金属膜を用いた光導波路のミラー部の製造方法、及び光導波路
【課題】簡単に光導波路のミラー部を形成できる製造方法を提供すること。
【解決手段】コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、下部クラッド層にコア溝を形成する工程、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程、下部クラッド層、コア、上部クラッド層の積層体を形成する工程、上記積層体の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用V溝を形成する工程、斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有する第2の型の凸部に金属膜を付着させる工程、斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の金属膜表面に、接着剤を付着させる工程、金属膜が付着した第2の型をV溝のコア側斜面に押し当てて、V溝の斜面に接着剤を介して金属膜を貼付してミラー部を形成する工程を含む、ことを特徴とする光導波路の製造方法である。
【解決手段】コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、下部クラッド層にコア溝を形成する工程、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程、下部クラッド層、コア、上部クラッド層の積層体を形成する工程、上記積層体の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用V溝を形成する工程、斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有する第2の型の凸部に金属膜を付着させる工程、斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の金属膜表面に、接着剤を付着させる工程、金属膜が付着した第2の型をV溝のコア側斜面に押し当てて、V溝の斜面に接着剤を介して金属膜を貼付してミラー部を形成する工程を含む、ことを特徴とする光導波路の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜を用いた光導波路のミラー部の製造方法、及び金属膜でミラー部が形成されている光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの実用化に伴い、その基本構成としての光導波路に関する技術が注目を集めている。光導波路とは、代表的には、屈折率が高いコアを屈折率が低いクラッドが取り囲んだ埋め込み型構造が知られている。光導波路のコアに入射した光は、コアとクラッドとの界面で反射しながらコア中を伝播する。
【0003】
このような光導波路と電子回路とを1枚の基板上に混載した光電気混載基板においては、裏面に電気配線を有する基板の反対面上に光導波路が形成され、光導波路の両端部に45°ミラーを形成して、一方の45°ミラーの位置における基板の電気配線側に実装されている発光素子から発光された光を、45°ミラー部で90°光路を変更させて光導波路のコアの中を伝播させ、他方の45°ミラーの位置における基板の電気配線側に実装された受光素子により受光するように構成されている。例えば、特許文献1には、上記説明とは上下が逆だが、発光素子からの出射光をミラーで光路変更して、光導波路のコア内を伝搬させる光電子回路基板(光電気混載基板)が示されている。
【0004】
上記の45°ミラー部を形成するには、光導波路の下部クラッド、コア、上部クラッドを形成した後、45°ミラー部のための断面V字状の溝を、三角形状のブレードを用いてダイシングソー(ダイサー)によりV溝加工を行い、このV溝表面に真空蒸着等の方法で金属膜を形成する方法が、一般的であり、特許文献1においても、ダイサーで切込みを入れてミラー部用溝を形成している。
【0005】
しかしながら、上記従来方法では、ブレードの加工位置および加工深さを精密に制御する必要がある上に、また、クラッドの厚さのバラツキがミラー位置のバラツキに影響するため、位置精度の制御が困難であるという問題があった。さらに、ブレードでの切削では、コアやクラッドが比較的軟らかい材料の場合は、加工面が荒れてしまい、光の反射効率が低下するという問題があった。また、V溝に真空蒸着で金属膜を形成するために加熱が必要であるが、その際の輻射熱によって、クラッド材等を構成する樹脂が軟化・溶融するという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2には、コアパターンと斜めミラー部を同時形成することのできる金型が記載されている。しかしながら、転写後の斜めミラー部のみに金属膜を形成する技術が不明であり、通常は、ミラー部以外をマスクする工程が必要となるためと、光導波路形成後に電気配線を有する基板を精密な位置合わせで貼り合わせる必要があるため、工程が煩雑になると推測される。また、図面を参照しても、コアパターン14と斜めミラー部16の位置関係がおかしく、両者の位置関係を理解することができない。
【0007】
本発明者は上記問題を解決する技術として、斜めミラー部用V溝の斜面に金属コロイド液を塗布して熱処理することにより、金属膜を形成する技術を既に提案している(特許文献3)。しかしながら、金属コロイド液は高価であるため製造コストが高くなるという問題があった。また、ダイサーなどで切削加工してV溝を形成すると、表面性状が粗いために金属膜を成膜しても、加工面の平坦性が悪い場合があり、その場合は表面を平坦にするための工程が別途必要となり、製造コストが高くなるなど、コスト削減の観点からは改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−250007号公報
【特許文献2】特開2002−311273号公報
【特許文献3】特開2011−13362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、簡単に上記問題を解決し得る光導波路のミラー部を形成できる製造方法を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成し得た本発明は、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、コア溝に対応する凸部を有する第1の型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝を形成する工程;上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に滴下して硬化させ、下部クラッド層、コア、上部クラッド層の積層体を形成する工程;上記積層体の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用V溝を形成する工程;斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有する第2の型の凸部に金属膜を付着させる工程;斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の金属膜表面に、接着剤を付着させる工程;金属膜が付着した第2の型をV溝のコア側斜面に押し当てて、V溝の斜面に接着剤を介して金属膜を貼付してミラー部を形成する工程を含むことに要旨を有する光導波路の製造方法である。
【0011】
上記本発明の好ましい実施形態として、前記コア溝を形成する工程は、コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程であり、前記コア材料を硬化させる工程は、上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程であり、前記積層体を形成する工程と、V溝を形成する工程は、コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に塗布した後、第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、下部クラッド層のV溝に第1Bの型の凸部が当接するように押し当ててから、上部クラッド材料を硬化させて、前記積層体を形成すると共に、V溝を形成する工程であることも望ましい光導波路の製造方法である。
【0012】
また本発明は、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程;上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料を斜めミラー部用V溝の斜面、コア、及び下部クラッド層の上に塗布する工程;斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有し、この凸部に金属膜を有する第2の型を、V溝の斜面にこの凸部が当接するように押し当てて、V溝の上部クラッド材料表面に金属膜を転写してミラー部を形成する工程;クラッド材料を硬化させた後、第2の型を離型する工程を含むことに要旨を有する光導波路の製造方法である。
【0013】
上記本発明の好ましい実施態様として、前記コア材料を硬化させる工程は、上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝および斜めミラー部用V溝にコア材料を注入して充填する工程と、第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、コア溝と斜めミラー部用V溝にコア材料が充填された下部クラッド層のV溝に第1Aの型の凸部を押し当てて、V溝からコア材料を除去した後、コア溝中のコア材料を硬化させる工程であることも望ましい光導波路の製造方法である。
【0014】
本発明では前記金属膜が、金、銀、銅、アルミニウム、及びこれらの1種以上を含む合金よりなる群から選択される少なくとも一種の金属箔であることも好ましい。
【0015】
また本発明の光導波路は、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路であって、前記ミラー部は金属箔で形成されていることに要旨を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法では、金属膜を用いて斜めミラー部用V溝に簡単にミラー部を形成することができるので、真空蒸着法等に比べてマスキングや真空装置が必要でなく、また安価な原料を使用できるため、簡単かつ安価に斜めミラー部を有する光導波路を製造することができる。
【0017】
また金属箔をクラッド材や接着剤等を介して斜めミラー部に形成すると、接着剤等によって表面が平坦化されるため、ダイサーなどによって斜めミラー部を形成した際に問題となる加工面が荒れて光の反射率が低下するという問題も解消することができ、製造プロセスの簡略化、生産速度の向上、および歩止まりの向上を図ることができ、結果として、光導波路のコストを低下させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の型の斜視説明図である。
【図2】第1の型の使用方法を説明する図である。
【図3】下部クラッド層の斜視説明図である。
【図4】V溝を形成した積層体の一例を説明する図である。
【図5】第1の型の他の例の斜視説明図である。
【図6】V溝を上部クラッド材料で形成する方法の一例を説明する図である。
【図7】図7(A)、(B)は、第1Bの型の斜視説明図である。
【図8】V溝を形成した積層体の一例を説明する図である。
【図9】図9(A)、(B)は、第2の型の斜視説明図である。
【図10】第2の型の使用方法の一例を説明する図である。
【図11】第1Aの型の斜視説明図である。
【図12】第1Aの型の使用方法を説明する図である。
【図13】下部クラッド層の斜視説明図である。
【図14】第1Bの型の使用方法を説明する図である。
【図15】第2の型の使用方法の一例を説明する図である。
【図16】第2の型の使用方法の他の一例を説明する図である。
【図17】第2の型の説明図である。
【図18】吸着機構を有する第2の型の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、斜めミラー部用のV溝のコア側斜面に金属膜のミラー部を形成するために、第2の型を採用したところに特徴がある。このため、光導波路を製造するための他の工程については特に限定されない。以下、代表的な斜めミラー部が形成された光導波路の製造方法を説明するが、本発明の光導波路の製造方法は下記例に限定されず、適宜変更することができる。
【0020】
<本発明の光導波路の製造方法1>
本発明の第2の型を用いて、斜めミラー部用のV溝のコア側斜面に金属膜が形成された光導波路の製造方法の一例について説明する。
【0021】
図1に示すように、コア溝に対応する凸部2Aを有している第1の型1を用いて、下部クラッド層にコア溝を形成する。コア溝対応凸部2Aは、図例では1本だけだが、複数本、並設して形成しても構わない(他の製造例も同様である)。図2には、図1の第1の型1を上下に反転させた状態のA−A線断面を見た図を示している。硬化前の下部クラッド層3Aを公知の方法で基板4上に作製し、図2に示したように、第1の型1を図1とは上下反転させて、下部クラッド層3Aに押し当てる。第1の型1を押圧したまま下部クラッド層3Aを硬化させることにより、第1の型1を離型した後には、図3に斜視図で示したように、コア溝2Bが形成された硬化後の下部クラッド層3が得られる。
【0022】
次に、コア溝2Bにコア材料を公知の方法で充填する。コア溝2Bは幅と深さが大体数十μm程度であって細いので、注入したコア材料は、毛細管現象でコア溝2Bの長さ方向にコア材料が吸い込まれて充填される。
【0023】
このままコア材料を硬化させることにより、下部クラッド層3の上部のコア溝2B内に硬化したコア2が形成される。コア材料を硬化させた後、コア2、及び下部クラッド層3の上に、上部クラッド材料を公知の方法で滴下する。滴下した上部クラッド材料を公知の方法で硬化させることにより、下部クラッド層3の上にコア2を被覆した上部クラッド層5が形成された積層体6が得られる。
【0024】
この積層体6の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用のV溝を形成する。V溝の形成方法は特に限定されず、例えばV型形状のブレードを有するダイシングソーやレーザーなどの切削手段を用いてV溝7を形成することができる(図4(A)はダイシングソーで形成した頂角が90°のV溝7の一例であり、図4(B)はレーザーで形成した頂角が135°のブロードなV溝7の一例である)。この際、V溝の角度は特に限定されず、コア側に形成されている斜めミラー部の斜面7Aがコア長手方向に対して45°、すなわちコアからの光路をミラー部で90°転換して基板側に設けた図示しない光受送信部に入射できるように形成すればよい(他の製造例も同様である)。
【0025】
斜めミラー部の他の製造方法としては、例えば図5に示すような端面に垂直壁1W(垂直壁1Wはコア溝に対応する凸部2Aに対して直行し、且つ垂直方向に延びている)を有する第1の型1’を用いて上記した図2、図3に示す工程を経て形成された積層体6を用いることも望ましい。この第1の型1’で形成された積層体6は、積層体6(コア2)の長手方向に垂直な端面8を有している(図6参照)。このような積層体6に対しては、図6に示すように例えば上部クラッド材料、又はコア材料からなるミラー部材料9を積層体6の垂直な端面8に充填し、斜めミラー部の形状に対応した型(斜めミラー部用斜面に対応する凸部斜面の基板側の角は90°〜135°であればよく、例えば図7(A)に示すような頂角が90°であって、斜めミラー部の斜面に対応したV溝形成用凸部10Aを有する第1Bの型11A、あるいは図7(B)に示すような斜めミラー部用斜面に対応する頂角が135°であって、斜めミラー部の斜面に対応した凸部10Bを有する第1Bの型11B)をミラー部材料9に押し当ててミラー部用斜面を形成すると共に、ミラー部材料9を硬化させることにより、斜めミラー部に対応する斜面(45°)を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された積層体が得られる(例えば(図7(A)で形成した積層体として図8(A)、図7(B)で形成した積層体として図8(B)参照)。
【0026】
図10は、図9(A)、図9(B)に例示される第2の型12の使用方法の一例を説明する図(図9(B)のB−B断面図相当)であって、斜めミラー部を形成する概略工程を示している。図10では、上記図8(B)のブロードなV溝(斜面7Aと基板4で形成される135°V溝)の斜面7Aに当接可能な凸部13に金属膜14を付着させた第2の型12を、コア側斜面7Aに押し当てる。この際、積層体6の斜めミラー部用V溝のコア側斜面7A、および/またはこの斜面7Aに当接可能な凸部13の金属膜14の表面に、接着剤15を付着させる(図示例では斜面7Aに接着剤を付着させている)。第2の型12の金属膜14をコア側斜面7Aに押し当てて、斜面7Aに接着剤15を介して金属膜14を貼付すれば、斜めミラー部16が形成される。第2の型12を離型することにより、斜めミラー部16を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された埋め込み型構造の光導波路が得られる(光導波路は基板4からは適宜剥離すればよい)。
【0027】
<本発明の光導波路の製造方法2>
以下、本発明の他の製造例について図面を参照しながら説明する。図11には、第1Aの型1Aの一方端の斜視説明図を示した。第1Aの型1Aは、コア溝に対応する凸部2Aと、コア溝対応凸部2Aの一方端に当接し、コア溝対応凸部2Aに直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部10Aとを有している。第1の型の図示しない他方端においても斜めミラー部対応凸部10Aをコア溝対応凸部2Aに直交するように当接させることができ、あるいは別の形状とすることもできる(他の製造例も同様である)。
【0028】
斜めミラー部対応凸部10Aの断面形状は図例では二等辺三角形である。ミラー部斜面が45°、すなわち、第1Aの型1Aのミラー部斜面を形成する斜面10Bとコア溝対応凸部2Aの長手方向に水平な線とで形成される鈍角が135°であれば、二等辺三角形の頂角は特に限定されず、例えば90°以上であればよく、理論的に180°未満である。
【0029】
この第1Aの型1Aを用いて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する。図12には、図11の第1Aの型1Aを上下に反転させた状態のA−A線断面を見た図を示している。硬化前の下部クラッド層3Aを公知の方法で基板4上に作製し、図12に示したように、第1Aの型1Aを図11とは上下反転させて、下部クラッド層3Aに押し当てる。第1Aの型1Aを押圧したまま下部クラッド層3Aを硬化させることにより、第1の型1Aを離型した後には、図13に斜視図で示したように、コア溝2Bと斜めミラー部用V溝7とが形成された硬化後の下部クラッド層3が得られる。
【0030】
次に、コア溝2Bにコア材料を公知の方法で充填する。効率的且つ選択的に溝に充填する方法として、コア溝2Bは幅と深さが大体数十μm程度であって細いので、コア溝2Bの所定の場所にコア材料を滴下し、毛細管現象でコア溝2Bの長さ方向にコア材料を充填する方法が好ましい。コア溝2Bの深さが斜めミラー部のV溝7の頂点部の深さより浅く、且つコア材料の滴下箇所をミラー部のV溝7よりコア溝の長さ方向に内側に設定することで、コア材料をコア溝2Bのみに選択的に充填することが出来る。これは、コア溝2BとV溝7の斜め面との交差面にて、コア材料と空気との界面張力によって、毛細管現象が停止する為である。コア溝への充填速度を上げるためには基板や下部クラッド層、或いはコア材料を加熱してコア材料の流動性を高めてもよい。例えば基板を50℃以上、200℃以下の範囲で加熱すると、下部クラッド層を介してコア材料に熱が伝わってコア材料が加熱される。温度が低すぎると充填速度に著しい向上は見られない。一方、温度が高すぎる場合は、コア材料が熱によって硬化し始め充填できなくなる。
【0031】
その後、コア材料を硬化させてコア2を形成する。コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料5Aをコア2、下部クラッド層3の上に塗布した後、第1Bの型を用いて、V溝に充填されている上部クラッド材料5Aを除去する。これはコアや下部クラッド層の上に上部クラッド材料を塗布した際、V溝にも上部クラッド材料が流入して充填されることがあるためである。
【0032】
図14は図7(A)に示す第1Bの型11Aを使用した説明図である。図14では、下部クラッド層3とコア2、V溝7の上部に塗布された上部クラッド材料5Aが硬化する前に、第1Bの型11Aを下部クラッド層3に押し当てる。V溝7に充填された上部クラッド材料5Aは、第1Bの型11Aの斜めミラー部対応凸部10Aによって押し出されてV溝から除去された状態となる。このまま上部クラッド材料5Aを硬化させることにより、下部クラッド層3及びコア2の上部に硬化した上部クラッド層5が形成される。第1Bの型11Aを離型することにより、V溝7を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された積層体が得られる。
【0033】
次に斜めミラー部を金属膜で作成する。図15は、第2の型の使用方法の一例を説明する図(図9(A)のB−B断面図)であって、斜めミラー部を形成する概略工程を示している。図15では、上部クラッド材料を硬化させた積層体の斜めミラー部用V溝のコア側斜面7Aに当接可能な凸部13を有する第2の型12を用いる。第2の型12の凸部13には金属膜を付着させる。
【0034】
また斜めミラー部用V溝の斜面7A、および/または第2の型12の金属膜14表面に、接着剤15を付着させる(図示例では金属膜14の表面に接着剤15を付着させている)。この接着剤15を介して金属膜14をV溝斜面7Aに貼付して斜めミラー部を形成する。すなわち、第2の型12の凸部13をV溝のコア側斜面7Aに押し当てれば、V溝の斜面7Aに接着剤15が接着すると共に、この接着剤15を介して金属膜14が斜面7Aに貼付され、ミラー部が形成された埋め込み構造型の光導波路が得られる(光導波路は適宜基板から剥離して使用すればよい)。
【0035】
<本発明の光導波路の製造方法3>
以下、本発明の第2の型を用いた光導波路の製造方法の他の一例について説明する。
【0036】
まず、上記光導波路の製造方法2と同様にして、V溝を有し、下部クラッド層3の上部にコア2を形成する。
【0037】
すなわち、図11に示すコア溝に対応する凸部2Aと、コア溝対応凸部2Aの一方端に当接し、コア溝対応凸部2Aに直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部10Aとを有する第1Aの型を用いて、図12に示す工程を経て、図13に示すような下部クラッド層3にコア溝2と斜めミラー部用V溝7を形成する。次にコア溝2Bにコア材料を注入して充填し、コア溝2B中のコア材料を硬化させれば、V溝を有し、下部クラッド層3の上部にコア2が形成される。
【0038】
次に上部クラッド材料を斜めミラー部用V溝の斜面、コア、及び下部クラッド層の上に塗布する。続いて上部クラッド材料が硬化する前に、斜めミラー部を金属膜で作製する。具体的に図16に基づき説明する。図16は、第2の型(図9(A)のB−B断面図)の使用方法の一例を説明する図であって、斜めミラー部を形成する概略工程(図13の下部クラッド層3をB−B線断面方向から見た状態)を示している。図16では、コア材を硬化させた積層体のミラー部用V溝7のコア側斜面7A、コア2、及び下部クラッド層3の上に、上部クラッド材料5Aを公知の方法で塗布する。塗布した上部クラッド材5Aが硬化する前に、V溝のコア側斜面7Aに当接可能な凸部13を有し、この凸部13に金属膜14を有する第2の型をV溝7に押し当てる(好ましくはV溝のコア側斜面7Aと凸部13のコア側斜面とが対向するように押し当てる)。第2の型の斜めミラー部対応の凸部の金属膜14は、V溝の上部クラッド材料5A表面に転写され、ミラー部が形成される。
【0039】
斜めミラー部を形成した後、公知の方法で上部クラッド材料5Aを硬化させることにより、下部クラッド層3の上にコア2を被覆した上部クラッド層5が形成される。第2の型12を離型することにより、金属膜14で形成されたミラー部を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された埋め込み型構造の光導波路が得られる。
【0040】
<本発明の製造方法4>
さらに、本発明の第2の型を用いた上記光導波路の製造方法3の他の一例について説明する。
【0041】
まず、上記製造方法3と同様に図11に示すような第2の型を用いてコア溝と斜めミラー部用V溝と下部クラッド層を形成するまでの工程は同じである(図12、図13参照)。
【0042】
次に、コア溝2Bと斜めミラー部用V溝7にコア材料を公知の方法で充填する。この際、コア溝2Bの幅と深さが上記のように細くて浅いと、毛細管現象でコア溝7の長さ方向にコア材料が吸い込まれていくが、V溝7も同様にコア材料が充填される。
【0043】
そこで、V溝7から充填されたコア材料を取り除くために、第1Bの型を用いる。図7(A)(B)に示したように、第1Bの型は図11で示す第1Aの型と同一形状の斜めミラー部対応凸部を有しているが、コア溝対応凸部2Aは有していない。
【0044】
第1Bの型の使用方法は図14に示す工程とほぼ同じであり、同図を用いて説明すると、下部クラッド層3のコア溝2Bに充填されたコア材料17と、V溝7に充填されたコア材料17Aとが硬化する前に、第1Bの型11Aを下部クラッド層3に押し当てる。V溝に充填されたコア材料17Aは、第1Bの型11Aの斜めミラー部対応凸部10Aによって押し出されてV溝から除去された状態となるが、コア溝2Bに充填されたコア材料17は除去されないので、このままコア材料17を硬化させることにより、下部クラッド層3の上部にコア溝2B内に硬化したコア2が形成される。第1Bの型11Aを離型することにより、V溝7を有し、下部クラッド層3の上部にコア2が形成される。
【0045】
その後、上記製造方法3と同様にして、図16に示す工程に従って、上部クラッド材料5Aを斜めミラー部用V溝7の斜面7A、コア2、及び下部クラッド層3の上に塗布した後、凸部13に金属膜14を有する第2の型12を上部クラッド材料5Aに当接するように押し当てれば、金属膜14で形成されたミラー部を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された埋め込み型構造の光導波路が得られる。
【0046】
以下、第2の型を用いた上記ミラー部の形成について更に詳述する。
【0047】
まず、斜めミラー部を形成する金属膜について詳述する。斜めミラー部は、V溝7のコア2と接するコア側斜面7Aに形成する必要がある。斜めミラー部の形成に用い得る金属膜としては、Au,Ag,Cu,Al等またはこれらの1種以上を含む合金が挙げられ、使用する光の波長(例えば通信に使用される場合は、700〜1600nmの波長、特に800〜900nmの波長)での反射率が高い金属膜が好ましく、反射率が70%以上である金属膜がより好ましい。反射率が高く、化学安定性に優れた金属膜としては、Au,Agが挙げられ、低コスト化の観点からは、AlもしくはCuが好ましい。また本発明では簡易に斜めミラー部を形成するために、金属箔を用いて金属膜の斜めミラー部を形成することが好ましく、反射率を高める観点からは、金属箔表面は鏡面加工されていることがより好ましい。
【0048】
本発明で用いられる金属箔の厚みは特に限定されないが、膜厚が薄すぎると皺や破断等が発生し易くなり、また光が膜を透過して反射率が低下するため、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上とするのがよい。一方で金属箔の膜厚が厚すぎると、斜めミラー部の斜面と下部クラッド層の斜面で形成される角部分(例えば図8のV溝斜面で構成される頂角)で金属箔が斜面に追従せずにRを形成することがあるため、金属箔の厚みは下部クラッド層の厚みよりも薄くすることが好ましく、例えば25μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。Rが形成されると、このR部分から金属膜の破れや皺が発生・伝播して反射率が低下するなどの原因となることがある。
【0049】
また反射率の低下を抑制する観点からは金属箔の表面粗さも適切に制御することが望ましい。金属箔の表面が粗いと光の乱反射によって光損失が生じるため、金属箔の表面粗さ(JIS B0601 2001に規定する算術平均粗さRa)は好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0050】
次に、第2の型の形状は、斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有していればよい。当接可能な凸部とは、第2の型の凸部の形状とV溝の形状とが、コア側斜面で合致すれば他の部分の形状が異なっていてもよい意味である。光導波路の斜めミラー部は、V溝のコア側斜面に金属膜が形成されていれば機能するからである。したがって図9(A)に示したように、第2の型12の凸部13の形状はV溝7の形状に嵌合する形状であってもよいが、図17(B)や図17(C)に示すようなV溝7のコア側斜面7Aにのみ合致する形状の第2の型を使用することも可能である。
【0051】
次に、金属膜を第2の型の凸部に付着手段について説明する。本発明では金属膜を有する第2の型をV溝斜面に押し当てて、金属膜を第2の型からV溝側に転写ないし貼付できる手段であれば、金属膜の付着手段は特に限定されない。
【0052】
例えば金属膜は、第2の型の凸部に吸着させることもできる。図18は吸着機構を有する第2の型の一例を説明するための斜視図である。図18では、第2の型に任意の位置に複数のスリット70を設けた吸引機構が形成されている。凸部に金属膜を載置した後、空気を吸気口71から吸引してスリット内(スリットと図示しない金属膜で形成される空間)を陰圧状態とすることで、金属膜は第2の型に吸着される。そして第2の型をV溝に押圧した後、吸引を停止すれば金属膜は第2の型からV溝側に転写ないし貼付される。
【0053】
また金属膜は、第2の型に自着させることもできる。第2の型の少なくともミラー部対応凸部を樹脂材料やシリコーン材料で構成すれば、シリコーン材料等が有する疑似接着性(自着性によって接着し、接着部分が小さな力で、且つ接着面を破壊することなく剥離できるような接着状態)によって、金属膜を自着させることができる。そして第2の型をV溝に押圧すると、接着性の強い上部クラッド材や接着剤によって、金属膜はV溝側に転写ないし貼付される。
【0054】
更に金属膜は、粘着剤ないし接着剤(以下、接着剤で代表する)を介して第2の型に貼着させることもできる。接着剤としてはUV剥離型接着剤、熱剥離型接着剤などが例示される。この場合、金属膜を貼着した第2の型をV溝に押圧した後、紫外線照射(UV剥離型粘着剤)や加熱(熱隔離型粘着剤)など剥離手段を施すことによって、金属膜は第2の型から剥離してV溝側に転写ないし貼付される。
【0055】
金属膜は第2の型の凸部の全面に付着させる必要はなく、少なくともコア側斜面当接面の光反射部分において付着させればよい。コア側斜面に金属膜が形成されていれば、光路変換機能を発揮できるからである。
【0056】
上記製法によれば、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が金属膜(好ましくは金属箔)で形成された光導波路を製造することができる。
【0057】
本発明の光導波路は、金属膜が上部クラッド材、或いは接着剤を介して斜めミラー部用斜面に形成されているため、例えば上記斜面がダイサー等の切削手段で形成された場合などのように斜面表面の微細な凹凸によって表面が粗い場合であっても、上部クラッド材や接着剤で被覆することによって微細な凹凸の段差が平坦化されるため、ミラー部の表面粗さに影響を及ぼすことがない。
【0058】
<本発明法に用いられる各種材料の好適例>
[第1の型、第1Aの型、第1Bの型、及び第2の型]
第1の型、第1Aの型、第1Bの型、及び第2の型の素材は特に限定されず、リン青銅等の合金やニッケル等他の金属からなる金型であってもよいし、シリコーン材料やウレタン樹脂等の軟らかい材料からなる型であってもよい。クラッド材やコア材との離型性の観点から特にシリコーン材料が好ましい。シリコーン材料のうち、硬化後にシリコーン系ゴムまたはシリコーン系樹脂となる硬化性シリコーン系ゴムオリゴマーもしくはモノマー、または、硬化性シリコーン系樹脂オリゴマーもしくはモノマー等の硬化性シリコーン材料が好適であり、硬化性ポリシロキサンが特に好適である。
【0059】
硬化性シリコーン材料としては、通常、液状シリコーンと称されるものが用いられるが、形成される下部クラッド層からの剥離性に優れ、かつ機械的強度に優れることから、硬化剤と組み合わせて用いる二液混合型が好適である。また、低粘度の硬化性シリコーン材料を用いれば、型の作製時に巻き込む泡の除去等の加工性に優れると共に、転写パターンの精密な型取りをすることができる。一方、硬化性ポリシロキサンは、一液硬化型または二液硬化型のいずれでもよく、熱硬化型または室温硬化型のいずれでもよい。
【0060】
硬化性シリコーン材料の具体例としては、例えば、アルキルシロキサン、アルケニルシロキサン、アルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン等を含有するものが挙げられる。特に、アルキルアルケニルシロキサンおよびポリアルキル水素シロキサンの二成分混合系であり、低粘度で室温硬化型のものが剥離性および硬化性の観点から好適である。
【0061】
第1の型、第1Aの型、第1Bの型、及び第2の型から下部クラッド層やコアが容易に離型するように、剥離剤を塗布して使用することが望ましい。剥離剤としては、従来公知の剥離剤を用いればよく、特に限定されるものではない。
【0062】
[第2の型]
さらに上記素材に加えて第2の型では、石英、パイレックス(登録商標)等のガラス材料を使用することができるが、上記金属膜を第2の型に付着させる手段に応じて好適な材料を選択することが望ましい。例えば第2の型に図18に示すような吸着機構を設ける場合は、加工性の観点からリン青銅等の合金やニッケル等他の金属やガラス材料が好適である。
【0063】
また金属膜を第2の型に自着させる場合、疑似接着性を有するシリコーン材料や樹脂材料が好適であるが、特に硬質の材料が望ましい。軟質の材料で第2の型を形成すると、V溝に当接した際に、第2の型が変形してコア側斜面の傾斜角度が変動する可能性があるからである。
【0064】
更に金属箔をUV剥離型粘着剤を介して第2の型に貼着させる場合、UV透過性を有するガラス材料、透明樹脂材料等が好適である。また金属箔を熱剥離型粘着剤を介して第2の型に貼着させる場合、耐熱性を有する金属材料、ガラス材料等が好適である。
【0065】
[基板]
基板は前記した図例では省略したが、光導波路においては必須構成要素である。基板としては、無機材料、有機材料を問わず、公知の材料はいずれも使用することができるが、例えば、シリコーン基板;石英、パイレックス(登録商標)等のガラス基板;Al、Cu等の金属基板;金属酸化物基板;ポリイミド、ポリエーテルケトン等の樹脂基板;有機無機ハイブリッド基板等を使用することが好ましい。フレキシブル光導波路を作製する場合は、樹脂基板が好ましく、樹脂フィルムからなるフィルム基板がより好ましい。
【0066】
フィルム基板としては、従来公知の光導波路材料から構成される樹脂フィルムであればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、オキセタン系樹脂、シラン系樹脂、シリコーン系樹脂等から構成される樹脂フィルムが挙げられる。これらの樹脂フィルムのうち、光電気混載基板の製造を考慮すると、耐熱性(特に、半田付けを想定した耐熱性、具体的には200〜250℃の耐熱性)の観点からは、ポリイミド系樹脂から構成されるフィルム、すなわちポリイミドフィルム(ハロゲン化ポリイミドフィルムを含む)が好ましい。また、フィルム基板として、ポリイミドフィルムを用いる場合には、市販品を利用してもよい。ポリイミドフィルムの市販品としては、例えば、東レ・デュポン株式会社の商品名「カプトン(登録商標)」シリーズが挙げられる。
【0067】
基板の厚さは、光導波路の用途や、光電気混載フレキシブル基板を製造した場合に使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。基板の厚さが小さすぎると、基板の強度が低下したり、作成時に皺や折れが生じることがある。逆に、基板の厚さが大きすぎると、光電気混載基板を製造した場合に、基板の透明性が低下することがある。
【0068】
[下部クラッド層]
下部クラッド層を構成するクラッド材料は、従来公知の光導波路材料であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、紫外線(または光)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、紫外線(または光)硬化性樹脂が好適である。硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、オキセタン系樹脂、シラン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、これらの樹脂は、溶剤に溶解した溶液型であっても溶剤を含まない無溶剤型であってもよいが、無溶剤型がより好ましい。さらに、これらの樹脂を硬化性樹脂として用いる場合には、硬化剤や架橋剤等を併用することができる。
【0069】
上記硬化性樹脂のうちでは、エポキシ系樹脂が好適であり、UV硬化型エポキシ樹脂がより好適である。UV硬化型エポキシ樹脂としては、ポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物を含有するUV硬化型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。可撓性を有するフレキシブル光導波路を得たい場合には、ポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物を含有するUV硬化型エポキシ樹脂が特に好適であり、光導波路に可撓性を持たせる必要がない場合には、ビスフェノール型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂等が好適である。
【0070】
ポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテルが特に好適である。ポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテルの市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「jER(登録商標)YL7410」、「jER(登録商標)YL7217」等が挙げられる。
【0071】
上記ポリグリシジル化合物を含むUV硬化型エポキシ樹脂を用いる場合には、屈折率や粘度調整のために、必要に応じて、ビスフェノール型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂やオキセタン等の反応性希釈剤を配合してもよい。ただし、より低粘度のエポキシ樹脂が取り扱い性に優れるので、好適である。
【0072】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−アルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、これらのハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、フッ素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、塩素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらのビスフェノール型エポキシ樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのビスフェノール型エポキシ樹脂のうち、入手の容易さや取り扱い性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適である。これらのビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「jER(登録商標)828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER(登録商標)5050」(臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0073】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の配合量は、UV硬化型エポキシ樹脂から得られるエポキシ系樹脂フィルムが所望の屈折率を有するように適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、開始剤を除いたUV硬化型エポキシ樹脂組成物の合計を100質量%とした場合、上述のポリグリシジル化合物と、ビスフェノール型エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂との配合量は、ポリグリシジル化合物0質量%〜70質量%(より好ましくは5質量%〜60質量%)、ビスフェノール型エポキシ樹脂と脂環式エポキシ樹脂との合計を30質量%〜100質量%(より好ましくは40質量%〜95質量%)とするのが好ましい。ポリグリシジル化合物の配合量が70質量%を超えると、フィルムの硬化速度が遅くなったり、得られたフィルムの強度が不足することがある。また、ポリグリシジル化合物の添加量が5質量%以上であれば、強度と可撓性とを備えたフィルムを得ることができる。
【0074】
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびそのε−カプロラクトン変性体(ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド(登録商標)2081」)、1,2−エポキシ−ビニルシクロヘキセン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、ジシクロペンタジエンジエポキシド、オリゴマー型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、商品名「エポリード(登録商標)GT300」、「エポリード(登録商標)GT400」、「EHPE(登録商標)3150」)等のオレフィンを酸化することにより得られるエポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂、水添フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、水添ナフタレン型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシを直接水添したエポキシ樹脂または多価フェノール類を水添した後、エピクロルヒドリンと反応させることにより得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの脂環式エポキシ樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの脂環式エポキシ樹脂のうち、入手の容易さや低粘度で作業性に優れることから、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびそのε−カプロラクトン変性体、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適である。
【0075】
脂環式エポキシ樹脂の配合量は、特に限定されるものではなく、UV硬化型エポキシ樹脂が所望の屈折率を有するように適宜調節すればよい。
【0076】
UV硬化型エポキシ樹脂を光硬化させるためには、光カチオン重合開始剤を配合することが好ましい。
【0077】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、金属フルオロホウ素錯塩、三フッ化ホウ素錯化合物、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、VIa族元素の芳香族オニウム塩、Va族元素の芳香族オニウム塩IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6−陰イオン(ここで、Mは、リン、アンチモンおよびヒ素から選択される)の形のVIb元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば、リン酸塩、ヒ酸塩、アンチモン酸塩等)、鉄化合物の混合配位子金属塩、シラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光カチオン重合開始剤のうち、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族ヨードニウム錯塩または芳香族スルホニウム錯塩、II族、V族およびVI族元素の芳香族オニウム塩が好適である。これらの塩のいくつかは、例えば、商品名「AT−6976」、「AT−6992」(以上、Aceto Chemical社製)、商品名「FX−512」(スリーエム・カンパニー製)、商品名「UVR−6990」、「UVR−6974」(以上、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製)、商品名「UVE−1014」、「UVE−1016」(以上、ゼネラル・エレクトリック・カンパニー製)、商品名「KI−85」(デグサ・アクチエンゲゼルシャフト製)、商品名「SP−150」、「SP−170」(以上、株式会社ADEKA製)、商品名「サンエイド(登録商標)SI−60L」、「サンエイド(登録商標)SI−80L」、「サンエイド(登録商標)SI−100L」、「サンエイド(登録商標)SI−110L」、「サンエイド(登録商標)SI−180L」(以上、三新化学工業株式会社製)等の市販品を入手することができる。
【0078】
また、これらの光カチオン重合開始剤のうち、取り扱い性に優れ、潜在性と硬化性とのバランスに優れることから、オニウム塩が好適であり、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩が特に好適である。
【0079】
光カチオン重合開始剤の配合量は、硬化するエポキシ樹脂成分の配合量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0080】
UV硬化型エポキシ樹脂は、原料であるポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物、必要に応じて配合されるビスフェノール型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂等の分子量を適宜選択することにより、溶剤を用いることなく、粘度を、温度23℃で、10mPa・s以上、100,000mPa・s以下の範囲内に調整することができる。
【0081】
UV硬化型エポキシ樹脂は、常温で液状であるので、基板上に、適宜、下部クラッド層用の容器や型を載置し、その中に間隙に適量注入して充填した後、あるいは、基板上に適量滴下した後、第1の型を載置した後、例えば、照射積算光量(露光エネルギー)が0.01J/cm2〜10J/cm2程度の紫外線を照射して硬化させることにより、下部クラッド層を形成することができる。
【0082】
下部クラッド層の厚さは、光導波路の用途や使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、コア溝の下側を除いて、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。下部クラッド層の厚さが小さすぎると、充分な厚さのコアを形成できないことがある。逆に、下部クラッド層の厚さが大きすぎると、光電気混載板を製造した場合に、下部クラッド層の透明性が低下することがある。
【0083】
下部クラッド層の屈折率は、コアの屈折率より低い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、クラッド材料の種類や組成を選択することにより、任意に調節することができる。
【0084】
[コア]
コアを形成するためのコア材料は、上記下部クラッド層に用い得る材料がそのまま例示できる。ただし、下部クラッド層や上部クラッド層とコアとで、屈折率が異なるように材料を選択する必要がある。コアの厚さ(深さ)は、光導波路の用途や使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。コアの厚さが小さすぎると、コアを伝播する光の量が低下することがある。逆に、コアの厚さが大きすぎると、下部クラッド層の厚さを大きくする必要があり、コアの両側に下部クラッド層の不必要な部分が多くなり、製造コストが上昇することがある。また、光導波路を構成する下部クラッド層やコアの厚さが大きくなるので、光導波路フィルムの厚さが大きくなることがある。
【0085】
コアは、長手方向に対して垂直な断面の形状が矩形であることが好ましく、正方形であることが最も好ましい。コアのアスペクト比(幅/厚さ)は、好ましくは1/2以上、より好ましくは2/3以上、さらに好ましくは5/6以上であり、また、好ましくは2/1以下、より好ましくは3/2以下、さらに好ましくは6/5以下である。最も好ましくは1/1である。コアのアスペクト比が小さすぎるか、あるいは、大きすぎると、コアの長手方向に対して垂直な断面の形状が扁平になるので、コアに光が入射したり、コアから光が出射したりする際に光損失が生じることがある。
【0086】
コアの屈折率は、下部クラッド層および上部クラッド層の屈折率より高い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内であるのが好ましく、コア材料の種類や組成を選択することにより、任意に調節することができる。
【0087】
[上部クラッド層]
上部クラッド層を形成するための材料は、上記下部クラッド層に用い得る材料がそのまま例示できる。ただし、コアとは屈折率が異なるように材料を選択する必要がある。
【0088】
コア上端面から上部クラッド層上端面までの上部クラッド層の厚さは、光導波路の用途や使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上部クラッド層の厚さが小さすぎると、コアにおける光の閉じ込め効果が弱くなって、上部クラッド層から光が抜け、光損失が増大するおそれがある。逆に、上部クラッド層の厚さが大きすぎると、不必要な部分が多くなり、製造コストが増大することがある。
【0089】
上部クラッド層の屈折率は、コアの屈折率より小さい限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内であるのが好ましく、クラッド材料の種類や組成を選択することにより、任意に調節することができる。
【0090】
[第2の型用粘着剤ないし接着剤]
金属膜(金属箔)を粘着剤ないし接着剤(粘着剤で代表させる)を介して第2の型に貼着させる場合に用いられる粘着剤や接着剤としては、第2の型から金属膜を容易に剥離可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、紫外線(または光)剥離型粘着剤、熱剥離型粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤を任意に選択して使用することができる。使用量についても特に限定されず、金属箔を第2の型に貼着させるのに必要な適量を用いればよい。
【0091】
[V溝の斜めミラー部用接着剤]
斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の凸部が有する金属膜の表面に付着させる接着剤としては、透光性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは熱硬化型エポキシ樹脂である。接着剤層の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは1μm以上であり、また好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。接着剤層の厚さが小さすぎると金属膜を十分に貼着できず、金属膜が光導波路から剥離するおそれがある。逆に、接着剤層の厚さが大きすぎると、光の透過性が悪化したり、光の反射位置がずれて光電気混載基板の性能が低下することがある。
【0092】
本発明では、上記したように、斜めミラー部用のV溝のコア側斜面に金属膜を形成するために、上記構成の第2の型を採用したところに特徴がある。このため、これらの特徴以外の、電気回路等の材料や構造については特に限定されず、従来公知の光電気混載基板の材料や構造をいずれも採用することができる。また、フィルム基板を用いたフレキシブル光電気混載基板とすることも可能である。さらに、光電気混載基板の製造方法についても特に限定されず、公知の方法が採用可能である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0094】
まず、実施例および比較例においてクラッド材料およびコア材料として用いたUV硬化型エポキシ樹脂の調製方法について説明する。
【0095】
<UV硬化型エポキシ樹脂(1)の調製>
ポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「jER(登録商標)YL7410」;数平均分子量700〜800)48質量部、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製;商品名「セロキサイド(登録商標)2081」)30質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「jER(登録商標)828EL」)18質量部、光重合開始剤であるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩(Aceto Chemical社製;商品名「AT−6992」)4質量部を、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)」)を用いて混合し、クラッド材料として用いるUV硬化型エポキシ樹脂(1)を調製した。
【0096】
<UV硬化型エポキシ樹脂(2)の調製>
上記で用いたポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル(「jER(登録商標)YL7410」)9質量部、上記で用いたビスフェノールA型エポキシ樹脂(「jER(登録商標)828EL」)43.5質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「jER(登録商標)5050」)43.5質量部、上記で用いた光重合開始剤(「AT−6992」)4質量部を、上記で用いた自転・公転ミキサーを用いて混合し、コア材料として用いるUV硬化型エポキシ樹脂(2)を調製した。
【0097】
実施例1
まず、本発明の第1Aの型1A(図11)と第1Bの型11A(図7(A))を作製するために、2個の雌型を作製した。リン青銅板の表面を切削し、コア溝に対応する幅50μm、深さ50μm、長さ50mmのコア溝対応凹部と、このコア溝対応凹部に当接し、コア溝対応凹部に直交する方向へ延びる深さ75μmのV溝対応凹部(頂角=90°)とを形成し、図13に示した下部クラッド層3と同一形状のリン青銅製の型Aを作製した。この型Aは第1Aの型1A用の型である。また、別のリン青銅板の表面を切削し、深さ75μmのV溝対応凹部(頂角=90°)のみを形成した型Bを作製した。この型Bは第1Bの型11A用の型である。なお、第1Aの型1AのV溝対応凸部10Aの表面粗さRaは400Åであった。
【0098】
ガラス基板(厚さ2mm)上に、間隙を空けて、上記リン青銅製の型Aを上下反転させて載置し、ガラス基板とリン青銅製の型との間隙に、気泡を挟み込むことなく、二液硬化型シリコーン系ゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SILPOT 184」)を注入して充填し、室温で24時間静置して硬化させて、シリコーン系ゴム製の第1Aの型1Aを作製した。また、上記同様にして、シリコーン系ゴム製の第1Bの型11Aを作製した。
【0099】
本発明の第2の型(図18)を作成するために、石英基板の表面を切削し凸部に対応する凸部の高さ(頂角から12までの高さ)100μm、幅10mmの斜めミラーを形成し、図に示すとおり吸着用のスリット70(幅0.5mm、深さ0.5mm)を幅方向のピッチ2.5mmで4本とそれに垂直な方向で且つ凸部の両側に2本を形成し、吸気口71を2箇所形成し石英製の第2の型を作成した。
【0100】
フィルム基板としてのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名「カプトン(登録商標)Hタイプ」;厚さ25μm)上に、クラッド材料として、UV硬化型エポキシ樹脂(1)を適量滴下した後、平行度を持たせたステージ上で、図12に示したように、第1Aの型1Aを硬化前の下部クラッド層3Aに押し当てた。次いで、第1Aの型1A側からUV照射を行ってクラッド材料を硬化させた後、第1Aの型1Aを引き剥がした。フィルム基板上に、V溝7とコア溝2Bとを有する硬化した下部クラッド層3が形成された。UV照射は、高圧水銀ランプを光源とする露光機(ミカサ株式会社製、商品名「MA−60F」)を用いて、照度10mW/cm2で15分間、すなわち露光エネルギー9J/cm2の条件で行った。
【0101】
続いて、下部クラッド層3のV溝7とコア溝2Bとに、UV硬化型エポキシ樹脂(2)を適量滴下し、150℃のホットプレート上で過熱しながら毛細管現象を利用してV溝7およびコア溝2B全体にコア材料を充填した。図14に示したように、下部クラッド層のV溝にコア材料17Aが充填され、コア溝にコア材料17が充填された状態となった。次に、第1Bの型11AのV溝対応凸部10Aが下部クラッド層3のV溝7に当接するように位置合わせを行って、第1Bの型11AのV溝対応凸部10Aの頂点が下部クラッド層3のV溝7の頂点(最深部)に接するように、第1Bの型11Aを下部クラッド層3に押し当て、V溝7の中のコア材料17AをV溝7の中から外部へ押し出し、排除した。続いて第1Bの型11A側から上記と同条件でUV照射を行って、コア溝2B内部のコア材料17を硬化させて、コア2を形成した。このコア2は、片端面に傾斜角45°の斜面を有している。
【0102】
次に、図18に示す吸引機構を有するガラス製の第2の型12のV溝対応凸部13に金属膜(金箔:厚さ1μm、サイズ2×10mm)を載置した後、吸気口71から常時空気を吸引して金箔とスリットで形成される空間を陰圧にして金属箔を凸部13に吸着させた。
【0103】
続いて、図16に示す工程により、金属膜を形成した。すなわち、上記で得られたコアと下部クラッド層の積層体の上、及びV溝の斜面に、上部クラッド材料5AとしてUV硬化型エポキシ樹脂(1)を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布した。次にミラー部用V溝7のコア側斜面7Aに形成したUV硬化型エポキシ樹脂(1)に、第2の型12の凸部13の金属膜が当接するように押し当てた。この際、位置合わせを行って、第2の型12のV溝対応凸部13の頂点が下部クラッド層3のV溝7の頂点(最深部)に接するように、第2の型12を下部クラッド層3に押し当てた後、吸引部からの吸引を停止し、V溝7のコア側斜面7Aの上部クラッド材料5A表面に金箔を転写した。続いて第2の型12側から上記と同条件でUV照射を行って、上部クラッド材料5Aを硬化させて上部クラッド層5を形成すると共に、V溝のコア側斜面に金属膜14のミラー部を形成した。
【0104】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0105】
45°ミラー部が形成されているコアの端部側で、かつ、ポリイミドフィルム基板の光導波路積層面と反対面側に、フィルム基板面に鉛直な方向に光量計を接続した光ファイバーを接触させ、ミラー部が形成されていないコア端部から波長850nmの光を入れて、コア内を伝播させ、ミラー部で反射された光の強さを光量計で測定した。導波損失は1.2dBであった。
【0106】
V溝対応凸部を有する第1Aの型と第1Bの型を用いてV溝を形成したのでV溝の表面が均一だった上に、第2の型を用いることで簡易にミラー部を形成することができた。金箔を用いてミラー部を形成したのでミラー部の表面も均一となり、導波損失を非常に小さくすることができた。
【0107】
実施例2
本発明の第2の型(図9(A))を作成するためにリン青銅板の表面を切削し、凸部に対応する凸部の高さ(頂角から12までの高さ)100μm、幅10mmの斜めミラー対応凹部を形成し、V溝形状と同一形状のリン青銅製の型Bを作製した。この型Bは第2の型用の型である。ガラス基板(厚さ2mm)上に、間隙を空けて、上記リン青銅製の型Bを上下反転させて載置し、ガラス基板とリン青銅製の型との間隙に、気泡を挟み込むことなく、二液硬化型シリコーン系ゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SILPOT 184」)を注入して充填し、室温で24時間静置して硬化させて、シリコーン系ゴム製の第2の型を作製した。
【0108】
吸引機構を有するガラス製の第2の型に代えて、ゴム製(材料二液硬化型シリコーン系ゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SILPOT 184」)の第2の型(図9(A)参照)を用いた以外は実施例1と同様にして、長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、1.4dBであった。
【0109】
実施例2では、ゴム製の第2の型を用いたが、金箔(Au)は第2の型の凸部に疑似接着させることができた。また第2の型12を下部クラッド層3に押し当てることによって、V溝のコア側斜面の上部クラッド材料表面に金箔が転写された。第2の型12側から上記と同条件でUV照射を行って、上部クラッド材を硬化させて上部クラッド層を形成すると共に、V溝のコア側斜面に金箔のミラー部を形成することができた。
【0110】
実施例3
コア溝対応凸部を有し、V溝対応凸部を有しない第1の型1を作製し、この第1の型を用いた以外は実施例1と同様にして、コア溝を有する下部クラッド層の形成、コアの形成、および上部クラッド層の形成を行った(図2〜図3の工程参照)。ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])に、頂角90°となるV型形状のダイヤモンドブレード(番手#2000)をセットし、スピンドル回転数30000rpm、カット速度0.3mm/sで、コアに直交する方向に、上部クラッド層表面から深さ95μmの位置にブレードの頂点が来るようにして、コアの一方端にV溝を形成した(図4(A)参照)。続いてこの積層体6のコア2と下部クラッド層3の上に、上部クラッド材料としてUV硬化型エポキシ樹脂(1)を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布し、上記と同条件でUV照射を行って上部クラッド層5を硬化させた。
【0111】
次に、実施例1で用いた吸引機構を有するガラス製の第2の型12を用いると共に(図18参照)、実施例1と同様にして金箔を凸部13に吸着させた。
【0112】
続いて、V溝7の斜面7Aに、熱硬化型エポキシ接着剤を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布した。次にミラー部用V溝7のコア側斜面7Aに形成した接着剤層に、第2の型12の凸部13の金箔14を押し当てた(図15と同様の工程であるが、図示例は金属膜側に接着剤を積層させている点で、斜面7Aに接着剤を塗布している本実施例とは異なる)。この際、実施例1と同様に位置合わせを行うと共に、第2の型12をV溝に押し当てた後、吸引部からの吸引を停止し、V溝7のコア側斜面7Aの接着剤層15の表面に金箔14を転写した。続いて接着剤を硬化(150℃・30分)させてV溝7のコア側斜面7Aに金箔のミラー部を形成した。
【0113】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0114】
45°ミラー部が形成されているコアの端部側で、かつ、ポリイミドフィルム基板の光導波路積層面と反対面側に、フィルム基板面に鉛直な方向に光量計を接続した光ファイバーを接触させ、ミラー部が形成されていないコア端部から波長850nmの光を入れて、コア内を伝播させ、ミラー部で反射された光の強さを光量計で測定した。導波損失は1.2dBであった。
【0115】
比較例1
実施例1と同様にしてコアと下部クラッド層の積層体を作成した。次に、合成した金ナノインクを滴下し、毛細管現象を利用して、V溝7全体に充填した。70℃のホットプレート上で10分間加熱した後、150℃の恒温槽で30分間加熱して、V溝7の両斜面に金塗膜(斜めミラー部)を形成した。
【0116】
続いて、上記で得られた斜めミラー部を備えたコアと下部クラッド層の積層体の上に、UV硬化型エポキシ樹脂(1)を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布し、上記と同条件でUV照射を行って、上部クラッド層を硬化させた。
【0117】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0118】
45°ミラー部が形成されているコアの端部側で、かつ、ポリイミドフィルム基板の光導波路積層面と反対面側に、フィルム基板面に鉛直な方向に光量計を接続した光ファイバーを接触させ、ミラー部が形成されていないコア端部から波長850nmの光を入れて、コア内を伝播させ、ミラー部で反射された光の強さを光量計で測定した。導波損失は1.5dBであった。
【0119】
比較例2
金ナノコロイド液を用いずに、V溝以外の部分をマスキングして、蒸着法で厚さ100nmの金塗膜を形成し、マスキングを外してミラー部を形成した以外は、比較例1と同様にして、長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、1.2dBであった。
【0120】
比較例3
実施例3と同様にして、コア溝を有する下部クラッド層の形成、コアの形成、および上部クラッド層の形成を行った後、ダイシングソーでコアの一方端にV溝を形成した。次に、上記比較例1と同じ金ナノインク液を滴下し、毛細管現象を利用して、V溝全体に充填した。70℃のホットプレート上で10分間加熱した後、150℃の恒温槽で30分間加熱して、V溝32の両斜面に金塗膜(斜めミラー部)を形成した。
【0121】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0122】
実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、3.5dBであった。ダイシングソーで形成したV溝の表面が、目視でも非常に荒れていることがわかった。このため、導波損失が大きくなったと考えられる。
【0123】
比較例4
金ナノコロイド液を用いずに、V溝以外の部分をマスキングして、蒸着法で厚さ100nmの金塗膜を形成し、マスキングを外してミラー部を形成した以外は、比較例3と同様にして、長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、4.5dBであった。ダイシングソーで形成したV溝の表面が非常に荒れていた上に、蒸着膜はエポキシ樹脂に対する接着性が劣っており膜の一部剥離が見られたことが、導波損失増大の原因と考えられる。ミラー部形成後にさらにエポキシ樹脂等で封止をすれば、もう少し導波損失は抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
光導波路の基板の裏面側に電気配線を設ければ、光電気混載基板として使用することができ、携帯電話、パソコン、デジタルカメラ等、現在フレキシブルプリント基板が使用されている電子機器分野や光学関連分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 第1の型
1’ 第1の型
1A 第1Aの型
1W 垂直壁
2 コア
2A コア溝対応凸部
2B コア溝
3 (硬化後の)下部クラッド層
3A (硬化前の)下部クラッド層
4 基板
5 上部クラッド層
5A 上部クラッド材料
6 積層体(下部クラッド層、コア、上部クラッド層)
7 ミラー部用V溝
7A ミラー部用斜面
8 垂直端面
9 ミラー部材料
10A、10B 斜めミラー部対応凸部
11A、11B 第1Bの型
12 第2の型
13 斜めミラー部対応凸部
14 金属膜
15 接着剤
16 斜めミラー部
17、17A コア材料
70 スリット
71 吸気口
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜を用いた光導波路のミラー部の製造方法、及び金属膜でミラー部が形成されている光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの実用化に伴い、その基本構成としての光導波路に関する技術が注目を集めている。光導波路とは、代表的には、屈折率が高いコアを屈折率が低いクラッドが取り囲んだ埋め込み型構造が知られている。光導波路のコアに入射した光は、コアとクラッドとの界面で反射しながらコア中を伝播する。
【0003】
このような光導波路と電子回路とを1枚の基板上に混載した光電気混載基板においては、裏面に電気配線を有する基板の反対面上に光導波路が形成され、光導波路の両端部に45°ミラーを形成して、一方の45°ミラーの位置における基板の電気配線側に実装されている発光素子から発光された光を、45°ミラー部で90°光路を変更させて光導波路のコアの中を伝播させ、他方の45°ミラーの位置における基板の電気配線側に実装された受光素子により受光するように構成されている。例えば、特許文献1には、上記説明とは上下が逆だが、発光素子からの出射光をミラーで光路変更して、光導波路のコア内を伝搬させる光電子回路基板(光電気混載基板)が示されている。
【0004】
上記の45°ミラー部を形成するには、光導波路の下部クラッド、コア、上部クラッドを形成した後、45°ミラー部のための断面V字状の溝を、三角形状のブレードを用いてダイシングソー(ダイサー)によりV溝加工を行い、このV溝表面に真空蒸着等の方法で金属膜を形成する方法が、一般的であり、特許文献1においても、ダイサーで切込みを入れてミラー部用溝を形成している。
【0005】
しかしながら、上記従来方法では、ブレードの加工位置および加工深さを精密に制御する必要がある上に、また、クラッドの厚さのバラツキがミラー位置のバラツキに影響するため、位置精度の制御が困難であるという問題があった。さらに、ブレードでの切削では、コアやクラッドが比較的軟らかい材料の場合は、加工面が荒れてしまい、光の反射効率が低下するという問題があった。また、V溝に真空蒸着で金属膜を形成するために加熱が必要であるが、その際の輻射熱によって、クラッド材等を構成する樹脂が軟化・溶融するという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2には、コアパターンと斜めミラー部を同時形成することのできる金型が記載されている。しかしながら、転写後の斜めミラー部のみに金属膜を形成する技術が不明であり、通常は、ミラー部以外をマスクする工程が必要となるためと、光導波路形成後に電気配線を有する基板を精密な位置合わせで貼り合わせる必要があるため、工程が煩雑になると推測される。また、図面を参照しても、コアパターン14と斜めミラー部16の位置関係がおかしく、両者の位置関係を理解することができない。
【0007】
本発明者は上記問題を解決する技術として、斜めミラー部用V溝の斜面に金属コロイド液を塗布して熱処理することにより、金属膜を形成する技術を既に提案している(特許文献3)。しかしながら、金属コロイド液は高価であるため製造コストが高くなるという問題があった。また、ダイサーなどで切削加工してV溝を形成すると、表面性状が粗いために金属膜を成膜しても、加工面の平坦性が悪い場合があり、その場合は表面を平坦にするための工程が別途必要となり、製造コストが高くなるなど、コスト削減の観点からは改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−250007号公報
【特許文献2】特開2002−311273号公報
【特許文献3】特開2011−13362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、簡単に上記問題を解決し得る光導波路のミラー部を形成できる製造方法を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成し得た本発明は、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、コア溝に対応する凸部を有する第1の型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝を形成する工程;上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に滴下して硬化させ、下部クラッド層、コア、上部クラッド層の積層体を形成する工程;上記積層体の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用V溝を形成する工程;斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有する第2の型の凸部に金属膜を付着させる工程;斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の金属膜表面に、接着剤を付着させる工程;金属膜が付着した第2の型をV溝のコア側斜面に押し当てて、V溝の斜面に接着剤を介して金属膜を貼付してミラー部を形成する工程を含むことに要旨を有する光導波路の製造方法である。
【0011】
上記本発明の好ましい実施形態として、前記コア溝を形成する工程は、コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程であり、前記コア材料を硬化させる工程は、上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程であり、前記積層体を形成する工程と、V溝を形成する工程は、コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に塗布した後、第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、下部クラッド層のV溝に第1Bの型の凸部が当接するように押し当ててから、上部クラッド材料を硬化させて、前記積層体を形成すると共に、V溝を形成する工程であることも望ましい光導波路の製造方法である。
【0012】
また本発明は、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程;上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料を斜めミラー部用V溝の斜面、コア、及び下部クラッド層の上に塗布する工程;斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有し、この凸部に金属膜を有する第2の型を、V溝の斜面にこの凸部が当接するように押し当てて、V溝の上部クラッド材料表面に金属膜を転写してミラー部を形成する工程;クラッド材料を硬化させた後、第2の型を離型する工程を含むことに要旨を有する光導波路の製造方法である。
【0013】
上記本発明の好ましい実施態様として、前記コア材料を硬化させる工程は、上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝および斜めミラー部用V溝にコア材料を注入して充填する工程と、第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、コア溝と斜めミラー部用V溝にコア材料が充填された下部クラッド層のV溝に第1Aの型の凸部を押し当てて、V溝からコア材料を除去した後、コア溝中のコア材料を硬化させる工程であることも望ましい光導波路の製造方法である。
【0014】
本発明では前記金属膜が、金、銀、銅、アルミニウム、及びこれらの1種以上を含む合金よりなる群から選択される少なくとも一種の金属箔であることも好ましい。
【0015】
また本発明の光導波路は、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路であって、前記ミラー部は金属箔で形成されていることに要旨を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法では、金属膜を用いて斜めミラー部用V溝に簡単にミラー部を形成することができるので、真空蒸着法等に比べてマスキングや真空装置が必要でなく、また安価な原料を使用できるため、簡単かつ安価に斜めミラー部を有する光導波路を製造することができる。
【0017】
また金属箔をクラッド材や接着剤等を介して斜めミラー部に形成すると、接着剤等によって表面が平坦化されるため、ダイサーなどによって斜めミラー部を形成した際に問題となる加工面が荒れて光の反射率が低下するという問題も解消することができ、製造プロセスの簡略化、生産速度の向上、および歩止まりの向上を図ることができ、結果として、光導波路のコストを低下させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の型の斜視説明図である。
【図2】第1の型の使用方法を説明する図である。
【図3】下部クラッド層の斜視説明図である。
【図4】V溝を形成した積層体の一例を説明する図である。
【図5】第1の型の他の例の斜視説明図である。
【図6】V溝を上部クラッド材料で形成する方法の一例を説明する図である。
【図7】図7(A)、(B)は、第1Bの型の斜視説明図である。
【図8】V溝を形成した積層体の一例を説明する図である。
【図9】図9(A)、(B)は、第2の型の斜視説明図である。
【図10】第2の型の使用方法の一例を説明する図である。
【図11】第1Aの型の斜視説明図である。
【図12】第1Aの型の使用方法を説明する図である。
【図13】下部クラッド層の斜視説明図である。
【図14】第1Bの型の使用方法を説明する図である。
【図15】第2の型の使用方法の一例を説明する図である。
【図16】第2の型の使用方法の他の一例を説明する図である。
【図17】第2の型の説明図である。
【図18】吸着機構を有する第2の型の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、斜めミラー部用のV溝のコア側斜面に金属膜のミラー部を形成するために、第2の型を採用したところに特徴がある。このため、光導波路を製造するための他の工程については特に限定されない。以下、代表的な斜めミラー部が形成された光導波路の製造方法を説明するが、本発明の光導波路の製造方法は下記例に限定されず、適宜変更することができる。
【0020】
<本発明の光導波路の製造方法1>
本発明の第2の型を用いて、斜めミラー部用のV溝のコア側斜面に金属膜が形成された光導波路の製造方法の一例について説明する。
【0021】
図1に示すように、コア溝に対応する凸部2Aを有している第1の型1を用いて、下部クラッド層にコア溝を形成する。コア溝対応凸部2Aは、図例では1本だけだが、複数本、並設して形成しても構わない(他の製造例も同様である)。図2には、図1の第1の型1を上下に反転させた状態のA−A線断面を見た図を示している。硬化前の下部クラッド層3Aを公知の方法で基板4上に作製し、図2に示したように、第1の型1を図1とは上下反転させて、下部クラッド層3Aに押し当てる。第1の型1を押圧したまま下部クラッド層3Aを硬化させることにより、第1の型1を離型した後には、図3に斜視図で示したように、コア溝2Bが形成された硬化後の下部クラッド層3が得られる。
【0022】
次に、コア溝2Bにコア材料を公知の方法で充填する。コア溝2Bは幅と深さが大体数十μm程度であって細いので、注入したコア材料は、毛細管現象でコア溝2Bの長さ方向にコア材料が吸い込まれて充填される。
【0023】
このままコア材料を硬化させることにより、下部クラッド層3の上部のコア溝2B内に硬化したコア2が形成される。コア材料を硬化させた後、コア2、及び下部クラッド層3の上に、上部クラッド材料を公知の方法で滴下する。滴下した上部クラッド材料を公知の方法で硬化させることにより、下部クラッド層3の上にコア2を被覆した上部クラッド層5が形成された積層体6が得られる。
【0024】
この積層体6の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用のV溝を形成する。V溝の形成方法は特に限定されず、例えばV型形状のブレードを有するダイシングソーやレーザーなどの切削手段を用いてV溝7を形成することができる(図4(A)はダイシングソーで形成した頂角が90°のV溝7の一例であり、図4(B)はレーザーで形成した頂角が135°のブロードなV溝7の一例である)。この際、V溝の角度は特に限定されず、コア側に形成されている斜めミラー部の斜面7Aがコア長手方向に対して45°、すなわちコアからの光路をミラー部で90°転換して基板側に設けた図示しない光受送信部に入射できるように形成すればよい(他の製造例も同様である)。
【0025】
斜めミラー部の他の製造方法としては、例えば図5に示すような端面に垂直壁1W(垂直壁1Wはコア溝に対応する凸部2Aに対して直行し、且つ垂直方向に延びている)を有する第1の型1’を用いて上記した図2、図3に示す工程を経て形成された積層体6を用いることも望ましい。この第1の型1’で形成された積層体6は、積層体6(コア2)の長手方向に垂直な端面8を有している(図6参照)。このような積層体6に対しては、図6に示すように例えば上部クラッド材料、又はコア材料からなるミラー部材料9を積層体6の垂直な端面8に充填し、斜めミラー部の形状に対応した型(斜めミラー部用斜面に対応する凸部斜面の基板側の角は90°〜135°であればよく、例えば図7(A)に示すような頂角が90°であって、斜めミラー部の斜面に対応したV溝形成用凸部10Aを有する第1Bの型11A、あるいは図7(B)に示すような斜めミラー部用斜面に対応する頂角が135°であって、斜めミラー部の斜面に対応した凸部10Bを有する第1Bの型11B)をミラー部材料9に押し当ててミラー部用斜面を形成すると共に、ミラー部材料9を硬化させることにより、斜めミラー部に対応する斜面(45°)を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された積層体が得られる(例えば(図7(A)で形成した積層体として図8(A)、図7(B)で形成した積層体として図8(B)参照)。
【0026】
図10は、図9(A)、図9(B)に例示される第2の型12の使用方法の一例を説明する図(図9(B)のB−B断面図相当)であって、斜めミラー部を形成する概略工程を示している。図10では、上記図8(B)のブロードなV溝(斜面7Aと基板4で形成される135°V溝)の斜面7Aに当接可能な凸部13に金属膜14を付着させた第2の型12を、コア側斜面7Aに押し当てる。この際、積層体6の斜めミラー部用V溝のコア側斜面7A、および/またはこの斜面7Aに当接可能な凸部13の金属膜14の表面に、接着剤15を付着させる(図示例では斜面7Aに接着剤を付着させている)。第2の型12の金属膜14をコア側斜面7Aに押し当てて、斜面7Aに接着剤15を介して金属膜14を貼付すれば、斜めミラー部16が形成される。第2の型12を離型することにより、斜めミラー部16を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された埋め込み型構造の光導波路が得られる(光導波路は基板4からは適宜剥離すればよい)。
【0027】
<本発明の光導波路の製造方法2>
以下、本発明の他の製造例について図面を参照しながら説明する。図11には、第1Aの型1Aの一方端の斜視説明図を示した。第1Aの型1Aは、コア溝に対応する凸部2Aと、コア溝対応凸部2Aの一方端に当接し、コア溝対応凸部2Aに直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部10Aとを有している。第1の型の図示しない他方端においても斜めミラー部対応凸部10Aをコア溝対応凸部2Aに直交するように当接させることができ、あるいは別の形状とすることもできる(他の製造例も同様である)。
【0028】
斜めミラー部対応凸部10Aの断面形状は図例では二等辺三角形である。ミラー部斜面が45°、すなわち、第1Aの型1Aのミラー部斜面を形成する斜面10Bとコア溝対応凸部2Aの長手方向に水平な線とで形成される鈍角が135°であれば、二等辺三角形の頂角は特に限定されず、例えば90°以上であればよく、理論的に180°未満である。
【0029】
この第1Aの型1Aを用いて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する。図12には、図11の第1Aの型1Aを上下に反転させた状態のA−A線断面を見た図を示している。硬化前の下部クラッド層3Aを公知の方法で基板4上に作製し、図12に示したように、第1Aの型1Aを図11とは上下反転させて、下部クラッド層3Aに押し当てる。第1Aの型1Aを押圧したまま下部クラッド層3Aを硬化させることにより、第1の型1Aを離型した後には、図13に斜視図で示したように、コア溝2Bと斜めミラー部用V溝7とが形成された硬化後の下部クラッド層3が得られる。
【0030】
次に、コア溝2Bにコア材料を公知の方法で充填する。効率的且つ選択的に溝に充填する方法として、コア溝2Bは幅と深さが大体数十μm程度であって細いので、コア溝2Bの所定の場所にコア材料を滴下し、毛細管現象でコア溝2Bの長さ方向にコア材料を充填する方法が好ましい。コア溝2Bの深さが斜めミラー部のV溝7の頂点部の深さより浅く、且つコア材料の滴下箇所をミラー部のV溝7よりコア溝の長さ方向に内側に設定することで、コア材料をコア溝2Bのみに選択的に充填することが出来る。これは、コア溝2BとV溝7の斜め面との交差面にて、コア材料と空気との界面張力によって、毛細管現象が停止する為である。コア溝への充填速度を上げるためには基板や下部クラッド層、或いはコア材料を加熱してコア材料の流動性を高めてもよい。例えば基板を50℃以上、200℃以下の範囲で加熱すると、下部クラッド層を介してコア材料に熱が伝わってコア材料が加熱される。温度が低すぎると充填速度に著しい向上は見られない。一方、温度が高すぎる場合は、コア材料が熱によって硬化し始め充填できなくなる。
【0031】
その後、コア材料を硬化させてコア2を形成する。コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料5Aをコア2、下部クラッド層3の上に塗布した後、第1Bの型を用いて、V溝に充填されている上部クラッド材料5Aを除去する。これはコアや下部クラッド層の上に上部クラッド材料を塗布した際、V溝にも上部クラッド材料が流入して充填されることがあるためである。
【0032】
図14は図7(A)に示す第1Bの型11Aを使用した説明図である。図14では、下部クラッド層3とコア2、V溝7の上部に塗布された上部クラッド材料5Aが硬化する前に、第1Bの型11Aを下部クラッド層3に押し当てる。V溝7に充填された上部クラッド材料5Aは、第1Bの型11Aの斜めミラー部対応凸部10Aによって押し出されてV溝から除去された状態となる。このまま上部クラッド材料5Aを硬化させることにより、下部クラッド層3及びコア2の上部に硬化した上部クラッド層5が形成される。第1Bの型11Aを離型することにより、V溝7を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された積層体が得られる。
【0033】
次に斜めミラー部を金属膜で作成する。図15は、第2の型の使用方法の一例を説明する図(図9(A)のB−B断面図)であって、斜めミラー部を形成する概略工程を示している。図15では、上部クラッド材料を硬化させた積層体の斜めミラー部用V溝のコア側斜面7Aに当接可能な凸部13を有する第2の型12を用いる。第2の型12の凸部13には金属膜を付着させる。
【0034】
また斜めミラー部用V溝の斜面7A、および/または第2の型12の金属膜14表面に、接着剤15を付着させる(図示例では金属膜14の表面に接着剤15を付着させている)。この接着剤15を介して金属膜14をV溝斜面7Aに貼付して斜めミラー部を形成する。すなわち、第2の型12の凸部13をV溝のコア側斜面7Aに押し当てれば、V溝の斜面7Aに接着剤15が接着すると共に、この接着剤15を介して金属膜14が斜面7Aに貼付され、ミラー部が形成された埋め込み構造型の光導波路が得られる(光導波路は適宜基板から剥離して使用すればよい)。
【0035】
<本発明の光導波路の製造方法3>
以下、本発明の第2の型を用いた光導波路の製造方法の他の一例について説明する。
【0036】
まず、上記光導波路の製造方法2と同様にして、V溝を有し、下部クラッド層3の上部にコア2を形成する。
【0037】
すなわち、図11に示すコア溝に対応する凸部2Aと、コア溝対応凸部2Aの一方端に当接し、コア溝対応凸部2Aに直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部10Aとを有する第1Aの型を用いて、図12に示す工程を経て、図13に示すような下部クラッド層3にコア溝2と斜めミラー部用V溝7を形成する。次にコア溝2Bにコア材料を注入して充填し、コア溝2B中のコア材料を硬化させれば、V溝を有し、下部クラッド層3の上部にコア2が形成される。
【0038】
次に上部クラッド材料を斜めミラー部用V溝の斜面、コア、及び下部クラッド層の上に塗布する。続いて上部クラッド材料が硬化する前に、斜めミラー部を金属膜で作製する。具体的に図16に基づき説明する。図16は、第2の型(図9(A)のB−B断面図)の使用方法の一例を説明する図であって、斜めミラー部を形成する概略工程(図13の下部クラッド層3をB−B線断面方向から見た状態)を示している。図16では、コア材を硬化させた積層体のミラー部用V溝7のコア側斜面7A、コア2、及び下部クラッド層3の上に、上部クラッド材料5Aを公知の方法で塗布する。塗布した上部クラッド材5Aが硬化する前に、V溝のコア側斜面7Aに当接可能な凸部13を有し、この凸部13に金属膜14を有する第2の型をV溝7に押し当てる(好ましくはV溝のコア側斜面7Aと凸部13のコア側斜面とが対向するように押し当てる)。第2の型の斜めミラー部対応の凸部の金属膜14は、V溝の上部クラッド材料5A表面に転写され、ミラー部が形成される。
【0039】
斜めミラー部を形成した後、公知の方法で上部クラッド材料5Aを硬化させることにより、下部クラッド層3の上にコア2を被覆した上部クラッド層5が形成される。第2の型12を離型することにより、金属膜14で形成されたミラー部を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された埋め込み型構造の光導波路が得られる。
【0040】
<本発明の製造方法4>
さらに、本発明の第2の型を用いた上記光導波路の製造方法3の他の一例について説明する。
【0041】
まず、上記製造方法3と同様に図11に示すような第2の型を用いてコア溝と斜めミラー部用V溝と下部クラッド層を形成するまでの工程は同じである(図12、図13参照)。
【0042】
次に、コア溝2Bと斜めミラー部用V溝7にコア材料を公知の方法で充填する。この際、コア溝2Bの幅と深さが上記のように細くて浅いと、毛細管現象でコア溝7の長さ方向にコア材料が吸い込まれていくが、V溝7も同様にコア材料が充填される。
【0043】
そこで、V溝7から充填されたコア材料を取り除くために、第1Bの型を用いる。図7(A)(B)に示したように、第1Bの型は図11で示す第1Aの型と同一形状の斜めミラー部対応凸部を有しているが、コア溝対応凸部2Aは有していない。
【0044】
第1Bの型の使用方法は図14に示す工程とほぼ同じであり、同図を用いて説明すると、下部クラッド層3のコア溝2Bに充填されたコア材料17と、V溝7に充填されたコア材料17Aとが硬化する前に、第1Bの型11Aを下部クラッド層3に押し当てる。V溝に充填されたコア材料17Aは、第1Bの型11Aの斜めミラー部対応凸部10Aによって押し出されてV溝から除去された状態となるが、コア溝2Bに充填されたコア材料17は除去されないので、このままコア材料17を硬化させることにより、下部クラッド層3の上部にコア溝2B内に硬化したコア2が形成される。第1Bの型11Aを離型することにより、V溝7を有し、下部クラッド層3の上部にコア2が形成される。
【0045】
その後、上記製造方法3と同様にして、図16に示す工程に従って、上部クラッド材料5Aを斜めミラー部用V溝7の斜面7A、コア2、及び下部クラッド層3の上に塗布した後、凸部13に金属膜14を有する第2の型12を上部クラッド材料5Aに当接するように押し当てれば、金属膜14で形成されたミラー部を有し、下部クラッド層3の上部にコア2と上部クラッド層5が積層された埋め込み型構造の光導波路が得られる。
【0046】
以下、第2の型を用いた上記ミラー部の形成について更に詳述する。
【0047】
まず、斜めミラー部を形成する金属膜について詳述する。斜めミラー部は、V溝7のコア2と接するコア側斜面7Aに形成する必要がある。斜めミラー部の形成に用い得る金属膜としては、Au,Ag,Cu,Al等またはこれらの1種以上を含む合金が挙げられ、使用する光の波長(例えば通信に使用される場合は、700〜1600nmの波長、特に800〜900nmの波長)での反射率が高い金属膜が好ましく、反射率が70%以上である金属膜がより好ましい。反射率が高く、化学安定性に優れた金属膜としては、Au,Agが挙げられ、低コスト化の観点からは、AlもしくはCuが好ましい。また本発明では簡易に斜めミラー部を形成するために、金属箔を用いて金属膜の斜めミラー部を形成することが好ましく、反射率を高める観点からは、金属箔表面は鏡面加工されていることがより好ましい。
【0048】
本発明で用いられる金属箔の厚みは特に限定されないが、膜厚が薄すぎると皺や破断等が発生し易くなり、また光が膜を透過して反射率が低下するため、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上とするのがよい。一方で金属箔の膜厚が厚すぎると、斜めミラー部の斜面と下部クラッド層の斜面で形成される角部分(例えば図8のV溝斜面で構成される頂角)で金属箔が斜面に追従せずにRを形成することがあるため、金属箔の厚みは下部クラッド層の厚みよりも薄くすることが好ましく、例えば25μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。Rが形成されると、このR部分から金属膜の破れや皺が発生・伝播して反射率が低下するなどの原因となることがある。
【0049】
また反射率の低下を抑制する観点からは金属箔の表面粗さも適切に制御することが望ましい。金属箔の表面が粗いと光の乱反射によって光損失が生じるため、金属箔の表面粗さ(JIS B0601 2001に規定する算術平均粗さRa)は好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0050】
次に、第2の型の形状は、斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有していればよい。当接可能な凸部とは、第2の型の凸部の形状とV溝の形状とが、コア側斜面で合致すれば他の部分の形状が異なっていてもよい意味である。光導波路の斜めミラー部は、V溝のコア側斜面に金属膜が形成されていれば機能するからである。したがって図9(A)に示したように、第2の型12の凸部13の形状はV溝7の形状に嵌合する形状であってもよいが、図17(B)や図17(C)に示すようなV溝7のコア側斜面7Aにのみ合致する形状の第2の型を使用することも可能である。
【0051】
次に、金属膜を第2の型の凸部に付着手段について説明する。本発明では金属膜を有する第2の型をV溝斜面に押し当てて、金属膜を第2の型からV溝側に転写ないし貼付できる手段であれば、金属膜の付着手段は特に限定されない。
【0052】
例えば金属膜は、第2の型の凸部に吸着させることもできる。図18は吸着機構を有する第2の型の一例を説明するための斜視図である。図18では、第2の型に任意の位置に複数のスリット70を設けた吸引機構が形成されている。凸部に金属膜を載置した後、空気を吸気口71から吸引してスリット内(スリットと図示しない金属膜で形成される空間)を陰圧状態とすることで、金属膜は第2の型に吸着される。そして第2の型をV溝に押圧した後、吸引を停止すれば金属膜は第2の型からV溝側に転写ないし貼付される。
【0053】
また金属膜は、第2の型に自着させることもできる。第2の型の少なくともミラー部対応凸部を樹脂材料やシリコーン材料で構成すれば、シリコーン材料等が有する疑似接着性(自着性によって接着し、接着部分が小さな力で、且つ接着面を破壊することなく剥離できるような接着状態)によって、金属膜を自着させることができる。そして第2の型をV溝に押圧すると、接着性の強い上部クラッド材や接着剤によって、金属膜はV溝側に転写ないし貼付される。
【0054】
更に金属膜は、粘着剤ないし接着剤(以下、接着剤で代表する)を介して第2の型に貼着させることもできる。接着剤としてはUV剥離型接着剤、熱剥離型接着剤などが例示される。この場合、金属膜を貼着した第2の型をV溝に押圧した後、紫外線照射(UV剥離型粘着剤)や加熱(熱隔離型粘着剤)など剥離手段を施すことによって、金属膜は第2の型から剥離してV溝側に転写ないし貼付される。
【0055】
金属膜は第2の型の凸部の全面に付着させる必要はなく、少なくともコア側斜面当接面の光反射部分において付着させればよい。コア側斜面に金属膜が形成されていれば、光路変換機能を発揮できるからである。
【0056】
上記製法によれば、コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が金属膜(好ましくは金属箔)で形成された光導波路を製造することができる。
【0057】
本発明の光導波路は、金属膜が上部クラッド材、或いは接着剤を介して斜めミラー部用斜面に形成されているため、例えば上記斜面がダイサー等の切削手段で形成された場合などのように斜面表面の微細な凹凸によって表面が粗い場合であっても、上部クラッド材や接着剤で被覆することによって微細な凹凸の段差が平坦化されるため、ミラー部の表面粗さに影響を及ぼすことがない。
【0058】
<本発明法に用いられる各種材料の好適例>
[第1の型、第1Aの型、第1Bの型、及び第2の型]
第1の型、第1Aの型、第1Bの型、及び第2の型の素材は特に限定されず、リン青銅等の合金やニッケル等他の金属からなる金型であってもよいし、シリコーン材料やウレタン樹脂等の軟らかい材料からなる型であってもよい。クラッド材やコア材との離型性の観点から特にシリコーン材料が好ましい。シリコーン材料のうち、硬化後にシリコーン系ゴムまたはシリコーン系樹脂となる硬化性シリコーン系ゴムオリゴマーもしくはモノマー、または、硬化性シリコーン系樹脂オリゴマーもしくはモノマー等の硬化性シリコーン材料が好適であり、硬化性ポリシロキサンが特に好適である。
【0059】
硬化性シリコーン材料としては、通常、液状シリコーンと称されるものが用いられるが、形成される下部クラッド層からの剥離性に優れ、かつ機械的強度に優れることから、硬化剤と組み合わせて用いる二液混合型が好適である。また、低粘度の硬化性シリコーン材料を用いれば、型の作製時に巻き込む泡の除去等の加工性に優れると共に、転写パターンの精密な型取りをすることができる。一方、硬化性ポリシロキサンは、一液硬化型または二液硬化型のいずれでもよく、熱硬化型または室温硬化型のいずれでもよい。
【0060】
硬化性シリコーン材料の具体例としては、例えば、アルキルシロキサン、アルケニルシロキサン、アルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン等を含有するものが挙げられる。特に、アルキルアルケニルシロキサンおよびポリアルキル水素シロキサンの二成分混合系であり、低粘度で室温硬化型のものが剥離性および硬化性の観点から好適である。
【0061】
第1の型、第1Aの型、第1Bの型、及び第2の型から下部クラッド層やコアが容易に離型するように、剥離剤を塗布して使用することが望ましい。剥離剤としては、従来公知の剥離剤を用いればよく、特に限定されるものではない。
【0062】
[第2の型]
さらに上記素材に加えて第2の型では、石英、パイレックス(登録商標)等のガラス材料を使用することができるが、上記金属膜を第2の型に付着させる手段に応じて好適な材料を選択することが望ましい。例えば第2の型に図18に示すような吸着機構を設ける場合は、加工性の観点からリン青銅等の合金やニッケル等他の金属やガラス材料が好適である。
【0063】
また金属膜を第2の型に自着させる場合、疑似接着性を有するシリコーン材料や樹脂材料が好適であるが、特に硬質の材料が望ましい。軟質の材料で第2の型を形成すると、V溝に当接した際に、第2の型が変形してコア側斜面の傾斜角度が変動する可能性があるからである。
【0064】
更に金属箔をUV剥離型粘着剤を介して第2の型に貼着させる場合、UV透過性を有するガラス材料、透明樹脂材料等が好適である。また金属箔を熱剥離型粘着剤を介して第2の型に貼着させる場合、耐熱性を有する金属材料、ガラス材料等が好適である。
【0065】
[基板]
基板は前記した図例では省略したが、光導波路においては必須構成要素である。基板としては、無機材料、有機材料を問わず、公知の材料はいずれも使用することができるが、例えば、シリコーン基板;石英、パイレックス(登録商標)等のガラス基板;Al、Cu等の金属基板;金属酸化物基板;ポリイミド、ポリエーテルケトン等の樹脂基板;有機無機ハイブリッド基板等を使用することが好ましい。フレキシブル光導波路を作製する場合は、樹脂基板が好ましく、樹脂フィルムからなるフィルム基板がより好ましい。
【0066】
フィルム基板としては、従来公知の光導波路材料から構成される樹脂フィルムであればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、オキセタン系樹脂、シラン系樹脂、シリコーン系樹脂等から構成される樹脂フィルムが挙げられる。これらの樹脂フィルムのうち、光電気混載基板の製造を考慮すると、耐熱性(特に、半田付けを想定した耐熱性、具体的には200〜250℃の耐熱性)の観点からは、ポリイミド系樹脂から構成されるフィルム、すなわちポリイミドフィルム(ハロゲン化ポリイミドフィルムを含む)が好ましい。また、フィルム基板として、ポリイミドフィルムを用いる場合には、市販品を利用してもよい。ポリイミドフィルムの市販品としては、例えば、東レ・デュポン株式会社の商品名「カプトン(登録商標)」シリーズが挙げられる。
【0067】
基板の厚さは、光導波路の用途や、光電気混載フレキシブル基板を製造した場合に使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。基板の厚さが小さすぎると、基板の強度が低下したり、作成時に皺や折れが生じることがある。逆に、基板の厚さが大きすぎると、光電気混載基板を製造した場合に、基板の透明性が低下することがある。
【0068】
[下部クラッド層]
下部クラッド層を構成するクラッド材料は、従来公知の光導波路材料であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、紫外線(または光)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、紫外線(または光)硬化性樹脂が好適である。硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、オキセタン系樹脂、シラン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、これらの樹脂は、溶剤に溶解した溶液型であっても溶剤を含まない無溶剤型であってもよいが、無溶剤型がより好ましい。さらに、これらの樹脂を硬化性樹脂として用いる場合には、硬化剤や架橋剤等を併用することができる。
【0069】
上記硬化性樹脂のうちでは、エポキシ系樹脂が好適であり、UV硬化型エポキシ樹脂がより好適である。UV硬化型エポキシ樹脂としては、ポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物を含有するUV硬化型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。可撓性を有するフレキシブル光導波路を得たい場合には、ポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物を含有するUV硬化型エポキシ樹脂が特に好適であり、光導波路に可撓性を持たせる必要がない場合には、ビスフェノール型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂等が好適である。
【0070】
ポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテルが特に好適である。ポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテルの市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「jER(登録商標)YL7410」、「jER(登録商標)YL7217」等が挙げられる。
【0071】
上記ポリグリシジル化合物を含むUV硬化型エポキシ樹脂を用いる場合には、屈折率や粘度調整のために、必要に応じて、ビスフェノール型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂やオキセタン等の反応性希釈剤を配合してもよい。ただし、より低粘度のエポキシ樹脂が取り扱い性に優れるので、好適である。
【0072】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−アルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、これらのハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、フッ素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、塩素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらのビスフェノール型エポキシ樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのビスフェノール型エポキシ樹脂のうち、入手の容易さや取り扱い性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適である。これらのビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「jER(登録商標)828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER(登録商標)5050」(臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0073】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の配合量は、UV硬化型エポキシ樹脂から得られるエポキシ系樹脂フィルムが所望の屈折率を有するように適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、開始剤を除いたUV硬化型エポキシ樹脂組成物の合計を100質量%とした場合、上述のポリグリシジル化合物と、ビスフェノール型エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂との配合量は、ポリグリシジル化合物0質量%〜70質量%(より好ましくは5質量%〜60質量%)、ビスフェノール型エポキシ樹脂と脂環式エポキシ樹脂との合計を30質量%〜100質量%(より好ましくは40質量%〜95質量%)とするのが好ましい。ポリグリシジル化合物の配合量が70質量%を超えると、フィルムの硬化速度が遅くなったり、得られたフィルムの強度が不足することがある。また、ポリグリシジル化合物の添加量が5質量%以上であれば、強度と可撓性とを備えたフィルムを得ることができる。
【0074】
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびそのε−カプロラクトン変性体(ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド(登録商標)2081」)、1,2−エポキシ−ビニルシクロヘキセン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、ジシクロペンタジエンジエポキシド、オリゴマー型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、商品名「エポリード(登録商標)GT300」、「エポリード(登録商標)GT400」、「EHPE(登録商標)3150」)等のオレフィンを酸化することにより得られるエポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂、水添フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、水添ナフタレン型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシを直接水添したエポキシ樹脂または多価フェノール類を水添した後、エピクロルヒドリンと反応させることにより得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの脂環式エポキシ樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの脂環式エポキシ樹脂のうち、入手の容易さや低粘度で作業性に優れることから、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびそのε−カプロラクトン変性体、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適である。
【0075】
脂環式エポキシ樹脂の配合量は、特に限定されるものではなく、UV硬化型エポキシ樹脂が所望の屈折率を有するように適宜調節すればよい。
【0076】
UV硬化型エポキシ樹脂を光硬化させるためには、光カチオン重合開始剤を配合することが好ましい。
【0077】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、金属フルオロホウ素錯塩、三フッ化ホウ素錯化合物、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、VIa族元素の芳香族オニウム塩、Va族元素の芳香族オニウム塩IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6−陰イオン(ここで、Mは、リン、アンチモンおよびヒ素から選択される)の形のVIb元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば、リン酸塩、ヒ酸塩、アンチモン酸塩等)、鉄化合物の混合配位子金属塩、シラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光カチオン重合開始剤のうち、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族ヨードニウム錯塩または芳香族スルホニウム錯塩、II族、V族およびVI族元素の芳香族オニウム塩が好適である。これらの塩のいくつかは、例えば、商品名「AT−6976」、「AT−6992」(以上、Aceto Chemical社製)、商品名「FX−512」(スリーエム・カンパニー製)、商品名「UVR−6990」、「UVR−6974」(以上、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製)、商品名「UVE−1014」、「UVE−1016」(以上、ゼネラル・エレクトリック・カンパニー製)、商品名「KI−85」(デグサ・アクチエンゲゼルシャフト製)、商品名「SP−150」、「SP−170」(以上、株式会社ADEKA製)、商品名「サンエイド(登録商標)SI−60L」、「サンエイド(登録商標)SI−80L」、「サンエイド(登録商標)SI−100L」、「サンエイド(登録商標)SI−110L」、「サンエイド(登録商標)SI−180L」(以上、三新化学工業株式会社製)等の市販品を入手することができる。
【0078】
また、これらの光カチオン重合開始剤のうち、取り扱い性に優れ、潜在性と硬化性とのバランスに優れることから、オニウム塩が好適であり、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩が特に好適である。
【0079】
光カチオン重合開始剤の配合量は、硬化するエポキシ樹脂成分の配合量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0080】
UV硬化型エポキシ樹脂は、原料であるポリアルキレングリコール鎖と少なくとも2個のグリシジル基とを有するポリグリシジル化合物、必要に応じて配合されるビスフェノール型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂等の分子量を適宜選択することにより、溶剤を用いることなく、粘度を、温度23℃で、10mPa・s以上、100,000mPa・s以下の範囲内に調整することができる。
【0081】
UV硬化型エポキシ樹脂は、常温で液状であるので、基板上に、適宜、下部クラッド層用の容器や型を載置し、その中に間隙に適量注入して充填した後、あるいは、基板上に適量滴下した後、第1の型を載置した後、例えば、照射積算光量(露光エネルギー)が0.01J/cm2〜10J/cm2程度の紫外線を照射して硬化させることにより、下部クラッド層を形成することができる。
【0082】
下部クラッド層の厚さは、光導波路の用途や使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、コア溝の下側を除いて、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。下部クラッド層の厚さが小さすぎると、充分な厚さのコアを形成できないことがある。逆に、下部クラッド層の厚さが大きすぎると、光電気混載板を製造した場合に、下部クラッド層の透明性が低下することがある。
【0083】
下部クラッド層の屈折率は、コアの屈折率より低い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、クラッド材料の種類や組成を選択することにより、任意に調節することができる。
【0084】
[コア]
コアを形成するためのコア材料は、上記下部クラッド層に用い得る材料がそのまま例示できる。ただし、下部クラッド層や上部クラッド層とコアとで、屈折率が異なるように材料を選択する必要がある。コアの厚さ(深さ)は、光導波路の用途や使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。コアの厚さが小さすぎると、コアを伝播する光の量が低下することがある。逆に、コアの厚さが大きすぎると、下部クラッド層の厚さを大きくする必要があり、コアの両側に下部クラッド層の不必要な部分が多くなり、製造コストが上昇することがある。また、光導波路を構成する下部クラッド層やコアの厚さが大きくなるので、光導波路フィルムの厚さが大きくなることがある。
【0085】
コアは、長手方向に対して垂直な断面の形状が矩形であることが好ましく、正方形であることが最も好ましい。コアのアスペクト比(幅/厚さ)は、好ましくは1/2以上、より好ましくは2/3以上、さらに好ましくは5/6以上であり、また、好ましくは2/1以下、より好ましくは3/2以下、さらに好ましくは6/5以下である。最も好ましくは1/1である。コアのアスペクト比が小さすぎるか、あるいは、大きすぎると、コアの長手方向に対して垂直な断面の形状が扁平になるので、コアに光が入射したり、コアから光が出射したりする際に光損失が生じることがある。
【0086】
コアの屈折率は、下部クラッド層および上部クラッド層の屈折率より高い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内であるのが好ましく、コア材料の種類や組成を選択することにより、任意に調節することができる。
【0087】
[上部クラッド層]
上部クラッド層を形成するための材料は、上記下部クラッド層に用い得る材料がそのまま例示できる。ただし、コアとは屈折率が異なるように材料を選択する必要がある。
【0088】
コア上端面から上部クラッド層上端面までの上部クラッド層の厚さは、光導波路の用途や使用する光の波長等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上部クラッド層の厚さが小さすぎると、コアにおける光の閉じ込め効果が弱くなって、上部クラッド層から光が抜け、光損失が増大するおそれがある。逆に、上部クラッド層の厚さが大きすぎると、不必要な部分が多くなり、製造コストが増大することがある。
【0089】
上部クラッド層の屈折率は、コアの屈折率より小さい限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内であるのが好ましく、クラッド材料の種類や組成を選択することにより、任意に調節することができる。
【0090】
[第2の型用粘着剤ないし接着剤]
金属膜(金属箔)を粘着剤ないし接着剤(粘着剤で代表させる)を介して第2の型に貼着させる場合に用いられる粘着剤や接着剤としては、第2の型から金属膜を容易に剥離可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、紫外線(または光)剥離型粘着剤、熱剥離型粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤を任意に選択して使用することができる。使用量についても特に限定されず、金属箔を第2の型に貼着させるのに必要な適量を用いればよい。
【0091】
[V溝の斜めミラー部用接着剤]
斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の凸部が有する金属膜の表面に付着させる接着剤としては、透光性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは熱硬化型エポキシ樹脂である。接着剤層の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは1μm以上であり、また好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。接着剤層の厚さが小さすぎると金属膜を十分に貼着できず、金属膜が光導波路から剥離するおそれがある。逆に、接着剤層の厚さが大きすぎると、光の透過性が悪化したり、光の反射位置がずれて光電気混載基板の性能が低下することがある。
【0092】
本発明では、上記したように、斜めミラー部用のV溝のコア側斜面に金属膜を形成するために、上記構成の第2の型を採用したところに特徴がある。このため、これらの特徴以外の、電気回路等の材料や構造については特に限定されず、従来公知の光電気混載基板の材料や構造をいずれも採用することができる。また、フィルム基板を用いたフレキシブル光電気混載基板とすることも可能である。さらに、光電気混載基板の製造方法についても特に限定されず、公知の方法が採用可能である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0094】
まず、実施例および比較例においてクラッド材料およびコア材料として用いたUV硬化型エポキシ樹脂の調製方法について説明する。
【0095】
<UV硬化型エポキシ樹脂(1)の調製>
ポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「jER(登録商標)YL7410」;数平均分子量700〜800)48質量部、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製;商品名「セロキサイド(登録商標)2081」)30質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「jER(登録商標)828EL」)18質量部、光重合開始剤であるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩(Aceto Chemical社製;商品名「AT−6992」)4質量部を、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)」)を用いて混合し、クラッド材料として用いるUV硬化型エポキシ樹脂(1)を調製した。
【0096】
<UV硬化型エポキシ樹脂(2)の調製>
上記で用いたポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル(「jER(登録商標)YL7410」)9質量部、上記で用いたビスフェノールA型エポキシ樹脂(「jER(登録商標)828EL」)43.5質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「jER(登録商標)5050」)43.5質量部、上記で用いた光重合開始剤(「AT−6992」)4質量部を、上記で用いた自転・公転ミキサーを用いて混合し、コア材料として用いるUV硬化型エポキシ樹脂(2)を調製した。
【0097】
実施例1
まず、本発明の第1Aの型1A(図11)と第1Bの型11A(図7(A))を作製するために、2個の雌型を作製した。リン青銅板の表面を切削し、コア溝に対応する幅50μm、深さ50μm、長さ50mmのコア溝対応凹部と、このコア溝対応凹部に当接し、コア溝対応凹部に直交する方向へ延びる深さ75μmのV溝対応凹部(頂角=90°)とを形成し、図13に示した下部クラッド層3と同一形状のリン青銅製の型Aを作製した。この型Aは第1Aの型1A用の型である。また、別のリン青銅板の表面を切削し、深さ75μmのV溝対応凹部(頂角=90°)のみを形成した型Bを作製した。この型Bは第1Bの型11A用の型である。なお、第1Aの型1AのV溝対応凸部10Aの表面粗さRaは400Åであった。
【0098】
ガラス基板(厚さ2mm)上に、間隙を空けて、上記リン青銅製の型Aを上下反転させて載置し、ガラス基板とリン青銅製の型との間隙に、気泡を挟み込むことなく、二液硬化型シリコーン系ゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SILPOT 184」)を注入して充填し、室温で24時間静置して硬化させて、シリコーン系ゴム製の第1Aの型1Aを作製した。また、上記同様にして、シリコーン系ゴム製の第1Bの型11Aを作製した。
【0099】
本発明の第2の型(図18)を作成するために、石英基板の表面を切削し凸部に対応する凸部の高さ(頂角から12までの高さ)100μm、幅10mmの斜めミラーを形成し、図に示すとおり吸着用のスリット70(幅0.5mm、深さ0.5mm)を幅方向のピッチ2.5mmで4本とそれに垂直な方向で且つ凸部の両側に2本を形成し、吸気口71を2箇所形成し石英製の第2の型を作成した。
【0100】
フィルム基板としてのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名「カプトン(登録商標)Hタイプ」;厚さ25μm)上に、クラッド材料として、UV硬化型エポキシ樹脂(1)を適量滴下した後、平行度を持たせたステージ上で、図12に示したように、第1Aの型1Aを硬化前の下部クラッド層3Aに押し当てた。次いで、第1Aの型1A側からUV照射を行ってクラッド材料を硬化させた後、第1Aの型1Aを引き剥がした。フィルム基板上に、V溝7とコア溝2Bとを有する硬化した下部クラッド層3が形成された。UV照射は、高圧水銀ランプを光源とする露光機(ミカサ株式会社製、商品名「MA−60F」)を用いて、照度10mW/cm2で15分間、すなわち露光エネルギー9J/cm2の条件で行った。
【0101】
続いて、下部クラッド層3のV溝7とコア溝2Bとに、UV硬化型エポキシ樹脂(2)を適量滴下し、150℃のホットプレート上で過熱しながら毛細管現象を利用してV溝7およびコア溝2B全体にコア材料を充填した。図14に示したように、下部クラッド層のV溝にコア材料17Aが充填され、コア溝にコア材料17が充填された状態となった。次に、第1Bの型11AのV溝対応凸部10Aが下部クラッド層3のV溝7に当接するように位置合わせを行って、第1Bの型11AのV溝対応凸部10Aの頂点が下部クラッド層3のV溝7の頂点(最深部)に接するように、第1Bの型11Aを下部クラッド層3に押し当て、V溝7の中のコア材料17AをV溝7の中から外部へ押し出し、排除した。続いて第1Bの型11A側から上記と同条件でUV照射を行って、コア溝2B内部のコア材料17を硬化させて、コア2を形成した。このコア2は、片端面に傾斜角45°の斜面を有している。
【0102】
次に、図18に示す吸引機構を有するガラス製の第2の型12のV溝対応凸部13に金属膜(金箔:厚さ1μm、サイズ2×10mm)を載置した後、吸気口71から常時空気を吸引して金箔とスリットで形成される空間を陰圧にして金属箔を凸部13に吸着させた。
【0103】
続いて、図16に示す工程により、金属膜を形成した。すなわち、上記で得られたコアと下部クラッド層の積層体の上、及びV溝の斜面に、上部クラッド材料5AとしてUV硬化型エポキシ樹脂(1)を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布した。次にミラー部用V溝7のコア側斜面7Aに形成したUV硬化型エポキシ樹脂(1)に、第2の型12の凸部13の金属膜が当接するように押し当てた。この際、位置合わせを行って、第2の型12のV溝対応凸部13の頂点が下部クラッド層3のV溝7の頂点(最深部)に接するように、第2の型12を下部クラッド層3に押し当てた後、吸引部からの吸引を停止し、V溝7のコア側斜面7Aの上部クラッド材料5A表面に金箔を転写した。続いて第2の型12側から上記と同条件でUV照射を行って、上部クラッド材料5Aを硬化させて上部クラッド層5を形成すると共に、V溝のコア側斜面に金属膜14のミラー部を形成した。
【0104】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0105】
45°ミラー部が形成されているコアの端部側で、かつ、ポリイミドフィルム基板の光導波路積層面と反対面側に、フィルム基板面に鉛直な方向に光量計を接続した光ファイバーを接触させ、ミラー部が形成されていないコア端部から波長850nmの光を入れて、コア内を伝播させ、ミラー部で反射された光の強さを光量計で測定した。導波損失は1.2dBであった。
【0106】
V溝対応凸部を有する第1Aの型と第1Bの型を用いてV溝を形成したのでV溝の表面が均一だった上に、第2の型を用いることで簡易にミラー部を形成することができた。金箔を用いてミラー部を形成したのでミラー部の表面も均一となり、導波損失を非常に小さくすることができた。
【0107】
実施例2
本発明の第2の型(図9(A))を作成するためにリン青銅板の表面を切削し、凸部に対応する凸部の高さ(頂角から12までの高さ)100μm、幅10mmの斜めミラー対応凹部を形成し、V溝形状と同一形状のリン青銅製の型Bを作製した。この型Bは第2の型用の型である。ガラス基板(厚さ2mm)上に、間隙を空けて、上記リン青銅製の型Bを上下反転させて載置し、ガラス基板とリン青銅製の型との間隙に、気泡を挟み込むことなく、二液硬化型シリコーン系ゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SILPOT 184」)を注入して充填し、室温で24時間静置して硬化させて、シリコーン系ゴム製の第2の型を作製した。
【0108】
吸引機構を有するガラス製の第2の型に代えて、ゴム製(材料二液硬化型シリコーン系ゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SILPOT 184」)の第2の型(図9(A)参照)を用いた以外は実施例1と同様にして、長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、1.4dBであった。
【0109】
実施例2では、ゴム製の第2の型を用いたが、金箔(Au)は第2の型の凸部に疑似接着させることができた。また第2の型12を下部クラッド層3に押し当てることによって、V溝のコア側斜面の上部クラッド材料表面に金箔が転写された。第2の型12側から上記と同条件でUV照射を行って、上部クラッド材を硬化させて上部クラッド層を形成すると共に、V溝のコア側斜面に金箔のミラー部を形成することができた。
【0110】
実施例3
コア溝対応凸部を有し、V溝対応凸部を有しない第1の型1を作製し、この第1の型を用いた以外は実施例1と同様にして、コア溝を有する下部クラッド層の形成、コアの形成、および上部クラッド層の形成を行った(図2〜図3の工程参照)。ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])に、頂角90°となるV型形状のダイヤモンドブレード(番手#2000)をセットし、スピンドル回転数30000rpm、カット速度0.3mm/sで、コアに直交する方向に、上部クラッド層表面から深さ95μmの位置にブレードの頂点が来るようにして、コアの一方端にV溝を形成した(図4(A)参照)。続いてこの積層体6のコア2と下部クラッド層3の上に、上部クラッド材料としてUV硬化型エポキシ樹脂(1)を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布し、上記と同条件でUV照射を行って上部クラッド層5を硬化させた。
【0111】
次に、実施例1で用いた吸引機構を有するガラス製の第2の型12を用いると共に(図18参照)、実施例1と同様にして金箔を凸部13に吸着させた。
【0112】
続いて、V溝7の斜面7Aに、熱硬化型エポキシ接着剤を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布した。次にミラー部用V溝7のコア側斜面7Aに形成した接着剤層に、第2の型12の凸部13の金箔14を押し当てた(図15と同様の工程であるが、図示例は金属膜側に接着剤を積層させている点で、斜面7Aに接着剤を塗布している本実施例とは異なる)。この際、実施例1と同様に位置合わせを行うと共に、第2の型12をV溝に押し当てた後、吸引部からの吸引を停止し、V溝7のコア側斜面7Aの接着剤層15の表面に金箔14を転写した。続いて接着剤を硬化(150℃・30分)させてV溝7のコア側斜面7Aに金箔のミラー部を形成した。
【0113】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0114】
45°ミラー部が形成されているコアの端部側で、かつ、ポリイミドフィルム基板の光導波路積層面と反対面側に、フィルム基板面に鉛直な方向に光量計を接続した光ファイバーを接触させ、ミラー部が形成されていないコア端部から波長850nmの光を入れて、コア内を伝播させ、ミラー部で反射された光の強さを光量計で測定した。導波損失は1.2dBであった。
【0115】
比較例1
実施例1と同様にしてコアと下部クラッド層の積層体を作成した。次に、合成した金ナノインクを滴下し、毛細管現象を利用して、V溝7全体に充填した。70℃のホットプレート上で10分間加熱した後、150℃の恒温槽で30分間加熱して、V溝7の両斜面に金塗膜(斜めミラー部)を形成した。
【0116】
続いて、上記で得られた斜めミラー部を備えたコアと下部クラッド層の積層体の上に、UV硬化型エポキシ樹脂(1)を膜厚が20μmとなるようにスピンコーターで塗布し、上記と同条件でUV照射を行って、上部クラッド層を硬化させた。
【0117】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0118】
45°ミラー部が形成されているコアの端部側で、かつ、ポリイミドフィルム基板の光導波路積層面と反対面側に、フィルム基板面に鉛直な方向に光量計を接続した光ファイバーを接触させ、ミラー部が形成されていないコア端部から波長850nmの光を入れて、コア内を伝播させ、ミラー部で反射された光の強さを光量計で測定した。導波損失は1.5dBであった。
【0119】
比較例2
金ナノコロイド液を用いずに、V溝以外の部分をマスキングして、蒸着法で厚さ100nmの金塗膜を形成し、マスキングを外してミラー部を形成した以外は、比較例1と同様にして、長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、1.2dBであった。
【0120】
比較例3
実施例3と同様にして、コア溝を有する下部クラッド層の形成、コアの形成、および上部クラッド層の形成を行った後、ダイシングソーでコアの一方端にV溝を形成した。次に、上記比較例1と同じ金ナノインク液を滴下し、毛細管現象を利用して、V溝全体に充填した。70℃のホットプレート上で10分間加熱した後、150℃の恒温槽で30分間加熱して、V溝32の両斜面に金塗膜(斜めミラー部)を形成した。
【0121】
V溝を有する側の反対側を、ダイシングソー(DISCO社製;品番[DAD321])を用いてコアに直交する方向に切り出して、コア端面を露出させ、片側に45°ミラー部を有する長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。
【0122】
実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、3.5dBであった。ダイシングソーで形成したV溝の表面が、目視でも非常に荒れていることがわかった。このため、導波損失が大きくなったと考えられる。
【0123】
比較例4
金ナノコロイド液を用いずに、V溝以外の部分をマスキングして、蒸着法で厚さ100nmの金塗膜を形成し、マスキングを外してミラー部を形成した以外は、比較例3と同様にして、長さ50mmの埋め込み型光導波路を得た。実施例1と同様にして導波損失を測定したところ、4.5dBであった。ダイシングソーで形成したV溝の表面が非常に荒れていた上に、蒸着膜はエポキシ樹脂に対する接着性が劣っており膜の一部剥離が見られたことが、導波損失増大の原因と考えられる。ミラー部形成後にさらにエポキシ樹脂等で封止をすれば、もう少し導波損失は抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
光導波路の基板の裏面側に電気配線を設ければ、光電気混載基板として使用することができ、携帯電話、パソコン、デジタルカメラ等、現在フレキシブルプリント基板が使用されている電子機器分野や光学関連分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 第1の型
1’ 第1の型
1A 第1Aの型
1W 垂直壁
2 コア
2A コア溝対応凸部
2B コア溝
3 (硬化後の)下部クラッド層
3A (硬化前の)下部クラッド層
4 基板
5 上部クラッド層
5A 上部クラッド材料
6 積層体(下部クラッド層、コア、上部クラッド層)
7 ミラー部用V溝
7A ミラー部用斜面
8 垂直端面
9 ミラー部材料
10A、10B 斜めミラー部対応凸部
11A、11B 第1Bの型
12 第2の型
13 斜めミラー部対応凸部
14 金属膜
15 接着剤
16 斜めミラー部
17、17A コア材料
70 スリット
71 吸気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、
コア溝に対応する凸部を有する第1の型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝を形成する工程;
上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;
コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に滴下して硬化させ、下部クラッド層、コア、上部クラッド層の積層体を形成する工程;
上記積層体の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用V溝を形成する工程;
斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有する第2の型の凸部に金属膜を付着させる工程;
斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の金属膜表面に、接着剤を付着させる工程;
金属膜が付着した第2の型をV溝のコア側斜面に押し当てて、V溝の斜面に接着剤を介して金属膜を貼付してミラー部を形成する工程
を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路の製造方法において、
前記コア溝を形成する工程は、コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程であり、
前記コア材料を硬化させる工程は、上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程であり、
前記積層体を形成する工程と、V溝を形成する工程は、コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に塗布した後、第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、下部クラッド層のV溝に第1Bの型の凸部が当接するように押し当ててから、上部クラッド材料を硬化させて、前記積層体を形成すると共に、V溝を形成する工程である請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、
コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程;
上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;
コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料を斜めミラー部用V溝の斜面、コア、及び下部クラッド層の上に塗布する工程;
斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有し、この凸部に金属膜を有する第2の型を、V溝の斜面にこの凸部が当接するように押し当てて、V溝の上部クラッド材料表面に金属膜を転写してミラー部を形成する工程;
クラッド材料を硬化させた後、第2の型を離型する工程
を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光導波路の製造方法において、
前記コア材料を硬化させる工程は、
上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝および斜めミラー部用V溝にコア材料を注入して充填する工程と、
第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、コア溝と斜めミラー部用V溝にコア材料が充填された下部クラッド層のV溝に第1Aの型の凸部を押し当てて、V溝からコア材料を除去した後、コア溝中のコア材料を硬化させる工程である
請求項3に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜が、金、銀、銅、アルミニウム、及びこれらの1種以上を含む合金よりなる群から選択される少なくとも一種の金属箔である請求項1〜4のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路であって、前記ミラー部は金属箔で形成されていることを特徴とする光導波路。
【請求項1】
コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、
コア溝に対応する凸部を有する第1の型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝を形成する工程;
上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;
コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に滴下して硬化させ、下部クラッド層、コア、上部クラッド層の積層体を形成する工程;
上記積層体の長手方向の少なくとも一方端に当接し、これに直交する方向に斜めミラー部に対応する斜めミラー部用V溝を形成する工程;
斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有する第2の型の凸部に金属膜を付着させる工程;
斜めミラー部用V溝の斜面、および/または第2の型の金属膜表面に、接着剤を付着させる工程;
金属膜が付着した第2の型をV溝のコア側斜面に押し当てて、V溝の斜面に接着剤を介して金属膜を貼付してミラー部を形成する工程
を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路の製造方法において、
前記コア溝を形成する工程は、コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程であり、
前記コア材料を硬化させる工程は、上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程であり、
前記積層体を形成する工程と、V溝を形成する工程は、コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料をコア、及び下部クラッド層の上に塗布した後、第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、下部クラッド層のV溝に第1Bの型の凸部が当接するように押し当ててから、上部クラッド材料を硬化させて、前記積層体を形成すると共に、V溝を形成する工程である請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路の製造方法であって、
コア溝に対応する凸部と、コア溝対応凸部の少なくとも一方端に当接し、コア溝対応凸部に直交する方向に延びる斜めミラー部に対応する凸部とを有する第1Aの型で、基板上に形成された硬化前のクラッド層を押圧し、そのままクラッド層を硬化させて、下部クラッド層にコア溝と斜めミラー部用V溝を形成する工程;
上記第1Aの型を下部クラッド層から離型させ、コア溝にコア材料を注入して充填し、コア溝中のコア材料を硬化させる工程;
コア材料を硬化させた後、上部クラッド材料を斜めミラー部用V溝の斜面、コア、及び下部クラッド層の上に塗布する工程;
斜めミラー部用V溝のコア側斜面に当接可能な凸部を有し、この凸部に金属膜を有する第2の型を、V溝の斜面にこの凸部が当接するように押し当てて、V溝の上部クラッド材料表面に金属膜を転写してミラー部を形成する工程;
クラッド材料を硬化させた後、第2の型を離型する工程
を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光導波路の製造方法において、
前記コア材料を硬化させる工程は、
上記第1の型を下部クラッド層から離型させ、コア溝および斜めミラー部用V溝にコア材料を注入して充填する工程と、
第1Aの型における斜めミラー部に対応する凸部と同一形状の凸部のみを有する第1Bの型を、コア溝と斜めミラー部用V溝にコア材料が充填された下部クラッド層のV溝に第1Aの型の凸部を押し当てて、V溝からコア材料を除去した後、コア溝中のコア材料を硬化させる工程である
請求項3に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜が、金、銀、銅、アルミニウム、及びこれらの1種以上を含む合金よりなる群から選択される少なくとも一種の金属箔である請求項1〜4のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
コアの少なくとも一方端に斜めミラー部が形成されている光導波路であって、前記ミラー部は金属箔で形成されていることを特徴とする光導波路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図10】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図10】
【図15】
【公開番号】特開2012−203371(P2012−203371A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71016(P2011−71016)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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