説明

金属ドーピングされた混合金属酸化物、この製造方法および触媒組成物としての使用

(i)Ti、Zr、Ce、La、Al、Cr、PおよびFeからなる群から選択される、90−99.9重量%の全量の少なくとも2つのゲル形成性金属と、(ii)W、Pt、Pd、Rh、V、Mo、Co、Ni、Mnおよびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される0.1−10重量%の量の金属ドーパントを含んでなり、そしてすべての重量パーセントは酸化物として計算され、そして組成物の全重量を基準とする混合金属酸化物組成物であって、a)前記ゲル形成性金属の水溶性の三価あるいは四価の塩を含む水溶液に塩基を添加し、それによりゲルを形成し、b)ゲルに金属ドーパントを添加して、ドーピングされたゲルを得、そしてc)ドーピングされたゲルを場合によっては焼成することにより入手可能である、混合金属酸化物組成物。この組成物は、添加物または触媒成分としてのFCC法での使用に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ドーピングされた混合金属酸化物組成物と、流動接触分解(FCC)などの接触法における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(W.R.Grace and Co.)は、30−50重量%のMgO、30−50重量%のAlおよび5−30重量%のLaを含む共沈三元酸化物を含んでなる組成物に関する。この組成物は、金属(V、Ni)を不動態化し、そしてFCCユニットの再生器からのSO排出物を制御するために流動接触分解法で使用される。
【0003】
特許文献2は、MgOおよびAlからヒドロタルサイト様化合物を製造することを開示している。これらの化合物は、(a)Mg含有化合物とAl含有化合物を含む反応混合物を製造し、それによりヒドロタルサイト様化合物または非ヒドロタルサイト様化合物のいずれかを形成し、続いて焼成し、再水和することにより製造される。この生成化合物は、SO排出物を低減するためにFCC法で使用される。
【特許文献1】EP−A0554968
【特許文献2】米国特許第6,028,023号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記組成物の難点は、これらがゼオライト含有FCC触媒の中に組み込まれる場合、ゼオライトの水熱安定性に対して負の効果を及ぼすということである。
【0005】
本発明の目的は、ゼオライトの水熱安定性に対して最小化された影響を有する一方で、再生器からのSO排出物を低減し、そしてイオウの少ない燃料を製造するためのFCC法での使用に好適な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(i)Ti、Zr、Ce、La、Al、Cr、PおよびFeからなる群から選択される、全量が90−99.9重量%の少なくとも2つのゲル形成性金属と、(ii)W、Pt、Pd、Rh、V、Mo、Co、Ni、Mnおよびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される0.1−10重量%の量の金属ドーパントを含んでなり、すべての重量パーセントは酸化物として計算され、そして組成物の全重量を基準とする混合金属酸化物組成物であって、
a)前記ゲル形成性金属の水溶性の三価あるいは四価の塩を含む水溶液に塩基を添加し、それによりゲルを形成し、
b)ゲルに金属ドーパントを添加して、ドーピングされたゲルを得、そして
c)ドーピングされたゲルを場合によっては焼成する
ことにより得ることが可能である、混合金属酸化物組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
段階a)
本発明による混合金属酸化物組成物は、少なくとも2つのゲル形成性金属を水溶性の三価あるいは四価の塩の形で含む水溶液に塩基を添加することを第1の段階として包含する方法により得ることが可能である。好適な塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化カリウムを含む。生成組成物中にアルカリ金属を残さないので、水酸化アンモニウムが好ましい塩基である。この生成ゲルは、少なくとも2つのゲル形成性金属を含有する。
【0008】
この少なくとも2つのゲル形成性金属は、Ti、Zr、Ce、La、Al、Cr、PおよびFeから選択される。この水溶液中に存在すべきこれらの金属の好適な塩は、Ti(IV)、Zr(IV)、Ce(IV)、La(III)、Al(III)、Cr(III)、Fe(III)およびリン含有の塩である。これらの塩の例は、これらの金属の硝酸塩および塩化物塩、W、MoおよびVのアンモニウム塩および金属の硫酸塩、例えば硫酸ジルコニルである。
【0009】
段階b)
この金属ドーパントは、ゲルの形成時あるいは後のいずれかで段階a)で形成されるゲルに添加される。
【0010】
この金属ドーパントは、W、Pt、Pd、Rh、V、Mo、Co、Ni、Mnおよびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される。このドーパントは、好ましくはゲルに水溶性塩として添加される。
【0011】
このゲルは、場合によっては熟成され、乾燥され、そして/あるいは賦型されて、粒子を形成し得、そして金属ドーパントは、随意の賦型段階の間あるいは随意の熟成、乾燥、および/または賦型段階の後に添加可能である。ゲルの形成後であるが随意の乾燥段階の前にドーパントを添加する場合には、ゲル中でドーパントの分散を改善するために、ドーパントは、好ましくはゲルを高剪断混合する間に添加される。ドーパントを乾燥あるいは賦型段階の後に添加する場合には、これは、好ましくは乾燥されそして/あるいは賦型されたゲルをドーパントを含む溶液により含浸することにより導入される。
【0012】
好適な熟成条件は、20−300℃の、好ましくは50−160℃の範囲の温度と、自発圧力(autogeneous pressure)である。熟成は、好ましくは0.5−6時間、更に好ましくは0.5−24時間、最も好ましくは1−6時間行われる。好適な乾燥方法は、噴霧乾燥、フラッシュ乾燥、フラッシュ焼成、および空気乾燥を含む。好適な賦型方法は、噴霧乾燥(賦型を乾燥と結合する方法)、押し出し、ビーズ形成およびペレット化を含む。
【0013】
段階c)
ドーピングされたゲルは、熟成あるいは非熟成され、乾燥され、そして/あるいは賦型され得、200−1000℃の、更に好ましくは400−800℃の、そして最も好ましくは350−600℃の範囲の温度で焼成され得る。焼成は、0.5−6時間、好ましくは1−4時間行われる。すべての市販のタイプの固定床または回転焼成装置などの焼成装置が使用可能である。焼成は、種々の雰囲気中、例えば空気、酸素、不活性雰囲気(例えば、N)、水蒸気またはこれらの混合物の中で実施可能である。
【0014】
本発明による混合酸化物組成物は、酸化物として計算され、そして乾燥固体の重量を基準として全量で90−99.9重量%の、好ましくは95−99重量%の少なくとも2つのゲル形成性金属を含んでなる。前記ゲル形成性金属は、好ましくはこの組成物中にほぼ等モル量で存在する。
【0015】
このドーパントは、酸化物として計算され、そして乾燥固体の重量を基準として0.1−10重量%の、好ましくは1−5重量%の量で組成物中に存在する。
【0016】
この製造方法の結果として、本発明による組成物は、ゲル形成性金属と金属ドーパントを高分散で含有し、これは、組成物中の金属酸化物が、個別の(discrete)金属酸化物粒子の集合体におけるよりも緊密に混合されていることを意味する。
【0017】
酸化物組成物の使用
本発明による混合酸化物組成物は、炭化水素変換、精製または合成方法、特に石油精製業界およびフィッシャー・トロプシュ法における触媒または触媒添加物または吸収剤として、あるいはこれらの中で好適に使用可能である。これらの組成物が好適に使用可能な方法の例は、接触分解、水素化、脱水素化、水素化分解、水素化処理(水素化脱窒、水素化脱硫、水素化脱金属化)、重合、水蒸気改質、塩基接触反応、ガス・液体(gas−to−liquid)変換(例えば、フィッシャー・トロプシュ)およびFCCユニットの再生器からのSOおよびNO排出物の低減である。本発明による混合酸化物組成物はバイオマス変換法でも使用され得る。
【0018】
特に、この組成物は、SO排出物を低減するために、そして低SおよびN含量の燃料(ガソリンおよびジーゼルのような)を製造するためにFCC法での使用に極めて好適である。本発明による混合酸化物組成物は、そのままFCCユニットに添加可能であるか、あるいはFCC触媒の中に組み込み可能であり、本発明による酸化物組成物のほかに、マトリックスまたは充填剤材料(例えば、カオリンなどのクレイ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイなど)およびモレキュラーシーブ材料(例えば、ゼオライトY、USY、REY、RE−USY、ゼオライトベータ、ZSM−5など)などの在来のFCC触媒成分を含んでなる組成物を生成する。それゆえ、本発明は、本発明による酸化物組成物、マトリックスまたは充填剤材料およびモレキュラーシーブを含有する触媒粒子にも関する。
【実施例】
【0019】
実施例1
硝酸セリウムと硫酸ジルコニルを等モル量で含む水溶液に水酸化アンモニウムを添加することにより、沈澱を形成した。ゲルを形成した。このゲルを2つの部分に分割した。第1の部分を65℃で8時間熟成し、そして他の部分を室温で2時間熟成した。
高剪断混合の下で、5重量%のメタタングステン酸アンモニウム(金属酸化物として計算され、そして全固体含量を基準として)を両方のゲル部分に添加した。このゲル部分を30重量%の固体含量まで希釈し、次に噴霧乾燥して、微小球を形成した。この生成材料を正規のFCC触媒と混合し、MATユニット中で試験した。この結果は、元来のFCC触媒と比較してSO排出物およびガソリンのイオウ含量の低減を示した。
【0020】
実施例2
5重量%のメタタングステン酸アンモニウムを8重量%のメタバナジン酸アンモニウムにより置き換えることを除いて、実施例1を繰り返した。
【0021】
実施例3
5重量%のメタタングステン酸アンモニウムを10重量%の塩化ロジウムにより置き換えることを除いて、実施例1を繰り返した。
【0022】
実施例4
硝酸セリウムと塩化チタン等モル量で含む水溶液に水酸化ナトリウムを添加することにより、沈澱を形成した。ゲルを形成した。このゲルを65℃で2時間熟成した。
高剪断混合の下で、2重量%のメタタングステン酸アンモニウム(金属酸化物として計算され、そして全固体含量を基準として)をこのゲル部分に添加した。このゲル部分を30重量%の固体含量まで希釈し、次に噴霧乾燥して、微小球を形成した。この微小球を500℃で2時間焼成した。
この生成材料を正規のFCC触媒と混合し、MATユニット中で試験した。この結果は、元来のFCC触媒と比較してSO排出物およびガソリンのイオウ含量の低減を示した。
【0023】
実施例5
塩化チタンの代わりに硝酸鉄(III)を使用し、そしてメタタングステン酸アンモニウムの量が4重量%であることを除いて、実施例4を繰り返した。
【0024】
実施例6
沈澱が等モル量の硝酸セリウム、硫酸ジルコニルおよび硝酸鉄(III)から形成されることを除いて、実施例5を繰り返した。
【0025】
実施例7
硝酸セリウムと塩化チタンを等モル量で含む水溶液に水酸化ナトリウムを添加することにより、沈澱を形成した。ゲルを形成した。このゲル部分を30重量%の固体含量まで希釈し、次に噴霧乾燥して、微小球を形成した。
【0026】
次に、この微小球を塩化白金酸溶液(2重量%Pt)により含浸し、引き続いてフラッシュ乾燥し、そして500℃で2時間焼成した。この生成材料を正規のFCC触媒と混合し、MATユニット中で試験した。これは、元来のFCC触媒と比較してガソリンのS含量の低減を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)Ti、Zr、Ce、La、Al、Cr、PおよびFeからなる群から選択される、全量で90−99.9重量%の少なくとも2つのゲル形成性金属と、(ii)W、Pt、Pd、Rh、V、Mo、Co、Ni、Mnおよびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される0.1−10重量%の量の金属ドーパントを含んでなり、そしてすべての重量パーセントは酸化物として計算され、そして組成物の全重量を基準とする混合金属酸化物組成物であって、
a)前記ゲル形成性金属の水溶性の三価あるいは四価の塩を含む水溶液に塩基を添加し、それによりゲルを形成し、
b)ゲルに金属ドーパントを添加して、ドーピングされたゲルを得、そして
c)ドーピングされたゲルを場合によっては焼成する
ことにより得ることが可能である、混合金属酸化物組成物。
【請求項2】
少なくとも2つのゲル形成性金属が酸化物として計算され、そして組成物の全重量を基準として全量で95−99重量%存在する、請求項1に記載の混合金属酸化物組成物。
【請求項3】
金属ドーパントが酸化物として計算され、そして組成物の全重量を基準として1−5重量%の量で存在する、請求項1あるいは2に記載の混合金属酸化物組成物。
【請求項4】
金属ドーパントが高剪断混合下でゲルに添加される、請求項1−3のいずれか一つに記載の混合金属酸化物組成物。
【請求項5】
請求項1−4のいずれか一つに記載の混合酸化物組成物、マトリックスまたは充填剤材料およびモレキュラーシーブを含んでなる触媒粒子。
【請求項6】
請求項1−4のいずれか一つに記載の混合酸化物組成物または請求項5に記載の触媒粒子の流動接触分解法における使用。

【公表番号】特表2008−545610(P2008−545610A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514124(P2008−514124)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062898
【国際公開番号】WO2006/131507
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507062783)
【Fターム(参考)】