説明

金属化多層フィルム

【課題】多層構造を有する金属化フィルム。
【解決手段】5〜50重量%の下記(1)〜(2)の混合物(A)と、50〜95重重%のポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(B)とから成るバインダー層を有する。混合物(A)は、(1)90〜20重量%の相対密度が0.865〜0.915のメタロセンポリエチレン(C1)と、10〜80重量%のメタロセンでないLLDPEポリエチレンまたはポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(C2)との混合物(C1)+(C2)に不飽和カルボン酸またはその官能化誘導体が共グラフト化された混合物(C1)+(C2):5〜100重重%と、(2)ポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーおよびエラストマーの中から選択されるポリエチレン(D):95〜0重重%との混合物で、この混合物(A)はa)グラフトされた不飽和カルボン酸の含有率が30〜105ppmで、b)メルトフローインデックス(MFI、ASTM D 1238、190℃/2.16kg)が0.1〜30g/10分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着によってフィルムが劣化した場合でも優れた層間接着性を示す、2軸配向ポリプロピレン(BOPP)または2軸配向ポリエチレン(BOPET)のフィルムに積層された金属化多層フィルム(印刷および2軸配向はされていてもいなくてもよい)を含む包装材料に関するものである。
本発明は特に、手で容易に開けることができる組成を有する溶着フィルムからなる袋(sachet)、バッグ、ポーチ、パケット等の形式の包装材料に適用される。例としてはポテトチップス、ビスケット、ケーキまたは肉用の袋が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
下記文献には酸素遮断性および防湿性を有する多層フィルムを用いた包装材料が開示されている。
【特許文献1】国際特許第WO01/34389号公報
【0003】
しかし、この包装材料は簡単に開封できないという欠点がある。これは層間剥離が金属層とこの金属層に積層したポリプロピレン層との間で生じるためである。
包装材料の分野では適当な力で簡単に開封でき、成人でも子供でも簡単に開けることができる包装材料であることが重要である。さらに、固体または液体の食品、その他を包装材料に入れて保存する場合には包装材料を形成するフィルムが酸素遮断性および防湿性を有にしていなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、(i)ポリプロピレンを主成分とし、(ii)共グラフトポリエチレン(g‐PE)の混合物またはポリエチレンとポリプロピレンの共グラフト混合物を含み、(iii)任意成分としてグラフトされていないポリエチレンまたはエラストマーを含む組成物の層と金属の層との間に挿入される層として強い接着力を示すフィルムを見出した。
このフィルムは帯状に溶着して密閉した場合でも、帯状部分から簡単に開封可能な包装材料を製造することができる。本発明では従来技術とは違って、金属の層とPP層との間で層間剥離や剥離が起きることはないので、帯状溶着部分で包装材料を開くのに障害はない。すなわち、本発明の包装材料は多層構造の他の部分を破断させずに、帯状溶着部分で楽に開封することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の対象は、5〜50重量%の下記(1)〜(2)の混合物(A)と、50〜95重量%のポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(B)とから成るバインダーにある:
混合物(A)は、
(1) 90〜20重量%の相対密度が0.865〜0.915のメタロセンポリエチレン(C1)と、10〜80重量%のメタロセンでないLLDPEポリエチレンまたはポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(C2)との混合物(C1)+(C2)に、不飽和カルボン酸またはその官能化誘導体が共グラフト化された混合物(C1)+(C2):5〜100重量%と、
(2) ポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーおよびエラストマーの中から選択されるポリエチレン(D):95〜0重量%との混合物で、この混合物(A)は、
a) グラフトされた不飽和カルボン酸の含有率が30〜105ppmで、
b) メルトフローインデックス(MFI、ASTM D 1238、190℃/2.16kg)が0.1〜30g/10分である。
【0006】
本発明の他の対象は上記バインダーの層を含む多層構造にある。
本発明の一実施例では多層構造の金属の層がバインダーの層と結合している。
本発明の一実施例の多層構造物は金属の層がAl、Fe、Cu、Sn、Ni、Ag、Cr、Auまたはこれらの金属を少なくとも1種含む合金の層である。
本発明の一実施例では多層構造がポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーの層(3)を含み、このポリプロピレン層(3)と金属の層(1)と間にバインダーの層(2)が挟まれる。
本発明の一実施例では多層構造が溶着(ヒートシール)に適した層を有する。この層はエチレン/プロピレン/ブチレンターポリマー、エチレン/プロピレンコポリマーのいずれか、メタロセンPEまたはその混合物から成り、この場合、混合物は上記化合物の少なくとも2つを含み、この溶着に適した層とバインダーの層との間に上記のポリプロピレンの層が挟まれる。
【0007】
本発明はさらに、上記多層構造から成るフィルムに関するものである。
本発明の一実施例ではこのフィルムは印刷された2軸配向ポリプロピレン(BOPP)または2軸配向ポリエチレン(BOPET)の層から成る。この層には上記の金属化多層フィルムが接着剤を介して貼り付けられている。このフィルムは2軸配向されていてもいなくてもよい。金属化された多層フィルムの金属の層は接着剤を介して印刷されたBOPPまたはBOPETに直接結合される。
本発明はさらに、上記多層構造の製造での上記バインダーの使用にある。
本発明はさらに、上記多層構造を有する物品にも関するものである。
本発明の一実施例では上記物品が上記フィルムで作られる。
本発明の一実施例では物品は包装材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[図1]は本発明のフィルムの一実施例を示す。この実施例では金属化されたポリプロピレン(以下、MCPP)フィルムが下記の層1〜4を下記の順番で有する構造を有している:金属の層(1)、PEとLLDPEの共グラフト物、LLDPEおよびPPのホモポリマーまたはコポリマーの混合物の層(2)、PPのホモポリマーまたはコポリマーの層(3)および溶着に適した層(4)。
【0009】
[図2]は従来技術で帯状溶着部分(5a)を密封したバッグ(6)で、開封が失敗した場合の断面図である。このバッグは以下の構造を有するフィルムで作られている:金属の層(11)、シンジオタクチックPPとブチレン/プロピレンコポリマーの混合物またはシンジオタクチックPPとグラフトされたPPのホモポリマーまたはコポリマーの混合物の層(12)、PPのホモポリマーまたはコポリマーの層(13)およびエチレン/プロピレン/ブチレンターポリマーまたはエチレン/プロピレンコポリマーまたはメタロセンPEの層(14)。
【0010】
[図3]は帯状溶着部分で開封した本発明のバッグの断面図である。バッグ(6)は[図1]に示した多層構造(層1〜4)を有するフィルムで作られている。開口部は先端(5b)にある。
本発明をさらに詳細に説明する。
包装材料(本発明の物品)は金属化されたPP (以下、MCPP)のフィルムから成る。このフィルムは以下のような構造の一部でもよい:BOPPまたはBOPET層/インク層/接着剤層/MCPPフィルム。
MCPPフィルムは[図1]に示した層(1)/層(2)/層(3)/層(4)の形式の多層構造(組成は後で説明する)を有する。従って、このMCPPフィルムでは以下の層が以下の順番で並んでいる:BOPPまたはBOPET層/インク層/接着剤層/層(1)/層(2)/層(3)/層(4)。
【0011】
層(1)は層(2)上に形成された金属の層である。この金属の層は例えばAl、Fe、Cu、Sn、Ni、Ag、CrまたはAuか、これら金属を少なくとも1種含む合金からなる金属箔または金属化フィルムにすることができる。
【0012】
層(3)はPP層であり、この層(3)のポリプロピレンはホモポリマーまたはコポリマーにすることができる。
コモノマーとしては下記を挙げることができる:
(1) α−オレフィン、好ましくは2〜30個の炭素原子を含むα−オレフィン。コモノマーとして使用可能な2〜30個の炭素原子を有するα−オレフィンの例としてはエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-ヘキサコセン、1-オクタコセンおよび1-トリアコンテンが挙げられる。これらのα−オレフィンは単独または2種類以上の混合物で使用することができる。
(2) ジエン
ポリプロピレンはポリプロピレンのコポリマーでもよい。
【0013】
層(3)は複数のポリマーの混合物からなるのが好ましい。この場合、少なくとも1種のポリプロピレンは少なくとも50モル%で、好ましくは少なくとも75モル%のプロピレンを含むのが有利である。例えば、層(3)のポリプロピレンはポリプロピレン/EPDMまたはポリプロピレン/EPRの混合物にすることができる。
PPホモポリマーの例としては80〜100%、好ましくは95%のアイソタクチックPPが挙げられる。ポリプロピレンのホモポリマーのMFI(メルトフローインデックス)は1.2〜30g/10分、好ましくは3〜8g/10分(ASTM D1238規格で測定)にするのが好ましい。
【0014】
層(4)は溶着に適した層である。この層(4)は例えばエチレン/プロピレン/ブチレンターポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、メタロセンPEまたはこれらの混合物(少なくとも2つの上記化合物の混合物)から成る。層(4)はコモノマーとしてプロピレンを主成分としたターポリマーから成るのが好ましい。
【0015】
層(2)は下記の混合物である:
(a) 5〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の混合物(A)と、
(b) 50〜95重量%、好ましくは60〜80重量%のポリマー(B)。
この混合物(A)は必要に応じて下記のポリマー(D)と混合した混合物(C)として定義することもできる。この場合には下記(1)および(2)から成る:
(1) 相対密度が0.865〜0.915のメタロセンポリエチレン(C1) 80〜20重量%[混合物(C)に対して]と、メタロセンでないLLDPE(C2) 20〜80重量%[混合物(C)に対して]との混合物(C1)+(C2)に不飽和カルボン酸またはその官能化誘導体が共グラフト化された混合物(C):5〜100%[混合物(A)に対して]と、
(2) ポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーおよびエラストマーの中から選択されるポリエチレン(D):95〜0%[混合物(A)に対して]
さらに、混合物(A)は下記特性を有する:
i) グラフトされた不飽和カルボン酸の含有率が30〜105ppm、
ii) メルトフローインデックス(MFI、ASTM D 1238、190℃/2.16kg)が0.1〜30g/10分
【0016】
(C1)の「メタロセンポリエチレン」とは、一般に金属(例えばジルコニウムまたはチタン)原子とこの金属に結合した2つの環状アルキル分子とで構成されるモノサイト触媒の存在下でエチレンとα−オレフィン(例えばプロピレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテン)とを共重合して得られるポリマーを意味する。メタロセン触媒は一般に金属に結合した2つのシクロペンタジエン環で構成される。この触媒は共触媒または活性剤としてのアルミノオキサン、好ましくはメチルアルミノオキサン(MAO)と一緒に用いられることが多い。シクロペンタジエンが結合する金属としてハフニウムを用いることもできる。他のメタロセンはIVA、VAおよびVIA族の遷移金属を含むことができる。ランタニド系列の金属を用いることもできる。
【0017】
メタロセンポリエチレンはMw/Mn比が<3、好ましくは<2で特徴付けることもできる。
ここで、MwおよびMnはそれぞれ重量平均分子量および数平均分子量を意味する。MFR(メルトフローインデックス)が<6.53で、Mw/Mn比>(MFR:4.63)のポリマーもメタロセンポリエチレンとよばれる。MFRとはMFI2(荷重2.16kgでのメルトフローインデックス)に対するMFI10(荷重10kgでのメルトフローインデックス)の比を意味する。他のメタロセンポリエチレンはMFRが6.13以上でかつMw/Mn比が(MFR:4.63)以下のものである。
(C1)の密度は0.870〜0.900であるのが有利である。
【0018】
ポリマー(C2)はメタロセンではないLLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)のエチレン/α−オレフィンコポリマーか、ポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーで、コモノマーは例えばα−オレフィンまたはジエンである。ポリマー(C2)はポリプロピレンのブロックコポリマーでもよい。
α−オレフィンは3〜30個の炭素原子を有するのが有利である。コモノマーとして使用可能な3〜30個の炭素原子を有するα−オレフィンの例としてはエチレン(PPのコモノマーのみ)、プロピレン(PEのコモノマーのみ)、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-ヘキサコセン、1-オクタコセンおよび1-トリアコンテンが挙げられる。これらのα−オレフィンは単独または2種類以上の混合物で使用することができる。
(C2)の相対密度は0.900〜0.950であるのが有利である。(C2)のMFIは0.1〜8g/10分(190℃、2.16 kg)である。
【0019】
本発明では(C1)/(C2)混合物に不飽和カルボン酸またはその官能性誘導体基から選択されるグラフト化モノマーをグラフトさせる。不飽和カルボン酸の例としては2〜20個の炭素原子を有する化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸がある。これらの酸の官能性誘導体としては不飽和カルボン酸の無水物、エステル誘導体、アミド誘導体、イミド誘導体および金属塩(例えばアルカリ金属塩)等がある。
【0020】
特に好ましいグラフト化モノマーは4〜10個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸とその官能性誘導体、特にその無水物である。このグラフト化モノマーは例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、シクロヘキシ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、4-メチレンシクロヘキシ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3ジカルボン酸およびx-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,2-ジカルボン酸と、これらの無水物の中から選択することができる。
【0021】
その他のグラフト化モノマーの例として下記が挙げられる:
(a) 不飽和カルボン酸のC1-C8アルキルエステルまたはグリシジルエステル誘導体、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、モノエチルフマレート、ジメチルフマレート、モノメチルイタコネートおよびジエチルイタコネート、
【0022】
(b) 不飽和カルボン酸アミド誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸N-モノエチルアミド、マレイン酸N,N-ジエチルアミド、マレイン酸N-モノブチルアミド、マレイン酸N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸N-モノエチルアミド、フマル酸N,N-ジエチルアミド、フマル酸N-モノブチルアミドおよびフマル酸N,N-ジブチルアミド、
【0023】
(c) 不飽和カルボン酸のイミド誘導体、例えばマレイミド、N-ブチルマレイミドおよびN-フェニルマレイミド、
(d) 不飽和カルボン酸金属塩、例えばソジウムアクリレート、ソジウムメタクリレート、ポタシウムアクリレートおよびポタシウムメタクリレート。
無水マレイン酸が好ましい。
【0024】
(C1)と(C2)の混合物へのグラフト化モノマーのグラフト化は公知の種々の方法を用いて行うことができる。
グラフト化モノマーの量は適当に選択し、グラフト化後の(C1)+(C2)に対して0.01〜10重量%、好ましくは600ppm〜5000ppmにする。グラフト化モノマーの量はFTIR分光分析法でコハク酸基を定量して求める。共グラフト化された(C)(すなわち(C1)+(C2))のMFIは0.1〜10/10分であるのが有利である。
【0025】
ポリエチレン(D)はエチレンのホモポリマーか、エチレンと(C2)で定義されたα−オレフィン、不飽和カルボン酸エステルまたは飽和カルボン酸ビニルエステルから選択されるモノマーとのコポリマーである。不飽和カルボン酸エステルは例えばアルキル基が1〜24個の炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレートである。アルキルアクリレートまたはメタクリレートの例としてはメチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。飽和カルボン酸ビニルエステルは例えば酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニル等である。
ポリエチレン(D)はHDPE、LDPE、LLDPE またはVLDPE 等のポリエチレンまたはメタロセンPEにすることができる。
【0026】
ポリエチレン(D)を、エラストマー特性を有するポリマー、すなわち、(i)ASTM D412で定義のエラストマーすなわち室温で最初の長さの2倍に引伸し、そのまま5分間保持し、解放した時に最初の長さへ10%以下の誤差範囲で戻ることができる材料、または、(ii) 必ずしも上記の特性を有していないが、引伸した後にほぼ最初の長さに戻ることができるポリマーにすることができる。例としてはEPR(エチレン/プロピレンゴム)、EPDM(エチレン/プロピレン/ジエンターモノマー)、スチレンエラストマー、例えばSBR(スチレン/ブタジエン/ゴム)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマー、SEBS(スチレン/エチレン−ブチレン/スチレン)ブロックコポリマーおよびSIS(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマーが挙げられる。
【0027】
(D)は相対密度が0.910〜0.935のLLDPEポリエチレンまたは相対密度が0.935〜0.950のHDPEであるのが有利である。
ポリマー(C)と(D)の混合物(A)の比率は90〜70重量%の(D)に対して10〜30重量%の(C)であるのが有利である。
混合物(A)が稀釈されるポリマー(B)は、PPのコポリマーまたはプロピレン/エチレン/ブチレンのターポリマーである。コモノマーとして下記が挙げられる:
【0028】
(1) α−オレフィン、好ましくは2〜30個の炭素原子を含むα−オレフィン。コモノマーとして使用可能な2〜30個の炭素原子を有するα−オレフィンの例としてはエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-ヘキサコセン、1-オクタコセンおよび1-トリアコンテンが挙げられる。これらのα−オレフィンは単独または2種類以上の混合物で使用することができる。
(2) ジエン。
【0029】
ポリプロピレンはポリプロピレンのコポリマーでもよい。
ポリマー(B)は複数のポリマーの混合物からなり、このうち少なくとも1種のポリプロピレンは少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%のプロピレンを含むのが有利である。例えば、ポリマー(B)のポリプロピレンはポリプロピレン/EPDMまたはポリプロピレン/EPRの混合物にすることができる。
層(1)、(2)、(3)および(4)の厚さは、層(1)が50〜500オングストローム、層(2)が2〜6μm、層(3)が5〜30μm、層(4)が2〜10μmである。
層(2)、(3)および(4)は、金属層(1)を貼り付ける前に共押出し法で互いに重ね合わせてもよい。層(1)は当業者に周知の方法、好ましくは真空蒸着で形成する。
【0030】
金属層(1)は酸素遮断性および防湿性に優れている。
層(2)、(3)および(4)の組成物は、一般にポリオレフィンの加工に用いられる添加剤、例えば置換フェノール分子等をベースとする抗酸化剤、紫外線防止剤、脂肪酸アミド、ステアリン酸およびステアリン酸およびその塩等の加工助剤、押出欠陥防止剤として知られるフッ素化ポリマー、アミンベースの防曇剤、シリカまたはタルク等の粘着防止剤、カラーマスターバッチ、核剤等を10ppm〜5%の量で含むことができる。
【0031】
[図2]および[図3]は従来例と比較した本発明の結果を明確に示している。これらの図に示した袋(バッグ)はポテトチップスの袋に類似したものである。[図2]のバッグは多層構造(11、12、13、14)からなり、[図3]のバッグは多層構造(1、2、3、4)からなる。金属層(1)または(11)は袋の外側にあり、層(4)または(14)が袋のポケットの内側と接している。各袋(バッグ)は多層フィルムの帯状溶着部分(5a)によって溶着密封される。各溶着端部(5b)の層(4)または(14)がバッグ(6)の開口部となる。2つの袋の帯状溶着部分(5a)に近い区域の両側に同じ力(f)を加えて袋を開封した。袋の両側に同じ力(f)を図示した方向に加えると、従来技術のフィルムで製造した袋の場合と本発明フィルムで製造した袋の場合で異なる結果が得られた。
【0032】
[図2]の袋(バッグ)の場合には層間剥離が生じ、層(12)、(13)および(14)が結合したまま金属の層(11)が剥がれた。従って、層(11)を剥離させる力は帯状溶着部分(5a)を破壊するのに必要な力より小さい。そのため[図2]のバッグは開くのが困難で、金属の層(11)が先に剥離してしまう。
[図3]の場合には、層(1)、(2)、(3)および(4)間に剥離は全く見られず、バッグの帯状溶着部分が破段し、袋は端部(5b)から開封できた。金属の層(1)の接着強度は溶着部分(5a)を破壊するのに必要な力よりはるかに大きいために、バッグが開封される。
【実施例1】
【0033】
BOPP(約20μm)/インク層/液状接着剤/MCPPフィルム(約25μm)タイプの多層構造を有するフィルムの試験片1〜8([表1]を参照)を製造した。
MCPPフィルムは[図1]の下記層(1)〜(4)から成る4層構造を有する:
(1) 厚さ250オングストロームのアルミニウム層(1)
(2) 下記の(a)と(b)から成る厚さ3μmの層(2):
(a) コモノマーとして1-オクテンを有する相対密度d=0.870のメタロセンポリエチレン
(C1)と、コモノマーとして1-ブテンを有する相対密度d=0.920のLLDPE(C2)との混合
物(C1)/(C2)に無水マレイン酸を0.8重重%のグラフト率で共グラフト化した混合物2
5重量%と、コモノマーとして1-ブテンを有する相対密度d=0.910のLLDPE(D)75重量%
とから成る混合物(A): X重量%、
(b) MFI=7、d=0.900のPPホモポリマー: Y重量%、
(ここで、Xの値は[表1]の第2列に記載され、Y値は100−Xに等しい)
(3) MFI=7、d=0.900のPPホモポリマーの厚さ17μmの層(3)
(4) MFI=7、d=0.900、曲げ弾性率=1000mPaの主成分がプロピレンであるプロピレン/
エチレン/ブチレンターポリマーPPの厚さ5μmの層(4)
[ここで、dはg/cm3で表され、1900mPaでASTM D790に従って測定し、MFI(メルトフローイ
ンデックス)はg/10分(ASTM D 1238、230℃)で表示]
【0034】
層(1)、(3)、(4)は試験片1〜8で同じであり、層(2)のみXとYの比率(重量%)を変えた
。溶着密封したバッグを作り、剥離力をg/15mmで測定した。
混合物(A)を5〜50重重%含む組成物の場合には[図3]に示すようにアルミニウム層
が層(2)に強力に結合したまま、層(2)が破壊され、(*)で示される例の場合には、[図2
]に示したように、アルミニウム層の層(2)との間で破断する。すなわち、アルミニウム
層は層(2)により弱く結合している。
従って、本発明のバッグ、小袋、ポケットおよび袋の製造には混合物(A)を5〜50重重
%含む層(2)から成るフィルムが適している。
【0035】
【表1】

【0036】
上記に挙げた以外の他の金属を用いた試験でも同じ結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のフィルムの一実施例を示す図。
【図2】従来技術の帯状溶着部分(5a)で密封されたバッグ(6)の開封に失敗した時の断面図。
【図3】帯状溶着部分で開封した本発明バッグの断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 金属の層
2 PEとLLDPEの共グラフト混合物、LLDPEおよびPPのホモポリマーまたはコポリマー
の層
3 PPのホモポリマーまたはコポリマーの層
4 溶着に適した層(4)
5a 帯状溶着部分
6 バッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜50重量%の下記(1)と(2)の混合物(A)と、50〜95重量%のポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(B)とから成るバインダー:
混合物(A)は、
(1) 90〜20重量%の相対密度が0.865〜0.915のメタロセンポリエチレン(C1)と、10〜80重量%のメタロセンでないLLDPEポリエチレンまたはポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(C2)との混合物(C1)+(C2)に不飽和カルボン酸またはその官能化誘導体が共グラフト化された混合物(C1)+(C2):5〜100重量%と、
(2) ポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーおよびエラストマーの中から選択されるポリエチレン(D):95〜0重量%との混合物で、
この混合物(A)は、
a) グラフトされた不飽和カルボン酸の含有率が30〜105ppmで、
b) メルトフローインデックス(MFI、ASTM D 1238、190℃/2.16kg)が0.1〜30g/10分である。
【請求項2】
請求項1に記載のバインダーの層(2)を含む多層構造物。
【請求項3】
バインダーの層(2)に金属層(1)が結合している請求項2に記載の多層構造物。
【請求項4】
金属層(2)がAl、Fe、Cu、Sn、Ni、Ag、Cr、Auまたはこれらの金属を主成分として少なくとも1種含む合金の層である請求項3に記載の構造物。
【請求項5】
ポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーの層(3)を含み、このポリプロピレンの層(3)と金属層(1)と間に上記バインダーの層(2)が挟まれている請求項4に記載の多層構造物。
【請求項6】
エチレン/プロピレン/ブチレンターポリマー、エチレン/プロピレンコポリマーあるいはメタロセンPEまたはその混合物(この混合物は上記化合物の少なくとも2つを含む)から成る熱溶着に適した層(4)を含み、この層(4)とバインダーの層(2)との間にポリプロピレンの層(3)が挟まれている請求項5に記載の多層構造物。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の多層構造物から成るフィルム。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の多層構造物を有する金属化された多層フィルムが接着剤を介して積層された印刷された2軸配向ポリプロピレン(BOPP)または2軸配向ポリエチレン(BOPET)の層を有するフィルムであって、このフィルムは2軸配向されていてもされていなくてもよく、金属化された多層フィルムの金属層は接着剤を介して上記のBOPPまたはBOPETの層に直接結合されていることを特徴とするフィルム。
【請求項9】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の多層構造物の製造での請求項1に記載のバインダーの使用。
【請求項10】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の多層構造物を含む物品。
【請求項11】
請求項7または8に記載のフィルムを用いて作られた物品。
【請求項12】
包装材料である請求項11に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−299258(P2006−299258A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103526(P2006−103526)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【分割の表示】特願2004−32492(P2004−32492)の分割
【原出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】