説明

金属リングの移動機構

【課題】装置全体の構造の簡略化を図り、のコストダウンを図ることができる移動機構を提供することを課題とする。
【解決手段】ハンド71に、連通路81〜84の各々に介設され、連通路81〜84に進入することで連通路81〜84を閉じる弁体88〜91と、これらの弁体88〜91を各々開方向へ付勢する弾性部材92〜95と、これらの弾性部材92〜95に抗して複数の弁体88〜91を順に閉じる弁閉機構としてのカム部材96と、このカム部材96移動させるサーボシリンダ97とが設けられている。
【効果】複数の弁体に対して一つの弁閉機構が設けられているので、部品点数を少なくでき、移動機構の構造を簡略化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形可能な金属リングをラックから所定場所へ移動する金属リングの移動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックには、金属リングの弾性復元力を利用して金属リングを保持するものが知られている(例えば、特許文献1(図1、図2)参照。)。
【0003】
図17は従来技術に係る金属リングの積載方法の基本原理を説明する図であり、ラック100は、金属リング101が段積みされる段積み式のラックである。
金属リング101はベルトコンベア102で、所定の位置に移動され、リフト103によって上方に押し上げられる。所定の位置で金属リング101は拡げ手段104により内側から所定の方向が長くなるように拡げられる。金属リング101は、搬送装置105によって段積み式のラック100に積載される。ラック100を昇降又は下降させ、上記の作業を繰り返すことでラック100に金属リング101が段積みされる。
【0004】
ところで、ラック100に段積みされた金属リング101は、例えば熱処理を施された後、次工程に移動される。
図18は金属リングを移動する工程を説明する図であり、(a)に示されるように、例えば熱処理を施された金属リング101は、ラックから整列ストッカー106に移される。シリンダ107を作動させ、矢印のようにワーク引っ掛け部108を前進させる。
【0005】
(b)に示されるように、ワーク引っ掛け部108の爪109が軸110を中心にして回転し、金属リング101の縁111を乗り越え、縁111の内側に引っ掛かる。
(c)に示されるように、矢印の向きに金属リング101を引き出し、金属リング101を受渡台112に載せる。
(d)に示されるように、受渡台112を軸113を中心にして回転させ、受渡台112を図手前下向きに傾斜させることで、金属リング101は爪109から離される。
【0006】
(e)は(d)のe矢視図であり、想像線で示す受渡台112は実線で示す受渡台112の位置に回転移動する。金属リング101は傾斜に沿って滑り、コンベア114に移動される。整列ストッカー106は一段昇降し、同様にして次の金属リング101を移動させる。
しかし、整列ストッカー106、受渡台112及びワーク引っ掛け部108等が必要になり、金属リングの移動機構全体が複雑で大がかりになり、コストも掛かる。すなわち、装置全体の構造の簡略化を図り、のコストダウンを図ることができる移動機構が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−240086公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、装置全体の構造の簡略化を図り、のコストダウンを図ることができる移動機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、弾性変形可能な金属リングが複数個整列して収められているラックから、前記金属リングをピックアップし、所定場所へ移動する金属リングの移動機構において、前記金属リングの移動機構は、前記金属リングの整列方向に延びるハンドと、このハンドを前記ラックから前記所定場所へ移動させるアームとからなり、前記ハンドに、前記金属リングに密着する複数個の負圧パッドと、これらの負圧パッドを連通路を介して負圧にするマニホールドと、このマニホールドを負圧にする負圧発生手段と、前記連通路の各々に介設され、前記連通路に進入することで前記連通路を閉じる弁体と、これらの弁体を各々開方向へ付勢する弾性部材と、これらの弾性部材に抗して前記複数の弁体を順に閉じる弁閉機構とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、弁体は、金属リングの整列方向に並んでおり、弁閉機構は、整列方向に移動して複数の弁体を順に閉方向へ移動させるカム部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、ハンドに、金属リングに密着する複数個の負圧パッドと、これらの負圧パッドを連通路を介して負圧にするマニホールドと、連通路に進入することで連通路を閉じる弁体と、複数の弁体を順に閉じる弁閉機構とが設けられている。複数の弁体に対して一つの弁閉機構が設けられているので、部品点数を少なくでき、移動機構の構造を簡略化を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、弁閉機構は、整列方向に移動して複数の弁体を順に閉方向へ移動させるカム部材である。弁閉機構が簡単な部品で構成されるので、弁閉機構を簡単な構造にすることができ、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るラックの正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】ラックの左側面図である。
【図4】金属リングを整列ストッカーに整列させる工程を説明する図である。
【図5】金属リングの変形工程を説明する図である。
【図6】ラックに移し替える工程を説明する図である。
【図7】金属リングをラックに掛止める工程を説明する図である。
【図8】ラックが使用される熱処理炉の平面図である。
【図9】金属リングを押し上げる工程を説明する図である。
【図10】金属リングが押し上げられた態様を説明する図である。
【図11】移動機構の正面図である。
【図12】金属リングをピックアップする工程を説明する図である。
【図13】比較例に係るハンドの断面図である
【図14】ハンドの断面図である。
【図15】ハンドの作用図である。
【図16】金属リングをハンドから分離させる工程を説明する図である。
【図17】従来技術に係る金属リングの積載方法を説明する図である。
【図18】従来技術に係る金属リングの移動技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、金属リング11の軸12は、図表裏方向に延びており、軸12直角方向の外力により弾性変形する。
ラック10は、金属リング11を囲う枠体13と、この枠体13に渡され金属リング11の左右側方を軸12に沿って延びる左方メンバー14、中央メンバー15及び右方メンバー16と、枠体13に渡され金属リング11の下方を軸12に沿って延びる下方メンバー21〜24とを備える。
【0016】
金属リング11は、外力がなければ略真円形状であるが、ラック10に載置されると外力により楕円状となる。金属リング11は弾性復元力により真円形状に戻ろうとするが、左方メンバー14、中央メンバー15及び右方メンバー16の位置が、軸12よりも高い位置にあるので、金属リング11が下方メンバー21〜24から浮かび上がることはない。
枠体13は、棒材、パイプ材及び板材の少なくとも1つの部材で構成されている。
また、ラック10は、軸12方向に開口する金属リング11の周長よりも大きな周長の多角形開口部17を有する。
【0017】
なお、実施例においては、金属リング11の列を2列としたがこれに限定されず、1列、3列等、金属リングをラック10に載置できれば差し支えない。また、実施例において多角形開口部17は四角形としたが、六角形や八角形等でもよく、金属リング11の周長よりも大きな周長の多角形開口部17であれば差し支えない。また、枠体13、左方メンバー14、中央メンバー15及び右方メンバー16の材質は、窒化処理等の各種の熱処理が施される最中に、受け部材26及びストッパ部材27の構成元素が金属リング11に拡散することに対する障壁として機能する元素、物質から構成されるか、又はそれら元素、物質のメッキが施されているもの等、耐熱性を有している材質であれば差し支えない。
【0018】
次にラック10の要部について説明する。
図2に示されるように、ラック10は、中央メンバー15に設けられ金属リング11の外周面25を受ける受け部材26と、中央メンバー15から受け部材26を挟むようにして延ばされ金属リング11が軸(図1、符号12)方向移動することを制限するストッパ部材27とを備える。
【0019】
また、同様にして、図1に示した下方メンバー21〜24、左方メンバー14及び右方メンバー16に金属リング11の外周面25を受ける受け部材26が設けられ、下方メンバー21〜24、左方メンバー14及び右方メンバー16から受け部材26を挟むようにして金属リング11が軸12方向移動することを制限するストッパ部材27が延ばされている。
【0020】
なお、金属リング11を中央メンバー15を境にして図左右において交互に載置することで、窒化処理を行う際、窒素が十分に行き届き良好に窒化処理を行うことができる。また、下方メンバー21〜24、左方メンバー14及び右方メンバー16において、受け部材26及びストッパ部材27は溶接されている。溶接以外であっても、圧入等、受け部材26及びストッパ部材27がメンバー14〜16、21〜24に設けられていれば差し支えない。また、受け部材26及びストッパ部材27の材質は、窒化処理等の各種の熱処理が施される最中に、受け部材26及びストッパ部材27の構成元素が金属リング11に拡散することに対する障壁として機能する元素、物質から構成されるか、又はそれら元素、物質のメッキが施されているものとする。
【0021】
次にラック10に金属リングを複数個載置した状態について説明する。
図3に示されるように、ラック10に、金属リング11を軸12に沿って複数個載置する。金属リング11はストッパ部材27により軸12方向移動することを制限されているので、隣り合う金属リング11同士が接触することはない。
【0022】
また、上記に説明した内容をもって、軸12が水平になるようにして置かれ弾性変形可能で外力を除去すると真円状になる金属リング11、及びこの金属リング11の周長よりも大きな周長の多角形開口部17を有するラック10とを準備する工程とする。
なお、実施例では、金属リング11を16個連続させて載置したが、これに限定されず、5個、10個等、1個又は複数個並んであれば差し支えない。
【0023】
以上の述べたラック10の作用を次に述べる。
金属リングを整列ストッカーに整列させる工程を説明する。
図4に示されるように、リフト31の上部に整列ストッカー32が設けられている。整列ストッカー32は、柱部材33と、柱部材33に段を為して設けられている複数の棚部34と、棚部34に設けられている棚部多角形開口部35とからなる。
【0024】
汎用ロボットのロボットアーム36の先端に変形機構37が設けられ、この変形機構37に複数のロボットハンド41が互いに接近又は互いに遠ざかる方向に移動可能に設けられている。ロボットハンド41は、複数の山部42と、複数の谷部43とからなり、ロボットハンド41が広がると、谷部43に金属リングが掛かる構造となっている。なお、実施例においては、ロボットハンド41は2個であるが、3個、4個等でもよく、多角形開口部(図1、符号17)の形状に合わせてロボットハンド41が広がれば差し支えない。
【0025】
ロボットハンド41の作用について説明する。金属リング11は、コンベア44に運ばれて仮置き台45に置かれる。仮置き台45に置かれた金属リング11は、シリンダ46により、押しロッド47を介して棚部34に収納される。金属リング11は棚部34に設けられた位置決めピン48に接触し位置決めされる。一つの金属リング11が棚部34に収納されたら、棚部34はリフト31により一段昇降され、次の棚部34に金属リング11が収納される。
【0026】
図6(a)の矢印(1)のように複数の金属リング11が想像線で示す整列ストッカー32に収納され、複数の金属リング11の中心が鉛直軸に沿うように整列された後、金属リング11の中心が水平軸に沿うように90°回転させて実線で示す整列ストッカー32の姿勢にする。
そして、図6(a)の矢印(2)のように複数個のロボットハンド41が棚部多角形開口部35に挿入されると共に、複数個の金属リング11の中に挿入される。
【0027】
次に変形工程について説明する。
図5に示されるように、金属リング11の中心が水平軸に沿うように整列ストッカー32が横に倒れているが、金属リング11は位置決めピン48に接触しており、位置がずれることなく整列ストッカー32に収納された状態を維持している。挿入されたロボットハンド41、41を矢印(3)のように拡げることで、金属リング11を棚部多角形開口部35形状に倣うように弾性変形させる。すると、金属リング11は、想像線で示す金属リング11の形状になる。なお、棚部多角形開口部35は、多角形開口部(図1、符号17)の形状と略同一である。また、棚部多角形開口部35より、弾性変形した想像線で示す金属リング11の方が小さい。
【0028】
次にラック10内へ挿入する工程について説明する。
図6(b)は整列ストッカー32から金属リング11を取り出す工程を説明する図であり、前述したように想像線で示す整列ストッカー32は、矢印(1)のように90°回転され実線で示す整列ストッカー32の位置にある。棚部多角形開口部35に挿入されたロボットハンド41を矢印(4)のように移動させ、金属リング11を整列ストッカー32から取り出す。
【0029】
図6(c)はラック10に金属リング11を移し替える工程を説明する図であり、ロボットハンド41を矢印(5)のように移動させ、金属リング11を多角形開口部17からラック10内へ挿入する。
なお、整列ストッカー32は、図示されない制御盤に接続されており、制御盤内に備わる制御回路や、又は記憶手段に記憶される制御プログラム等により制御される。
【0030】
次に係止める工程について説明する。
図7に示されるように、ロボットハンド41、41を矢印(5)のように、縮める。金属リング11の外力は除去され、金属リング11は想像線で示す金属リング11の形状となり、ラック10に係止められる。なお、挿入された複数個の金属リング11が一度に係止められるので、作業の効率化を図ることができる。
【0031】
次に熱処理を施す工程として窒化処理を例示して説明する。
図8に示されるように、熱処理炉としてのバッチ式窒化炉51は、壁部52と、壁部52の一面に設けられた扉53と、この扉53の反対側の壁部52に設けられたファン54と、壁部52に設けられたヒータ55、56とからなる。
【0032】
金属リング11を載置した金属用搬送ラック10をバッチ式窒化炉51に入れ、扉53を閉める。バッチ式窒化炉51内にアンモニア等の窒化ガスを供給し、ヒータ55、56により窒化温度、例えば500℃に温度を上昇させる。ファン54により、窒化ガスを対流させ、バッチ式窒化炉51内の温度分布を略均一にする。このとき、金属リング11とラック10の接点の温度が、金属リング11のその他の部分の温度と略同一になる。
【0033】
窒化ガスは、金属リング11の表面から進入し、内部に拡散することで表面に窒化層を形成する。また、受け部材26及びストッパ部材27は、受け部材26及びストッパ部材27の構成元素が金属リング11に拡散することに対する障壁として機能する元素、物質の被膜層が形成されているので、受け部材26及びストッパ部材27の構成元素が金属リング11に拡散することを防ぎ、金属リング11の窒化を良好に行うことができる。
そして、ラックを取り出す工程では、熱処理を終えた金属リング11及びラック10をバッチ式窒化炉51から取り出す。
【0034】
次に金属リングを押し上げる工程を説明する。
図9に示されるように、金属リング11の軸12は、左方メンバー14、中央メンバー15及び右方メンバー16より低い位置にある。結果、金属リング11はラック11にしっかりと保持されている。
【0035】
ラック10はラック位置決め台57に置かれ、金属リング11の下方にリング押し上げ手段61が配置されている。リング押し上げ手段61は、昇降シリンダ62と、昇降ロッド63と、押し上げ作業台64とからなる。昇降シリンダ62を作動させ、矢印(6)のように押し上げ作業台64を上昇させる。
なお、リング押し上げ手段61は、図示されない制御盤に接続されており、制御盤内に備わる制御回路や、又は記憶手段に記憶される制御プログラム等により制御される。
【0036】
図10に示されるように、金属リング11は押し上げ作業台64により押し上げられている。金属リング11の軸12は、左方メンバー14、中央メンバー15及び右方メンバー16より高い位置にある。結果、金属リング11は上方へ抜けやすくなる。
すなわち左方メンバー14、中央メンバー15及び右方メンバー16より低い位置にあることにより、ラック10にしっかり保持されていた金属リング11は、ラック10にしっかり保持されているから、外しにくかった。しかし、さらに換言すると、金属リング11が、ラック10にしっかり保持されている位置から、押し上げられてラック10から外れやすい位置にくるので、後述するハンド71への負荷が軽減されてピックアップを容易に行うことができる。
【0037】
次にハンドをラックに接近させる工程を説明する。
図11に示されるように、金属リングの移動機構70は、金属リング11の全数若しくは一部をピックアップするハンド71と、このハンド71をラック10から所定場所へ移動させるアーム72とからなる。
アーム72により、矢印(7)のようにハンド71をラック10に接近させる。
【0038】
次に金属リングをピックアップする工程を説明する。
図12に示されるように、ハンド71に、金属リング11を真空吸着する複数の負圧パッド73が設けられている。これらの負圧パッド73で金属リング11を吸着し、矢印(8)のようにハンド71を上昇させ、金属リング11をピックアップする。この際、リング押し上げ手段61により金属リング11がラック10から外れ易い位置にあるので、ハンド71への負荷が低減されてピックアップを容易に行うことができる。
【0039】
次に比較例に係る金属リングの移動機構について説明する。
図13(a)は比較例に係る磁石を用いた移動機構の断面図であり、移動機構120のハンド121は、ベース122と、このベース122の下側に設けられ金属リング123を磁気吸着する複数の磁石124〜127と、これらの磁石124〜127に接続され電流を流す配線128と、磁石124〜127に配線128を介してそれぞれ設けられ電流を制御するスイッチ131〜134とからなる。ベース122と磁石124〜127は絶縁されている。
【0040】
スイッチ131は開いており、磁石124は金属リング123を磁気吸着せずに切り離す。スイッチ132〜134は閉じられており、磁石125〜127は、金属リング123を磁気吸着する。
しかし、移動機構120は、磁石124〜127の各々に対して配線128及びスイッチ131〜134を設けている為、部品点数も多く構造が複雑になる。加えて、スイッチ131〜134等にコストが掛かり移動機構120全体としてもコストが高くなる。
【0041】
図13(b)は比較例に係る負圧パッドを用いた移動機構の断面図であり、移動機構140のハンド141は、ベース142と、このベース142の下側に設けられ金属リング143を真空吸着する複数の負圧パッド144〜147と、これらの負圧パッド144〜147に接続されている配管148と、負圧パッド144〜147に配管148を介してそれぞれ設けられ負圧を制御する弁151〜154とからなる。また、配管148は大きな空間を有する負圧室155に繋がっており、負圧室155は負圧ポンプ156に接続されている。
【0042】
弁151は閉じており、負圧パッド144は金属リング143を真空吸着せずに切り離す。弁152〜154は開かれており、負圧パッド144〜147は、金属リング143を真空吸着する。
しかし、移動機構140は、負圧パッド144〜147各々に対して配管148及び弁151〜154を設けている為、部品点数も多く構造が複雑になる。加えて、弁151〜154等にコストが掛かり移動機構140全体としてもコストが高くなる。
【0043】
次に実施例に係るハンド71を断面図に基づいて説明する。
図14に示されるように、ハンド71は、ベース74と、このベース74の下側に設けられ金属リング11を真空吸着する複数個の負圧パッド75〜78と、これらの負圧パッド75〜78を連通路81〜84を介して負圧にするマニホールド85とを備えている。マニホールド85は広い空間を持つ負圧室86に繋がっており、この負圧室86はマニホールド85を負圧にする負圧発生手段としての減圧ポンプ87に繋がっている。
【0044】
また、ハンド71には、連通路81〜84の各々に介設され、連通路81〜84に進入することで連通路81〜84を閉じる弁体88〜91と、これらの弁体88〜91を各々開方向へ付勢する弾性部材92〜95と、これらの弾性部材92〜95に抗して複数の弁体88〜91を順に閉じる弁閉機構としてのカム部材96と、このカム部材96移動させるサーボシリンダ97とが設けられている。図左端の位置がカム部材96の初期位置であり、カム部材96は矢印(9)のように移動する。なお、マニホールド85の一端は鋼球98で塞がれている。
なお、サーボシリンダ97は、図示されない制御番に接続されており、制御盤内に備わる制御回路や、又は記憶手段に記憶される制御プログラム等により制御され、リング押し上げ手段61と連動している。
【0045】
次に以上に述べたハンド71の作用について説明する。
図15(a)に示されるように、弁体88〜91は、金属リンク11の整列方向に並んでいる。カム部材96を矢印(10)のように移動させると、弁体88、弁体89が順次閉方向へ移動される。弁体88は弾性部材92の作用により開位置にある。減圧ポンプ87の作用により、弁体89より図右側のマニホールド85内は負圧である。これにより、負圧パッド75、76から金属リングが分離され、負圧パッド77、78には金属リング11が吸着された状態を維持する。
【0046】
さらにカム部材96を矢印(11)のように移動させると、弁体89及び弁体90が閉じ位置にあり、負圧パッド77から金属リング11が分離される。弁体90より図右側のマニホールド85内は負圧であるので、負圧パッド78に吸着された金属リング11は吸着状態を保持する。なお、カム部材85は移動方向に所定の長さがあり、移動中、いづれかの弁体88〜91を必ず閉位置に保持するので、図最も右側の閉じられた弁体90よりも図右側のマニホールド85内は負圧を維持する。結果、図最も右側の閉じられた弁体90よりも図右側の金属リング11は落下することはない。
【0047】
次に金属リングをハンドから分離させる工程を説明する。
図16に示されるように、駆動されるコンベア99の上方で負圧パッド75、76上の弁体(図15、符号88、89)を閉じることで、負圧パッド75、76から金属リング11が分離される。さらに、負圧パッド77上の弁体(図15、符号90)を閉じることで、矢印(11)のように負圧パッド77から金属リング11が分離される。このように図左側の負圧パッド75から順に金属リング11を離し、所定の場所で1本ずつハンド71から金属リング11を分離させる。分離された金属リング11は、矢印(12)のように駆動されるコンベア99により次工程に搬送される。
【0048】
以上に述べた金属リングの移動機構70の作用効果を以下に記載する。
上記の図12に示されるように、弾性変形可能な金属リング11が複数個整列して収められているラック10から、金属リング11をピックアップし、所定場所へ移動する金属リングの移動機構70において、金属リングの移動機構70は、金属リング11の整列方向に延びるハンド71と、このハンド71をラック10から図16に示す所定場所(コンベア99)へ移動させるアーム72とからなり、図14に示されるハンド71に、金属リング11に密着する複数個の負圧パッド75〜78と、これらの負圧パッド75〜78を連通路81〜84を介して負圧にするマニホールド85と、このマニホールド85を負圧にする負圧発生手段としての減圧ポンプ87と、連通路81〜84の各々に介設され、連通路81〜84に進入することで連通路81〜84を閉じる弁体88〜91と、これらの弁体88〜91を各々開方向へ付勢する弾性部材92〜95と、これらの弾性部材92〜95に抗して複数の弁体88〜91を順に閉じる弁閉機構96とが設けられている。
【0049】
この構成により、複数の弁体88〜91に対して一つの弁閉機構96が設けられているので、部品点数を少なくでき、移動機構70の構造を簡略化することができる。
【0050】
上記の図14に示されるように、弁体88〜91は、金属リング11の整列方向に並んでおり、弁閉機構96は、整列方向に移動して複数の弁体88〜91を順に閉方向へ移動させるカム部材96である。
この構成により、弁閉機構96が簡単な部品で構成されるので、弁閉機構96を簡単な構造にすることができ、コストダウンを図ることができる。
なお、金属リングの移動機構70のアーム72は、図示されない多関節ロボット等のロボットアームであり、金属リングの移動機構70は図示されない制御盤に接続されており、制御盤内に備わる制御回路や、又は記憶手段に記憶される制御プログラム等により制御される。また、整列ストッカー32、ロボットハンド41、熱処理炉51、金属リングの移動機構70は連動するように、図示されない制御盤内に備わる制御回路や、又は記憶手段に記憶される制御プログラム等により制御されている。
【0051】
尚、本発明の金属リングの移動機構は、実施の形態では窒化処理に適用したが、浸硫処理等、他の熱処理に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の金属リングの移動機構は、CVT用の金属リングの窒化に好適である。
【符号の説明】
【0053】
10…ラック、11…金属リング、70…金属リングの移動機構、71…ハンド、72…アーム、73、75〜78…負圧パッド、81〜84…連通路、85…マニホールド。87…負圧発生手段(減圧ポンプ)、88〜91…弁体、92〜95…弾性手段、96…弁閉機構(カム部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な金属リングが複数個整列して収められているラックから、前記金属リングをピックアップし、所定場所へ移動する金属リングの移動機構において、
前記金属リングの移動機構は、前記金属リングの整列方向に延びるハンドと、このハンドを前記ラックから前記所定場所へ移動させるアームとからなり、
前記ハンドに、前記金属リングに密着する複数個の負圧パッドと、これらの負圧パッドを連通路を介して負圧にするマニホールドと、このマニホールドを負圧にする負圧発生手段と、前記連通路の各々に介設され、前記連通路に進入することで前記連通路を閉じる弁体と、これらの弁体を各々開方向へ付勢する弾性部材と、これらの弾性部材に抗して前記複数の弁体を順に閉じる弁閉機構とが設けられていることを特徴とする金属リングの移動機構。
【請求項2】
前記弁体は、前記金属リングの整列方向に並んでおり、前記弁閉機構は、前記整列方向に移動して前記複数の弁体を順に閉方向へ移動させるカム部材であることを特徴とする請求項1記載の金属リングの移動機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−56685(P2012−56685A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201094(P2010−201094)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】