説明

金属加工用油剤及び金属の加工方法

【課題】切削性、接着剤との適合性(接着性)及びアルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性に優れた水溶性金属加工用油剤及びこれを用いた金属の加工方法を提供すること。
【解決手段】(A)ヒドロキシ酸、その重縮合物、及びヒドロキシ酸又はその重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、酸価が60〜360mgKOH/gである化合物、
(B)脂環式基又は芳香族環式基を有するアミン、及び
(C)基油
を含有する金属加工用油剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工、研削加工、転造加工、プレス加工、塑性加工等の金属加工に広く適用できる金属加工用油剤、その金属加工用油剤を用いた金属の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、切削・研削加工等の金属加工において切削・研削油剤が使用されている。切削・研削油剤の最も重要な機能としては潤滑作用が挙げられ、この作用により加工に用いられる工具の寿命延長、被加工金属の仕上げ面精度の向上、生産能率の向上等、生産性を向上する事ができる。また、時代と共に金属加工油剤の品質の向上が求められるようになり、加工性以外にも様々な性能が要求されている。例えば、自動車部品の製造工程において金属加工部品を組み立てる際に使用する接着剤との適合性(接着性)があげられる。燃費向上のため自動車の軽量化が進む中、加工材料としてアルミニウムの量が増えており、金属加工油剤のアルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性も求められている。
【0003】
水溶性金属加工油としては、例えば、特定のヒドロキシ脂肪酸化合物、C8〜20の脂肪酸、特定の塩基性化合物、C8〜20の直鎖オレフィン、及び非イオン界面活性剤を必須成分として含有する水溶性金属加工用潤滑剤(特許文献1)、C4以上の直鎖又は分岐のアルキル基をもつアミン、及びシクロ環又はベンゼン環を有するアミンを特定量含有することを特徴とする金属加工油剤組成物及びこれを用いた金属加工方法(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−242743号公報
【特許文献2】国際公開第02006/129747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、切削性、接着剤との適合性(接着性)及びアルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性に優れた金属加工用油剤及びこれを用いた金属加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定のヒドロキシ脂肪酸化合物、特定のアミン及び特定の基油を使用することにより、従来の金属加工用油剤と比較して優れた切削性、あるいはさらに優れた接着剤との適合性(接着性)、アルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は以下の金属加工用油剤、その金属加工用油剤を用いた金属の加工方法を提供するものである。
【0007】
1.(A)ヒドロキシ酸、その重縮合物、及びヒドロキシ酸又はその重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、酸価が60〜360mgKOH/gである化合物、
(B)脂環式基又は芳香族環式基を有するアミン、及び
(C)基油
を含有する金属加工用油剤。
2.(A)が、炭素数8〜26のヒドロキシ酸、その重縮合物、及び炭素数8〜26のヒドロキシ酸又はその重縮合物と炭素数8〜26の脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、酸価が60〜360mgKOH/gである化合物である上記1記載の金属加工用油剤。
3.(A)が、酸価が80〜200mgKOH/gであるひまし油脂肪酸又はその重縮合物である上記2記載の金属加工用油剤。
4.(A)を、油剤の全量を基準として、5〜50質量%含有する上記1〜3のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
5.(B)が、下記式(1)〜(4)で表されるアミンの少なくとも1種である上記1〜4のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、R1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式(2)中、R5及びR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、H、(Cx2xO)nHで表される基又はシクロヘキシル基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式(3)中、R7は、Cx2xで表される基である。xは2〜4の整数である。R8〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式中、R11〜R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。)。
【0010】
6.(B)が、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン及びメタキシレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、上記5記載の金属加工用油剤。
7.(B)を、油剤の全量を基準として、0.05〜5質量%含有する上記1〜6のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
8.(C)が、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリブテン、鉱物油、合成エステル、油脂及びシリコン油からなる群から選ばれる少なくとも1種の基油である、上記1〜7のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
9.(C)を、油剤の全量を基準として、1〜60質量%含有する上記1〜8のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
10.さらに、(D)炭素数6〜26の飽和又は不飽和脂肪酸或いは二塩基酸を含む上記1〜9のいずれか1項記載の金属加工油剤。
11.さらに、(B)以外の(E)水溶性アミン及び水溶性無機塩基性物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む上記1〜10のいずれか1項記載の金属加工油剤。
12.上記1〜11のいずれか1項記載の金属加工用油剤を水で0.1質量%以上の濃度に希釈してなる金属加工用油剤。
13.切削油剤又は研削油剤である上記1〜12のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
14.上記1〜13のいずれか1項記載の金属加工用油剤を用いて金属加工を行う金属の加工方法。
15.金属が、鋳鉄及び鉄鋼からなる群から選ばれる鉄系金属であるか、又はアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅及びそれらの合金からなる群から選ばれる非鉄金属である、上記14記載の金属の加工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、切削性、接着剤との適合性(接着性)及びアルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性に優れる。
本発明の金属加工用油剤は、鋳鉄及び鉄鋼等の鉄系金属、アルミニウム、マグネシウム等の非鉄金属のいずれの金属加工においても切削性及び加工性に優れる。従って、工具寿命の延長によるコスト低減及び工具交換工程数の低減を図ることができ、その結果、生産性を向上させることができる。また、接着剤との適合性(接着性)向上、及びアルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性を向上させることにより、加工品の品質向上が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)ヒドロキシ酸、その重縮合物、及びヒドロキシ酸又はその重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、酸価が60〜360mgKOH/gである化合物
ヒドロキシ酸等の酸価が60〜360mgKOH/gである化合物は、切削性及び接着剤との適合性、特に接着剤との適合性に優れる。(A)の酸価は、JIS K 2501に準じて測定することができる。
ヒドロキシ酸としては、炭素数8〜26のヒドロキシ酸が好ましい。
ヒドロキシ酸又はその重縮合物と脱水縮合物を形成する脂肪酸としては、炭素数8〜26の脂肪酸が好ましい。
(A)としては、炭素数8〜26のヒドロキシ酸又はその重縮合物であって、酸価が60〜360mgKOH/gである化合物が好ましい。炭素数10〜20のヒドロキシ酸又はその重縮合物であって、酸価が60〜300mgKOH/gである化合物がより好ましい。酸価が60〜300mgKOH/gであるひまし油脂肪酸又はその重縮合物がさらに好ましい。酸価が80〜200mgKOH/gであるひまし油脂肪酸又はその重縮合物がさらにより好ましい。酸価が90〜100mgKOH/gであるひまし油脂肪酸又はその重縮合物が最も好ましい。
(A)の含有量は、本発明の金属加工油剤の全質量を基準として、5〜50質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。このような範囲で含まれると 接着剤との適合性(接着性)及び切削性の点で優れる。
【0013】
(B)脂環式基又は芳香族環式基を有するアミン
脂環式基を有するアミンとしては、下記式(1)〜(3)で表されるアミンがあげられる。
【0014】
【化2】

【0015】
式(1)中、R1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式(2)中、R5及びR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、H、(Cx2xO)nHで表される基又はシクロヘキシル基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式(3)中、R7は、Cx2xで表される基である。xは2〜4の整数である。R8〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
【0016】
具体的には、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンエチレンオキシド付加物、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンプロピレンオキシド付加物;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンエチレンオキシド付加物、シクロヘキシルアミンプロピレンオキシド付加物、シクロヘキシルエチレンジアミン、シクロヘキシルプロピレンジアミン、シクロヘキシルブチレンジアミン、シクロヘキシルエチレンジアミンエチレンオキシド付加物、シクロヘキシルプロピレンジアミンエチレンオキシド付加物、シクロヘキシルブチレンジアミンエチレンオキシド付加物などがあげられる。
このうち、式(1)で表されるアミンが好ましい。1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンエチレンオキシド付加物、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンプロピレンオキシド付加物がより好ましい。
【0017】
芳香族環式基を有するアミンとしては、下記式(4)で表されるアミンがあげられる。
【0018】
【化3】

【0019】
式中、R11〜R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
具体的には、メタキシレンジアミン、メタキシレンジアミンエチレンオキシド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキシド付加物などがあげられる。このうち、メタキシレンジアミンが好ましい。
(B)としては、脂環式基を有するアミンが好ましく、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンエチレンオキシド付加物、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンプロピレンオキシド付加物がより好ましく、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが最も好ましい。
これらアミンは、単独で使用しても複数種を混合して使用しても良い。
本発明の金属加工油剤は、(B)を含まないpHが同程度の金属加工油剤と比較して防食性能に優れる。
(B)の含有量は、本発明の金属加工油剤の全質量に対して、0.05〜5質量%であるのが好ましく、0.1〜2質量%であるのがより好ましい。このような範囲で含まれるとアルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性の点で優れる。
【0020】
(C)基油
本発明において用いる基油としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリブテン、鉱物油、合成エステル、油脂、シリコン油、ポリグリコール、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリエーテルなどがあげられる。これらは、単品に限らず、複数種のブレンド油としても良い。アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリブテン、鉱物油、合成エステル、油脂、シリコン油が好ましい。切削性の点から、鉱物油、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、合成エステルが好ましく、アルキルベンゼンがより好ましい。特に、炭素数10〜25の直鎖又は分岐アルキル基を有するアルキルベンゼンが好ましい。
(C)の含有量は、本発明の金属加工油剤の全質量を基準として、1〜60質量%であるのが好ましく、10〜60質量%であるのがより好ましい。このような範囲で含まれると切削性の点で優れる。
【0021】
本発明に係わる金属加工用油剤は、必要に応じて、(D)直鎖又は分岐型の飽和又は不飽和脂肪酸或いは二塩基酸を含有することができる。たとえば、炭素数6〜26の飽和又は不飽和脂肪酸或いは二塩基酸、具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ヒドロキシラウリル酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキン酸、ヒドロキシベヘン酸、リシノレイン酸、ヒドロキシオクタデセン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデシルコハク酸、ラウリルコハク酸、n−ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸、ダイマー酸などがあげられる。その他、動物、魚、植物、穀物などの天然油脂から得られる脂肪酸、例えばヤシ脂肪酸でも良い。このうち、ペラルゴン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ドデカン二酸、ヤシ脂肪酸が好ましい。
(D)の含有量は、本発明の金属加工油剤の全質量を基準として、0〜30質量%であるのが好ましく、0.1〜20質量%であるのがより好ましい。このような範囲で含まれると防錆性、消泡性の点で優れる。
【0022】
本発明の金属加工用油剤は、必要に応じて、(B)に加えて、(E)水溶性アミン及び水溶性無機塩基性物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することができる。たとえば、水溶性アミンとしては、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ジエチルモノイソプロパノールアミン、N,N−ジ−n−プロピルアミノイソプロパノール、N,N−エチレンジアミン(ジイソプロパノール)、N,N−エチレンジアミン(ジエタノール)、モノ−n−ブチルジエタノールアミン、モノエチルジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン、ジベンジルアミン等があげられ、水溶性無機塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどがあげられる。
このうち、ジイソプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン、ジベンジルアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノールが好ましい。
(E)の含有量は、本発明の金属加工油剤の全質量を基準として、0〜40質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。このような範囲で含まれると防腐性の点で優れる。
【0023】
本発明の金属加工用油剤は、必要に応じて、(G)ラウリルコハク酸、ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸などの脂肪酸、石油スルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、カルボン酸アミドなどを含有することができる。これらの化合物は、一般的に防錆剤として作用する。
(G)の含有量は、本発明の金属加工油剤の全質量を基準として、0〜20質量%であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。
【0024】
また、本発明の、金属加工用油剤は、必要に応じてシリコーン系消泡剤、アルコール系消泡剤、ベンゾチアゾール系金属防食剤などを用いても良い。
さらに、本発明の、金属加工用油剤は、必要に応じてベンゾイソチアゾリン、及び/またはその誘導体、ソジウムオマジン、金属ピリチオン塩などの防腐剤、ラウリルアミン、オレイルアミンなどに代表されるアルキルアミンおよびそれらのオキシエチレン付加物を防腐剤あるいは菌抑制剤として用いても良い。
本発明の金属加工油剤のpH(25℃)は、原液を純水で5質量%に希釈した液において、好ましくは7.0〜11、さらに好ましくは8.0〜11である。pHが7.0未満では、防腐性が低下する場合があり、pHが11を超えると、アルミニウム及びアルミニウム合金に対する防食性の低下ならびに、皮膚刺激性が高くなる場合があり、好ましくない。
本発明の金属加工用油剤は、水で希釈して0.1質量%以上の濃度で使用するのが一般的であり、希釈方法として手動での撹拌の他に、ホモジナイザー、ホモミクサー、モントン−ゴーリン分散機等を用いても良い。
【実施例】
【0025】
実施例及び比較例の金属加工用油剤を表1−5に示す。A成分としては、異なる酸価を有するひまし油脂肪酸の重縮合物を用いた。表中の成分欄の数値は、原液(水で希釈する前の組成物)中の各成分の質量%を示す。各金属加工用油剤について各性能を以下の試験方法により評価した。結果を表1−5に示す。
(1)切削性試験
下記被削材を用いて、下記条件にてφ6のタップ加工を行い、加工時に受ける切削抵抗を測定した。
被削材: アルミニウム合金(AC8B−T6、300×200×30mm)
切削工具:ロールタップ(OSG製 B−NRT RH7 M6×1.0)
切削速度:10m/min
送り: 1.0mm/rev
下穴: 5.48mmリーマ仕上げ,止まり穴
切削長: 20mm
N数: 5
試験油剤:実施例又は比較例の金属加工用油剤を水で5質量%に希釈したもの
給油量 :試験油剤を20リットル/分
評価方法:切削抵抗(トルク[N・m])を測定
判定基準:切削トルクが3.0N・m未満 合格(○)
3.0N・m以上、3.5N・m未満 合格(△)
3.5N・m以上 不合格(×)とする。
【0026】
(2)接着性試験
JIS K 6850に準拠して評価した。具体的には、下記試験片を用いて、下記条件にて引張り試験を行い、引張り強度(MPa)と凝集破壊率(%)を測定した。
引っ張り試験機:オートグラフ(島津製作所製 AG−10kNX)
引っ張り速度: 50mm/min
試験片: アルミニウム合金(A1050P、100×25×1mm)
シール剤: (株)スリーボンド製 二液性硬化型液状ガスケットシリコーン系
試験油剤:実施例又は比較例の金属加工用油剤を水で5質量%に希釈したもの
試験片を研磨紙を用いて研磨後、試験油剤中に、25℃において10秒浸漬し、25℃において20分乾燥し、シール剤を塗布した。その後、温度23℃、相対湿度50%にて24時間乾燥後、引張り試験を行った。
判定基準
引張り強度:0.4MPa以上 合格(○)
0.2MPa以上であって0.4MPa未満 合格(△)
0.2MPa未満 不合格(×)
凝集破壊率:50%以上 合格(○)
30%以上であって50%未満 合格(△)
30%未満 不合格(×)
【0027】
(3)非鉄金属腐食試験
アルミニウム防食性をJIS K 2241に準拠し評価した。具体的には、試験片(アルミニウム合金、A1050P)の一表面を研磨し、実施例又は比較例の金属加工用油剤を水で5質量%に希釈して調製した試験油剤に、温度25℃において半浸漬した。48時間後の試験片の外観を肉眼で観察した。
判定基準:変色なし 合格(○)
淡灰色に変色 合格(△)
濃灰色〜黒色に変色 不合格(×)
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
1)C65・Cn2n+1(Cn=10〜25の混合物)
2)(株)MORESCO製 モレスコハイルーブLB−15
3)JX日鉱日石エネルギー(株)製 日石ポリブテン グレードLV−7
4)2−エチルヘキサノール脂肪酸エステル(脂肪酸:パルミチン酸とステアリン酸の混合物)
5)炭素数10〜18の1-オレフィンの混合物
【0034】
【表6】

【0035】
実施例13と比較例15とを比較すると、pHが同程度でも、B成分として1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンを含む実施例13の方が、アルミニウムの防食性能が優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロキシ酸、その重縮合物、及びヒドロキシ酸又はその重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、酸価が60〜360mgKOH/gである化合物、
(B)脂環式基又は芳香族環式基を有するアミン、及び
(C)基油
を含有する金属加工用油剤。
【請求項2】
(A)が、炭素数8〜26のヒドロキシ酸、その重縮合物、及び炭素数8〜26のヒドロキシ酸又はその重縮合物と炭素数8〜26の脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、酸価が60〜360mgKOH/gである化合物である請求項1記載の金属加工用油剤。
【請求項3】
(A)が、酸価が80〜200mgKOH/gであるひまし油脂肪酸又はその重縮合物である請求項2記載の金属加工用油剤。
【請求項4】
(A)を、油剤の全量を基準として、5〜50質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
【請求項5】
(B)が、下記式(1)〜(4)で表されるアミンの少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式(2)中、R5及びR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、H、(Cx2xO)nHで表される基又はシクロヘキシル基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式(3)中、R7は、Cx2xで表される基である。xは2〜4の整数である。R8〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。
式中、R11〜R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、H又は(Cx2xO)nHで表される基である。xは2〜4の整数であり、nは1〜3の数である。)。
【請求項6】
(B)が、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン及びメタキシレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項5記載の金属加工用油剤。
【請求項7】
(B)を、油剤の全量を基準として、0.05〜5質量%含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
【請求項8】
(C)が、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリブテン、鉱物油、合成エステル、油脂及びシリコン油からなる群から選ばれる少なくとも1種の基油である、請求項1〜7のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
【請求項9】
(C)を、油剤の全量を基準として、1〜60質量%含有する請求項1〜8のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
【請求項10】
さらに、(D)炭素数6〜26の飽和又は不飽和脂肪酸或いは二塩基酸を含む請求項1〜9のいずれか1項記載の金属加工油剤。
【請求項11】
さらに、(B)以外の(E)水溶性アミン及び水溶性無機塩基性物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む請求項1〜10のいずれか1項記載の金属加工油剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の金属加工用油剤を水で0.1質量%以上の濃度に希釈してなる金属加工用油剤。
【請求項13】
切削油剤又は研削油剤である請求項1〜12のいずれか1項記載の金属加工用油剤。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の金属加工用油剤を用いて金属加工を行う金属の加工方法。
【請求項15】
金属が、鋳鉄及び鉄鋼からなる群から選ばれる鉄系金属であるか、又はアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅及びそれらの合金からなる群から選ばれる非鉄金属である、請求項14記載の金属の加工方法。

【公開番号】特開2012−67146(P2012−67146A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210661(P2010−210661)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【Fターム(参考)】