説明

金属粉末製造装置

【課題】ガスアトマイズ法を用いて高品質な金属粉末を製造することができる金属粉末製造装置を提供すること。
【解決手段】金属粉末製造装置1は、溶融金属を流下させる溶融金属供給部2と、溶融金属供給部2の下方に設置された筒状体3と、溶融金属供給部2から供給された溶融金属Qに向けて気体Gを噴射する気体噴出部5と、筒状体3の内周面に沿って冷却液層S1を形成するように冷却液Sを流出させる冷却液流出部4とを有し、冷却液流出部4は、冷却液Sを筒状体3の内周面の接線方向に向けて噴射する冷却液噴射口41と、冷却液噴射口41に対して下流側に設けられ、冷却液Sを筒状体3の内周面の接線方向に向けて噴射する冷却液噴射口42とを備え、冷却液層S1の周方向での流速が冷却液層S1の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、冷却液噴射口41、42のそれぞれから冷却液Sを噴射するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるガスアトマイズ法を用いて金属粉末を製造する金属粉末製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、特許文献1にかかる金属粉末製造装置は、溶融金属を流下させる溶湯ノズルが形成された原料容器と、この原料容器の下方に配設された冷却容器と、冷却容器の内周面に沿って冷却液層を形成する冷却液供給手段と、流下した溶融金属に向けてガスを噴射する高圧ガス噴射手段とを備えている。
このような金属粉末製造装置では、原料容器から流下した溶融金属に高圧ガス噴射手段から噴射されたガスを衝突させることにより、当該溶融金属を多数の溶滴とするとともに、その多数の溶滴を冷却液層に衝突させ冷却固化させ、これにより、金属粉末を製造する。
【0003】
かかる金属粉末製造装置では、冷却容器が円筒状をなしその軸線が鉛直方向に対して傾斜するように配設されている。また、冷却液供給手段は、冷却容器の内周面の接線方向に向けて冷却液を噴射し、冷却液を冷却容器の内周面に沿って旋回させながら流下させることにより、冷却液層を形成している。このような冷却液層を用いることで、溶滴を急冷し、高機能性の金属粉末を製造することができる。
しかしながら、特許文献1にかかる金属粉末製造装置では、冷却液層の周方向での流速が下方に行くにしたがい遅くなってしまう。そのため、冷却液層の上流側と下流側とで溶滴に対する冷却条件(特に冷却速度)が異なってしまい、均質な(粒径、結晶状態、形状等が均一な)金属粉末を製造するのが難しいという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−80812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガスアトマイズ法を用いて高品質な金属粉末を製造することができる金属粉末製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の金属粉末製造装置は、溶融金属を流下させる溶融金属供給部と、
前記溶融金属供給部の下方に設置された筒状体と、
前記溶融金属供給部から供給された溶融金属に向けて気体を噴射する気体噴出部と、
前記筒状体の内周面に沿って冷却液層を形成するように冷却液を流出させる冷却液流出部とを有し、
前記溶融金属供給部から流下した溶融金属に前記気体噴出部から噴射した気体を衝突させることにより、当該溶融金属を多数の液滴とするとともに、該多数の液滴を前記冷却液層に衝突させ冷却固化させて、金属粉末を製造する金属粉末製造装置であって、
前記冷却液流出部は、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第1の冷却液噴射口と、前記第1の冷却液噴射口に対して下流側に設けられ、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第2の冷却液噴射口とを備え、
前記冷却液層の周方向での流速が前記冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、前記第1の冷却液噴射口および前記第2の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射するように構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、冷却液層の有効冷却領域の上流側と下流側とで溶滴(液滴)に対する冷却条件(特に冷却速度)を等しくすることができる。その結果、均質な(粒径、結晶状態、形状等が均一な)金属粉末を製造することができる。
このようにして、本発明の金属粉末製造装置は、ガスアトマイズ法を用いて高品質な金属粉末を製造することができる。
【0007】
本発明の金属粉末製造装置では、前記第1の冷却液噴射口および前記第2の冷却液噴射口のうちの少なくとも一方の冷却液噴射口からの冷却液の流速および/または流量を調整する調整手段を有することが好ましい。
これにより、冷却液層の周方向での流速が冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、第1の冷却液噴射口および第2の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射させることができる。
【0008】
本発明の金属粉末製造装置では、前記調整手段は、前記第1の冷却液噴射口に供給される冷却液の圧力、および/または、前記第2の冷却液噴射口に供給される冷却液の圧力を調整する圧力調整手段を備えることが好ましい。
これにより、比較的簡単な構成で、冷却液層の周方向での流速が冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、第1の冷却液噴射口および第2の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射させることができる。
【0009】
本発明の金属粉末製造装置では、前記冷却液層の周方向での流速を検出する流速検出手段を有し、前記流速検出手段の検出結果に基づいて前記調整手段の調整をし得るように構成されていることが好ましい。
これにより、第1の冷却液噴射口および第2の冷却液噴射口のうちの少なくとも一方の冷却液噴射口からの冷却液の流速および/または流量を容易に調整することができる。
【0010】
本発明の金属粉末製造装置では、前記流速検出手段の検出結果に基づいて前記調整手段の調整を制御する制御手段を有することが好ましい。
これにより、第1の冷却液噴射口および第2の冷却液噴射口のうちの少なくとも一方の冷却液噴射口からの冷却液の流速および/または流量を自動的に調整することができる。
本発明の金属粉末製造装置では、前記冷却液流出部は、前記第2の冷却液噴射口に対して下流側に設けられ、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第3の冷却液噴射口を備え、
前記冷却液層の周方向での流速が前記冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、前記第1の冷却液噴射口、前記第2の冷却液噴射口、および前記第3の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射するように構成されていることが好ましい。
これにより、より簡単に、冷却液層の周方向での流速を冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一にすることができる。
【0011】
本発明の金属粉末製造装置では、前記冷却液流出部は、前記第3の冷却液噴射口に対して下流側に設けられ、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第4の冷却液噴射口を備え、
前記冷却液層の周方向での流速が前記冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、前記第1の冷却液噴射口、前記第2の冷却液噴射口、前記第3の冷却液噴射口、および前記第4の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射するように構成されていることが好ましい。
これにより、さらに簡単に、冷却液層の周方向での流速を冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一にすることができる。
本発明の金属粉末製造装置では、前記筒状体は、その軸線が鉛直方向に対して傾斜する方向に向くように設置されていることが好ましい。
これにより、多数の液滴を冷却液層により簡単かつ確実に衝突させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の金属粉末製造装置ついて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、本発明の金属粉末製造装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の金属粉末製造装置の第1実施形態を示す模式図(縦断面図)、図2は、図1に示す金属粉末製造装置に備えられた気体噴射部を示す斜視図、図3は、図2に示す気体噴射部の部分拡大縦断面図、図4は、図1に示す金属粉末製造装置に備えられた冷却液流出部の複数の冷却液噴射口の配置を説明するための図(横断面図)、図5は、図1に示す金属粉末製造装置の冷却液の流出制御の制御系を示すブロック図である。なお、以下の説明では、図1ないし図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0013】
図1に示す金属粉末製造装置1は、溶融金属Qをアトマイズ法(ガスアトマイズ法)により粉末化して、多数の金属粒子で構成された金属粉末Rを得るものである。この金属粉末製造装置1は、溶融金属Qを供給する溶融金属供給部(タンディシュ)2と、溶融金属供給部2の下方に設けられた筒状体(冷却容器)3と、筒状体3内に冷却液Sを流出させる冷却液流出部4と、流下する溶融金属Qに向けて気体Gを噴射する気体噴射部(ノズル)5とを有している。
【0014】
以下、各部の構成について説明する。
図1に示すように、溶融金属供給部2は、有底筒状をなす部分を有している。この溶融金属供給部2の内部空間(内腔部)には、製造すべき金属粉末の原材料を溶融した溶融金属Qが一時的に収納される。このような溶融金属供給部2は、例えば、黒鉛、窒化珪素等の耐火性材料で構成されている。また、溶融金属供給部2の外周には、溶融金属Qを加熱・保温するための誘導コイル6が設けられている。
【0015】
溶融金属Qは、いかなる元素を含んでいてもよく、例えば、TiおよびAlの少なくとも一方を含んでいるものも用いることができる。これらの元素は活性が高く、これらの元素を含む溶融金属Qは、短時間の空気との接触により、容易に酸化して酸化膜を形成してしまい、微細化することが困難とされている。金属粉末製造装置1は、後述するように気体噴射部5が噴射する気体Gとして不活性ガスを用いることで、このような溶融金属Qをも容易に粉末化することができる。
また、溶融金属供給部2の底部の中央部には、吐出口21が設けられている。この吐出口21からは、溶融金属供給部2内の溶融金属Qが下方に向かって自然落下により吐出される。
【0016】
このような溶融金属供給部2の下方には、筒状体3が設けられている。
筒状体3は、円筒状をなし、その軸線が鉛直方向に対して傾斜する方向を向くように設置されている。
この筒状体3は、後述するように、気体噴射部5からの気体Gにより溶融金属Qを分断(飛散)させて形成された多数の液滴(溶滴)Q1が供給されるとともに、その多数の液滴Q1を冷却液流出部4からの冷却液Sにより形成された冷却液層S1で冷却するためのものである。
【0017】
この筒状体3には、冷却液Sを筒状体3内に流出させる冷却液流出部4が設けられている。なお、冷却液流出部4については、後に詳述する。
このような筒状体3の上側(上端部付近)には、環状の蓋部材7が設けられている。この蓋部材7上には、蓋部材7の中央部の開口を通じて筒状体3内に気体Gを噴射し得るように気体噴射部5が設けられている。
【0018】
気体噴射部5は、図1に示すように、前述した溶融金属供給部2の吐出口21と同軸上に設けられた溶湯ノズル51と、溶湯ノズル51の外周に沿って設けられたガス室52と、ガス室52に連通する複数の気体噴射口53とを備えている。
溶湯ノズル51は、鉛直方向に上下に貫通するように形成された溶湯ノズル孔511を有している。また、溶湯ノズル51は、耐火材で構成されている。
【0019】
このような溶湯ノズル51は、前述した溶融金属供給部2の吐出口21から流下した溶融金属Qを一旦受け止め、溶融金属Qを溶湯ノズル孔511を通じて筒状体3内へ流下させる。溶湯ノズル孔511を通過した溶融金属Qの横断面形状および横断面積は、溶湯ノズル孔511の横断面積および横断面形状に応じたものとなる。
このような溶湯ノズル51の外周側には、その周方向に沿って環状をなすガス室52が設けられている。このガス室52には、外部から図示しないガス供給管を介して、高圧の気体Gが供給されるようになっている。
【0020】
気体Gとしては、溶融金属Qの酸化を防止することができるものであれば特に限定されないが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、アンモニア分解ガス等の還元性ガス等を用いることができる。
このようなガス室52の下側には、その周方向に沿って並設された複数の気体噴射口53が設けられている。各気体噴射口53は、前述したガス室52に連通しており、気体Gを噴射するようになっている。
【0021】
本実施形態では、複数の気体噴射口53は、図2に示すように、溶湯ノズル51の軸線を中心とする同一円周上に設けられている。特に、複数の気体噴射口53は、図1および図2中左側に設けられた複数の第1の気体噴射口531と、図1および図2中右側(すなわち第1の気体噴射口531とは反対側)に設けられた複数の第2の気体噴射口532とで構成されている。
【0022】
このような複数の気体噴射口53(複数の第1の気体噴射口531および複数の第2の気体噴射口532)は、これらの下方における溶湯ノズル51の軸線Lc上のほぼ同位置に向けて気体Gを噴射するように形成されている。
各第1の気体噴射口(主気体噴射口)531は、流下した溶融金属Qに気体Gを第1の流速および第1の流量で噴射するように構成されている。そして、複数の第1の気体噴射口531は、各第1の気体噴射口531からの気体Gの噴射により主分断用のガス流jを生じさせる。
【0023】
一方、各第2の気体噴射口(補助気体噴射口)532は、流下した溶融金属Qに第1の気体噴射口531とは反対側から気体Gを前記第1の流速より遅い第2の流速および前記第1の流量よりも少ない第2の流量で噴射するように構成されている。本実施形態では、各第2の気体噴射口532の横断面積は、各第1の気体噴射口531の横断面積よりも小さくなっている。そして、複数の第2の気体噴射口532は各第2の気体噴射口532からの気体Gを噴射により補助分断用のガス流jを生じさせる。
【0024】
このような複数の第1の気体噴射口531および複数の第2の気体噴射口532で複数の第2の気体噴射口532を構成することで、気体噴射部5は、筒状体3の軸線に平行に流下した溶融金属Qに対し気体Gを衝突させることで、多数の液滴Q1を筒状体3の軸線に対して傾斜した方向に向けて飛翔させることができる。これにより、多数の液滴Q1を冷却液層S1に比較的簡単かつ確実に衝突させることができる。
【0025】
より具体的に説明すると、ガス室52に所定の圧力で圧縮された気体Gが供給されると、図3に示すように、各第1の気体噴射口531および各第2の気体噴射口532から気体Gが噴射される。これにより、複数の第1の気体噴射口531から噴射された気体Gによりガス流jが形成されるとともに、複数の第2の気体噴射口532から噴射された気体Gによりガス流jが形成される。これらのガス流j、jは、溶湯ノズル51の下端よりやや下側の位置における溶湯ノズル孔511の軸線上で互いに交差する。
このとき、各第2の気体噴射口532の横断面積が各第1の気体噴射口531の横断面積よりも小さいので、流路抵抗差により、ガス流jの流速および流量がガス流jの流速および流量よりも小さくなる。
【0026】
その結果、図3に示すように、ガス流jは、ガス流jと交わった後、やや広がりを生じてその噴射方向に沿う流れを維持する。一方、ガス流jは、ガス流jと交わることによって、ガス流jの噴射方向に沿うように流れる方向が変化し、ガス流jと一体化される。
このようにして、気体噴射部5は、溶湯ノズル51を囲う円周上に配置された複数の気体噴射口53のそれぞれから気体Gが噴射されるものの、これらのガス流が溶湯ノズル孔511の軸線上で交わることで、円錐状の拡がりを全周にわたって生じることなく、溶湯ノズル孔511の軸線に対して片側に気体Gを噴射することができる。
【0027】
一方、溶湯ノズル51の溶湯ノズル孔511から流下した溶融金属Qは、ガス流jとガス流jとの交差点付近で、これらに衝突し、分断されて複数の液滴Q1となる。複数の液滴Q1は、ガス流jと一体化したガス流jによって、冷却液層S1に向けて飛翔する。そして、複数の液滴Q1は、冷却液層S1に衝突し、さらに分断され微細化されるとともに冷却固化され、これにより、金属粉末R(複数の金属粒子)が得られる。
【0028】
このようにして、流下した溶融金属Qは、気体Gのガス流j、jによって分断されて複数の液滴Q1となるととともに、当該複数の液滴Q1を効率的に冷却液層S1に衝突させて冷却固化させることができる。
特に、気体噴射部5は、多数の液滴Q1を鉛直方向に対して傾斜した第1の方向に向けて飛翔させるように構成されており、筒状体3は、その軸線が鉛直方向に対して前記第1の方向とは反対側に傾斜した第2の方向を向くように設置されている。これにより、多数の液滴Q1を冷却液層S1により簡単かつ確実に衝突させることができる。
【0029】
ここで、冷却液流出部4について詳述する。
冷却液流出部4は、複数の冷却液噴射口41、42、43、44を備えている。
図1および図4に示すように各冷却液噴射口41、42、43、44は、筒状体3の内周面に開口しており、筒状体3の内周面の接線方向に向けて冷却液S(本実施形態では水)を流出(吐出)する。これにより、冷却液Sを筒状体3の周方向に旋回させて、冷却液層S1を形成する。なお、冷却液Sは、還元剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0030】
より具体的に説明すると、複数の冷却液噴射口41、42、43、44は、図1に示すように、筒状体3内の冷却液層S1の上流側から下流側に向け、冷却液噴射口(第1の冷却液噴射口)41、冷却液噴射口(第2の冷却液噴射口)42、冷却液噴射口(第3の冷却液噴射口)43、冷却液噴射口(第4の冷却液噴射口)44の順に配置されている。
また、図4に示すように、冷却液噴射口41と冷却液噴射口43とが筒状体3の周方向での同位置に設けられ、また、冷却液噴射口42と冷却液噴射口44とが筒状体3の周方向での同位置に設けられている。
そして、これらの冷却液噴射口41、42、43、44は、筒状体3の内周面の接線方向での同一向きに冷却液Sを噴射するように形成されている。
このように構成された冷却液流出部4によれば、比較的簡単な構成で、筒状体3の上端部から下端部に亘って冷却液層S1を形成することができる。
【0031】
また、冷却液流出部4が前述したように冷却液Sの旋回流を形成させるので、筒状体3内での冷却液Sの流れを安定化することができる。また、冷却液流出部4は、前述したように筒状体3の内周に沿って設けられた複数の冷却液噴射口41を備えているため、比較的簡単に、冷却液層S1の厚さを筒状体3の周方向に亘って均一化することができる。
また、冷却液噴射口41にはポンプ81が接続され、冷却液噴射口42にはポンプ82が接続され、冷却液噴射口43にはポンプ83が接続され、冷却液噴射口44にはポンプ84が接続されている。これらのポンプ81、82、83、84は、それぞれ、図示しない冷却液タンクが接続されている。これにより、ポンプ81、82、83、84を作動させることで、冷却タンク内の冷却液Sを各冷却液噴射口41、42、43、44に供給し、加圧された冷却液Sが各冷却液噴射口41、42、43、44から噴射(流出)される。
【0032】
本実施形態では、冷却液噴射口41とポンプ81との間にバルブ85が設けられ、冷却液噴射口42とポンプ82との間にバルブ86が設けられ、冷却液噴射口43とポンプ83との間にバルブ87が設けられ、冷冷却液噴射口44とポンプ84との間にバルブ88が設けられている。
バルブ85は冷却液噴射口41に供給される冷却液Sの圧力を調整するものであり、バルブ86は冷却液噴射口42に供給される冷却液Sの圧力を調整するものであり、バルブ87は冷却液噴射口43に供給される冷却液Sの圧力を調整するものであり、バルブ88は冷却液噴射口44に供給される冷却液Sの圧力を調整するものであり、これらは、圧力調整手段を構成する。また、バルブ85、86、87、88は、冷却液噴射口41、42、43、44からの冷却液Sの流速および/または流量を調整する調整手段を構成する。
【0033】
これらのバルブ85、86、87、88を調整することで、冷却液層S1の周方向での流速が冷却液層S1の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、各冷却液噴射口41、42、43、44から冷却液Sを噴射させることができる。
冷却液層S1の周方向での流速が冷却液層S1の有効冷却領域の略全域に亘って均一になると、冷却液層S1の上流側と下流側とで液滴(溶滴)Q1に対する冷却条件(特に冷却速度)を等しくすることができる。その結果、均質な(粒径、結晶状態、形状等が均一な)金属粉末を製造することができる。その結果、金属粉末製造装置1は、ガスアトマイズ法を用いて高品質な金属粉末Rを製造することができる。ここで、冷却液層S1の有効冷却領域とは、気体噴射部5から広がって飛翔する多数の液滴Q1が冷却液層S1に衝突する領域を言う。
【0034】
より具体的に説明すると、本実施形態では、図1に示すように、筒状体3内には、冷却液層S1の周方向での流速を検出する2つのセンサ(流速検出手段)11、12が設けられている。
センサ11は、冷却液噴射口41に対して下流側、かつ、冷却液噴射口42に対して上流側に設けられている。また、センサ12は、冷却液噴射口43に対して下流側、かつ、冷却液噴射口44に対して上流側に設けられている。
センサ11、12は、それぞれ、冷却液層S1の周方向での流速を検出することができるものであれば、特に限定されず、各種流速計を用いることができ、例えば、ピトー管を用いることができる。
【0035】
このようなセンサ11、12は、図5に示すように、制御手段13に接続されている。
制御手段13は、センサ11、12の検出結果(検出された流速)に基づいて、前述したバルブ85、86、87、88の開度を調整するものである。ここで、制御手段13は、センサ11、12の検出結果に基づいてバルブ85、86、87、88の調整を制御する制御手段を構成する。
【0036】
このようなセンサ11、12の検出結果に基づいてバルブ85、86、87、88の調整を行うことで、冷却液噴射口41、42、43、44からの冷却液Sの流速および/または流量を容易に調整することができる。
より具体的には、制御手段13は、センサ11によって検出された流速と、センサ12によって検出された流速との差がゼロとなるように、バルブ85、86、87、88の調整を制御する。
【0037】
例えば、センサ11によって検出された流速が、センサ12によって検出された流速よりも小さいとき、制御手段13は、バルブ85、86の開度を大きく、または、バルブ87、88の開度を小さくする。一方、センサ11によって検出された流速が、センサ12によって検出された流速よりも大きいとき、制御手段13は、バルブ85、86の開度を小さく、または、バルブ87、88の開度を大きくする。
【0038】
その際、制御手段13は、センサ11によって検出された流量と、センサ12によって検出された流量とがそれぞれ所望の流量となるように、バルブ85、86、87、88を調整する。
以上のようにして、制御手段13は、冷却液噴射口41、42、43、44からの冷却液Sの流速および/または流量を自動的に調整することができる。
【0039】
以上説明したようにして形成される冷却液層S1には、前述した気体噴射部(ガスジェットノズル)5によって溶融金属Qを分断して形成された多数の液滴Q1が気体噴射部5からの気体Gとともに供給される。
また、筒状体3の下端には、金属粉末Rを冷却液Sとともに排出するための排出管9が接続されている。この排出管9は、図示しない回収タンクに接続されている。
【0040】
回収された金属粉末Rと冷却液Sとの混合物は、脱液装置を用いて、冷却液Sを除去することで金属粉末Rが分離される。分離された金属粉末Rは、乾燥装置を用いて、乾燥される。
以上説明したような金属粉末製造装置1によれば、冷却液層S1の有効冷却領域の上流側と下流側とで液滴Q1に対する冷却条件(特に冷却速度)を等しくすることができる。その結果、均質な(粒径、結晶状態、形状等が均一な)金属粉末Rを製造することができる。
【0041】
このようにして、金属粉末製造装置1は、ガスアトマイズ法を用いて高品質な金属粉末Rを製造することができる。
以上、本発明の金属粉末製造装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、金属粉末製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0042】
例えば、前述した実施形態では、4つの冷却液噴射口を設けた例について、説明したが、冷却液噴射口の数は、複数であれば、これに限定されず、2つまたは3つでもよいし、5つ以上であってもよい。ただし、冷却液噴射口の数が多いほど、冷却液の周方向での流速を均一するのが容易となり、筒状体の軸線方向での長さが大きい場合でも、冷却液の周方向での流速を均一することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の金属粉末製造装置の実施形態を示す模式図(縦断面図)である。
【図2】図1に示す金属粉末製造装置に備えられた気体噴射部を示す斜視図である。
【図3】図2に示す気体噴射部の部分拡大縦断面図である。
【図4】図1に示す金属粉末製造装置に備えられた冷却液流出部の複数の冷却液噴射口の配置を説明するための図(横断面図)である。
【図5】図1に示す金属粉末製造装置の冷却液の流出制御の制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1……金属粉末製造装置 2……溶融金属供給部 3……筒状体 21……吐出口 4……冷却液流出部 41〜44……冷却液噴射口 5……気体噴射部 51……溶湯ノズル 511……溶湯ノズル孔 52……ガス室 53……気体噴射口 531……第1の気体噴射口 532……第2の気体噴射口 6……誘導コイル 7……蓋部材 81〜84……ポンプ 85〜88……バルブ 9……排出管 11、12……センサ 13……制御手段 Lc……軸線 j、j……ガス流 S……冷却液 S1……冷却液層 G……気体 Q……溶融金属 Q1……液滴 R……金属粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を流下させる溶融金属供給部と、
前記溶融金属供給部の下方に設置された筒状体と、
前記溶融金属供給部から供給された溶融金属に向けて気体を噴射する気体噴出部と、
前記筒状体の内周面に沿って冷却液層を形成するように冷却液を流出させる冷却液流出部とを有し、
前記溶融金属供給部から流下した溶融金属に前記気体噴出部から噴射した気体を衝突させることにより、当該溶融金属を多数の液滴とするとともに、該多数の液滴を前記冷却液層に衝突させ冷却固化させて、金属粉末を製造する金属粉末製造装置であって、
前記冷却液流出部は、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第1の冷却液噴射口と、前記第1の冷却液噴射口に対して下流側に設けられ、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第2の冷却液噴射口とを備え、
前記冷却液層の周方向での流速が前記冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、前記第1の冷却液噴射口および前記第2の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射するように構成されていることを特徴とする金属粉末製造装置。
【請求項2】
前記第1の冷却液噴射口および前記第2の冷却液噴射口のうちの少なくとも一方の冷却液噴射口からの冷却液の流速および/または流量を調整する調整手段を有する請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記第1の冷却液噴射口に供給される冷却液の圧力、および/または、前記第2の冷却液噴射口に供給される冷却液の圧力を調整する圧力調整手段を備える請求項2に記載の金属粉末製造装置。
【請求項4】
前記冷却液層の周方向での流速を検出する流速検出手段を有し、前記流速検出手段の検出結果に基づいて前記調整手段の調整をし得るように構成されている請求項2または3に記載の金属粉末製造装置。
【請求項5】
前記流速検出手段の検出結果に基づいて前記調整手段の調整を制御する制御手段を有する請求項4に記載の金属粉末製造装置。
【請求項6】
前記冷却液流出部は、前記第2の冷却液噴射口に対して下流側に設けられ、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第3の冷却液噴射口を備え、
前記冷却液層の周方向での流速が前記冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、前記第1の冷却液噴射口、前記第2の冷却液噴射口、および前記第3の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射するように構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の金属粉末製造装置。
【請求項7】
前記冷却液流出部は、前記第3の冷却液噴射口に対して下流側に設けられ、冷却液を前記筒状体の内周面の接線方向に向けて噴射する第4の冷却液噴射口を備え、
前記冷却液層の周方向での流速が前記冷却液層の有効冷却領域の略全域に亘って均一になるような流速および流量で、前記第1の冷却液噴射口、前記第2の冷却液噴射口、前記第3の冷却液噴射口、および前記第4の冷却液噴射口のそれぞれから冷却液を噴射するように構成されている請求項6に記載の金属粉末製造装置。
【請求項8】
前記筒状体は、その軸線が鉛直方向に対して傾斜する方向に向くように設置されている請求項1ないし7のいずれかに記載の金属粉末製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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