説明

金属粉の生成方法

本発明は、溶液における金属中間体の電気化学的ポテンシャルを変化させることによって、有価金属を含有する材料を浸出させ、有価金属を微粉として沈殿させる方法に関するものである。その浸出段階において、金属中間体または中間物質は酸化度が高く、沈殿段階においては、別の電解質溶液が溶液に送られ、そこでは、金属中間体または中間物質は酸化度が低い。沈殿段階の後、中間物を含有する溶液は電解再生に送られ、そこで中間物の一部が陽極空間で酸化されて高ポテンシャル値に戻り、一部が陰極空間で還元されて低ポテンシャル値になる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、溶液における金属中間体の電気化学的ポテンシャルを変化させることによって、有価金属を含有する材料を浸出させ、有価金属を微粉として沈殿させる方法に関するものである。本方法では、有価金属を含有する原料が浸出されて、有価金属が電解質溶液によって沈殿され、それは少なくとも1つの金属中間体または中間物質を含有し、その酸化還元ポテンシャルが有価金属の浸出および沈殿に利用される。浸出段階において、電解質溶液の金属中間体は、原料を浸出させるために酸化度が高い。溶解した有価金属を沈殿させるために、沈殿段階において別の電解質溶液が溶液に送られ、金属中間体または中間物質の酸化度が低下する。沈殿段階の後、中間物を含有する溶液が電解再生器に送られ、そこで金属中間体の一部が陽極空間で酸化されて高ポテンシャル値となり、一部が陰極空間で還元されて低ポテンシャル値となる。生成される微粉の大きさおよび特性は、特に沈殿条件を調整することによって制御される。
【発明の背景】
【0002】
精鉱からの銅およびニッケルなどの非鉄金属の産出は、通常、第一段階の乾式精錬で生じる。第一段階の処理で形成された銅マットの加工処理は、通常、産出物がCu含有量99.9%の鋳造銅陽極になるまで、さらなる乾式精錬が続けられ、電解精錬に送られて純粋な陰極銅を生成する。銅生成品の作成は陰極の溶解から始まり、その後溶融した銅は所望の形状に鋳造でき、また、さらなる加工処理は生成される商品に依存する。乾式精錬処理によって生成されたニッケルマットのさらなる加工処理は、通常、湿式精錬処理である。この場合、ニッケルマットは粉砕され、浸出され、溶液の溶液浄化が行われ、最終的に、ニッケルの水溶液は純粋な陰極ニッケルを形成するために電解回収に送られる。コバルト鉱物は、ニッケル鉱物、とくに硫化物と同じ鉱石の中に見られることが多く、そのため生成方法は大部分同じである。最終的な生成品は、陰極形状の金属コバルトであることが多い。
【0003】
上述の金属生成方法の最終生成物は、陰極形状の金属である。しかし、板状の陰極以外の形状は、金属のさらなる加工処理のために、より実用的であることが多い。
【0004】
先行技術において銅粉生成のための酸化還元法が知られ、たとえば特開2002-327289号公報に記載されるように、それによれば、チタンを含有する硫酸水溶液が電解タンクに送られる。電気分解陽極は純粋な銅で作られ、陽極と陰極の間に隔膜が存在する。電解質は陰極室から陽極室に送られ、そこで陰極溶液の三価のチタンが溶液中の銅を金属粉に還元し、それが陽極室で沈殿して溶液から取り出される。
【0005】
米国特許出願第2005/0023151号(フェルプス・ドッジ)では銅を生成する方法が記載され、そこでは第一鉄/第二鉄陽極反応の利用が従来の硫酸銅溶液からの電解の銅回収と組み合わされている。その方法によれば、電気分解に入る溶液は、二価の銅に加えて二価の鉄を含む。この場合、陰極反応は銅の金属への還元であり、陽極反応は二価の鉄の三価(第一鉄/第二鉄)への酸化である。第二鉄はSO2によって第一鉄へと再生されて電気分解へ戻される。硫酸が再生において形成されるので、それは溶液で中和しなければならない。その方法では、銅は従来の陰極として生成されるが、その方法のさらに進展したものが米国特許出願第2006/0016684号に記載され、そこでは電気分解セルとして流水式セルが用いられ、銅は粉として生成される。従来の電気分解に加えて、鉄の酸化度の相違により達成される酸化還元ポテンシャルがその方法において使用される場合、エネルギー消費は従来のEW電気分解法より低い。また、酸性霧の形成はより少ない。
【0006】
上述の方法にはいくつかの欠点が存在する。特開2002-327289号公報に記載されている方法では、Cu粉を生成するために純粋な銅が使用され、結果として従来からの非実用的な要因になり、たとえば陽極スクラップ問題、電解接触問題、およびCu粉の生成ポイントが多数ある事実になり、品質欠陥に対する敏感性および制御困難性を引き起こす。
【0007】
また、陽極の第一鉄/第二鉄反応を利用する銅の電解回収もさまざまな問題を引き起こす。Cu粉の大多数が陰極から分離するという事実にもかかわらず、少なくともわずかな部分が付着したままになると、陰極部が詰まり、重大な処理の中断が引き起こされることになる。少し大きいスケールにおいては、数十または何百もの粉生成ポイントがあり、投資が多額になり、運転経費(メンテナンスコスト)が高くなる。金属粉の品質を粒の大きさおよび形態に関して制御するのは難しく、また、さまざまなセルにおいて均一な品質を達成することも困難である。その処理に使われるSO2は、労働衛生における問題点およびリスク要因である。粉を生成するためには、かなり高い電流密度が必要であり、これはほぼ常に金属粉の純度問題に至る。また、さまざまなセルからのCu粉の分離は面倒である。
【発明の目的】
【0008】
本発明の目的は、上述の方法の欠点を除去し、以前よりも簡単で、微粒な粉の生成が可能である方法を紹介することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の基本的な特徴は、添付の特許請求の範囲において明らかにされる。
【0010】
本発明は、有価金属を含有する材料における浸出・沈殿法によって金属微粉を形成する方法に関するものである。本発明による方法では、有価金属を含有する材料が浸出されて、有価金属が電解質溶液によって沈殿され、それは少なくとも1つの金属中間体を含み、また、そのさまざまな値または電気化学的ポテンシャルが有価金属の浸出および沈殿において利用される。
【0011】
原料の浸出および沈殿は、浸出および沈殿に用いられる溶液が1つ以上の金属中間体を含有し、その電気化学的ポテンシャルが電解再生によって変更されるという事実に基づいている。有価金属を含有する材料の浸出段階において使用される溶液は、金属中間体の電気分解からの陽極液であり、そこにおける中間物は酸化度が高く、また、有価金属の沈殿は、電気分解からの陰極溶液によって行われ、そこにおける金属中間体の酸化度は浸出段階におけるものよりも低い。
【0012】
沈殿段階の後、金属中間体を含有する溶液は電解再生に送られ、そこにおいて金属中間体の一部が陽極空間で高ポテンシャル値に再酸化され、一部が陰極空間で低ポテンシャル値に還元される。
【0013】
沈殿で生成される粉は、既知の方法によって溶液から分離される。その粉の粒の大きさは、沈殿条件を調整することによって制御できる。本方法により、純粋なミクロおよびナノ結晶の粉の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による1つの方法のフローチャートを示す。
【発明の詳細な説明】
【0015】
従来から、有価金属の金属としての回収は電気分解で行われ、有価金属は陰極で沈殿される。本発明による方法において、有価金属を含有する溶液は、電気分解に送られず、その代わりに1つ以上の金属中間体を含有する電解質溶液が、電気分解、すなわち電解再生段階において処理される。したがって、本方法は間接的な電気分解と呼んでもよい。有価金属を含有する材料の浸出は、電気分解において生じる陽極液を用いて行われ、そこにおける金属中間体の酸化度が高く、そのためそれが材料における有価金属を酸化させる。有価金属を含有する出発物質がたとえば精鉱であれば、陽極液に加えて空気または酸素が酸化体として使われることがある。有価金属は、循環している電解質に含有される酸の可溶性塩として溶解する。溶解した有価金属は、電気分解から循環する陰極液によって微粉として沈殿し、そこにおける金属中間体の酸化度が低く、そのためそれが有価金属を金属に還元する。
【0016】
浸出に供給される有価金属を含有する材料は、概して、乾式精錬または湿式精錬の処理による生成物、あるいはスクラップ状の材料であるが、たとえば精鉱も浸出原料として適切である。本方法に適する出発物質の1つは、転換によって生成される中間生成物、たとえばMexSである。転換による中間生成物の作成は、たとえば国際公開第2005 007905号、第2005 007902号および第2005 007901号に記述されている。不純物のかなりの部分は転換の間に取り除かれ、たとえば貴金属はMexSで濃縮されている。有価金属が銅である場合、原料はCu鉱石、Cu精鉱、転換によって生成された貴金属を含有するCuxS生成物、粗銅、Cuスクラップなどでよい。他の金属の場合、原料は陽極液に溶けることが必要である。影響を及ぼす電気化学的なポテンシャルおよび構造の直接的かつ連続的な測定は、たとえば米国特許第5,108,495号による処理のさまざまな段階において本方法を使用するために重要である。
【0017】
本方法によれば、沈殿する金属は所望の粒子の大きさで回収され、それはミリメートル範囲からナノメートル範囲まで変化しうる。
【0018】
金属中間体の酸化は電気分解セルで行われ、それは陽極と陰極の間に位置する隔膜を備えている。固体が陽極で溶解されず、また陰極で沈殿もされないので、必要な電気分解装置はかなりコンパクトである。中間物質を含有する循環溶液で行われる電気分解において、陽極での酸素、塩素または他の等価ガスの製造を意図するものでも、陰極での水素の製造を意図するものでもないので、セル電圧はかなり低く維持される。セル電圧は、概して非常に低く、2.0 V未満であり、電極、距離、電解質、電流密度、温度などの特性に従う。隔膜使用の例としては、ニッケル電気分解法においてセル電圧をたとえばおよそ50〜100 mV上昇させることがいえる。循環する電解質のみがセル内を流れ、それが再生される際に酸化用陽極液および還元用陰極液を形成するとき、陽極と陰極との間のスペースが小さくなるので、セル電圧は低く保たれる。
【0019】
これに関連して、中間物または金属中間体とは、1つ以上の金属を意味し、そのうち少なくとも1つは、有価金属含有材料の浸出段階における酸化度が、有価金属を浸出させるために高くなっていて、また、少なくとも1つは、溶解した有価金属の浸出段階における酸化度が、有価金属を金属粉として沈殿させるために低くなっている。また、場合によっては、中間物は、対応する酸化還元特性を有する物質であってもよい。
【0020】
電解質自体、すなわち浸出および沈殿に用いられる循環溶液は、原則的には、水性の有機または溶融塩電解質でよい。有価金属が銅、ニッケル、コバルトまたはスズである場合、循環溶液は硫化物系水溶液または塩化物系水溶液が好ましい。また、電解質は、たとえばホウフッ化物またはシリコンフッ化物電解質でもよい。とくに、相対的に卑な粉状金属の製造の問題がある場合、水性以外の種類の電解質がより実際的である。陽極および陰極反応用の低温溶融塩電解質には十分に広い作用範囲が存在する。溶融塩の融点は、0〜800℃の間にあるのが好ましい。また、低温イオン性液体を、本方法を改変する際に使用することもできる。
【0021】
陽極液によって出発物質を浸出させることによって、有価金属を含有する所望の溶液を出発物質から生成するとき、それはセメンテーションを受け、必要であればその他の溶液浄化を受ける。形成される有価金属粉が銅粉である場合、亜鉛、鉄、マンガンなどの銅より十分に卑な金属が循環溶液中に存在してもよいが、銅より貴な物質、銅と結合する物質は銅粉の沈殿の前に除去される。除去すべき物質は、たとえば金、銀、セレンならびにテルル含有化合物、アンチモン含有化合物およびビスマス含有化合物である。溶液浄化は、たとえば銅粉を用いる不純物セメンテーション、イオン交換または液体−液体抽出などの1つ以上の従来の溶液浄化方法を用いて行われる。さらに、共沈、吸着処理および予備電解または晶析が利用できる。溶液中の不純物レベルを適度に保つために、電解質の一部を副流に取り出すことによって、不純物の一部を除去することができ、そこでは小規模電解などの従来技術による処理を実施して、たとえば亜鉛、ニッケル、鉄およびコバルトを除去する。副流は、概して、たとえば金属中間体陰極液から取り出すことができる。
【0022】
電解で製造される陽極液は、浸出の出発物質として用いられるもので、所望の有価金属を浸出するがそれにもかかわらず不純物を多く浸出しないように選択すべきである。この方法では、たとえば供給材料の銅は溶解するが、不純物は溶解せずに残る。同時に、沈殿段階において、陰極液の基礎となる溶液およびその金属中間体は、適切な還元力に基づいて選択され、所望の有価金属のみが金属に還元されるようにすべきである。このように、生成物として得られる粉末は、純粋な形で分離され得る。
【0023】
本方法の特に有利な用途の1つは、銅粉の製造である。他の適切な有価金属は、たとえばニッケルおよびコバルトである。
【0024】
本方法の説明において、使用される例は、銅粉の製造に係るものだが、本発明は銅だけに限定されない。
【0025】
銅出発材料の浸出および粉体沈殿に用いられる中間物は、すべて適切な酸化還元のペアでよく、必要な浸出および沈殿を可能とするものである。水溶液で使用できる中間物あるいは酸化還元ペアの種類は、たとえばバナジウム、クロムおよびチタンの単独または併用のもの、または鉄などの他の酸化還元ペアとの併用のものである。これらに加えて、たとえばマンガン、コバルト、亜鉛、サマリウム、ユウロピウム、イッテルビウム、ウラン、アルカリおよびアルカリ土類金属が中間物として単独または併用で使用できる。適切な隔膜が陽極と陰極との間で用いられるとき、電気分解における溶液中の1つ以上の中間物の酸化度はうまく増加する。
【0026】
電気分解において形成され、銅材料を酸化する金属中間体は、銅を生み出す材料を浸出させる際に利用される。このように、陽極液における中間物は、概して、V4+、V5+、Fe3+、Cr4+、Cr5+、Cr6+、Mn3+、Mn4+、Mn6+およびMn7+のうちの少なくとも1つである。溶解した銅の沈殿において、陰極に形成された銅還元の金属中間体が利用され、それによって陰極溶液中にはV2+、Cr2+およびTi3+のうちの少なくとも1つが存在する。中間物として作用する金属は、陽極液および陰極液のいずれかのみにおいて、または両方において活性であってよい。
【0027】
隔膜の密度および不変性に関する面では、プロセスの機能にとって重要である。既製の隔膜の溶液が従来技術において知られていて、それにおいて、隔膜は主に機械的絶縁体であり、またはさまざまな程度のイオン選択特性を有していてもよい。また、プロセスの溶液によって提供される多数の隔膜シール法を本方法において利用することもでき、プロセスの溶液は、Ti、Si、C、SbまたはSnを生み出す化合物を含有してもよい。その最も単純な隔膜は、たとえばニッケルおよびコバルトの電気分解セルで使用されるテリレン布でよく、それは実用的であることがわかっている。
【0028】
実施されたテストにおいて、陽極液の浸出力および銅材料の溶解動力学が、陽極液の組成、その酸濃度および溶液の微量元素含有量、たとえば酸素、塩化物、およびアンチモンの濃度の両方に依存することがわかった。プロセス段階が、無機物電極の使用に基づく電気化学的な方法によって監視および導かれることは本方法にとって有利であり、それはたとえば米国特許第5,108,495号に記載されている。電気化学的方法には、濃度測定、溶液および材料に固有の酸化還元レベル、および位相感知交流法のインピーダンススペクトル法(EIS)によって特定されるような表面構造を含むのが好ましい。
【0029】
金属粉のサイズおよび特性には、沈殿において種核および/または添加物を用いて影響を与えることができる。純粋な金属粉の製造方法が上述されており、それによって同じ粉が種核として再循環される。しかし、他の材料を含む粉を製造することが求められるならば、これは関連する材料を沈殿の種核として用いることによって達成することができる。このように、カーバイド、酸化物、窒化物、ホウ化物、プラスチックその他の材料を沈殿段階に供給することができ、その上に金属粉が沈殿することになる。その他の選択肢には、生成された生成物粉を表面処理することがある。とくに、銅または他の容易に酸化される物質が関係する場合に、覚えておかなければならないことの1つは、沈殿段階の後で、粉の酸化を防止するために無酸素環境または無酸素放出環境で処理が行われるべきことである。
【0030】
本方法は、銅粉の製造に関して図1の原則的なチャート図に記載してある。微細な銅粉製造の原料は、たとえば陽極銅、粗銅、銅スクラップ、硫化銅、銅精鉱、または部分的に酸化銅でもよい。主な目的が本方法によって固形銅から微粉を得ることであれば、出発材料は陰極銅でもよい。
【0031】
銅を生み出す材料1は、概して、粒状で浸出段階2に送られ、それは電解再生3を出た陽極液4によってたとえば硫化物系の浸出として行われる。また、浸出は塩化物系のものでもよい。陽極液はその高い酸化度によって中間物として選択された金属を含み、銅が溶解する。バナジウムと場合によっては鉄とを含有する陽極液が、酸化用中間物として有利に使用できる。陽極液に含まれるバナジウムは、この場合には酸化度V5+および/またはV4+であり、それが反応においてV3+の値に還元される。補充用の酸5を、浸出段階に供給して状態を調節することができる。浸出は1つまたは複数の段階で行われ、その段階は1つ以上の攪拌反応器を含んでいる。単純化のため、図には1つの段階だけを示す。銅よりも貴な金属および金属化合物が溶解しないよう条件が調整されるので、それらは最終沈殿段階6で溶液から析出する沈殿物を形成する。また、貴金属を浸出させることも可能であるので、それらは溶液から選択的に取り出される。さらに、溶液に通常の溶液浄化を施して、たとえば溶解しているニッケル、コバルトおよび亜鉛(詳細を示さず)を取り出すことができる。
【0032】
貴金属から精製された硫酸銅溶液7は還元段階8に送られ、そこで溶液に送られた陰極液9によって還元が行われる。陰極液はその低い酸化度において中間物として選択された金属を含み、還元された銅を金属粉として沈殿させる。陰極液に含まれるバナジウムは酸化度V2+であり、それはV3+の値まで酸化する。また、沈殿は、1つまたは複数の段階、1つまたは複数の攪拌反応器で行われ、その下部に沈殿した粉は取り除かれる。
【0033】
粉は分離プロセス10に送られ、そこで不活性環境またはシールドガスにおいて処理され、それによって粉の酸化が防止される。分離プロセスの形式は、製造される粉の粒の大きさに依存する。粒の大きさがより粗い粉について、分離は、濾過、遠心分離、ふるい分けまたは磁気分離のうちの少なくとも1つの分離方法を用いて機械的に行うことができる。ナノクラスの粉に関する場合は、難溶性の有機溶液による電解質の抽出または遠心分離機の使用が濾過より費用効率が高い。抽出物溶液は、蒸発によって粉から分離される。粉を分離する遠心分離機の使用および洗浄などの後処理は、陰極防食および浄化処理と組み合わせるのが容易な点で有利である。
【0034】
沈殿させる粉の粒の大きさおよび形状は、濃度、温度、酸化還元レベルおよび混合条件などのプロセス変数を調節することによって制御できる。また、種核生成および添加物が使用できる。
【0035】
沈殿段階を出る電解質溶液11は、そこで中間物として作用するバナジウムがV3+の値であり、浸出段階へ供給された陽極液と沈殿へ供給された陰極液との両方で構成されるものであり、電解再生3へ送られて、一部が陽極空間に入り、一部が陰極空間に入る。再生中において、溶液中の三価のバナジウムの一部が陽極で四価および/または五価に酸化され、一部が陰極で二価に還元される。陽極および陰極の反応の電流効率のバランスがとれていることが、電解再生において非常に重要である。実際において、これは、陽極液の酸化レベルおよび/または酸化力を、必要に応じて酸素含有ガスをシステムに供給することによって上げることができ、陰極液の還元力を、溶液浄化と関連してまたは単独で追加の還元を行うことによって増やすことができることを意味している。また、上述のように、電解質溶液は、酸化剤あるいは還元剤のいずれかとして作用するか、または本方法の他の段階のみで活性を持つ複数の金属中間体を含んでもよい。
【0036】
陰極電流効率のバランスは、十分な量の還元イオンが陰極で発生することを意味する。陽極電流効率は、主にセル電圧に影響を及ぼし、原料の浸出可能性にはそれほどでもない。それは、有価物質以外の物質を元の材料から酸化しなければならない場合は、陽極生成物に加えて空気または酸素なども浸出に活用できるからである。この種類の事例としては、原料がたとえばCuFeS2精鉱または(Ni, Fe, Co)9S8精鉱などの精鉱である場合が適切である。
【実施例】
【0037】
実施例1
実施されたテストにおいて使用された元の材料は、直接のブリスタ法によって製造された粒状化原料銅で、ブレンド成分の分析値は以下の通りである:
Ni 1120 ppm
As 1030 ppm
Bi 115 ppm
Sb 195 ppm
Pb 282 ppm
Ag 314 ppm
Au 35 ppm
Se 278 ppm
Te 94 ppm
Pt 2.1 ppm
Pd 3.4 ppm
S 0.89%
Fe 0.05%
Zn 0.15%
Cu粗鉱粒およびCuスクラップ(比率82:18)が、二つの段階において温度85℃で硫酸塩系の陽極液に浸出された。陽極液は、金属中間体電気分解の陽極空間からの循環溶液であり、そこでは150 g/lのH2SO4、15 g/lのV4+および10 g/lのV5+、3.2 g/lのNi2+、1.7 g/lのFe3+ならびに1.1 g/lのZn2+が存在した。銅よりも貴な元素が、銅粉および他の既知の試薬を用いる電気化学的な制御によって、1 mg/l未満のレベルまで、得られた溶液から結合が外された。また、As、Sb、BiおよびSnが、既知の方法で1 mg/l未満の濃度まで共沈された。Cu粉が、得られたCu2+V3+Fe2+Ni2+Zn2+および陰極液を有するH2SO4すなわちV2+硫酸塩溶液から沈殿された。銅微粉が沈殿の種核として使用されて、その結果、粒径0.8〜1.5 μmで実質的に球形の銅粉が得られた。酸化還元の還元レベルは、AgCl/Agに対するCuが-460〜-410 mVであった。
【0038】
得られた銅粉は、遠心分離機で分離され、微銅粉の一部が沈殿種核として返送された。実際の製品は、遠心分離機を用いてシールドガスにおいて、陰極を保護しつつ洗浄された。純度に関して、乾燥して完全に酸素を含まない銅粉生成物は、従来の電解浄化にて生成された陰極生成物のタイプであった。銅粉生成品は、超塑性を有し、そのため成形用に直接用いることができる。
【0039】
Cu粉の分離後、Cu無しの溶液は、隔膜を備えた電解セルにおける電解再生に運転温度60℃で送られる。セル電圧が1.85 Vで電流密度が750 A/m2のとき、陽極空間においてV3+がV4+およびV5+に酸化され、陰極空間においてV3+がV2+に還元された。粉体浸出において発生する陽極スラッジは、従来の電解精錬におけるものと実質的に同じ種類であり、従来の方式によって製品に加工された。
【0040】
実施例2
実施されたテストにおいて、元の材料は、浸出および浮遊選鉱を起源として転換によって製造された、銅含有量68.4%の貴金属(x〜1.85)を含有するCuxS精鉱であった。CuxS精鉱における他の成分は、ケイ酸塩SiO2が3.7%であり、残りはFeS2およびその他の典型的な銅精鉱鉱物であった。
【0041】
CuxS濃縮物は、およそ95℃の温度でFe3+-Cr3+-NH4+硫酸塩溶液である陽極液に浸出された。浸出にて形成されて1.6〜2.0の範囲のpHを有するFe2+-Cu2+-Cr3+溶液が、実施例1と同様にしてセメンテーションおよび共沈を用いて精製された。
【0042】
浸出残渣およびセメンテーションからの有価物質が、既知の方法によって回収された。銅よりも貴な物質および銅と共に還元しようとした物質から精製されたCu2+溶液は電気分解から供給される陰極液と共に送られ、そこでCu2+が種核の存在下で還元された。銅の金属粉への還元が、反応Cu2++2Cr2+→Cu+Cr3+の結果として行われ、それは実施例1と同様に電解質から分離された。
【0043】
沈殿後、電解質は、電気分解において55℃の温度でH2SO4を含むFe3+-Cr3+-NH4+硫酸塩溶液(陽極液)およびCr2+を含む陰極液へと再生された。再生において、中間物質溶液のpHは2.25〜2.5の範囲内であり、セル電圧は2.5 Vであり、Cr3++e-=Cr2+電流収率は92.5%であった。陽極液は貴金属を含有するCuxS原材料の電気化学的に制御された浸出に送られ、陰極液は電気化学的に制御されて精製されたCu電解質の銅沈殿に送られた。
【0044】
実施例3
テストで使用した原材料の1つの例はCu精鉱であり、下記のように分析された:
Cu 27.5%
Fe 28.4%
S 33.4%
Zn 11.0%
Ni 0.04%
Co 0.01%
Pb 0.08%
As 0.07%
Sb 0.01%
Bi 0.025%
SiO2 3.7%
Au 9.5 ppm
精鉱における銅は、主にCuFeS2として存在した。
【0045】
鉄・クロム・アルカリ土類のハロゲン化アルカリ溶液が、循環電解質として選択され、ここで酸化剤として作用する金属中間体は電気分解陽極部で再生されたFe3+であり、還元剤として作用させるために用いた金属中間体は陰極で電解により形成されたCr2+であった。銅精鉱の浸出は、大気圧条件において95〜105℃の温度で向流に行われた。固形物の保持時間は10.5時間であり、銅の浸出収率は87.8%であり、金については99.3%であった。陽極生成物Fe3+がCu精鉱の全体を酸化させるのには十分でなかったので、酸素ガスを浸出において使用してCu2+/Cu+酸化還元ペアの利用を補助した。浸出の最終部分は、Cu2++MexS→Cu+の還元段階であり、それは主としてCuFeS2鉱物によって行われ、およそ10%が転換により生成されたCuxSによって実行された。電解質が強いハロゲン化合物溶液であったので、Cu+可溶性が高いことがわかっていた。銅粉と共に析出する不純物からの溶液精製は、わずかにpHを上げることによって、セメンテーション、共沈および短い事前の電気分解(<0.2%のCuに相当)で実行された。
【0046】
溶液精製の後、銅の金属銅粉への還元がCr2+によって実行された。製造された銅粉は、通常の銅陰極より純度が高かった。粉の後処理は、実施例1と同様にして行われた。Fe3+およびCr2+を精製する電気分解による電解質の再生は、1.34 Vのセル電圧で実行された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価金属を含有する材料の浸出・沈殿法によって有価金属微粉を形成する方法において、該方法は、電解質溶液によって、有価金属を含有する前記材料が浸出され、前記有価金属が沈殿され、それは少なくとも1つの金属中間体を含有し、その電気化学的ポテンシャルのさまざまな値が前記有価金属の浸出および沈殿で利用され、これによって前記金属中間体の電気化学的ポテンシャルが電解再生によって変更されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該方法は、電解再生から送られた陽極液が有価金属含有材料の浸出段階における前記溶液として用いられ、そこで前記陽極液における1つ以上の金属中間体が高酸化度であり、前記有価金属の金属粉としての沈殿が同じ電解質からの陰極溶液を用いて行われ、そこで1つ以上の金属中間体の酸化度は前記浸出段階より低いことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、該方法は、前記沈殿段階の後、1つ以上の金属中間体を含有する溶液が電解再生に送られ、そこで金属中間体を含有する前記溶液の一部が陽極空間で再び高ポテンシャル値へと酸化され、他の部分が陰極空間で低ポテンシャル値に還元されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、該方法は、隔膜が電解再生において前記陽極および前記陰極の間に用いられることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、該方法は、有価金属を含有する前記溶液を、前記沈殿段階の前に、前記有価金属よりも貴な金属を結合して溶液精製を実行することによって精製することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の方法において、該方法は、前記有価金属が銅であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の方法において、該方法は、前記有価金属がニッケル、コバルトまたはスズのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記金属中間体がバナジウム、チタン、クロムまたは鉄のうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記金属中間体がマンガン、コバルト、亜鉛、サマリウム、ユウロピウム、イッテルビウム、ウラニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のうちの1つ以上のものであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、該方法は、複数の金属中間体を含有する溶液にて、1つの中間物が前記陽極液で活性を有し、他の金属中間体が前記陰極液で活性を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、該方法は、有価金属を含有する材料が乾式精錬プロセスの生成物であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、該方法は、材料を含有する前記有価金属が濃縮技術あるいは湿式精錬プロセスによる生成物または転換によって作られた中間生成物であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、該方法は、材料を含有する前記有価金属がスクラップ型であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、該方法は、前記有価金属が前記電解質溶液に含まれる酸の可溶塩として溶解することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、該方法は、前記電解質溶液が硫酸塩系または塩化物系の水溶液であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、該方法は、前記電解質溶液が、溶融点が0〜800℃の溶融塩溶液またはイオン液体または有機電解質であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、該方法は、核が前記有価金属の沈殿に用いられることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、該方法は、前記核が前記有価金属の金属粉であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、該方法は、前記核が炭化物、酸化物、窒化物、ホウ化物、プラスチックまたは他の有機材料からなるグループの少なくとも1つであり、その上に前記有価金属粉が沈殿することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、該方法は、前記有価金属粉の上にコーティングが形成されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、該方法は、沈殿した前記有価金属粉が無酸素環境または無酸素放出環境で、および陰極遮蔽電位が用いられる分離で処理されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、該方法は、前記有価金属微粉が濾過、遠心分離、ふるい分けまたは磁気分離のうち少なくとも1つを用いて機械的に前記電解質溶液から分離されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、該方法は、前記有価金属粉が難溶性の抽出溶液によって前記電解質溶液から電解質へと分離され、前記抽出溶液が蒸発によって前記粉から取り去られることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、該方法は、電気化学的な測定および制御方法が本方法のさまざまな段階の制御に用いられることを特徴とする方法。


【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−500472(P2010−500472A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523310(P2009−523310)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/FI2007/000200
【国際公開番号】WO2008/017731
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(507221324)オウトテック オサケイティオ ユルキネン (33)
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
【Fターム(参考)】