説明

金属フレーク製造方法

本発明は、噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、固体収集基板上に金属の飛沫を収集するステップ、又は収集基板内又は上で金属の飛沫を収集するステップとを含んでいる、顔料内で使用される均一な寸法分布を備えたフレークを製造するための噴射方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴出方法に関する。本発明はさらに、平坦化された金属粒子状物質、その製造方法、及び特に機能充填剤及び顔料としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
噴霧金属粉末という用語は、当業界では、いくらかの球状微粒子のことを言うのに使用される。これらはしたがって、平坦化された金属粒子状物質、特に、一般的にフレークと呼ばれる、金属顔料業界のこれらの平坦化された金属粒子状物質とは区別される。
【0003】
金属フレークの中で、アルミニウム及び金青銅(銅及び亜鉛の合金)が最も幅広く製造されているが、銅、金、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼、錫、及び亜鉛フレークは全て市販されている。アルミニウム及び金青銅顔料の応用例は主に、塗料、インク、粉末コーティング及びプラスチックのそれぞれの銀又は金着色のためのものである。これらの、及び銅、金、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼、錫、及び亜鉛金属フレークはまた、導電性、熱及び光反射、防湿、又は難燃性などの機能的性状を有することもできる。
【0004】
従来の噴霧金属粉末からの金属フレーク顔料の調製は、特許文献で十分文書化されている。このような顔料は、乾式ボールミリング過程によって溶剤が完全にない状態で調製することができるが、これは乾燥フレーク製品の汚染及び/又は爆発性により、アルミニウムなどの反応金属の場合には有害である可能性がある。このような金属では、乾式ミリングは、金属粉末が鉱物蒸留酒などの有機液体及び少量の潤滑剤で圧延される湿式ボールミリング過程によって大きく取って代わられた。ボールミル内で媒体を研磨するカスケード動作により、ほぼ球状の金属粉末が、約15:1から約150:1又は最大250:1以下のアスペクト比(最小寸法に対する最大寸法の比率)を有するフレークに平坦化される。潤滑剤の機能は、媒体の研磨の衝撃により生じる可能性がある隣接するフレークの冷間溶接を防ぐことである。
【0005】
より古い製造過程は、当技術分野において「コーンフレーク」として知られる、角縁部及び平らでない表面を備えたフレークを製造する。アルミニウムに関するより最近の開発は、いわゆる「銀ドル」フレークである。これらは、より丸みを帯びた縁部、より円滑で平らな表面、及びしばしばより狭い粒径分布によって区別される。その結果、これらはコーンフレークより輝いており、より白く、より望ましい外観を有する。
【0006】
圧延方法とは関係なく、最も一般的な出発材料は噴霧金属粉末である。噴霧金属粉末は、バルク金属を溶融し、その後、高圧縮ガスによりノズルを通して連続的に押し込めることによって調製される。このように、バルク金属は複数の細かい粉末に変換され、その形状、中央粒径、及び粒径分布は、金属のタイプ、噴霧温度、及び圧縮ガスタイプ及び温度などの要因によって決まる。噴霧過程は長年の間知られてきた。例えば、初期の装置が米国特許第1,306,060号に記載されている。使用されるガスの性質が、派生する粉末の幾何形状及び表面仕上げに大きく影響する。したがって、空気噴霧は不規則な形状及び表面の両方を有する粉末につながり、アルゴン又は窒素などの不活性ガスは、より円滑な表面を備えたほぼ球状粉末を提供する。
【0007】
このような噴霧過程は、2つの共通の特性を共有している。第1に、約10μmより小さい中央粒径を有する高い歩留まりの金属粉末を製造することが技術的に難しい。このような細かい粉末は特に、粉末冶金、ロケット推進薬、及び高い被覆力(不透明度)の金属フレーク顔料の製造に対して追求されている。実際、噴霧材料の20%だけを占める可能性があるこのような細かい粒径断片は、ふるい又は遠心分級によってより粗い粉末から分離される。アルミニウムなどの一部の反応金属の場合、爆発の可能性を防ぐために、この動作は不活性雰囲気の中で行わなければならない。
【0008】
従来の噴霧過程によって示される第2の特徴は、幅広い粒径分布を有する粉末の生成である。普通の分布が表1に示されており、39.63μmの中央粒径(D50)、14.41μmのD10、及び80.78μmのD90を有する市販のアルミニウム粉末を示している。したがって、D90からD10を差し引いて規定され、その後D50によって割られる範囲は1.67であり、このような普通は広い粒径分布を特徴付けている。
【0009】
微粉末及び幅広い粒径分布の対の制限は、噴霧粉末から調製した金属フレークの特徴に重大な制限効果を与える。
【0010】
狭い粒径分布は、金属フレーク顔料の非常に望ましい特徴である。最大約2μmの直径を有するものなどの過度に細かいフレークは、大きな不透明性又は被覆力を有するが、より大きなフレークより実質的に輝きが少ない。より粗いフレーク、例えば30μmを超える直径を有するものは、円滑な視覚効果が望ましい現代のコーティングにおいて望ましくない程度の輝きを呈する可能性がある。大きいフレークは実質的に小さい不透明性を有し、また応用において問題を生じる可能性がある。例えばインクで使用する場合、グラビア印刷プレスのセルを妨害する可能性がある。
【0011】
狭い粒径分布を得るためには、所望の粒径範囲を過度に大きい及び/又は小さいフレークから分離するように、乾式又は湿式などの寸法分離処理を圧延製品に行うことが通例である。このようにして、より明るく、円滑で、より望ましい金属外観が得られる。このような寸法分離過程は、除去した材料が商業利用が全くない、又は限られている可能性があるので、所望の製品の費用を加える。実際、過寸法材料はしばしば、所望の粒径範囲までさらに研磨するために、圧延装置に戻される。
【0012】
米国特許第5,266,098号は、均一な寸法の金属飛沫を作る方法を記載している。この方法は、振動機構及び溶融金属をオリフィスに通させる圧力と共に、この金属を噴射することができる少なくとも1つのオリフィスと、そのように形成された飛沫上で電荷を与える手段とを溶融金属を保持することが可能な容器を使用する。冷却した飛沫は、平均から約±25%だけしか変化しない均一な寸法を有する。
【0013】
狭い粒径寸法分布の細かい金属粉末を調製する手段が、例えば、米国特許第5,810,988号に記載されている。これは、ほぼ球状の固体金属飛沫を形成するように変形することなく冷却される間に、噴射した飛沫を放射線状経路を前進させるように、溶融金属飛沫をほぼ上向き方向に噴射するように配置された飛沫発生装置を備えた、均一寸法の金属飛沫を精製及び収集する噴射装置を記載している。この発明はさらに、連続又はドロップオンデマンド(DOD)方法のいずれかによって溶融飛沫の流れを電気機械的に生成する噴流制御システムを提供する。固体金属飛沫の想定される応用例としては、プリント回路基板のはんだ付け、超小型回路及びパターンの蒸着、マスク作成、回路基板修復、及びマイクロ波回路構成部品の製造が挙げられる。
【0014】
米国特許出願公開第2003/186485号A1では、水素ガスを化学反応によって直ぐに発生させることができるチャンバに連結されたガス噴射導管にそれぞれ取り付けられた複数の噴射ポートを有するヘッドを備えた噴射装置が記載されている。このガスは、噴射ポートから溶融金属を噴射するように圧力を与える。この発明は、半導体金型上のはんだ隆起の分離を対象としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
低い中央粒径及び狭い粒径分布の両方を有する金属粉末に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
金属フレーク顔料の調製の際にこのような粉末を使用することによって、実質的に単分散金属フレーク顔料製品は、ほぼ100%の歩留まりで、すなわち再圧延又は再利用のために過寸法の及び/又は標準寸法より小さいフレークを取り除く必要もなく得ることができる。このような方法の経済性、及びこのような製品の色の魅力は両方とも相当なものである。
【0017】
上に記載したように、金属フレークの調製の際の最も一般的な出発材料は、噴霧金属粉末である。これは、バルク金属を溶融し、その後これを圧縮ガスによりノズルを通すことによって調製される。したがって、バルク金属は、ボールミル内でさらに機械的に働かされてフレークを形成するためにのみ、粉末に変えられる。したがって、バルク金属をフレークに直接変える方法の必要性がある。
【0018】
方法
幅広い態様では、本発明は噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、(a)固体解放層を有する収集基板上に金属の飛沫を収集するステップ、又は(b)収集基板内又は基板上で金属の飛沫を収集し、その後収集した金属飛沫を圧延するステップのいずれかを含む噴射方法を提供する。
【0019】
「解放層」という用語は、金属の飛沫が永久的に付着しない材料のことを意味する。これにより、例えば、機械的手段、又は適切な回復液で解放層を洗浄することによって、金属飛沫を解放層から取り除くことが可能になる。「固体解放層」という用語は、金属飛沫に少なくともある程度の変形を生じさせるのに十分固形化している解放層のことを意味する。
【0020】
別の幅広い態様では、本発明は、噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、(a)固体解放層を有する収集基板上に金属フレークの形で金属飛沫を収集するステップ、又は(b)収集基板内又は基板上で金属粒状物質の形で金属飛沫を収集するステップのいずれかと、その後、平坦化された金属粒子状物質を提供するように金属粒子状物質を処理するステップとを含んでいる、平坦化された金属粒子状物質を調製する方法を提供する。
【0021】
「平坦化された金属粒子状物質」という用語は、球状ではない、すなわち最小寸法に対する最大寸法の比率として規定されている、少なくとも1.1:1のアスペクト比を有する金属粒子のことを言う。好ましい一態様では、平坦化した金属粒子状物質は少なくとも1.5:1のアスペクト比を有する。金属フレークは、特に好ましいタイプの平坦化された金属粒子状物質である。
【0022】
本明細書で使用されるような「金属フレーク」という用語は、少なくとも5:1のアスペクト比を有する金属粒子のことを言う。本発明の好ましい一態様によると、金属フレークはほぼ円筒形であり、アスペクト比はその後、高さに対する直径の比率である。
【0023】
本発明の方法(b)では、金属粒子状物質は、平坦化された金属粒子状物質を形成するように、米国特許第5593773号に記載された方法の1つによって処理することができる。これらの方法は、例えば、低いボール電荷での低速ボールミリングによる、又は従来のフレーク形成に適当なボールミリング体制でのミルベースの粘度を増加させることによる、低いボール衝突エネルギーでのボールミリングを含んでいる。本実施形態では、平坦化された金属粒子状物質は、それから製造される未処理金属球体より大きい表面積、したがって反射性を有する僅かに歪められた又は面切りされた球体としてみなすことができる。米国特許第5593773号は、参照として本明細書に援用する。
【0024】
好ましい一実施形態では、本発明の方法(b)では、金属粒子状物質は金属フレークを提供するようにミリングされる。
【0025】
したがって一態様では、本発明はまた、噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、(a)固体解放層を有する収集基板上に金属フレークの形で金属飛沫を収集するステップ、又は(b)収集基板内又は基板上で金属粒状物質の形で金属飛沫を収集するステップのいずれかと、その後、金属フレークを提供するように金属粒子状物質をミリングするステップとを含んでいる、金属フレークを調製する方法を提供する。
【0026】
一態様では、本発明は、バルク金属から直接金属フレークを調製し、それによって、従来の費用のかかる噴霧粉末調製、その後のボールミリングのステップを避ける方法を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、従来の噴霧技術によって得ることができるはるかに狭い粒径分布のほぼ球状の金属粒子状物質から狭い粒径分布の金属フレークを調製する方法を提供する。
【0028】
金属は、優れた熱制御がある条件で、その目的で認められたあらゆるるつぼ又はリザーバ内で溶融することができる。
【0029】
溶融金属は、リザーバから噴流ヘッドに供給されることが好ましい。ノズルプレート及びノズルを含む噴流ヘッドへのるつぼ又はリザーバからの短い経路が望ましい。これは、その閉塞につながる可能性がある、ノズルに入る前の大量の過剰冷却を防ぐためである。
【0030】
十分に小さい飛沫を高速で均一に生成することができ、構成の材料は使用の際に金属の溶融温度に耐えることが可能である場合に、噴流ヘッドが溶融金属を噴射する機構は重要ではない。本方法の好ましい一態様では、溶融金属は垂直下向きに噴射される。
【0031】
ドロップオンデマンドタイプの圧電制御が十分絶縁して保持され、溶融金属の温度より十分下である場合に、連続インクジェット(CIJ)及びドロップオンデマンド(DOD)タイプの噴流ヘッドは特に、本発明の方法の影響を受けやすい。圧電制御されたノズル要素を介して動作するこれらの噴流ヘッドは普通、キュリー点より下で溶融する金属及び合金に適している。キュリー温度より上では、圧電機構は動作不能となる。最も一般的である圧電材料の1つ、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に対するキュリー温度は約350℃である。
【0032】
効果的な制御機構は、均一な飛沫の生成に重要である。ノズル入口からの侵入の際に確実に及び均一に一部に飛沫を誘導することは、いくつかの機構を介して達成することができる。このようなものとしては、これに限らないが、その固有の抵抗に基づいて、パルスRF加熱、パルスレーザ加熱、音響定常波、及び金属自体の電気誘導加熱が挙げられる。全ての技術が全ての金属に適用可能ではないが、最適な機構は実験によって直ぐに判断することができる。
【0033】
ノズルプレート及びそのノズルの設計は、飛沫の性質及び均一性を制御する際の別の重要なパラメータである。実際、ノズルプレートは、複数の、おそらく数百のノズルを収納する。このようにして、いくつかのノズルの遮断は全体の性能には重大な影響を与えない。複数のノズルは、合理的な時間尺度において商業用の量を調製するために望ましい。
【0034】
ノズルオリフィスは円形断面を有することができる、又は他の幾何形状であってもよい。直径は、所望の金属フレーク寸法によって、2μmから100μm以上の範囲であってもよい。小さい直径のシリコンウェーハがノズルプレートに対する効果的な材料であり、十分支持されると、優れた耐化学性及び耐性であることが分かった。レーザ穿孔したルビー結晶も、十分に利用されてきた。ノズル寸法と飛沫寸法の関係は、多くの作動パラメータによるが、最も小さいノズル寸法の最大3倍の飛沫直径範囲が一般的に認められる。
【0035】
ノズルに入る前の溶融金属用フィルタも、有利である。溶融金属の濾過は、例えば、溶融金属内に酸化物又はスラグなどの不純物がある場合に生じる可能性があるノズル閉塞を防ぐために推奨される。
【0036】
濾過は、溶融金属に定期的に利用されるあらゆるフィルタによって達成することができる。しかし、フィルタの孔寸法は最大で名目ノズル(nominal nozzle)直径の半分であることが望ましい。実際、連続した適性の一連のフィルタを設置し、それによって最大で名目ノズル直径の半分を有するフィルタは、溶融金属がノズルに到達する前に衝突する最後のものであることが満足のいくことであると分かった。5μmまでの孔寸法のセラミックフィルタが、有利なものとして使用されてきた。
【0037】
金属は、アルミニウム、亜鉛、銅、錫、ニッケル、銀、金、鉄、及び金青銅、銅及び亜鉛の合金、アルミニウム、ガリウム及び/又はインジウム、又はステンレス鋼との錫の合金、主に鉄で構成された合金などのその合金から選択されることが好ましい。金属は、アルミニウム、亜鉛、銅、錫、ニッケル、銀、及び金青銅などのその合金から選択されることがより好ましい。一態様では、アルミニウム、銅、錫、銀及びその合金が特に好ましい。別の態様では、アルミニウム、錫及び金青銅が特に好ましい。別の態様では、アルミニウム及び金青銅が特に好ましい。
【0038】
より反応性の高い金属の酸化、及び酸化物スラグの可能な形成を防ぐため、及び爆発性を小さくするため、本発明の方法は、不活性ガス雰囲気で有利に行うことができる。
【0039】
本発明の一態様によれば、噴流ヘッド及び収集基板は、不活性雰囲気下、又は少なくとも部分的な真空下のチャンバ内にある。
【0040】
不活性雰囲気は、窒素などの不活性ガスによって与えられることが好ましい。不活性ガス又は少なくとも部分的な真空の使用は有利である。というのは、これは、溶融金属、金属フレーク、及び/又は金属粒子状物質の酸化を制限する又は防ぐからである。代替実施形態では、チャンバを空気で充填することができる。
【0041】
好ましい一態様では、チャンバ内のガスは冷却される。別の好ましい態様では、ガスが垂直方向上向きに案内される。これらの好ましい態様は有利には、必要なチャンバの高さを制限するのに使用することができる。
【0042】
溶融金属を入れたるつぼに加えられる高い圧力、及び/又は装置のノズル排出側に加えられた真空はまた、ノズルからの確実な噴射を助けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
方法(a)
第1の実施形態によると、本発明は、噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、収集基板上に金属フレークの形で金属飛沫を収集するステップとを含んだ、金属フレークを調製する方法であって、収集基板は固体解放層を含んでいる方法を提供する。
【0044】
本実施形態は有利には、フレークを形成するために機械的にさらに動作させる必要がある、粉末にバルク金属を変える必要なく、バルク金属から直接金属フレークを調製するのに使用することができる。
【0045】
金属フレークは普通、ほぼ円形面を有するが、意図する応用例によって異なる形状であってもよい。例えば、金属フレークは、ほぼ三角形、四角形、矩形又は星形面を有することができる、又は棒状又は繊維状であってもよい。
【0046】
円形形状は、単一の飛沫から得ることができ、他の形状は、第2の及びその後の飛沫が前の飛沫に部分的に衝突し、それと溶融するように収集基板上に2つ以上の飛沫を導くことによって得られる。金属フレークの厚さ及び表面特徴は、溶融金属と収集基板材料の間の接触角度及び表面張力関係を調節することによって制御することができる。金属及び収集基板の所与の組み合わせに対する最適動作状態は、ルーチン的な実験によって決定することができる。
【0047】
急速冷却は、金属飛沫が噴流ヘッドから離れ、収集基板上に衝突すると起こる。本発明の方法(a)によれば、噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、金属飛沫が金属フレークを形成するように基板との衝突点で十分に流体であるように選択される。適当な距離を選択するために、様々な要因を考慮する必要がある。これらの要因としては、金属の性質、その融点に対する溶融金属温度、飛沫寸法、収集基板温度、及び噴流ヘッドの領域内の大気温度が挙げられる。
【0048】
方法(a)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.25メートル未満、又は0.20メートル未満などの0.30未満メートルであることが好ましい。方法(a)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.001から0.01メートルまでであることがより好ましい。
【0049】
したがって、この第1の実施形態は、噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、収集基板上に金属フレークの形で金属飛沫を収集するステップとを含んだ、金属フレークを調製する方法であって、収集基板は固体解放層を含んでおり、噴流ヘッドと収集基板の間の距離は0.25メートル未満である方法を提供する。
【0050】
一態様では、固体解放層は低い摩擦係数を有する。金属フレークを固体解放層から簡単に除去することが可能であるので、この性質は有利である。低い摩擦係数を有する固体解放層としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びシリコンが挙げられる。代替の固体解放層としては、研磨ガラス又は研磨セラミックが挙げられる。
【0051】
固体解放層は、接触の瞬間に、金属飛沫の温度に耐えることが可能である材料でできているべきである。噴流ヘッドノズルと固体解放層の間の距離は、接触の瞬間に金属飛沫の温度、したがって、特定の固体解放層の安定性に影響を与える。PTFEの熱限界は普通、低い融点を有する金属及び合金に対するその適合性を制限する。
【0052】
解放層の一例は、普通は溶剤溶液として、基板上に被覆される有機又は無機溶剤溶解性又は溶剤分散性材料の層である。溶剤はその後、例えば蒸発によってそこから除去される。このような解放層上に被着された金属フレークはその後、同じ又は別の溶剤中で解放層の再溶解又は再分散によって、そこから除去することができる。このような解放層の熱限界は、低い融点を有する金属及び合金に対するその適合性を制限する可能性がある。
【0053】
好ましい一態様では、固体解放層は連続ベルトである、又は連続ベルト上にある。例えば、固体解放層はストリップへの分割によって連続ベルト上に収納することができる。固体解放層は、金属フレークの部分的被着を制御するように操作が保持され、この態様では、連続ベルトが特に有利であることが好ましい。連続ベルトはまた、金属フレークを噴流ヘッドノズルの下流側で固体解放層から解放することを可能にする。金属飛沫は固体解放層からの解放前にミリングする場合に、連続ベルトはまた有利である。というのは、金属飛沫はまだベルト上にある間に噴流ヘッドノズルの下流側でミリングし、凝固し、その後さらに下流側で固体解放層から解放することができるからである。連続ベルトは、本発明の方法を、製造時間及び費用の点で得られる利益を備えて、連続した方法で実行することを可能にする。
【0054】
好ましい一態様では、溶融金属飛沫が垂直方向下向きに噴射されると、固体解放層は水平方向に移動する。固体解放層は、少なくとも1.0メートル/秒、又は少なくとも1.5メートル/秒などの0.1から3.0メートル/秒の速度で移動することが好ましい。好ましい一態様では、固体解放層は約1.5メートル/秒の速度で移動する。
【0055】
別の実施形態では、シリコーン油などの高沸点回収液の薄い層を、それ自体が可動性又は固定性であってもよい固体解放層の表面にわたって通過させることができる。
【0056】
この第1の実施形態によると、方法(a)はさらに、固体解放層から金属フレークを解放するステップを含んでいることが好ましい。これは、ドクターブレード又は超音波の使用などの機械的手段によって、任意選択で高圧において回収液で固体解放層を洗浄することによって、空気又は不活性ガスなどのガスの噴流を固体解放層に加えることによって、又は前に記載したように解放層を溶解することによって達成することができる。これらの技術の組み合わせも使用することができる。
【0057】
したがって、一態様では、金属フレークが回収液での洗浄によって固体解放層から解放される。一目で、水は十分な回収液であると考えられる。これは簡単に利用可能であり、安価であり、非可燃性である。しかし、全ての金属顔料に最も幅広く使用される、より反応性の高い金属、特にアルミニウムの場合に問題が生じる可能性がある。細かく分割されたアルミニウム金属は、水と反応して酸化アルミニウム及び水素ガスを形成することができ、金属フレークの顔料性状が損なわれる。水が反応性の高い金属フレークに対する回収液として使用される場合、1つ又は複数のよく知られている不動態化剤が要求され、溶解され、水中で分散される可能性がある。
【0058】
水に対する代替物として、有機液を使用することができる。但し、これも処理されている金属と逆反応しないものとする。想定される応用例に適合可能な液体、例えば表面コーティングの使用は特に費用効率が良い。有機回収液の発火を避けるため、窒素などの不活性ガスの雰囲気中に、又は少なくとも部分的な真空に回収装置を保持する必要があることもある。
【0059】
一実施形態では、本明細書に記載した液体収集基板を回収液として使用することができる。
【0060】
方法(b)
第2の実施形態によると、本発明は、噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、収集基板内又は基板上で金属粒子状物質の形で金属の飛沫を収集し、その後金属フレークを提供するように金属粒子状物質をミリングするステップとを含んでいる、金属フレークを調製する方法を提供する。
【0061】
この第2の実施形態は有利には、低い中央粒径及び/又は狭い粒径分布を有する金属粒子状物質を調製するのに使用することができる。このような金属粒子状物質は、望ましいほぼ単分散金属フレークを形成する。
【0062】
方法(b)の収集基板は、固体又は液体であってもよい。収集基板は液体であることが好ましい。適切な液体収集基板の例としては、水、ホワイトスピリットなどの脂肪族及び芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、及び単及び複合グリコールエーテル及びエステルが挙げられる。適切な液体収集基板の特定の例としては、中又は高沸点鉱油、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、及びトリプロピレングリコールブチルエーテルなどの高沸点グリコールエーテルが挙げられる。
【0063】
有機液、特にホワイトスピリット、150℃を超える沸点を有する鉱油、又は150℃を超える沸点を有するプロピレングリコールエーテルは、収集基板として特に適切である。想定される応用例に適合可能な液体収集基板、例えば表面コーティングを使用することは有利である。というのは、金属粒子状物質はしばしば、液体収集基板内で直接安全にミリングすることができるからである。
【0064】
収集基板が液体である場合、金属粒子状物質は普通は金属球体である。
【0065】
収集基板が液体である場合、方法(b)は、ミリングの前に液体収集基板の少なくとも部分的な除去によって金属粒子状物質を濃縮するステップを含んでいることが好ましい。
【0066】
収集基板が固体である場合、本明細書に記載するように固体解放層であることが好ましい。
【0067】
前に説明したように、金属の飛沫が噴流ヘッドから出ると、急速冷却が起こる。本発明の方法(b)によると、噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、金属の飛沫が収集基板に到達した場合に実質的に固体であるように選択される。この距離は、金属飛沫を収集基板に伝達するのに便利な長さであればよい。適当な距離を選択するために、様々な要因を考慮する必要がある。これらの要因としては、金属の性質、その融点に対する溶融金属温度、飛沫寸法、収集基板温度、及び噴流ヘッドの領域内の大気温度が挙げられる。
【0068】
好ましい一態様では、方法(b)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、少なくとも0.25メートル、又は少なくとも0.30などの、少なくとも0.20メートルである。
【0069】
好ましい一態様では、方法(b)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、1から10メートルまでである。
【0070】
一実施形態によると、溶融金属は空気若しくは不活性ガスで充填された、又は部分的な真空で保持された背の高いチャンバの上部で、任意選択で圧力を加えて噴流ヘッドから噴射される。溶融金属が重力を受けると、固体まで冷却され、それによってチャンバの基部で、液体収集基板内に落ちる。得られる金属粒子状物質は、このステップの最後に、収集及び除去することができる。別の方法では、金属粒子状物質を液体流内でチャンバから連続して除去し、例えばフィルタプレス内で分離することができ、液体収集基板をチャンバ内に再循環させ、新しい金属粒子状物質を生成し続けることができる。いずれの場合も、狭い粒径分布の金属粒子状物質は、ミリングによって狭い粒径分布の金属フレークに変えられる。
【0071】
必要なチャンバの高さを制限するために、使用するあらゆるガスを冷却することができる、及び/又はチャンバ内で垂直方向上向きに案内することができるが、隣接する溶融飛沫が互いに衝突して凝集体を形成しないことを保証するように注意を払わなければならない。このような凝集体は、粉末粒径分布の実質的に単分散性の性質を明らかに変える。加えて、金属粒子状物質の酸化を制限する又は避けるために、チャンバ内に空気ではなく不活性ガスを利用することが好ましい可能性がある。このような酸化は、金属粒子状物質がフレーク顔料内で使用される金属フレークに変えられる場合に色性能に有害である可能性がある。
【0072】
ミリング
前に説明したように、方法(b)は、金属フレークを提供するように金属粒子状物質をミリングするステップを含んでいる。しかし、ミリングはまた方法(a)で行うことができる。
【0073】
本明細書で使用される「ミリング」という用語は、ミリング媒体を移動させることによって、例えば従来のボールミリングによって、別の方法では、ニップロールなどでのロールミリングによって、粒子状物質に対して行われるあらゆる機械作業を含んでいる。
【0074】
ミリングは、例えばボールミル内での乾式方法又は湿式方法によってであってもよい。湿式方法が使用される場合、液体収集基板内又は回収液内のいずれかにまだある間に金属粒子状物質又は金属フレークをミリングすることは、費用の観点から有利である可能性がある。
【0075】
方法(a)で得られる金属フレークの物理的形状は優れており、さらなる処理を行うことなく顔料としての使用に適しているが、最大輝度のために、表面反射率を大きくするように穏やかにミリングする又は研磨することができる。
【0076】
方法(a)の一部として、金属フレークが固体解放層から解放される前に、又は後にミリングを行うことができる。例えば、さらなる溶融金属飛沫を、固体解放層の上にまだある間に2つ又は3つのロールミルの移動ロール上に直接衝突させることが可能である。飛沫が金属フレークに凝固されると、これらはその後、前に記載した方法で固体解放層から解放されることができる。
【0077】
ロール間のニップが、飛沫又はフレーク上に圧力を加えるように設定されて、これらにロールの輪郭を取らせる。得られる金属フレークの表面品質、及びしたがって反射力は、ロールの表面研磨の程度に非常に左右される。ロールが適切な速度で回転している場合に、溶融金属飛沫が空間及び時間内で均一に生成されているときに、粒子の畳重又は冷間溶接が起こらないべきであることは、この方法の利点である。
【0078】
別の処理
前に記載したように、方法(a)により調製された金属フレークは、回収液で洗浄することによって固体解放層から解放することができる。本発明の方法の別の利点は、回収液内にある間に金属フレークを処理する能力である。同様に、方法(b)により調製された金属粒子状物質は、液体収集基板内で収集することができ、金属フレークを与えるようにミリングすることができる。次いで、金属フレークは液体収集基板内にまだある間にさらに処理されることができる。別の方法では、本発明の方法によって調製された乾燥金属フレークは、別の処理のために適切な液体に加えることができる。
【0079】
回収液、液体収集基板、又は別の適切な液体中の金属フレークは、様々な目的で処理することができる。例えば、金属フレークは任意選択では、溶液塗布媒体内での安定性を良くするように、重クロム酸アンモニウムで処理することができる、又はシリカ又はアルミナで被覆することができる。フレーク表面の着色を行う、例えば金を擬態するように他の処理を使用することができる。さらに別の処理は、塗布媒体中のこのようなフレークの硬度、及びしたがって耐剪断性を良くすることができる。
【0080】
いくつかの状況では、金属フレークを不動態化することが望ましい可能性がある。これは、金属フレークが、インク又は塗料などの表面コーティングを調製するために、水中、溶剤中又はこれら2つの混合物中で分解又は分散された表面コーティング結合剤に加えられる場合に特に望ましい可能性がある。特定の金属フレーク、特にアルミニウムフレークの反応は予想不可能である。このような表面コーティングがある割合の水を含んでいる場合、反応が保管中に起こり、上記危険を伴う水素ガスの形成が起こる可能性が存在する。
【0081】
金属フレークの不動態化は、金属フレークの調製中のあらゆる適切な時点での回収液、液体収集基板、又は別の適切な液体への1つ又は複数の腐食抑制剤の添加により達成することができる。
【0082】
水との金属の反応を抑制することを可能にするあらゆる化合物を、腐食抑制剤として利用することができる。例は、リン、クロム、バナジウム、チタン、又は珪素含有化合物である。これらは、個別に又は混合剤中で使用することもできる。
【0083】
特定の応用例では、例えば従来の金属フレーク顔料ペーストを形成するために、回収液内又は液体収集基板内のいずれかで金属フレークを濃縮する必要がある可能性がある。このような場合、フィルタプレス又は液体から固体粒子状物質を分離させる他のよく知られている手段を利用することができる。本発明の方法の製品をプラスチック及び特定の印刷インクに適合させるためには、例えば、ヨーロッパ特許第0134676号に記載された方法を使用して、金属フレークの乾式回収、又は顆粒などの液体自由形態への変換のいずれかにより処理液を避けることが好ましい。
【0084】
金属フレーク
本発明の方法は有利には、低い中央粒径及び/又は狭い粒径分布を有する金属フレークを生成するのに使用することができる。金属フレークは、機能的、及び審美的応用例を有することができる。
【0085】
本発明によって得られる又は得ることができる金属フレークは、望ましい性状を備えた表面コーティングを生成するのに使用することができる。したがって一態様では、本発明は本発明の方法によって得ることができる金属フレークを含む表面コーティングを提供する。表面コーティングは例えば、インク、塗料、又は粉末コーティングであってもよい。
【0086】
本発明によって得られる又は得ることができる金属フレークはまた、例えば、金属フレーク及び少なくとも1つの液体分散剤を含む組成で、又は金属フレーク及び少なくとも1つの固体有機担体材料を含む顆粒などの液体自由形態で、金属顔料として使用することができる。
【0087】
本発明の金属顔料内に組み込むための金属フレークは有利には、本発明の方法により調製することができる。
【0088】
ほぼ円形の面を有する金属フレークに加えて、本発明の方法を使用して四角形、三角形、及びロッド又は棒などの他の形状を作り出すことが可能である。このような形状は金属顔料として有用である可能性があり、この場合、粒径及び粒径分布に対する上述の限定及び優先傾向が適用される。しかし、球状、円筒形又は他の形状の金属粒子はさらなる応用例を有することができる。例えば、本発明の方法によって印刷された金属ロッド又は棒は、導体又は伝導コーティングで有用である。このようなロッド又は棒は、2μm以上の幅、及び約1000μm(1mm)未満の長さを有することが好ましい。これらは、その反射性状だけでなく、例えばEMI遮蔽などの導電応用例でのその導電性のためにも使用することができる。このようなロッド又は棒は、噴射した溶融飛沫が部分的に重なって所望の形状を直接形成するように、移動する基板の速度を小さくすることによって準備することができる。別の方法では、これらはその後回収され、ロッド又は棒に細かく砕かれる、連続ストリップとして蒸着することができる。
【0089】
金属顔料
別の態様では、本発明は、100μm以下の中央粒径、及び金属フレークの少なくとも90容量%が中央粒径の±25%内の粒径を有するような粒径分布を有する金属フレークを含む金属顔料を提供する。
【0090】
本明細書で使用される「中央粒径」という用語は、容量中央粒径のことを言う。金属フレークがほぼ円形の面を有する場合、粒径は円形の面の直径である。そうでなければ、粒径は粒子の最も大きな寸法である。
【0091】
粒径分布は、容量パーセント粒径分布を測定するための標準的な機器である、「Malvern Master Sizer X」で測定される。
【0092】
幅広い態様では、本発明は、200μm以下、好ましくは150μm以下の中央粒径、及び金属フレークの少なくとも90容量%が中央粒径の±25%内の粒径を有するような粒径分布を有する金属顔料を提供する。
【0093】
金属フレークは、30μm以下などの50μm以下の中央粒径を有することが好ましい。
【0094】
金属顔料が表面コーティング内で使用される場合、金属フレークは50μm以下、例えば30μm以下、例えば5から25μmの範囲の中央粒径を有することが好ましい。金属顔料がインク内で使用される場合、金属フレークは30μm以下、例えば20μm以下、例えば5から15μmの範囲内の中央粒径を有することが好ましい。
【0095】
一態様では、金属フレークは、3μm以上、又は5μm以上などの2μm以上の中央粒径を有する。
【0096】
金属フレークは、2から50μm、好ましくは5から30μm、より好ましくは5から25μmの範囲の中央粒径を有することが好ましい。
【0097】
金属フレークは、金属フレークの少なくとも95容量%が±20%、又は±15%、又は±10%、又は±5%などの中央粒径の±25%内の粒径を有するような粒径分布を有することが好ましい。
【0098】
好ましい一実施形態では、金属フレークは、金属フレークの少なくとも95容量%が中央粒径の±3%内の粒径を有するような粒径分布を有する。
【0099】
フレークのアスペクト比は、少なくとも15:1であることが好ましい。アスペクト比は、約30:1から約100:1までであることがより好ましい。より高いアスペクト比が普通は好ましく、150:1以上のアスペクト比を有する粒子が本発明によって得ることができる。アスペクト比は、最も小さい寸法に対する最も大きな寸法の比率で規定される。好ましい一態様では、金属フレークはほぼ円形の面を有する。
【0100】
装置
一態様では、本発明は、(i)少なくとも1つのノズルを備えた噴流ヘッドと、(ii)噴流ヘッドから噴射される溶融金属飛沫を収集するように配置された収集基板とを備えた金属フレークを作り出す装置であって、収集基板は固体解放層であることを特徴とする装置を提供する。
【0101】
オンデマンドタイプの圧電制御が十分絶縁して保持され、溶融金属の温度より十分下である場合に、連続インクジェット(CIJ)及びドロップオンデマンド(DOD)タイプの噴流ヘッドは特に、本発明の方法及び装置の影響を受けやすい。複数のノズルは、合理的な時間尺度において商業用の量を調製するために望ましい。ノズルに入る前の溶融金属用フィルタもまた、有利である。例えば、溶融金属中に酸化物又はスラグなどの不純物がある場合に、フィルタは(1つ又は複数の)ノズルを遮断することを避けるために望ましい可能性がある。
【0102】
少なくとも噴流ヘッド及び固体解放層は、不活性雰囲気で、又は少なくとも部分的な真空でチャンバ内にあることが好ましい。
【0103】
上に記載したように、適切な固体解放層はPTFE、シリコン、研磨ガラス、又は研磨セラミックである。好ましい一態様では、固体解放層は連続ベルトである、又はその上にある。
【0104】
噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.25メートル未満、又は0.20メートル未満などの0.30メートル未満であることが好ましい。噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.001から0.01メートルまでであることがより好ましい。
【0105】
本発明はさらに、全ての部分及び割合が重量によるものである、以下の実施例によって例示される。
【実施例】
【0106】
実施例1
金属錫を、ステンレス鋼で主に製造され、それぞれ直径35μmの、そこに取り付けた直径75mm及び厚さ380μmのシリコンウェーハ内に穿孔した120本の円形ノズルを有する噴流ヘッドのリザーバ内で溶融した。4,000Hzの作動周波数で、溶融錫飛沫が0.7cm落下して、0.45メートル/秒で水平に移動するPTFEの上に着いた。窒素の雰囲気でミネラルスピリットのファン噴流で洗浄することによって、凝固した錫フレークを蒸着工程の後にベルトから連続して取り除いた。そのようにした収集したフレークは、90重量%の固体含有量を有する金属顔料ペーストを与えるように、フィルタプレス内で濃縮した。金属顔料ペーストから調製された溶剤系塗料は、優れた輝度、及び非常に薄い金の色合いを有する銀の色調を示した。
【0107】
実施例2
金属錫を、噴流ヘッドのリザーバ内で溶融した。3,000Hzの動作周波数、及び40psiの窒素ガス圧力で、溶融錫を、窒素ガスによって不活性にした高さ2.5mのカラムの上部から垂直方向下向きに多数の20μmのノズルオリフィスを通した。凝固した錫球体は、カラムの基部で浅い量のホワイトスピリット溶剤内に入ることが可能であった。このように収集した粉末は、約90重量%の固体含有量を有するフィルタケーキを与えるように、フィルタプレス内で濃縮した。収集した材料の直径のばらつきは、最大でも+/−4%程度であった。
【0108】
33.0kgのこのようにして調製したフィルタケーキ、0.5kgのオレイン酸、及び50.0kgのホワイトスピリットを、3時間の間直径3.5mmのスチールボール450kgでボールミル内でミリングした。得られたフレーク顔料を、さらなるホワイトスピリットでの洗浄によってミルから除去し、フィルタプレス内に収集した。実質的に定量的な歩留まりで収集した材料の直径のばらつきは、5%未満であった。
【0109】
得られた金属フレーク顔料ペーストから調製した溶剤系塗料は、際立った輝度、及び非常に薄い金の色合いを有する銀の色調を示した。
【0110】
実施例3
噴流プリントヘッドは、この概念を示すように構成されている。プリントヘッドは、モリブデンから機械加工した溶融金属用の一体嵌合したリザーバを備えている。上部及び底部プレートに対する密封は、可撓性グラファイトガスケットによるものである。金属の加熱は、リザーバの外側にしっかり嵌合するように、螺旋に形成された一体型熱電対を備えた電気抵抗ユニットによるものである。底部プレートは、中心に1mmの孔を備えたセラミックディスクである。20μmの直径を有するレーザ穿孔ルビーノズルは、このディスクの中心内に固定される。セラミックに結合されたモリブデン圧電駆動ルビー隔壁が、リザーバの上部プレートを形成する。絶縁体が、リザーバヒータとプリントヘッドの上部及び底部プレートの間に嵌合される。溶融アルミニウムは、プリントヘッドリザーバに入る前に、セラミックフィルタを通過させる。
【0111】
実施例1及び2は、この噴流プリントヘッドを使用して繰り返す。
【0112】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴流ヘッドから溶融金属を噴出するステップと、
(a)固体解放層を有する収集基板上に金属の飛沫を収集するステップ、又は
(b)収集基板内又は収集基板上で金属の飛沫を収集し、その後収集した金属飛沫をミリングするステップのいずれかとを含む噴射方法。
【請求項2】
噴流ヘッドから溶融金属を噴射するステップと、
(a)固体解放層を有する収集基板上に金属フレークの形で金属の飛沫を収集するステップ、又は
(b)収集基板内又は収集基板上で金属粒子状物質の形で金属飛沫を収集するステップのいずれかと、その後、平坦化された金属粒子状物質を提供するように金属粒子状物質を処理するステップとを含んでいる、平坦化された金属粒子状物質を調製する方法。
【請求項3】
方法(b)は、収集基板内又はその上で金属粒子状物質の形で金属の飛沫を収集するステップと、その後、金属フレークを提供するように金属粒子状物質をミリングするステップとを含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属は、アルミニウム、亜鉛、銅、錫、ニッケル、銀、金、鉄、及びその合金から選択される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶融金属は垂直方向下向きに噴射される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
噴流ヘッド及び収集基板は、不活性雰囲気で、又は少なくとも部分的な真空でチャンバ内にある、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法(a)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.25メートル未満である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法(a)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.001から0.01メートルまでである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固体解放層は低い摩擦係数を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
固体解放層は、PTFE、シリコン、研磨ガラス、又は研磨セラミックである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
固体解放層は、連続ベルトである、又はその上にある、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
方法(a)はさらに、機械的手段により、又は適切な回収液で洗浄することによってのいずれかで固体解放層から金属フレークを解放するステップを含んでいる、請求項2から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
方法(b)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、少なくとも0.25メートルである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法(b)での噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、1から10メートルまでである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
方法(b)での収集基板は液体である、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
収集基板は、ホワイトスピリット、150℃を超える沸点を有する鉱油、又は150℃を超える沸点を有するプロピレングリコールエーテルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
方法(b)は、ミリングの前に金属粒子状物質を濃縮するステップを含んでいる、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
方法(b)における収集基板は固体である、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法によって得られる、又は得ることができる金属フレークを含む金属顔料。
【請求項20】
請求項19で規定された金属顔料を含んだ表面コーティング。
【請求項21】
100μm以下の中央粒径、及び金属フレークの少なくとも90容量%が中央粒径の±25%内の粒径を有するような粒径分布を有する金属フレークを含む金属顔料。
【請求項22】
50μm以下の中央粒径を有する金属フレークを含む、請求項21に記載の金属顔料。
【請求項23】
30μm以下の中央粒径を有する金属フレークを含む、請求項21又は請求項22に記載の金属顔料。
【請求項24】
金属フレークの少なくとも95容量%が、中央粒径の±25%内の粒径を有するような粒径分布を有する金属フレークを含む、請求項21から23までのいずれか一項に記載の金属顔料。
【請求項25】
金属フレークの少なくとも95容量%が、中央粒径の±3%内の粒径を有するような粒径分布を有する金属フレークを含む、請求項21から24までのいずれか一項に記載の金属顔料。
【請求項26】
請求項21から25までのいずれか一項に規定した金属顔料を含んでいる表面コーティング。
【請求項27】
(i)少なくとも1つのノズルを備えた噴流ヘッドと、
(ii)噴流ヘッドから噴射される溶融金属飛沫を収集するように配置された収集基板とを備えた金属フレークを作り出す装置であって、
収集基板は固体解放層であることを特徴とする、上記装置。
【請求項28】
噴流ヘッド及び固体解放層は、不活性雰囲気で、又は少なくとも部分的な真空でチャンバ内にある、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
固体解放層は、PTFE、シリコン、研磨ガラス、又は研磨セラミックである、請求項27又は請求項28に記載の装置。
【請求項30】
固体解放層は、連続ベルトである、又はその上にある、請求項27から29までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.25メートル未満である、請求項27から30までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
噴流ヘッドと収集基板の間の距離は、0.001から0.01メートルまでである、請求項31に記載の装置。

【公表番号】特表2009−504909(P2009−504909A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525609(P2008−525609)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003168
【国際公開番号】WO2007/020364
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507259039)ダンウィルコ(1198)リミテッド (3)
【Fターム(参考)】