説明

金属加工油組成物

【課題】加工性能が高いとともに、引火点が高い金属加工油組成物を提供する。
【解決手段】本発明の金属加工油組成物は、40℃動粘度が3〜35mm/sであり、引火点が200℃以上である潤滑油基油に、組成物全量基準で、下記(A)成分を0.5〜20質量%、下記(B)成分を0.1〜30質量%配合したことを特徴とする。
(A)樹脂酸および/またはその誘導体
(B)極圧剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種金属の切削、研削、圧延、絞り、および鍛造等の際に用いられる金属加工油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工油としては、鉱油や合成油を基油として、これに種々の添加剤を配合したものが広く用いられている。例えば、基油に過塩基性アルカリ土類金属スルホネート、過塩基性アルカリ金属スルホネート、および硫黄系極圧剤を配合して加工性を高めた例が知られている(特許文献1参照)。また、金属加工油としては、加工性だけでなく引火点が高いことも要求されており、基油に窒化ホウ素を配合することで、引火点を高めた例が知られている(特許文献2参照)。さらに、基油に樹脂酸ビズマス塩と硫黄−リン系極圧剤を配合することで加工性を維持しながら引火点を高めている例も知られている(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−226795号公報
【特許文献2】特開2007−297528号公報
【特許文献3】特開2002−105479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された金属加工油では、加工性は高いものの引火点が十分に高くない。また、特許文献2に記載された金属加工油は、引火点こそ高いものの加工性能が低い。特許文献3に記載された金属加工油も、引火点は高いが、加工性能は不十分である。
そこで本発明は、加工性能が高いとともに、引火点が高い金属加工油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のような金属加工油組成物を提供するものである。
〔1〕40℃動粘度が3〜35mm/sであり、引火点が200℃以上である潤滑油基油に、組成物全量基準で、下記(A)成分を0.5〜20質量%、下記(B)成分を0.1〜30質量%配合したことを特徴とする金属加工油組成物。
(A)樹脂酸および/またはその誘導体
(B)極圧剤
〔2〕上記〔1〕に記載の金属加工油組成物において、
前記(A)成分がテルペン酸および/またはその誘導体であることを特徴とする金属加工油組成物。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の金属加工油組成物において、前記(B)成分が硫黄を含む化合物および/またはリンを含む化合物であることを特徴とする金属加工油組成物。
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の金属加工油組成物において、該潤滑油組成物が下記(C)および(D)の性状を有することを特徴とする金属加工油組成物。
(C)40℃動粘度:4〜40mm/s
(D)引火点:200℃以上
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の金属加工油組成物が切削および/または研削加工用であることを特徴とする金属加工油組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属加工油組成物によれば、切削や研削等における加工性能が高いとともに、引火点が高く、火災の危険性が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の金属加工油組成物(以下、「本組成物」ともいう)について、実施形態を詳細に説明する。
本組成物は、40℃動粘度が3〜35mm/sであり、引火点が200℃以上である潤滑油基油に、組成物全量基準で、下記(A)成分を0.5〜20質量%、下記(B)成分を0.1〜30質量%配合したことを特徴とする。
(A)樹脂酸および/またはその誘導体
(B)極圧剤
以下、これらの各成分について説明する。
【0008】
〔基油〕
本組成物に用いられる基油としては、特に制限はないが、代表例としては、鉱油や合成油が挙げられる。鉱油としては、様々なものを使用することができる。このような鉱油としては、種々のものを挙げることができる。例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、あるいはナフテン基系原油を常圧蒸留するか常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、またはこれを常法にしたがって精製することによって得られる精製油、例えば、溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油等を挙げることができる。
【0009】
また、合成油としては、エステル、ポリ−α−オレフィン、オレフィンコポリマーアルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
これらの中で、エステルとして具体的には、例えば、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸オクチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、トリメチロールプロパンとn−C8酸とのトリエステル、ペンタエリスリトールとn−C8酸とのテトラエステル等が挙げられる。ポリ−α−オレフィンとしては、例えば、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等が挙げられる。オレフィンコポリマーとしては、例えば、エチレン−プロピレンコポリマーなどが挙げられる。
これらの合成油の中では、低粘度かつ高引火点の観点よりエステルが好適に用いられる。
【0010】
本発明においては、基油として、上記鉱油を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記合成油を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらには、鉱油1種以上と合成油1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
基油の40℃における動粘度は、3〜35mm/sであることが必要であり、好ましくは、4〜30mm/sである。基油の40℃動粘度が3mm/s未満では、潤滑油組成物とした場合に引火点が低く、安全上好ましくなく、また、35mm/sを超えると、潤滑油組成物がワーク(被加工物)に付着して持ち去られる量が多くなり、また、給油のための電力消費が大きくなり、経済性の点で好ましくない。
ここで、基油の引火点は200℃以上であることが必要である。基油の引火点が200℃未満では、潤滑油組成物としたときでも引火点を高くできないため、使用上の制限が多くなる。
【0011】
〔(A)成分〕
本組成物には、(A)成分として樹脂酸および/またはその誘導体が配合される。
ここで、樹脂酸とは、天然樹脂中に存在する有機酸のことであり、このような有機酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸などのテルペン酸が挙げられる。また、(A)成分としては、エステルのような誘導体であってもよい。
本発明における(A)成分としては、ロジンなど樹脂酸を主成分とする物質や、トール油など樹脂酸を一成分として含む物質を使用することが出来る。これらの中でも、ロジンやアビエチン酸が加工性効果向上の点で好適である。
本組成物における(A)成分の配合量は、組成物全量基準で0.5〜20質量%であり、好ましくは0.7〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。(A)成分の配合量が0.5質量%未満では、金属加工時における加工性に劣る。一方、(A)成分の配合量が20質量%を超えると組成物の粘度が高くなりすぎて好ましくない。
【0012】
〔(B)成分〕
本組成物には、(B)成分として極圧剤が配合される。極圧剤としては、硫黄を含む化合物および/またはリンを含む化合物が好ましく用いられる。例えば、硫黄系極圧剤(硫黄単体を含む)、リン系極圧剤、硫黄および金属を含む極圧剤、リンおよび金属を含む極圧剤が挙げられる。具体的には、活性あるいは不活性のポリサルファイド、硫黄、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物、およびリン酸エステル類などを挙げることができる。
これらの極圧剤の中では、極圧性の点で、活性あるいは不活性のポリサルファイド、硫黄およびリン酸エステル類が好ましい。
【0013】
(B)成分としてのポリサルファイドとしては、例えば下記式のようなジアルキルポリサルファイドが挙げられる。
−S−R
上記式中、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を示し、それらはお互いに同一でも異なってもよい。xは2〜10の整数で表される化合物である。このxは3〜9が好ましく、3〜7が特に好ましい。xが2以上であると、極圧性を向上させる効果が期待できる。また、xが10以下であると、金属への腐食性を低減することが期待できる。
およびRの具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。上記式における硫黄含有量は、極圧性の観点より、化合物基準で5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。
【0014】
(B)成分としてのリン酸エステル類には、リン酸エステル 、酸性リン酸エステル 、亜リン酸エステル 、酸性亜リン酸エステル 、およびそれらのアミン塩が挙げられる。
リン酸エステル としては、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、トリアルキルアリールホスフェート,トリアリールアルキルホスフェート,トリアルケニルホスフェート等があり、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェート等を挙げることができる。
【0015】
酸性リン酸エステル としては、例えば2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート等を挙げることができる。
【0016】
亜リン酸エステル としては、例えばトリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト等を挙げることができる。
酸性亜リン酸エステル としては、例えばジブチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジステアリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等を挙げることができる。
【0017】
上述した(B)成分(極圧剤)は、1種を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、これら極圧剤の配合量は、配合効果および経済性の点から、組成物全量基準で、0.1〜30質量%であり、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%である。(B)成分の配合量が0.1質量%未満では、金属加工時における加工性に劣る。一方、(B)成分の配合量が30質量%を超えると組成物の粘度が高くなりすぎるとともに金属への腐食性が高くなりすぎて好ましくない。
【0018】
このような本組成物は、基油として特定の粘度を有し、また引火点の高いものが用いられ、さらに所定の(A)成分および(B)成分が所定量配合されているため、切削・研削等の金属加工時の潤滑性に優れているとともに、火災の危険性が少ない。
また、本組成物では、下記(C)および(D)の性状を有することが、潤滑性の観点や火災の危険性を下げる点でさらに好ましい。
(C)40℃動粘度:4〜40mm/s
(D)引火点:200℃以上
【0019】
〔他の添加剤〕
本発明の金属加工油組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することで好適に得ることができる。
これらの添加剤としては、油性剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、および消泡剤などを挙げることができる.これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
油性剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸や脂肪酸金属塩などの脂肪酸化合物、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、グリセライドなどのエステル化合物、脂肪族アミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。脂肪酸としては、オレイン酸やラウリン酸などが挙げられる。
油性剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.1〜30質量%程度であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0021】
酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤を使用することができる。これらの酸化防止剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
【0022】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系化合物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、組成物全量基準で、0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.03〜5質量%である。
【0023】
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステルなどを挙げることができる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.05〜5質量%である。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.01〜1質量%である。
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリアクリレートなどを挙げることができる。これらの消泡剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.0005〜0.01質量%程度である。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〜5、比較例1〜8〕
表1〜2に示す配合組成の潤滑油組成物(試料油)を調製した。以下に、用いた基油および添加剤について示す。
<基油>
パルミチン酸2−エチルヘキシル:40℃動粘度8.2mm/s、引火点:220℃
鉱油:40℃動粘度8.3mm/s、引火点:160℃
【0026】
<樹脂酸:(A)成分>
不均化ロジン:荒川化学工業製 KR−614
水添ロジン:荒川化学工業製 KR−615
白菊ロジン:荒川化学工業製 白菊ロジン
【0027】
<極圧剤:(B)成分>
ポリサルファイドA:日本ルブリゾール製 LUBRIZOL 5340L
ポリサルファイドB:Elf Atochem社製 TPS20
硫黄:細井化学工業製 粉末硫黄
硫化油脂:Deo Add製 MSX18
リン酸エステル:大日本インキ化学製 TCP
【0028】
<油性剤>
下記の脂肪酸を使用した。
オレイン酸(関東化学製)
ラウリン酸(関東化学製)
【0029】
そして、これら各試料油につき、40℃動粘度および引火点を測定するとともに、下記の条件で突切加工時の切削抵抗を測定した。結果を表1〜2に示す。
<旋盤による突切加工実験条件>
加工機 :マザックNC旋盤QT―15型
被削材 :SCM435、φ21.5
工具 :三菱マテリアル突っ切りチップDGJ30CE(材質:UTi20T)、刃幅3mm 切削速度:10m/min
送り :0.001mm/rev(旋盤軸方向への切込)
<評価方法>
加工開始時の切削抵抗(主分力、N)
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

〔評価結果〕
実施例1〜5の試料油は、低粘度でありながら引火点が高い。それ故、火災の危険が少ないだけでなく、潤滑油として使用したときの消費量も減らせる。そして、突切加工時の切削抵抗が低いことから、加工性に非常に優れることがわかる。一方、(A)成分と(B)成分のいずれか一方しか配合されていない比較例1〜2、4〜7の試料油では、突切加工時の切削抵抗が高く、加工性が悪いことがわかる。また、比較例5、6の試料油では、油性剤として脂肪酸が配合されているものの、加工性は十分ではない。比較例3の試料油は、(A)成分と(B)成分の双方が配合されているものの、(A)成分の配合量が少ないため加工性が十分ではない。比較例8の試料油では、突切加工時の切削抵抗が低く、加工性はよいものの、基油として用いた鉱油の引火点が低いため、試料油として引火点が低くなってしまうことが問題である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の金属加工用潤滑油組成物は、切削や研削等の金属加工に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃動粘度が3〜35mm/sであり、引火点が200℃以上である潤滑油基油に、組成物全量基準で、下記(A)成分を0.5〜20質量%、下記(B)成分を0.1〜30質量%配合したことを特徴とする金属加工油組成物。
(A)樹脂酸および/またはその誘導体
(B)極圧剤
【請求項2】
請求項1に記載の金属加工油組成物において、
前記(A)成分がテルペン酸および/またはその誘導体であることを特徴とする金属加工油組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属加工油組成物において、
前記(B)成分が硫黄を含む化合物および/またはリンを含む化合物であることを特徴とする金属加工油組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属加工油組成物において、
該潤滑油組成物が下記(C)および(D)の性状を有することを特徴とする金属加工油組成物。
(C)40℃動粘度:4〜40mm/s
(D)引火点:200℃以上
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の金属加工油組成物が切削および/または研削加工用であることを特徴とする金属加工油組成物。

【公開番号】特開2009−197183(P2009−197183A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42793(P2008−42793)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】