだろう(「ブロック」されたマイクロスフィア上における「遊離の」リン酸結合部位の程度により制限される)。このアッセイは蛍光「ターン−オン(turn−on)」アッセイとして機能し、アッセイを展開する際に事前に基質を誘導体化する必要がないという付加的な利点を与える。図10は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)を用いたPKCαに対するブロッキングアッセイ(「蛍光ターン−オン」)についての実験データを示す。
【0071】
天然のタンパク質基質上でのキナーゼ活性の検出は、下記のペプチド基質を用いるよりもいくつかの利点を有する。
・518の既知のヒトキナーゼ(又は2500のアイソフォーム)の中で、ほんの約50のキナーゼに対するペプチド基質が立証されており、ほとんどの場合においては標的タンパク質が同定されている。いくつかの酵素は、効果的な基質認識、結合及びリン酸化に対して標的の非連続的な(non−continuous)アミノ酸を必要とするかもしれない。この場合、たとえ関与するアミノ酸が同定されていても、人工のペプチド配列を構築することはできない。
・天然の標的タンパク質のリン酸化は、ペプチド基質のリン酸化よりも効率的であると予想される。これは、(ペプチド基質の)コストの意味において重要であり、またHTSにおける阻害剤の同定をより正確なものともする。
・天然の標的タンパク質のリン酸化は、人工の基質のリン酸化よりもより特異的である。ペプチド基質の交差認識(cross recognition)により、細胞内キナーゼ活性を分析する将来的な試みが妨げられるだろうが、タンパク質基質については取り組むべきである。
・タンパク質のリン酸化の検出を可能にする現在の非放射性及び非抗体ベースのアッセイは、二次酵素であるルシフェラーゼによるATP消費をベースとしている。このようなアッセイは、二次酵素であるルシフェラーゼの阻害の結果として、阻害剤スクリーンにおいて偽陰性を生じやすい。FPアッセイは、シグナルを得るために分子運動における大きな変化を必要とするため、低分子量のタンパク質のみを検出することができる。
【0072】
実施例3
標準的な反応において、キナーゼPKCαによるミエリン塩基性タンパク質(MBP)のリン酸化を実施し、上記の実施例2に記載のQTLセンサーを添加した。リン酸化MBPは、金属配位イオンへの特異的なリン酸結合によりQTLセンサーに結合し、色素標識ホスホペプチド(トレーサー)の会合を濃度依存的な様式で阻害する。その結果生じる蛍光は、mbpのリン酸化の程度と相互に関連している。
【0073】
この原理を下記の実施例において実証する。1μgの濃度のmbpを、連続的に希釈したキナーゼPKCα酵素を用いて、白色の384ウエルOptiplateにおいて室温で1時間リン酸化した。インキュベーション後に、50×106のQTLセンサービーズを、約22℃で10分間添加し、その後1μMの色素標識ペプチドトレーサーを添加した。プレートを約22℃で30分間インキュベートし、そして、Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)において、475nmカットオフフィルターを用いて、450nmでの励起、490nmでの放射にて、蛍光シグナルを測定した。蛍光「ターンオン」を、図9において図示する。
【0074】
金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングにより測定した、ホスホジエステラーゼ酵素活性
3',5'−サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)は、メタロホスホヒドラーゼ(metallophosphohydrolase)のファミリーを含んで成る。メタロホスホヒドラーゼは、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)及び/又はサイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の3'結合を特異的に切断して、対応する5'−ヌクレオチドを生成する。cAMP及びcGMPに対する様々な選択性を有するPDEの11のファミリーが、哺乳動物の組織において同定された。
【0075】
PDEは、細胞内のcAMP及び/又はcGMPレベルの必須のモジュレータ(modulator)である。サイクリック−AMP又はcGMPは、重要な細胞プロセスに関与する細胞内シグナル伝達において重要な役割を果たす細胞内二次メッセンジャーである。PDEは、様々な疾患を処置するための創薬の標的であった。例えば、シデナフィル(PDE5の選択的阻害剤)は、薬剤として商品化された(すなわち、Viagra(登録商標)(Pfizer,Incの登録商標))。いくつかのPDE4阻害剤は、喘息などの疾患を処置する抗炎症剤として臨床試験中である。
【0076】
上記に説明するように、キナーゼ及びホスファターゼアッセイで実証されているようにQTLセンサーはリン酸基に対して高い結合親和性を示す。PDEアッセイは、ホスホジエステラーゼの活性を試験するために、色素標識cAMP又はcGMPを基質として用いる。ローダミン、アゾ又はフルオロセイン(これらに限定されない)を含む色素は、PDEに対する反応性を阻害することなくcAMP又はcGMPに結合することができる。cAMP又はcGMPはホスホジエステル(ガリウム−ポリマー表面に強く結合しない)として存在するので、ポリマー蛍光の初期のクエンチングはほとんど起こらない。PDEにより触媒される加水分解の間、これらの基質上のホスホジエステルはリン酸基に変換される。次に、ガリウム−リン酸の特異的相互作用により、色素はマイクロスフィア表面の周辺にもたらされ、ポリマー蛍光のクエンチングが生じる。図11は、ホスホジエステラーゼアッセイを図示する。
【0077】
核酸アッセイ
金属−リン酸介在性結合は、DNA及びRNA検出用のスーパークエンチングアッセイを作り出すために用いることができる。溶液中に存在することのできる又は固形支持体上に固定化することのできる標的核酸種への核酸種のハイブリダイゼーションをベースとした、多くの異なったアプローチを用いることができる。第一のアプローチは、その末端がリン酸化されているオリゴヌクレオチドを用いる。リン酸は、DNA鎖の接合蛍光性ポリマーとの、金属−リン酸により介在される同一場所への配置を可能にする。リン酸基がオリゴヌクレオチドの5'−末端に付着している場合、3'−末端にクエンチャーを有する相補的な標的はリン酸化鎖にハイブリダイズすることができる。これらの末端は、機能的システムを保持したまま逆にすることもできる。このハイブリダイズした構造においては、クエンチャーは接合ポリマーに配向して、スーパークエンチングを促進する。従って、クエンチャー標識標的の存在下では、ポリマー蛍光はクエンチングされる。このような系は、非標識及び標識DNA鎖をそれらのリン酸化相補鎖への結合に対して競合させることにより、非標識DNAに対するアッセイとして容易に描写することができる。
【0078】
第二のアプローチが、分子指標により用いられるアプローチに類似したストラテジーに続く。オリゴヌクレオチドの末端領域が互いに相補的であって、ハイブリダイズしたステムを形成し、同時に、オリゴヌクレオチドの中心領域が標的オリゴヌクレオチドに対して相補的であって、標的が存在しない場合に一本鎖のループを形成するように、その末端の一方にリン酸を有し、もう一方にクエンチャーを有するヘアピンオリゴヌクレオチドを設計することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、リン酸とクエンチャーをステムハイブリダイゼーションにより接近させる「ヘアピン」構造を形成するだろう。リン酸化ヘアピンオリゴヌクレオチドが、リン酸と金属との相互作用により金属−ポリマー複合体に結合している場合、クエンチャーのポリマーへの配向によりクエンチングが誘導されるだろう。リン酸/クエンチャー官能基化オリゴヌクレオチドがヘアピンのループ領域に結合する標的にハイブリダイズする場合、ループ領域はステム領域の二次構造を分裂させるリジッドロッド(rigid rod)になる。これは、アクセプタとドナーのペアを強制的に分離させ、それによりポリマーのクエンチングを減少させる。
【0079】
タンパク質及び他の標的に対する直接的なアッセイは、DNAアプタマーの結合特性を用いて多くの経路により実施することもできる。リン酸化DNAアプタマーは、金属被覆共役ポリマー表面に結合することができる。標的分子(サイズの小さな分子、サイズではタンパク質まで)の存在下では、オリゴヌクレオチドのアプタマー構造は安定化されるはずである(より低いΔG)。選択された標的の不在下においては、アプタマー鎖は弱い自己構造(self−structure)を有することができる。アプタマーの自己構造がクエンチャーで標識された相補的オリゴヌクレオチドにより侵入され得る場合には、アッセイは生み出されることができる。このようなアッセイ(アプタマーの標的が不在である場合)においては、相補的オリゴヌクレオチド−クエンチャーはアプタマーにハイブリダイズすることができる。このハイブリッドは、上記にリストした形態のもの(すなわち、5'−末端にリン酸、3'−末端にクエンチャー;又はその逆)であることができ、これにより、クエンチャーは配向して接合ポリマーをクエンチングするだろう。アプタマーの標的の存在下では、アプタマーの自己構造は安定化し、オリゴヌクレオチドクエンチャーはアプタマーにハイブリダイズすることはできないだろう。従って、アプタマーの標的の存在下では、ポリマーは蛍光を発し、そしてアプタマーの標的の不在下では、蛍光はクエンチングされるだろう。
【0080】
一般的なリン酸の修飾又は消費
任意の方法でクエンチャーにテザリングされたリン酸を含む任意の系においては、化学的手段によるリン酸の修飾はリン酸を別の官能基に変換することができ、これにより金属−ポリマー複合体へのリン酸−金属介在性結合を妨げる。同様に、リン酸の他の要素への結合は、その同一のリン酸の金属ポリマー複合体への結合を妨げることができる。これらの場合においては、クエンチャーは共役ポリマーと同じ場所に配置され、蛍光発光が起こるだろう。一般的な例として、複合体A(任意の手段によりクエンチャーにテザリングされたリン酸を含む)は、金属ポリマー複合体をクエンチングすることができる。複合体Aに対する親和性を有し且つ複合体A中に含まれるリン酸を化学的に修飾するか又は結合する要素も含む分子Bとともに存在する場合には、複合体Aは金属ポリマー複合体に結合することができず、それにより金属ポリマー複合体をクエンチングすることができない。
【0081】
ビオチン−テザー(tether)(BT)コンジュゲートを用いたアッセイ、試薬及びキット
1つの実施態様によると、標的分析物に対するアッセイを実施するためのキットが提供される。キットは2つの別個の成分を含んで成る:クエンチャー(Q)及びビオチン−テザーコンジュゲート(BT)。BTコンジュゲートのテザー(T)は、例えばタンパク質又はポリペプチド基質を含んで成ることができる。この実施態様によると、テザーは標的分子との相互作用及び標的分子による修飾でクエンチャーと会合する能力を獲得し、修飾テザー(T')を形成する。テザーの修飾後に、BTコンジュゲートの標的分析物との相互作用、そしてその後の修飾BTコンジュゲート(BT')のクエンチャー(Q)との会合の結果として、QT'Bバイオコンジュゲートが形成される。キットは蛍光剤成分(P)も含んで成ることができる。蛍光剤成分は、クエンチャーと蛍光剤が会合した場合にクエンチャーによる蛍光剤のスーパークエンチングの増幅が可能である様式において、会合した複数の蛍光種を含んで成る。蛍光剤は蛍光性ポリマーであることができる。蛍光剤は、マイクロスフィア、ビーズ又はナノ粒子などの固形支持体と会合することができる。QT'B複合体上のビオチン部分と固形支持体上のビオチン結合性タンパク質との相互作用が蛍光のクエンチングをもたらすように、固形支持体はビオチン結合性タンパク質も含んで成ることができる。
【0082】
上記に説明するように、BTコンジュゲートのテザーは認識されそして標的分析物への会合又は反応により修飾されて、BT'コンジュゲートを形成することができる。テザーの修飾は、修飾BTコンジュゲート(BT')がクエンチャー(Q)に結合しQT'B複合体を形成するのを可能にする。この一連の出来事は、ポリマー蛍光の変調へと続くことができる。特に、蛍光の変化は、サンプル中の標的分析物の存在及び/又は量を示すために用いることができる。更に、BTコンジュゲートの酵素又は他の標的分析物との特定の会合又は反応がない場合は、蛍光PはBTコンジュゲートへの会合により影響を受けない。従って、サンプル中の標的分析物の存在及び/又は量を決定するための、上記のクエンチャー(Q)及びビオチン−テザーコンジュゲート(BT)を使用する方法も提供する。
【0083】
1つの実施態様によると、BTコンジュゲートのテザー(T)の標的分析物との相互作用は、テザー上のクエンチャー結合成分の除去をもたらすことができる。この実施態様において、BTコンジュゲートのクエンチャー(Q)に結合する能力は、分析物との相互作用の結果として取り除かれ、修飾コンジュゲート(BT')を形成する。さらに、この一連の出来事は、定量的にポリマー蛍光の変調へと続くことができる。いくつかの実施態様においては、BTと標的分析物の反応は触媒的であることができ、ポリマー蛍光の変調の増大をもたらす。
【0084】
更なる実施態様によると、ポリマースーパークエンチングは、金属イオンにより介在されることができる。この実施態様によると、QTコンジュゲート(ここで、Qは電子又はエネルギー移動クエンチャーであり、Tは反応性テザーである)は、標的分析物と反応して、テザー上の官能基を導入し、修飾し又は除去することができる。官能基は、蛍光性ポリマーに会合した又は蛍光性ポリマーと同じ場所(例えば、固形支持体の表面上)に配置された金属イオンとの会合が可能な官能基であることができる。従って、修飾QTコンジュゲート(QT')は、蛍光性ポリマー及び金属イオンを含んで成るアンサンブルとの会合が可能である。その結果、テザーの修飾はポリマー蛍光における変化をもたらす。この方法は、標的分析物としてのキナーゼ、ホスファターゼ及び他の酵素に対する感度の高いアッセイにおいて用いることができる。
【0085】
翻訳後修飾イベントのバイオディテクション(biodetection)のための修飾可能なテザーをベースとしたQTBアプローチ
このアプローチは、標的分析物との相互作用で修飾されてBT'コンジュゲートを形成する、合成ビオチン化ペプチド基質又はテザー(以下、「BTコンジュゲート」と呼ぶ)を用いる。1つの実施態様において、BTコンジュゲートは非蛍光性クエンチャー(Q)に複合することが不可能であり、一方、修飾コンジュゲート(BT')は容易にクエンチャーに結合する。このタイプの相互作用は、基質転換の増加とともにポリマー蛍光が減少する蛍光「ターン−オフ」アッセイを導く。
【0086】
別の実施態様においては、BTコンジュゲートはダーク(dark)クエンチャーと容易に会合することができる。しかし、BTコンジュゲートは、標的分析物と相互作用をして修飾コンジュゲート(BT')を形成した後は会合する能力を失う。このタイプの相互作用は、蛍光「ターン−オン」アッセイをもたらす。
【0087】
更なる実施態様において、上記の実施態様におけるクエンチャーは、蛍光部分であることもできる。蛍光部分のクエンチャーとしての使用は、蛍光の感作された放射を提供することができる。全てのこれらの実施態様においては、QTBバイオコンジュゲートはポリマー−レセプターアンサンブルと複合体を形成して、スーパークエンチングプロセスにより効率的にポリマー蛍光を変調することができる。
【0088】
翻訳後修飾相互作用のためのアッセイで使用されるクエンチャー部分は、基質上に修飾される官能基に会合する特性及び近傍に存在する場合に共役ポリマーの蛍光のスーパークエンチングを増大させる特性を兼ね備える。1つの実施態様において、クエンチャーは遷移金属又は鉄(III)イミノ二酢酸(IDA)型のキレートなどの有機金属種であることができる。第二鉄はホスホペプチドに強く会合することができ、そして電子移動により蛍光性ポリマーをスーパークエンチングすることができる。別の実施態様において、クエンチャーは2つの異なる部分から成ることができる(1つはクエンチャーの修飾官能基への会合を促進し、もう1つはエネルギー移動によりポリマークエンチングを引き起こす)。
【0089】
センサーは、固形支持体上又は溶液中のいずれかのビオチン結合性タンパク質と同じ場所に配置された共役蛍光性ポリマーを含んで成ることができる。ポリマーは、非共役骨格上又はビーズ若しくはナノ粒子などの固形支持体の反対に荷電した表面上に集合した蛍光色素から構成される荷電ポリマー、中性のポリマー、又は「実質上の(virtual)」ポリマーであることができる。
【0090】
キナーゼ及びホスファターゼ酵素のバイオディテクション及びバイオアッセイ(bioassay)のための修飾テザーをベースとした(QT'B)アプローチ
QT'B形態は、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素活性の検出及び定量のために使用することができる。例えば、このアッセイは、PKAなどの標的キナーゼ及びPTP−1Bなどのホスファターゼによるビオチン化ペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化のそれぞれを測定するために使用することができる。キナーゼ又はホスファターゼ活性の検出のためのQT'B形態の使用を、図13に示す。
【0091】
QTLセンサーは、ビオチン結合性タンパク質と同じ場所に配置された(図13に示すように固形支持体(例えば、マイクロスフィア)の表面上に被覆されるか、又は溶液中で複合体として存在するかのいずれか)、高い蛍光性の接合高分子電解質を含んで成ることができる。標的キナーゼ(例えば、PKA)により特異的にリン酸化されること又は標的ホスファターゼ(例えば、PTP−1B)により特異的に脱リン酸化されることが知られているビオチン化ペプチド又はタンパク質基質を、所望の時間の間適切な酵素とインキュベートすることができる。
【0092】
図13に示すように、非リン酸化BTコンジュゲートをサンプル中に添加し、サンプルとともにインキュベートして、キナーゼ酵素活性を測定することができる。このコンジュゲートをサンプルとインキュベートした後の、ポリマーセンサー及びクエンチャーのサンプルへの添加は、ポリマー蛍光のクエンチングをもたらすことができる。蛍光の減少は、酵素活性の一次関数である。
【0093】
図14は、QT'Bアッセイを用いたタンパク質キナーゼA(PKA)活性の測定を示すグラフである。図14においては、蛍光(RFU)をPKA濃度(mU/ウエル)の関数としてプロットする。図14から分かるように、PKA濃度の増加は蛍光の減少をもたらす。
【0094】
図15は、ホール(whole)のタンパク質基質(ヒストン1)を用いたタンパク質キナーゼC活性の検出を示すグラフである。図15から分かるように、リン酸化ヒストン基質(1)と比較して非リン酸化ヒストン基質(2)は、低いレベルのポリマー蛍光が観察される。
【0095】
図13にも示すように、サンプル中のホスファターゼ酵素活性は、サンプルのリン酸化BTコンジュゲートとのインキュベーションにより測定することができる。インキュベートしたサンプルへのポリマーセンサー及びクエンチャーの添加は、PTP−1B活性に応じてポリマー蛍光の増加をもたらすことができる。
【0096】
図16は、QT'Bアッセイを用いたタンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)活性の検出を示すグラフである。図16においては、蛍光(RFU)をPTP−1B濃度(mU/ウエル)の関数としてプロットする。図16から分かるように、PTP−1B濃度の増加は蛍光の増大をもたらす。
【0097】
PKAキナーゼ活性の検出の場合には、Kemptideペプチド基質を用いることができる。この基質は、N末端にビオチンを含み、そしてPKAによりリン酸化されることのできるセリンを含む。
【0098】
PTP−1Bホスファターゼ活性の検出のために、N末端にビオチンを有するリン酸化基質を用いることができる。この基質は、PTP−1Bとの相互作用で脱リン酸化を受けることができる。
【0099】
クエンチングがドナーとアクセプターの間の等モル量のイベントであるFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイとは違って、上記のQTLキナーゼ及びホスファターゼアッセイは、機能的に優れたプラットホームを用いる。このプラットホームは、良く確立されたリン酸−金属複合体相互作用と電子及びエネルギー移動クエンチャーによる共役ポリマースーパークエンチング現象とを組み合わせることで、蛍光シグナルの増大及び酵素活性の測定における感度の増強をもたらす。
【0100】
金属イオン介在性ポリマースーパークエンチングをベースとしたバイオアッセイ
アニオン性共役ポリマーが金属カチオン及び有機カチオンと強く会合する(時おり、同時発生的にポリマー蛍光のクエンチングが起こる)ことが以前示された。[1、4]会合は、クーロン力及び疎水性相互作用の結果として起こる。以前の研究では、ポリマー及び対イオンの間の会合は、荷電した支持体(ポリスチレンマイクロスフィア、シリカ又は粘土など)又は別の荷電したポリマーとの事前の会合により制御又は調整できることも示された。[4−6]
【0101】
アニオン性ポリマー(図1Aに示した例)は、ポリマー蛍光の変化をほとんど引き起こさないプロセスにおいて金属イオンと会合することができる。このアプローチの例として、最初に図1Aに示す構造を有するポリマーをカチオン性ポリスチレンマイクロスフィア上に被覆し、次にGa3+で処理した。このプロセスを図17に示す。図17から分かるように、Ga3+はそのポリマーと会合するが、その蛍光をクエンチングしない。固形支持体(例えば、ビーズ)、ポリマー及び金属イオン(例えば、Ga3+)から成るアンサンブルは、以前実証された金属イオンの有機リン酸と会合する能力を利用する新たなセンサープラットホームを提供する。
【0102】
金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)は、リン酸化種の精製における一般的な技術である。Fe(III)、Ga(III)、Al(III)、Zr(IV)、Sc(III)及びLu(III)(硬いルイス酸)などの金属イオンは、共有結合したイミノ二酢酸(IDA)又はニトリロ三酢酸(NTA)又は他のリガンドとの会合により、アガロース、セファロースなどの樹脂ビーズの表面上に固体化することができる。次に、結合した金属イオンは、タンパク質又はペプチドなどのリン酸化種に結合することができる。タンパク質の単離におけるIMACの適用に加えて、IMAC関連技術は、リン酸化後にリン酸金属複合体を形成する際の、蛍光標識基質の蛍光偏光における変化を測定することにより、タンパク質キナーゼ酵素用の検出形態として使用することができる。
【0103】
図17に示すように、固形支持体会合Ga3+は、キナーゼ酵素(又はホスファターゼ酵素による脱リン酸化)により生み出されるリン酸化基質と複合する能力を保持している。従って、固形支持体テザリングGa3+を、QTLアッセイ用の基礎を提供するのに用いることができる。示した例においては、金属イオン(例えば、Ga3+)との会合によりポリマーの近傍にもたらされた際に、エネルギー又は電子移動クエンチングのいずれかにより蛍光性ポリマーの蛍光を減少させることのできるクエンチャーを用いて基質を機能化した。
【0104】
典型的な検出形態は、図1Aに示す構造を有するアニオン性高分子電解質(以下、「PPE」と呼ぶ)、0.55μmのカチオン性ポリスチレンマイクロスフィア、塩化ガリウム、及びローダミン標識リン酸化ペプチドを用いる。この検出形態を図17で図示する。
【0105】
最初に、アニオン性PPEポリマーを、水中における沈着(deposition)により固形支持体(すなわち、0.55μmのカチオン性ポリスチレンマイクロスフィア)上に固定化した。次に、ポリマー被覆マイクロスフィアを、pH5.5の水溶液中において塩化ガリウムで処理した。次に、過剰のGa3+を洗い流した。
【0106】
酵素リン酸化反応(例えば、キナーゼ)、プロテアーゼ切断反応、又は1つのDNA/RNA配列のいずれから作り出される、又は競合反応により作り出される色素標識リン酸化物質は、ガリウムポリマーセンサーと会合することができ、そしてポリマーからの蛍光を変調することができる。
【0107】
図18は、ペプチド基質におけるリン酸化の程度の関数としてのガリウムポリマーセンサーの蛍光を示す。図18においては、相対的な蛍光をリン酸化の程度(ホスホペプチド(%))の関数としてプロットする。
【0108】
図19は、サンプル中のタンパク質キナーゼA酵素のレベルに対する、実際の動態アッセイを実証する。このアッセイでは、基質の酵素介在性リン酸化はガリウムポリマーセンサーの存在下で起こる。図19では、相対的な蛍光をタンパク質キナーゼA(PKA)濃度(mU/Rx)の関数としてプロットする。
【0109】
蛍光変化は、様々な形態で測定することができる。一般的なアッセイは、動態及びエンドポイントアッセイの双方として、様々な基質に対する酵素介在性反応を測定するのに用いることができる。
【0110】
創薬のための阻害剤スクリーニングへのQT'B検出アプローチの適用
キナーゼ及びホスファターゼ酵素活性に対するアッセイにおける、電子又はエネルギー移動クエンチャーの存在下でスーパークエンチングを示す共役ポリマーの使用は、薬理学的に適切な酵素及び他の生体分子の効果を緩和する薬剤に対する、大きな化合物ライブラリーのスクリーンに適用することができる。酵素活性の既知の阻害剤の添加は、酵素の基質との反応を妨害し、それにより、阻害剤不在下で見られるシグナル応答を違った風に変調するだろう。阻害剤の所望の濃度に対して見られるシグナル変調の程度は、阻害剤の強さの尺度である。
【0111】
QT'Bをベースとしたアッセイは、様々なウエル濃度のマイクロタイタープレートにおいて実施し、創薬プロセスを加速することができる。1つの実施態様において、化合物のライブラリーをキナーゼ又はホスファターゼアッセイにおいてスクリーンし、リン酸化又は脱リン酸化反応の阻害をそれぞれ捜すことができる。
【0112】
ビオチン化テザー(BT)並びにクエンチャー及びビオチン結合性タンパク質のコンジュゲートを用いた、アッセイ、試薬及びキット
上記に説明したように、蛍光性ポリマーと会合したQTLバイオコンジュゲートを開発した。このQTLバイオコンジュゲートは、溶液中における個々の分子又は支持体上の集合体のいずれかとしての、蛍光性高分子電解質の金属イオンと複合する自己組織化能力を利用する。このように複合した金属イオンは、クエンチャーを含んで成るバイオコンジュゲート上の配位基(例えば、リン酸基)と選択的に会合することができ、これによりタンパク質、小分子、ペプチド、プロテアーゼ及びオリゴヌクレオチドの選択的検出のための基礎を提供する。[10−11]
【0113】
上記のアプローチは、クエンチャーで標識したバイオコンジュゲートを用いる。しかし、バイオコンジュゲートは2段階のプロセスで集合させることもできる。2段階のプロセスでは、最初の段階でビオチン化基質を酵素学的に反応させ、2番目の段階でクエンチャーと結合(couple)したビオチン結合性タンパク質分子(例えば、ストレプトアビジン)を含む検出分子を添加する。センサーを添加すると、金属イオンへのリン酸の会合が起こり、クエンチングは結合したビオチン結合性タンパク質/クエンチャーコンジュゲートにより介在される。
【0114】
この「スナップ式」のアプローチは、ビオチン化基質をストレプトアビジンクエンチャーと事前に会合させること及び集合したバイオコンジュゲートを用いて直接的に酵素と反応させることによる1段階のアッセイにおいて使用することもできる。しかし、この1段階のスナップ式アッセイアプローチの使用は、アッセイスピード及び/又は感度を落としてしまうかもしれない。
【0115】
金属イオン介在性スーパークエンチング
ポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)ファミリーにおける共役ポリマーは、芳香環に付加される様々な官能基を用いて調製することができる。使用されてきたペンダントアニオン基の中に、スルホポリp−フェニレンエチニレン(PPE−Di−COOH)共役ポリマーの分子構造を示す図1Aにおいて図示されるものもある。このポリマーは、水中でカチオン性マイクロスフィアと会合して、安定なポリマー被覆を形成することができる。被覆マイクロスフィアは、強い蛍光を示す。ポリマー被覆マイクロスフィア上の全体の電荷は、ポリマー負荷の程度により、そしてポリマーの構造を変化させることにより調整することができる。
【0116】
ポリマー被覆マイクロスフィアは金属カチオンと会合することができ、そして金属カチオンの負荷はマイクロスフィア上のポリマーの負荷レベルに依存し得ることが見出されてきた。Fe3+及びCu2+などのいくつかの金属イオンは、ポリマー蛍光をクエンチングすることができ、一方Ga3+などの他のものはポリマー蛍光をクエンチングしない。金属イオンの不在下においてほとんど又は全くクエンチングが生じない条件下において、非クエンチング金属イオンはマイクロスフィア結合ポリマーの蛍光のスーパークエンチングを介在しない。Ga3+の添加によりポリマー被覆マイクロスフィアが「荷電」された後において、懸濁物へのリン酸化ペプチドの添加はポリマー蛍光の顕著なクエンチングをもたらす。Ga3+によるペプチド上のリン酸の会合がクエンチャーをポリマーの近傍にもたらし、蛍光クエンチングを介在することが示された。
【0117】
金属イオン荷電ポリマーによるリン酸化生体分子のポリマークエンチングは、下記の2段階のプロセスにおいて達成することができる。図20は、酵素学的に反応させたビオチン化基質へのクエンチャーのその後の添加により達成される金属イオン介在性スーパークエンチング、及びキナーゼアッセイの実施例を図示する。図20は、ストレプトアビジン−クエンチャーの後にQTLセンサーを添加により検出される、標的酵素によるビオチンペプチド基質のリン酸化又は脱リン酸化を示す概略図である。ペプチド産物は、Ga3+金属イオンへの特異的なリン酸結合によりポリマーの表面にもたらされる。その結果生じるポリマー蛍光のクエンチングは、リン酸化又は脱リン酸化と同時に起こる。
【0118】
金属イオン介在性スーパークエンチング−キナーゼ/ホスファターゼアッセイをベースとしたバイオアッセイ
タンパク質のリン酸化及び脱リン酸化は、細胞の代謝、成長、分化及び細胞増殖の調節を介在する。酵素機能の異常は、癌及び炎症などの疾患を引き起こし得る。500超のキナーゼ及びホスファターゼは、細胞活性の調節に関与していると考えられており、薬物治療の有力な標的である。
【0119】
スーパークエンチングを用いて蛍光シグナルを増大することにより酵素活性の測定において強化された感度を示すアッセイが説明されている。[10−11]これらのアッセイで使用されるセンサープラットホームは、正に荷電したマイクロスフィア上での吸着により固定化された、修飾アニオン性高分子電解質誘導体を含んで成る。典型的な修飾アニオン性高分子電解質は、図1Aに示すポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)の誘導体である。蛍光性ポリマースーパークエンチングは、図20に示すようにキナーゼ/ホスファターゼ活性の検出に適用されてきた。2価又は3価金属イオンは溶液中でアニオン性共役ポリマーと強く会合することができ、修飾及び/又はポリマー蛍光のクエンチングをもたらす。ポリマー−マイクロスフィアアンサンブル上の全体の電荷は調整できるので、金属イオンが特定のリガンドと複合する能力を保持しながらポリマー蛍光を強くクエンチングせずにポリマーと会合することができるプラットホームを与えるように、アンサンブルを構築した。例えば、PPE会合Ga3+は、ペプチドがローダミンなどの色素を含む場合に金属イオン介在性ポリマースーパークエンチングが生じるように、リン酸化ペプチドと会合することもできることが見出された。ここで、ビオチン化ペプチド基質を検出するためのプラットホームの適用について説明する。
【0120】
例えば、シンチレーション近接(SPA)又はストレプトアビジン膜支持体(membrane support)(SAM)を用いる適用においては、洗浄段階は非結合性放射性ATP又は非結合性抗ホスホ(phospho)抗体を反応混合物から分離することを必要とされる。変換基質を保持するために、ビオチン化ペプチドが用いられ、様々なマトリクス上でストレプトアビジン又は他のビオチン結合性タンパク質により固定化されてきた。下記で説明するように、金属イオン介在性スーパークエンチングは、個々の基質又はビオチン−ペプチドライブラリーにおいてキナーゼの活性をスクリーンするのに使用することができる。このアプローチは、研究者が:
1)酵素突然変異体の基質特異性を試験すること;
2)リン酸化パターンを比較することにより、独自の(proprietary)酵素の酵素純度を評価すること;
3)キナーゼに対する蛍光ターン−オンアッセイを提供する、強化された放射を測定すること;及び
4)それにより、ライブラリー中の可視の自己蛍光化合物のスクリーニングを改良するために、検出を赤色に移す適切な色素クエンチャーによる強化された放射を使用すること、
を可能にする。
【0121】
例として、ストレプトアビジン結合フルオレセインクエンチャーを、酵素学的に反応させたビオチン化ペプチド基質に添加することができる。このアプローチは、図20において示す、感度が良くそして選択的なキナーゼ/ホスファターゼアッセイのための基礎を提供する。このアッセイは、洗浄段階又は複雑なサンプル調製を必要としない瞬時の「混ぜて読む」である。
【0122】
サンプル中におけるビオチン化ペプチド基質の酵素とのインキュベーション後に、クエンチャー及びビオチン結合性タンパク質(例えば、ストレプトアビジン)のコンジュゲートを添加し、インキュベートしたサンプルと会合させる(例えば、室温で15分間)。
【0123】
下記の実施例4は、タンパク質キナーゼA(PKA)に対する確固たるアッセイ、並びに1段階及び2段階アプローチの比較性能を示す。実施例4においては、キナーゼアッセイは蛍光「ターンオフ」アッセイとして機能する。クエンチャーがポリマー蛍光のクエンチングの結果として感作された蛍光を示すことできるので、このアッセイは測定される波長に依存してターンオン又はターンオフのいずれかとして使用することができる。更に、ポリマー及びクエンチャーの蛍光を同時に測定することは、感度の良いレシオメトリックアッセイを提供する。
【0124】
実施例4−タンパク質キナーゼA(PKA)活性のためのアッセイ
酵素基質として及びホスホ−ペプチドキャリブレータとして使用されるペプチドを下記で説明する。1段階様式におけるPKA活性の検出用に、
ローダミン−LRRASLG 配列番号:2
及びキャリブレータペプチド
ローダミン−LRRA(pS)LG配列番号:1
が、Anaspecにより合成された。
【0125】
2段階様式にけるPKA活性の検出用に、
ビオチン−LRRASLG 配列番号:5
及び
ビオチン−LRRA(pS)LG 配列番号:6
を、Anaspecから購入した。組み換え体PKAをPromegaから購入した。ストレプトアビジン結合蛍光剤をMolecular Probeから得た。ポリスチレン官能基化ビーズをInterfacial Dynamicsから得た。
【0126】
CRTで60分間アッセイバッファー中において1μMのペプチド(ローダミン−ペプチド又はビオチン−ペプチドのいずれか)を反応させることにより、1段階アプローチ対2段階アプローチの性能を決定した。2段階プロセスに対しては、5μLのストレプトアビジン−フルオレセインを添加し、CRTで15分間インキュベートした。最後に、検出器バッファー中の15μLのセンサーを添加した。450nmでの励起、475nmでのカットオフフィルター及び490nmでの放射にて、ウエルスキャンモードで、SpectraMax Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)を用いて、混合物の蛍光を測定した。
【0127】
図21A及び図21Bに示すように、N末端にクエンチャーを有する合成基質、又はストレプトアビジン−フルオレセインコンジュゲートを添加したビオチン化基質のいずれかを用いて、アッセイを実施した。基質のリン酸化において、ペプチドはリン酸基によりセンサーに会合して蛍光をクエンチングする。
【0128】
図21A及び図21Bは、2段階アプローチにおけるローダミン標識基質又はビオチン化基質を用いたPKAに対する酵素濃度曲線を示すグラフである。このアッセイにおいて得られたRFUを図21Aに示し、標準曲線からのバックカリキュレーション(backcalculation)後のリン酸化(%)を図21Bに示す。図21A及び図21Bにおいては、384ウエルの白色Optiplateにおいて室温で1時間、連続希釈したキナーゼPKA酵素を用いて、1μMの濃度の基質をリン酸化した。インキュベーション後に、5pmolのストレプトアビジン−ローダミンコンジュゲートを添加し、約22℃で15分間インキュベートし、その後約100×106のQTLセンサービーズを添加し、そして約22℃で10分間インキュベートした。プレートを約22℃で30分間インキュベートし、Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)で、475nmでのカットオフフィルターを用いて、450nmでの励起及び490nmでの放射にて、蛍光シグナルを測定した。
【0129】
実施例5−PKA、PKCα又はPTP−1Bに対する基質をスクリーニングするためのアッセイ
基質スクリーニングに対しては、1μMのビオチン−ペプチドを、約22℃で60分間アッセイバッファー中において反応させた。コントロール反応は、酵素を含まなかった。その後、5μLのストレプトアビジン−フルオロセインコンジュゲートを添加し、約22℃で15分間インキュベートした。最後に、検出器バッファー中の15μLのセンサーを添加した。450nmでの励起、475nmでのカットオフフィルター及び490nmでの放射にて、ウエルスキャンモードで、SpectraMax Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices,Inc)を用いて、混合物の蛍光を測定した。
【0130】
図22は、酵素PTP−1B、PKCα及びPKAを用いて、キナーゼ又はホスファターゼに対する7つの異なるビオチン化基質のスクリーニングを示す棒グラフである。酵素を用いて又は用いないで反応を行い、RFUにおける差異を計算しプロットした。図22から分かるように、リン酸化依存性蛍光クエンチングは適切な基質を含む反応においてのみ検出され、非特異的基質を含む反応では検出されなかった。
【0131】
1つの実施態様によると、Stern−Volmerクエンチング定数により測定した増幅されたスーパークエンチングのクエンチング感度は、少なくとも500である。更なる実施態様によると、Stern−Volmerクエンチング定数により測定した増幅されたスーパークエンチングのクエンチング感度は、少なくとも1000、2000、5000、10000、100000又は1×106である。
【0132】
典型的な蛍光剤としては、蛍光性ポリマーが挙げられる。典型的な蛍光性ポリマーとしては、例えばポリ(フェニレンビニレン)などの発光性共役物質が挙げられる。ポリ(フェニレンビニレン)としては、例えばポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、ポリ(p−ナフタレンビニレン)、ポリ(2,5−ピリジルビニレン)及びそれらの誘導体である。それらの誘導体としては、例えばポリ(2,5−メトキシプロピルオキシスルホネートフェニレンビニレン)(MPS−PPV)、ポリ(2,5−メトキシブチルオキシスルホネートフェニレンビニレン)(MBS−PPV)などである。水溶解性に対しては、誘導体としてスルホン酸塩及びメチルアンモニウムなどの、1又は複数のペンダントイオン基を挙げることができる。典型的なペンダント基としては:
−O−(CH2)n−OSO3-(M+)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、M+はカチオン(例えば、Na+又はLi+);
−(CH2)n−OSO3-(M+)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、M+はカチオン(例えば、Na+又はLi+);
−O−(CH2)n−N+(CH3)3(X-)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、X-はアニオン(例えば、Cl-);及び
−(CH2)n−N+(CH3)3(X-)
式中、nは整数(例えば、n=3又は4)、X-はアニオン(例えば、Cl-)、
が挙げられる。
【0133】
前述の明細書は本適用の原理を教示するが(説明を目的として提供される例とともに)、一方で、本開示を読むことで、開示の真の範囲から逸脱することなく形態及び細部において様々な変更が可能であるあることが、当業者により十分に理解されるだろう。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1A】図1A及び図1Bは、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングアッセイにおいて使用することのできるポリマーの化学的構造を示す。
【図1B】図1A及び図1Bは、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングアッセイにおいて使用することのできるポリマーの化学的構造を示す。
【図2】図2は、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとした、酵素介在性リン酸化又は脱リン酸化活性のためのアッセイの概略図である。
【図3】図3は、ローダミン標識リン酸化ペプチドによるガリウムセンサーのクエンチングに対するStern−Volmerプロットである。
【図4A】図4A及び図4Bは、タンパク質キナーゼA(PKA)に対する、エンドポイント及び動態アッセイを示すグラフである。
【図4B】図4A及び図4Bは、タンパク質キナーゼA(PKA)に対する、エンドポイント及び動態アッセイを示すグラフである。
【図5】図5は、阻害剤の存在下でのタンパク質キナーゼA(PKA)アッセイの応答を示すグラフである。
【図6】図6は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTB−1B)のホスファターゼアッセイに対するEC50及び検出の限界を実証するグラフである。
【図7】図7は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTB−1B)活性の阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとしたプロテアーゼアッセイの概略図である。
【図9】図9は、金属イオン介在性スーパークエンチングをベースとしたタンパク質及びペプチド基質を用いたブロッキングキナーゼアッセイの概略図である。
【図10】図10は、例としてPKCαを用いた蛍光ターンオンブロッキングキナーゼアッセイを示すグラフである。
【図11】図11は、金属イオン介在性スーパークエンチングを用いたホスホジエステラーゼアッセイの概略図である。
【図12】図12は、リアルタイム又は動態アッセイ形態における、トリプシン活性の測定結果を示すグラフである。
【図13】図13は、1つの実施態様に従った、リン酸化ポリペプチドの検出を示す。
【図14】図14は、1つの実施態様に従った、ビオチン化ペプチド基質(BT)を用いたアッセイにおける、タンパク質キナーゼA(PKA)濃度の関数とした相対的な蛍光を示すグラフである。
【図15】図15は、リン酸化及び非リン酸化ヒストンに応答した相対的な蛍光を示す図である。
【図16】図16は、更なる実施態様に従った、ビオチン化ペプチド基質(BT)を用いたアッセイにおける、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)濃度の関数とした相対的な蛍光を示すグラフである。
【図17】図17は、クエンチャー−テザーコンジュゲート(QT)が金属イオン及び蛍光性ポリマーアンサンブルと会合し、蛍光性ポリマーのスーパークエンチングの増大をもたらすアッセイを示す。
【図18】図18は、金属イオン介在性スーパークエンチングアッセイに対するリン酸化ペプチドの較正曲線を示すグラフである。
【図19】図19は、金属イオン介在性スーパークエンチングアッセイから得られるタンパク質キナーゼAの濃度曲線を示す。
【図20】図20は、キナーゼ反応への第二段階において添加されるストレプトアビジンクエンチング分子の会合による、金属イオン介在性蛍光スーパークエンチングをベースとしたキナーゼ酵素活性センサーに対する概略図である。
【図21A】図21A及び図21Bは、ビオチン化基質及びクエンチャー(例えば、ローダミン)標識基質を用いた2段階アプローチを用いたPKAに対するエンドポイントアッセイを比較したグラフである。ここで、図21Aは、PKA濃度の関数としてのRFUを示す。
【図21B】図21A及び図21Bは、ビオチン化基質及びクエンチャー(例えば、ローダミン)標識基質を用いた2段階アプローチを用いたPKAに対するエンドポイントアッセイを比較したグラフである。ここで、図21Bは、PKA濃度の関数としてのリン酸化(%)を示す。
【図22】図22は、3つの異なる酵素(すなわち、PTP−1B、PKCα及びPKA)を用いてそれぞれ反応させた、7つの異なるビオチン化ペプチド基質を用いたスクリーンの結果を示す棒グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のリン酸基を含んで成るビオチン化ポリペプチド;及び
該ポリペプチドのリン酸基と会合した金属カチオン、
を含んで成る複合体。
【請求項2】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
蛍光剤を更に含んで成り、当該蛍光剤が1又は複数のアニオン基及び複数の蛍光種であってクエンチャーが当該蛍光剤と会合する際に当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成り、当該蛍光剤がビオチン結合性タンパク質と会合し;且つ
当該蛍光剤のアニオン基が前記金属カチオンと会合している、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項3に記載の複合体。
【請求項6】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項3に記載の複合体。
【請求項7】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光剤のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項6に記載の複合体。
【請求項9】
前記蛍光剤とクエンチャーとが会合する際に当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能である当該クエンチャーを更に含んで成り、当該クエンチャーが前記ポリペプチドのリン酸基と会合している、請求項3に記載の複合体。
【請求項10】
前記クエンチャーが有機金属化合物である、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
前記クエンチャーが鉄(III)イミノ二酢酸キレートである、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
前記蛍光剤と前記ビオチン結合性タンパク質が固形支持体の表面と会合している、請求項3に記載の複合体。
【請求項13】
サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)当該サンプルをビオチン化ポリペプチドとインキュベートすること、ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは当該分析物によるリン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成り、又はホスファターゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは当該分析物による脱リン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成る;
b)当該サンプルに金属カチオンを添加すること、ここで、当該金属カチオンはクエンチャーであるか、又は当該方法は当該金属カチオンと会合することのできるクエンチャーを当該サンプルに添加することを更に含んで成る;
c)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る当該蛍光剤を当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している;
d)蛍光を検出すること;
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す前記方法。
【請求項14】
前記クエンチャーがリン酸化ポリペプチドと会合している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが前記分析物によるリン酸化可能な基を含んで成り;且つ
当該リン酸化可能な基のリン酸化が蛍光の減少をもたらす、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドが前記分析物による脱リン酸化可能な基を含んで成り、且つ
当該基の脱リン酸化が蛍光の増加をもたらす、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記蛍光剤と前記ビオチン結合性タンパク質が固形支持体の表面と会合している、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り;
前記蛍光剤が1又は複数のアニオン基を含んで成り;且つ
当該蛍光剤のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、
請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記クエンチャーが有機金属化合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記クエンチャーが鉄(III)イミノ二酢酸キレートである、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に、前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを前記サンプルに添加する、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
インキュベーション前又はインキュベーション中に、前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを前記サンプルに添加し、且つ蛍光の検出がインキュベーション中に蛍光を検出することを含んで成る、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
a)キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性の阻害剤としての化合物の存在下で、ビオチン化ポリペプチドをキナーゼ又はホスファターゼ酵素とともにサンプル中でインキュベートすること、ここで、キナーゼ酵素アッセイの場合には、当該ポリペプチドは当該分析物によるリン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成り、ホスファターゼ酵素アッセイの場合には、当該ポリペプチドは当該分析物による脱リン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成る;
b)金属カチオンを当該サンプルに添加すること、ここで、当該金属カチオンはクエンチャーであるか、又は当該方法は当該金属カチオンと会合することのできるクエンチャーを当該サンプルに添加することを更に含んで成る;及び
c)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように、互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る当該蛍光剤を当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している;
d)当該化合物の存在下で、当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該化合物の存在下で検出される蛍光の量が当該化合物のキナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における阻害効果を示す、当該化合物をスクリーニングする方法。
【請求項29】
a)第二の化合物の存在下において、前記ビオチン化ポリペプチドをキナーゼ又はホスファターゼ酵素とともに、第二のサンプル中でインキュベートすること;
b)前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを、当該第二のサンプルに添加すること;
c)当該第二の化合物の存在下において、当該第二のサンプルからの蛍光を検出すること、
を更に含んで成り、
前記第二のサンプルから検出される蛍光の量がキナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における前記第二の化合物の阻害効果を示す、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ビオチン化ポリペプチドを前記キナーゼ又はホスファターゼ酵素とともに、第二のサンプル中においてインキュベートすること、ここで、当該第二のサンプルは前記化合物を欠いている;
b)前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを当該第二のサンプルに添加すること;及び
c)当該化合物の不在下において当該第二のサンプルからの蛍光を検出すること、
を更に含んで成り、
前記化合物の不在下において前記第二のサンプルから検出される蛍光の量が、ベースライン(baseline)の蛍光である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物の存在下において検出される蛍光を前記化合物の不在下において検出されるベースラインの蛍光と比較すること、
を更に含んで成り、
化合物の存在下において検出される蛍光とベースラインの蛍光との相違は、キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における当該化合物の阻害効果を示す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1又は複数のリン酸化可能な又は脱リン酸化可能な基を含んで成るポリペプチド;及び
当該ポリペプチドに接合したクエンチング部分であって、当該クエンチング部分が蛍光性ポリマーと会合する際に当該蛍光性ポリマーの増幅されたスーパークエンチングが可能であるクエンチング部分、
を含んで成る、バイオコンジュゲート。
【請求項33】
前記クエンチング部分がローダミンである、請求項32に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項34】
前記ポリペプチドが1又は複数のリン酸基を含んで成る、請求項32に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項35】
前記ポリペプチドが切断部位を更に含んで成り、前記クエンチング部分及び前記リン酸基が当該切断部位の反対側に存在し、且つ当該クエンチング部分が接合する当該切断部位の側にリン酸基が存在しない、請求項34に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項36】
前記ポリペプチドが切断部位を更に含んで成り、前記クエンチング部分及び前記リン酸基が当該切断部位の反対側に存在し、且つ当該クエンチング部分が接合する側とは反対の当該切断部位の側にリン酸基が存在しない、請求項34に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項37】
サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)当該プロテアーゼ酵素が当該切断部位で当該ポリペプチドを切断する、請求項35に記載のバイオコンジュゲートともに、当該サンプルをインキュベートすること;
b)当該クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該クエンチング部分が当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項38】
請求項32に記載のバイオコンジュゲートを含んで成る第一の成分;及び
クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該バイオコンジュゲートのクエンチング部分が当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を含んで成る第二の成分であって、当該蛍光剤が1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンが前記蛍光剤のアニオン基と会合している第二の成分、
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出するためのキット。
【請求項39】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項38に記載のキット。
【請求項42】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光剤の1又は複数のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
前記クエンチング部分がローダミンである、請求項38に記載のキット。
【請求項45】
サンプル中の酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)サンプルを、請求項32に記載のバイオコンジュゲートとインキュベートすること、当該バイオコンジュゲートのポリペプチドが当該酵素分析物によりリン酸化可能又は脱リン酸化可能である基を含んで成る;
b)当該クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該クエンチング部分が当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項46】
前記ポリペプチドが前記分析物によりリン酸化可能である基を含んで成り、且つ前記ポリペプチドのリン酸化可能な基のリン酸化が蛍光の減少をもたらす、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリペプチドが前記分析物により脱リン酸化可能である基を含んで成り、且つ前記ポリペプチドの脱リン酸化可能な基の脱リン酸化が蛍光の増加をもたらす、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記蛍光剤がアニオン基を含むポリ(p−フェニレンエチニレン)である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光性ポリマーのアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記蛍光剤を、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記蛍光剤をインキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、且つ蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
クエンチャーを含んで成る第一の成分;及び
ビオチン化ポリペプチドであって、分析物により修飾されることができ且つ当該クエンチャーと会合した当該分析物により修飾されることができるビオチン化ポリペプチドを含んで成る第二の成分、
を含んで成る、サンプル中の分析物の存在を検出するためのキット。
【請求項57】
蛍光剤が前記クエンチャーと会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を更に含んで成る、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
前記蛍光性ポリマーがポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項57に記載のキット。
【請求項60】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項57に記載のキット。
【請求項61】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
前記分析物が酵素である、請求項56に記載のキット。
【請求項63】
前記酵素がキナーゼ又はホスファターゼ酵素である、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
前記酵素が前記ポリペプチド基質をリン酸化することができ、前記リン酸化ペプチド基質が前記クエンチャーと会合している、請求項62に記載のキット。
【請求項65】
前記クエンチャーが有機金属化合物である、請求項56に記載のキット。
【請求項66】
前記クエンチャーが鉄(III)イミノ二酢酸キレートである、請求項56に記載のキット。
【請求項67】
サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)サイクリックAMP又はサイクリックGMPに接合したクエンチャーを含んで成るバイオコンジュゲートとともに、当該サンプルをインキュベートすること;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光の量が当該サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項68】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加している、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性を検出する方法であって:
a)当該ポリペプチド基質及び1又は複数のリン酸化可能な基を含んで成るクエンチャー標識ポリペプチドを、キナーゼ酵素を含んで成るサンプルとインキュベートすること;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該ポリペプチド基質のリン酸化が蛍光の増大をもたらし:且つ
検出される蛍光の量が当該ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項71】
前記ポリペプチド基質が天然のタンパク質である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)ポリヌクレオチドの第一末端領域に当該ポリペプチドに接合したクエンチャーを、及び当該ポリヌクレオチドの第二末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとともに、当該サンプルをインキュベートすること、ここで、当該ポリヌクレオチドの第一及び第二末端領域の少なくとも1つの部分が互いにハイブリダイズしてヘアピン構造を形成することができ、且つ当該末端領域の間の当該ポリヌクレオチドの中心領域が、当該核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成り、それにより当該ヘアピン構造を崩壊させて、当該ポリヌクレオチドの当該クエンチャーと当該リン酸基の分離をもたらす;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光がサンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項75】
サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)当該サンプル中の核酸をクエンチャーで標識すること;
b)当該サンプルを、当該ポリヌクレオチドの第一末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとインキュベートすること、ここで、当該ポリヌクレオチドは、当該核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成る;
c)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
d)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該核酸分析物の当該ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが蛍光の減少をもたらし;且つ
蛍光の減少が当該サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項76】
サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る第一のポリヌクレオチド、及び末端領域に当該第二のポリヌクレオチドに接合したクエンチャーを含んで成る第二のポリヌクレオチドとともに、当該サンプルをインキュベートすること、ここで、当該第二のポリヌクレオチド及び当該核酸分析物は、当該第一のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合し;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該核酸分析物の当該第一のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが蛍光の増大をもたらし;且つ
検出される蛍光の量が当該サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項77】
前記リン酸基が前記第一のポリヌクレオチドの3'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記第二のポリヌクレオチドの5'末端領域に存在するか、又は前記リン酸基が前記第一のポリヌクレオチドの5'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記第二のポリヌクレオチドの3'末端領域に存在する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る核酸アプタマーであって、当該ポリペプチド分析物に結合することができる当該核酸アプタマー;及びクエンチャーを含んで成るポリヌクレオチドであって、当該核酸アプタマーにハイブリダイズすることができる当該ポリヌクレオチド、とともに当該サンプルをインキュベートすること;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該ポリペプチド分析物の当該核酸アプタマーへの結合が蛍光の増大をもたらし;且つ
検出される蛍光の量が当該サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項79】
前記リン酸基が前記核酸アプタマーの3'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記ポリヌクレオチドの5'末端領域に存在するか、又は前記リン酸基が前記核酸アプタマーの5'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記ポリヌクレオチドの3'末端領域に存在する、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記ポリヌクレオチド分析物が天然のタンパク質である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
ビオチン部分を含んで成るポリペプチドであって、当該ポリペプチドの1又は複数のアミノ酸残基がリン酸化又は脱リン酸化が可能であるポリペプチド;及び
クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質、
を含んで成り、
ポリペプチドの当該ビオチン部分がタンパク質−タンパク質相互作用によって当該ビオチン結合性タンパク質と会合し;且つ
当該クエンチング部分が当該蛍光剤と会合する際に蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能である、複合体。
【請求項82】
前記ポリペプチドが1又は複数のリン酸基を含んで成る、請求項81に記載の複合体。
【請求項83】
前記ポリペプチドのリン酸基と会合する金属カチオンを更に含んで成る、請求項82に記載の複合体。
【請求項84】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項83に記載の複合体。
【請求項85】
蛍光剤を更に含んで成り;
当該蛍光剤が、1又は複数のアニオン基、及び当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成り;且つ
当該蛍光剤のアニオン基が当該金属カチオンと会合している、請求項83に記載の複合体。
【請求項86】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項85に記載の複合体。
【請求項87】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項85に記載の複合体。
【請求項88】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項85に記載の複合体。
【請求項89】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項88に記載の複合体。
【請求項90】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光剤のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項88に記載の複合体。
【請求項91】
前記ビオチン結合性タンパク質がストレプトアビジンである、請求項81に記載の複合体。
【請求項92】
前記クエンチング部分がフルオロセインである、請求項81に記載の複合体。
【請求項93】
サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)請求項81に記載の複合体とともに当該サンプルをインキュベートすること、ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、ホスファターゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光の量が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項94】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)キナーゼ酵素分析物のアッセイの場合には、当該分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチド、或いはホスファターゼ酵素分析物のアッセイの場合には、当該分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチドのいずれかとともに、当該サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質を、インキュベートしたサンプルに添加すること;
c)当該クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該クエンチング部分が当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
d)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項97】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項96に記載の方法。
【請求項1】
1又は複数のリン酸基を含んで成るビオチン化ポリペプチド;及び
該ポリペプチドのリン酸基と会合した金属カチオン、
を含んで成る複合体。
【請求項2】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
蛍光剤を更に含んで成り、当該蛍光剤が1又は複数のアニオン基及び複数の蛍光種であってクエンチャーが当該蛍光剤と会合する際に当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成り、当該蛍光剤がビオチン結合性タンパク質と会合し;且つ
当該蛍光剤のアニオン基が前記金属カチオンと会合している、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項3に記載の複合体。
【請求項6】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項3に記載の複合体。
【請求項7】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光剤のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項6に記載の複合体。
【請求項9】
前記蛍光剤とクエンチャーとが会合する際に当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能である当該クエンチャーを更に含んで成り、当該クエンチャーが前記ポリペプチドのリン酸基と会合している、請求項3に記載の複合体。
【請求項10】
前記クエンチャーが有機金属化合物である、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
前記クエンチャーが鉄(III)イミノ二酢酸キレートである、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
前記蛍光剤と前記ビオチン結合性タンパク質が固形支持体の表面と会合している、請求項3に記載の複合体。
【請求項13】
サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)当該サンプルをビオチン化ポリペプチドとインキュベートすること、ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは当該分析物によるリン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成り、又はホスファターゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは当該分析物による脱リン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成る;
b)当該サンプルに金属カチオンを添加すること、ここで、当該金属カチオンはクエンチャーであるか、又は当該方法は当該金属カチオンと会合することのできるクエンチャーを当該サンプルに添加することを更に含んで成る;
c)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る当該蛍光剤を当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している;
d)蛍光を検出すること;
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す前記方法。
【請求項14】
前記クエンチャーがリン酸化ポリペプチドと会合している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが前記分析物によるリン酸化可能な基を含んで成り;且つ
当該リン酸化可能な基のリン酸化が蛍光の減少をもたらす、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドが前記分析物による脱リン酸化可能な基を含んで成り、且つ
当該基の脱リン酸化が蛍光の増加をもたらす、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記蛍光剤と前記ビオチン結合性タンパク質が固形支持体の表面と会合している、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り;
前記蛍光剤が1又は複数のアニオン基を含んで成り;且つ
当該蛍光剤のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、
請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記クエンチャーが有機金属化合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記クエンチャーが鉄(III)イミノ二酢酸キレートである、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に、前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを前記サンプルに添加する、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
インキュベーション前又はインキュベーション中に、前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを前記サンプルに添加し、且つ蛍光の検出がインキュベーション中に蛍光を検出することを含んで成る、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
a)キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性の阻害剤としての化合物の存在下で、ビオチン化ポリペプチドをキナーゼ又はホスファターゼ酵素とともにサンプル中でインキュベートすること、ここで、キナーゼ酵素アッセイの場合には、当該ポリペプチドは当該分析物によるリン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成り、ホスファターゼ酵素アッセイの場合には、当該ポリペプチドは当該分析物による脱リン酸化が可能な1又は複数の基を含んで成る;
b)金属カチオンを当該サンプルに添加すること、ここで、当該金属カチオンはクエンチャーであるか、又は当該方法は当該金属カチオンと会合することのできるクエンチャーを当該サンプルに添加することを更に含んで成る;及び
c)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように、互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る当該蛍光剤を当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤はビオチン結合性タンパク質と会合している;
d)当該化合物の存在下で、当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該化合物の存在下で検出される蛍光の量が当該化合物のキナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における阻害効果を示す、当該化合物をスクリーニングする方法。
【請求項29】
a)第二の化合物の存在下において、前記ビオチン化ポリペプチドをキナーゼ又はホスファターゼ酵素とともに、第二のサンプル中でインキュベートすること;
b)前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを、当該第二のサンプルに添加すること;
c)当該第二の化合物の存在下において、当該第二のサンプルからの蛍光を検出すること、
を更に含んで成り、
前記第二のサンプルから検出される蛍光の量がキナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における前記第二の化合物の阻害効果を示す、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ビオチン化ポリペプチドを前記キナーゼ又はホスファターゼ酵素とともに、第二のサンプル中においてインキュベートすること、ここで、当該第二のサンプルは前記化合物を欠いている;
b)前記蛍光剤、前記クエンチャー、及び前記金属カチオンを当該第二のサンプルに添加すること;及び
c)当該化合物の不在下において当該第二のサンプルからの蛍光を検出すること、
を更に含んで成り、
前記化合物の不在下において前記第二のサンプルから検出される蛍光の量が、ベースライン(baseline)の蛍光である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物の存在下において検出される蛍光を前記化合物の不在下において検出されるベースラインの蛍光と比較すること、
を更に含んで成り、
化合物の存在下において検出される蛍光とベースラインの蛍光との相違は、キナーゼ又はホスファターゼ酵素活性における当該化合物の阻害効果を示す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1又は複数のリン酸化可能な又は脱リン酸化可能な基を含んで成るポリペプチド;及び
当該ポリペプチドに接合したクエンチング部分であって、当該クエンチング部分が蛍光性ポリマーと会合する際に当該蛍光性ポリマーの増幅されたスーパークエンチングが可能であるクエンチング部分、
を含んで成る、バイオコンジュゲート。
【請求項33】
前記クエンチング部分がローダミンである、請求項32に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項34】
前記ポリペプチドが1又は複数のリン酸基を含んで成る、請求項32に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項35】
前記ポリペプチドが切断部位を更に含んで成り、前記クエンチング部分及び前記リン酸基が当該切断部位の反対側に存在し、且つ当該クエンチング部分が接合する当該切断部位の側にリン酸基が存在しない、請求項34に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項36】
前記ポリペプチドが切断部位を更に含んで成り、前記クエンチング部分及び前記リン酸基が当該切断部位の反対側に存在し、且つ当該クエンチング部分が接合する側とは反対の当該切断部位の側にリン酸基が存在しない、請求項34に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項37】
サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)当該プロテアーゼ酵素が当該切断部位で当該ポリペプチドを切断する、請求項35に記載のバイオコンジュゲートともに、当該サンプルをインキュベートすること;
b)当該クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該クエンチング部分が当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中のプロテアーゼ酵素の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項38】
請求項32に記載のバイオコンジュゲートを含んで成る第一の成分;及び
クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該バイオコンジュゲートのクエンチング部分が当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を含んで成る第二の成分であって、当該蛍光剤が1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンが前記蛍光剤のアニオン基と会合している第二の成分、
を含んで成る、サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出するためのキット。
【請求項39】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項38に記載のキット。
【請求項42】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光剤の1又は複数のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
前記クエンチング部分がローダミンである、請求項38に記載のキット。
【請求項45】
サンプル中の酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)サンプルを、請求項32に記載のバイオコンジュゲートとインキュベートすること、当該バイオコンジュゲートのポリペプチドが当該酵素分析物によりリン酸化可能又は脱リン酸化可能である基を含んで成る;
b)当該クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該クエンチング部分が当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項46】
前記ポリペプチドが前記分析物によりリン酸化可能である基を含んで成り、且つ前記ポリペプチドのリン酸化可能な基のリン酸化が蛍光の減少をもたらす、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリペプチドが前記分析物により脱リン酸化可能である基を含んで成り、且つ前記ポリペプチドの脱リン酸化可能な基の脱リン酸化が蛍光の増加をもたらす、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記蛍光剤がアニオン基を含むポリ(p−フェニレンエチニレン)である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光性ポリマーのアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記蛍光剤を、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記蛍光剤をインキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、且つ蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
クエンチャーを含んで成る第一の成分;及び
ビオチン化ポリペプチドであって、分析物により修飾されることができ且つ当該クエンチャーと会合した当該分析物により修飾されることができるビオチン化ポリペプチドを含んで成る第二の成分、
を含んで成る、サンプル中の分析物の存在を検出するためのキット。
【請求項57】
蛍光剤が前記クエンチャーと会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を更に含んで成る、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
前記蛍光性ポリマーがポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項57に記載のキット。
【請求項60】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項57に記載のキット。
【請求項61】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
前記分析物が酵素である、請求項56に記載のキット。
【請求項63】
前記酵素がキナーゼ又はホスファターゼ酵素である、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
前記酵素が前記ポリペプチド基質をリン酸化することができ、前記リン酸化ペプチド基質が前記クエンチャーと会合している、請求項62に記載のキット。
【請求項65】
前記クエンチャーが有機金属化合物である、請求項56に記載のキット。
【請求項66】
前記クエンチャーが鉄(III)イミノ二酢酸キレートである、請求項56に記載のキット。
【請求項67】
サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)サイクリックAMP又はサイクリックGMPに接合したクエンチャーを含んで成るバイオコンジュゲートとともに、当該サンプルをインキュベートすること;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光の量が当該サンプル中のホスホジエステラーゼ酵素の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項68】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加している、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性を検出する方法であって:
a)当該ポリペプチド基質及び1又は複数のリン酸化可能な基を含んで成るクエンチャー標識ポリペプチドを、キナーゼ酵素を含んで成るサンプルとインキュベートすること;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合した複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該ポリペプチド基質のリン酸化が蛍光の増大をもたらし:且つ
検出される蛍光の量が当該ポリペプチド基質のキナーゼ酵素活性の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項71】
前記ポリペプチド基質が天然のタンパク質である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)ポリヌクレオチドの第一末端領域に当該ポリペプチドに接合したクエンチャーを、及び当該ポリヌクレオチドの第二末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとともに、当該サンプルをインキュベートすること、ここで、当該ポリヌクレオチドの第一及び第二末端領域の少なくとも1つの部分が互いにハイブリダイズしてヘアピン構造を形成することができ、且つ当該末端領域の間の当該ポリヌクレオチドの中心領域が、当該核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成り、それにより当該ヘアピン構造を崩壊させて、当該ポリヌクレオチドの当該クエンチャーと当該リン酸基の分離をもたらす;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光がサンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項75】
サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)当該サンプル中の核酸をクエンチャーで標識すること;
b)当該サンプルを、当該ポリヌクレオチドの第一末端領域にリン酸基を含んで成るポリヌクレオチドとインキュベートすること、ここで、当該ポリヌクレオチドは、当該核酸分析物にハイブリダイズすることのできる核酸配列を含んで成る;
c)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
d)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該核酸分析物の当該ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが蛍光の減少をもたらし;且つ
蛍光の減少が当該サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項76】
サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る第一のポリヌクレオチド、及び末端領域に当該第二のポリヌクレオチドに接合したクエンチャーを含んで成る第二のポリヌクレオチドとともに、当該サンプルをインキュベートすること、ここで、当該第二のポリヌクレオチド及び当該核酸分析物は、当該第一のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合し;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該核酸分析物の当該第一のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが蛍光の増大をもたらし;且つ
検出される蛍光の量が当該サンプル中の核酸分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項77】
前記リン酸基が前記第一のポリヌクレオチドの3'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記第二のポリヌクレオチドの5'末端領域に存在するか、又は前記リン酸基が前記第一のポリヌクレオチドの5'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記第二のポリヌクレオチドの3'末端領域に存在する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)末端領域にリン酸基を含んで成る核酸アプタマーであって、当該ポリペプチド分析物に結合することができる当該核酸アプタマー;及びクエンチャーを含んで成るポリヌクレオチドであって、当該核酸アプタマーにハイブリダイズすることができる当該ポリヌクレオチド、とともに当該サンプルをインキュベートすること;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
当該ポリペプチド分析物の当該核酸アプタマーへの結合が蛍光の増大をもたらし;且つ
検出される蛍光の量が当該サンプル中のポリペプチド分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項79】
前記リン酸基が前記核酸アプタマーの3'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記ポリヌクレオチドの5'末端領域に存在するか、又は前記リン酸基が前記核酸アプタマーの5'末端領域に存在し且つ前記クエンチャーが前記ポリヌクレオチドの3'末端領域に存在する、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記ポリヌクレオチド分析物が天然のタンパク質である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
ビオチン部分を含んで成るポリペプチドであって、当該ポリペプチドの1又は複数のアミノ酸残基がリン酸化又は脱リン酸化が可能であるポリペプチド;及び
クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質、
を含んで成り、
ポリペプチドの当該ビオチン部分がタンパク質−タンパク質相互作用によって当該ビオチン結合性タンパク質と会合し;且つ
当該クエンチング部分が当該蛍光剤と会合する際に蛍光剤の増幅されたスーパークエンチングが可能である、複合体。
【請求項82】
前記ポリペプチドが1又は複数のリン酸基を含んで成る、請求項81に記載の複合体。
【請求項83】
前記ポリペプチドのリン酸基と会合する金属カチオンを更に含んで成る、請求項82に記載の複合体。
【請求項84】
前記金属カチオンがGa3+である、請求項83に記載の複合体。
【請求項85】
蛍光剤を更に含んで成り;
当該蛍光剤が、1又は複数のアニオン基、及び当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成り;且つ
当該蛍光剤のアニオン基が当該金属カチオンと会合している、請求項83に記載の複合体。
【請求項86】
前記蛍光剤が蛍光性ポリマーである、請求項85に記載の複合体。
【請求項87】
前記蛍光剤がポリ(p−フェニレンエチニレン)ポリマーである、請求項85に記載の複合体。
【請求項88】
前記蛍光剤が固形支持体の表面と会合している、請求項85に記載の複合体。
【請求項89】
前記固形支持体がマイクロスフィアである、請求項88に記載の複合体。
【請求項90】
前記固形支持体が正に荷電した表面を含んで成り、且つ前記蛍光剤のアニオン基が正に荷電した表面と会合している、請求項88に記載の複合体。
【請求項91】
前記ビオチン結合性タンパク質がストレプトアビジンである、請求項81に記載の複合体。
【請求項92】
前記クエンチング部分がフルオロセインである、請求項81に記載の複合体。
【請求項93】
サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)請求項81に記載の複合体とともに当該サンプルをインキュベートすること、ここで、キナーゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成り、ホスファターゼ酵素分析物の場合には、当該ポリペプチドは分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成る;
b)当該クエンチャーが蛍光剤と会合する際に、当該クエンチャーが当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
c)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光の量が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項94】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
サンプル中のキナーゼ又はホスファターゼ酵素分析物の存在及び/又は量を検出する方法であって:
a)キナーゼ酵素分析物のアッセイの場合には、当該分析物によりリン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチド、或いはホスファターゼ酵素分析物のアッセイの場合には、当該分析物により脱リン酸化可能な1又は複数の基を含んで成るビオチン化ポリペプチドのいずれかとともに、当該サンプルをインキュベートすること;
b)クエンチング部分に接合したビオチン結合性タンパク質を、インキュベートしたサンプルに添加すること;
c)当該クエンチング部分が蛍光剤と会合する際に、当該クエンチング部分が当該蛍光剤の増大されたスーパークエンチングが可能であるように互いに会合する複数の蛍光種を含んで成る蛍光剤を、当該サンプルに添加すること、ここで、当該蛍光剤は1又は複数のアニオン基を更に含んで成り、且つ少なくとも1つの金属カチオンは当該蛍光剤のアニオン基と会合している;及び
d)当該サンプルからの蛍光を検出すること、
を含んで成り、
検出される蛍光が当該サンプル中の分析物の存在及び/又は量を示す、前記方法。
【請求項97】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション後で且つ蛍光を検出する前に前記サンプルに添加する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記蛍光剤及び前記金属カチオンを、インキュベーション前又はインキュベーション中に前記サンプルに添加し、蛍光の検出がインキュベーション中の蛍光の検出を含んで成る、請求項96に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【公表番号】特表2007−516973(P2007−516973A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544017(P2006−544017)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/041400
【国際公開番号】WO2005/060626
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506197897)キューティーエル バイオシステムズ リミティド ライアビリティ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/041400
【国際公開番号】WO2005/060626
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506197897)キューティーエル バイオシステムズ リミティド ライアビリティ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]