説明

金属張積層板、及びプリント配線板

【課題】伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高い基板を製造することができる金属張積層板を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁層12と、前記絶縁層12の少なくとも一方の表面側に存在する金属層13とを備え、前記絶縁層12が、第1樹脂層14と、前記第1樹脂層14と前記金属層13との間に配置される第2樹脂層15との少なくとも2つの層を積層したものであり、前記第1樹脂層14と前記第2樹脂層15とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、前記第1樹脂層14における樹脂組成物が、前記第2樹脂層15における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、前記第2樹脂層15に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層14に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低い金属張積層板11を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張積層板、及び前記金属張積層板を用いて製造されたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化及び薄型化に伴い、電子機器に備えられる電子部品として、表面実装型パッケージのものが用いられることが多くなってきている。このような電子部品のパッケージとしては、具体的には、BOC(Board On Chip)等の、基板の表面上に、半導体素子等の電子部品を実装し、その電子部品を樹脂封止した半導体パッケージが挙げられる。
【0003】
また、各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、1つのパッケージに、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の電子部品を複数搭載する、MCP(Multi Chip Package)等のように、搭載される半導体素子等の電子部品の高集積化が求められている。このような電子機器は、電子部品間の回路において、信号伝送時の損失を低減させ、信号の伝送速度を高めることが求められている。
【0004】
また、このような電子部品が搭載される基板としては、例えば、金属張積層板の表面に配置されている金属箔等の金属層を部分的に除去することにより、回路(配線回路)を形成して得られるプリント配線板が用いられる。このような積層板としては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0005】
特許文献1には、熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、所定の構造の架橋構造体を含み、1GHzにおける誘電率が3.1〜20である絶縁層と導体箔との積層板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−87639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、前記積層板を用いて製造された電子部品は、誘電損失が小さい高効率のものが得られる旨が開示されている。
【0008】
また、電子部品が搭載される基板としては、信号の伝送速度を高めることが求められるだけではなく、他の性能、例えば、耐熱性が高いことや弾性率が適切であること等の、信頼性が高いことも求められる。
【0009】
上記のような伝送速度の高速化を実現させるために、基板を構成する樹脂として、誘電率の低い樹脂に変更することが考えられる。しかしながら、基板を構成する樹脂として、誘電率の低い樹脂に変更しただけでは、耐熱性を充分に確保できなかったり、適切な弾性率を確保できなかったり、パッケージに用いられる基板として求められる信頼性を充分に達成できない場合があった。
【0010】
そこで、耐熱性等の他の性能の低下を抑制し、さらに、伝送速度の高速化が実現可能な金属張積層板が求められている。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高い基板を製造することができる金属張積層板を提供することを目的とする。また、前記金属張積層板を用いて製造されたプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る金属張積層板は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面側に存在する金属層とを備え、前記絶縁層が、第1樹脂層と、前記第1樹脂層と前記金属層との間に配置される第2樹脂層との少なくとも2つの層を積層したものであり、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第2樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低いことを特徴とするものである。
【0013】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率に対して、20〜90%であることが好ましい。
【0014】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、2.2〜3.5であることが好ましい。
【0015】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層の厚みが、前記第1樹脂層の厚みに対して、5〜50%であることが好ましい。
【0016】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層の厚みが、1〜25μmであることが好ましい。
【0017】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0018】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、ラジカル重合型熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0019】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層が、繊維基材を含むことが好ましい。
【0020】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、液状樹脂組成物であることが好ましい。
【0021】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層における樹脂組成物が、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0022】
また、前記金属張積層板において、前記絶縁層の厚みが、5μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0023】
また、前記金属張積層板において、前記金属層が、前記絶縁層の両面側に配置され、前記絶縁層が、前記第1樹脂層の、前記第2樹脂層が積層されている側の反対側の表面側に第3樹脂層をさらに積層したものであり、前記第1樹脂層と前記第3樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第3樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、前記第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低いことが好ましい。
【0024】
また、本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、前記金属張積層板の金属層を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高い基板を製造することができる金属張積層板を提供することができる。また、前記金属張積層板を用いて製造されたプリント配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る金属張積層板の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者等は、金属張積層板の絶縁層の比誘電率が、信号の伝送損失に与える影響について、種々検討した。この検討結果から、本発明者等は、金属層に近い位置に含まれる、樹脂組成物の硬化物の比誘電率を低くすることが、その他の部分に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率を低くするより、信号の伝送損失を低減させ、信号の伝送速度を高めることに効果的に作用するのではないかと推察し、種々検討した結果、以下のような本発明に想到するに至った。
【0028】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0029】
本実施形態に係る金属張積層板は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面側に存在する金属層とを備え、前記絶縁層が、第1樹脂層と、前記第1樹脂層と前記金属層との間に配置される第2樹脂層との少なくとも2つの層を積層したものであり、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第2樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低いものである。
【0030】
このような構成にすることによって、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高い基板を製造することができる金属張積層板を得ることができる。そして、この得られた金属張積層板の表面の金属層を部分的に除去することによって、配線回路が形成された基板を用いて得られたパッケージは、その基板に搭載された電子部品間の信号の伝送損失を低減させ、信号の高速伝送を実現できる。
【0031】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0032】
本実施形態に係る金属張積層板は、第1樹脂層と金属層との間に配置される第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の比誘電率より低い。すなわち、金属層側の樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、金属層から遠い側の樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低い。このことから、絶縁層の第1樹脂層として、信号の伝送速度の高速化が実現できるような比誘電率の低い樹脂組成物の硬化物から構成されるものであったとしても、比誘電率の低い第2樹脂層が存在することにより、その金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路における信号の伝送損失を低減させることができると考えられる。
【0033】
さらに、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物は、上述したように、その比誘電率が、信号の伝送速度の高速化が実現できるような低いものでなくても、金属層側の第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が低ければ、配線回路における信号の伝送損失を低減させることができるので、耐熱性の高いものや弾性の適切なものを用いることができると考えられる。よって、このような第1樹脂層を積層することによって、信号の高速伝送を実現できるだけではなく、信頼性の高い金属張積層板が得られると考えられる。
【0034】
以上のことから、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高い基板を製造することができる金属張積層板が得られると考えられる。
【0035】
これに対して、第1樹脂層と金属層との間に配置される第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の比誘電率以上であると、配線回路が形成された基板を用いて得られたパッケージにおいて、伝送速度の高速化を充分に達成できないか、または、信頼性の充分に高いものが得られない傾向がある。具体的には、まず、第1樹脂層として、耐熱性の高いものや弾性の適切なものとなるような樹脂組成物の硬化物を用いた場合、その硬化物よりも比誘電率の高い硬化物を用いると、伝送速度の高速化を充分に達成できない傾向がある。また、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、伝送速度の高速化を充分に達成できるものである場合、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物が、比誘電率の非常に低いものを用いることになる。そうすると、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物が、耐熱性が充分に高くなかったり、適切な弾性率を確保することが困難であったりする傾向がある。すなわち、信頼性が充分に高いものを得ることが困難である傾向がある。
【0036】
なお、ここで比誘電率とは、真空の誘電率εに対する、物質の誘電率εの比(ε=ε/ε)である。具体的には、例えば、常温の環境下で、1MHzの周波数で測定した比誘電率が挙げられる。
【0037】
そして、本実施形態に係る金属張積層板は、上記構成を満たしていれば、その他は特に限定されない。具体的には、図1に示すような層構造を有する金属張積層板が挙げられる。なお、図1は、本実施形態に係る金属張積層板11の一例を示す概略断面図である。
【0038】
また、本実施形態に係る金属張積層板としては、図1に示すように、絶縁層12と、絶縁層12の表面側に存在する金属層13とを備え、絶縁層12が、第1樹脂層14と、第1樹脂層14の一方の表面側に存在する第2樹脂層15と、第1樹脂層14の他方の表面側に存在する第3樹脂層16との3つの層を積層したもの等が挙げられる。また、絶縁層12の表面側に存在する金属層13は、図1に示すような、絶縁層12の表面上に直接形成された金属層や、絶縁層12の表面側に他の層を介しても設けられる金属層等が挙げられる。
【0039】
また、金属張積層板としては、図1に示すように、絶縁層12の両面側に、金属層13が配置されたものであってもよいし、絶縁層12のいずれか一方側にだけ、金属層13が配置されたものであってもよい。また、絶縁層12の少なくともいずれか一方側に、金属層13を備えていればよいが、絶縁層12の両面側に、金属層13が配置されたものが好ましい。そうすることによって、表面の金属層を部分的に除去することにより、両面に金属配線を形成した基板を形成することができる金属張積層板が得られる。
【0040】
また、絶縁層12としては、第1樹脂層14と、第1樹脂層14と金属層13との間に配置される第2樹脂層15との少なくとも2つの層を積層したものであればよい。すなわち、金属張積層板として、絶縁層12のいずれか一方側に、金属層13が配置されたものである場合、絶縁層12として、このような、第1樹脂層14と第2樹脂層15との2つの層を積層したものであってもよく、また、第1樹脂層14、第2樹脂層15、及び第3樹脂層16の3つの層を積層したものであってもよい。
【0041】
また、絶縁層12として、図1に示すような、第1樹脂層14の一方の面に、第2樹脂層15を配置し、他方の面に、第3樹脂層16を配置してもよい。例えば、金属張積層板として、絶縁層12の両面側に、金属層13を配置する場合、このような少なくとも3つの層を積層したものを用いることが好ましい。このような場合、金属張積層板は、以下の構成を満たすことが好ましい。すなわち、前記金属層が、前記絶縁層の両面側に配置され、前記絶縁層が、前記第1樹脂層の、前記第2樹脂層が積層されている側の反対側の表面側に第3樹脂層をさらに積層したものであり、前記第1樹脂層と前記第3樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第3樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、前記第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低い金属張積層板であることが好ましい。そうすることによって、両面に金属配線を形成した基板を形成することができ、さらに、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高い基板を製造することができる金属張積層板を提供することができる。
【0042】
また、絶縁層12としては、第1樹脂層14と、第1樹脂層14と金属層13との間に配置される第2樹脂層15との少なくとも2つの層を積層したものであればよく、第1樹脂層14、第2樹脂層15、及び第3樹脂層16以外の他の層を備えていてもよい。具体的には、第2樹脂層15と第1樹脂層14との間や、第3樹脂層16と第1樹脂層14との間に、第1樹脂層14と第2樹脂層15や第3樹脂層16との密着性を高めること等を目的とする中間層を備えてもよい。
【0043】
また、絶縁層12と金属層13との間に、すなわち、第2樹脂層15と金属層13との間や第3樹脂層16と金属層13との間に、金属層13と絶縁層12との密着性を高めること等を目的とする中間層を備えていてもよいが、絶縁層12と金属層13とが直接積層したものであることが好ましい。そうすることによって、金属層13を部分的に除去して形成される金属配線における信号の伝送損失の低下を抑制するという効果を好適に発揮させることができる。
【0044】
また、絶縁層の厚みとしては、特に限定されないが、5μm以上200μm以下であることが好ましい。絶縁層が薄すぎると、金属層を部分的に除去して形成されるプリント配線板が薄すぎ、機械的強度等が不充分になる傾向がある。また、絶縁層が厚すぎると、金属張積層板を製造しにくくなる傾向がある。また、絶縁層が厚すぎると、金属張積層板も厚くなり、金属張積層板から得られる基板や最終的に得られる電子部品等の小型化及び薄型化を阻害することになってしまうことが考えられる。よって、絶縁層の厚みが、このような範囲内であれば、金属張積層板から得られる基板や最終的に得られる電子部品等の小型化及び薄型化を阻害することなく、また、薄すぎることによる、機械的強度等の低下を充分に抑制することができると考えられる。
【0045】
なお、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、絶縁層、及び金属張積層板の厚みは、金属張積層板の断面を、顕微鏡観察することによって、測定することができる。
【0046】
また、絶縁層における第1樹脂層は、上述した構成を満たすものであれば、特に限定されない。具体的には、樹脂組成物の硬化物を含有し、その樹脂組成物が、第2樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、さらに、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率よりも低いものであれば、特に限定されない。また、第3樹脂層を備える金属張積層板の場合、第3樹脂層と第1樹脂層との関係は、第2樹脂層と第1樹脂層との関係と同様である。具体的には、絶縁層における第1樹脂層は、樹脂組成物の硬化物を含有し、その樹脂組成物が、第3樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、さらに、第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率よりも低いものであれば、特に限定されない。
【0047】
また、第1樹脂層における樹脂組成物は、その硬化物の比誘電率が、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率よりも高いものであれば、特に限定されない。すなわち、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物は、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率よりも低いものとなるような樹脂組成物であれば、特に限定されない。
【0048】
また、第1樹脂層における樹脂組成物は、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率に対して、20〜90%であるという関係を満たすものであることが好ましく、30〜90%であるという関係を満たすものであることがより好ましく、40〜90%であるという関係を満たすものであることがさらに好ましい。第1樹脂層における樹脂組成物が、第2樹脂層における樹脂組成物に対して、このような関係を満たすと、金属層側の第2樹脂層により、金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路における信号の伝送損失をより低減できる。さらに、第2樹脂層の存在により、信号の伝送損失を低減できるので、第1樹脂層としては、耐熱性のより高いものや、弾性率のより適切なものとすることができる。よって、信号の伝送損失をより低減でき、さらに、信頼性のより高い基板を製造することができる金属張積層板が得られる。
【0049】
また、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率は、第2樹脂層における樹脂組成物に対して、上記のような関係を満たせば、特に限定されないが、例えば、2.2〜10.0であることが好ましく、3.0〜9.0であることがより好ましく、3.0〜8.0であることがさらに好ましい。また、第1樹脂層としては、金属張積層板の信頼性を充分に高めることができる層であることが好ましい。すなわち、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物は、その硬化物の比誘電率がこのような範囲内であれば、金属張積層板の信頼性を充分に高めることができる。そして、第2樹脂層を備えることによって、信号の伝送損失をより低減できる。
【0050】
また、第1樹脂層は、上述したような、樹脂組成物の硬化物を含んでいれば、特に限定されない。また、第1樹脂層は、上述したような、樹脂組成物の硬化物を含むとともに、繊維基材を含むことが好ましい。また、第1樹脂層は、繊維基材に、第1樹脂層における樹脂組成物を含浸させ、その樹脂組成物を硬化させて得られる層であることが好ましい。そうすることによって、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。このことは、以下のことによると考えられる。前記第1樹脂層が、前記樹脂組成物の硬化物だけではなく、繊維基材も含むことによって、絶縁信頼性や屈曲性を向上させることができると考えられる。具体的には、得られた金属張積層板を屈曲させた際に、割れる等の不具合が発生すること抑制することができると考えられる。すなわち、屈曲の際に、割れの発生等を抑制できるので、絶縁信頼性を高め、屈曲性を向上させることができると考えられる。このことにより、信頼性のより高い電子部品を製造することができると考えられる。
【0051】
また、繊維基材としては、特に限定されないが、例えば、シート状の繊維基材が挙げられる。また、繊維基材の具体例としては、例えば、ガラスクロス等の、無機質繊維の織布、無機質繊維の不織布、アラミドクロス、ポリエステルクロス、及び紙等が挙げられる。また、繊維基材の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01〜0.2mm程度であることが好ましい。
【0052】
また、第1樹脂層における樹脂組成物としては、上記のような関係を満たすものであれば、特に限定されないが、熱硬化性化合物であることが好ましい。そうすることによって、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
【0053】
まず、第1樹脂層における樹脂組成物として、熱硬化性化合物が含まれることによって、第1樹脂層における樹脂組成物が、好適に硬化することができ、好適な第1樹脂層を形成できると考えられる。
【0054】
また、熱硬化性化合物としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂等のエポキシ化合物等が挙げられる。また、第1樹脂層における樹脂組成物としては、熱硬化性化合物を含み、硬化剤を含んでいてもよい。
【0055】
このようなエポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0056】
また、用いる硬化剤は、特に限定されない。具体的には、エポキシ化合物を硬化させることができるものであり、例えば、イミダゾール系硬化剤等が挙げられる。
【0057】
また、第1樹脂層における樹脂組成物としては、ラジカル重合型熱硬化性化合物を含むことが好ましい。そうすることによって、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
【0058】
まず、第1樹脂層における樹脂組成物として、ラジカル重合型熱硬化性化合物が含まれることによって、第1樹脂層における樹脂組成物が、好適に硬化することができ、好適な第1樹脂層を形成できると考えられる。また、第1樹脂層が、ガラスクロス等の繊維基材を含む場合、その繊維基材に樹脂組成物を含浸させ、その樹脂組成物を硬化させることによって得られる層であると考えられる。この際、第1樹脂層における樹脂組成物として、ラジカル重合型熱硬化性化合物が含まれると、その樹脂組成物の、繊維基材への含浸性に優れ、より好適な第1樹脂層を形成できると考えられる。これらのことから、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができると考えられる。さらに、ラジカル重合型熱硬化性化合物を含ませることにより、第1樹脂層における樹脂組成物を、好適に硬化させることができ、金属張積層板の連続生産をしやすくなると考えられる。
【0059】
このようなラジカル重合型熱硬化性化合物は、特に限定されない。また、ラジカル重合型熱硬化性化合物としては、ラジカル重合型熱硬化性モノマー及びラジカル重合型熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0060】
また、ラジカル重合型熱硬化性モノマーとしては、1分子中に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。具体的には、例えば、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0061】
また、ラジカル重合型熱硬化性樹脂としては、1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有する樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、エポキシ樹脂とアクリル酸やメタクリル酸のような不飽和脂肪酸との反応物であるビニルエステル樹脂、プロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等と無水マレイン酸やフマル酸等の多塩基不飽和酸との反応物である不飽和ポリエステル、ビスフェノールA型メタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0062】
また、このようなラジカル重合型熱硬化性化合物を用いる場合は、樹脂組成物にラジカル重合剤を含有させることが好ましい。ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、ベンゾイルパーオキシド、イソブチルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のアルキルパーエステル類、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチルカーボネート等のパーカーボネート類等の有機過酸化物や、過酸化水素等の無機化酸化物が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
また、第1樹脂層における樹脂組成物には、エラストマーや無機充填材等を含有してもよい。
【0064】
エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、液状ポリブタジエン、液状NBRなどの低揮発性の液状ゴム、NBRゴム、SBRゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等の架橋または非架橋性のゴム粒子等が挙げられる。
【0065】
また、無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、球状シリカ、アルミナ等が挙げられる。また、無機充填材の含有量としては、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、上述した関係を満たす量であることが好ましい。
【0066】
また、第1樹脂層における樹脂組成物は、液状樹脂組成物であることが好ましい。第1樹脂層における樹脂組成物として、液状樹脂組成物を用いることによって、金属張積層板の連続生産をしやすくなると考えられる。
【0067】
また、第1樹脂層における樹脂組成物が、溶媒を含まない、すなわち無溶媒の樹脂組成物であることが好ましい。そうすることによって、金属張積層板の連続生産を容易に行うことができる。
【0068】
また、絶縁層における第2樹脂層は、上述した構成を満たすものであれば、特に限定されない。具体的には、樹脂組成物の硬化物を含有し、その樹脂組成物が、第1樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、さらに、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の比誘電率よりも低いという関係を満たすものであれば、特に限定されない。また、この関係は、このような第1樹脂組成物と第2樹脂組成物との間で成り立つだけではなく、第3樹脂層を備える場合、第1樹脂組成物と第3樹脂組成物との間でも、同様の関係が成り立つことが好ましい。
【0069】
また、第2樹脂層と第3樹脂層とは、上述した関係を満たすのであれば、同じ組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。
【0070】
また、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率は、2.2〜3.5であることが好ましい。第2樹脂層として、それに含まれる樹脂組成物の硬化物がこのような範囲内の比誘電率を有するものであれば、第2樹脂層の耐熱性が低すぎる等の不具合の発生を抑制しつつ、金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路における信号の伝送損失を低減させるという、第2樹脂層による効果をより発揮できる。また、第3樹脂層を備える場合も、第2樹脂層の場合と同様、第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率は、2.2〜3.5であることが好ましい。
【0071】
また、第2樹脂層の厚みが、第1樹脂層の厚みに対して、5〜50%であることが好ましい。具体的には、第2樹脂層の厚みが、1〜25μmであることが好ましい。第2樹脂層を、このような厚みにすることによって、得られた金属張積層板の表面の金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路において、信号の伝送損失をより低減させることができる。また、第3樹脂層を備える場合も、第2樹脂層の場合と同様、第3樹脂層の厚みが、第1樹脂層の厚みに対して、5〜50%であることが好ましい。具体的には、第3樹脂層の厚みが、1〜25μmであることが好ましい。
【0072】
また、第2樹脂層における樹脂組成物は、上記のような関係を満たし、第1樹脂層における樹脂組成物と異なるものであれば、特に限定されないが、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。また、第3樹脂層における樹脂組成物は、上記のような関係を満たし、第1樹脂層における樹脂組成物と異なるものであれば、特に限定されない。また、第3樹脂層における樹脂組成物は、第2樹脂層における樹脂組成物と同様、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0073】
熱硬化性化合物としては、第2樹脂層における樹脂組成物が、上記のような関係を満たすことができるようであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、及びエポキシ化合物の硬化物より比誘電率の低い硬化物が得られる熱硬化性化合物等があげられる。
【0074】
このようなエポキシ化合物は、特に限定されない。例えば、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物より比誘電率の低い硬化物となるようなものであって、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物等が好適に使用できる。より具体的には、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
また、エポキシ化合物の硬化物より比誘電率の低い硬化物が得られる熱硬化性化合物は、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、及びシアネート樹脂等が挙げられる。
【0076】
また、第2樹脂層及び第3樹脂層における樹脂組成物には、無機充填材等を含有してもよい。無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、球状シリカ、アルミナ等が挙げられる。また、無機充填材の含有量としては、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率、及び第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、上述した関係を満たす量であることが好ましい。
【0077】
また、第2樹脂層及び第3樹脂層は、上述したような、樹脂組成物の硬化物を少なくとも含んでいればよく、繊維基材を含んでいなくてもよい。すなわち、第2樹脂層及び第3樹脂層は、樹脂組成物の硬化物からなる層であってもよい。また、第2樹脂層及び第3樹脂層は、樹脂組成物の硬化物からなる層であることが好ましい。
【0078】
また、金属張積層板における金属層は、特に限定されない。具体的には、金属張積層板の金属層として用いることができる金属箔等が挙げられる。また、金属箔としては、例えば、電解銅箔等の銅箔等が挙げられる。金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、2〜35μmであることが好ましい。また、金属層の具体例としては、例えば、電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製の3EC−VLP、厚み12μm)等が挙げられる。
【0079】
また、金属張積層板としては、金属層を、絶縁層の一方の面に配置したものであってもよいし、絶縁層の両面に配置したものであってもよいが、絶縁層の両面に配置したものが好ましい。そうすることによって、表面の金属層を部分的に除去することにより、両面に金属配線を形成した基板を形成することができる。また、このような両面に金属配線を形成可能な金属張積層板であっても、信頼性の高いものが得られる。そして、このような金属張積層板を用いて電子部品を製造することによって、信頼性の高い電子部品を製造することができる。
【0080】
また、金属張積層板の製造方法は、上述した構成の金属張積層板を製造することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下の方法等が挙げられる。
【0081】
まず、繊維基材に、第1樹脂層における樹脂組成物を含浸させる。この含浸としては、例えば、浸漬や塗布等によって行うことができる。そうすることによって、第1樹脂層を形成するためのプリプレグを得ることができる。
【0082】
そして、金属層となる金属箔に、第2樹脂層における樹脂組成物を塗布する。その樹脂組成物を塗布した金属箔を、樹脂組成物が、第1樹脂層を形成するためのプリプレグの一方の面に接触するように、積層する。また、第3樹脂層を備える場合、金属層となる金属箔に、第3樹脂層における樹脂組成物を塗布する。その樹脂組成物を塗布した金属箔を、樹脂組成物が、第1樹脂層を形成するためのプリプレグの他方の面に接触するように、積層する。
【0083】
その後、プリプレグを含む積層体を乾燥させて加熱する。そうすることによって、各層に含まれる樹脂組成物が熱硬化され、金属張積層板が得られる。
【0084】
また、第2樹脂層及び第3樹脂層は、それを構成する樹脂組成物を、金属箔に先に塗布する方法について説明したが、これに限定されず、例えば、以下のような方法であってもよい。具体的には、まず、第2樹脂層及び第3樹脂層を構成する樹脂組成物を、金属箔ではなくて、第1樹脂層を形成するためのプリプレグに先に塗布する。そして、その塗布されたものの両面に、金属箔を積層する方法であってもよい。
【0085】
また、得られた金属張積層板は、その金属層をエッチング加工等により回路形成することによって、プリント配線板とすることができる。すなわち、得られた金属張積層板の金属層をエッチング加工等して回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができる。このように得られたプリント配線板は、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高いものである。
【0086】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0087】
[実施例1]
まず、第1樹脂層における樹脂組成物として、ビスフェノールA型メタクリレート(新中村化学工業株式会社製のNKオリゴ EA1020)35質量部、フェノールノボラックエポキシ樹脂(DIC株式会社製のEPICLON N740、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂)35質量部、ラジカル重合型熱硬化性モノマーであるスチレン(新日鐵化学株式会社製)30質量部、ラジカル重合開始剤であるクメンハイドロパーオキサイド(CHP)(日油株式会社製のパークミルH−80)1質量部、硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成株式会社製)1質量部、無機充填材である水酸化アルミニウム粒子(住友化学株式会社製のCL303)75質量部、無機充填材であるシリカ粒子(株式会社アドマテックス製のSO25R)65質量部、環状ホズファゼン化合物(大塚化学株式会社製のSPB100)18質量部からなる樹脂組成物を用意した。そして、第1樹脂層を形成するためのプリプレグとして、この樹脂組成物をガラスクロス(1504タイプ 平織り)に含浸させたプリプレグ(樹脂含浸基材)を用意した。
【0088】
金属層となる金属箔として、電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製の3EC−VLP、厚み12μm)を用意した。
【0089】
また、第2樹脂層における樹脂組成物として、ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のノリル640−111)70質量部、トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製のTAIC)30質量部、ラジカル重合開始剤であるα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製のパーブチルP)2質量部からなる樹脂組成物を用意した。そして、第2樹脂層を形成する際には、この樹脂組成物に、固形分濃度が40質量%となるように、トルエンを添加して、樹脂組成物をワニス状にして用いた。
【0090】
また、第3樹脂層における樹脂組成物として、第2樹脂層における樹脂組成物と同様のものを用意した。そして、第3樹脂層を形成する際には、第2樹脂層の形成と同様、この樹脂組成物に、固形分濃度が40質量%となるように、トルエンを添加して、樹脂組成物をワニス状にして用いた。
【0091】
そして、この金属箔に、第2樹脂層における樹脂組成物を、厚み10μmとなるように塗布した。
【0092】
また、別の金属箔に、第3樹脂層における樹脂組成物を、厚み10μmとなるように塗布した。
【0093】
これらの樹脂組成物を塗布した金属箔を、第1樹脂層を形成するためのプリプレグのそれぞれの面に接触するように、積層した。
【0094】
その後、得られた積層体を、110℃で15分間乾燥させた。その後、200℃で15分間加熱した。
【0095】
そうすることによって、各層に含まれる樹脂組成物が熱硬化され、金属張積層板が得られた。
【0096】
得られた金属張積層板における、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、5.2であり、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、2.6であり、第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、2.6であった。また、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率対する、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率の比率が、50%であった。これらの比誘電率は、JIS C6481に準拠の方法により、常温の環境下で、1MHzの周波数で測定した値である。具体的には、ヒューレットパッカード製のLCRメータを用いて測定した値である。
【0097】
また、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、及び金属張積層板は、それぞれ80μm、10μm、10μm、及び124μmであった。この各厚みは、得られた金属張積層板の断面を顕微鏡観察することによって、測定した。
【0098】
[実施例2]
第2樹脂層における樹脂組成物、及び第3樹脂層における樹脂組成物として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のN690)67質量部、フェノール性硬化剤(DIC株式会社製のTD2090)33質量部、硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成株式会社製)0.04質量部、無機充填材である水酸化アルミニウム粒子(住友化学株式会社製のCL303)20質量部、無機充填材であるシリカ粒子(株式会社アドマテックス製のSO25R)100質量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0099】
得られた金属張積層板における、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、5.2であり、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、4.0であり、第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、4.0であった。また、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率対する、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率の比率が、約77%であった。
【0100】
また、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、及び金属張積層板は、それぞれ80μm、10μm、10μm、及び124μmであった。
【0101】
なお、各層の比誘電率や厚みは、実施例1と同様の方法で測定した。
【0102】
[実施例3]
第2樹脂層における樹脂組成物、及び第3樹脂層における樹脂組成物として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のN690)67質量部、フェノール性硬化剤(DIC株式会社製のTD2090)33質量部、硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成株式会社製)0.04質量部、無機充填材である水酸化アルミニウム粒子(住友化学株式会社製のCL303)120質量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0103】
得られた金属張積層板における、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、5.2であり、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、5.0であり、第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、5.0であった。また、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率対する、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率の比率が、約96%であった。
【0104】
また、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、及び金属張積層板は、それぞれ80μm、10μm、10μm、及び124μmであった。
【0105】
なお、各層の比誘電率や厚みは、実施例1と同様の方法で測定した。
【0106】
[実施例4]
第2樹脂層における樹脂組成物、及び第3樹脂層における樹脂組成物として、ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のノリル640−111)20質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のN690)80質量部、硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成株式会社製)0.04質量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0107】
得られた金属張積層板における、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、5.2であり、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、3.5であり、第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、3.5であった。また、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率対する、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率の比率が、約67%であった。
【0108】
また、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、及び金属張積層板は、それぞれ80μm、10μm、10μm、及び124μmであった。
【0109】
なお、各層の比誘電率や厚みは、実施例1と同様の方法で測定した。
【0110】
[比較例1]
第2樹脂層における樹脂組成物、及び第3樹脂層における樹脂組成物として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のN690)67質量部、フェノール性硬化剤(DIC株式会社製のTD2090)33質量部、硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成株式会社製)0.04質量部、無機充填材である酸化チタン粒子(石原産業株式会社製のR820)100質量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0111】
得られた金属張積層板における、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、5.2であり、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、8.4であり、第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、8.4であった。
【0112】
また、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、及び金属張積層板は、それぞれ80μm、10μm、10μm、及び124μmであった。
【0113】
なお、各層の比誘電率や厚みは、実施例1と同様の方法で測定した。
【0114】
[比較例2]
第2樹脂層及び第3樹脂層を備えていないこと以外、実施例1と同様である。
【0115】
[評価方法]
そして、得られた銅張積層板(金属張積層板)を以下のように評価した。
【0116】
[伝送損失]
得られた銅張積層板(長さ11mm×幅9mm)に、回路幅Sが0.06〜0.35mmの範囲内で、回路間距離Wが0.100mm、0.125mm、0.150mmと、回路幅S及び回路間距離Wが異なる配線回路(金属配線)を、周波数3GHzでのインピーダンスが50Ωとなるように形成させた。この金属配線に対して、周波数3GHzの電気信号を入力した。その金属配線に入力された電気信号が、金属配線を伝送する際の伝送損失を測定した。
【0117】
この測定結果は、以下の通りであった。実施例1に係る金属張積層板を用いた場合、−3.3dBであった。実施例2に係る金属張積層板を用いた場合、−3.8dBであった。実施例3に係る金属張積層板を用いた場合、−4.2dBであった。実施例4に係る金属張積層板を用いた場合、−3.6dBであった。比較例1に係る金属張積層板を用いた場合、−5.2dBであった。比較例2に係る金属張積層板を用いた場合、−4.3dBであった。
【0118】
これらの結果からわかるように、実施例1〜4は、比較例1及び比較例2より、伝送損失が少ない。このことから、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低い場合、信号の高速化が実現できることがわかる。
【0119】
また、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率対する、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率の比率が、20〜90%である実施例1,2,4は、前記比率が90%を超える実施例3より、伝送損失が少ない。このことから、第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率対する、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率の比率が20〜90%であることが、好ましいことがわかる。
【0120】
また、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が2.2〜3.5である実施例1,4は、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が3.5を超える実施例2,3より、伝送損失が少ない。このことから、第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が2.2〜3.5であることが、好ましいことがわかる。
【0121】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0122】
本発明の一態様に係る金属張積層板は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面側に存在する金属層とを備え、前記絶縁層が、第1樹脂層と、前記第1樹脂層と前記金属層との間に配置される第2樹脂層との少なくとも2つの層を積層したものであり、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第2樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低いことを特徴とするものである。
【0123】
このような構成によれば、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高い基板を製造することができる金属張積層板を提供することができる。そして、この得られた金属張積層板の表面の金属層を部分的に除去することによって、配線回路が形成された基板を用いて得られたパッケージは、その基板に搭載された電子部品間の信号の伝送損失を低減させ、信号の高速伝送を実現できる。
【0124】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率に対して、20〜90%であることが好ましい。
【0125】
このような構成によれば、金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路における、信号の伝送損失をより低減できる。
【0126】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、2.2〜3.5であることが好ましい。
【0127】
このような構成によれば、金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路における、信号の伝送損失をより低減できる。
【0128】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層の厚みが、前記第1樹脂層の厚みに対して、5〜50%であることが好ましい。
【0129】
このような構成によれば、金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路において、信号の伝送損失をより低減させることができる。
【0130】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層の厚みが、1〜25μmであることが好ましい。
【0131】
このような構成によれば、金属層を部分的に除去することによって形成された配線回路において、信号の伝送損失をより低減させることができる。
【0132】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0133】
このような構成によれば、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。
【0134】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、ラジカル重合型熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0135】
このような構成によれば、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。また、金属張積層板の連続生産をしやすくなると考えられる。
【0136】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層が、繊維基材を含むことが好ましい。
【0137】
このような構成によれば、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。また、得られた金属張積層板を用いて電子部品を製造すると、信頼性のより高い電子部品を製造することができる。
【0138】
また、前記金属張積層板において、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、液状樹脂組成物であることが好ましい。
【0139】
このような構成によれば、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。また、金属張積層板の連続生産をしやすくなると考えられる。
【0140】
また、前記金属張積層板において、前記第2樹脂層における樹脂組成物が、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0141】
このような構成によれば、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。
【0142】
また、前記金属張積層板において、前記絶縁層の厚みが、5μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0143】
このような構成によれば、信頼性のより高い金属張積層板を提供することができる。
【0144】
また、前記金属張積層板において、前記金属層が、前記絶縁層の両面側に配置され、前記絶縁層が、前記第1樹脂層の、前記第2樹脂層が積層されている側の反対側の表面側に第3樹脂層をさらに積層したものであり、前記第1樹脂層と前記第3樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第3樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、前記第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低いことが好ましい。
【0145】
このような構成によれば、表面の金属層を部分的に除去することにより、両面側に金属配線を形成した基板を形成することができる。
【0146】
また、本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、前記金属張積層板の金属層を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とするものである。
【0147】
このような構成によれば、伝送速度の高速化を実現でき、さらに、信頼性の高いプリント配線板を提供することができる。
【符号の説明】
【0148】
11 金属張積層板
12 絶縁層
13 金属層
14 第1樹脂層
15 第2樹脂層
16 第3樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面側に存在する金属層とを備え、
前記絶縁層が、第1樹脂層と、前記第1樹脂層と前記金属層との間に配置される第2樹脂層との少なくとも2つの層を積層したものであり、
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、
前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第2樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、
前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低いことを特徴とする金属張積層板。
【請求項2】
前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率に対して、20〜90%である請求項1に記載の金属張積層板。
【請求項3】
前記第2樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、2.2〜3.5である請求項1又は請求項2に記載の金属張積層板。
【請求項4】
前記第2樹脂層の厚みが、前記第1樹脂層の厚みに対して、5〜50%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項5】
前記第2樹脂層の厚みが、1〜25μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項6】
前記第1樹脂層における樹脂組成物が、熱硬化性化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項7】
前記第1樹脂層における樹脂組成物が、ラジカル重合型熱硬化性化合物を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項8】
前記第1樹脂層が、繊維基材を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項9】
前記第1樹脂層における樹脂組成物が、液状樹脂組成物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項10】
前記第2樹脂層における樹脂組成物が、熱硬化性化合物を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項11】
前記絶縁層の厚みが、5μm以上200μm以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項12】
前記金属層が、前記絶縁層の両面側に配置され、
前記絶縁層が、前記第1樹脂層の、前記第2樹脂層が積層されている側の反対側の表面側に第3樹脂層をさらに積層したものであり、
前記第1樹脂層と前記第3樹脂層とが、それぞれ樹脂組成物の硬化物を含有し、
前記第1樹脂層における樹脂組成物が、前記第3樹脂層における樹脂組成物とは異なる樹脂組成物であり、
前記第3樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率が、前記第1樹脂層に含まれる樹脂組成物の硬化物の比誘電率より低い請求項1〜11のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の金属張積層板の金属層を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−995(P2013−995A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134899(P2011−134899)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】