説明

金属ストリップのスケールを除去するための方法および装置

エッジングされ、続いて粗圧延ラインと仕上げ圧延ラインを通過する鋼製平板製品を、大きな厚さまたは中間の厚さの連続鋳造スラブからまたは薄ストランドから製造するための方法は、平板製品をエッジングする前に、平板製品のストリップエッジがスケールを除去されることを特徴とする。この方法は、少なくとも1個のエッジャー1と粗圧延ラインと仕上げ圧延ラインを備えた圧延ラインにおいて実施される。圧延ラインは第1エッジャー1の手前に、平板製品のストリップエッジからスケールを除去するための第1脱スケール装置2が配置されていることを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジングされ、続いて粗圧延ラインと仕上げ圧延ラインを通過する鋼製平板製品を、大きな厚さまたは中間の厚さの連続鋳造スラブからまたは薄ストランドから製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼または他の金属からなる平板製品を製造するための方法によって、大きな幅または中間の幅の連続鋳造スラブまたは薄ストランドが、単一スタンド型または複数スタンド型の粗圧延ラインと、平板製品を搬送および逆送するためのローラテーブル内で処理される。この方法は開閉可能な断熱式被覆フードを備えたローラテーブル区間と、粗ストリップ(Vorband)長さおよび粗ストリップ幅にわたって粗ストリップを所定の温度に制御して加熱するための誘導式加熱装置とを経て、平板製品を冷却するための装置を有する排出ローラテーブルを備えた複数スタンド型仕上げ圧延ラインで、および仕上がりストリップを巻き取るための後続配置の巻取り機で実施される。
【0003】
特許文献1により、炭素鋼または合金の浸炭鋼または合金の熱処理鋼からなる薄いストリップを、ローラテーブル上で逆送させることによって中間冷却するために休止して1個または複数の粗ストリップに2段階で圧延する方法が知られている。この粗ストリップは被覆フードと加熱装置の組み合わせ作用によって、長さと幅にわたって所定の温度に加熱され、複数スタンド型仕上げ圧延ラインにおいて二相域(オーステナイト−フェライト)で薄い高強度の仕上がりストリップに圧延される。この場合、粗圧延ラインの第1変形段の上側のオーステナイト域にある圧延温度により、連続鋳造組織が全体で40〜70%低下して、完全な再結晶によって圧延組織に変換される。一部が硬化した微細粒の組織によって、二相域への遷移の変換開始温度が上昇し、そして変形抵抗を下げるために変換時間が短縮される。粗ストリップの厚さと位置と、仕上がりストリップの厚さと、仕上げ圧延ラインへの引き込み速度と、仕上げ圧延ライン手前のスケール洗浄機の冷却作用に応じて、粗ストリップはその長さと幅にわたって、閉じた被覆フードと誘導式加熱装置の組み合わせ作用によって、適切な温度に均一に調節され、この調節により、仕上げ圧延ラインでの圧延がすべてのパスにおいて二相域で行われる。スケール洗浄機は圧延方向において粗圧延ラインの後方に、かつ仕上げ圧延ラインの直ぐ手前に配置され、スラブのエッジでなくこのスラブの表面のスケールを除去する働きをする。
【0004】
特許文献2により、粗圧延ロールスタンドの手前に、圧延ストリップを側方からエッジングするためのエッジャーが設けられている熱間圧延方法が知られている。この場合、エッジャーと粗圧延ロールスタンドとの間に、脱スケール装置が設けられている。この脱スケール装置により、連続鋳造スラブの表面から、スケールが水噴流によって除去される。その際、エッジャーの両側方のエッジングロールに、遮蔽板が取付けられている。この遮蔽板は、脱スケール装置の水が圧延ストリップの側部を冷却することを防止する。遮蔽板が側方のガイドに取付けられているので、ストリップ幅の変更によって、圧延ストリップからの遮蔽板の間隔も変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1305122 B1号明細書
【特許文献2】特開平7−47419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術で知られている方法と比べて改善された、製造中の金属ストリップを洗浄するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、この課題は、冒頭で述べた方法において、平板製品をエッジングする前に、平板製品のストリップエッジがスケールを除去されることによって解決される。
【0008】
ストリップエッジのスケールを除去しないと、エッジングの際にスケールが押し込まれて、圧延ストリップの品質が損なわれるという危険がある。本発明により、従来技術に従って圧延されるストリップのこの欠点が取り除かれる。
【0009】
本発明の有利な発展形態は従属請求項から明らかである。
【0010】
本発明に従い、平板製品が粗圧延ラインを通過した後および仕上げ圧延ラインを通過する前に、そのストリップエッジが更にスケールを除去されると有利である。その後、平板製品は更にエッジング可能である。
【0011】
平板製品のストリップエッジが高圧下の流体、特に少なくとも1つの高圧水噴流によってスケールを除去されると有利である。
【0012】
最適なスケール除去を達成するために、少なくとも1つの高圧水噴流が、平板製品の側方表面に対して60〜90°の角度をなして、特に75°の角度をなして、平板製品に向けられる。粗圧延ラインの手前に脱スケールステーションを配置する場合には、好ましくは上下に配置された3個のノズルから、水噴流がストリップエッジに向けられる。
【0013】
本発明は更に、第1エッジャーと粗圧延ラインと仕上げ圧延ラインを備えた、大きな厚さまたは中間の厚さの連続鋳造スラブからまたは薄ストランドから鋼製平板製品を製造するための圧延ラインに関する。
【0014】
圧延ラインは本発明に従い、第1エッジャーの手前に、平板製品のストリップエッジからスケールを除去するための第1脱スケール装置が配置されていることを特徴とする。
【0015】
発展形態では更に、第2エッジャーが仕上げ圧延ラインの手前に設けられ、この第2エッジャーの手前に、平板製品のストリップエッジからスケールを除去するための第2脱スケール装置が配置されている。
【0016】
圧延ラインの有利な実施形態では、平板製品の両ストリップエッジの第1脱スケール装置がそれぞれ、ストリップエッジに向けられた複数のノズル、特に各々3個のノズルを備えている。第2脱スケール装置は、圧延によって薄くなった両ストリップエッジのストリップの厚さに相応して、それぞれ、平板製品の両ストリップエッジの各々に向けられた少なくとも1個のノズルを備え、このノズルから流体、特に水が高圧下でストリップエッジに噴射可能である。
【0017】
ノズルが圧延ラインの側方ガイド、特に側方ガイドの直線部材、エッジャー寄りの側方ガイドの端部に取付けられ、かつ側方ガイド、特に直線部材と共に幅を調節可能であると有利である。側方ガイドまたは直線部材におけるノズルの固定は、側方ガイドまたは直線部材が常にストリップエッジの方へ移動させられる(これは実際にそうである)と仮定すると、ノズルとストリップエッジの間隔が常に一定/同じであるという具体的な利点がある。ノズルとストリップエッジの間の一定の間隔は、ストリップエッジに対する、ノズルからの水噴流の一定の衝撃(インパクト)を生じ、それに伴い均一なスケール除去作用を生じるので有利である。
【0018】
同様に、ノズルが流体をそれぞれ、平板製品の側方表面に対して60〜90°の角度をなして、特に75°の角度をなして、平板製品の帯体エッジに噴射すると有利である。
【0019】
次に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】粗ストリップと、鋼製平板製品を製造するための圧延ライン内の粗ストリップのガイドとを切断して示す、平板製品の側方エッジのスケールを除去するための脱スケール装置を上から見た図である。
【図2】エッジングミルスタンドの手前の領域の図1の圧延ラインを部分的に切断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例えば大きな厚さまたは中間の厚さを有する連続鋳造スラブを製造する鋳造機械の後に配置された圧延ラインは、鋳造ストランドをスラブに分割するための剪断機と、挿入された低温または温かい連続鋳造スラブを加熱するための加熱炉または圧延開始温度で薄ストランドを均熱するための均熱炉と、平板製品を側方からエッジング加工するためのエッジャー1(図2)の手前に設けられた、平板製品の側方ストリップエッジのスケールを除去するための脱スケール装置2(図1、図2)とを備えている。このエッジャー1自体は粗圧延ライン(Vorstrasse)の手前に配置されている。
【0022】
平板製品またはストリップはローラ3上を搬送される。平板製品はその両縦方向エッジが直線部材4、5によって案内される。この直線部材は平板製品の幅に応じて異なる位置に移動する。そのため、両直線部材4、5が中心に対して対称に両方向矢印Aの方向に、平板製品の圧延方向に対して横向きに摺動可能に配置されている必要がある。
【0023】
エッジャー1寄りの直線部材4、5の前端部にはそれぞれ、圧延ストリップのストリップエッジに高圧水噴流を噴射するための3個の噴射ノズル6a、6b、6c、または7a、7b、7cが配置されている。各ノズル6a、6b、6c、7a、7b、7cから水が円錐状に噴射される。この場合、平板製品の側方エッジに噴射してスケールを除去するために、水噴流がオーバーラップする。
【0024】
圧延ストリップの走行領域の両側においてノズル6a、6b、6c、7a、7b、7cの位置の外側に、それぞれ1個の水跳ね壁8、9が水跳ねよけとして設けられている。この水跳ね壁は好ましくは据え付けられて配置されている。それぞれ1本の可撓性の媒体チェーン(Medienkette)10または11が水跳ね壁8、9を通過している。この媒体チェーンはその内部にそれぞれ、共通の供給管14から水を供給するために高圧ホース12、13を備えている。圧延ストリップの幅に応じてノズル6a、6b、6c、7a、7b、7cの位置を変更することによって、媒体チェーン10、11と、この媒体チェーンと一緒にホース12、13を移動させることができる。
【0025】
ノズル6a、6b、6cまたは7a、7b、7cは両側でそれぞれ噴射バー15、16と一体化されている。この噴射バーは機械的な剛性を有するホース12、13の端片を形成している。噴射バー15、16は直線部材4、5に固定され、この直線部材と共に移動可能である。それによって、スケールを圧延ストリップの側方エッジから除去するために、圧延ストリップの側方エッジに対する、圧延ストリップの幅に左右されない一定の水噴流作用が保証される。従って、スケールがエッジャー1で押し込まれることがなく、よって圧延ストリップの品質が改善される。
【符号の説明】
【0026】
1 エッジャー
2 脱スケール装置
3 ローラ
4 直線部材
5 直線部材
6a ノズル
6b ノズル
6c ノズル
7a ノズル
7b ノズル
7c ノズル
8 水跳ね壁
9 水跳ね壁
10 媒体チェーン
11 媒体チェーン
12 ホース
13 ホース
14 供給管
15 噴射バー
16 噴射バー
A 両方向矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッジングされ、続いて粗圧延ラインと仕上げ圧延ラインを通過する鋼製平板製品を、大きな厚さまたは中間の厚さの連続鋳造スラブからまたは薄ストランドから製造するための方法において、
前記平板製品をエッジングする前に、前記平板製品のストリップエッジがスケールを除去されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記平板製品が前記粗圧延ラインを通過した後および前記仕上げ圧延ラインを通過する前に、その前記ストリップエッジが更にスケールを除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平板製品のストリップエッジが高圧下の流体、特に少なくとも1つの高圧水噴流によってスケールを除去されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの前記高圧水噴流が、前記平板製品の側方表面に対して60〜90°の角度をなして、特に75°の角度をなして、前記平板製品に噴射されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1エッジャー(1)と粗圧延ラインと仕上げ圧延ラインを備えた、大きな厚さまたは中間の厚さの連続鋳造スラブからまたは薄ストランドから鋼製平板製品を製造するための圧延ラインにおいて、
前記第1エッジャー(1)の手前に、前記平板製品のストリップエッジからスケールを除去するための第1脱スケール装置(2)が配置されていることを特徴とする圧延ライン。
【請求項6】
第2エッジャーが前記仕上げ圧延ラインの手前に設けられ、この第2エッジャーの手前に、前記平板製品のストリップエッジからスケールを除去するための第2脱スケール装置が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧延ライン。
【請求項7】
前記平板製品の両ストリップエッジの前記第1脱スケール装置(2)がそれぞれ、前記ストリップエッジに向けられた複数のノズル、特に3個のノズル(6a、6b、6c;7a、7b、7c)を備えていることと、両ストリップエッジの第2脱スケール装置がそれぞれ、前記平板製品の両ストリップエッジの各々に向けられた少なくとも1個のノズルを備え、このノズルから流体、特に水が高圧下で前記ストリップエッジに噴射可能であることを特徴とする請求項5または6に記載の圧延ライン。
【請求項8】
前記ノズル(6a、6b、6c;7a、7b、7c)が圧延ラインの側方ガイド、特に前記側方ガイドの直線部材(4、5)、前記エッジャー(1)寄りの前記側方ガイドの端部に取付けられ、かつ前記側方ガイド、特に前記直線部材(4、5)と共に幅を調節可能であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の圧延ライン。
【請求項9】
前記流体がそれぞれ、前記平板製品の側方表面に対して60〜90°の角度をなして、特に75°の角度をなして、前記ノズル(6a、6b、6c;7a、7b、7c)から前記平板製品に噴射可能であることを特徴とする請求項8に記載の圧延ライン。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512029(P2012−512029A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541213(P2011−541213)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009077
【国際公開番号】WO2010/069574
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】