金属・ゴム複合部材およびそれを用いた椅子
【解決すべき課題】 支持部材とゴム部材とをトリアジンチオール誘導体によって一体的に結合した金属・ゴム複合部材およびそれを用いた椅子を提供する。
【解決手段】 本発明は、少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなる金属・ゴム複合部材であって、前記支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状である、前記金属・ゴム複合部材からなる。
【解決手段】 本発明は、少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなる金属・ゴム複合部材であって、前記支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状である、前記金属・ゴム複合部材からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材およびゴム部材を有し、支持部材の金属部分とゴム部材とが化学的結合により一体的に結合している金属・ゴム複合部材、およびそれを用いた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加重、衝撃等の応力が負荷される部材では、負荷された応力を吸収するため、バネ、ゴム等の応力吸収部材が使用されてきた。しかし、バネは単純に応力に比例して歪みが増加するため、例えば椅子の背もたれのように人間と直接接触する部材に用いた場合には、使用者に快適な使用感(座り心地)を与えることができない。また、バネは特定の方向の応力に対して応力吸収作用を示し、バネの収縮方向以外の方向から応力が負荷された場合には、応力吸収作用を発揮することができない。
【0003】
一方、応力吸収部材として、ゴム等の弾性材料を使用する方法は、弾性材料を金属等に固定して使用する場合に強度等が問題となる。例えば、ゴム等を接着剤により金属に結合する方法は、ゴム等と金属との接着性が乏しいため、剥離等の問題が生じる。またゴム等の弾性材料を金属製のリング部材等でカシメることにより結合する方法は、リング部材により弾性材料が断裂する等の問題を生じる。
【0004】
ゴム等の弾性材料と金属を接着剤によらずに接着する方法として、トリアジンチオール誘導体を用いる接着方法が提案されている(特許文献1〜3)。この方法はトリアジンチオール誘導体のSH基を金属およびゴムと直接架橋させるため、接着剤を介する接着方法に比べ、強固に接着することができる。このトリアジンチオール誘導体を用いる方法の応用例としては、スチールラジアルタイヤ(特許文献4、5)、免震装置(特許文献6)が提案されている。しかしながら、これらの発明は、従来からのゴムと金属からなる結合部材を接着剤による結合からトリアジンチオール誘導体による結合に置き換えただけであり、これらの部材に新たな効果を付与するものではない。また、従来強度等の理由からバネ等の弾性部材を使用していた部材間の連結部材に、金属・ゴムの複合部材を使用することにより、ゴム特有の応力−歪み特性による新たな使用特性等を付与した金属・ゴム複合部材は知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−33576号公報
【特許文献2】特開昭56−88476号公報
【特許文献3】特開平9−71664号公報
【特許文献4】特開平2−106338号公報
【特許文献5】特開平2−71664号公報
【特許文献6】特開平5−318645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は金属とゴムを安定かつ強固に一体的に結合した金属・ゴム複合部材、特に部材間の連結部分等に用いた場合に優れた使用感、応力吸収特性等を奏することが可能な金属・ゴム複合部材およびそれを用いた椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題に鑑み鋭意検討した結果、支持部材とゴム部材とを一体的に結合することにより、支持部材とゴム部材が剥離することなく、強固に結合した複合部材が得られるとともに、負荷された応力対して所望する変形量を得る等の優れた使用特性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなる金属・ゴム複合部材であって、前記支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状である、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0009】
また本発明は、ゴム部材に第2の支持部材が連結している、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0010】
さらに本発明は、少なくとも一部に金属を有する第1の支持部材および第2の支持部材が、ゴム部材を介して一体的に結合されてなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材が、それぞれ前記ゴム部材との結合面を形成する結合部と、前記結合部から延在する支持部とを有し、前記結合部の結合面が金属からなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の結合部の金属と、前記ゴム部材とが結合されている、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0011】
また本発明は、第1の支持部材の前記支持部と第2の支持部材の前記支持部が、前記ゴム部材を介して同軸上または所定の角度を設けて形成されている、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0012】
また本発明は、前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により硬度を変化させて設けてあり、支持部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の硬度を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0013】
さらに本発明は、前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により体積を変化させて設けてあり、金属・ゴム複合部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の体積を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0014】
また本発明は、ゴム部材がトリアジンチオール誘導体によって支持部材に結合されている、請求項1〜6のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材に関する。
【0015】
さらに本発明は、トリアジンチオール誘導体が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Rは−OR’,−SR’,−NHR’,−N(R’)2 を表し、R’はアルキル基、アルケニル基、フェニル基、フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、又はシクロアルキル基を表し、MはH、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級、2級もしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩、又はホスホニウム塩を表す)で示される、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0016】
また本発明は、ゴム部材が、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴムおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0017】
また本発明は、支持部材が、銅、ニッケル、真鍮、鉄もしくはステンレスを少なくとも一部に有する支持部材またはニッケルもしくは銅を含有するめっきを施した支持部材である、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0018】
さらに本発明は、前記金属・ゴム複合部材を備えた椅子に関する。
【0019】
また本発明は、背もたれ部が前記金属・ゴム複合部材を介して取り付けられてなる、前記椅子に関する。
【0020】
さらに本発明は、前記金属・ゴム複合部材を座部、背もたれ部、枕部、およびこれらのフレーム部からなる群から選ばれた少なくとも1つに有する、前記椅子に関する。
【0021】
本発明の金属・ゴム複合部材(以下単に複合部材ともいう)は、支持部材の金属部分とゴム部材とをトリアジンチオール誘導体によって結合することにより、支持部材とゴム部材とが一体的に強固に結合した複合部材が得られる。そのため、接着剤により結合した場合に生じる剥離等の問題がない。また、本発明の複合部材は、従来強度の観点からバネ等を使用していた部材に対してゴムの使用を可能にし、それによりバネ等の弾性体では得られない応力−歪み特性が得られるという効果を奏する。そのため、例えば、本発明の金属・ゴム複合部材を椅子の背もたれ部に用いた場合には、複合部材に粘弾性体としての性質を付与することが可能であり、使用者により自然で快適な座り心地を提供することが可能となる。
【0022】
トリアジンチオール誘導体のバインダーとしてのメカニズムは明確ではないが、金属として含有するNiまたはCuがトリアジンチオール誘導体のSH基と反応してNiSまたはCu2Sを生成し、さらにトリアジンチオール誘導体の他のSH基が架橋することにより、トリアジンチオール誘導体を介して金属とゴムが結合すると考えられる。しかし、上記のメカニズムは考え得るメカニズムの一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
また、金属材料を適宜選択することにより、トリアジンチオール誘導体による接着作用をより効果的にすることも可能である。例えば、金属として銅−亜鉛合金を用いた場合、銅はSH基との反応性が高く、速やかに硫化物となるが、亜鉛は硫化が遅いため、銅の硫化反応を調節し、形成される硫化層の厚さを調整することが可能である。それにより、界面剥離をより効果的に抑制することが可能である。
【0024】
本発明に用いるトリアジンチオール誘導体による接着方法は、従来の接着剤を使用する方法とは異なり、溶剤を使用する必要がない。また、従来の接着剤を使用する方法の場合、接着工程は、まず支持部材に脱脂等の表面処理を施し、ゴム部材の結合面に第1層目の接着剤を塗布・乾燥した後、第2層目の接着剤を塗布・乾燥し、ゴム部材の結合面と支持部材の結合面を接着する、という煩雑な工程を要する。これに対し、トリアジンチオール誘導体を用いる接着方法は、例えば支持部材が真鍮等の金属からなる場合、支持部材に脱脂等の表面処理を施した後、直ちにゴム部材と支持部材の結合面同士を加熱処理等により接着することが可能である。このように、接着剤を使用する方法で必要となる塗布・乾燥工程がないため、比較的少ない工程により簡単に接着することができる。
【0025】
本発明の複合部材は、原料ゴム組成物にトリアジンチオール誘導体を添加し、金型で支持部材とともに所望する形状のゴム部材に成形・接着ができるため、接着剤が塗布できないような細密部品であっても容易に接着することが可能である。
【0026】
本発明の複合部材は、従来の接着剤を用いて接着する複合部材に比べ、耐熱接着性において同等またはそれ以上の性能を示し、耐水接着性においては格段に優れた性能を示す。そのため、本発明の複合部材を応力が負荷される環境または湿度の高い環境において繰り返し使用した場合であっても、安定して接着力を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[1]複合部材の構成材料
(1)支持部材
本発明に用いる支持部材は少なくとも一部に金属を有する。金属は特に限定されないが、好ましくは銅、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、銀、スズ等の金属またはこれらの金属を含有する合金等である。支持部材は、接着容易性、強度、耐腐食性等の観点から、特に銅、ニッケル、真鍮、鉄、ステンレス等が好ましい。
【0028】
真鍮は、銅の含有量が多くなり過ぎ、亜鉛の含有量が少なくなり過ぎると、接着界面の硫化層が厚くなり、結果として硫化層の破壊が起こり界面剥離が生じやすくなる。反対に、銅の含有量が少なくなり過ぎ、亜鉛の含有量が多くなり過ぎると、接着界面の硫化層が適切な厚さに生成され難くなり、結果として界面剥離が生じやすくなる。したがって、真鍮は銅の含有量が80%以下、亜鉛の含有量が20%以上であるのが好ましい。真鍮(銅−亜鉛合金)には、大別して(i)黄銅1種(C2600):銅70重量%+亜鉛30重量%、(ii)黄銅2種(C2700):銅65重量%+亜鉛35重量%、(iii)黄銅3種(C2801):銅60重量%+亜鉛40重量%、(iv)快削黄銅(C3604):銅60重量%+亜鉛40重量%+鉛約3重量%の4種類があるが、本発明にはいずれの真鍮も適用可能である。
【0029】
本発明に用いる支持部材は、樹脂、金属等の成形体のゴム部材との結合部にニッケルもしくは銅を含む金属めっきを施した支持部材であってもよい。めっき方法は特に制限されず、例えばNiめっきの場合、純Niめっき(Ni約100重量%)、電解Niめっき(電気Niめっき)、無電解Niめっき(Ni−P合金化学Niめっき)等であってもよい。無電解Niめっき(Ni−P合金化学Niめっき)は、高リンめっき(P:8重量%以上)、中リンめっき(P:4〜8重量%)、または低リンめっき(P:4重量%以下)を用いることができるが、リン(P)はイオウと反応せず、Niと合金化した場合Niの反応性を低下させるため、リンは反応性を低下させない程度に含有するのがよい。リンの含有量は好ましくは8重量%以下である。めっきによって形成される金属被膜の厚さは、所望する強度等の観点から適宜決定し得るが、通常1〜10μmであり、約2〜5μmが好ましい。
【0030】
上記成形体に用いる樹脂は特に制限されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、EVA(エチレンビニルアセテートコポリマー)、TPEA(ポリアミドサーモプラスチックエラストマー)、TPU(サーモプラスチックポリウレタンエラストマー)、TPS(ポリスチレンサーモプラスチックエラストマー)等を用いることができる。成形体に用いる金属は特に制限されず、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、チタン、銀、スズ等の金属またはそれらを含む合金を使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
本発明の複合部材に複数の支持部材を用いる場合、それらの材質は同一であっても異なっていてもよい。したがって、例えば2つの支持部材がゴム部材を介して一体的に結合している場合、一方の支持部材を金属とし、他方の支持部材を他の金属、またはゴム部材との結合面にめっき処理を施した樹脂とすることもできる。
【0032】
(2)ゴム部材
本発明に用いるゴム部材の原料ゴムには、ほとんど全てのゴムを使用することができるが、好ましいゴムの例としては、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、ジエン系ゴム[NR(天然ゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)等]、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、HNBR(水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等、またはこれらを含む混合物が挙げられる。
【0033】
ゴム部材は、上記のゴムに必要に応じてカーボンブラック、充填剤、軟化剤、亜鉛華、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸金属塩、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を含有することができる。
【0034】
(3)トリアジンチオール誘導体
本発明の複合部材は、下記一般式(I)で表されるトリアジンチオール誘導体を用い、金属とゴムを接着することにより結合する。
【化2】
(式中、Rは−OR’,−SR’,−NHR’,−N(R’)2 を表し、R’はアルキル基、アルケニル基、フェニル基、フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、又はシクロアルキル基を表し、MはH、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級、2級もしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩、又はホスホニウム塩を表す)で示される。
【0035】
本発明に用いられるトリアジンチオール誘導体の具体例としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノソジウム、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノカリウム、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノエタノールアミン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・オクチルアミン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・テトラブチルアンモニウム塩、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノソジウム、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・トリエチルアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・トリエチルアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノソジウム、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エタノールアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エチルアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・テトラブチルホスホニウム塩、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・ブチルアミン、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エチレンジアミン、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エチレントリアミン、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノソジウム等が挙げられる。これらのトリアジンチオール誘導体は1種又は2種以上で使用することができる。
【0036】
[2]複合部材の構造
本発明の複合部材は、少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなり、支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状であればよい。
【0037】
本発明の複合部材は、1つの支持部材と1つのゴム部材が結合したものであっても、支持部材とゴム部材が結合したものが複数組合されたものであってもよい。1つの支持部材と1つのゴム部材が結合した複合部材の例としては、一方の支持部材の突出した部分を床等に固定し、他方のゴム部材を筒状体で覆った支柱等が挙げられる。
【0038】
2つの支持部材がゴム部材を介して結合した複合部材の場合、一方の支持部材を横設したパイプ材に固定し、他方の支持部材に把持部を取り付けたつり革等が挙げられる。また変形するゴムの形状を例えば図8Cに示すアーチ型や図17に示すように断面を楕円形にすることよって直列つなぎであっても折り曲げる方向によって変化量を調整することが可能である。さらに、これらの複合部材を2つ以上直列につなぎ、各ゴム部材の硬度を変えることにより可動性(変形量)を調節することもできる。本発明の複合部材は、従来のバネ等の弾性部材を使用したものと異なり、あらゆる方向からの応力に対して緩衝効果を奏することができる。
【0039】
本発明の複合部材の別の形態は、第1の支持部材と第2の支持部材とがゴム部材を介して一体的に結合されており、第1の支持部材および第2の支持部材が、それぞれゴム部材との結合面を形成する結合部と、前記結合部から延在する支持部を有し、第1の支持部材の支持部と第2の支持部材の支持部が、ゴム部材を介して同軸上または所定の角度を設けて形成されている。
【0040】
図1に示す複合部材1は、第1の支持部材2および第2の支持部材3がゴム部材4を介して結合しており、2つの支持部材2,3の結合面2c,3cは互いに平行に対面しており、第1および第2の支持部材の結合部2a,3aから延在する支持部2b,3bは同軸上に形成されている。ゴム部材と金属との結合面は支持部材の結合部を収容できるように、ゴム部材4に窪み4aが設けられていてもよい。また、結合部をさらに安定化するために、第1の支持部材2および第2の支持部材3の結合部2a,3aの端部にR加工(面取り)を施すのも好ましい。
【0041】
図2は本発明の複合部材の別の例を示す。複合部材1の2つの支持部材2,3の結合部2a,3aは、結合面に応力の方向に応じた所定の勾配が設けられており、これにより応力が負荷されたときの伸び量と、収縮量を調整できるようになっている。即ち、応力が負荷される側の結合面同士の間隔が狭く、反対側の結合面同士の間隔が広くなるように形成されており、これにより応力が負荷されたときのゴム部材の変形量を制御するようになっている。図3は一方の支持部材3の結合部3aのみに勾配を設けた複合部材1を示し、図4は一方の側の支持部材2の結合面2cが半球面状に形成されており、他方の側の支持部材3の結合面3cが球面に対し相補的に形成されている例を示す。このように複合部材の結合面の形状を調整することにより、ゴム部材の変形量を所望する動きに合うように制御することができる。
【0042】
図1〜図4に示されている複合部材は、いずれも一方の支持部材の支持部と他方の支持部材の前記支持部が、ゴム部材を介して同軸上に形成されているが、本発明の複合部材は、上記のように同軸上に形成されている場合に限られず、一方の支持部材の支持部と他方の支持部材の前記支持部が、ゴム部材を介して
所定の角度を設けて形成されている場合であってもよい。このように支持部材の支持部同士を所定の角度を設けて形成することにより、応力が負荷された場合のゴム部材の変形量を調整することができる。
【0043】
図18は本発明の複合部材のさらに別の例を示す。図18(1)に示すように、板状のゴム部材4が2つの金属2、3を介して結合しており、2つの金属2、3は、それぞれの端部から互いに同軸上になるように延設されたロッド(図示せず)がアーム部材110、210の筒状体111、211中に挿入され、固定ネジ113、213により固定されている。アーム部材110、210のアーム部112、212は両端部で互いに回転自在に留められている。このため、同軸上に配置されたアーム部材110、210の筒状体111、211に外部からねじれ応力が加わると、金属2、3により挟持されたゴム部材4に歪みが生じる。即ち、図18(2)に示すように、外部から応力が加わらない状体ではゴム部材4は水平であるが、外部から回転軸Nに対してねじれ応力が加わると、ゴム部材4は応力の方向にねじれが生じ、それにより応力を吸収することができる。この複合部材を例えば部材間の連結部に使用することにより、外部からの応力により部材を傷つけることなく、結合を維持することができる。
【0044】
[3]複合部材の製造方法
本発明の複合部材は、種々の態様により製造可能である。支持部材とゴム部材を結合する代表的な方法としては:
i)支持部材の金属部分にトリアジンチオール誘導体を含有するゴム部材を直接接着する方法、
ii)支持部材の金属部分にトリアジンチオール誘導体を含有する水溶液または有機溶媒で処理した後、トリアジンチオール誘導体を含有する、または含有しないゴム部材を接着する方法、が挙げられる。
【0045】
支持部材は接着性を向上させるため、予め脱脂、錆とり等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理方法としては酸化処理法、エボナイト法、環化ゴム法法、リン酸塩被膜法法、めっき法等が挙げられる。
【0046】
上記のi)またはii)の方法のおいて、トリアジンチオール誘導体を含有するゴム部材は、トリアジンチオール誘導体をゴムの重量に対し、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%添加して調製する。トリアジンチオール誘導体の量が少なすぎると加硫が十分に行われず、物性低下が大きくなる。一方、トリアジンチオール誘導体の量が多すぎるとスコーチタイムが速くなり、貯蔵安定性に問題を生じるおそれがある。
【0047】
トリアジンチオール誘導体は、ゴム部材の原料ゴム組成物に添加し、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の混練機で混合し、未加硫配合物とする。次いで、配合物を押出機やカレンダーロールを用いて所望するゴム部材の形状に成形した後、このものに表面処理を施した金属を張り合わせるか、または埋め込み、加熱プレスによる圧縮成形、蒸気による直接蒸気加熱、熱空気による間接加熱等の方法を用いて加硫成形する。この加硫過程でゴム部材中のトリアジンチオール誘導体が支持部材の金属と架橋し、ゴム部材と支持部材を接着することができる。接着温度は特に制限されないが、通常加硫温度の80〜250℃で行うのが好ましい。
【0048】
支持部材の結合部にめっき処理を施す場合は、例えば、鉄や樹脂(ポリフェニレンサルファイド等)により成形した支持部材のゴム部材との結合面に、電解めっきまたは無電解めっきによりNiめっきを施す。一方、所望する場合は上記と同様の方法により原料ゴム組成物にトリアジンチオール誘導体を添加し、混練した後、ゴム部材の形状に成形し、ゴム部材の結合面に上記の支持部材の結合面を接触させ、接着する。その際、加圧状態で接触させ、約80〜200℃に加熱するのが好ましい。
【0049】
[4]複合部材を用いた椅子
本発明の複合部材を椅子に適用する場合、複合部材の支持部材は強度、耐腐食性等の観点から、特に真鍮、鉄、ステンレス等の材料を用いるのが好ましい。また、複合部材のゴム部材は、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、ジエン系ゴム[NR(天然ゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)等]、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、HNBR(水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等を用いるのが好ましい。
【0050】
本発明の複合部材を備えた椅子の実施形態を、以下図5〜図12を参照しながら説明する。図5Aは、本発明の複合部材1,1’が背もたれ部6および座部5の左右の基部に取り付けられ、脚部7とともに構成される椅子の分解図である。椅子の座部5の基部5aおよび背もたれ部6の基部6aには、それぞれ複合部材の支持部を差し込めるように挿入孔5c,5c’,6c,6c’が形成されている。したがって、本発明の複合部材を椅子に取り付ける場合には、一方の支持部材の支持部を椅子の背もたれ部の基部に形成された挿入孔6c,6c’に、他方の支持部材の支持部を椅子の座部の基部に設けられた挿入孔5c,5c’に、それぞれ差し込むことにより取り付けることができる。複合部材の取り付け位置および個数は図5A示す位置に限られず、椅子に負荷された応力を所望する程度に吸収できる位置および個数で取り付けられていればよい。
【0051】
図5Bは、本発明の複合部材を適用した椅子の別の例を示す。この例では椅子の座部の後背部の左右に貫通孔15c,15c’が設けられており、この貫通孔15c,15c’に脚部17に取り付けられたフレーム部材(パイプ)17a、17a’を差し込むようになっている。複合部材を構成する一方の支持部材の支持部を椅子の背もたれ部の基部に形成された挿入孔16c,16c’に、他方の支持部材の支持部を椅子の座部に設けられた貫通孔15c,15c’に挿入されたパイプにそれぞれ差し込むことにより、複合部材1を介して背もたれ部16が椅子に取り付けられている。
【0052】
本発明の椅子に使用する複合部材の形状は上記の図1〜図4に示す例に限られず、椅子の種類等に合わせて適宜変更することが可能である。本発明の複合部材を椅子に取り付ける場合には、上記の例のように挿入孔に差し込むだけでなく、当該技術分野で知られている通常の方法により取り付けてもよい。例えば支持部材の支持部にねじ孔を形成し、同様に椅子の座部および背もたれ部の挿入孔にもねじ孔を形成し、複合部材と座部および背もたれ部を螺合することにより複合部材を椅子に固定してもよいし、また接着剤を椅子の挿入孔に注入し、複合部材を椅子に固定してもよい。
【0053】
本発明の椅子の別の実施形態を図6A〜6Dに示す。図6Aに示す例では、座部25と、座部25を支持する基部28と、基部28に接続する脚部29と、基部29に複合部材21を介して接続する背もたれ部26を有する。この例では複合部材21はゴム部材24を介して支持部材201および203が結合する第1の複合部材とゴム部材24’を介して支持部材202および203が結合する第2の複合部材が連結して構成されており、支持部材201はL字状に屈曲し、背もたれ部26を支持するフレーム部材を兼ねている。このように本発明の複合部材は椅子の構成部材と一体化していてもよい。背もたれ部26は複合部材を介して椅子の基部28に取り付けられている。
【0054】
この椅子に使用者が座ると、背もたれ部26に使用者の体重がかかり、背もたれ部26は椅子の後方に撓み、第1の複合部材および第2の複合部材に異方性の応力が働く。それにより第1の複合部材は主に椅子の後方へ歪み、第2の複合部材は主に椅子の前方へ歪む。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材24、24’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0055】
図6Bに示す例では、座部35と、座部35を支持する基部38と、基部38に接続する脚部39と、背もたれ部36とを有する。椅子の背もたれ部36を支持するL字状に屈曲した支持部材301は座部35を支持する支持部材304とゴム部材34を介して結合し、第1の複合部材を構成している。また背もたれ部36を支持する支持部材301は、支持部材301に結合する支持部材302および基部38に結合する支持部材303によりゴム部材34’を介して椅子の基部38に接続しており、支持部材302、303およびゴム部材34’により第2の複合部材を構成している。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部26に使用者の体重がかかり、その応力により第1の複合部材および第2の複合部材は歪みを生じる。この例では第1の複合部材は応力により主に軸線方向の引っ張りによる歪みを生じ、第2の複合部材は応力により主に椅子の後方への歪みを生じる。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材34、34’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0056】
図6Cに示す例は、座部45と、座部45を支持する基部48と、基部48に接続する脚部49と、背もたれ部46とを有する。背もたれ部46を支持するL字状に屈曲した支持部材401の端部はゴム部材44を介して支持部材402に接続し、第1の複合部材を構成しており、支持部材402は椅子の基部48に接続している。また支持部材401は支持部材404に取り付けられた保持部材406により保持されており、背もたれ部46は支持部材401、402および保持部材406により椅子の本体に固定されている。一方、座部45を支持する支持部材404は、座部45の前部においてゴム部材44’を介して支持部材405と結合し、第2の複合部材を構成している。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部26に使用者の体重がかかり、その応力により第1の複合部材に歪みを生じる。この場合、第1の複合部材には支持部材401と保持部材406との結合部を支点とする応力が働き、第1の複合部材のゴム部材44は主に上方に湾曲するように歪む。また、使用者の脚の重みにより第2の複合部材を構成するゴム部材44’が下方に歪み、それにより支持部材405とともに座部45の前部が下方へ撓むようになっている(この例では座部45は可撓性の素材で構成されている)。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材44、44’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0057】
図6Dに示す例は、座部55と、座部55を支持する基部58と、基部58に接続する脚部59と、背もたれ部56とを有する。背もたれ部56を支持する屈曲した椅子のフレーム部材501は椅子の基部58に接続するとともに支持部材502により支持されており、支持部材502はゴム部材54を介して座部55を支持する支持部材504と接続している。支持部材502、504およびゴム部材54は第1の複合部材を構成している。また、V字状の支持部材503、503’は基部58に取り付けられており、V字状の支持部材503および503’はゴム部材54’を介して結合し、第2の複合部材を構成している。この椅子に使用者が座ると、使用者の体重により第2の複合部材のゴム部材54’が歪み、それによりV字状の支持部材503および503’が主に外側に撓み、使用者を支えることができる。一方、背もたれ部56に加わった応力は支持部材502を介してゴム部材54に作用し、第1の複合部材のゴム部材54が歪むことにより背もたれ部56が後方に撓み、使用者を支えることができる。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材54、54’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0058】
図6A〜6Dに示す例はいずれもキャスター付の回転椅子になっているが、これに限定されるものではなく、他の椅子にも同様に適用することができる。また、これらの椅子において、フレーム部を構成するフレーム部材の形状はパイプ状であっても、椅子の幅またはその一部の幅を有する板状等であってもよい。したがって、本発明の複合部材の支持部材およびゴム部材の形状もフレーム部材の形状と同様に円筒状であっても、板状等であってもよい。さらに、これらの例に示された複合部材は適宜互いに入れ替え、または組合せて使用してもよい。
【0059】
本発明の椅子のさらに別の実施形態を図7A〜Bに示す。図7Aは座部65、背もたれ部66およびフレーム部67を有し、フレーム部67は左右の肘掛部とそれに続く脚部が一体的に構成されており、座部65および背もたれ部66は、それぞれ左右の両端部においてフレーム部67と接続している。また座部65の底部には支持部材が設けられており、フレーム部67と接続している。フレーム部67の肘掛部は使用者が肘を乗せる高さでそのまま延設され、背もたれ部66に接続している。フレーム部67の肘掛部には背もたれ部66との接続部に至る間に本発明の複合部材61が挟まれている。即ち、背もたれ部66は複合部材61を介して椅子に取り付けられている。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部66に使用者の体重がかかり、その応力により複合部材に歪みを生じ、背もたれ部66に複合部材の歪みに応じた撓みを与えることができる。なお、複合部材61の代わりにゴム部材を用い、フレーム部67を支持部材とし、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0060】
図7Bは座部75、背もたれ部76およびフレーム部77を有し、フレーム部77は左右の肘掛部とそれに続く脚部が一体的に構成されており、座部75および背もたれ部76は、それぞれ左右の両端部においてフレーム部77と接続している。フレーム部77の端部には本発明の複合部材71が接続し、複合部材71の他端部はフレーム部材701と接続している。背もたれ部76は保持部材701およびフレーム部77の保持部702においてフレーム部67に接続し、保持されている。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部76に使用者の体重がかかり、その応力により複合部材71に歪みを生じ、背もたれ部66に複合部材の歪みに応じた撓みを与えることができる。なお、複合部材71の代わりにゴム部材を用い、フレーム部77を支持部材とし、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0061】
本発明の椅子のさらに別の実施形態を図8A〜Cに示す。図8Aは座部85、背もたれ部86、86’およびフレーム部87を有し、背もたれ部86、86’の間にはゴム部材84が挟まれており、本発明の複合部材を構成している。この場合、椅子の少なくともゴム部材84との結合部は上述の金属(真鍮、鉄、ステンレス、ニッケルもしくは銅を含有するめっき等)で形成されている。本発明はこの例のようにゴム部材84を直接挿入する場合に限られず、例えば図8B(2)に示すように、樹脂等からなる椅子の背もたれ部86、86’の間に本発明の複合部材81を挟んで構成されていてもよい。複合部材81は、例えば図8B(3)に示すように金属製の支持部材82、83がゴム部材84を介して結合することにより構成される。複合部材81は周囲をゴム製の筒状カバー89で覆われている。支持部材82、83にはそれぞれ椅子の背もたれ部86、86’を受け入れることができるように凹部が形成されている。したがって、椅子を組み立てる際には、背もたれ部86、86’の端部を複合部材81の支持部材82、83の凹部の幅にあわせて加工し、背もたれ部86、86’の端部をそれぞれ複合部材81の支持部材82、83の凹部に差し込めばよい。本明細書においては、背もたれ部に複合部材を有する場合には、背もたれ部と座部との間に複合部材が設けられている場合をも含む。なお、図8Aに示す例では、複合部材を斜め対称に装着することにより、背部が円弧状である人体の形状に合わせ、より自然な撓みが得られるようにしてある。さらにゴムの体積を変化させることにより、複合部材の変形量を調整することもできる。また、背もたれ部の一部またはすべてが図8Cに示すアーチ状の複合部材で形成されていてもよい。アーチ状にすることにより複合部材が使用者の背の形状に合わせてたわみ、使用者によりフィット感を与えることができる。
【0062】
本発明の椅子のさらに別の実施形態を図9〜10に示す。図9に示す例は背もたれ部に本発明の複合部材が挿入されており、複合部材は使用者の体重による応力を主に吸収する複合部材81以外に、使用者の肩回しを容易にするための複合部材81’が挿入されている。したがって、例えば図9に示すように使用者が座ったままやや後方のものをとるような場合、肩回しの動きに沿って複合部材81’が歪み、それによって背もたれ部86のウィング板背もたれ部86が後方に撓むことにより、肩回しの動きを容易にすることができる。なお、複合部材81、81’の代わりにゴム部材を用い、背もたれ部86、86’の少なくともゴム部材との結合部を支持部材とし、例えば結合面にニッケルもしくは銅を含むめっきを施してゴム部材と結合させ、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0063】
図10に示す例は、背もたれ部96に枕部99が取り付けられている、複合部材は背もたれ部に挿入された複合部材91以外に、枕部99に挿入された複合部材91’が設けられている。枕部99に使用者の頭が置かれると、その応力により複合部材91’が歪み、それにより枕部99が撓み使用者に快適感を与えることができる。本明細書においては、枕部99に複合部材を有する場合には、枕部99と背もたれ部96の間に複合部材を有する場合を含む。なお、複合部材91、91’の代わりにゴム部材を用い、背もたれ部96および枕部99の少なくともゴム部材との結合部を支持部材とし、例えば結合面にニッケルもしくは銅を含むめっきを施してゴム部材と結合させ、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0064】
図11に示す例は、本発明の複合部材を適用したソファであり、ソファの背もたれ部316は複合部材311を介して座部315に接続している。ソファのそれ以外の部分は通常のソファと同じであってよく、例えばソファの背もたれ部は金属フレーム316a、板材316b、ウレタン等の弾性部材316c、上張り材316d等により構成される。複合部材311の形状、個数は特に制限されず、例えば上記の複合部材を適宜使用することができる。
【0065】
図12は、ゴム部材の硬度がゴム部材の回転軸の周囲の角度により変えて設けられている場合を示す。この例では、ゴム部材154の基材となるゴム154a以外に横断面の180°方向に硬度の異なるゴム154a,154bが用いられており、ゴム部材154を含む複合部材151は、例えば椅子の背もたれ部と座部との間に回転自在に取り付けることができる。したがって、複合部材151を回転軸の周りに回転させることにより、ゴム部材の応力の作用する側(体重のかかる側)のゴムの硬度を調節できるようになっている。例えば、応力の作用する側を軟質ゴムにすることにより、背もたれ部の撓みを大きくすることができ、またゴム部材を回転軸の周りに180°回転させ、応力の作用する側を硬質ゴムにすることにより背もたれ部の撓みを小さくすることができる。なお、ゴムの配置はこの例に限られず、任意の角度(例えば90°)ごとにゴムの硬度を変えて配置することができる。
【0066】
また、上記の背もたれ部の撓みの調節はゴム部材の体積を回転軸の周囲の角度により変化させて設けることによっても行うことができる。即ち、ゴム部材を、ゴム部材の回転軸の周囲の角度により体積を変化させて設け、金属・ゴム複合部材に作用する応力に対して、回転軸の回転角度を調整することにより、ゴム部材の応力の作用する側にあるゴム部材の体積を調整し、それによりゴム部材の変形量を調節することもできる。
【0067】
上記のゴム部材の回転軸の周囲の角度によりゴムの硬度または体積を調整し、それによりゴム部材の変形量を調節する方法は、本発明のすべての椅子に適宜適用することができる。また、本発明の椅子は、複合部材を挿入する箇所や個数を適宜選択することによって所望する撓みを付与することもできる。本発明の複合部材の形状は、上記の例に限られず適用する椅子の形状に応じて適宜変更することが可能である。例えば、ゴム部材を背もたれ部の幅に合わせた長さに成形して、背もたれ部の幅全体で支持してもよい。
【0068】
本発明の複合部材は、椅子の座部、背もたれ部、枕部等に装着することができるが、これらに直接装着する場合にかぎられず、座部、背もたれ部、枕部等を支持するフレーム部に装着してもよい。
【0069】
以上、本発明を実施形態により説明したが、これらの実施形態は本発明の例示にすぎず、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、これらの実施形態は適宜組合せることが可能であり、また公知の種々の椅子(例えばリクライニング機能付の椅子等)に適用することも可能である。
【実施例】
【0070】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0071】
実施例1
100gのNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)に50gのカーボンブラック(充填材)と10gのナフテン系オイル(軟化剤)、1gのステアリン酸(加硫促進助剤)、1.5gの硫黄(加硫剤)と0.5gのテトラメチルチウラムモノスルフィド(加硫剤)、および1gのトリアジントリチオールモノナトリウム塩(トリアジンチオール誘導体)を添加した原料ゴム組成物をオープンロールで混練した後、3cmの厚さにシート成形してゴム部材の基材とした。一方、図19に示すように厚さ2mmの板状に成形した真鍮製の支持部材2、3の結合面を脱脂剤で洗浄した後、処理した支持部材の結合面を幅10mm、厚さ2mmにカットしたゴム部材4の結合面と張り合わせ、160℃で15分間加熱し、加熱圧縮成形により支持部材2、3とゴム部材4を接着した。
【0072】
得られた金属・ゴム複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を以下の方法により調べた。
耐熱接着性:80℃に加熱したギヤ老化式オーブン(空気置換率3回/時間)の中に接着した複合部材を入れて500時間まで連続的に加熱し、100時間毎の接着力を90°剥離試験により評価した。
耐水接着性:水道水が入った容器の中に接着させた複合部材を沈めて密封し、80℃に加熱したギヤ老化式オーブンを用いて500時間まで連続的に加熱し、100時間毎の接着力を90°剥離試験により評価した。
結果を図13および図14に示す。
【0073】
実施例2
実施例1と同様の方法によりトリアジンチオール誘導体を含有するゴム部材を作製した。図19に示す形状に成形したSPCC(JIS G 3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯)からなる鉄製の支持部材の結合面をNiめっき(電解光沢ニッケルメッキ法)により、厚さ2μmのニッケル層を形成した。得られたゴム部材の結合面に支持部材の結合面を張り合わせ、160℃で15分間、200kgf/cm2の圧力をかけて接着した。得られた金属・ゴム複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を実施例1と同様の方法により試験した。結果を図15および図16に示す。
【0074】
比較例1
実施例1と同様にしてゴム部材および真鍮製の支持部材を作製し、ゴム部材の結合面にケムロック205(接着剤、Lord Far East Incorporated社製)を塗布・乾燥し、同様の操作をもう一度繰り返した後、ゴム部材および支持部材の結合面同士を張り合わせ、15分間、200kgf/cm2の圧力をかけて接着した。得られた複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を実施例1と同様の方法により試験した。結果を図13および図14に示す。
【0075】
比較例2
実施例2と同様にしてゴム部材およびNiめっきを施した鉄製(SPCC)の支持部材を作製し、ゴム部材の結合面にケムロック205(接着剤)を塗布・乾燥し、同様の操作をもう一度繰り返した後、ゴム部材および支持部材の結合面同士を張り合わせ、15分間、200kgf/cm2の圧力をかけて接着した。得られた複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を実施例2と同様の方法により試験した。結果を図15および図16に示す。
【0076】
(評価)
図13〜図16から明らかなように、支持部材として真鍮製および鉄製のいずれの支持部材を用いたときも、トリアジンチオール誘導体により接着する本発明の複合部材は、接着剤により接着する比較例の複合部材に比べ、耐熱接着性および耐水接着性において、高い剥離強度を有することがわかる。特に接着剤により接着した場合には、耐水接着性において顕著に劣り、真鍮製の支持部材により直接接着した比較例1の複合部材は、100時間の耐水接着性試験でほぼすべて剥離した。これは接着剤に含まれる有機溶剤が膨潤してゴムと接着剤との接着強度が低下するとともに、金属と接着剤との結合が加水分解するためであると考えられる。これに対し、本発明の複合部材はトリアジンチオール誘導体により接着しており、ゴムと金属の間に緻密な金属硫化物層が形成され、水や有機溶媒が侵入し難く、結合が加水分解によって切断されることもないため、強固な結合が得られると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の金属・ゴム複合部材の一例を示す横断面図である。
【図2】本発明の金属・ゴム複合部材の別の例を示す横断面図である。
【図3】本発明の金属・ゴム複合部材のさらに別の例を示す横断面図である。
【図4】本発明の金属・ゴム複合部材のさらに別の例を示す横断面図である。
【図5A】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の一例を示す分解図である。
【図5B】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の別の例を示す分解図である。
【図6A】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)の一例を示す側面図である。
【図6B】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)の別の例を示す側面図である。
【図6C】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)のさらに別の例を示す側面図である。
【図6D】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)のさらに別の例を示す側面図である。
【図7A】本発明の金属・ゴム複合部材をフレーム部に適用した椅子の一例を示す斜視図である。
【図7B】本発明の金属・ゴム複合部材をフレーム部に適用した椅子の別の一例を示す斜視図である。
【図8A】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の一例を示す斜視図である。
【図8B】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の別の例を示す図であり、(1)は複合部材が装着された状態を示す斜視図であり、(2)は複合部材の装着部分を示す分解図であり、(3)は複合部材の構成を示す部分透視図である。
【図8C】アーチ状の形状を有する本発明の金属・ゴム複合部材を示す概略図である。
【図9】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子のさらに別の例を示す図である。
【図10】本発明の金属・ゴム複合部材を枕部に適用した椅子の一例を示す斜視図である。
【図11】本発明の金属・ゴム複合部材をソファに適用した一例を示す斜視図である。
【図12】ゴム部材の硬度がゴム部材の回転軸の周囲の角度により変えて設けられている金属・ゴム複合部材の断面を示す図である。
【図13】実施例1の真鍮−NBR複合部材と比較例1の真鍮−NBR複合部材との耐熱接着性を比較したグラフである。
【図14】実施例1の真鍮−NBR複合部材と比較例1の真鍮−NBR複合部材との耐水接着性を比較したグラフである。
【図15】実施例2の真鍮−NBR複合部材と比較例2の真鍮−NBR複合部材との耐熱接着性を比較したグラフである。
【図16】実施例2の真鍮−NBR複合部材と比較例2の真鍮−NBR複合部材との耐水接着性を比較したグラフである。
【図17】ゴム部材の断面が楕円形状の本発明の金属・ゴム複合部材の一例を示す斜視図である。
【図18】本発明の金属・ゴム複合部材のさらに別の例を示す図であり、(1)は斜視図であり、(2)は外部からの応力の有無によるゴム部材の変形量を示す概略断面図である。
【図19】実施例1および2で使用した本発明の金属・ゴム複合部材の試験片を示す概略図である。
【符号の説明】
【0078】
1、21、61、71、81、91・・・金属・ゴム複合部材
2、82、3、83・・・支持部材
2a、3a・・・結合部
2b、3b・・・支持部
2c、3c・・・結合面
4、24、34、44、54、84・・・ゴム部材
5、15、25、35、45、55、65、75、85・・・座部
6、16、26、36、46、56、66、76、86、96・・・背もたれ部
7、17・・・脚部
99・・・枕部
201、202、203、301、302、303、401、402、404、405、502、503、504・・・支持部材(フレーム部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材およびゴム部材を有し、支持部材の金属部分とゴム部材とが化学的結合により一体的に結合している金属・ゴム複合部材、およびそれを用いた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加重、衝撃等の応力が負荷される部材では、負荷された応力を吸収するため、バネ、ゴム等の応力吸収部材が使用されてきた。しかし、バネは単純に応力に比例して歪みが増加するため、例えば椅子の背もたれのように人間と直接接触する部材に用いた場合には、使用者に快適な使用感(座り心地)を与えることができない。また、バネは特定の方向の応力に対して応力吸収作用を示し、バネの収縮方向以外の方向から応力が負荷された場合には、応力吸収作用を発揮することができない。
【0003】
一方、応力吸収部材として、ゴム等の弾性材料を使用する方法は、弾性材料を金属等に固定して使用する場合に強度等が問題となる。例えば、ゴム等を接着剤により金属に結合する方法は、ゴム等と金属との接着性が乏しいため、剥離等の問題が生じる。またゴム等の弾性材料を金属製のリング部材等でカシメることにより結合する方法は、リング部材により弾性材料が断裂する等の問題を生じる。
【0004】
ゴム等の弾性材料と金属を接着剤によらずに接着する方法として、トリアジンチオール誘導体を用いる接着方法が提案されている(特許文献1〜3)。この方法はトリアジンチオール誘導体のSH基を金属およびゴムと直接架橋させるため、接着剤を介する接着方法に比べ、強固に接着することができる。このトリアジンチオール誘導体を用いる方法の応用例としては、スチールラジアルタイヤ(特許文献4、5)、免震装置(特許文献6)が提案されている。しかしながら、これらの発明は、従来からのゴムと金属からなる結合部材を接着剤による結合からトリアジンチオール誘導体による結合に置き換えただけであり、これらの部材に新たな効果を付与するものではない。また、従来強度等の理由からバネ等の弾性部材を使用していた部材間の連結部材に、金属・ゴムの複合部材を使用することにより、ゴム特有の応力−歪み特性による新たな使用特性等を付与した金属・ゴム複合部材は知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−33576号公報
【特許文献2】特開昭56−88476号公報
【特許文献3】特開平9−71664号公報
【特許文献4】特開平2−106338号公報
【特許文献5】特開平2−71664号公報
【特許文献6】特開平5−318645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は金属とゴムを安定かつ強固に一体的に結合した金属・ゴム複合部材、特に部材間の連結部分等に用いた場合に優れた使用感、応力吸収特性等を奏することが可能な金属・ゴム複合部材およびそれを用いた椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題に鑑み鋭意検討した結果、支持部材とゴム部材とを一体的に結合することにより、支持部材とゴム部材が剥離することなく、強固に結合した複合部材が得られるとともに、負荷された応力対して所望する変形量を得る等の優れた使用特性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなる金属・ゴム複合部材であって、前記支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状である、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0009】
また本発明は、ゴム部材に第2の支持部材が連結している、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0010】
さらに本発明は、少なくとも一部に金属を有する第1の支持部材および第2の支持部材が、ゴム部材を介して一体的に結合されてなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材が、それぞれ前記ゴム部材との結合面を形成する結合部と、前記結合部から延在する支持部とを有し、前記結合部の結合面が金属からなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の結合部の金属と、前記ゴム部材とが結合されている、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0011】
また本発明は、第1の支持部材の前記支持部と第2の支持部材の前記支持部が、前記ゴム部材を介して同軸上または所定の角度を設けて形成されている、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0012】
また本発明は、前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により硬度を変化させて設けてあり、支持部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の硬度を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0013】
さらに本発明は、前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により体積を変化させて設けてあり、金属・ゴム複合部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の体積を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0014】
また本発明は、ゴム部材がトリアジンチオール誘導体によって支持部材に結合されている、請求項1〜6のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材に関する。
【0015】
さらに本発明は、トリアジンチオール誘導体が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Rは−OR’,−SR’,−NHR’,−N(R’)2 を表し、R’はアルキル基、アルケニル基、フェニル基、フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、又はシクロアルキル基を表し、MはH、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級、2級もしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩、又はホスホニウム塩を表す)で示される、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0016】
また本発明は、ゴム部材が、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴムおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0017】
また本発明は、支持部材が、銅、ニッケル、真鍮、鉄もしくはステンレスを少なくとも一部に有する支持部材またはニッケルもしくは銅を含有するめっきを施した支持部材である、前記金属・ゴム複合部材に関する。
【0018】
さらに本発明は、前記金属・ゴム複合部材を備えた椅子に関する。
【0019】
また本発明は、背もたれ部が前記金属・ゴム複合部材を介して取り付けられてなる、前記椅子に関する。
【0020】
さらに本発明は、前記金属・ゴム複合部材を座部、背もたれ部、枕部、およびこれらのフレーム部からなる群から選ばれた少なくとも1つに有する、前記椅子に関する。
【0021】
本発明の金属・ゴム複合部材(以下単に複合部材ともいう)は、支持部材の金属部分とゴム部材とをトリアジンチオール誘導体によって結合することにより、支持部材とゴム部材とが一体的に強固に結合した複合部材が得られる。そのため、接着剤により結合した場合に生じる剥離等の問題がない。また、本発明の複合部材は、従来強度の観点からバネ等を使用していた部材に対してゴムの使用を可能にし、それによりバネ等の弾性体では得られない応力−歪み特性が得られるという効果を奏する。そのため、例えば、本発明の金属・ゴム複合部材を椅子の背もたれ部に用いた場合には、複合部材に粘弾性体としての性質を付与することが可能であり、使用者により自然で快適な座り心地を提供することが可能となる。
【0022】
トリアジンチオール誘導体のバインダーとしてのメカニズムは明確ではないが、金属として含有するNiまたはCuがトリアジンチオール誘導体のSH基と反応してNiSまたはCu2Sを生成し、さらにトリアジンチオール誘導体の他のSH基が架橋することにより、トリアジンチオール誘導体を介して金属とゴムが結合すると考えられる。しかし、上記のメカニズムは考え得るメカニズムの一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
また、金属材料を適宜選択することにより、トリアジンチオール誘導体による接着作用をより効果的にすることも可能である。例えば、金属として銅−亜鉛合金を用いた場合、銅はSH基との反応性が高く、速やかに硫化物となるが、亜鉛は硫化が遅いため、銅の硫化反応を調節し、形成される硫化層の厚さを調整することが可能である。それにより、界面剥離をより効果的に抑制することが可能である。
【0024】
本発明に用いるトリアジンチオール誘導体による接着方法は、従来の接着剤を使用する方法とは異なり、溶剤を使用する必要がない。また、従来の接着剤を使用する方法の場合、接着工程は、まず支持部材に脱脂等の表面処理を施し、ゴム部材の結合面に第1層目の接着剤を塗布・乾燥した後、第2層目の接着剤を塗布・乾燥し、ゴム部材の結合面と支持部材の結合面を接着する、という煩雑な工程を要する。これに対し、トリアジンチオール誘導体を用いる接着方法は、例えば支持部材が真鍮等の金属からなる場合、支持部材に脱脂等の表面処理を施した後、直ちにゴム部材と支持部材の結合面同士を加熱処理等により接着することが可能である。このように、接着剤を使用する方法で必要となる塗布・乾燥工程がないため、比較的少ない工程により簡単に接着することができる。
【0025】
本発明の複合部材は、原料ゴム組成物にトリアジンチオール誘導体を添加し、金型で支持部材とともに所望する形状のゴム部材に成形・接着ができるため、接着剤が塗布できないような細密部品であっても容易に接着することが可能である。
【0026】
本発明の複合部材は、従来の接着剤を用いて接着する複合部材に比べ、耐熱接着性において同等またはそれ以上の性能を示し、耐水接着性においては格段に優れた性能を示す。そのため、本発明の複合部材を応力が負荷される環境または湿度の高い環境において繰り返し使用した場合であっても、安定して接着力を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[1]複合部材の構成材料
(1)支持部材
本発明に用いる支持部材は少なくとも一部に金属を有する。金属は特に限定されないが、好ましくは銅、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、銀、スズ等の金属またはこれらの金属を含有する合金等である。支持部材は、接着容易性、強度、耐腐食性等の観点から、特に銅、ニッケル、真鍮、鉄、ステンレス等が好ましい。
【0028】
真鍮は、銅の含有量が多くなり過ぎ、亜鉛の含有量が少なくなり過ぎると、接着界面の硫化層が厚くなり、結果として硫化層の破壊が起こり界面剥離が生じやすくなる。反対に、銅の含有量が少なくなり過ぎ、亜鉛の含有量が多くなり過ぎると、接着界面の硫化層が適切な厚さに生成され難くなり、結果として界面剥離が生じやすくなる。したがって、真鍮は銅の含有量が80%以下、亜鉛の含有量が20%以上であるのが好ましい。真鍮(銅−亜鉛合金)には、大別して(i)黄銅1種(C2600):銅70重量%+亜鉛30重量%、(ii)黄銅2種(C2700):銅65重量%+亜鉛35重量%、(iii)黄銅3種(C2801):銅60重量%+亜鉛40重量%、(iv)快削黄銅(C3604):銅60重量%+亜鉛40重量%+鉛約3重量%の4種類があるが、本発明にはいずれの真鍮も適用可能である。
【0029】
本発明に用いる支持部材は、樹脂、金属等の成形体のゴム部材との結合部にニッケルもしくは銅を含む金属めっきを施した支持部材であってもよい。めっき方法は特に制限されず、例えばNiめっきの場合、純Niめっき(Ni約100重量%)、電解Niめっき(電気Niめっき)、無電解Niめっき(Ni−P合金化学Niめっき)等であってもよい。無電解Niめっき(Ni−P合金化学Niめっき)は、高リンめっき(P:8重量%以上)、中リンめっき(P:4〜8重量%)、または低リンめっき(P:4重量%以下)を用いることができるが、リン(P)はイオウと反応せず、Niと合金化した場合Niの反応性を低下させるため、リンは反応性を低下させない程度に含有するのがよい。リンの含有量は好ましくは8重量%以下である。めっきによって形成される金属被膜の厚さは、所望する強度等の観点から適宜決定し得るが、通常1〜10μmであり、約2〜5μmが好ましい。
【0030】
上記成形体に用いる樹脂は特に制限されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、EVA(エチレンビニルアセテートコポリマー)、TPEA(ポリアミドサーモプラスチックエラストマー)、TPU(サーモプラスチックポリウレタンエラストマー)、TPS(ポリスチレンサーモプラスチックエラストマー)等を用いることができる。成形体に用いる金属は特に制限されず、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、チタン、銀、スズ等の金属またはそれらを含む合金を使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
本発明の複合部材に複数の支持部材を用いる場合、それらの材質は同一であっても異なっていてもよい。したがって、例えば2つの支持部材がゴム部材を介して一体的に結合している場合、一方の支持部材を金属とし、他方の支持部材を他の金属、またはゴム部材との結合面にめっき処理を施した樹脂とすることもできる。
【0032】
(2)ゴム部材
本発明に用いるゴム部材の原料ゴムには、ほとんど全てのゴムを使用することができるが、好ましいゴムの例としては、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、ジエン系ゴム[NR(天然ゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)等]、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、HNBR(水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等、またはこれらを含む混合物が挙げられる。
【0033】
ゴム部材は、上記のゴムに必要に応じてカーボンブラック、充填剤、軟化剤、亜鉛華、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸金属塩、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を含有することができる。
【0034】
(3)トリアジンチオール誘導体
本発明の複合部材は、下記一般式(I)で表されるトリアジンチオール誘導体を用い、金属とゴムを接着することにより結合する。
【化2】
(式中、Rは−OR’,−SR’,−NHR’,−N(R’)2 を表し、R’はアルキル基、アルケニル基、フェニル基、フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、又はシクロアルキル基を表し、MはH、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級、2級もしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩、又はホスホニウム塩を表す)で示される。
【0035】
本発明に用いられるトリアジンチオール誘導体の具体例としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノソジウム、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノカリウム、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノエタノールアミン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・オクチルアミン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・テトラブチルアンモニウム塩、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノソジウム、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・トリエチルアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・トリエチルアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノソジウム、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エタノールアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エチルアミン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・テトラブチルホスホニウム塩、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・ブチルアミン、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エチレンジアミン、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・エチレントリアミン、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノソジウム等が挙げられる。これらのトリアジンチオール誘導体は1種又は2種以上で使用することができる。
【0036】
[2]複合部材の構造
本発明の複合部材は、少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなり、支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状であればよい。
【0037】
本発明の複合部材は、1つの支持部材と1つのゴム部材が結合したものであっても、支持部材とゴム部材が結合したものが複数組合されたものであってもよい。1つの支持部材と1つのゴム部材が結合した複合部材の例としては、一方の支持部材の突出した部分を床等に固定し、他方のゴム部材を筒状体で覆った支柱等が挙げられる。
【0038】
2つの支持部材がゴム部材を介して結合した複合部材の場合、一方の支持部材を横設したパイプ材に固定し、他方の支持部材に把持部を取り付けたつり革等が挙げられる。また変形するゴムの形状を例えば図8Cに示すアーチ型や図17に示すように断面を楕円形にすることよって直列つなぎであっても折り曲げる方向によって変化量を調整することが可能である。さらに、これらの複合部材を2つ以上直列につなぎ、各ゴム部材の硬度を変えることにより可動性(変形量)を調節することもできる。本発明の複合部材は、従来のバネ等の弾性部材を使用したものと異なり、あらゆる方向からの応力に対して緩衝効果を奏することができる。
【0039】
本発明の複合部材の別の形態は、第1の支持部材と第2の支持部材とがゴム部材を介して一体的に結合されており、第1の支持部材および第2の支持部材が、それぞれゴム部材との結合面を形成する結合部と、前記結合部から延在する支持部を有し、第1の支持部材の支持部と第2の支持部材の支持部が、ゴム部材を介して同軸上または所定の角度を設けて形成されている。
【0040】
図1に示す複合部材1は、第1の支持部材2および第2の支持部材3がゴム部材4を介して結合しており、2つの支持部材2,3の結合面2c,3cは互いに平行に対面しており、第1および第2の支持部材の結合部2a,3aから延在する支持部2b,3bは同軸上に形成されている。ゴム部材と金属との結合面は支持部材の結合部を収容できるように、ゴム部材4に窪み4aが設けられていてもよい。また、結合部をさらに安定化するために、第1の支持部材2および第2の支持部材3の結合部2a,3aの端部にR加工(面取り)を施すのも好ましい。
【0041】
図2は本発明の複合部材の別の例を示す。複合部材1の2つの支持部材2,3の結合部2a,3aは、結合面に応力の方向に応じた所定の勾配が設けられており、これにより応力が負荷されたときの伸び量と、収縮量を調整できるようになっている。即ち、応力が負荷される側の結合面同士の間隔が狭く、反対側の結合面同士の間隔が広くなるように形成されており、これにより応力が負荷されたときのゴム部材の変形量を制御するようになっている。図3は一方の支持部材3の結合部3aのみに勾配を設けた複合部材1を示し、図4は一方の側の支持部材2の結合面2cが半球面状に形成されており、他方の側の支持部材3の結合面3cが球面に対し相補的に形成されている例を示す。このように複合部材の結合面の形状を調整することにより、ゴム部材の変形量を所望する動きに合うように制御することができる。
【0042】
図1〜図4に示されている複合部材は、いずれも一方の支持部材の支持部と他方の支持部材の前記支持部が、ゴム部材を介して同軸上に形成されているが、本発明の複合部材は、上記のように同軸上に形成されている場合に限られず、一方の支持部材の支持部と他方の支持部材の前記支持部が、ゴム部材を介して
所定の角度を設けて形成されている場合であってもよい。このように支持部材の支持部同士を所定の角度を設けて形成することにより、応力が負荷された場合のゴム部材の変形量を調整することができる。
【0043】
図18は本発明の複合部材のさらに別の例を示す。図18(1)に示すように、板状のゴム部材4が2つの金属2、3を介して結合しており、2つの金属2、3は、それぞれの端部から互いに同軸上になるように延設されたロッド(図示せず)がアーム部材110、210の筒状体111、211中に挿入され、固定ネジ113、213により固定されている。アーム部材110、210のアーム部112、212は両端部で互いに回転自在に留められている。このため、同軸上に配置されたアーム部材110、210の筒状体111、211に外部からねじれ応力が加わると、金属2、3により挟持されたゴム部材4に歪みが生じる。即ち、図18(2)に示すように、外部から応力が加わらない状体ではゴム部材4は水平であるが、外部から回転軸Nに対してねじれ応力が加わると、ゴム部材4は応力の方向にねじれが生じ、それにより応力を吸収することができる。この複合部材を例えば部材間の連結部に使用することにより、外部からの応力により部材を傷つけることなく、結合を維持することができる。
【0044】
[3]複合部材の製造方法
本発明の複合部材は、種々の態様により製造可能である。支持部材とゴム部材を結合する代表的な方法としては:
i)支持部材の金属部分にトリアジンチオール誘導体を含有するゴム部材を直接接着する方法、
ii)支持部材の金属部分にトリアジンチオール誘導体を含有する水溶液または有機溶媒で処理した後、トリアジンチオール誘導体を含有する、または含有しないゴム部材を接着する方法、が挙げられる。
【0045】
支持部材は接着性を向上させるため、予め脱脂、錆とり等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理方法としては酸化処理法、エボナイト法、環化ゴム法法、リン酸塩被膜法法、めっき法等が挙げられる。
【0046】
上記のi)またはii)の方法のおいて、トリアジンチオール誘導体を含有するゴム部材は、トリアジンチオール誘導体をゴムの重量に対し、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%添加して調製する。トリアジンチオール誘導体の量が少なすぎると加硫が十分に行われず、物性低下が大きくなる。一方、トリアジンチオール誘導体の量が多すぎるとスコーチタイムが速くなり、貯蔵安定性に問題を生じるおそれがある。
【0047】
トリアジンチオール誘導体は、ゴム部材の原料ゴム組成物に添加し、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の混練機で混合し、未加硫配合物とする。次いで、配合物を押出機やカレンダーロールを用いて所望するゴム部材の形状に成形した後、このものに表面処理を施した金属を張り合わせるか、または埋め込み、加熱プレスによる圧縮成形、蒸気による直接蒸気加熱、熱空気による間接加熱等の方法を用いて加硫成形する。この加硫過程でゴム部材中のトリアジンチオール誘導体が支持部材の金属と架橋し、ゴム部材と支持部材を接着することができる。接着温度は特に制限されないが、通常加硫温度の80〜250℃で行うのが好ましい。
【0048】
支持部材の結合部にめっき処理を施す場合は、例えば、鉄や樹脂(ポリフェニレンサルファイド等)により成形した支持部材のゴム部材との結合面に、電解めっきまたは無電解めっきによりNiめっきを施す。一方、所望する場合は上記と同様の方法により原料ゴム組成物にトリアジンチオール誘導体を添加し、混練した後、ゴム部材の形状に成形し、ゴム部材の結合面に上記の支持部材の結合面を接触させ、接着する。その際、加圧状態で接触させ、約80〜200℃に加熱するのが好ましい。
【0049】
[4]複合部材を用いた椅子
本発明の複合部材を椅子に適用する場合、複合部材の支持部材は強度、耐腐食性等の観点から、特に真鍮、鉄、ステンレス等の材料を用いるのが好ましい。また、複合部材のゴム部材は、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、ジエン系ゴム[NR(天然ゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)等]、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、HNBR(水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等を用いるのが好ましい。
【0050】
本発明の複合部材を備えた椅子の実施形態を、以下図5〜図12を参照しながら説明する。図5Aは、本発明の複合部材1,1’が背もたれ部6および座部5の左右の基部に取り付けられ、脚部7とともに構成される椅子の分解図である。椅子の座部5の基部5aおよび背もたれ部6の基部6aには、それぞれ複合部材の支持部を差し込めるように挿入孔5c,5c’,6c,6c’が形成されている。したがって、本発明の複合部材を椅子に取り付ける場合には、一方の支持部材の支持部を椅子の背もたれ部の基部に形成された挿入孔6c,6c’に、他方の支持部材の支持部を椅子の座部の基部に設けられた挿入孔5c,5c’に、それぞれ差し込むことにより取り付けることができる。複合部材の取り付け位置および個数は図5A示す位置に限られず、椅子に負荷された応力を所望する程度に吸収できる位置および個数で取り付けられていればよい。
【0051】
図5Bは、本発明の複合部材を適用した椅子の別の例を示す。この例では椅子の座部の後背部の左右に貫通孔15c,15c’が設けられており、この貫通孔15c,15c’に脚部17に取り付けられたフレーム部材(パイプ)17a、17a’を差し込むようになっている。複合部材を構成する一方の支持部材の支持部を椅子の背もたれ部の基部に形成された挿入孔16c,16c’に、他方の支持部材の支持部を椅子の座部に設けられた貫通孔15c,15c’に挿入されたパイプにそれぞれ差し込むことにより、複合部材1を介して背もたれ部16が椅子に取り付けられている。
【0052】
本発明の椅子に使用する複合部材の形状は上記の図1〜図4に示す例に限られず、椅子の種類等に合わせて適宜変更することが可能である。本発明の複合部材を椅子に取り付ける場合には、上記の例のように挿入孔に差し込むだけでなく、当該技術分野で知られている通常の方法により取り付けてもよい。例えば支持部材の支持部にねじ孔を形成し、同様に椅子の座部および背もたれ部の挿入孔にもねじ孔を形成し、複合部材と座部および背もたれ部を螺合することにより複合部材を椅子に固定してもよいし、また接着剤を椅子の挿入孔に注入し、複合部材を椅子に固定してもよい。
【0053】
本発明の椅子の別の実施形態を図6A〜6Dに示す。図6Aに示す例では、座部25と、座部25を支持する基部28と、基部28に接続する脚部29と、基部29に複合部材21を介して接続する背もたれ部26を有する。この例では複合部材21はゴム部材24を介して支持部材201および203が結合する第1の複合部材とゴム部材24’を介して支持部材202および203が結合する第2の複合部材が連結して構成されており、支持部材201はL字状に屈曲し、背もたれ部26を支持するフレーム部材を兼ねている。このように本発明の複合部材は椅子の構成部材と一体化していてもよい。背もたれ部26は複合部材を介して椅子の基部28に取り付けられている。
【0054】
この椅子に使用者が座ると、背もたれ部26に使用者の体重がかかり、背もたれ部26は椅子の後方に撓み、第1の複合部材および第2の複合部材に異方性の応力が働く。それにより第1の複合部材は主に椅子の後方へ歪み、第2の複合部材は主に椅子の前方へ歪む。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材24、24’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0055】
図6Bに示す例では、座部35と、座部35を支持する基部38と、基部38に接続する脚部39と、背もたれ部36とを有する。椅子の背もたれ部36を支持するL字状に屈曲した支持部材301は座部35を支持する支持部材304とゴム部材34を介して結合し、第1の複合部材を構成している。また背もたれ部36を支持する支持部材301は、支持部材301に結合する支持部材302および基部38に結合する支持部材303によりゴム部材34’を介して椅子の基部38に接続しており、支持部材302、303およびゴム部材34’により第2の複合部材を構成している。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部26に使用者の体重がかかり、その応力により第1の複合部材および第2の複合部材は歪みを生じる。この例では第1の複合部材は応力により主に軸線方向の引っ張りによる歪みを生じ、第2の複合部材は応力により主に椅子の後方への歪みを生じる。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材34、34’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0056】
図6Cに示す例は、座部45と、座部45を支持する基部48と、基部48に接続する脚部49と、背もたれ部46とを有する。背もたれ部46を支持するL字状に屈曲した支持部材401の端部はゴム部材44を介して支持部材402に接続し、第1の複合部材を構成しており、支持部材402は椅子の基部48に接続している。また支持部材401は支持部材404に取り付けられた保持部材406により保持されており、背もたれ部46は支持部材401、402および保持部材406により椅子の本体に固定されている。一方、座部45を支持する支持部材404は、座部45の前部においてゴム部材44’を介して支持部材405と結合し、第2の複合部材を構成している。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部26に使用者の体重がかかり、その応力により第1の複合部材に歪みを生じる。この場合、第1の複合部材には支持部材401と保持部材406との結合部を支点とする応力が働き、第1の複合部材のゴム部材44は主に上方に湾曲するように歪む。また、使用者の脚の重みにより第2の複合部材を構成するゴム部材44’が下方に歪み、それにより支持部材405とともに座部45の前部が下方へ撓むようになっている(この例では座部45は可撓性の素材で構成されている)。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材44、44’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0057】
図6Dに示す例は、座部55と、座部55を支持する基部58と、基部58に接続する脚部59と、背もたれ部56とを有する。背もたれ部56を支持する屈曲した椅子のフレーム部材501は椅子の基部58に接続するとともに支持部材502により支持されており、支持部材502はゴム部材54を介して座部55を支持する支持部材504と接続している。支持部材502、504およびゴム部材54は第1の複合部材を構成している。また、V字状の支持部材503、503’は基部58に取り付けられており、V字状の支持部材503および503’はゴム部材54’を介して結合し、第2の複合部材を構成している。この椅子に使用者が座ると、使用者の体重により第2の複合部材のゴム部材54’が歪み、それによりV字状の支持部材503および503’が主に外側に撓み、使用者を支えることができる。一方、背もたれ部56に加わった応力は支持部材502を介してゴム部材54に作用し、第1の複合部材のゴム部材54が歪むことにより背もたれ部56が後方に撓み、使用者を支えることができる。なお、この例では複合部材の支持部材は椅子の構成部材(フレーム部材)を兼ねており、フレーム部材と一体化した複合部材として示したが、ゴム部材54、54’の代わりに図1〜図4等に示す本発明の複合部材を直接装着してもよい。
【0058】
図6A〜6Dに示す例はいずれもキャスター付の回転椅子になっているが、これに限定されるものではなく、他の椅子にも同様に適用することができる。また、これらの椅子において、フレーム部を構成するフレーム部材の形状はパイプ状であっても、椅子の幅またはその一部の幅を有する板状等であってもよい。したがって、本発明の複合部材の支持部材およびゴム部材の形状もフレーム部材の形状と同様に円筒状であっても、板状等であってもよい。さらに、これらの例に示された複合部材は適宜互いに入れ替え、または組合せて使用してもよい。
【0059】
本発明の椅子のさらに別の実施形態を図7A〜Bに示す。図7Aは座部65、背もたれ部66およびフレーム部67を有し、フレーム部67は左右の肘掛部とそれに続く脚部が一体的に構成されており、座部65および背もたれ部66は、それぞれ左右の両端部においてフレーム部67と接続している。また座部65の底部には支持部材が設けられており、フレーム部67と接続している。フレーム部67の肘掛部は使用者が肘を乗せる高さでそのまま延設され、背もたれ部66に接続している。フレーム部67の肘掛部には背もたれ部66との接続部に至る間に本発明の複合部材61が挟まれている。即ち、背もたれ部66は複合部材61を介して椅子に取り付けられている。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部66に使用者の体重がかかり、その応力により複合部材に歪みを生じ、背もたれ部66に複合部材の歪みに応じた撓みを与えることができる。なお、複合部材61の代わりにゴム部材を用い、フレーム部67を支持部材とし、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0060】
図7Bは座部75、背もたれ部76およびフレーム部77を有し、フレーム部77は左右の肘掛部とそれに続く脚部が一体的に構成されており、座部75および背もたれ部76は、それぞれ左右の両端部においてフレーム部77と接続している。フレーム部77の端部には本発明の複合部材71が接続し、複合部材71の他端部はフレーム部材701と接続している。背もたれ部76は保持部材701およびフレーム部77の保持部702においてフレーム部67に接続し、保持されている。この椅子に使用者が座ると、背もたれ部76に使用者の体重がかかり、その応力により複合部材71に歪みを生じ、背もたれ部66に複合部材の歪みに応じた撓みを与えることができる。なお、複合部材71の代わりにゴム部材を用い、フレーム部77を支持部材とし、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0061】
本発明の椅子のさらに別の実施形態を図8A〜Cに示す。図8Aは座部85、背もたれ部86、86’およびフレーム部87を有し、背もたれ部86、86’の間にはゴム部材84が挟まれており、本発明の複合部材を構成している。この場合、椅子の少なくともゴム部材84との結合部は上述の金属(真鍮、鉄、ステンレス、ニッケルもしくは銅を含有するめっき等)で形成されている。本発明はこの例のようにゴム部材84を直接挿入する場合に限られず、例えば図8B(2)に示すように、樹脂等からなる椅子の背もたれ部86、86’の間に本発明の複合部材81を挟んで構成されていてもよい。複合部材81は、例えば図8B(3)に示すように金属製の支持部材82、83がゴム部材84を介して結合することにより構成される。複合部材81は周囲をゴム製の筒状カバー89で覆われている。支持部材82、83にはそれぞれ椅子の背もたれ部86、86’を受け入れることができるように凹部が形成されている。したがって、椅子を組み立てる際には、背もたれ部86、86’の端部を複合部材81の支持部材82、83の凹部の幅にあわせて加工し、背もたれ部86、86’の端部をそれぞれ複合部材81の支持部材82、83の凹部に差し込めばよい。本明細書においては、背もたれ部に複合部材を有する場合には、背もたれ部と座部との間に複合部材が設けられている場合をも含む。なお、図8Aに示す例では、複合部材を斜め対称に装着することにより、背部が円弧状である人体の形状に合わせ、より自然な撓みが得られるようにしてある。さらにゴムの体積を変化させることにより、複合部材の変形量を調整することもできる。また、背もたれ部の一部またはすべてが図8Cに示すアーチ状の複合部材で形成されていてもよい。アーチ状にすることにより複合部材が使用者の背の形状に合わせてたわみ、使用者によりフィット感を与えることができる。
【0062】
本発明の椅子のさらに別の実施形態を図9〜10に示す。図9に示す例は背もたれ部に本発明の複合部材が挿入されており、複合部材は使用者の体重による応力を主に吸収する複合部材81以外に、使用者の肩回しを容易にするための複合部材81’が挿入されている。したがって、例えば図9に示すように使用者が座ったままやや後方のものをとるような場合、肩回しの動きに沿って複合部材81’が歪み、それによって背もたれ部86のウィング板背もたれ部86が後方に撓むことにより、肩回しの動きを容易にすることができる。なお、複合部材81、81’の代わりにゴム部材を用い、背もたれ部86、86’の少なくともゴム部材との結合部を支持部材とし、例えば結合面にニッケルもしくは銅を含むめっきを施してゴム部材と結合させ、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0063】
図10に示す例は、背もたれ部96に枕部99が取り付けられている、複合部材は背もたれ部に挿入された複合部材91以外に、枕部99に挿入された複合部材91’が設けられている。枕部99に使用者の頭が置かれると、その応力により複合部材91’が歪み、それにより枕部99が撓み使用者に快適感を与えることができる。本明細書においては、枕部99に複合部材を有する場合には、枕部99と背もたれ部96の間に複合部材を有する場合を含む。なお、複合部材91、91’の代わりにゴム部材を用い、背もたれ部96および枕部99の少なくともゴム部材との結合部を支持部材とし、例えば結合面にニッケルもしくは銅を含むめっきを施してゴム部材と結合させ、椅子の構成部材と一体化して本発明の複合部材を構成してもよい。
【0064】
図11に示す例は、本発明の複合部材を適用したソファであり、ソファの背もたれ部316は複合部材311を介して座部315に接続している。ソファのそれ以外の部分は通常のソファと同じであってよく、例えばソファの背もたれ部は金属フレーム316a、板材316b、ウレタン等の弾性部材316c、上張り材316d等により構成される。複合部材311の形状、個数は特に制限されず、例えば上記の複合部材を適宜使用することができる。
【0065】
図12は、ゴム部材の硬度がゴム部材の回転軸の周囲の角度により変えて設けられている場合を示す。この例では、ゴム部材154の基材となるゴム154a以外に横断面の180°方向に硬度の異なるゴム154a,154bが用いられており、ゴム部材154を含む複合部材151は、例えば椅子の背もたれ部と座部との間に回転自在に取り付けることができる。したがって、複合部材151を回転軸の周りに回転させることにより、ゴム部材の応力の作用する側(体重のかかる側)のゴムの硬度を調節できるようになっている。例えば、応力の作用する側を軟質ゴムにすることにより、背もたれ部の撓みを大きくすることができ、またゴム部材を回転軸の周りに180°回転させ、応力の作用する側を硬質ゴムにすることにより背もたれ部の撓みを小さくすることができる。なお、ゴムの配置はこの例に限られず、任意の角度(例えば90°)ごとにゴムの硬度を変えて配置することができる。
【0066】
また、上記の背もたれ部の撓みの調節はゴム部材の体積を回転軸の周囲の角度により変化させて設けることによっても行うことができる。即ち、ゴム部材を、ゴム部材の回転軸の周囲の角度により体積を変化させて設け、金属・ゴム複合部材に作用する応力に対して、回転軸の回転角度を調整することにより、ゴム部材の応力の作用する側にあるゴム部材の体積を調整し、それによりゴム部材の変形量を調節することもできる。
【0067】
上記のゴム部材の回転軸の周囲の角度によりゴムの硬度または体積を調整し、それによりゴム部材の変形量を調節する方法は、本発明のすべての椅子に適宜適用することができる。また、本発明の椅子は、複合部材を挿入する箇所や個数を適宜選択することによって所望する撓みを付与することもできる。本発明の複合部材の形状は、上記の例に限られず適用する椅子の形状に応じて適宜変更することが可能である。例えば、ゴム部材を背もたれ部の幅に合わせた長さに成形して、背もたれ部の幅全体で支持してもよい。
【0068】
本発明の複合部材は、椅子の座部、背もたれ部、枕部等に装着することができるが、これらに直接装着する場合にかぎられず、座部、背もたれ部、枕部等を支持するフレーム部に装着してもよい。
【0069】
以上、本発明を実施形態により説明したが、これらの実施形態は本発明の例示にすぎず、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、これらの実施形態は適宜組合せることが可能であり、また公知の種々の椅子(例えばリクライニング機能付の椅子等)に適用することも可能である。
【実施例】
【0070】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0071】
実施例1
100gのNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)に50gのカーボンブラック(充填材)と10gのナフテン系オイル(軟化剤)、1gのステアリン酸(加硫促進助剤)、1.5gの硫黄(加硫剤)と0.5gのテトラメチルチウラムモノスルフィド(加硫剤)、および1gのトリアジントリチオールモノナトリウム塩(トリアジンチオール誘導体)を添加した原料ゴム組成物をオープンロールで混練した後、3cmの厚さにシート成形してゴム部材の基材とした。一方、図19に示すように厚さ2mmの板状に成形した真鍮製の支持部材2、3の結合面を脱脂剤で洗浄した後、処理した支持部材の結合面を幅10mm、厚さ2mmにカットしたゴム部材4の結合面と張り合わせ、160℃で15分間加熱し、加熱圧縮成形により支持部材2、3とゴム部材4を接着した。
【0072】
得られた金属・ゴム複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を以下の方法により調べた。
耐熱接着性:80℃に加熱したギヤ老化式オーブン(空気置換率3回/時間)の中に接着した複合部材を入れて500時間まで連続的に加熱し、100時間毎の接着力を90°剥離試験により評価した。
耐水接着性:水道水が入った容器の中に接着させた複合部材を沈めて密封し、80℃に加熱したギヤ老化式オーブンを用いて500時間まで連続的に加熱し、100時間毎の接着力を90°剥離試験により評価した。
結果を図13および図14に示す。
【0073】
実施例2
実施例1と同様の方法によりトリアジンチオール誘導体を含有するゴム部材を作製した。図19に示す形状に成形したSPCC(JIS G 3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯)からなる鉄製の支持部材の結合面をNiめっき(電解光沢ニッケルメッキ法)により、厚さ2μmのニッケル層を形成した。得られたゴム部材の結合面に支持部材の結合面を張り合わせ、160℃で15分間、200kgf/cm2の圧力をかけて接着した。得られた金属・ゴム複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を実施例1と同様の方法により試験した。結果を図15および図16に示す。
【0074】
比較例1
実施例1と同様にしてゴム部材および真鍮製の支持部材を作製し、ゴム部材の結合面にケムロック205(接着剤、Lord Far East Incorporated社製)を塗布・乾燥し、同様の操作をもう一度繰り返した後、ゴム部材および支持部材の結合面同士を張り合わせ、15分間、200kgf/cm2の圧力をかけて接着した。得られた複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を実施例1と同様の方法により試験した。結果を図13および図14に示す。
【0075】
比較例2
実施例2と同様にしてゴム部材およびNiめっきを施した鉄製(SPCC)の支持部材を作製し、ゴム部材の結合面にケムロック205(接着剤)を塗布・乾燥し、同様の操作をもう一度繰り返した後、ゴム部材および支持部材の結合面同士を張り合わせ、15分間、200kgf/cm2の圧力をかけて接着した。得られた複合部材の耐熱接着性および耐水接着性を実施例2と同様の方法により試験した。結果を図15および図16に示す。
【0076】
(評価)
図13〜図16から明らかなように、支持部材として真鍮製および鉄製のいずれの支持部材を用いたときも、トリアジンチオール誘導体により接着する本発明の複合部材は、接着剤により接着する比較例の複合部材に比べ、耐熱接着性および耐水接着性において、高い剥離強度を有することがわかる。特に接着剤により接着した場合には、耐水接着性において顕著に劣り、真鍮製の支持部材により直接接着した比較例1の複合部材は、100時間の耐水接着性試験でほぼすべて剥離した。これは接着剤に含まれる有機溶剤が膨潤してゴムと接着剤との接着強度が低下するとともに、金属と接着剤との結合が加水分解するためであると考えられる。これに対し、本発明の複合部材はトリアジンチオール誘導体により接着しており、ゴムと金属の間に緻密な金属硫化物層が形成され、水や有機溶媒が侵入し難く、結合が加水分解によって切断されることもないため、強固な結合が得られると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の金属・ゴム複合部材の一例を示す横断面図である。
【図2】本発明の金属・ゴム複合部材の別の例を示す横断面図である。
【図3】本発明の金属・ゴム複合部材のさらに別の例を示す横断面図である。
【図4】本発明の金属・ゴム複合部材のさらに別の例を示す横断面図である。
【図5A】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の一例を示す分解図である。
【図5B】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の別の例を示す分解図である。
【図6A】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)の一例を示す側面図である。
【図6B】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)の別の例を示す側面図である。
【図6C】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)のさらに別の例を示す側面図である。
【図6D】本発明の金属・ゴム複合部材を適用した椅子(回転椅子)のさらに別の例を示す側面図である。
【図7A】本発明の金属・ゴム複合部材をフレーム部に適用した椅子の一例を示す斜視図である。
【図7B】本発明の金属・ゴム複合部材をフレーム部に適用した椅子の別の一例を示す斜視図である。
【図8A】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の一例を示す斜視図である。
【図8B】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子の別の例を示す図であり、(1)は複合部材が装着された状態を示す斜視図であり、(2)は複合部材の装着部分を示す分解図であり、(3)は複合部材の構成を示す部分透視図である。
【図8C】アーチ状の形状を有する本発明の金属・ゴム複合部材を示す概略図である。
【図9】本発明の金属・ゴム複合部材を背もたれ部に適用した椅子のさらに別の例を示す図である。
【図10】本発明の金属・ゴム複合部材を枕部に適用した椅子の一例を示す斜視図である。
【図11】本発明の金属・ゴム複合部材をソファに適用した一例を示す斜視図である。
【図12】ゴム部材の硬度がゴム部材の回転軸の周囲の角度により変えて設けられている金属・ゴム複合部材の断面を示す図である。
【図13】実施例1の真鍮−NBR複合部材と比較例1の真鍮−NBR複合部材との耐熱接着性を比較したグラフである。
【図14】実施例1の真鍮−NBR複合部材と比較例1の真鍮−NBR複合部材との耐水接着性を比較したグラフである。
【図15】実施例2の真鍮−NBR複合部材と比較例2の真鍮−NBR複合部材との耐熱接着性を比較したグラフである。
【図16】実施例2の真鍮−NBR複合部材と比較例2の真鍮−NBR複合部材との耐水接着性を比較したグラフである。
【図17】ゴム部材の断面が楕円形状の本発明の金属・ゴム複合部材の一例を示す斜視図である。
【図18】本発明の金属・ゴム複合部材のさらに別の例を示す図であり、(1)は斜視図であり、(2)は外部からの応力の有無によるゴム部材の変形量を示す概略断面図である。
【図19】実施例1および2で使用した本発明の金属・ゴム複合部材の試験片を示す概略図である。
【符号の説明】
【0078】
1、21、61、71、81、91・・・金属・ゴム複合部材
2、82、3、83・・・支持部材
2a、3a・・・結合部
2b、3b・・・支持部
2c、3c・・・結合面
4、24、34、44、54、84・・・ゴム部材
5、15、25、35、45、55、65、75、85・・・座部
6、16、26、36、46、56、66、76、86、96・・・背もたれ部
7、17・・・脚部
99・・・枕部
201、202、203、301、302、303、401、402、404、405、502、503、504・・・支持部材(フレーム部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなる金属・ゴム複合部材であって、前記支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状である、前記金属・ゴム複合部材。
【請求項2】
ゴム部材に第2の支持部材が連結している、請求項1に記載の前記金属・ゴム複合部材。
【請求項3】
少なくとも一部に金属を有する第1の支持部材および第2の支持部材が、ゴム部材を介して一体的に結合されてなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材が、それぞれ前記ゴム部材との結合面を形成する結合部と、前記結合部から延在する支持部とを有し、前記結合部の結合面が金属からなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の結合部の金属と、前記ゴム部材とが結合されている、請求項1または2に記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項4】
第1の支持部材の前記支持部と第2の支持部材の前記支持部が、前記ゴム部材を介して同軸上または所定の角度を設けて形成されている、請求項3に記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項5】
前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により硬度を変化させて設けてあり、支持部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の硬度を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項6】
前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により体積を変化させて設けてあり、金属・ゴム複合部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の体積を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項7】
ゴム部材がトリアジンチオール誘導体によって支持部材に結合されている、請求項1〜6のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項8】
トリアジンチオール誘導体が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Rは−OR’,−SR’,−NHR’,−N(R’)2 を表し、R’はアルキル基、アルケニル基、フェニル基、フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、又はシクロアルキル基を表し、MはH、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級、2級もしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩、又はホスホニウム塩を表す)で示される、請求項7に記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項9】
ゴム部材が、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴムおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜8のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項10】
支持部材が、銅、ニッケル、真鍮、鉄もしくはステンレスを少なくとも一部に有する支持部材またはニッケルもしくは銅を含有するめっきを施した支持部材である、請求項1〜9のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材を備えた椅子。
【請求項12】
背もたれ部が請求項1〜10のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材を介して取り付けられてなる、請求項11に記載の椅子。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材を座部、背もたれ部、枕部、およびこれらのフレーム部からなる群から選ばれた少なくとも1つに有する、請求項12に記載の椅子。
【請求項1】
少なくとも一部に金属を有する支持部材とゴム部材とが一体的に結合されてなる金属・ゴム複合部材であって、前記支持部材がゴム部材との結合部を有し、該結合部から突出する形状である、前記金属・ゴム複合部材。
【請求項2】
ゴム部材に第2の支持部材が連結している、請求項1に記載の前記金属・ゴム複合部材。
【請求項3】
少なくとも一部に金属を有する第1の支持部材および第2の支持部材が、ゴム部材を介して一体的に結合されてなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材が、それぞれ前記ゴム部材との結合面を形成する結合部と、前記結合部から延在する支持部とを有し、前記結合部の結合面が金属からなり、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の結合部の金属と、前記ゴム部材とが結合されている、請求項1または2に記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項4】
第1の支持部材の前記支持部と第2の支持部材の前記支持部が、前記ゴム部材を介して同軸上または所定の角度を設けて形成されている、請求項3に記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項5】
前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により硬度を変化させて設けてあり、支持部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の硬度を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項6】
前記ゴム部材は、前記ゴム部材の回転軸の周囲の角度により体積を変化させて設けてあり、金属・ゴム複合部材に作用する応力に対して、前記ゴム部材の回転軸の回転角度を調整することにより、前記応力の作用方向にある前記ゴム部材の体積を調整し、もってゴム部材の変形量を調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項7】
ゴム部材がトリアジンチオール誘導体によって支持部材に結合されている、請求項1〜6のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項8】
トリアジンチオール誘導体が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Rは−OR’,−SR’,−NHR’,−N(R’)2 を表し、R’はアルキル基、アルケニル基、フェニル基、フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、又はシクロアルキル基を表し、MはH、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級、2級もしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩、又はホスホニウム塩を表す)で示される、請求項7に記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項9】
ゴム部材が、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴムおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜8のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項10】
支持部材が、銅、ニッケル、真鍮、鉄もしくはステンレスを少なくとも一部に有する支持部材またはニッケルもしくは銅を含有するめっきを施した支持部材である、請求項1〜9のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材を備えた椅子。
【請求項12】
背もたれ部が請求項1〜10のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材を介して取り付けられてなる、請求項11に記載の椅子。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の金属・ゴム複合部材を座部、背もたれ部、枕部、およびこれらのフレーム部からなる群から選ばれた少なくとも1つに有する、請求項12に記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−126495(P2007−126495A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318113(P2005−318113)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(500191484)有限会社デザイン・リサーチネット (1)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(500191484)有限会社デザイン・リサーチネット (1)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】
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