説明

金属帯の連続表面処理方法及び連続表面処理装置

【課題】電解液の電気分解により金属帯の表面に電気絶縁性被膜等の表面被膜を被覆させるにあたって、金属帯の板幅方向での被膜付着量の分布を均一にすることを可能とする。
【解決手段】連続的に搬送される金属帯1の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜やめっき被膜等の表面被膜を被覆させる金属帯1の連続表面処理方法において、表面被膜を被覆すべき金属帯1の被処理面1aと相対向して陽極電極33を配設し、陽極電極33から金属帯1の被処理面1aにラミナー流Wrとなる電解液を噴射し、金属帯1を陰極、陽極電極33を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、陽極電極33から噴射しているラミナー流としての電解液Wrを通して通電させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜やめっき被膜等の表面被膜を被覆させる金属帯の連続表面処理方法及び連続表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、連続的に搬送される鋼帯等の金属帯の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜やめっき被膜等の表面被膜を被覆させて、金属帯に電気絶縁性や装飾性、防錆性等の種々の機能を付加させる試みがなされている(例えば、特許文献1、2参照。)。このような金属帯の表面に表面被膜を被覆させる連続表面処理方法として、従来においては、以下に説明するような方法が知られている。
【0003】
図13は、従来の連続表面処理方法を実現するための連続表面処理装置103の構成の一例を概略的に示す側面図である。この連続表面処理装置103は、電解液Wの貯溜された電解槽161と、電解槽161の電解液Wに浸漬され、金属帯101の搬送方向Pに順に配設された複数の板状の電極131とを備えている。この連続表面処理装置103に対して金属帯101は、コンダクターロール181等により案内されつつ、電解液W中に浸漬されたうえで板状の電極131に相対向するように連続的に搬送される。
【0004】
そして、この連続表面処理装置103により金属帯101の表面に表面被膜を被覆させるうえでは、複数の板状の電極131の間に電圧を印加し、金属帯101と電解液Wとを通して複数の板状の電極131の間で通電させる。これにより、陽極となる電極131に相対向する金属帯101の表面に電解液Wの電気分解により表面被膜を被覆させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2003/048416号公報
【特許文献2】特公昭61−015960号公報
【特許文献3】特開平07−11490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の連続表面処理方法では、金属帯101を電解液Wに浸漬させた状態で電解液Wの電気分解を進行させる必要があるため、電解液Wに浸漬された金属帯101の板幅方向端部で電流集中が生じてしまっていた。このため、従来の連続表面処理方法では、板幅方向端部での被膜付着量が増大する結果、金属帯101の板幅方向での被膜付着量の分布が不均一なものになるという問題点があった。金属帯の表面に電気絶縁性被膜を被覆させる場合は、一般に電気絶縁性被膜の靭性があまり優れていないことから、被膜付着量が増大してしまうと容易に被膜の割れ、剥離を招くため、この問題点が一層顕著なものとして現れていた。
【0007】
また、従来の連続表面処理方法では、金属帯101を電解液Wに浸漬させた状態で電解液Wの電気分解を進行させる必要があるため、表面被膜を被覆すべき被処理面とは反対側の片面にも電流が回り込んでしまい、その反対側の片面にも表面被膜が被覆されてしまうという問題点があった。
【0008】
これらの問題点を解決するため、例えば、特許文献3に示すようなエッジマスクを用いて、金属帯101と電極131との間に流れる電流を金属帯101の板幅方向端部で部分的に遮断するという方法も提案されている。しかしながら、エッジマスクを用いる場合、その分、余計な装置コストの増大を招くうえ、金属帯101がその板厚方向に蛇行したときにエッジマスクに接触して金属帯101に疵がつく等の問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、電解液の電気分解により金属帯の表面に電気絶縁性被膜等の表面被膜を被覆させるにあたって、金属帯の板幅方向での被膜付着量の分布を均一にすることを可能とする金属帯の連続表面処理方法及び連続表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の金属帯の連続表面処理方法及び連続表面処理装置を発明した。
【0011】
第1発明は、連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜を被覆させる金属帯の連続表面処理方法において、前記電気絶縁性被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して陽極電極を配設し、前記陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる前記電解液を噴射し、前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記陽極電極から噴射しているラミナー流としての電解液を通して通電させることを特徴とする。
第2発明は、第1発明において、前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯の何れかの片面と相対向する陰極電極を更に配設し、前記電解液を噴射する工程では、前記陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するとともに、前記陽極電極から当該金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射し、前記通電させる工程では、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第3発明は、第1発明において、前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に配設し、前記通電させる工程では、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れか一つの発明において、前記電解液は、金属イオンと当該金属イオンに対してモル比で4倍以上のフッ素イオン、又は、金属と当該金属に対してモル比で4倍以上のフッ素とを含む錯イオンのうち何れか一種以上を含有するpH2〜7の水溶液であることを特徴とする。
第5発明は、連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解によりめっき被膜を被覆させる金属帯の連続表面処理方法において、前記めっき被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して陽極電極を配設し、前記陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる前記電解液を噴射し、前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記陽極電極から噴射しているラミナー流としての電解液を通して通電させることを特徴とする。
第6発明は、第5発明において、前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯の何れかの片面と相対向する陰極電極を更に配設し、前記電解液を噴射する工程では、前記陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するとともに、前記陽極電極から当該金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射し、前記通電させる工程では、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第7発明は、第5発明において、前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に配設し、前記通電させる工程では、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第8発明は、第7発明において、前記陽極電極を配設する工程では、前記陽極電極及び前記コンダクターロールの組からなる電極群を前記金属帯の搬送方向に複数配設することを特徴とする。
第9発明は、第5発明〜第8発明の何れか一つの発明において、前記電解液は、金属イオンを含むめっき液であることを特徴とする。
第10発明は、第1発明〜第9発明の何れか一つの発明において、前記搬送される金属帯は、その両面が前記被処理面であり、前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯の両側の被処理面に相対向して陽極電極を配設することを特徴とする。
第11発明は、連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜を被覆させるための金属帯の連続表面処理装置において、前記電気絶縁性被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して配設された陽極電極と、前記陽極電極に設けられ、当該陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルと、前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液を通して通電させる電圧印加手段とを備えることを特徴とする。
第12発明は、第11発明において、前記金属帯の何れかの片面と相対向して配設された陰極電極を更に備え、前記陰極電極は、当該陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルが設けられ、前記電圧印加手段は、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、当該陰極電極及び当該陽極電極のラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第13発明は、第11発明において、前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に備え、前記電圧印加手段は、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第14発明は、第11発明〜第13発明の何れか一つの発明において、前記電解液は、金属イオンと当該金属イオンに対してモル比で4倍以上のフッ素イオン、又は、金属と当該金属に対してモル比で4倍以上のフッ素とを含む錯イオンのうち何れか一種以上を含有するpH2〜7の水溶液であることを特徴とする。
第15発明は、連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解によりめっき被膜を被覆させるための金属帯の連続表面処理装置において、前記めっき被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して配設された陽極電極と、前記陽極電極に設けられ、当該陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルと、前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液を通して通電させる電圧印加手段とを備えることを特徴とする。
第16発明は、第15発明において、前記金属帯の何れかの片面と相対向して配設された陰極電極を更に備え、前記陰極電極は、当該陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルが設けられ、前記電圧印加手段は、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、当該陰極電極及び当該陽極電極のラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第17発明は、第15発明において、前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に備え、前記電圧印加手段は、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させることを特徴とする。
第18発明は、第17発明において、前記陽極電極及び前記コンダクターロールの組からなる電極群が前記金属帯の搬送方向に複数配設されていることを特徴とする。
第19発明は、第15発明〜第18発明の何れか一つの発明において、前記電解液は、金属イオンを含むめっき液であることを特徴とする。
第20発明は、第11発明〜第19発明の何れか一つの発明において、前記搬送される金属帯は、その両面が前記被処理面であり、前記陽極電極は、前記金属帯の両側の被処理面に相対向して配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明〜第20発明によれば、ラミナー流となる電解液を電極から金属帯に噴射しつつ電極と金属帯との間で電圧を印加することとしているので、電解液の電気分解により金属帯の被処理面に電気絶縁性被膜、めっき被膜等の表面被膜を被覆させるにあたって、金属帯を電解液に浸漬させることなく電解液の電気分解を進行させることが可能となる。このため、金属帯の板幅方向端部での電流集中を抑えつつ、金属帯の表面に表面被膜を被覆させることが可能となり、その分、金属帯の板幅方向での被膜付着量の均一化を図ることが可能となる。また、ラミナー流となる電解液を用いて電気分解していることから、金属帯に衝突せずに板幅方向両側を通過しようとするラミナー流から金属帯に対する電流の流れがほとんど生じなくなり、これによっても、金属帯の板幅方向端部での電流集中を抑えることが可能となる。また、電解液の電気分解を進行させている間、金属帯の被処理面に新しい電解液を噴射させているため、電気分解に寄与している金属イオンや錯イオンの濃度が一定の状態のまま電気分解を進行させることができ、その分、金属帯の板幅方向での被膜付着量の均一化を図ることが可能となるうえ、金属帯の被処理面に汚れ等が付着していてもこれを洗い流して除去しつつ表面被膜を被覆させることが可能となる。また、金属帯を電解液に浸漬させることなく電解液の電気分解を進行させることが可能となることから、金属帯の被処理面とは反対側の片面に電流が回り込むのを抑えることが可能となるうえ、陽極から陰極に電解液のみを通して流れる漏れ電流が生じるのを抑えることが可能となるうえ、電解槽に大量の電解液を貯溜させておく必要がなくなる。
第2発明、第6発明、第12発明、第16発明によれば、コンダクターロールを電極として利用していないので、コンダクターロールと金属帯との局所的な接触で発生するスパークによりスパーク疵が発生するのを防止することが可能となる。
第8発明、第18発明によれば、金属帯の被処理面にめっき被膜を被覆させる量や速度を増大させることができ、めっき被膜を高速で被覆させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る連続表面処理装置の構成を概略的に示す側面断面図である。
【図2】第1実施形態に係る電源装置により印加する電圧の例を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る陽極電極の構成を模式的に示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係る陰極電極及び陽極電極の動作状態を模式的に示す側面断面図である。
【図5】第1実施形態に係る陽極電極の動作状態を模式的に示す正面断面図である。
【図6】第2実施形態に係る連続表面処理装置の構成を概略的に示す側面断面図である。
【図7】第2実施形態に係る陰極電極及び陽極電極の動作状態を概略的に示す側面断面図である。
【図8】第2実施形態に係る陽極電極の動作状態を模式的に示す正面断面図である。
【図9】第3実施形態に係る陰極電極及び陽極電極の動作状態を模式的に示す側面断面図である。
【図10】コンダクターロール及び電極の組からなる電極群が搬送方向に複数配設される場合の連続表面処理装置の構成を概略的に示す側面断面図である。
【図11】実施例1の操業条件で電気絶縁性被膜の被覆処理を実行して得られた金属帯の被膜付着量の測定結果を示す図である。
【図12】実施例2の操業条件で錫めっき処理を実行して得られた金属帯の被膜付着量の測定結果を示す図である。
【図13】従来の連続表面処理装置の構成を概略的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者は、電解液の電気分解により金属帯の表面に電気絶縁性被膜等の表面被膜を被覆させるにあたって、金属帯の板幅方向での被膜付着量を均一にすることを可能とする連続表面処理方法について鋭意検討した。この結果、金属帯を電解液に浸漬させない構成としたうえで、ラミナー流となる電解液を陽極電極から金属帯に噴射しつつ陽極電極と金属帯との間で電圧を印加することによって、金属帯の板幅方向端部での電流集中を抑えつつ、金属帯の表面に表面被膜を被覆させることが可能であることを見出した。
【0015】
本発明は、このような検討内容に基づき案出されたものであり、以下、その実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る連続表面処理方法は、連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜や導電性のめっき被膜等の表面被膜を被覆させるものである。本発明に係る連続表面処理方法は、電気絶縁性被膜又はめっき被膜を被覆させる場合、これらのうちの何れを金属帯の表面に被覆させるかによって、電解液の種類、連続表面処理装置の構成等について相違している。このため、まず、電気絶縁性被膜を金属帯の表面に被覆させる連続表面処理方法について説明し、その後に、めっき被膜を金属帯の表面に被覆させる連続表面処理方法について説明する。
【0017】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る連続表面処理方法を実現するための連続表面処理装置3の構成を概略的に示す側面断面図である。
【0018】
本発明の適用の対象となる金属帯1は、コンダクターロール81等により連続的に搬送されるものである。金属帯1は、その片面又は両面が電気絶縁性被膜を被覆すべき被処理面1aとして搬送され、第1実施形態においては上側の片面のみが被処理面1aとして搬送されているものを例示している。金属帯1は、例えば、普通鋼、ステンレス鋼等の鋼材料や、チタンやこの合金等の金属材料から構成される。本発明は、金属帯1が鋼材料から構成される場合、鋼材料の製造プロセス中のどの時点で用いられるか特に限定するものではなく、例えば、熱間圧延、冷間圧延又は表面洗浄された後に用いられる。
【0019】
連続表面処理装置3は、金属帯1の被処理面1aと相対向して配設される陽極電極33を備えている。連続表面処理装置3は、第1実施形態において、金属帯1の被処理面1aと相対向して陽極電極33より搬送方向Pの入側に配設された陰極電極31を更に備えている。
【0020】
連続表面処理装置3は、第1実施形態において、陰極電極31と陽極電極33との間に、これらの間に電圧を印加する電圧印加手段としての電源装置41が接続されている。電源装置41は、第1実施形態において、図2に示すような直流電圧を印加するものとして構成されている。電源装置41は、例えば、六相交流電源を六相半波整流して直流電圧を印加するものから構成されるが、電圧を印加できれば特にその構成について限定するものでなく、また、その方式もトランジスター方式、インバータ方式等特に限定するものではない。
【0021】
第1実施形態では、陰極電極31と電源装置41との間に開閉器43が接続され、電源装置41と陽極電極33との間に抵抗器45が接続されている。開閉器43を閉にすることにより、陰極電極31と陽極電極33との間で電圧が印加され、開閉器43を開にすることにより、これらの間での電圧の印加が中断される。また、抵抗器45の値を増減させることにより、陰極電極31と陽極電極33との間で通電される電流の電流値が調整される。
【0022】
図3は陽極電極33の構成を模式的に示す平面図であり、図4は陰極電極31及び陽極電極33の動作状態を示す側面断面図であり、図5は陽極電極33の動作状態を正面断面図である。なお、第1実施形態において陰極電極31の構成は陽極電極33と同様であるので、図3、図5を基に陰極電極31の構成も併せて説明する。また、図5では、陽極電極33に設けられたラミナーノズル39からラミナー流Wrとして噴射される電解液を省略し、その電解液の噴射される範囲のみ模式的に示している。
【0023】
陰極電極31、陽極電極33は、第1実施形態において、金属帯1の搬送方向Pと略平行に配設された板状の電極プレート35と、電極プレート35の金属帯1と相対向する側に、金属帯1の搬送方向Pに間隔を空けて並列に設けられた一つ以上の筒状のヘッダー37と、ヘッダー37に設けられたラミナーノズル39とを有している。
【0024】
電極プレート35は、電圧を印加するために、電源装置41に電気的に接続する電源用配線47が結線されている。
【0025】
ヘッダー37には、第1実施形態において、その内部に電解液Wを供給するための電解液供給枝管53がその端部に接続されている。電解液供給枝管53は、第1実施形態において、電極プレート35の板幅方向両側で金属帯1の搬送方向Pに延びるよう配設される電解液供給本管51から分枝されている。電解液供給枝管53の配管途中には、第1実施形態において、ラミナーノズル39からの電解液Wの噴射量を調整するため、枝管流量調節弁55が接続されており、枝管流量調節弁55の開度を調節することにより、電解液供給本管51から電解液供給枝管53を通してヘッダー37内に供給される電解液の供給量が調節される。
【0026】
ラミナーノズル39は、陰極電極31、陽極電極33から金属帯1の被処理面1aにラミナー流Wrとなる電解液を噴射する電解液噴射手段として機能する。ここでいうラミナー流Wrとは、その電解液が噴射される方向に直交する方向に対して厚みと幅を持つ流れであって、その流れの中で電解液が充填されており、ラミナーノズル39より噴射されてから金属帯1に衝突するまでの範囲の形状が時間の経過に対してほぼ一様な流れのことをいう。ラミナーノズル39は、第1実施形態において、膜状のラミナー流Wrを噴射するスリット状噴射口39aを有するものから構成される例を示しているが、この他にも、柱状のラミナー流を噴射する筒状噴射口を有するものから構成されていてもよい。
【0027】
なお、陰極電極31、陽極電極33は、第1実施形態において、電極プレート35、ヘッダー37及びラミナーノズル39が一体的に構成されているものを例示しているが、電極プレート35とヘッダー37及びラミナーノズル39とを別体のものとして構成してこれらを連結したものから構成されていてもよい。また、陰極電極31、陽極電極33は、ラミナーノズル39から噴射される電解液に対して通電可能な構成であれば、その構成について特に限定するものではなく、例えば、ヘッダー37のみが後述の電極材料から構成されていてもよいし、電極プレート35を用いずに構成されていてもよい。
【0028】
また、陰極電極31は、ラミナー流Wrとなる電解液を通して金属帯1に通電可能となればよいので、金属帯1の何れかの片面と相対向して配設されていればよく、金属帯1の被処理面1aに相対向して配設されるものに限定するものではない。また、これと同様の理由により、陰極電極31は、金属帯1の被処理面1aと相対向して配設される場合、電気絶縁性被膜がラミナー流Wrとなる電解液を通しての金属帯1への通電の妨げとならないように、陽極電極33より搬送方向Pの入側に配設される必要がある。これに対して、金属帯1の片面のみが被処理面1aである場合で、その被処理面1aに対して反対側の片面と相対向して陰極電極31が配設される場合は、陽極電極33に対する陰極電極31の配設位置は特に限定されない。
【0029】
また、連続表面処理装置3は、第1実施形態において、ラミナーノズル39から金属帯1の被処理面1aに噴射された電解液を貯溜するための電解槽61を備えている。電解槽61には、ラミナーノズル39から噴射された後に、金属帯1に衝突してからその板幅方向両側から液滴Wbとなって落下する電解液や、金属帯1に衝突せずに落下する電解液が貯溜される。電解槽61には、ラミナーノズル39から噴射された電解液がその底部61aで溜まりWaとなって貯溜され、金属帯1は、電解槽61に貯溜された溜まりWaとしての電解液に浸漬されないように搬送される。
【0030】
電解槽61の底部61aで溜まりWaとなった電解液は、第1実施形態において、電解槽61に接続された排出管63を介して排出され、排出管63に接続された貯溜タンク64内で貯溜される。貯溜タンク64には、第1実施形態において、電解液供給本管51が接続されている。電解液供給本管51の配管途中には、第1実施形態において、電解液を移送するための電解液供給ポンプ65と、電解液を濾過するための電解液フィルタ66と、電解液供給本管51に供給される電解液の供給量を調節するための本管流量調節弁67とが接続されている。貯溜タンク64内に貯溜された電解液は、電解液供給ポンプ65の駆動により、電解液フィルタ66を通して電解液供給本管51に移送され、その後、ヘッダー37、ラミナーノズル39を通して金属帯1に再度噴射されるよう、循環して用いられる。
【0031】
また、第1実施形態では、陰極電極31から陽極電極33に放電するのを抑制するため、陰極電極31と陽極電極33との間にウレタンゴム等の電気絶縁性材料からなる遮蔽板71が配設されている。
【0032】
また、第1実施形態では、金属帯1を連続的に搬送させるための搬送ロール81として、電解槽61の入側及び出側において、金属帯1を間に挟んで一対のリンガーロール81が配設されており、電解槽61の外側への電解液の流出が抑制されている。
【0033】
また、陰極電極31、陽極電極33、遮蔽板71は、例えば、電解槽61に図示しない電気絶縁性材料を介して支持された状態で配設されている。
【0034】
次に、第1実施形態における電解液Wについて説明する。
【0035】
電解液Wとしては、金属帯1の被処理面1aに電気絶縁性被膜を被覆させる場合、以下の(1)、(2)の何れか一種以上を含有するpH2〜7の水溶液が用いられる。
(1)金属イオンと、当該金属イオンに対してモル比で4倍以上のフッ素イオン
(2)金属と当該金属に対してモル比で4倍以上のフッ素とを含む錯イオン
【0036】
このような電解液W中では、金属イオン又は金属を含む錯イオンと酸化物や水酸化物との間で、例えば、下記の数式(11)、(12)で表されるような可逆反応が生じている。
TiF62-+2H2O ⇔ TiO2+4H++6F- ・・・(11)
SiF62-+4H2O ⇔ Si(OH)4+4H++6F- ・・・(12)
【0037】
この数式(11)、(12)の左辺で表される状態を実現する水溶液としては、以下の二種類が考えられる。
【0038】
第一は、左辺のTiF62-やSiF62-を(Ti4++6F-)や(Si4++6F-)のような金属イオンとフッ素イオンとして含有する水溶液、即ち、上述の(1)を含有する水溶液である。第二は、左辺のTiF62-やSiF62-そのものを含有する水溶液、即ち、上述の(2)を含有する水溶液である。
【0039】
ここで、上述の可逆反応では、その右辺に水素イオンやフッ素イオンが含まれていることから、これら水素イオンやフッ素イオンを消費することにより、平衡状態がくずれて、酸化物や水酸化物の生成量が増大することになる。
【0040】
従って、電解液Wの電気分解を利用して金属帯1の表面で水素イオンを積極的に消費させるようにすれば、金属帯1の表面において酸化物や水酸化物の被膜の生成が促進され、金属帯1の表面に短時間で被膜を被覆させることが可能となる。このとき被覆される酸化物としては、例えば、TiO2、ZrO2、SiO2、MgO、Al23、ZnO、NiO、CoO等が挙げられ、水酸化物としては、例えば、Si(OH)4、Al(OH)3、Zr(OH)4、Nb(OH)5、Ta(OH)5等が挙げられる。
【0041】
なお、金属帯1の表面に水酸化物被膜が被覆された場合は、その後の乾燥により、例えば、下記の数式(13)で表されるような縮合反応が進行して、SiO2、Al23、ZrO2、Nb25、Ta25等の酸化物被膜として存在することになる。
Si(OH)4−2H2O → SiO2 ・・・ (13)
【0042】
このとき、電解液W中に安定なフッ化物を生成するアルミニウムイオンやホウ素イオンを含有させておけば、例えば、下記の数式(14)で表されるような反応が進行することになる。これにより、フッ素イオンの消費が促進されて、酸化物や水酸化物の被膜の生成を更に促進させることが可能となる。
Al3++6F- → AlF62- ・・・ (14)
【0043】
以下、電解液Wについて更に詳細に説明する。
【0044】
電解液WのpHを2以上としたのは、これが2未満であると、金属帯1の被処理面1aから陰極反応により水素が過多に発生して被膜の生成の阻害が起こり易くなるためである。また、電解液WのpHを7以下としたのは、これが7超であると、水溶液中に凝集したものが生成することにより被膜の密着力が不十分になる恐れがあるためである。なお、電解液WのpHは、水素の過多の発生をより確実に抑えるうえで3以上とすることが好ましく、水溶液中での凝集をより確実に抑えるうえで7以下とすることが好ましい。
【0045】
フッ素イオンや錯イオン中でのフッ素のモル比を4倍以上としたのは、これが4倍未満であると、被膜の生成が進行しない恐れがあるためである。
【0046】
電解液W中の金属イオンや錯イオンの金属としては、Ti、Si、Zr、Fe、Sn、Nd等の金属イオンや金属が挙げられるが、特に限定するものではない。
【0047】
電解液W中にフッ素イオンを含有させるうえでは、フッ化水素酸やフッ化水素酸塩等を溶媒に溶解させるようにすればよい。なお、ここでいうフッ化水素酸塩としては、例えば、フッ化水素酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。因みに、塩を用いる場合、そのカチオン種により飽和溶解度が異なることによって被膜の生成速度に影響を及ぼすので、被膜の膜厚等を考慮して選定することが好ましい。
【0048】
電解液W中に錯イオンを含有させるうえでは、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロニオブ酸や、これらの塩を溶媒に溶解させるようにすればよい。なお、ここでいうヘキサフルオロチタン酸等の塩としては、これらのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。また、錯イオン中には、金属とフッ素以外の元素が含まれていてもよい。
【0049】
なお、電解液W中には、被膜の生成を促進させるため、安定なフッ化物を生成するアルミニウムイオンやホウ素イオンが含有されていてもよい。
【0050】
また、電気分解により消費される金属イオン、フッ素イオン、錯イオンの補給方法であるが、これは、例えば、電気分解により消費される金属イオンが溶解した溶解槽を別に設け、その溶解槽と貯溜タンク64との間で電解液Wを循環させる等の公知の方法により行われる。また、電解液のpHの調整方法であるが、これは、例えば、無機酸、有機酸、水酸化ナトリウム、アンモニウム等のpH調整剤の投入等のような公知の方法により行なわれる。
【0051】
次に、第1実施形態における陰極電極31、陽極電極33の材質について説明する。
【0052】
金属帯1の被処理面1aに電気絶縁性被膜を被覆させる場合、陰極電極31は、Pt等の不溶性の電極材料や、電解液W中の金属イオンと反応することによる悪影響を防止する観点から、その電解液W中の金属イオンと同じ金属からなる可溶性の電極材料から構成される。陽極電極33は、安定なフッ化物を生成するための金属イオンを電解液W中に含有させるため、アルミニウム等から構成されることが好ましいが、Pt等の不溶性の電極材料や、上述と同じ理由により電解液W中の金属イオンと同じ金属からなる可溶性の電極材料から構成されていてもよい。
【0053】
次に、本発明の第1実施形態に係る連続表面処理方法について説明する。
【0054】
まず、連続的に搬送される金属帯1の被処理面1aに陽極電極33からラミナーノズル39によりラミナー流Wrとなる電解液を噴射する。このとき、第1実施形態では、陰極電極31からもラミナーノズル39によりラミナー流Wrとなる電解液を噴射する。
【0055】
続いて、電圧印加手段としての電源装置41により、金属帯1が陰極、陽極電極33が陽極となるようにこれらの間で電圧を印加する。第1実施形態において実際には、陰極電極31が陰極、陽極電極33が陽極となるように電圧を印加する。このとき、第1実施形態では、上述の通り、図2に示すような定電圧を印加するものとする。
【0056】
これにより、第1実施形態では、電源装置41−陰極電極31−陰極電極31から噴射しているラミナー流Wrの電解液−金属帯1−陽極電極33から噴射しているラミナー流Wrの電解液−陽極電極33−電源装置41の閉回路が形成され、これらを通して電流が通電されることになる。
【0057】
このとき、陽極電極33とこれに相対向する金属帯1との間では、金属帯1を陰極、陽極電極33を陽極として電圧が印加されることになるので、金属帯1の被処理面1aでは、下記の数式(21)で表される陰極反応が進行することにより、水素イオンが消費されることになる。これにより、上述したように、金属イオン又は金属を含む錯イオンと酸化物や水酸化物との間での可逆反応の平衡状態がくずれて、金属帯1の表面において酸化物や水酸化物が被覆されることになる。
2H++2e-→H2↑ ・・・(21)
【0058】
なお、このとき、陽極電極33がアルミニウム等の可溶性材料から構成される場合、下記の数式(31)で表される陽極反応が進行して、その結果、上記の数式(14)で表されるような反応が促進されることにより、酸化物や水酸化物の被膜の生成速度の上昇に寄与することになる。また、陽極電極33がPt等の不溶性の金属材料から構成される場合、下記の数式(32)で表される陽極反応が進行することになる。
Me→Me++e- ・・・(31)
(陽極電極33がAlの場合:Al→Al3++3e-
2H2O→4H++2O2↑+4e- ・・・(32)
【0059】
また、このとき、抵抗器45の抵抗値や、陽極電極33の搬送方向Pの長さ等を変えることにより、電流値や通電時間の調整をすることができ、これによって、電気絶縁性被膜の生成速度、即ち、膜厚が調整される。
【0060】
なお、第1実施形態においては、電解液を電解液フィルタ66を通して循環して用いているため、汚れ等が除去された電解液が金属帯1の被処理面1aに噴射されることになる。
【0061】
以上の第1実施形態によれば、ラミナー流Wrとなる電解液を陽極電極33から金属帯1に噴射しつつ陽極電極33と金属帯1との間で電圧を印加することとしているので、電解液の電気分解により金属帯1の被処理面1aに電気絶縁性被膜を被覆させるにあたって、金属帯1を電解液に浸漬させることなく電解液の電気分解を進行させることが可能となる。このため、金属帯1の板幅方向端部での電流集中を抑えつつ、金属帯1の表面に電気絶縁性被膜を被覆させることが可能となり、その分、金属帯1の板幅方向での被膜付着量の均一化を図ることが可能となる。
【0062】
また、第1実施形態によれば、ラミナー流Wrとなる電解液を用いて電気分解していることから、以下に説明するような理由によっても、金属帯1の板幅方向端部での電流集中を抑えることが可能となっている。第1実施形態では、金属帯1の上側のラミナーノズル39からラミナー流Wrとしての電解液を噴射しているが、このように噴射されたラミナー流Wrとしての電解液は、ラミナーノズル39に対して下方に位置するものほど落下速度が速くなり、表面張力の関係でその厚みや幅が小さくなるように変形する。このとき、図5における範囲Sに位置するような、金属帯1に衝突せずにその板幅方向両側を通過しようとするラミナー流は、金属帯1により拘束されていないことと、その厚みや幅が小さくなっていることとから、流れが不安定になることにより頻繁に部分的に分断される。この結果、金属帯1と衝突せずにその板幅方向両側を通過しようとするラミナー流Wrとしての電解液から金属帯1に対する電流の流れがほとんど生じなくなり、これによって、金属帯1の板幅方向端部での電流集中を抑えることが可能となる。
【0063】
また、第1実施形態によれば、電解液の電気分解を進行させている間、金属帯1の被処理面1aに新しい電解液を噴射させているため、金属イオンや錯イオンを消費した電解液が金属帯1の被処理面1aの近傍から絶えず除去されることになる。このため、電気分解に寄与している電解液中での金属イオンや錯イオンの濃度が一定の状態のまま電気分解を進行させることができ、その分、金属帯1の板幅方向での被膜付着量の均一化を図ることが可能となる。また、これにより、金属帯1の被処理面1aに汚れ等が付着していてもこれを洗い流して除去しつつ、電気絶縁性被膜を被覆させることが可能となり、汚れ等により電気絶縁性被膜の被覆不良が生じることを防止することが可能となる。
【0064】
また、第1実施形態によれば、金属帯1を電解液に浸漬させることなく電解液の電気分解を進行させることが可能となることから、金属帯1の被処理面1aとは反対側の片面に電流が回り込むのを抑えることが可能となり、これにより、被処理面1aとは反対側の片面に電気絶縁性被膜が被覆されるのを防止することが可能となる。また、これにより、陽極から陰極に電解液のみを通して流れる漏れ電流が生じるのを抑えることが可能となる。また、これにより、電解槽に大量の電解液を貯溜させておく必要がなくなり、その分、処理コストの低減を図ることが可能となる。
【0065】
また、第1実施形態によれば、コンダクターロール81を電極として利用していないので、コンダクターロール81と金属帯1との局所的な接触で発生するスパークによりスパーク疵が発生するのを防止することが可能となる。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降においては、上述した構成要素と同一の構成要素について、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0067】
図6は、第2実施形態に係る連続表面処理方法を実現するための連続表面処理装置3の構成を概略的に示す側面断面図であり、図7は、第2実施形態に係る陰極電極31及び陽極電極33の動作状態を概略的に示す側面断面図であり、図8は、第2実施形態に係る上下の陽極電極33の動作状態を概略的に示す平面断面図である。なお、図8では、上下の陽極電極33に設けられたラミナーノズル39からラミナー流Wrとして噴射される電解液を省略し、下側の電解液の噴射される範囲のみ模式的に示している。
【0068】
第2実施形態に係る連続表面処理方法は、金属帯1の両面を被処理面1aとして電気絶縁性被膜を被覆させる場合に適用されるものを例示している。第2実施形態に係る連続表面処理装置3は、陰極電極31及び陽極電極33の組からなる電極群30が金属帯1の両面に相対向して配設されている。また、各電極群30につき一つの電源装置41が接続されている。
【0069】
次に、第2実施形態に係る連続表面処理方法について説明する。なお、第2実施形態以降においては、第1実施形態に係る連続表面処理方法と異なる工程についてのみ説明し、同様の工程についてはその説明を省略する。
【0070】
第2実施形態に係る連続表面処理方法では、金属帯1の下側の被処理面1aに陰極電極31及び陽極電極33からラミナーノズル39によりラミナー流Wrとなる電解液を噴射するときの速度等が、金属帯1の下面に衝突するのに必要かつ最小限のエネルギーとなるように予め調整されている。これにより、金属帯1の下側に位置するラミナー流Wrは、金属帯1の下面とそのラミナー流Wrの上部との間での表面張力により、金属帯1の下面に安定して接触することになる。そして、図8における範囲Sに位置するような、金属帯1に衝突せずにその板幅方向両側を通過しようとするラミナー流は、金属帯1の下面の高さまで安定して到達しないことになる。この結果、金属帯1に衝突せずにその板幅方向両側を通過しようとするラミナー流Wrとしての電解液からは、金属帯1に対する電流の流れがほとんど生じなくなり、これによって、金属帯1の板幅方向端部での電流集中が抑えられることになる。
【0071】
なお、金属帯1の上側のラミナーノズル39からラミナー流Wrとして噴射される電解液の方が、下側のラミナーノズル39から噴射されるものより形状が安定するため、金属帯1の片面のみを被処理面1aとする場合は、被膜を安定して被覆させるうえで、金属帯1の上側に電極31、33やラミナーノズル39を配設することが好ましい。
【0072】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0073】
図9は、第3実施形態に係る連続表面処理装置3の構成を概略的に示す側面断面図である。
【0074】
第3実施形態に係る連続表面処理装置3は、第1実施形態に係る連続表面処理装置3において用いられたコンダクターロール81が金属帯1に通電する際に陰極となる電極として用いられている。具体的には、第3実施形態に係る連続表面処理装置3は、金属帯1の被処理面1aと相対向して配設される陽極電極33と、陽極電極33より搬送方向Pの入側に配設され、金属帯1に接触して通電可能なコンダクターロール81とを備えている。金属帯1は、このコンダクターロール81により案内されつつ搬送される。
【0075】
コンダクターロール81は、陰極電極31について説明したのと同様に、金属帯1に通電可能となればよいので、金属帯1の何れかの片面と接触して配設されていればよく、金属帯1の被処理面1aに接触して配設されるものに限定するものではない。また、これと同様の理由により、コンダクターロール81は、金属帯1の被処理面1aに接触して配設される場合、電気絶縁性被膜が金属帯1への通電の妨げとならないように、陽極電極33より搬送方向Pの入側に配設される必要がある。これに対して、金属帯1の片面のみが被処理面1aである場合で、その被処理面1aに対して反対側の片面に接触してコンダクターロール81が配設される場合は、陽極電極33に対するコンダクターロール81の配設位置は特に限定されない。
【0076】
また、第3実施形態に係る連続表面処理装置3は、陽極電極33とコンダクターロール81との間に、これらの間に電圧を印加する電圧印加手段としての電源装置41が接続されている。
【0077】
次に、第3実施形態に係る連続表面処理方法について説明する。
【0078】
第3実施形態では、電源装置41により金属帯1が陰極、陽極電極33が陽極となるようにこれらの間で電圧を印加するうえで、実際には、コンダクターロール81が陰極、陽極電極33が陽極となるように電圧を印加することになる。
【0079】
以上、金属帯1の被処理面1aに電気絶縁性被膜を被覆させる場合について説明したが、次に金属帯1の表面にめっき被膜を被覆させる場合について説明する。
【0080】
金属帯1の被処理面1aにめっき被膜を被覆させる場合、主には、電解液Wや陰極電極31、陽極電極33、電気分解による反応内容の点で、電気絶縁性被膜を被覆させる場合と相違し、連続表面処理装置3の構成は第1実施形態〜第3実施形態において説明したものと同じものが用いられる。
【0081】
電解液Wは、めっき被膜を生成する金属イオンの供給源として電解液Wを用いる場合、その金属イオンを含む公知のめっき液が用いられる。めっき液は、例えば、Sn、Zn、Ni、Cr、Au、Cu、Ag、Al、Si、Mg、Mn、Co等から選ばれる金属イオンを含むものが挙げられる。また、電解液Wは、めっき被膜を生成する金属イオンの供給源として陽極電極33自身を用いる場合、特にその成分については限定しない。
【0082】
陰極電極31、陽極電極33は、めっき被膜を生成する金属イオンの供給源として電解液Wを用いる場合、例えば、Pt等の不溶性の電極材料から構成される。また、めっき被膜を生成する金属イオンの供給源として陽極電極33自身を用いる場合、陰極電極31は、例えば、Pt等の不溶性の電極材料から構成され、陽極電極33は、その金属を含有するものから構成される。
【0083】
陰極電極31、コンダクターロール81は、電気絶縁性被膜を被覆させる場合と異なり、めっき被膜が金属帯1への通電の妨げとならないため、陽極電極33に対するその配設位置は特に限定されない。
【0084】
次に、めっき被膜を被覆させる場合に、電解液Wの電気分解がどのように進行するか説明する。
【0085】
金属帯1を陰極電極、陽極電極33を陽極電極として電圧を印加した場合であって、めっき被膜を生成する金属イオンの供給源として電解液Wを用いる場合、金属帯1の被処理面1aでは、下記の数式(41)で表される陰極反応が進行する。これにより、金属帯1の被処理面1aにめっき被膜が被覆されることになる。
Me++e-→Me ・・・(41)
(Me+がZn2+の場合:Zn2++e-→Zn)
【0086】
このとき、陽極電極33がめっき被膜を生成する金属イオンの供給源として用いられる場合、下記の数式(51)で表される陽極反応が進行して、めっき被膜を生成する金属イオンが電解液W中に供給されることになる。陽極電極33がPt等の不溶性の金属材料から構成される場合、下記の数式(52)で表される陽極反応が進行することになる。
Me→Me++e- ・・・(51)
(電極がZnの場合:Zn→Zn2++2e-
2H2O→4H++2O2↑+4e- ・・・(52)
【0087】
金属帯1の被処理面1aにめっき被膜を被覆させる場合も、電気絶縁性被膜を被覆させる場合と同様の上述の効果が得られる。
【0088】
以上、金属帯1の被処理面1aにめっき被膜を被覆させる場合について説明したが、この他にも、めっき被膜を被覆させる場合であって、上述の第3実施形態のようにコンダクターロール81にも通電させる場合、図10に示すように、陽極電極33及びコンダクターロール81の組からなる電極群30を金属帯1の搬送方向Pに複数配設するようにしてもよい。この場合、各電極群30につき一つの電源装置41が接続される。これにより、金属帯1の被処理面1aにめっき被膜を被覆させる量や速度を増大させることができ、めっき被膜を高速で被覆させることが可能となる。
【0089】
ここで、電解槽61が金属帯1の搬送方向Pに長くなりすぎると、自重により金属帯1がカテナリー状に変形し、陽極電極33から金属帯1までの距離が搬送方向Pで大きく異なり、その結果、ラミナー流が不安定となる。このため、図10に示すように、電解槽61を金属帯1の搬送方向Pに順に配設することが好ましい。これにより、所定量めっき被膜を被覆させるのに必要な電解槽61の一つ当たりの長さを抑えることができる結果、自重による金属帯1のカテナリー状の変形を抑えることができ、これにより、ラミナー流を安定化させることが可能となる。
【0090】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【実施例1】
【0091】
以下、本発明の効果を実施例により更に説明する。
【0092】
本実施例1では、図1に示すような本発明に係る連続処理装置3と、図13に示すような従来の連続処理装置103とを実際に用いて、金属帯1、101の表面に電気絶縁性被膜を被覆させる処理を実行した後に、金属帯1、101の表面に被覆された電気絶縁性被膜の板幅方向での被膜付着量を観察し、本発明の効果を確認することとした。
【0093】
本実施例1での具体的な操業条件は次の通りである。
【0094】
金属帯1、101としては、材質がSUS304、板厚が0.10mm、板幅が650mmであるものを用いた。電解液としては、金属帯1、101の表面にTiO2が被覆されるように、組成としてTiCl4が0.1mol/l、(NH4)HF2が0.3mol/lである水溶液を用い、その液温は60℃となるようにした。なお、電解液の組成は、チタンイオンとフッ素イオンとがモル比で1:6になっていることになる。陰極電極31、陽極電極33としては、その材質がAlであるものを用いた。金属帯1、101の表面に被覆される電気絶縁性被膜の目標付着量は8mg/m2以上、金属帯1、101を搬送するライン速度は60mpm、印加する電圧は25Vの直流電圧となるようにした。
【0095】
本実施例1での具体的な評価方法は次の通りである。
【0096】
電気絶縁性被膜の被覆処理の実行後、得られた金属帯1、101からサンプルを採取して、蛍光X線によりそのサンプルの板幅方向における被膜の付着量を測定した。この測定は、金属帯1、101の板幅方向両端より内側に25mmの位置から50mm間隔毎に行うこととした。
【0097】
図11は、実施例1の操業条件で電気絶縁性被膜の被覆処理を実行して得られた金属帯1、101の被膜付着量の測定結果を示す図である。従来の連続処理装置103により処理したものが比較例1、本発明に係る連続処理装置3により処理したものが発明例1である。
【0098】
このように、比較例1では、電気絶縁性被膜の被膜付着量の分布が金属帯101の板幅方向で不均一となっており、特に、金属帯101の板幅方向両側での被膜付着量が過大となっており、目標付着量に対して大幅に相違していることが確認できる。また、比較例1では、金属帯101の板幅方向両側で被膜の剥離が確認された。これは、金属帯101の板幅方向両側での被膜付着量が過大となったことによるものと考えられる。
【0099】
これに対して、発明例1では、電気絶縁性被膜の被膜付着量の分布が金属帯1の板幅方向で極めて均一となっていることが確認できる。また、発明例1では、金属帯1の板幅方向両端側での被膜の剥離等の欠陥が確認されなかった。
【実施例2】
【0100】
次に、実施例2について説明する。
【0101】
本実施例2では、図9に示すような本発明に係る連続処理装置3と、図13に示すような従来の連続処理装置103とを実際に用いて、電解液の電気分解により金属帯1、101の表面に錫めっき被膜を被覆させる錫めっき処理を実行した後に、金属帯1、101の表面に被覆された錫めっき被膜の板幅方向での被膜付着量を観察し、本発明の効果を確認することとした。
【0102】
本実施例2での具体的な操業条件は次の通りである。
【0103】
金属帯1、101としては、材質が普通鋼、板厚が0.14mm、板幅が950mmであるものを用いた。電解液としては、フェノールスルフォン酸錫(Sn2+濃度26g/l)水溶液を用い、その液温は55℃となるようにした。陽極電極33としては、その材質がTiであるものを用いた。金属帯1、101の表面に被覆されるめっき被膜の目標付着量は1.0g/m2±10%、金属帯1、101を搬送するライン速度は10mpm、印加する電圧は25Vの直流電圧となるようにした。
【0104】
本実施例2での具体的な評価方法は本実施例1でと同様である。
【0105】
図12は、実施例2の操業条件でめっき被膜の被覆処理を実行して得られた金属帯1、101の被膜付着量の測定結果を示す図である。従来の連続処理装置103により処理したものが比較例2、本発明に係る連続処理装置3により処理したものが発明例2である。
【0106】
このように、比較例2では、めっき被膜の被膜付着量の分布が金属帯101の板幅方向で不均一となっており、特に、金属帯101の板幅方向両側での被膜付着量が過大となっており、目標付着量に対して大幅に相違していることが確認できる。
【0107】
これに対して、発明例2では、めっき被膜の被膜付着量の分布が金属帯1の板幅方向で極めて均一となっていることが確認できる。また、発明例2では、金属帯1の板幅方向両側での被膜の剥離等の欠陥も確認されなかった。
【符号の説明】
【0108】
1 :金属帯
1a :被処理面
3 :連続表面処理装置
30 :電極群
31 :陰極電極
33 :陽極電極
35 :電極プレート
37 :ヘッダー
39 :ラミナーノズル
39a :スリット状噴射口
41 :電源装置
43 :開閉器
45 :抵抗器
47 :電源用配線
51 :電解液供給本管
53 :電解液供給枝管
55 :枝管流量調節弁
61 :電解槽
63 :排出管
64 :貯溜タンク
65 :電解液供給ポンプ
66 :電解液フィルタ
67 :本管流量調節弁
71 :遮蔽板
81 :コンダクターロール
P :搬送方向
W :電解液
Wa :溜まり
Wb :液滴
Wr :ラミナー流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜を被覆させる金属帯の連続表面処理方法において、
前記電気絶縁性被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して陽極電極を配設し、
前記陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる前記電解液を噴射し、
前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記陽極電極から噴射しているラミナー流としての電解液を通して通電させること
を特徴とする金属帯の連続表面処理方法。
【請求項2】
前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯の何れかの片面と相対向する陰極電極を更に配設し、
前記電解液を噴射する工程では、前記陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するとともに、前記陽極電極から当該金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射し、
前記通電させる工程では、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項1記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項3】
前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に配設し、
前記通電させる工程では、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項1記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項4】
前記電解液は、金属イオンと当該金属イオンに対してモル比で4倍以上のフッ素イオン、又は、金属と当該金属に対してモル比で4倍以上のフッ素とを含む錯イオンのうち何れか一種以上を含有するpH2〜7の水溶液であること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項5】
連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解によりめっき被膜を被覆させる金属帯の連続電解処理方法において、
前記めっき被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して陽極電極を配設し、
前記陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる前記電解液を噴射し、
前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記陽極電極から噴射しているラミナー流としての電解液を通して通電させること
を特徴とする金属帯の連続表面処理方法。
【請求項6】
前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯の何れかの片面と相対向する陰極電極を更に配設し、
前記電解液を噴射する工程では、前記陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するとともに、前記陽極電極から当該金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射し、
前記通電させる工程では、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項5記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項7】
前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に配設し、
前記通電させる工程では、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記噴射しているラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項5記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項8】
前記陽極電極を配設する工程では、前記陽極電極及び前記コンダクターロールの組からなる電極群を前記金属帯の搬送方向に複数配設すること
を特徴とする請求項7記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項9】
前記電解液は、金属イオンを含むめっき液であること
を特徴とする請求項5〜8の何れか1項記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項10】
前記搬送される金属帯は、その両面が前記被処理面であり、
前記陽極電極を配設する工程では、前記金属帯の両側の被処理面に相対向して陽極電極を配設すること
を特徴とする請求項1〜9の何れか1項記載の金属帯の連続表面処理方法。
【請求項11】
連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解により電気絶縁性被膜を被覆させるための金属帯の連続表面処理装置において、
前記電気絶縁性被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して配設された陽極電極と、
前記陽極電極に設けられ、当該陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルと、
前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液を通して通電させる電圧印加手段とを備えること
を特徴とする金属帯の連続表面処理装置。
【請求項12】
前記金属帯の何れかの片面と相対向して配設された陰極電極を更に備え、
前記陰極電極は、当該陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルが設けられ、
前記電圧印加手段は、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、当該陰極電極及び当該陽極電極のラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項11記載の金属帯の連続表面処理装置。
【請求項13】
前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に備え、
前記電圧印加手段は、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項11記載の金属帯の連続表面処理装置。
【請求項14】
前記電解液は、金属イオンと当該金属イオンに対してモル比で4倍以上のフッ素イオン、又は、金属と当該金属に対してモル比で4倍以上のフッ素とを含む錯イオンのうち何れか一種以上を含有するpH2〜7の水溶液であること
を特徴とする請求項11〜13の何れか1項記載の金属帯の連続表面処理装置。
【請求項15】
連続的に搬送される金属帯の表面に電解液の電気分解によりめっき被膜を被覆させるための金属帯の連続電解処理装置において、
前記めっき被膜を被覆すべき前記金属帯の被処理面と相対向して配設された陽極電極と、
前記陽極電極に設けられ、当該陽極電極から前記金属帯の被処理面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルと、
前記金属帯を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液を通して通電させる電圧印加手段とを備えること
を特徴とする金属帯の連続表面処理装置。
【請求項16】
前記金属帯の何れかの片面と相対向して配設された陰極電極を更に備え、
前記陰極電極は、当該陰極電極から前記金属帯の相対向する片面にラミナー流となる電解液を噴射するラミナーノズルが設けられ、
前記電圧印加手段は、前記陰極電極を陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、当該陰極電極及び当該陽極電極のラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項15記載の金属帯の連続表面処理装置。
【請求項17】
前記金属帯に接触して通電可能なコンダクターロールを更に備え、
前記電圧印加手段は、前記コンダクターロールを陰極、前記陽極電極を陽極としてこれらの間で電圧を印加して、前記ラミナーノズルから噴射されるラミナー流としての電解液と前記金属帯とを通して通電させること
を特徴とする請求項15記載の金属帯の連続表面処理装置。
【請求項18】
前記陽極電極及び前記コンダクターロールの組からなる電極群が前記金属帯の搬送方向に複数配設されていること
を特徴とする請求項17記載の金属帯の連続表面処理装置。
【請求項19】
前記電解液は、金属イオンを含むめっき液であること
を特徴とする請求項15〜18の何れか1項記載の金属帯の連続表面処理装置。
【請求項20】
前記搬送される金属帯は、その両面が前記被処理面であり、
前記陽極電極は、前記金属帯の両側の被処理面に相対向して配設されていること
を特徴とする請求項11〜19の何れか1項記載の金属帯の連続表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−36492(P2012−36492A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180667(P2010−180667)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】