説明

金属含有コンポジット材料

本発明は、金属含有材料またはコンポジット材料の製造プロセスに関し、該プロセスは、少なくとも1つの金属系化合物をポリマーシェルでカプセル化して、それによりポリマーカプセル化金属系化合物を生成するステップと;および/またはポリマー粒子を少なくとも1つの金属系化合物でコーティングするステップと;適切な加水分解性または非加水分解性ゾル/ゲル形成成分からゾルを形成するステップと;ポリマーカプセル化金属系化合物および/またはコーティングしたポリマー粒子をゾルと化合させて、それによりその組合せを生成するステップと;組合せを固体金属含有材料に変換するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物質の新たな組成物、特に有機および無機成分より成る金属含有コンポジット材料に関する。本発明はさらに、金属含有材料またはコンポジット材料の製造プロセスに関し、該プロセスは、少なくとも1つの金属系化合物をポリマーシェル内にカプセル化して、それによりポリマーカプセル化金属系化合物を生成するステップと;および/またはポリマー粒子を少なくとも1つの金属系化合物でコーティングするステップと;適切な加水分解性または非加水分解性ゾル/ゲル形成成分からゾルを形成するステップと;ポリマーカプセル化金属系化合物および/またはコーティングしたポリマー粒子をゾルと化合させて、それによりその組合せを生成するステップと;組合せを固体金属含有材料に変換するステップとを含む。
【背景技術】
【0002】
サーメットなどの多孔性金属系セラミック材料は通例、摩擦型ベアリング、フィルタ、燻蒸器具、エネルギー吸収材または防炎壁のコンポーネントとして使用される。中空スペース特性および向上した剛性を有する構成部材は、建設技術において重要である。多孔性金属系材料は、コーティングの分野でますます重要になっており、特殊な物理的、電気的、磁気的および光学的特性を備えたそのような材料の機能化は、極めて興味深い。さらにこれらの材料は、太陽光発電、センサ技術、触媒作用、およびエレクトロクロマチック表示技法などの用途で重要な役割を果たすことができる。
【0003】
一般に、電気抵抗、熱膨張、熱容量および導電性、並びに、超弾性特性、硬度、および機械強度の調節を可能にする、ナノ結晶性微細構造を有する多孔性金属系材料の必要性がある場合がある。
【0004】
さらに費用効率的な方式で作成できる多孔性金属系材料の必要性がある場合がある。従来の多孔性金属系材料およびサーメットは、粉末または溶融焼結法によって、あるいは浸透法によって作成できる。そのような方法は、特に所望の材料特性の制御が使用した金属粒子のサイズに依存することが多いため、技術的および経済的に複雑で費用がかかる場合がある。このパラメータは、プロセス技術、たとえば粉末コーティングまたはテープキャスティングが使用できる、コーティングなどのある一定の用途では十分な範囲に渡って必ずしも調節できるわけではない。従来方法に従って、多孔性金属および金属系材料は通例、添加剤の添加によって、または通常、素地の予備圧縮が必要である発泡法によって作成できる。
【0005】
また孔径、細孔分布および多孔度を材料の物理的および化学的特性を低下させることなく調節できる、多孔性金属系材料の必要性がある場合がある。たとえば充填剤または発泡剤に基づく従来方法は20〜50%の多孔度を提供できる。しかしながら機械的特性、たとえば硬度および強度は、多孔度の上昇と共に急速に低下しうる。このことは、異方性細孔分布、大きな孔径、および高い多孔度が、生体力学応力に関する長期安定性と共に要求される、生物医学用途、たとえばインプラントにおいて特に不都合でありうる。
【0006】
生物医学用途の分野では、生体適合材料を使用することが重要である。たとえばマーカーとして、または放射線吸収材として使用可能な、薬物送達デバイスで使用する金属系材料は好ましくは高度な機能を有することができ、1つの材料に著しく異なる特性を併せ持つことができる。特殊な磁気的、電気的、誘電的または光学的特性に加えて、材料は適切な範囲内の孔径で高い多孔度を提供する必要がある。
【0007】
ゾル/ゲルプロセス技術は、異なる種類の材料網目を構築するために幅広く利用することができる。ゾルまたはゲルの形成の下での成分の結合は、複数の方法で、たとえば従来の加水分解性または非加水分解性ゾル/ゲル処理によって行うことができる。本発明の実施形態のある例は、金属含有コンポジット材料を生成するためにゾル/ゲル技術を利用できる。「ゾル」は液体中のコロイド粒子の分散物であり、「ゲル」という用語は、マイクロメートル未満の寸法の孔と、平均長が通例マイクロメートルを超えるポリマー鎖との相互連結した剛性網目を暗示しうる。たとえばゾル/ゲルプロセスは、前駆物質、たとえばゾル/ゲル形成成分のゾルへの混合と、添加剤または材料のさらなる添加と、混合物の型へのキャスティングまたはコーティングの形でのゾルの基体への塗布と、それによりコロイド粒子が結合されて多孔性3次元網目となる、混合物のゲル化と、その強度を向上させるゲルのエージングと;液体からの乾燥および/または脱水によるゲルの固体材料への変換あるいは孔網目の化学安定化と、一連の物理的特性を備えた構造を作成するための材料の緻密化とを含むことができる。そのようなプロセスはたとえばHenge and West, Sol/Gel Process, 90 Chem. Ref. 33 (1990)に記載されている。「ゾル/ゲル」という用語は、本明細書で使用するように、ゾルまたはゲルのいずれかを意味しうる。ゾルは上述のように、たとえばエージング、硬化、pHの上昇、溶媒の蒸発によって、あるいは任意の他の従来方法によってゲルに変換できる。
【0008】
ゾル/ゲル処理技術は一般に、広範囲の個々に調節可能な特性を備えた生体適合材料の費用効率的な低温作成のためのいくつかの可能性を提供し、個々に作成された材料の特性を調節できる。たとえばケイ素の部分加水分解された酸化物であるシリカ−キセロゲルは、セラミックまたはガラス状材料を作成するために従来使用されてきたゾル/ゲル処理技法によって作成できる。ゾル/ゲルプロセスは主に、金属アルコキシドの加水分解と、その後の金属ヒドロキシドの重合/縮重合に基づくことができる。重合反応が進行する際に、鎖、環、および3次元網目を形成でき、通例、水およびアルコキシドのアルコキシ基のアルコールより成るゲルが形成される。そのように形成されたゲルは次に、乾燥または加熱ステップによって固体材料へ変換できる。ゾル/ゲル技術にはゾルに添加される多種多様の考えられる添加剤があるため、そのような技術は、生成される材料の組成および特性を変更するために多種多様の可能性を提供できる。
【0009】
欧州特許出願公開EP 0 680 753は、生物活性物質を含有するシリカコーティングおよび粒子を生成したゾル/ゲルについて説明しており、その中に包含された活性剤の放出速度は、浸透剤、たとえばポリエチレングリコールおよびソルビトールの添加によって制御できる。米国特許第5,074,916号は、SiO2、CaOおよびP25をベースとするアルカリを含まない生物活性ガラス組成物の作成に使用されたゾル/ゲルプロセス技法について説明している。
【0010】
国際特許出願公開WO 96/03117は、生物活性分子の制御放出を提供するシリカベースガラスより成る骨生物活性制御放出担体と、その調製方法および使用方法について説明している。米国特許第6,764,690号は、ゾル/ゲルプロセスによって調製された制御自在に溶解可能であるシリカ−キセロゲルと、その構造に生物活性剤を包含させることができる、ゾル/ゲルプロセスによって調製された制御自在に溶解可能であるシリカ−キセロゲルを含む薬物送達デバイスへのその使用について述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、その特性および組成を変更でき、それによりその機械的、熱的、電気的、磁気的および光学的特性の調節が可能になる、たとえば金属およびセラミック前駆物質をベースとする材料を提供することである。本発明の別の目的は、物理的および化学的安定性に悪影響を及ぼすことなく広範囲の応用分野で使用するために、形成された材料の多孔性を変化させることができるような、たとえば金属含有コンポジット材料を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、たとえばコーティングとして、並びに、バルク材料としても使用できる新しい材料およびその作成プロセスを提供することである。本発明のまた別の目的は、たとえばゾル/ゲルのコンポジット材料への変換が、きわめて安定した材料を実現するための、堅牢で比較的誤りのない焼結プロセスを可能にする、コンポジット材料の作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の例示的な実施形態は、物質の組成に、たとえば有機および無機成分より成る金属含有コンポジット材料に関する。本発明の別の例示的な実施形態はさらに、金属含有材料の製造プロセスに関する。金属系化合物は、ポリマーシェル内にカプセル化でき、ポリマーカプセル化金属系化合物は、従来のゾル/ゲルプロセス技術でゾルと化合させることができ、組合せは、その後、固体金属含有材料に変換できる。
【0014】
本発明のまた別の発明は、たとえばコーティングの形でありうる、または多孔性バルク材料の形でありうる、上述したプロセスなどのプロセスによって得られる材料を提供することである。
【0015】
本発明のまたさらなる目的は、生体内分解特性を有する、または生理液の存在下で少なくとも部分溶解可能である、上述のようなプロセスによって得られる金属を含有する材料を提供することである。
【0016】
また本発明のさらなる目的は、たとえば生物医学分野において、インプラント、薬物送達デバイス、またはインプラントおよび薬物送達デバイス用のコーティングなどの形で使用するための、そのような金属含有材料を提供することである。
【0017】
たとえば本発明のこれらおよび他の目的は、金属含有材料の製造プロセスを提供する本発明の1つの例示的な実施形態によって達成可能であり、該プロセスは特定でない順序の以下のステップを含む:
a)少なくとも1つの金属系化合物をポリマーシェル内にカプセル化して、それによりポリマーカプセル化金属系化合物より成る第1の組成物を生成するステップと;
b)加水分解性または非加水分解性ゾル/ゲル形成成分からゾルを形成するステップと;
c)第2の組成物を生成するために、コーティングされたポリマー粒子およびゾルを化合させるステップと;
d)第2の組成物を固体金属含有材料に変換するステップ。
【0018】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、金属含有材料またはコンポジット材料の製造プロセスが提供され、該プロセスは特定でない順序の以下のステップを含む:
a)少なくとも1つの金属系化合物によってコーティングされたポリマー粒子を含む第1の組成物を提供するステップと;
b)加水分解性または非加水分解性ゾル/ゲル形成成分からゾルを形成するステップと;
c)第2の組成物を生成するために、ポリマーカプセル化金属系化合物およびゾルを化合させるステップと;
d)第2の組成物を固体金属含有材料に変換するステップ。
【0019】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、上で説明したプロセスのようなプロセスで使用した金属系化合物は、コロイド粒子、ナノ結晶性または微結晶性粒子、あるいはナノワイヤの形で提供できる。
【0020】
本発明のまた別の例示的な実施形態において、金属系化合物は、有機材料の複数の層またはシェル内に、あるいはベシクル、リポソーム、ミセル、または適切な材料のオーバーコート内にカプセル化できる。
【0021】
本発明のまた別の例示的な実施形態において、添加剤は、上述したプロセスなどのプロセスで使用される第1の組成物、ゾル/ゲル形成成分に、および/または第2の組成物に添加できる。これらの添加剤は生物学的または治療用活性化合物、充填剤、界面活性剤、孔形成剤、可塑剤、潤滑剤などでありうる。
【0022】
本発明のまた別の例示的な実施形態において、第2の組成物は乾燥、熱分解, 焼結、または他の熱処理によって金属含有コンポジット材料に変換でき、変換は減圧下または真空下で実施できる。
【0023】
本発明の別の例示的な実施形態において、充填剤は、上述したプロセスなどのプロセスで使用される第1の組成物、ゾル/ゲル形成成分に、および/または第2の組成物に添加できる。これらの充填剤は次に、上述したプロセスなどのプロセスで生成された固体金属含有材料から完全に、または部分的に除去できる。充填剤(fiillers)の除去は、完全または部分的のいずれかで、それらを溶解させること、またはそれらを熱分解することによって達成できる。
【0024】
本発明のまたさらなる例示的な実施形態は、上述したプロセスなどのプロセスを使用して生成できる金属含有コンポジット材料を提供する。そのような材料は、バルク組成物の形でありうるか、またはそれらは基体またはデバイス上のコーティングとして提供できる。生理液に曝露したときに、これらの材料はさらに生体内分解性または少なくとも部分的溶解性でありうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の特定(ccertain)の例示的な実施形態による金属含有材料は、好都合な特性を示すことができ、たとえばそれらは低温での質量および/または体積縮小をほとんどまたは全く伴わずにゾルおよび/またはゲルから処理できる。たとえば本発明のある例示的な実施形態に従って調製されたゾルおよび組合せは、多孔性または非多孔性フィルムコーティングを用いたほぼ任意な種類の基体のコーティングに適しており、次に金属含有材料に変換できる。コーティングは成形バルク材料と同様に、そのようなプロセスによって得ることができる。
(金属系化合物)
【0026】
本発明のある例示的な実施形態により、金属系化合物はポリマー材料中に最初にカプセル化できる。
【0027】
たとえば金属系化合物は、ゼロ価金属、金属合金、金属酸化物、無機金属塩、特にアルカリおよび/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属による塩、好ましくはアルカリまたはアルカリ土類金属カーボネート、サルフェート、サルファイト、ニトレート、ニトライト、ホスフェート、ホスファイト、ハライド、スルフィド、オキシド、並びに、その混合物;有機金属塩、特にアルカリまたはアルカリ土類金属および/または遷移金属塩、特にそのホルミアート、アセテート、プロピオナート、マラート、マレアート、オキサラート、タートラート、シトレート、ベンゾアート、サリチラート、フタレート、ステアレート、フェノラート、スルホナート、およびアミン、並びに、その混合物;好ましくは遷移金属の、有機金属化合物、金属アルコキシド、半導体金属化合物、金属カーバイド、金属ニトリド、金属オキシニトリド、金属カーボンニトリド、金属オキシカーバイド、金属オキシニトリド、および金属オキシカーボンニトリド;好ましくはコアとしてCdSeまたはCdTeおよびシェル材料としてCdSまたはZnSを用いた、金属系コアシェルナノ粒子;好ましくは希土類金属、たとえばセリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムの金属含有エンドヘドラルフラーレンおよび/またはエンドメタロフラーレン;並びに上述のいずれかの任意の組合せから選択できる。
【0028】
また、アルカリまたはアルカリ土類金属塩あるいは化合物から選択される生分解性金属系化合物、たとえばマグネシウムベースまたは亜鉛ベース化合物などあるいはナノアロイまたはその任意の混合物を使用できる。本発明のある例示的な実施形態で使用される金属系化合物は、マグネシウム塩、オキシドまたは合金から選択でき、それは体液に曝露したときに分解可能である、そしてマグネシウムイオンおよびヒドロキシルアパタイトの形成をさらに生じうる、インプラントまたはインプラントへのコーティングの形態を含めて生分解性コーティングまたは成形体で使用できる。本発明の例示的な実施形態において、上述の材料の金属系化合物はナノまたは微結晶性粒子、粉末あるいはナノワイヤの形で提供できる。金属系化合物は、平均粒径が約0.5nm〜1,000nm、好ましくは約0.5nm〜900nm、またはさらに好ましくは約0.7nm〜800nmである。
【0029】
金属系化合物は生成される金属含有材料の所望の特性に従って、金属系化合物、特に異なる仕様を有するそのナノ粒子の混合物としても提供できる。金属系化合物は、極性、非極性または両性溶媒、溶媒混合物または溶媒−界面活性剤混合物による溶液、懸濁物または分散物、あるいはエマルジョン中で粉末の形で使用できる。
【0030】
上述の金属系化合物のナノ粒子は、その表面対体積比が高いことから容易に修飾できる。金属系化合物、特にナノ粒子はたとえば、親水性リガンドによって、たとえばトリオクチルホスフィンによって、共有または非共有方式で修飾できる。
【0031】
金属ナノ粒子に共有結合できるリガンドの例は、脂肪酸、チオール脂肪酸、アミノ脂肪酸、脂肪酸アルコール、その混合物の脂肪酸エステル基、たとえばオレイン酸およびオレイルアミン、ならびに同様の従来の有機金属リガンドを含む。
【0032】
金属系化合物は、金属または金属含有化合物、たとえば水素化物、無機または有機塩、オキシドなどから選択できる。本発明の例示的な実施形態で使用される変換条件およびプロセス条件によって、酸化物のみならずゼロ価金属を、プロセスで使用した金属化合物から生成することができる。アロイ、セラミック材料およびコンポジット材料が金属系化合物、特に金属系ナノ粒子から生成でき、そこでは多孔性が、さらなる使用した添加剤、その構造、分子量および固体含有率、ならびに金属系化合物含有率に従って広範囲に亘って調節できることが見出されている。特にナノサイズのポリマーカプセル金属系化合物をゾル/ゲルプロセス技術で従来使用されたゾルと化合させることによって、機械的、摩擦的、電気的および/または光学的特性の1つ以上が、金属系ナノ粒子のその固体含有率および組成を制御することによって調節できる材料を生成できることも見出されている。得られた材料特性は、これらのカプセル化金属系化合物の1次または平均粒径ならびに構造によって変わる。
【0033】
さらにポリマーカプセル化金属系化合物との組合せでのアルコキシドの使用は、ハイブリッドセラミックコンポジットをもたらすことができる。これらのコンポジットの熱膨張係数は、使用する金属または金属化合物およびゾル/ゲル中でのその固体含有率を適切に選択することによって調節できる。加えて、ゾルで使用するアルコキシドの選択および変換ステップ中の雰囲気の適正な選択は、本明細書で以下に説明するように、体積縮小の低減ならびに安定したエーロゲルおよびキセロゲルの生成をもたらすことができる。ある金属系化合物は、これに限定されるものではないが、ゼロ価金属、金属酸化物またはその組合せ、たとえば周期律表の主族の金属、遷移金属、たとえば銅、金および銀、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたはプラチナから、または希土類金属から選択される金属および金属化合物の、粉末、好ましくはナノモルファスナノ粒子を含みうる。使用できる金属系化合物はたとえば鉄、コバルト、ニッケル、マンガンまたはその混合物、たとえば鉄−プラチナ混合物を含む。磁気金属酸化物たとえば鉄オキシドおよびフェライトも使用できる。磁気またはシグナリング特性を有する材料を提供するために、磁気金属またはアロイ、たとえばフェライト、たとえばCo、Ni、またはMnのガンマ鉄オキシド、マグネタイトまたはフェライトを使用できる。そのような材料の例は、国際特許出願公開WO83/03920、WO83/01738、WO88/00060、WO85/02772、WO89/03675、WO90/01295およびW090/01899ならびに米国特許第4,452,773号、4,675,173号および4,770,183号で説明されている。
【0034】
加えて、周期系のII−VI族、III−V族、またはIV族の半導体を含む、半導体化合物および/またはナノ粒子は、本発明のさらなる例示的な実施形態で使用できる。適切なII−VI族半導体は、たとえばMgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTeまたはその混合物を含む。III−V族半導体の例は、たとえばGaAs、GaN、GaP、GaSb、InGaAs、InP、InN、InSb、InAs、AlAs、AlP、AlSb、AlS、またはその混合物を含む。IV族半導体の例は、ゲルマニウム、鉛およびケイ素を含む。また上述の半導体いずれかの組合せも使用できる。
【0035】
本発明のある例示的な実施形態において、複合金属系ナノ粒子を金属系化合物として使用することも好ましい場合がある。これらはたとえばPeng et al., Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanoparticles with Photostability and Electronic Accessibility, Journal of the American Chemical Society (1997, 119: 7019 - 7029)によって説明されている、いわゆるコア/シェル構成を含みうる。
【0036】
半導体ナノ粒子は上に挙げた材料から選択でき、それらは直径約1〜30nmの、または好ましくは約1〜15nmのコアを有することができ、その上にさらなる半導体ナノ粒子が約1〜50単層の、または好ましくは約1〜15単層の深さまで結晶化できる。コアおよびシェルは、CdSeまたはCdTeコア、およびCdSまたはZnSシェルを含む、上に挙げた材料の組合せで存在しうる。
【0037】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、金属系化合物は、ガンマ放射線からマイクロ波放射線に亘る波長での放射線に対するその吸収特性に基づいて、または特に約60nmまたはそれ以下の波長領域の放射線を放出するその能力に基づいて選択できる。金属系化合物を適切に選択することによって、非線形光学特性を有する材料を生成できる。これらはたとえばマーカーとして、または治療用放射線吸収インプラントを形成するのに適切である、特定の波長のIR放射線を遮断できる材料を含む。金属系化合物、その粒径ならびにそのコアおよびシェルの直径は、放射が約20nm〜1000nmの範囲で行われるように、光子放出化合物を提供するために選択できる。あるいは放射線に曝露させたときに異なる波長の光子を放出する適切な化合物の混合物を選択できる。本発明の1つの例示的な実施形態において、反応停止を必要としない蛍光金属系化合物が選択できる。
【0038】
本発明のさらなる例示的な実施形態で使用できる金属系化合物は、任意の金属、金属酸化物、またはその混合物から成り、直径が約2nm〜800nmの、または好ましくは約5nm〜600nmの範囲である、ナノワイヤの形のナノ粒子を含む。
【0039】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、金属系化合物は、ほぼ任意の種類の金属化合物、たとえば上述の金属化合物より成るメタロフラーレンまたはエンドヘドラル炭素ナノ粒子から選択できる。特に好ましいものは、それぞれ希土類金属、たとえばセリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムなどを含むエンドヘドラルフラーレンまたはエンドメタロフラーレンである。エンドヘドラルメタロフラーレンも、上述のような遷移金属を含むことができる。適切なエンドヘドラルフラーレン、たとえばマーカー目的で使用できるエンドヘドラルフラーレンは、米国特許第5,688,486号および国際特許出願公開WO 93/15768でさらに説明されている。たとえばカーバイドを含む炭素コーティング金属ナノ粒子は、金属系化合物として使用できる。または金属含有ナノモルファス炭素種、たとえばナノチューブ、オニオン;並びに金属含有スス、グラファイト、ダイヤモンド粒子、カーボンブラック、炭素繊維なども本発明の他の例示的な実施形態で使用できる。上述のような金属系化合物は、ポリマーシェルにカプセル化できる。金属系化合物のポリマー内へのカプセル化は、各種の従来の重合技法、たとえば分散、懸濁または乳化重合によって達成できる。好ましいカプセル形成ポリマーはこれに限定されるわけではないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチロールまたは他のラテックス形成ポリマー、ポリビニルアセテート、または導電性ポリマーを含む。金属系化合物を含有するこれらのポリマーカプセルは、たとえば格子を結合することおよび/またはポリマーによるさらなるカプセル化によってさらに修飾でき、あるいはそれらはエラストマー、金属酸化物、金属塩または他の適切な金属化合物、たとえば金属アルコキシドを用いてさらにコーティングできる。従来の技法は場合によりポリマーを修飾するために使用でき、使用される個々の組成物の要件に応じて利用できる。カプセル化金属系化合物の使用は凝集を防止または阻害できるので、カプセル化前駆材料は、生じるコンポジット材料を凝集させずに、および/またはそれに悪影響を及ぼさずにゾル/ゲルプロセスにて処理できる。
【0040】
金属系化合物のカプセル化は、使用した個々の材料に応じて共有結合または非共有結合カプセル化金属系化合物をもたらすことができる。ゾルと化合させるために、カプセル化金属系化合物はポリマー球、特にマイクロスフェアの形で、あるいは分散、懸濁または乳化粒子またはカプセルの形で提供できる。カプセル化金属系化合物、その分散物、懸濁物またはエマルジョン、特に好ましいミニエマルジョンを提供または製造するのに適切な従来方法を利用できる。適切なカプセル化方法はたとえば、オーストラリア特許出願公開AU 9169501、欧州特許出願公開EP 1205492、EP 1401878、EP 1352915およびEP 1240215、米国特許第6380281号、米国特許出願公開第2004192838号、カナダ特許出願公開CA 1336218、中国特許出願公開CN 1262692T、英国特許出願公開GB 949722、および独国特許出願公開DE 10037656;ならびにS. Kirsch, K. Landfester, O. Shaffer and M. S. El-Aasser, "Particle morphology of carboxylated poly-(n-butyl acrylate)/(poly(methyl methacrylate) composite latex particles investigated by TEM and NMR," Acta Polymerica 1999, 50, 347-362; K. Landfester, N. Bechthold, S. Forster and M. Antonietti, "Evidence for the preservation of the particle identity in miniemulsion polymerization, " Macromol. Rapid Commun. 1999, 20, 81-84; K. Landfester, N. Bechthold, F. Tiarks and M. 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【0041】
カプセル化金属系化合物は、サイズが約1nm〜500nm、または約5nm〜5μmの微粒子の形で生成できる。金属系化合物は、適切なポリマーのミニまたはマイクロエマルジョン中でさらにカプセル化できる。ミニまたはマイクロエマルジョンという用語は、水相、油相、および表面活性物質より成る分散物として理解できる。そのようなエマルジョンは、適切な油、水、1つまたは複数の界面活性剤、場合により1つまたは複数のコサーファクタント、および1つまたは複数の疎水性物質を含むことができる。ミニエマルジョンは、界面活性剤によって安定化された、容易に重合し得る、モノマー、オリゴマーまたは他のプレポリマー反応物質の水性エマルジョンを含み、乳化液滴の粒径は約10nm〜500nmまたはそれ以上である。
【0042】
さらにカプセル化金属系化合物のミニエマルジョンは、非水性媒体、たとえばホルムアミド、グリコール、または非極性溶媒から作成できる。原則として、プレポリマー反応物質は、そこからポリ(メタ)アクリル樹脂を使用できるプレポリマー反応物質を含む、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、プラスチック、合成ゴム、押出しポリマー、射出成形ポリマー、成形用ポリマーなど、またはその混合物から選択できる。
【0043】
金属系化合物をカプセル化するために適切なポリマーの例は、これに限定されるわけではないが、脂肪族または芳香族ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリペンテンのホモポリマーまたはコポリマー;ポリブタジエン;ポリビニル、たとえばポリビニルクロライドまたはポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロシアノアクリレート;ポリアクリルニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン;バイオポリマー、たとえばコラーゲン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース、たとえばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースフタレート;カゼイン、テキストラン、ポリサッカライド、フィブリノゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチドコグリコシド)、ポリグリコリド、ポリヒドロキシブチラート、ポリアルキルカーボネート、ポリオルトエステル、ポリエステル、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリジオキサノン、ポリエチレンテレフタレート、ポリマレイン酸、ポリタルトロン酸、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸;ポリエチレンビニルアセテート、シリコーン;ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル尿素)、ポリエーテル、たとえばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、プルロニック、ポリテトラメチレングリコール;ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアセテートフタレート)、シェラック、およびこれらのホモポリマーまたはコポリマーの組合せを含むことができる。使用できるさらなるカプセル形成材料は、ポリ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、アルキド樹脂、エポキシポリマーまたは樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェノール、ポリビニルエステル、ポリシリコーン、ポリアセタール、セルロース性アセテート、ポリビニルクロライド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリフルオロカーボン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、シアナートエステルポリマーを含むことができ、上述のいずれかの混合物またはコポリマーが好ましい。
【0044】
本発明のある例示的な実施形態において、金属系化合物をカプセル化するためのポリマーは、モノ(メタ)アクリレート−、ジ(メタ)アクリレート−、トリ(メタ)アクリレート−、テトラアクリレート−およびペンタアクリレート−ベースポリ(メタ)アクリレートから選択できる。適切なモノ(メタ)アクリレートの例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ヒドロキシ−メチル化N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチル−N−メチロールメタクリルアミド、N−エチル−N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチロール−アクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、t−オクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、クロロエチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびフェニルアクリレートを含む;ジ(メタ)アクリレートは、2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、1,2−ブタンジオール−ジアクリレート、1,4−ブタンジオール−ジアクリレート、1,4−ブタンジオール−ジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオール−ジメタクリレート、1,10−デカンジオール−ジメタクリレート、ジエチレン−グリコール−ジアクリレート、ジプロピレングリコール−ジアクリレート、ジメチルプロパンジオール−ジメタクリレート、トリエチレングリコール−ジメタクリレート、テトラエチレングリコール−ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオール−ジアクリレート、ネオペンチルグリコール−ジアクリレート、ポリエチレングリコール−ジメタクリレート、トリプロピレングリコール−ジアクリレート、2,2−ビス[4−(2−アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス(2−メタクリルオキシエチル)N,N−1,9−ノニレン−ビスカルバメート、1,4−シクロヘキサンジメタノール−ジメタクリレート、およびジアクリル酸ウレタンオリゴマーから選択できる;トリ(メタ)アクリレートは、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−トリメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−トリアクリレート、トリメチロールプロパン−トリメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレートまたはペンタエリスリトール−トリアクリレートから選択できる;テトラ(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトール−テトラアクリレート、ジ−トリメチロプロパン−テトラアクリレート、またはエトキシ化ペンタエリスリトール−テトラアクリレートから選択できる;適切なペンタ(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトール−ペンタアクリレートまたはペンタアクリレート−エステル;並びに上述のいずれかの混合物、コポリマー、および組合せから選択できる。
【0045】
医療用途では、バイオポリマーまたはアクリル樹脂は好ましくは、金属系化合物をカプセル化するためのポリマーとして選択できる。
【0046】
カプセル形成ポリマー反応物質は、重合性モノマー、オリゴマーまたはエラストマー、たとえばポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレン、またはシリコーン、および上述のいずれかの混合物、コポリマーまたは組合せから選択できる。金属系化合物は、エラストマーポリマー単独で、または熱可塑性ポリマーおよびエラストマーポリマーの混合物で、または熱可塑性ポリマーシェルおよびエラストマーポリマーシェルが交互になった一連のシェル/層でカプセル化できる。
【0047】
金属系化合物をカプセル化するための重合反応は、縮重合反応を含む任意の適切な従来の重合反応、たとえばラジカルまたは非ラジカル重合、酵素または非酵素重合でありうる。使用するエマルジョン、分散物または懸濁物は、水性、非水性、極性または非極性系の形でありうる。適切な界面活性剤を添加することにより、乳化または分散液滴の量およびサイズは、必要に応じて調節できる。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性イオン性または非イオン性界面活性剤、あるいはその任意の組合せでありうる。好ましいアニオン性界面活性剤は、これに限定されるわけではないが、石鹸、アルキルベンゾールスルホナート、アルカンスルホナート、オレフィンスルホナート、アルキルエーテルスルホナート、グリセリンエーテルスルホナート、α−メチルエステルスルホナート、スルホン化脂肪酸、アルキルサルフェート、脂肪アルコールエーテルサルフェート、グリセリンエーテルサルフェート、脂肪酸エーテルサルフェート、ヒドロキシ混合エーテルサルフェート、モノグリセリド(エーテル)サルフェート、脂肪酸アミド(エーテル)サルフェート、モノ−およびジ−アルキルスルホスクシナート、モノ−およびジアルキルスルホスクシナメート、スルホトリグリセリド、アミドソープ、エーテルカルボン酸およびその塩、脂肪酸イソチオナート、脂肪酸アルコシナート、脂肪酸タウリド、N−アシルアミノ酸、たとえばアシルラクチラート、アシルタートラート、アシルグルタメートおよびアシルアスパルテート、アルキルオリゴグルコシドサルフェート、コムギをベースとする植物由来生成物を含む、タンパク質脂肪酸濃縮物;およびアルキル(エーテル)ホスフェートを含むことができる。
【0048】
本発明のある例示的な実施形態における、カプセル化反応に適切なカチオン性界面活性剤は、4級アンモニウム化合物、たとえばジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、Stepantex(登録商標)VL90(Stepan)、エステルクアット、特に4級化脂肪酸トリアルカノールアミンエステル塩、長鎖1級アミンの塩、4級アンモニウム化合物、たとえばヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTMA−Cl)、Dehyquart(登録商標)A(セントリモニウムクロライド、Cognis)、またはDehyquart(登録商標)LDB 50(ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、Cognis)の群から選択できる。
【0049】
金属系ゾルの形でありうる金属系化合物は、重合反応の開始前、または開始中に添加でき、適切な溶媒または溶媒混合物中の分散物、エマルジョン、懸濁物または固体溶液、あるいは金属系化合物の溶液、あるいはその任意の混合物として提供できる。カプセル化プロセスは、場合により開始剤、スターターまたは触媒の使用による重合反応を必要とする場合があり、ポリマーカプセル、スフェロイドまたは液滴中での重合によって生成されたポリマーにおける金属系化合物のインサイチューカプセル化が提供される。そのようなカプセル化混合物中の金属系化合物の固体含有率は、ポリマーカプセル、スフェロイドまたは液滴中の固体含有率が、ポリマー粒子内の金属系化合物の約10重量%〜80重量%となりうるように選択できる。
【0050】
場合により、カプセル化金属系化合物を結合またはコーティングするために、追加の金属系前駆化合物を重合反応の完了後に、固体または液体のいずれかで添加できる。本発明の代わりの例示的な実施形態において、上述の金属系化合物は、ポリマー粒子、ポリマー球、ポリマーバブルまたはポリマーシェルにコーティングできる。金属系化合物は、ポリマースフェロイドまたは液滴に共有結合的または非共有結合的に結合できる化合物から選択できる。コーティングポリマー粒子では、液体媒体重合プロセスで生成されたポリマー粒子が使用でき、たとえばエマルジョン重合により金属系化合物をカプセル化するための上述した方法も、懸濁物、エマルジョンまたは分散物中でポリマー粒子を生成するために使用でき、ポリマー粒子は次に金属系化合物により、通例、金属系化合物を重合反応混合物に添加することによってコーティングできる。
【0051】
「カプセル化金属系化合物」という用語は、金属系化合物でコーティングされたポリマー粒子を含むとして理解できる。
【0052】
ポリマーの液滴サイズおよび金属系化合物の固体含有率は、カプセル化金属系化合物および/または金属コーティングポリマー粒子の固体含有率が重合反応質量の約5重量%〜60重量%の範囲内であるように選択できる。
【0053】
本発明の1つの例示的な実施形態において、重合中の金属系化合物のインサイチューカプセル化は、第1の重合/カプセル化ステップの完了後のさらなるモノマー、オリゴマーまたはプレポリマー剤の添加によって反復できる。少なくとも1つの同様の反復ステップを提供することによって、多層コーティングポリマーカプセルを生成できる。またポリマースフェロイドまたは液滴に結合した金属系化合物は、続いてモノマー、オリゴマーまたはプレポリマー反応物質を添加し、金属系化合物をポリマーカプセルによってオーバーコートすることによってカプセル化できる。そのようなプロセスステップの反復は、金属系化合物を含む多層ポリマーカプセルを提供できる。
【0054】
これらのカプセル化ステップのいずれをも相互に組み合わせることができる。本発明の詳細な例示的な実施形態において、ポリマーカプセル化金属系化合物はエラストマー化合物によってさらにカプセル化できるので、外側エラストマーシェルを有するポリマーカプセルが生成される。
【0055】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、ポリマーカプセル化金属系化合物は、ベシクル、リポソームまたはミセル、あるいはオーバーコーティングでさらにカプセル化できる。この目的のための適切な界面活性剤は、上述の界面活性剤、そして炭化水素残基またはケイ素残基を含みうる疎水性基を有する化合物、たとえばポリシロキサン鎖、炭化水素ベースモノマー、オリゴマーおよびポリマー、あるいは脂質またはリン脂質、あるいはその任意の組合せ、特にグリセリルエステル、たとえばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリメタクリレート、ポリビニルブチルエーテル、ポリスチレン、ポリシクロペンタジエニルメチルノルボルネン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリシロキサン、または他の任意な種類の界面活性剤を含みうる。
【0056】
さらにポリマーシェルによっては、ポリマーカプセル化金属系化合物をベシクル、オーバーコートなどでカプセル化するための界面活性剤は、親水性界面活性剤または親水性残基を有する界面活性剤または親水性ポリマー、たとえばポリスチレンスルホン酸、ポリ−N−アルキルビニルピリジニウムハロゲニド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミノ酸、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリサッカライド、たとえばアガロース、デキストラン、デンプン、セルロース、アミラーゼ、アミロペクチンまたはポリエチレングリコール、あるいは適切な分子量のポリエチレンイミンから選択できる。また疎水性または親水性ポリマー材料あるいは脂質ポリマー化合物の混合物は、ポリマーカプセル化金属系化合物をベシクルでカプセル化するために、またはさらに金属系化合物をカプセル化するポリマーをオーバーコーティングするために使用できる。
【0057】
加えて、カプセル化金属系化合物は、ゾル/ゲル形成成分と反応できる、適切なリンカー基またはコーティングによる官能化によって化学修飾できる。たとえばそれらは有機シラン化合物または有機官能性シランによって官能化できる。ポリマーカプセル化金属系化合物の修飾のためのそのような化合物は、以下のゾル/ゲル成分の節でさらに説明する。
【0058】
本発明の例示的な実施形態に従って生成された材料へのポリマーカプセル化金属系化合物の包含は、充填剤の特殊な形として見なすことができる。分散または懸濁状のポリマーカプセル化金属系化合物の粒径および粒径分布は、完成したポリマーカプセル化金属系化合物の粒子の粒径および粒径分布と一致する場合があり、それらは生成された材料の孔径に著しい影響を及ぼしうる。ポリマーカプセル化金属系化合物は、その平均粒径および単分散度を測定するために動的光散乱法によって特徴付けられる。
ゾル/ゲル形成成分
【0059】
ポリマーカプセル化金属系化合物は、次に固体金属含有コンポジット材料に変換する前にゾルと化合させることができる。
【0060】
本発明の例示的な実施形態で利用されるゾルは、従来の方式でいずれの種類のゾル/ゲル形成成分からも調製できる。適切な(uitable)成分および/またはゾルは、ポリマーカプセル化金属系化合物との組合せのために選択できる。
【0061】
ゾル/ゲル形成成分は、各種金属、たとえばケイ素、アルミニウム、ボロン、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移金属のアルコキシド、オキシド、アセテート、ニトレートから、そしてプラチナ、モリブデン、イリジウム、タンタル、ビスマス、タングステン、バナジウム、コバルト、ハフニウム、ニオブ、クロム、マンガン、レニウム、鉄、金、銀、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、ランタンおよびランタニド、並びにその組合せから選択できる。
【0062】
本発明の一部の例示的な実施形態において、ゾル/ゲル形成成分は、上述の金属の金属酸化物、金属カーバイド、金属ニトリド、金属オキシニトリド、金属カーボンニトリド、金属オキシカーバイド、金属オキシニトリド、または金属オキシカーボンニトリドあるいはそのいずれかの組合せでありうる。コロイド粒子の形でありうるこれらの化合物は、ゾル/ゲルを形成するために酸素含有化合物、たとえばアルコキシドと反応させることができるか、あるいはコロイド形でない場合は充填剤として添加できる。ゾルが金属系化合物、たとえば上で触れた金属系化合物から形成される場合、これらのゾル形成化合物の少なくとも一部がポリマーシェル内でカプセル化でき、すなわちカプセル化金属系化合物およびゾル形成化合物は実質的に同じでありうる。
【0063】
本発明の他の例示的な実施形態において、ゾルは少なくとも1つのゾル/ゲル形成成分、たとえばアルコキシド、金属アルコキシド、コロイド粒子、特に金属酸化物などに由来しうる。ゾル/ゲル形成成分として使用できる金属アルコキシドは、各種の用途で使用できる従来の化学化合物でありうる。これらの化合物は、一般式M(OR)xを有することができ、式中、Mは、水の存在下でたとえば加水分解および重合しうる金属アルコキシドからのいずれかの金属である。Rは、直鎖または分岐でありうる1〜30個の炭素原子のアルキルラジカルであり、xは、金属イオン原子価に等しい値を有する。金属アルコキシド、たとえばSi(OR)4、Ti(OR)4、Al(OR)3、Zr(OR)3およびSn(OR)4を使用できる。特にRは、メチル、直鎖、あるいは分岐エチル、プロピルまたはブチルラジカルでもよい。適切な金属アルコキシドのさらなる例は、Ti(イソプロポキシ)4、Al(イソプロポキシ)3、Al(sec−ブトキシ)3、Zr(n−ブトキシ)4およびZr(n−プロポキシ)4を含むことができる。
【0064】
ゾルはケイ素アルコキシド、たとえばテトラアルコキシシランから作成でき、ここでアルコキシは分岐または直鎖であり、約1〜25個の炭素原子、たとえばテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラ−n−プロポキシシラン、並びにそのオリゴマー形を含有しうる。また適切なものは、アルコキシが上で定義した通りであり、アルキルが、約1〜25個の炭素原子を有する置換または非置換、分岐または直鎖アルキルでありうる、アルキルアルコキシシラン、たとえばメチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドイツのDegussa AGより市販されているオクチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシデシルトリメトキシシラン(MDTMS);アリールトリアルコキシシラン、たとえばフェニルトリメトキシシラン(PTMOS)、ドイツのDegussa AGより市販されているフェニルトリエトキシシラン;フェニルトリプロポキシシラン、およびフェニルトリブトキシシラン、フェニル−トリ−(3−グリシジルオキシ)−シラン−オキシド(TGPSO)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)TRIAMO、ドイツのDegussa AGより入手)、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチル−ジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビスフェノール−A−グリシジルシラン;(メタ)アクリルシラン、フェニルシラン、オリゴマーまたはポリマーシラン、エポキシシラン;フルオロアルキルシラン、たとえばフルオロアルキルトリメトキシシラン、約1〜20個の炭素原子の部分または完全フッ化直鎖または分岐フルオロアルキル残基を備えたフルオロアルキルトリエトキシシラン、たとえばDegussa AGより商標名Dynasylan(登録商標)F8800およびF8815で入手できるトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランおよび修飾反応性フルオロアルキルシロキサン;並びに、上述のいずれかの混合物である。本発明の別の例示的な実施形態において、ゾルは炭素ベースナノ粒子およびアルカリ金属塩、たとえばアセテート、並びに、酸、たとえば亜リン酸、ペントキシド、ホスフェート、または有機亜リン酸化合物、たとえばアルキルホスホン酸から調製できる。ゾルを形成するために使用できるさらなる物質は、カルシウムアセテート、亜リン酸、P25、並びに、トリエチルホスファイトをゾルとしてエタンジオール中に含み、それにより生分解性コンポジットは炭素ベースナノ粒子および生理学的に許容される無機成分から調製できる。化学量論的Ca/P比を変化させることによって、そのようなコンポジットの分解速度を調節できる。CaのPに対するモル比は、約0.1〜10、または好ましくは約1〜3でありうる。
【0065】
本発明のある例示的な実施形態において、ゾルはコロイド溶液から調製でき、コロイド溶液は、炭素ベースナノ粒子、並びに、前駆物質としてのカチオンまたはアニオン重合性ポリマー、たとえばアルギネートを、好ましくは、水性溶媒を含む極性または非極性溶媒中の溶液、分散物または懸濁物中に含みうる。適切な凝固剤、たとえば無機または有機酸または塩基、特にアセテートおよびジアセテートの添加により、炭素含有コンポジット材料は沈殿またはゲル形成によって生成できる。場合により、得られた材料の特性を調節するためにさらなる粒子を添加できる。これらの粒子は、たとえば金属、金属酸化物、金属カーバイド、またはその混合物、並びに、金属アセテートまたはジアセテートも含みうる。
【0066】
ゾルで使用するゾル/ゲル成分は、コロイド金属酸化物、好ましくはそれらを他のゾル/ゲル成分およびポリマーカプセル化金属系化合物と化合する上で十分な長さに亘って安定したコロイド金属酸化物も含みうる。そのようなコロイド金属酸化物は、これに限定されるわけではないがSiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、SnO2、ZrSiO4、B23、La23、Sb25およびZrO(NO32を含むことができ、SiO2、Al23、ZrSiO4およびZrO2が好ましくは選択できる。少なくとも1つのゾル/ゲル形成成分のさらなる例は、アルミニウムヒドロキシドゾルまたはゲル、アルミニウムトリ−sec−ブチラート、AlOOHゲルなどを含む。
【0067】
これらのコロイドゾルの一部はゾル形では酸性である場合があり、したがって加水分解中に使用するとき、加水分解媒体に追加の酸を添加する必要はない。これらのコロイドゾルも各種の方法で調製できる。たとえば粒径が約5〜150nmのチタニアゾルは、含水TiO2を酒石酸で解膠することにより、そしてアンモニア洗浄Ti(SO42を塩酸で解膠をすることにより、チタンテトラクロライドの酸性加水分解によって調製できる。そのようなプロセスはたとえばWeiserによってInorganic Colloidal Chemistry, Vol. 2, p. 281 (1935)に説明されている。ゾルへの汚染物質の混入を妨げるために、金属のアルキルオルトエステルを約1〜3の酸性pH範囲にて水混和性溶媒の存在下で加水分解することができ、そこではコロイドが約0.1〜10重量パーセントの量で分散物中に存在する。
【0068】
本発明のある例示的な実施形態において、ゾルはゾル/ゲル形成成分、たとえば上述の金属の金属ハライドから作成することができ、ゾル/ゲル形成成分は酸素官能化ポリマーカプセル化金属系化合物と反応して所望のゾルを形成する。この場合、ゾル/ゲル形成成分は、適切に官能化されたポリマーカプセル化金属系化合物と反応できる酸素含有化合物、たとえばアルコキシド、エーテル、アルコールまたはアセテートでありうる。しかしながら通常、ポリマーカプセル化金属系化合物は適切なブレンド方法によってゾル中に分散させることができるか、または金属系ゾルを重合プロセスに組み入れることができ、そのプロセスでは金属系ゾル化合物の少なくとも一部をポリマーによってカプセル化できる。
【0069】
ゾルが加水分解性ゾル/ゲルプロセスによって形成される場合、添加した水とゾル/ゲル形成成分、たとえばアルコキシド、オキシド、アセテート、ニトリドまたはその組合せのモル比は、約0.001〜100、または好ましくは約0.1〜80、またはさらに好ましくは約(aout)0.2〜30の範囲内にある。
【0070】
本発明の例示的な実施形態によって使用できる代表的な加水分解性(hydrolytric)ゾル/ゲルプロセシング手順では、ゾル/ゲル成分を水の存在下で(場合により化学修飾された)ポリマーカプセル化金属系化合物とブレンドする。場合により、さらなる溶媒またはその混合物、および/または以下でさらに詳細に説明するように、さらなる添加剤、たとえば界面活性剤、充填剤などを添加できる。さらなる添加剤、たとえば架橋剤もゾルの加水分解速度を制御するための、または架橋速度を制御するための触媒として添加できる。そのような触媒も以下でさらに詳細に説明する。そのようなプロセシングは、従来のゾル/ゲルプロセシングと同様である。非加水分解性ゾルは、上述の方式と似た方式で、しかしおそらく本質的に水の非存在下で作成できる。
【0071】
ゾルが非加水分解性ゾル/ゲルプロセスによって、または成分をリンカーと化学結合させることによって形成されるとき、ハライドと酸素含有化合物とのモル比は約0.001〜100、または好ましくは約0.1〜140、またはさらに好ましくは約0.1〜100、またなおさらに好ましくは約0.2〜80の範囲でありうる。
【0072】
非加水分解性ゾル/ゲルプロセスでは、金属アルコキシドならびにカルボン酸およびその誘導体、またはカルボン酸官能化ポリマーカプセル化金属系化合物の使用も適切でありうる。適切なカルボン酸は、酢酸、アセト酢酸、ギ酸、リンゴ酸、クロトン酸、またはコハク酸を含む。
【0073】
水の非存在下での非加水分解性ゾル/ゲルプロセシングは、アルキルシランまたは金属アルコキシドを無水有機酸、酸無水物または酸エステルなどと反応させることによって実施できる。酸およびその誘導体は、ゾル/ゲル成分として、あるいはポリマーカプセル化金属系化合物を修飾および/または官能化するために適切でありうる。
【0074】
本発明のある例示的な実施形態において、ゾルは無水ゾル/ゲルプロセシングで少なくとも1つのゾル/ゲル形成成分からも形成でき、反応物質は無水有機酸、酸無水物または酸エステル、たとえばギ酸、酢酸、アセト酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、部分または完全フッ化カルボン酸、その無水物およびエステル、たとえばメチル−またはエチルエステル、あるいは上述のいずれかの混合物から選択できる。無水アルコールとの混合物中で酸無水物を使用することが好ましく、そこではこれらの成分のモル比は、利用したアルキルシランのケイ素原子における残留アセトキシ基の量を測定する。
【0075】
通例、生じるゾルまたはゾルおよびポリマーカプセル化金属系化合物の組合せで望ましい架橋度に従って、酸性または塩基性触媒のいずれかを特に加水分解性ゾル/ゲルプロセスで利用できる。
【0076】
適切な無機酸は、たとえば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、並びに、希フッ化水素酸も含む。適切な塩基は、たとえばナトリウムヒドロキシド、アンモニアおよびカーボネート、並びに、有機アミンも含む。非加水分解性ゾル/ゲルプロセスでの適切な触媒は、無水ハライド化合物、たとえばBCl3、NH3、AlCl3、TiCl3またはその混合物を含むことができる。
【0077】
本発明の加水分解性ゾル/ゲルプロセシングステップでの加水分解に影響を及ぼすために、水混和性溶媒、たとえば水混和性アルコールまたはその混合物を含む溶媒の添加を使用できる。アルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールおよび低分子量エーテルアルコール、たとえばエチレングリコールモノメチルエーテルを使用できる。少量の非水混和性溶媒、たとえばトルエンも、本発明のある例示的な実施形態で好都合に使用できる。これらの溶媒は、上述した反応などのポリマーカプセル化反応でも使用できる。
(添加剤)
【0078】
本発明のある例示的な実施形態によって生成されたコンポジット材料の特性、たとえば機械的応力への耐性、導電性、衝撃強度または光学特性は、適切な量の添加剤の利用によって、特に有機ポリマー材料の添加により変化させることができる。ゾルまたは組合せには、その成分とは反応しないさらなる添加剤を添加できる。
【0079】
適切な添加剤の例は、充填剤、孔形成剤、金属および金属粉末などを含む。無機添加剤および充填剤の例は、酸化ケイ素およびアルミニウムオキシド、アルミノシリケート、ゼオライト、ジルコニウムオキシド、チタンオキシド、タルク、グラファイト、カーボンブラック、フラーレン、粘土材料、フィロシリケート、シリサイド、ニトリド、金属粉末、特に触媒活性遷移金属、たとえば銅、金、銀、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたはプラチナの金属粉末を含むことができる。そのような添加剤によって、生じる材料の機械的、光学的および熱的特性をさらに変化および調節することが可能である。そのような添加剤の使用は、所望の特性を有する特別仕様のコーティングを生成するために特に適切でありうる。
【0080】
さらなる適切な添加剤は、充填剤、架橋剤、可塑剤、潤滑剤、耐炎剤、ガラスまたはガラスファイバ、カーボンファイバ、綿、織物、金属粉末、金属化合物、ケイ素、酸化ケイ素、ゼオライト、チタンオキシド、ジルコニウムオキシド、アルミニウムオキシド、アルミニウムシリケート、タルカム、グラファイト、すす、フィロシリケートなどを含むことができる。
【0081】
本発明のある例示的な実施形態では、ゾルまたは組合せ網目は、少なくとも1つの架橋剤の、ゾル、ポリマーカプセル化金属系化合物または組合せへの添加によってさらに修飾できる。架橋剤は、たとえばイソシアナート、シラン、ジオール、ジカルボン酸、(メタ)アクリレート、たとえば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピルトリメトキシシラン、3−(トリメチルシリル)プロピルメタクリレート、イソホロンジイソシアナート、ポリオール、グリセリンなどを含みうる。生体適合架橋剤、たとえばグリセリン、ジエチレントリアミノイソシアナートおよび1,6−ジイソシアナートへキサンを使用でき、そこでゾル/ゲルは比較的低温、たとえば約100℃以下で固体材料に変換される。ポリマーカプセル化金属系化合物の包含による組合せでの適切な架橋剤の使用は、異方性多孔性、すなわちコンポジット材料での孔径勾配を有するコンポジット材料を形成するために使用できる。異方性多孔性は、上述したように、そして以下に述べるように充填剤によってさらに影響される場合がある。
【0082】
充填剤は、サイズおよび多孔度を変更するために使用できる。本発明の一部のある例示的な実施形態では、非ポリマー充填剤が好ましい。非ポリマー充填剤は、たとえば熱処理または他の条件によって、材料特性に悪影響を及ぼすことなく除去または分解できる物質のいずれでもよい。一部の充填剤は適切な溶媒中で分解する場合があり、この方式で材料から除去できる。さらに選択した熱条件下で溶解性物質に変換できる非ポリマー充填剤も使用できる。これらの非ポリマー充填剤は、たとえば熱条件下で除去または分解できるアニオン性、カチオン性または非イオン性界面活性剤を含みうる。
【0083】
本発明の別の例示的な実施形態では、充填剤は無機金属塩、特にアルカリまたはアルカリ土類金属カーボネート、サルフェート、サルファイト、ニトレート、ニトライト、ホスフェート、ホスファイト、ハライド、スルフィド、オキシド、またはその混合物を含む、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属からの塩を含みうる。他の適切な充填剤は、ホルミアート、アセテート、プロピオナート、マラート、マレアート、オキサラート、タートラート、シトレート、ベンゾアート、サリチラート、フタレート、ステアレート、フェノラート、スルホナート、またはアミン、並びに、その混合物も含む、有機金属塩、たとえばアルカリまたはアルカリ土類および/または遷移金属塩を含む。
【0084】
本発明のまた別の例示的な実施形態では、ポリマー充填剤を利用できる。適切なポリマー充填剤は、カプセル化ポリマーとして上述のもの、特に球またはカプセルの形を有するものでありうる。
【0085】
飽和直鎖または飽和分岐脂肪族炭化水素も使用でき、それらはホモポリマーまたはコポリマーでありうる。ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブテン、ポリペンテン、並びに、そのコポリマーおよびその混合物は好ましくは使用できる。ポリマー充填剤はまた、メタクリレートまたはポリステアリンより形成されたポリマー粒子、並びに、導電性材料を提供するために使用できる導電性ポリマー、たとえばポリアセチレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリジアルキルフルオレン、ポリチオフェンまたはポリピロールも含みうる。
【0086】
上述の手順の一部または多くにおいて、溶解性充填剤の使用はポリマー充填剤の添加と組合せることができ、ここで充填剤は熱プロセシング条件下で揮発性であるか、または熱処理の間に揮発性化合物に変換することができる。このようにしてポリマー充填剤によって形成された孔は他の充填剤によって形成された孔と組合わされて、等方性または異方性細孔分布を達成できる。
【0087】
非ポリマー充填剤の適切な粒径は、生じるコンポジット材料の所望の多孔性および/または孔のサイズに基づいて測定できる。生じるコンポジット材料の多孔性は、ドイツ特許出願公開DE 103 35 131およびPCT Application No.PCT/EP04/00077で説明されているプロセスなどの処理プロセスによって生成できる。
【0088】
本発明の例示的な実施形態で使用できるさらなる添加剤は、たとえば乾燥制御化学添加剤、たとえばグリセロール、DMF、DMSO、あるいはゾルのゲルおよび固体コンポジットへの変換の制御に適切でありうる他の任意の適切な高沸点または粘性液体を含むことができる。材料の熱処理後に充填剤の除去に使用できる溶媒は、たとえば(高温)水、希または濃無機または有機酸、塩基などを含みうる。適切な無機酸は、たとえば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、並びに、希フッ化水素酸を含むことができる。適切な塩基は、たとえばナトリウムヒドロキシド、アンモニア、カーボネート、並びに、有機アミンを含むことができる。適切な有機酸は、たとえばギ酸、酢酸、トリクロロメタン酸、トリフルオロメタン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、およびその混合物を含むことができる。
【0089】
本発明のある例示的な実施形態では、本発明のコンポジット材料のコーティングを適切な溶媒または溶媒混合物中の組合せの液体溶液または分散物または懸濁物として利用でき、続いて溶媒の乾燥または蒸発を伴う。適切な溶媒は、たとえば、そのいずれも分散剤、界面活性剤、または他の添加剤と混合できる、メタノール、エタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブトキシジグリコール、ブトキシエタノール、ブトキシイソプロパノール、ブトキシプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ブチレングリコール、ブチルオクタノール、ジエチレングリコール、ジメトキシジグリコール、ジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、エトキシエタノール、エチルヘキサンジオール、グリコール、ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシルアルコール、ヘキシレングリコール、イソブトキシプロパノール、イソペンチルジオール、3−メトキシブタノール、メトキシジグリコール、メトキシエタノール、メトキシイソプロパノール、メトキシメチルブタノール、メトキシPEG−10、メチラール、メチルヘキシルエーテル、メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、PEG−4、PEG−6、PEG−7、PEG−8、PEG−9、PEG−6メチルエーテル、ペンチレングリコール、PPG−7、PPG−2−ブテト−3、PPG−2ブチルエーテル、PPG−3ブチルエーテル、PPG−2メチルエーテル、PPG−3メチルエーテル、PPG−2プロピルエーテル、プロパンジオール、プロピレングリコール、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トリメチルヘキサノール、フェノール、ベンゼン、トルエン、キシレン;並びに、水、および上に挙げた物質の混合物を含みうる。上述および後述の溶媒はいずれもゾル/ゲルプロセスで使用できる。
【0090】
溶媒は1つまたは複数の有機溶媒、たとえばエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルおよびブトキシイソプロパノール(1,2−プロピレングリコール−n−ブチルエーテル)、テトラヒドロフラン、フェノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、好ましくはエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールおよび/またはジプロピレングリコールメチルエーテル、メチルエチルケトンも含むことができ、好ましくはイソプロパノールおよび/またはn−プロパノールが選択できる。
【0091】
充填剤は溶媒による処理の性質および時間に応じて、生じるコンポジット材料から一部または完全に除去できる。本発明のある例示的な実施形態では、充填剤の完全な除去が好ましい。
(変換)
【0092】
ゾルとポリマーカプセル化金属系化合物の組合せは、固体金属含有コンポジット材料に変換することができる。ゾル/組合せのゲルへの変換は、たとえばエージング、硬化、pHの上昇、溶媒の蒸発によって、あるいは任意の他の従来方法によって達成できる。
【0093】
ゾル/組合せは最初にゲルに変換され、続いて固体コンポジット材料に変換できるか、またはゾル/組合せを直接コンポジット材料に変換でき、特にそこでは使用した成分はポリマーガラス状コンポジット、エーロゲルまたはキセロゲルを生成することができ、さらにそれらは室温で生成することができる。
【0094】
変換ステップは、ゾルまたはゲルを乾燥させることによって達成できる。本発明のある例示的な実施形態において、この乾燥ステップはゾルまたはゲルの熱処理であり、さらに場合により約−200℃〜3500℃の範囲での、または好ましくは約−100℃〜2500℃の範囲での、またはさらに好ましくは約−50℃〜1500℃の範囲での、またさらに好ましくは約0℃〜1000℃で、またなおさらに好ましくは約50℃〜800℃で、またはほぼ室温における熱分解または炭化ステップでありうる。熱処理はレーザの利用によって、たとえば選択的レーザ焼結(selective laser sintering、SLS)によっても実施できる。
【0095】
ゾル/組合せの固体材料への変換は、様々な条件下で実施できる。変換は各種の雰囲気、たとえば不活性雰囲気、たとえば窒素、SF6、または希ガス、たとえばアルゴン、あるいはその任意の混合物中で実施できるか、あるいはそれは酸化雰囲気、たとえば酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、または酸化窒素、またはその任意の混合物中で実施できる。さらに不活性雰囲気を反応性ガス、たとえば水素、アンモニア、C1〜C6飽和脂肪族炭化水素、たとえばメタン、エタン、プロパンおよびブタン、その混合物、または他の酸化ガスとブレンドできる。
【0096】
本発明のある例示的な実施形態では、熱処理の間の雰囲気は実質的に酸素を含まない。酸素含有率は好ましくは約10ppm以下、またさらに好ましくは約1ppm以下である。
【0097】
熱処理によって得たコンポジット材料は、酸化雰囲気中の高温下における材料の処理を含めて、適切な酸化および/または還元剤によってさらに処理できる。酸化雰囲気の例は、空気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、または同様の酸化剤を含む。ガス状酸化剤は不活性ガス、たとえば窒素、または希ガス、たとえばアルゴンと混合することもできる。多孔性、孔径および/または表面特性を変更するための、生じるコンポジット材料の部分酸化は、約50℃〜800℃の範囲の高温下で実施できる。ガス状酸化剤による材料の部分酸化以外に、液体酸化剤も利用できる。液体酸化剤は、たとえば濃硝酸を含むことができる。濃硝酸は室温を超える温度でコンポジット材料に接触することができる。適切な還元剤、たとえば水素ガスなどを使用して、変換ステップの後に金属化合物をゼロ価金属へ還元できる。
【0098】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、コンポジット材料を形成するために高圧を印加できる。変換ステップは超臨界条件下で、たとえば超臨界二酸化炭素中で乾燥させることによって実施でき、これは高い多孔性のエーロゲルコンポジットをもたらすことができる。ゾル/ゲルをコンポジット材料に変換するために、減圧または真空を印加することもできる。
【0099】
適切な条件、たとえば温度、雰囲気および/または圧力は、最終コンポジット材料の所望の特性および材料を形成するために使用した成分に応じて利用できる。ポリマーカプセル化金属系化合物は、使用した変換条件によっては分解されずに形成されたコンポジット材料中になおも存在する場合がある。
【0100】
酸化および/または還元処理によって、または添加剤、充填剤または機能材料の包含によって、生成されたコンポジット材料の特性は制御された方式で影響を受ける、および/または変更される。たとえば無機ナノ粒子またはナノコンポジット、たとえば層状シリケートを包含させることによって、コンポジット材料の表面特性を親水性または疎水性にすることが可能である。本発明のさらなる例示的な実施形態により、これに限定されるわけではないが、高温下の空気中での酸化、酸化酸またはアルカリ中での煮沸を含む適切な酸化または還元後処理ステップを使用して孔径を変化させることによって、あるいは変換ステップ中に完全に分解できる揮発性成分を混合し、それにより炭素含有層におそらく孔を残すことによって、コンポジット材料を適切に修飾することが可能である。
【0101】
コーティングまたはバルク材料は、適切な方法でコンポジット材料への変換の前後に折り返し、エンボス加工、打ち抜き、プレス、押し出し、ギャザリング、射出成形などによって、基体に塗布する、あるいは成形または形成する前または後のいずれかに構成できる。このようにして規則型または非規則型のある一定の構造を、コンポジット材料を用いて生成したコーティングに包含させることができる。
【0102】
組合せ材料は従来の技法によってさらに処理可能であり、たとえばそれらは成形パッドなどを構築するために、またはこれに限定されるわけではないが、インプラント、たとえばステント、代用骨などを含む任意の基体上へコーティングを形成するために使用できる。
【0103】
成形パッドはほぼ任意の所望の形で作成できる。成形パッドは、パイプ、ビーズ成形体、プレート、ブロック、直平行六面体、立方体、球または中空球の形で、あるいは他の任意の3次元構造、たとえば長円形状、ポリエーテル形状、たとえば三角形、棒状、プレート状、四面体状、ピラミッド状、八面体状、十二面体状、二十面体状、菱形状、プリズム状、あるいは円形状、たとえばボール状、回転楕円体または円筒状、レンズ状、リング状、ハニカム形状などでありうる。
【0104】
多層半完成成形形状を利用することにより、コンポジット材料から非対称構造を作成できる。材料は、これに限定されるわけではないが、キャスティングプロセス、たとえばサンドキャスティング、シェル成形、フルモールドプロセス、ダイキャスティング、遠心キャスティングを含む任意の適切な従来の技法を利用することによって、あるいはプレス、焼結、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、押し出し、カレンダ加工、融接、圧接、機械ろくろ成形、スリップキャスティング、ドライプレス、乾燥、焼成、フィラメントワインディング、プルトルージョン、ラミネーション、オートクレーブ、硬化またはブレーディングによって所望の形にすることができる。
【0105】
ゾル/組合せから形成されたコーティングは液体、パルプ状またはペースト状で、たとえば塗装、ファーニシング(furnishing)、位相反転、分散噴霧または溶融コーティング、押し出し、スリップキャスティング、浸漬によって、あるいはホットメルトとして塗布できる。組合せが固体状態である場合、それはコーティングとして、たとえば粉末コーティング、フレームスプレー、焼結などの技法を使用して適切な基体に塗布できる。浸漬、スプレー、スピンコーティング、インクジェット印刷、タンポンおよびマイクロドロップコーティングあるいは3D印刷も使用できる。コーティングは不活性基体に塗布され、乾燥され、必要により熱処理され、ここで基体は熱安定性であるか、または熱不安定性であり、熱処理後にコーティングのみがコンポジット材料の形で残存するように基体の実質的に完全な分解を生じる。
【0106】
組合せゾルまたはゲルは、任意の適切な従来の技法によって処理できる。好ましい技法は、折り返し、スタンピング、打ち抜き、印刷、押し出し、ダイキャスティング、射出成形、リーピング(reaping)などを含む。コーティングは、組合せゲルが基体に積層体として貼り付けられる転写プロセスによっても形成できる。コーティング基体を硬化させることができ、続いてコーティングを熱処理される基体から剥離することができる。基体のコーティングは、適切な印刷手順、たとえばグラビア印刷、スクレーピングまたはブレード印刷、スプレー技法、高温ラミネーション、またはウェット・イン・ウェット・ラミネーションを使用して提供できる。コンポジットフィルムのさらに均質でより厚いコーティングを提供するために、複数の薄層を基体に連続的に貼り付けることが可能である。
【0107】
上述の転写手順を利用することによって、異なる材料層および層の異なるシーケンスを用いることによって、多層勾配フィルムを形成することもできる。これらの多層コーティングのコンポジット材料への変換は、密度および他の特性が場所ごとに変化しうる勾配材料を提供できる。
【0108】
本発明の別の例示的な実施形態において、本発明による組合せは、乾燥または熱処理して、適切な従来の技法によって、たとえばボールミルまたはローラミルなどで粉砕することによって変化させることができる。この変化した材料は粉末、フラットブランク、ロッド、球、中空球として各種のグレイニング(砂目立て)などに使用でき、各種の形で粒状物または押し出し物を形成するために、当該分野で既知の従来の技法によってさらに処理できる。コンポジット材料を形成するために、必要に応じて適切なバインダを伴う高温圧力手順も使用できる。
【0109】
追加の工程の選択肢は、これに限定されるわけではないが、他の従来の技法、たとえばスプレー熱分解、沈殿による粉末の形成、およびスピニング技法、たとえばゲルスピニング技法によるファイバの形成を含むことができる。
【0110】
コンポジット材料、特にセラミックおよびコンポジット半完成材料、成形パッドおよびコーティング、並びに、実質的に純粋な金属系材料、たとえば混合金属酸化物の構造は、熱処理に選択された温度および雰囲気に応じて、そしてコンポジット材料を生成するために使用される成分の特定の組成に応じて、非結晶から完全な結晶に及ぶことができる。
【0111】
多孔性および孔径も、単にゾル中の成分を変更させることによって、および/またはカプセル化金属系化合物の粒径を変化させることによって広範囲に亘って変化しうる。
【0112】
さらに成分およびプロセシング条件の適切な選択により、溶解性であるか、または生理液の存在下で基体から剥離できる生体内分解性コーティングまたはコーティングおよび材料を生成できる。たとえばコンポジット材料を含むコーティングは、冠状動脈インプラント、たとえばステントに使用でき、そこでコーティングはカプセル化マーカー、たとえばシグナリング特性を有する金属化合物をさらに含み、それゆえ物理的、化学的、または生物的検出方法、たとえばX線、核磁気共鳴(NMR)、コンピュータ断層撮影法、シンチグラフィー、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、超音波、高周波(RF)などによって検出可能な信号を生成できる。マーカーとして使用される金属化合物は、ポリマーシェルにカプセル化できるか、またはその上にコーティングできるので、また金属であり得るインプラント材料を妨害するのを防止可能であり、そのような妨害は電食または相関する問題につながることが多い。コーティングされたインプラントはカプセル化マーカーによって生成でき、該コーティングはインプラント上に永久に残存する。本発明の1つの例示的な実施形態において、生理的条件下での埋め込みの後、コーティングは迅速に溶解できるか、またはステントから剥離でき、一時的なマーカーとなる。例示的な実施例は下記の実施例7で説明され、実施例7ではカプセル化金属系化合物、たとえば本明細書で述べているようなカプセル化金属系化合物、たとえばデキストランコーティング鉄粒子は上述の材料のいずれかのシリカゾルに包含され、粒子形でありうるエーロゲルに変換されるか、またはインプラントにコーティングとして塗布され、該エーロゲルは体液に溶解性であり、それにより鉄粒子を放出する。このコーティングはさらに薬物、たとえば実施例7ではパクリタキセルを包含でき、それゆえインプラントまたはインプラントのコーティングから金属マーカーと同時に放出される薬物の監視を低侵襲検出法によって可能にし、さらに放出された薬物の程度および領域分布の測定を可能にする。
【0113】
治療用活性化合物がコンポジット材料の形成に使用される場合、それらは好ましくは生体内分解性または吸収性ポリマー内にカプセル化でき、生理的条件下での活性成分の制御放出を可能にする。
【0114】
本発明はここで、以下の非制限的な実施例によってさらに説明する。これらの実施例における解析およびパラメータ測定は、次の方法によって実施した:
【0115】
粒径は、CIS粒子分析器(Ankersmid)でTOT法(Time-Of-Transition)、X線粉末回折、またはTEM(透過型電子顕微鏡、Transmission-Electron-Microscopy)によって測定されたように、平均粒径として与えられる。懸濁物、エマルジョンまたは分散物の平均粒径は、動的光散乱法によって測定した。材料の平均孔径は、SEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscopy)によって測定した。多孔性および比表面積は、BET法に従ってN2またはHe吸収技法によって測定した。
【実施例1】
【0116】
ミニエマルジョン重合反応では、脱イオン水5.8g、アクリル酸5.1mM(Sigma Aldrichより入手)、メタクリル酸メチルMMA 0.125mol(Sigma Aldrichより入手)およびSDS界面活性剤15重量%水溶液9.5g(Fischer Chemicalより入手)を、窒素雰囲気下(窒素流2リットル/分)で、還流冷却器を装備した250ml 4口フラスコに導入した。反応混合物を120rpmで1時間撹拌して、その間85℃の油浴で加熱し、安定したエマルジョンを得た。平均粒径80nmのエタノールイリジウムオキシドゾル0.1g(濃度1g/l)をエマルジョンに添加して、混合物をさらに2時間撹拌した。次に水4ml中のカリウムペルオキソジサルフェート200mgを含む開始溶液を30分間かけてゆっくり添加した。4時間後、混合物をpH7に中和して、生じたカプセル化イリジウムオキシド粒子のミニエマルジョンを、室温まで冷却した。エマルジョン中のカプセル化イリジウムオキシド粒子の平均粒径は約120nmであった。エマルジョンを真空下で72時間乾燥させて、濃度5mg/mlのエタノール中に生じたカプセル化粒子の懸濁物を調製した。マグネシウムアセテート四水和物(Mg(CH3COO)2x4H2Oの20重量%エタノール溶液100mlおよび10%硝酸10mlから、室温にて3時間撹拌することによって、均質ゾルを調製した。テトラエトキシオルトシランTEOS(Degussaより入手)をゾルに添加して、混合物を室温にて20rpmでさらに2時間撹拌した。ゾル2mlおよび上述の方法で調製したカプセル化イリジウムオキシド粒子のエタノール懸濁物2mlを合せて、室温にて20rpmで30時間撹拌した。続いて組合せをそれぞれ2cm×2cmサンプルの形で3つの基体:金属基体、セラミック基体、およびガラス基体に薄層塗布した。コーティングした基体を管状炉に移し、空気雰囲気中、350℃で4時間かけて熱処理した。
【0117】
室温まで冷却した後、3つの例示的なサンプルはそれぞれ、ざらざらした手触りでしっかりと接着した濁りをおびたコーティングを得た。走査電子顕微鏡SEMによる解析により、コーティングが多孔性であり、平均孔径が約80nmであることが明らかになった。
【実施例2】
【0118】
ミニエマルジョンは上の実施例1のように調製した。しかしながら、得られたPMMAカプセルを大型化するために、使用した界面活性剤15% SDS水溶液の量を0.25gに減量した。得られたPMMAカプセル化イリジウムオキシド粒子は、平均粒径が400nmであった。エマルジョンを真空下で72時間乾燥させて、濃度5mg/mlのエタノール中でカプセル化粒子の懸濁物を調製した。
【0119】
上の実施例1で概説した手順に従って、均質ゾルをマグネシウムアセテート四水和物の20重量%エタノール溶液100mlから生成して、10%硝酸10mlの室温における添加、3時間の撹拌、次にTEOS 4ml(Degussaより入手)を添加し、室温にて20rpmでさらに2時間の撹拌を続けた。ゾル2mlおよびカプセル化イリジウムオキシドの懸濁物2mlを合せ、室温にて20rpmで30分間撹拌して、続いて金属基体、セラミック基体、およびガラス基体に上の実施例1のようにスプレーした。コーティングした基体を次に管状炉に移し、空気雰囲気中、350℃で4時間かけて熱処理した。得られたサンプルを室温まで冷却すると、各基体はざらざらした手触りでしっかりと接着した濁りをおびたコーティングを得た。SEMによる解析により、多孔性コーティングの平均孔径は、約250nmであることが明らかになった。
【実施例3】
【0120】
ミニエマルジョン重合反応では、脱イオン水5.8g、アクリル酸5.1mM(Sigma Aldrichより入手)、メタクリル酸メチル0.125mol(またSigma Aldrichより入手)およびSDS界面活性剤の15重量%水溶液0.5g(Fischer Chemicalより入手)を窒素雰囲気下(窒素流2リットル/分)で、フラスコ凝縮器を装備した250ml 4口フラスコ内で合せて、85℃の油浴内で120rpmにて約1時間撹拌して、安定したエマルジョンを得た。エマルジョンに平均粒径15mmのエタノールマグネシウムオキシドゾル0.1g(濃度2g/l)を添加して、混合物をさらに2時間撹拌した。続いて水4ml中のカリウムペルオキソジサルフェート200mgを含む開始溶液を30分間かけてゆっくり添加した。4時間後、混合物をpH7に中和して、PMMAカプセル化マグネシウムオキシド粒子の得られたミニエマルジョンを室温まで冷却した。得られたエマルジョンの平均粒径は約100nmであった。エマルジョンを真空下で72時間乾燥させて、PMMAカプセル化MgO粒子を得た。
【0121】
次にマグネシウムアセテート四水和物の20重量%エタノール溶液100mlから均質ゾルを調製して、それに10%硝酸10mlを室温にて添加し、混合物を3時間撹拌した。ゾルにTween(登録商標)20 1mlを界面活性剤として添加して、マグネシウムオキシド粉末1.5mgおよび上記の方法で調製したPMMAカプセル化マグネシウムオキシド粒子15mgを絶えず撹拌しながら添加した。ゲル化を促進するために、グリセリン2mgを添加して、粘性混合物を金属型に注入した。対流オーブンで乾燥させた後、成形パッドを管状炉内で空気雰囲気中、350℃の熱分解プロセスで8時間処理した。主にマグネシウムオキシドより成る、得られた成形パッドは、多孔性が60%で平均孔径が60nmであることが明らかになった。
【実施例4】
【0122】
上の実施例3で説明したプロセスに従って、PMMAカプセルのサイズを大型化するために、界面活性剤である15% SDS溶液を0.25gまで減らし、ミニエマルジョンを生成した。得られたPMMAカプセル化マグネシウムオキシド粒子の平均粒径約350nmであった。エマルジョンを真空下で72時間乾燥させて、MgOを含有する乾燥カプセルを得た。
【0123】
次にマグネシウムアセテート四水和物の20重量%エタノール溶液100mlから均質ゾルを調製して、続いて10%硝酸10mlを室温にて添加し、3時間かけて撹拌した。次に界面活性剤としてのTween(登録商標)20 1ml、マグネシウムオキシド粉末1.5mg、および上記の方法で調製したカプセル化マグネシウムオキシド粒子15mgを撹拌しながら添加した。ゲル化を促進するために、グリセリン2mgを添加して、粘性混合物を金属型に注入した。対流オーブンで乾燥させた後、成形パッドを管状炉内で空気雰囲気中、350℃の熱分解プロセスで8時間処理した。主にマグネシウムオキシドより成る、得られた成形パッドは、多孔性が50%そして平均孔径は180nmであった。
【実施例5】
【0124】
ミニエマルジョン重合反応では、脱イオン水5.8g、アクリル酸5.1mM(Sigma Aldrichより入手)、メタクリル酸メチルMMA 0.125mol(Sigma Aldrichより入手)およびSDS界面活性剤15重量%水溶液0.5g(Fischer Chemicalより入手)を、窒素雰囲気下(窒素流2リットル/分)で、還流冷却器を装備した250ml 4口カラムに導入した。安定したエマルジョンが得られるまで、混合物を85℃の油浴で120rpmにて1時間撹拌した。エマルジョンに平均粒径15nmのエタノールマグネシウムオキシドゾル0.05g、平均粒径60nmのイリジウムオキシドナノ粒子のエタノール分散物0.05g、平均粒径160nmのタンタルカーバイド粒子のエタノール分散物0.05g、および平均粒径25nmのエタノールジルコニウムジオキシド分散物0.05g(各分散物の濃度は2g/lであった)を添加して、得られた混合物をさらに2時間撹拌した。次にカリウムペルオキソジサルフェート200mgを含む水4ml中の開始溶液を30分間かけてゆっくり添加した。4時間後、混合物をpH7に中和して、得られたカプセル化混合オキシド粒子を含むミニエマルジョンを室温まで冷却した。エマルジョン中のカプセルの平均粒径は200nmであった。真空下で72時間乾燥させて、濃度5mg/lの乾燥粒子のエタノール懸濁物を生成した。
【0125】
次にテトラメチルオルトシランTMOS 300g(Degussaより入手)および脱イオン水300g、界面活性剤としてのTween(登録商標)20 3g、触媒としての1N HCl 1gから均質ゲルを調製して、これを室温にて30分間撹拌した。このゲル5mlをカプセル化混合オキシド粒子のエタノール分散物5mlと合せて、得られた混合物を6時間撹拌して、続いて上述したように金属、セラミック、および石英ガラスの基体にスプレーした。その後、サンプルを700℃で4時間焼結させた。得られた混合金属酸化物コンポジットコーティングは、多孔性が40%そして平均粒径は50nmであった。
【実施例6】
【0126】
PMMAカプセル化イリジウムオキシド粒子のエタノール懸濁物を上の実施例1で説明したように、5mg/mlの濃度で調製した。
【0127】
次にまた実施例1で説明したように、ゾルを調製した。ゾル2mlをカプセル化イリジウムオキシドのエタノール懸濁物2mlと合せ、室温にて30分間撹拌して(20rpm)、続いて市販の金属ステント(KAON 18.5mm、Fortimedix)にスプレーして、120℃で乾燥した。固体の弾性コーティングを得た。コーティングしたステントをビーカーに導入して、PBS緩衝溶液中において37.5℃で75rpmにて撹拌した。5時間後、コーティングがステントから剥離し、PMMAカプセル化イリジウムオキシド粒子がビーカーの底に形成された沈殿物中に見出された。これにより、たとえば人体への挿入後に迅速に溶解、またはステントから剥離できる一時マーカー物質としての、カプセル化イリジウムオキシドコーティングの適合性を確認した。
【実施例7】
【0128】
テトラメチルオルトシラン300g(Degussaより入手)を脱イオン水300gおよび触媒としての1N HCl 1gと共に室温にてガラス容器内で30分間撹拌して、均質ゾルを生成した。ゾル3mlを、市販のMRI造影剤(Endorem、Laboratoire Guerbetより入手)の、粒径80〜120nm(製造元仕様)のデキストランコーティング常磁性酸化鉄粒子を含有する懸濁物3mlと合せ、常磁性酸化鉄(II−、III−)粒子の濃度を生理食塩溶液での希釈により5mg/mlに設定し、2mlエッペンドルフカップ内で室温にて5日間かけてゲル化させ、真空乾燥させた。このようにして調製された、放射線透過性および常磁性、生分解特性を備えた球形を有し、体積約0.8mlの、やや曇ったエーロゲルをPBS緩衝溶液4ml中で37.5℃で30日間振とう(75rpmにて)することによってインキュベートし、緩衝液上澄みを毎日除去して、新しい緩衝溶液と交換した。上澄みから放出された鉄の量をフレーム原子吸光分析によって測定した。インプラント体の放出された鉄粒子の平均放出速度は1日当りの総量の6〜8%に達し、緩衝溶液でのエーロゲル体の溶解と相関していた。
【0129】
さらなる試験において、テトラメチルオルトシラン300g(Degussaから入手)を脱イオン水300gと触媒として1N HCl 1gとを共に室温にてガラス容器内で30分間撹拌して、均質ゾルを生成した。ゾル5mlを、市販のMRI造影剤(Endorem、Laboratoire Guerbetより入手)の、80〜120nmの粒径(製造元仕様)デキストランコーティング常磁性酸化鉄粒子を含有する懸濁物1.5mlと合せ、常磁性酸化鉄(II−、III−)粒子の濃度を生理食塩溶液で希釈して5mg/mlに設定し、6%エタノールパクリタキセル溶液2.5mlとさらに合せ、2mlエッペンドルフカップ内で室温にて5日間かけてゲル化させ、真空乾燥させた。このようにして調製された、放射線透過性、常磁性、生分解性および活性物質放出特性を備えた球形を有し、体積約1.2mlのやや曇ったエーロゲルをPBS緩衝溶液4ml中で37.5℃にて30日間振とう(75rpmにて)しながらインキュベートし、緩衝液上澄みを毎日除去して、新しい緩衝溶液と交換した。上澄みから放出された鉄の量をフレーム原子吸光分析によって測定し、放出されたパクリタキセルの量をHPLCによって測定した。インプラント本体への鉄粒子の平均放出速度は1日当りの総量の6〜8%に達し、1日で放出されたパクリタキセルの5〜10%の平均放出量と相関しており、緩衝溶液へのエーロゲル体の溶解とも相関がみられた。
【0130】
本発明の様々な例示的な実施形態をこのように詳細に説明し、その多くの明白な変形例が本発明の精神または範囲から逸脱せずに可能であることから、上で説明した発明が上の説明で述べた特定の詳細事項に限定されないことが理解されるはずである。本発明の実施形態は、本明細書に開示されているか、または詳細な説明から明らかであり、それに含まれている。一例として示した詳細な説明は、説明した特定の実施形態のみに本発明を限定するものではない。
【0131】
上述の出願、およびその中で引用されたまたは出願中のすべての文献(出願引用文献"appln. cited documents")および出願引用文献で引用または参照されたすべての文献、本明細書で引用または参照されたすべての文献(本明細書引用文献"herein cited documents")、および本明細書引用文献で引用または参照されたすべての文献は、本明細書または参照により本明細書で組み入れられた任意の文献で挙げた製品の任意なる製造者の指示書、説明書、製品仕様書、および製品シートと共に、参照により本明細書に組み入れられ、本発明の実施に際して利用できる。本出願での任意の文献の引用および識別は、これら文献が本発明の従来技術として利用可能であることの承認ではない。本開示では、特に請求項では、「comprises(含む)」、「comprised(含まれた)」、「comprising(含んでいる)」などの用語は、最も広義に解釈しうる意味を有することができることに注目する;たとえばそれらは「includes(含む)」、「included(含まれた)」、「including(含んでいる)」などを意味することができる;そして「consisting essentially of(本質的に〜からなる)」および「consists essentially of(本質的〜からなる)」などの用語は、最も広義に解釈しうる意味を有し、たとえばそれらは明示的に列挙されない要素を許容するが、従来技術に見出される、あるいは本発明の基本的または新規な特徴に影響を及ぼす要素を除外する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの金属系化合物および少なくとも1つのポリマーを含む少なくとも1つの第1の組成物を提供するステップと;
b)ゾル/ゲル形成成分からゾルを形成するステップと;
c)第2の組成物を生成するために、前記少なくとも1つの第1の組成物を前記ゾルと化合させるステップと;
d)第2の組成物を金属含有コンポジット材料に変換するステップと;
を含む、金属含有コンポジット材料を製造するプロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の組成物がポリマーカプセル化金属系化合物であり、前記プロセスが、前記少なくとも1つの第1の組成物を形成するために、少なくとも1つの金属系化合物をポリマーシェルでカプセル化するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の組成物が前記少なくとも1つの金属系化合物でコーティングされたポリマー粒子であり、前記プロセスがポリマー粒子を調製するステップと、前記粒子を少なくとも1つの金属系化合物でコーティングするステップとをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属系化合物がコロイド粒子の形である、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(b)が水の存在下で加水分解性ゾル/ゲルプロセスを使用して実施される、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(b)が水の非存在下で非加水分解性ゾル/ゲルプロセスを使用して実施される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの金属系化合物がゼロ価金属、金属合金、金属酸化物、無機金属塩、有機金属塩、有機金属化合物、金属アルコキシド、半導体金属化合物、金属カーバイド、金属ニトリド、金属オキシニトリド、金属カーボンニトリド、金属オキシカーバイド、金属オキシニトリド、金属オキシカルボニトリド、金属系コアシェルナノ粒子、金属含有エンドヘドラルフラーレン、またはエンドメタロフラーレンの少なくとも1つを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの金属系化合物がナノ結晶性粒子、微結晶性粒子、またはナノワイヤの少なくとも1つの形である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの金属系化合物の平均粒径が、約0.5nm〜1000nm、好ましくは約0.5nm〜900nm、さらに好ましくは約0.7nm〜800nmである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ゾル/ゲル形成成分がアルコキシド、金属アルコキシド、金属酸化物、金属アセテート、金属ニトレート、または金属ハライドの少なくとも1つを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ゾル/ゲル形成成分がケイ素アルコキシド、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランのオリゴマー形、アルキルアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン、(メタ)アクリルシラン、フェニルシラン、オリゴマーシラン、ポリマーシラン、エポキシシラン;フルオロアルキルシラン、フルオロアルキルトリメトキシシラン、またはフルオロアルキルトリエトキシシランの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(b)が有機溶媒の存在下で実施され、ゾルが約0.1%〜90%の有機溶媒、好ましくは約1%〜90%の、さらに好ましくは約5%〜90%の、そして最も好ましくは約20%〜70%の有機溶媒を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記金属系化合物が、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチルメタクリレート、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、アルキド樹脂、エポキシポリマー、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェノール、ポリビニルエステル、ポリシリコーン、ポリアセタール、セルロース性アセテート、ポリビニルクロライド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリフルオロカーボン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、またはシアナートエステルポリマーの少なくとも1つを含むポリマー材料にカプセル化される、請求項2および4〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記金属系化合物がポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレン、シリコーン、または上述のいずれかのコポリマーの少なくとも1つを含むエラストマーポリマー材料にカプセル化される、請求項2および4〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記金属系化合物が有機材料の複数のシェルまたは層の少なくとも1つにカプセル化される、請求項2および4〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記少なくとも1つの金属系化合物がベシクル、リポソーム、ミセル、または適切なコーティング材料のオーバーコートの少なくとも1つにさらにカプセル化される、請求項2および4〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ゾル/ゲル形成成分と反応できる、適切なリンカー基またはコーティングの少なくとも1つによって、前記少なくとも1つの第1の組成物を化学修飾するステップをさらに含む、請求項2および4〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記少なくとも1つの金属系化合物および前記ゾル/ゲル形成成分の少なくとも1つが実質的に同じである、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ゾル/ゲル形成成分の少なくとも1つがポリマーシェルにカプセル化された金属系化合物である、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
少なくとも1つのさらなる添加剤を前記少なくとも1つの第1の組成物、前記ゾル、または前記第2の組成物の少なくとも1つに添加するステップをさらに含む、請求項2〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記少なくとも1つのさらなる添加剤が生物活性化合物、治療用活性化合物、充填剤、界面活性剤、酸、塩基、架橋剤、孔形成剤、可塑剤、潤滑剤、耐炎材料、ガラス、ガラスファイバ、カーボンファイバ、綿、織物、金属粉末、金属化合物、ケイ素、酸化ケイ素、ゼオライト、チタンオキシド、ジルコニウムオキシド、アルミニウムオキシド、アルミニウムシリケート、タルカム、グラファイト、すす、フィロシリケート、乾燥制御化学添加剤、グリセロール、DMF、またはDMSOの少なくとも1つを含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
ステップ(d)が前記第2の組成物を乾燥させることを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記第2の組成物を、場合により減圧または真空の少なくとも1つの下で約−200℃〜3500℃の範囲の熱処理を使用して乾燥させる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
ステップ(d)が、約3500℃までの温度にて前記第2の組成物の熱分解または焼結熱処理の少なくとも1つを実施することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
少なくとも1つの架橋剤を前記少なくとも1つの第1の組成物、前記ゾル、または前記第2の組成物の少なくとも1つに添加することをさらに含み、前記架橋剤がイソシアナート、シラン、(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピルトリメトキシシラン、3−(トリメチルシリル)プロピルメタクリレート、イソホロンジイソシアナート、HMDI、ジエチレントリアミノイソシアナート、1,6−ジイソシアナートへキサン、またはグリセリンの少なくとも1つを含む、請求項2〜24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
少なくとも1つの充填剤を前記少なくとも1つの第1の組成物、前記ゾル、または前記第2の組成物の少なくとも1つに添加することをさらに含み、前記少なくとも1つの充填剤が前記ゾル/ゲル形成成分とは反応することができない、請求項2〜25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記少なくとも1つの充填剤が、無機塩、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤の少なくとも1つを含む非ポリマー材料である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記少なくとも1つの充填剤が、ポリマーカプセル化炭素種、ポリマーカプセル化フラーレン、ポリマーカプセル化ナノチューブ、ポリマーカプセル化オニオン、金属含有すす、グラファイト、ダイヤモンド粒子、カーボンブラック、またはカーボンファイバの少なくとも1つを含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
前記充填剤を前記固体金属含有コンポジット材料から少なくとも部分的に除去することをさらに含む、請求項26〜28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記充填剤を少なくとも部分的に除去することが、水、希鉱酸、濃鉱酸、希鉱塩基、濃鉱塩基、希有機酸、濃有機酸、希有機塩基、濃有機塩基、または有機溶媒の少なくとも1つに前記充填材を溶解することと、あるいは前記第2の組成物の変換中または変換後の少なくとも一方に前記充填剤を熱分解することとの、少なくとも1つを含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記請求項のいずれか一項に記載のプロセスによって生成できる金属含有コンポジット材料。
【請求項32】
前記材料がコーティングの形、またはバルク材料の形である、請求項31に記載の金属含有コンポジット材料。
【請求項33】
前記材料が生理液の存在下で生体内分解特性を有する、または前記材料が生理液の存在下で少なくとも部分溶解性である、請求項31または32に記載の金属含有コンポジット材料。

【公表番号】特表2008−528722(P2008−528722A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551683(P2007−551683)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050373
【国際公開番号】WO2006/077256
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507221243)シンベンション アーゲー (9)
【Fターム(参考)】