金属板の積層体、回転電機のコア及び金属板の積層体の積層方法
【課題】複数のコア板を強い結合保持力及び高い平行度で隙間無く積層結合することができるようにすること。
【解決手段】複数のコア板を積層して、コアを構成する。コア板には、積層状態に結合するための結合部を設ける。結合部には、積層方向へ起立形成された固定片24と、隣接するコア板の固定片24を通すための通過孔25と、その通過孔25に通した固定片24が折り曲げられることにより、隣接するコア板に対して結合保持される受部26と、他のコア板の受部26上に折り曲げられた固定片24との干渉を避けるように、その固定片24を収容する開口27とを設ける。
【解決手段】複数のコア板を積層して、コアを構成する。コア板には、積層状態に結合するための結合部を設ける。結合部には、積層方向へ起立形成された固定片24と、隣接するコア板の固定片24を通すための通過孔25と、その通過孔25に通した固定片24が折り曲げられることにより、隣接するコア板に対して結合保持される受部26と、他のコア板の受部26上に折り曲げられた固定片24との干渉を避けるように、その固定片24を収容する開口27とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ等の回転電機におけるロータコアやステータコア等の金属板の積層体及びその積層方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属板の積層体である回転電機のコアにおいては、複数のコア板を積層するとともに、その積層状態に結合保持することによって構成されている。このように、複数のコア板を積層状態に結合するための結合構造としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成が従来から提案されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に記載の従来構成では、コア板の突起が積層方向に隣接する他のコア板の凹部または孔に嵌合されることにより、コア板が積層状態に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−264411号公報
【特許文献2】特開2006−166500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これらの従来構成においては、次のような問題があった。
まず、従来構成では、コア板が突起と凹部または孔との凹凸の嵌合関係のみによって結合されるため、高い結合保持力を得ることができなかった。このため、コア板を積層状態に固定するための別部材による手段が必要になって、構成が複雑になった。それでもなお、突起や凹部が断面三角形の場合には、コア板間の位置決めを行わないと、突起が三角形の斜面に沿って動きやすい。そして、このように動いてしまうと、コア板間に隙間が生じて、コアとしての機能の低下を招くおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、複数の金属板を強い結合保持力で積層結合することができる金属板の積層体、回転電機のコア及び金属板の積層体の積層方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、複数枚の金属板を積層して構成した積層体おいて、前記金属板に、他の金属板に結合される結合部を設け、その結合部には、積層方向へ起立形成される固定片と、隣接する金属板の固定片を通すための通過孔と、その通過孔に通した固定片が折り曲げられることにより、隣接する金属板に対して結合保持される受部と、他の金属板の受部上に折り曲げられた固定片との干渉を避けるように、その固定片を収容する開口とを設けたことを特徴としている。
【0008】
従って、この発明においては、複数の金属板が積層された状態で、隣接する下側の金属板上の固定片が上側の金属板の通過孔に通される。この状態で、下側の金属板の固定片が上側の金属板の受部上に折り曲げられることにより、上側の金属板が下側の金属板に対して結合保持される。そして、上側の金属板上に他の金属板が積層されたとき、上側の金属板の受部上に折り曲げられた状態の固定片が他の金属板の開口内に収容配置されて、その固定片と他の金属板との干渉が回避される。
【0009】
このため、受部上への固定片の折り曲げにより、隣接する金属板間を強い結合保持力で連続して積層結合することができる。また、折り曲げ状態の固定片が他の金属板の開口内に収容されることにより、固定片と他の金属板との干渉が回避されるため、複数の金属板を高い平行度で積層することができる。
【0010】
前記の構成において、前記通過孔と開口とを連続形成するとよい。
前記の構成において、前記受部上に折り曲げられた状態の固定片を押さえる押さえ部を設けるとよい。
【0011】
前記の構成において、前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となる湾曲形状に形成されるとよい。
前記の構成において、各金属板は、隣接する金属板に対して所定角度ずつ位相をずらして積層されるとよい。
【0012】
前記の構成において、前記結合部を前記所定角度のピッチで配列するとともに、その結合部の向きを同所定角度ずつずらせるとよい。
金属板の積層体により回転電機のコアを構成することが好ましい。
【0013】
回転電機の金属板の積層方法に関する発明においては、前記の構成において、複数枚の金属板を積層して構成する回転電機において、前記金属板に起立形成された固定片を隣接する金属板の通過孔に通した後に、その固定片を折り曲げて隣接する金属板の受部に対して結合保持することを特徴とする。
【0014】
前記の方法において、各金属板を、隣接する金属板に対して一定角度ずつ位相をずらして積層するとよい。
前記の方法において、前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となるように湾曲され、その後に固定片が受部上に自身の外径側に折り曲げられるとよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、複数の金属板を強い結合保持力及び高い平行度で連続して積層結合することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明をモータのステータコアに具体化した第1実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のステータコアの第1コア板を拡大して示す平面図。
【図3】図2の第1コア板における各結合部の固定片の切り起こし前の状態を示す平面図。
【図4】(a)及び(b)は結合部の固定片の切り起こし前及び後の状態を示す部分拡大平面図。
【図5】図4(b)の5−5線における部分断面図。
【図6】図2の第1コア板を時計方向に120度回転させて位相をずらせた状態の第2コア板を示す平面図。
【図7】図2の第1コア板を時計方向に240度回転させて位相をずらせた状態の第3コア板を示す平面図。
【図8】(a)〜(c)は、第1〜第3コア板の結合部のパターンを示す部分拡大平面図。
【図9】(a)〜(c)は、第1〜第3コア板の結合部の組み付け過程を順に示す部分平面図。
【図10】図9(b)の10−10線における部分断面図。
【図11】図9(c)の11−11線における部分断面図。
【図12】第2実施形態のステータコアのコア板を示す平面図。
【図13】(a)及び(b)は図12のコア板における結合部の固定片の切り起こし前及び後の状態を示す部分拡大平面図。
【図14】(a)〜(d)は、90度ずつ位相をずらせた状態のコア板における結合部のパターンを示す部分平面図。
【図15】図14(c)の15−15線におけるコア板の結合状態の部分断面図。
【図16】第3実施形態のステータコアにおけるコア板の結合部を示す部分斜視図。
【図17】図16の結合部によるコア板の結合状態を示す部分断面図。
【図18】(a)〜(c)は、第4実施形態のステータコアにおけるコア板の結合部の成形方法を順に示す部分斜視図。
【図19】図18(b)における固定片の切り起こし成形時の状態を示す部分拡大断面図。
【図20】図18(c)における固定片の折り曲げ成形時の状態を示す部分拡大断面図。
【図21】第5実施形態の分割型ステータコアのコア板を示す平面図。
【図22】図21のステータコアの一部側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した積層体としてのモータのステータコアの第1実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、この実施形態のステータコア21は、複数の金属板としてのコア板22を積層することによって構成されている。各コア板22は、円環状のヨーク部22aと、そのヨーク部22aの内周に突設された複数のティース部22bとより構成されている。各コア板22のヨーク部22aには、それらを積層状態に結合するための同一形状で複数の結合部23が所定角度間隔をおいて設けられている。この実施形態では、6つの結合部23が60度間隔おきに配列されている。
【0019】
次に、前記結合部23A〜23Fの構成について詳細に説明する。なお、各結合部23A〜23Fは、すべて同一の形状構成をなしているため、第1コア板22A上の1つの結合部23Aを代表的に図示して、その構成について説明する。
【0020】
図4(a)(b)及び図5に示すように、前記結合部23Aには、コア板22A〜22Cの積層方向に起立される固定片24と、下側に隣接するコア板22A〜22Cの固定片24を通すための通過孔25と、その通過孔25に通した固定片24が把持状態に折り曲げられることにより、その固定片24を有するコア板22A〜22Cに対して結合保持される受部26とが形成されている。また、結合部23Aには、隣接する他のコア板22A〜22Cの受部26上に折り曲げられた固定片24との干渉を避けるように、その固定片24を収容するための開口27が設けられている。この開口27は前記通過孔25と連続した状態で形成されている。
【0021】
そして、この結合部23A〜23Fの成形時には、図3及び図4(a)に示すように、まず通過孔25、受部26、開口27及び扇形状をなす固定片24の外径線24aが打ち抜き形成される。ここで、通過孔25、固定片24及び受部26は、120度隔てた領域に配置される。さらに、固定片24の外径線24aの両側部には、固定片24の切り起こし成形時におけるバリの発生を抑えるための凹部28及び孔部29が形成される。続いて、図4(b)及び図5に示すように、切り起こし用パンチ30を用いて固定片24が切り起こし成形される。この切り起こし用パンチ30には、固定片24の外径線24aの部分を分離する刃部30a、及び固定片24の基部を折り曲げるための円弧部30bが形成されている。
【0022】
そして、これら結合部23は、コア板22A〜22Cの中心を中心とした回転角度位相が隣接する他の結合部23に対して60度ずつ変位している。このため、図2から明らかなように、120度間隔おきに配置された3箇所の結合部23A,23B,23Cは同一向きの第1パターンとなるように構成され、残りの120度間隔おきに配置された3箇所の結合部23D,23E,23Fは前記第1パターンと異なる同一の向きの第2パターンとなるように構成されている。
【0023】
そして、複数のコア板22の積層状態において、例えば図2に示すような配列状態の結合部23A〜23Fを備えた第1コア板22Aの下側には、図6に示すような配列状態の結合部23A〜23Fを備えた第2コア板22Bが配置されるとともに、その第2コア板22Bの下側には図7に示すような配列状態の結合部23A〜23Fを備えた第3コア板22Cが配置されている。これらの第1〜第3コア板22A〜22Cは、同一構造であるが、上下方向(積層方向)に対応する結合部23A〜23Fの回転角度位相が120度ずつずれるように向きが異なっている。すなわち、図6に示す第2コア板22Bは、その結合部23A〜23Fが第1コア板22Aの結合部23A〜23Fに対して反時計回り方向に120度変位され、図7に示す第3コア板22Cは、その結合部23A〜23Fが第1コア板22Aの結合部23A〜23Fに対して反時計回り方向に240度変位される。さらに、この第1〜第3コア板22A,22B,22Cの積層配置が繰り返し行われて、ステータコア21が構成されている。
【0024】
そして、積層状態の隣接する各コア板22A〜22C間において、同一位置に対応配置された結合部23A〜23Fが結合されることにより、コア板22A〜22Cが積層状態に固定されている。
【0025】
次に、前記コア板22A〜22Cの転積時に際して、結合部23A〜23Fにおいてコア板22A〜22C間を結合する方法及びステータコア21の作用について説明する。この実施形態においては、コア板22A〜22Cは120度単位で転積される。
【0026】
図2、図6及び図7に示すように、第1〜第3コア板22A〜22Cが120度ずつ回転変位されて順に転積される場合には、各結合部23A〜23Fが積層方向に隣接するコア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fに対して回転角度位相が120度ずつ変移した状態で対応配置される。すなわち、例えば、図8(a)〜(c)に示すように、上側の第1コア板22Aの結合部23Aには、下側の第2コア板22Bの結合部23B、及びその下側の第3コア板22Cの結合部23Cが、120度ずつ順に変移した状態で対応配置される。そして、図9(a)に示すように、下側の第2コア板22Bに対する上側の第1コア板22Aの積層においては、第1コア板22Aの結合部23Aの通過孔25に第2コア板22Bの結合部23Bの固定片24が通される。
【0027】
この状態で、図9(b)及び図10に示すように、折り曲げ用パンチ31を用いて、第2コア板22Bの結合部23Bの固定片24が第1コア板22Aの結合部23Aの受部26上に重なるように折り曲げられる。この折り曲げ用パンチ31には、固定片24を押圧して折り曲げるための傾斜面31a、及び固定片24に折り曲げ位置からさらに折り曲げ方向への力を付与して固定片24のスプリングバックを抑えるための円弧部31bが設けられている。そして、この固定片24の折り曲げにより、上側の第1コア板22Aが下側の第2コア板22Bに対して積層状態に結合固定される。
【0028】
その後、図9(c)に示すように、第1コア板22A上に第3コア板22Cが積層されると、第3コア板22Cの結合部23Cの通過孔25に第1コア板22Aの結合部23Aの固定片24が通される。そして、この固定片24が第3コア板22Cの結合部23Cの受部26上に前記と同様に折り曲げられることにより、第3コア板22Cが第1コア板22Aに対して積層状態に結合固定される。このとき、図9(c)及び図11に示すように、第1コア板22Aの結合部23Aの受部26上に折り曲げられた状態にある第2コア板22Bの結合部23Bの固定片24が、第3コア板22Cの結合部23Cの開口27内に収容される。このため、折り曲げ状態にある第2コア板22Bの固定片24と第3コア板22Cとの干渉が回避されて、第3コア板22Cが第1コア板22A上に平行状態で隙間なく積層される。
【0029】
このように、第1〜第3コア板22A,22B,22Cが順次積層されて、各結合部23A〜23Fにおいて順に結合されることにより、ステータコア21が組み立てられる。この場合、ステータコア21の最上部に配置されるコア板22A〜22Cのいずれかにおいては、結合部23A〜23Cの固定片24が切り起こし成形されることなく、基部において切断されて除去される。
【0030】
このように構成されたステータコア21は、6箇所の結合部23A〜23Fの固定片24の折り曲げによって隣接する第1〜第3コア板22A,22B,22Cが積層状態で固定される。言い換えれば、固定片24により、それに隣接するコア板22A〜22Fが強固に把持される。そして、折り曲げられた固定片24は、開口27内に収容されて、コア板22A〜22Fの積層の妨げにはならない。このとき、各固定片24は絶縁被覆が施された側面が受部26の同じく絶縁被覆が施された受部26上に接触され、電気接続状態が形成されることはない。
【0031】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態においては、モータのステータコア21を構成する各コア板22A〜22Cには、それらを積層状態に結合するための複数の結合部23A〜23Cが設けられている。そして、各結合部23A〜23Cには、積層のために折り曲げられる固定片24と、隣接するコア板22A〜22Cの固定片24を通すための通過孔25と、その通過孔25に通した固定片24が折り曲げられることにより、隣接するコア板22A〜22Cに対して結合保持される受部26と、他のコア板22A〜22Cの受部26上に折り曲げられた固定片24との干渉を避けるように、その固定片24を収容する開口27とが設けられている。
【0032】
従って、受部26上へ固定片24を折り曲げれば、その固定片24とコア板22A〜22Cとにより受部26を狭持することができる。このため、隣接するコア板22A〜22C間を強い結合保持力で連続して積層結合することができ、コア板22A〜22Cを積層状態に結合するための専用部品を不要にすることができる。また、折り曲げ状態の固定片24が他のコア板22A〜22Cの開口27内に収容されることにより、固定片24と他のコア板22A〜22Cとの干渉が回避されるため、複数のコア板22A〜22Cを高い平行度で隙間なく積層することができる。さらに、折り曲げ状態の固定片24が表面の絶縁被覆を介して受部26に接合されるため、渦電流損を低減することができる。よって、構成が簡単で、しかも頑丈で、かつ高効率の回転電機のコアを得ることができる。
【0033】
(2) この実施形態においては、前記通過孔25と開口27とが連続して形成されている。このため、通過孔25と開口27とを1つのパンチとダイによって同時に打ち抜き形成することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第2実施形態を図12〜図15に従って前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0035】
この第2実施形態においては、図12に示すように、ステータコア21のコア片32のヨーク部32aに、4つの同一形状の結合部33A,33B,33C,33Dが90度の角度間隔おきに設けられている。そして、図12に示すような結合部33A〜33Dは、コア板22A〜22Cの中心を中心とした回転角度位相が隣接する他の結合部23に対して90度ずつ変位している。
【0036】
図13(b)に示すように、各結合部33A〜33Dには、前記第1実施形態の場合とほぼ同様な固定片24、通過孔25、受部26、開口27、凹部28及び孔部29が形成されている。また、各結合部33A〜33Dには、受部26上に折り曲げられた状態の固定片24を押さえるための押さえ部34が形成されている。そして、結合部33A〜33Dの成形時には、図13(a)に示すように、まず通過孔25、受部26、開口27、凹部28、孔部29、押さえ部34、及び扇形状をなす固定片24の外径線24aが打ち抜き形成される。このとき、通過孔25、開口27、押さえ部34、固定片24は90度ずつ離れた領域に位置する。その後、図13(b)に示すように、固定片24が基部を中心にして切り起こし成形される。
【0037】
このように構成されたコア板32A〜32Dが順に90度ずつ位相をずらせながら積層される。この場合、図14(a)〜(d)に示すように、例えば上側の第1コア板32Aの結合部33Aに対しては、下側の第2コア板32Bの結合部33B、第3コア板32Cの結合部33B及び第4コア板32Dの結合部33Dが、回転方向に90度ずつ変移した状態で対応配置される。
【0038】
そして、図14(a)〜(d)に鎖線で示すように、第1〜第4コア板32A〜32Dが積層される際には、下側コア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの固定片24が上側コア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの通過孔25に通されて、その受部26上に折り曲げられることにより、各コア板32A〜32Dが積層状態に結合固定される。この場合、折り曲げ状態の固定片24が、その上側に配置されるコア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの開口27内に収容されるとともに、さらにその上側に配置されるコア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの押さえ部34により浮き上がらないように上方から押さえられる。
【0039】
例えば、図15に示すように、第4コア板32Dの結合部33Dの固定片24が第3コア板32Cの結合部33Cの受部26上に折り曲げられた状態では、その固定片24が第2コア板32Bの結合部33Bの開口27内に収容されるとともに、第1コア板32Aの結合部33Aの押さえ部34により上方から押さえられる。このため、折り曲げ状態の固定片24と第2コア板32Bとの干渉が回避されるとともに、受部26上からの固定片24の浮き上がりが規制される。
【0040】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(3) この回転電機のコアにおいては、前記受部26上に折り曲げられた状態の固定片24を押さえるための押さえ部34が設けられている。このため、折り曲げられた状態の固定片24が受部26上から浮き上がるのを押さえ部34により押圧して規制することができる。よって、固定片24の浮き上がりによりコア板22A〜22D間の結合保持力が低減したり、コア板22A〜22D間に隙間が形成されたりするおそれを抑制することができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第3実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0042】
この第3実施形態においては、図16及び図17に示すように、コア板22A〜22Cに前記第1実施形態と同様な結合部23A〜23Fが設けられている。各結合部23A〜23Fの固定片24の基部には、押さえ部37が固定片24と反対の下側に向かって折り曲げ形成されている。そして、図18に示すように、コア板22A〜22Cが結合部23A〜23Cの固定片24の折り曲げにより積層状態に結合された後、さらに1枚のコア板22A〜22Cが積層されたとき、そのコア板22A〜22C上の押さえ部37が折り曲げ状態の固定片24の基端部に当接される。このため、固定片24が折り曲げ状態に押し付け保持されて、固定片24の浮き上がりが抑制される。
【0043】
従って、この第3実施形態においても、前記第2実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第4実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
この第4実施形態においては、図18〜図20に示すように、コア板22A〜22Cに前記第1実施形態と同様な結合部23A〜23Fが設けられている。各結合部23A〜23Fには、前記第1実施形態の場合とほぼ同様な固定片24、通過孔25、受部26及び開口27が形成されている。そして、結合部23A〜23Fの成形時には、図18(a)に示すように、まず通過孔25、受部26、開口27及び台形状をなす固定片24の外形線が打ち抜き形成される。その後、図18(b)及び図19に示すように、それぞれ円柱面を有する切り起こし用パンチ38及びダイ39を用いて、固定片24が基部付近を中心にして切り起こし成形される。この場合、切り起こし状態の固定片24は、図18(b)に示すように、起立方向と交差する面内において湾曲するように、つまり内径側が通過孔25側に位置する円弧状をなすように湾曲形成される。
【0045】
さらに、図18(c)に示すように、コア板22A〜22Cが積層される際には、下側コア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fの固定片24が上側コア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fの通過孔25に通される。そして、図18(c)及び図20に示すように、折り曲げ用パンチ40及びダイ41を用いて、固定片24が受部26上に折り曲げられることにより、上下のコア板22A〜22C間が積層状態に結合固定される。この場合、固定片24は、自身の外径側に折り曲げられて、つまり、円弧状態から平板状態になるように無理やりに広げられて折り曲げられ、下側の受部26に圧接される。
【0046】
従って、この第4実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4) この回転電機のコアにおいては、結合部23A〜23Fの固定片24が円弧状をなすように切り起こし形成される。そして、この固定片24が、上側のコア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fの通過孔25に通した状態で、その受部26上に平板状になるように押し広げられて折り曲げられる。このため、固定片24が折り曲げ状態から切り起こし状態に復帰変形することを効果的に防止できる。このため、コア板22A〜22Cを積層状態に強固に結合保持することができる。
【0047】
(第5実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第5実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0048】
この第5実施形態においては、図21,図22に示すように、ステータコア21が複数の分割コア36を円環状に連結することによって構成されている。各分割コア36は、複数のコア板35A,35Bを積層することによって構成されている。コア板35A,35Bには、扇形状のヨーク部36aと、そのヨーク部36aの内周に突設されたティース部36bとが設けられている。コア板35A,35Bのヨーク部36aの中央には、前記第2実施形態と同様な結合部33A〜33Dが設けられている。すなわち、積層される4枚のコア板35A,35Bを1組として、それらのコア板35A,35B上に図14(a)〜(d)に示すような結合部33A〜33Dが順に形成されている。そして、この結合部33A〜33Dが結合されることによって、コア板35A,35Bが積層状態に保持されている。また、コア板35Aとコア板35Bはその長さ(図21,図22の左右方向寸法)が異なり、それらは分割コア36の円周方向において交互に配列されている。このため、コア板35A,35Bの両端部は積層方向において周方向に隣接するものとラップしている。
【0049】
従って、この第3実施形態においても、前記第1及び第2実施形態におけるに記載の効果とほぼ同様な効果を得ることが可能になる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0050】
・ 前記各実施形態において、結合部の数を変更すること。この場合、例えば第1実施形態においては、結合部の数を3の倍数に,第2実施形態においては4の倍数にすることが好ましい。
【0051】
・ 本発明をモータのロータコアにおいて具体化すること。
・ 本発明を回転電機のコア以外のもの、例えば変圧器のコアにおいて具体化すること。
【符号の説明】
【0052】
21…ステータコア、22,22A〜22C…コア板、23,23A〜23F…結合部、24…固定片、25…通過孔、26…受部、27…開口、32,32A〜32D…コア板、33A〜33D…結合部、34…押さえ部、35A〜35B…コア板、36…分割コア、37…押さえ部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ等の回転電機におけるロータコアやステータコア等の金属板の積層体及びその積層方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属板の積層体である回転電機のコアにおいては、複数のコア板を積層するとともに、その積層状態に結合保持することによって構成されている。このように、複数のコア板を積層状態に結合するための結合構造としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成が従来から提案されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に記載の従来構成では、コア板の突起が積層方向に隣接する他のコア板の凹部または孔に嵌合されることにより、コア板が積層状態に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−264411号公報
【特許文献2】特開2006−166500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これらの従来構成においては、次のような問題があった。
まず、従来構成では、コア板が突起と凹部または孔との凹凸の嵌合関係のみによって結合されるため、高い結合保持力を得ることができなかった。このため、コア板を積層状態に固定するための別部材による手段が必要になって、構成が複雑になった。それでもなお、突起や凹部が断面三角形の場合には、コア板間の位置決めを行わないと、突起が三角形の斜面に沿って動きやすい。そして、このように動いてしまうと、コア板間に隙間が生じて、コアとしての機能の低下を招くおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、複数の金属板を強い結合保持力で積層結合することができる金属板の積層体、回転電機のコア及び金属板の積層体の積層方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、複数枚の金属板を積層して構成した積層体おいて、前記金属板に、他の金属板に結合される結合部を設け、その結合部には、積層方向へ起立形成される固定片と、隣接する金属板の固定片を通すための通過孔と、その通過孔に通した固定片が折り曲げられることにより、隣接する金属板に対して結合保持される受部と、他の金属板の受部上に折り曲げられた固定片との干渉を避けるように、その固定片を収容する開口とを設けたことを特徴としている。
【0008】
従って、この発明においては、複数の金属板が積層された状態で、隣接する下側の金属板上の固定片が上側の金属板の通過孔に通される。この状態で、下側の金属板の固定片が上側の金属板の受部上に折り曲げられることにより、上側の金属板が下側の金属板に対して結合保持される。そして、上側の金属板上に他の金属板が積層されたとき、上側の金属板の受部上に折り曲げられた状態の固定片が他の金属板の開口内に収容配置されて、その固定片と他の金属板との干渉が回避される。
【0009】
このため、受部上への固定片の折り曲げにより、隣接する金属板間を強い結合保持力で連続して積層結合することができる。また、折り曲げ状態の固定片が他の金属板の開口内に収容されることにより、固定片と他の金属板との干渉が回避されるため、複数の金属板を高い平行度で積層することができる。
【0010】
前記の構成において、前記通過孔と開口とを連続形成するとよい。
前記の構成において、前記受部上に折り曲げられた状態の固定片を押さえる押さえ部を設けるとよい。
【0011】
前記の構成において、前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となる湾曲形状に形成されるとよい。
前記の構成において、各金属板は、隣接する金属板に対して所定角度ずつ位相をずらして積層されるとよい。
【0012】
前記の構成において、前記結合部を前記所定角度のピッチで配列するとともに、その結合部の向きを同所定角度ずつずらせるとよい。
金属板の積層体により回転電機のコアを構成することが好ましい。
【0013】
回転電機の金属板の積層方法に関する発明においては、前記の構成において、複数枚の金属板を積層して構成する回転電機において、前記金属板に起立形成された固定片を隣接する金属板の通過孔に通した後に、その固定片を折り曲げて隣接する金属板の受部に対して結合保持することを特徴とする。
【0014】
前記の方法において、各金属板を、隣接する金属板に対して一定角度ずつ位相をずらして積層するとよい。
前記の方法において、前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となるように湾曲され、その後に固定片が受部上に自身の外径側に折り曲げられるとよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、複数の金属板を強い結合保持力及び高い平行度で連続して積層結合することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明をモータのステータコアに具体化した第1実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のステータコアの第1コア板を拡大して示す平面図。
【図3】図2の第1コア板における各結合部の固定片の切り起こし前の状態を示す平面図。
【図4】(a)及び(b)は結合部の固定片の切り起こし前及び後の状態を示す部分拡大平面図。
【図5】図4(b)の5−5線における部分断面図。
【図6】図2の第1コア板を時計方向に120度回転させて位相をずらせた状態の第2コア板を示す平面図。
【図7】図2の第1コア板を時計方向に240度回転させて位相をずらせた状態の第3コア板を示す平面図。
【図8】(a)〜(c)は、第1〜第3コア板の結合部のパターンを示す部分拡大平面図。
【図9】(a)〜(c)は、第1〜第3コア板の結合部の組み付け過程を順に示す部分平面図。
【図10】図9(b)の10−10線における部分断面図。
【図11】図9(c)の11−11線における部分断面図。
【図12】第2実施形態のステータコアのコア板を示す平面図。
【図13】(a)及び(b)は図12のコア板における結合部の固定片の切り起こし前及び後の状態を示す部分拡大平面図。
【図14】(a)〜(d)は、90度ずつ位相をずらせた状態のコア板における結合部のパターンを示す部分平面図。
【図15】図14(c)の15−15線におけるコア板の結合状態の部分断面図。
【図16】第3実施形態のステータコアにおけるコア板の結合部を示す部分斜視図。
【図17】図16の結合部によるコア板の結合状態を示す部分断面図。
【図18】(a)〜(c)は、第4実施形態のステータコアにおけるコア板の結合部の成形方法を順に示す部分斜視図。
【図19】図18(b)における固定片の切り起こし成形時の状態を示す部分拡大断面図。
【図20】図18(c)における固定片の折り曲げ成形時の状態を示す部分拡大断面図。
【図21】第5実施形態の分割型ステータコアのコア板を示す平面図。
【図22】図21のステータコアの一部側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した積層体としてのモータのステータコアの第1実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、この実施形態のステータコア21は、複数の金属板としてのコア板22を積層することによって構成されている。各コア板22は、円環状のヨーク部22aと、そのヨーク部22aの内周に突設された複数のティース部22bとより構成されている。各コア板22のヨーク部22aには、それらを積層状態に結合するための同一形状で複数の結合部23が所定角度間隔をおいて設けられている。この実施形態では、6つの結合部23が60度間隔おきに配列されている。
【0019】
次に、前記結合部23A〜23Fの構成について詳細に説明する。なお、各結合部23A〜23Fは、すべて同一の形状構成をなしているため、第1コア板22A上の1つの結合部23Aを代表的に図示して、その構成について説明する。
【0020】
図4(a)(b)及び図5に示すように、前記結合部23Aには、コア板22A〜22Cの積層方向に起立される固定片24と、下側に隣接するコア板22A〜22Cの固定片24を通すための通過孔25と、その通過孔25に通した固定片24が把持状態に折り曲げられることにより、その固定片24を有するコア板22A〜22Cに対して結合保持される受部26とが形成されている。また、結合部23Aには、隣接する他のコア板22A〜22Cの受部26上に折り曲げられた固定片24との干渉を避けるように、その固定片24を収容するための開口27が設けられている。この開口27は前記通過孔25と連続した状態で形成されている。
【0021】
そして、この結合部23A〜23Fの成形時には、図3及び図4(a)に示すように、まず通過孔25、受部26、開口27及び扇形状をなす固定片24の外径線24aが打ち抜き形成される。ここで、通過孔25、固定片24及び受部26は、120度隔てた領域に配置される。さらに、固定片24の外径線24aの両側部には、固定片24の切り起こし成形時におけるバリの発生を抑えるための凹部28及び孔部29が形成される。続いて、図4(b)及び図5に示すように、切り起こし用パンチ30を用いて固定片24が切り起こし成形される。この切り起こし用パンチ30には、固定片24の外径線24aの部分を分離する刃部30a、及び固定片24の基部を折り曲げるための円弧部30bが形成されている。
【0022】
そして、これら結合部23は、コア板22A〜22Cの中心を中心とした回転角度位相が隣接する他の結合部23に対して60度ずつ変位している。このため、図2から明らかなように、120度間隔おきに配置された3箇所の結合部23A,23B,23Cは同一向きの第1パターンとなるように構成され、残りの120度間隔おきに配置された3箇所の結合部23D,23E,23Fは前記第1パターンと異なる同一の向きの第2パターンとなるように構成されている。
【0023】
そして、複数のコア板22の積層状態において、例えば図2に示すような配列状態の結合部23A〜23Fを備えた第1コア板22Aの下側には、図6に示すような配列状態の結合部23A〜23Fを備えた第2コア板22Bが配置されるとともに、その第2コア板22Bの下側には図7に示すような配列状態の結合部23A〜23Fを備えた第3コア板22Cが配置されている。これらの第1〜第3コア板22A〜22Cは、同一構造であるが、上下方向(積層方向)に対応する結合部23A〜23Fの回転角度位相が120度ずつずれるように向きが異なっている。すなわち、図6に示す第2コア板22Bは、その結合部23A〜23Fが第1コア板22Aの結合部23A〜23Fに対して反時計回り方向に120度変位され、図7に示す第3コア板22Cは、その結合部23A〜23Fが第1コア板22Aの結合部23A〜23Fに対して反時計回り方向に240度変位される。さらに、この第1〜第3コア板22A,22B,22Cの積層配置が繰り返し行われて、ステータコア21が構成されている。
【0024】
そして、積層状態の隣接する各コア板22A〜22C間において、同一位置に対応配置された結合部23A〜23Fが結合されることにより、コア板22A〜22Cが積層状態に固定されている。
【0025】
次に、前記コア板22A〜22Cの転積時に際して、結合部23A〜23Fにおいてコア板22A〜22C間を結合する方法及びステータコア21の作用について説明する。この実施形態においては、コア板22A〜22Cは120度単位で転積される。
【0026】
図2、図6及び図7に示すように、第1〜第3コア板22A〜22Cが120度ずつ回転変位されて順に転積される場合には、各結合部23A〜23Fが積層方向に隣接するコア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fに対して回転角度位相が120度ずつ変移した状態で対応配置される。すなわち、例えば、図8(a)〜(c)に示すように、上側の第1コア板22Aの結合部23Aには、下側の第2コア板22Bの結合部23B、及びその下側の第3コア板22Cの結合部23Cが、120度ずつ順に変移した状態で対応配置される。そして、図9(a)に示すように、下側の第2コア板22Bに対する上側の第1コア板22Aの積層においては、第1コア板22Aの結合部23Aの通過孔25に第2コア板22Bの結合部23Bの固定片24が通される。
【0027】
この状態で、図9(b)及び図10に示すように、折り曲げ用パンチ31を用いて、第2コア板22Bの結合部23Bの固定片24が第1コア板22Aの結合部23Aの受部26上に重なるように折り曲げられる。この折り曲げ用パンチ31には、固定片24を押圧して折り曲げるための傾斜面31a、及び固定片24に折り曲げ位置からさらに折り曲げ方向への力を付与して固定片24のスプリングバックを抑えるための円弧部31bが設けられている。そして、この固定片24の折り曲げにより、上側の第1コア板22Aが下側の第2コア板22Bに対して積層状態に結合固定される。
【0028】
その後、図9(c)に示すように、第1コア板22A上に第3コア板22Cが積層されると、第3コア板22Cの結合部23Cの通過孔25に第1コア板22Aの結合部23Aの固定片24が通される。そして、この固定片24が第3コア板22Cの結合部23Cの受部26上に前記と同様に折り曲げられることにより、第3コア板22Cが第1コア板22Aに対して積層状態に結合固定される。このとき、図9(c)及び図11に示すように、第1コア板22Aの結合部23Aの受部26上に折り曲げられた状態にある第2コア板22Bの結合部23Bの固定片24が、第3コア板22Cの結合部23Cの開口27内に収容される。このため、折り曲げ状態にある第2コア板22Bの固定片24と第3コア板22Cとの干渉が回避されて、第3コア板22Cが第1コア板22A上に平行状態で隙間なく積層される。
【0029】
このように、第1〜第3コア板22A,22B,22Cが順次積層されて、各結合部23A〜23Fにおいて順に結合されることにより、ステータコア21が組み立てられる。この場合、ステータコア21の最上部に配置されるコア板22A〜22Cのいずれかにおいては、結合部23A〜23Cの固定片24が切り起こし成形されることなく、基部において切断されて除去される。
【0030】
このように構成されたステータコア21は、6箇所の結合部23A〜23Fの固定片24の折り曲げによって隣接する第1〜第3コア板22A,22B,22Cが積層状態で固定される。言い換えれば、固定片24により、それに隣接するコア板22A〜22Fが強固に把持される。そして、折り曲げられた固定片24は、開口27内に収容されて、コア板22A〜22Fの積層の妨げにはならない。このとき、各固定片24は絶縁被覆が施された側面が受部26の同じく絶縁被覆が施された受部26上に接触され、電気接続状態が形成されることはない。
【0031】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態においては、モータのステータコア21を構成する各コア板22A〜22Cには、それらを積層状態に結合するための複数の結合部23A〜23Cが設けられている。そして、各結合部23A〜23Cには、積層のために折り曲げられる固定片24と、隣接するコア板22A〜22Cの固定片24を通すための通過孔25と、その通過孔25に通した固定片24が折り曲げられることにより、隣接するコア板22A〜22Cに対して結合保持される受部26と、他のコア板22A〜22Cの受部26上に折り曲げられた固定片24との干渉を避けるように、その固定片24を収容する開口27とが設けられている。
【0032】
従って、受部26上へ固定片24を折り曲げれば、その固定片24とコア板22A〜22Cとにより受部26を狭持することができる。このため、隣接するコア板22A〜22C間を強い結合保持力で連続して積層結合することができ、コア板22A〜22Cを積層状態に結合するための専用部品を不要にすることができる。また、折り曲げ状態の固定片24が他のコア板22A〜22Cの開口27内に収容されることにより、固定片24と他のコア板22A〜22Cとの干渉が回避されるため、複数のコア板22A〜22Cを高い平行度で隙間なく積層することができる。さらに、折り曲げ状態の固定片24が表面の絶縁被覆を介して受部26に接合されるため、渦電流損を低減することができる。よって、構成が簡単で、しかも頑丈で、かつ高効率の回転電機のコアを得ることができる。
【0033】
(2) この実施形態においては、前記通過孔25と開口27とが連続して形成されている。このため、通過孔25と開口27とを1つのパンチとダイによって同時に打ち抜き形成することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第2実施形態を図12〜図15に従って前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0035】
この第2実施形態においては、図12に示すように、ステータコア21のコア片32のヨーク部32aに、4つの同一形状の結合部33A,33B,33C,33Dが90度の角度間隔おきに設けられている。そして、図12に示すような結合部33A〜33Dは、コア板22A〜22Cの中心を中心とした回転角度位相が隣接する他の結合部23に対して90度ずつ変位している。
【0036】
図13(b)に示すように、各結合部33A〜33Dには、前記第1実施形態の場合とほぼ同様な固定片24、通過孔25、受部26、開口27、凹部28及び孔部29が形成されている。また、各結合部33A〜33Dには、受部26上に折り曲げられた状態の固定片24を押さえるための押さえ部34が形成されている。そして、結合部33A〜33Dの成形時には、図13(a)に示すように、まず通過孔25、受部26、開口27、凹部28、孔部29、押さえ部34、及び扇形状をなす固定片24の外径線24aが打ち抜き形成される。このとき、通過孔25、開口27、押さえ部34、固定片24は90度ずつ離れた領域に位置する。その後、図13(b)に示すように、固定片24が基部を中心にして切り起こし成形される。
【0037】
このように構成されたコア板32A〜32Dが順に90度ずつ位相をずらせながら積層される。この場合、図14(a)〜(d)に示すように、例えば上側の第1コア板32Aの結合部33Aに対しては、下側の第2コア板32Bの結合部33B、第3コア板32Cの結合部33B及び第4コア板32Dの結合部33Dが、回転方向に90度ずつ変移した状態で対応配置される。
【0038】
そして、図14(a)〜(d)に鎖線で示すように、第1〜第4コア板32A〜32Dが積層される際には、下側コア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの固定片24が上側コア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの通過孔25に通されて、その受部26上に折り曲げられることにより、各コア板32A〜32Dが積層状態に結合固定される。この場合、折り曲げ状態の固定片24が、その上側に配置されるコア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの開口27内に収容されるとともに、さらにその上側に配置されるコア板32A〜32Dの結合部33A〜33Dの押さえ部34により浮き上がらないように上方から押さえられる。
【0039】
例えば、図15に示すように、第4コア板32Dの結合部33Dの固定片24が第3コア板32Cの結合部33Cの受部26上に折り曲げられた状態では、その固定片24が第2コア板32Bの結合部33Bの開口27内に収容されるとともに、第1コア板32Aの結合部33Aの押さえ部34により上方から押さえられる。このため、折り曲げ状態の固定片24と第2コア板32Bとの干渉が回避されるとともに、受部26上からの固定片24の浮き上がりが規制される。
【0040】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(3) この回転電機のコアにおいては、前記受部26上に折り曲げられた状態の固定片24を押さえるための押さえ部34が設けられている。このため、折り曲げられた状態の固定片24が受部26上から浮き上がるのを押さえ部34により押圧して規制することができる。よって、固定片24の浮き上がりによりコア板22A〜22D間の結合保持力が低減したり、コア板22A〜22D間に隙間が形成されたりするおそれを抑制することができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第3実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0042】
この第3実施形態においては、図16及び図17に示すように、コア板22A〜22Cに前記第1実施形態と同様な結合部23A〜23Fが設けられている。各結合部23A〜23Fの固定片24の基部には、押さえ部37が固定片24と反対の下側に向かって折り曲げ形成されている。そして、図18に示すように、コア板22A〜22Cが結合部23A〜23Cの固定片24の折り曲げにより積層状態に結合された後、さらに1枚のコア板22A〜22Cが積層されたとき、そのコア板22A〜22C上の押さえ部37が折り曲げ状態の固定片24の基端部に当接される。このため、固定片24が折り曲げ状態に押し付け保持されて、固定片24の浮き上がりが抑制される。
【0043】
従って、この第3実施形態においても、前記第2実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第4実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
この第4実施形態においては、図18〜図20に示すように、コア板22A〜22Cに前記第1実施形態と同様な結合部23A〜23Fが設けられている。各結合部23A〜23Fには、前記第1実施形態の場合とほぼ同様な固定片24、通過孔25、受部26及び開口27が形成されている。そして、結合部23A〜23Fの成形時には、図18(a)に示すように、まず通過孔25、受部26、開口27及び台形状をなす固定片24の外形線が打ち抜き形成される。その後、図18(b)及び図19に示すように、それぞれ円柱面を有する切り起こし用パンチ38及びダイ39を用いて、固定片24が基部付近を中心にして切り起こし成形される。この場合、切り起こし状態の固定片24は、図18(b)に示すように、起立方向と交差する面内において湾曲するように、つまり内径側が通過孔25側に位置する円弧状をなすように湾曲形成される。
【0045】
さらに、図18(c)に示すように、コア板22A〜22Cが積層される際には、下側コア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fの固定片24が上側コア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fの通過孔25に通される。そして、図18(c)及び図20に示すように、折り曲げ用パンチ40及びダイ41を用いて、固定片24が受部26上に折り曲げられることにより、上下のコア板22A〜22C間が積層状態に結合固定される。この場合、固定片24は、自身の外径側に折り曲げられて、つまり、円弧状態から平板状態になるように無理やりに広げられて折り曲げられ、下側の受部26に圧接される。
【0046】
従って、この第4実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4) この回転電機のコアにおいては、結合部23A〜23Fの固定片24が円弧状をなすように切り起こし形成される。そして、この固定片24が、上側のコア板22A〜22Cの結合部23A〜23Fの通過孔25に通した状態で、その受部26上に平板状になるように押し広げられて折り曲げられる。このため、固定片24が折り曲げ状態から切り起こし状態に復帰変形することを効果的に防止できる。このため、コア板22A〜22Cを積層状態に強固に結合保持することができる。
【0047】
(第5実施形態)
次に、この発明を具体化したモータのステータコアの第5実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0048】
この第5実施形態においては、図21,図22に示すように、ステータコア21が複数の分割コア36を円環状に連結することによって構成されている。各分割コア36は、複数のコア板35A,35Bを積層することによって構成されている。コア板35A,35Bには、扇形状のヨーク部36aと、そのヨーク部36aの内周に突設されたティース部36bとが設けられている。コア板35A,35Bのヨーク部36aの中央には、前記第2実施形態と同様な結合部33A〜33Dが設けられている。すなわち、積層される4枚のコア板35A,35Bを1組として、それらのコア板35A,35B上に図14(a)〜(d)に示すような結合部33A〜33Dが順に形成されている。そして、この結合部33A〜33Dが結合されることによって、コア板35A,35Bが積層状態に保持されている。また、コア板35Aとコア板35Bはその長さ(図21,図22の左右方向寸法)が異なり、それらは分割コア36の円周方向において交互に配列されている。このため、コア板35A,35Bの両端部は積層方向において周方向に隣接するものとラップしている。
【0049】
従って、この第3実施形態においても、前記第1及び第2実施形態におけるに記載の効果とほぼ同様な効果を得ることが可能になる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0050】
・ 前記各実施形態において、結合部の数を変更すること。この場合、例えば第1実施形態においては、結合部の数を3の倍数に,第2実施形態においては4の倍数にすることが好ましい。
【0051】
・ 本発明をモータのロータコアにおいて具体化すること。
・ 本発明を回転電機のコア以外のもの、例えば変圧器のコアにおいて具体化すること。
【符号の説明】
【0052】
21…ステータコア、22,22A〜22C…コア板、23,23A〜23F…結合部、24…固定片、25…通過孔、26…受部、27…開口、32,32A〜32D…コア板、33A〜33D…結合部、34…押さえ部、35A〜35B…コア板、36…分割コア、37…押さえ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の金属板を積層して構成した積層体おいて、
前記金属板に、他の金属板に結合される結合部を設け、その結合部には、積層方向へ起立形成される固定片と、隣接する金属板の固定片を通すための通過孔と、その通過孔に通した固定片が折り曲げられることにより、隣接する金属板に対して結合保持される受部と、他の金属板の受部上に折り曲げられた固定片との干渉を避けるように、その固定片を収容する開口とを設けたことを特徴とする金属板の積層体。
【請求項2】
前記通過孔と開口とを連続形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属板の積層体。
【請求項3】
前記受部上に折り曲げられた状態の固定片を押さえる押さえ部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属板の積層体。
【請求項4】
前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となる湾曲形状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の金属板の積層体。
【請求項5】
各金属板は、隣接する金属板に対して所定角度ずつ位相をずらして積層されたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の金属板の積層体。
【請求項6】
前記結合部を前記所定角度のピッチで配列するとともに、その結合部の向きを同所定角度ずつずらせたことを特徴とする請求項5に記載の金属板の積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の金属板の積層体により構成したことを特徴とする回転電機のコア。
【請求項8】
複数枚の金属板を積層して構成する積層体において、
前記金属板に起立形成された固定片を隣接する金属板の通過孔に通した後に、その固定片を折り曲げて隣接する金属板の受部に対して結合保持することを特徴とする金属板の積層体の積層方法。
【請求項9】
各金属板を、隣接する金属板に対して一定角度ずつ位相をずらして積層することを特徴とする請求項8に記載の金属板の積層体の積層方法。
【請求項10】
前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となるように湾曲され、その後に固定片が受部上に自身の外径側に折り曲げられることを特徴とする請求項8または9に記載の金属板の積層体の積層方法。
【請求項1】
複数枚の金属板を積層して構成した積層体おいて、
前記金属板に、他の金属板に結合される結合部を設け、その結合部には、積層方向へ起立形成される固定片と、隣接する金属板の固定片を通すための通過孔と、その通過孔に通した固定片が折り曲げられることにより、隣接する金属板に対して結合保持される受部と、他の金属板の受部上に折り曲げられた固定片との干渉を避けるように、その固定片を収容する開口とを設けたことを特徴とする金属板の積層体。
【請求項2】
前記通過孔と開口とを連続形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属板の積層体。
【請求項3】
前記受部上に折り曲げられた状態の固定片を押さえる押さえ部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属板の積層体。
【請求項4】
前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となる湾曲形状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の金属板の積層体。
【請求項5】
各金属板は、隣接する金属板に対して所定角度ずつ位相をずらして積層されたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の金属板の積層体。
【請求項6】
前記結合部を前記所定角度のピッチで配列するとともに、その結合部の向きを同所定角度ずつずらせたことを特徴とする請求項5に記載の金属板の積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の金属板の積層体により構成したことを特徴とする回転電機のコア。
【請求項8】
複数枚の金属板を積層して構成する積層体において、
前記金属板に起立形成された固定片を隣接する金属板の通過孔に通した後に、その固定片を折り曲げて隣接する金属板の受部に対して結合保持することを特徴とする金属板の積層体の積層方法。
【請求項9】
各金属板を、隣接する金属板に対して一定角度ずつ位相をずらして積層することを特徴とする請求項8に記載の金属板の積層体の積層方法。
【請求項10】
前記固定片が起立方向と交差する面内において通過孔側が内径側となるように湾曲され、その後に固定片が受部上に自身の外径側に折り曲げられることを特徴とする請求項8または9に記載の金属板の積層体の積層方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−115999(P2013−115999A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262408(P2011−262408)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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