説明

金属表面処理液、積層体および積層体の製造方法

【課題】金属表面と絶縁樹脂との密着性を向上させることができる金属表面処理液、金属配線層と絶縁樹脂層との間の密着性を向上させることができる積層体の製造方法および、金属配線層と絶縁樹脂層との間の密着性を向上させた積層体を提供する。
【解決手段】特定構造のトリアジンチオール誘導体を含んでなる金属表面処理液で金属表面を処理し、その上に絶縁樹脂膜2を形成する。この金属表面処理液には有機酸または炭酸を共存させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属表面処理技術に関する。より具体的には、金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体、たとえば支持基板上に金属配線層と絶縁樹脂層とを持つ回路基板において、金属配線層と絶縁樹脂層との密着性を向上させるための金属配線層の表面処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の微細化、多層化および電子部品の高密度実装化が急速に進み、プリント配線板に対してビルドアップ多層配線構造の検討が活発に行われている。
【0003】
ビルドアップ多層配線構造では、複数の配線層間に絶縁樹脂層が形成されており、配線層間の導通をとるために、ビアホールと称される微細な穴を絶縁樹脂層に形成する。ビアホールは、たとえば、感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィ技術により形成する方法や、レーザを照射し穴を形成する方法で作製される。
【0004】
次いで、無電解メッキまたは電気メッキによって、この絶縁樹脂層上に導体を形成し、これをエッチングして新たな配線パターンを形成する。その後、必要に応じて絶縁樹脂層の形成から配線パターンまでの形成工程を繰り返せば、回路の集積度を高めることができる。
【0005】
従来からビルドアップ配線基板の配線のほとんどは、銅から成り立っているが、銅は樹脂との密着性が低いことが知られている。そのため、ビルドアップ配線基板の銅配線とその上側の絶縁樹脂層との密着性を向上させるために、次の処理がなされている。
【0006】
すなわち、塩化第二銅液、塩化第二鉄液、硫酸/過酸化水素水液、ギ酸系水溶液などで銅配線の表面をエッチング(化学研磨)し、10点平均表面粗さ(R)2μm以上の微細突起を作り、配線の上側に形成される樹脂が微細突起のアンカー作用により銅配線表面に強固に固定されるようにする処理がなされている。
【0007】
しかしながら、近年ビルドアップ配線基板にも高周波の信号が伝送されるようになり、特に1GHzを超える周波数領域においては、微細突起のある配線構造では表皮効果による伝送損失、特に導体損が増大するという問題が生じてきた。
【0008】
銅配線と絶縁樹脂間との密着性は、上記物理的アンカー効果に起因する密着性以外には、銅と絶縁樹脂中の構成成分との間の化学的密着がある。分子レベルでは、各種のトリアジンチオールを用いた方法が開示されている。具体的には、特許文献1では、導体上にトリアジンチオール層が形成されている。この方法では樹脂がトリアジンチオールと反応可能なABS樹脂等に限定されている。また、特許文献2では、導体上にトリアジンチオール層を形成し、さらにトリアジンチオールと反応または吸着可能な有機化合物を形成し、絶縁樹脂との密着を高めている。しかし、この方法では銅表面の酸化を避けることができないため、0.5kgf/cm(換算値は0.5kN/m)以下のピール強度しか得られなかった。
【0009】
これに対しては、トリアジンチオール皮膜を有機メッキして製膜し、その上に絶縁樹脂層を形成する方法が提案されている(特許文献3参照)。すなわち、まず逆バイアスをかけて銅表面の酸化皮膜を除去し、しかる後にトリアジンチオールを有機メッキする方法である。しかしながら、メッキするためにはシード電極層が必須であり、孤立した配線部位への適用が困難であるといった問題がある。
【0010】
なお、これまで金属表面と絶縁樹脂との密着性に関する問題を、銅を例にして説明したが、金属表面と絶縁樹脂との密着性の問題は、多かれ少なかれ、他の金属についても存在する問題である。

【特許文献1】特開平10−335782号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−203462号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】森邦夫,表面技術,2000年,第51巻,No.3,p.276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決し、金属表面と絶縁樹脂との密着性を向上させる新規な技術を提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によれば、下記式(1)〜(3)に示す構造を有するトリアジンチオール誘導体の少なくとも一つを含んでなる金属表面処理液が提供される。
【0013】
【化7】

【0014】
【化8】

【0015】
【化9】

(式(1)〜(3)において、Rは、互いに独立に、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基またはエトキシ基であり、Aは、各式内および各式毎に独立に、水素、NH、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、nは、各式毎に独立に、0〜3の整数であり、Xは、各式毎に独立に、ビニル基、グリシドキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアナート基である。)
本発明態様により金属表面と絶縁樹脂との密着性を向上させることができる。具体的には金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体において、金属配線層と絶縁樹脂層との間の密着性を向上させることができる。従って、密着性に優れた積層体、たとえば多層配線構造を持つ半導体集積回路装置を得ることができる。
【0016】
金属表面処理液が、さらに、有機酸および炭酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの酸を含むこと、金属表面処理液のpHが7以下であること、金属表面処理液が、水とアルコールとの少なくとも一つを含んでなること、金属表面処理液が、金属表面と絶縁樹脂との密着性を向上させるための処理液であること、とりわけ、金属表面処理液が、金属配線層と絶縁樹脂層との密着性を向上させるための処理液であること、が好ましい。
【0017】
本発明の他の一態様によれば、金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体であって、当該金属配線表面と当該絶縁樹脂層との間に、下記式(1)〜(3)に示す構造を有するトリアジンチオール誘導体の少なくとも一つを挟んだ積層体が提供される。
【0018】
【化10】

【0019】
【化11】

【0020】
【化12】

(式(1)〜(3)において、Rは、互いに独立に、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基またはエトキシ基であり、Aは、各式内および各式毎に独立に、水素、NH、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、nは、各式毎に独立に、0〜3の整数であり、Xは、各式毎に独立に、ビニル基、グリシドキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアナート基である。)。本発明態様により、密着性に優れた積層体、たとえば多層配線構造を持つ半導体集積回路装置を得ることができる。前記金属配線表面と前記絶縁樹脂層との間に、さらに、シランカップリング剤を挟んだ積層体であることが好ましい。
【0021】
本発明のさらに他の一態様によれば、金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体であって、上記の金属表面処理液で当該金属配線表面を処理し、その上に当該絶縁樹脂層を形成してなる積層体が提供される。本発明態様により、密着性に優れた積層体、たとえば多層配線構造を持つ半導体集積回路装置を得ることができる。
【0022】
前記金属表面処理液での金属配線表面の処理が、前記金属表面処理液中への金属配線表面の浸漬または前記金属表面処理液による金属配線表面へのスプレーであること、および、前記金属表面処理液による前記金属配線表面の処理後、前記絶縁樹脂層の形成前に、金属表面処理液により処理された金属配線表面をシラン系カップリング剤で処理してなること、が好ましい。
【0023】
また、上記二つの積層体の態様に共通して、前記金属配線層が銅または銅合金よりなること、前記積層体が多層配線構造を持つ半導体集積回路装置であること、および、前記絶縁樹脂層が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、オレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つの樹脂を含んでなるものであること、が好ましい。
【0024】
本発明の更に他の一態様によれば、金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体の製造方法において、上記金属表面処理液で当該金属配線表面を処理し、その上に当該絶縁樹脂層を形成する、積層体の製造方法が提供される。本発明態様により、密着性に優れた積層体、たとえば多層配線構造を持つ半導体集積回路装置を製造することができる。
【0025】
前記金属表面処理液での金属配線表面の処理が、前記金属表面処理液中への金属配線表面の浸漬または前記金属表面処理液による金属配線表面へのスプレーであること、前記金属表面処理液による前記金属配線表面の処理後、前記絶縁樹脂層の形成前に、金属表面処理液により処理された金属配線表面をシラン系カップリング剤で処理すること、前記金属配線層が銅または銅合金よりなること、前記積層体が多層配線構造を持つ半導体集積回路装置であること、および、前記金属表面処理液中の前記トリアジンチオール誘導体の濃度が0.1mmol/L〜1000mmol/Lの範囲にあること、が好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明により金属表面と絶縁樹脂との密着性を向上させることができる。具体的には金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体において、金属配線層と絶縁樹脂層との間の密着性を向上させることができる。従って、密着性に優れた積層体、たとえば多層配線構造を持つ半導体集積回路装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態を図、式、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、式、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0028】
本発明に係る金属表面処理液は、特定の化学構造を有するトリアジンチオール誘導体を少なくとも一つ含んでなる。
【0029】
本発明において金属表面処理液による処理の対象となる金属表面は、無電解メッキ法、電解メッキ法、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等どのような方法で作製された金属の表面であってもよい。なお、本発明において「金属」には合金も含まれる。この金属は、公知の金属(合金を含む)から適宜選択することができる。たとえば銅、金、銀、ニッケルおよびこれらを含む合金を例示することができる。合金における上記金属の含有量については特に制限はない。特に金属が空気中における酸化等の化学的変化を受け易いものである場合に本発明の効果が大きい。この意味で、本発明において「金属」(たとえば、本発明に係る金属配線)は銅または銅合金の場合が好ましい。
【0030】
本発明に係る金属表面は、上記のアンカー処理を受けたものであってもよい。そのような場合にはより高い密着性が得られることが多い。アンカー処理における金属表面10点平均表面粗さは0.5〜5μmの範囲が好ましい。
【0031】
上記特定の化学構造を有するトリアジンチオール誘導体は、下記式(1)〜(3)のいずれかで表すことができる。
【0032】
【化13】

【0033】
【化14】

【0034】
【化15】

式(1)〜(3)において、Rは、互いに独立に、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基またはエトキシ基であり、Aは、各式内および各式毎に独立に、水素、NH、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、nは、各式毎に独立に、0〜3の整数であり、Xは、各式毎に独立に、ビニル基、グリシドキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアナート基である。
【0035】
上記特定の化学構造を有するトリアジンチオール誘導体により密着力が向上する理由は、一以上のメルカプト基が金属と反応し、残ったメルカプト基に加えて、下記式(4)で表される構造部分が絶縁樹脂と反応することにより高い密着力が得られるからであると推察される。なお、式(4)中のnおよびXは、式(1)〜(3)中のnおよびXと同じ意味を有する。
【0036】
【化16】

このトリアジンチオール誘導体は、公知の任意の方法で合成することができる。たとえば、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオンと水酸化アルカリ金属若しくはアルカリ金属ボロンハイドライドとを水若しくは有機溶媒に溶解するか、または、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオンとアミンとを水若しくは有機溶媒に溶解することによりトリアジントリチオールやその塩を作製し、このようにして得たトリチオール化合物をシラン化合物と反応させて作製することができる。
【0037】
このトリアジンチオール誘導体は、本発明に係る金属表面処理液中に1種のみ存在しても複数存在してもよい。本発明の趣旨に反しない限り、その純度にも特に制限はなく、中間体や副産物が混在していてもよい場合もある。
【0038】
本発明に係る金属表面処理液中におけるトリアジンチオール誘導体の濃度は、処理に必要な時間等実情に応じて適宜定めればよい。一般的には0.1mmol/L〜1000mmol/Lの範囲が好ましい。トリアジンチオール誘導体が複数ある場合はその合計が0.1mmol/L〜1000mmol/Lの範囲が好ましい。0.1mmol/Lよりの薄い濃度では、金属表面に十分な膜厚のトリアジンチオール誘導体層が形成されず、また、1000mmol/Lよりも濃いとトリアジンチオール誘導体層が厚くなりすぎ、トリアジンチオール誘導体同士の反応が起こるため、絶縁樹脂と反応することが困難になる場合がある。
【0039】
本発明に係る金属表面処理液は、さらに、有機酸および炭酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの酸を含むことが好ましい。本発明に係る金属表面が空気中における酸化等の化学的変化を受け易いものである場合には、酸化被膜が生じ、トリアジンチオール誘導体による(ピール強度等で測定できる)密着力が低下する場合があるが、本発明に係る有機酸や炭酸(以下「本発明に係る有機酸や炭酸」を纏めて言う場合は「「本発明に係る酸」と呼称する)が共存すると、密着性の低下を防止することが可能となる。なお、本発明において「金属表面」には、そのような化学的変化を受ける前の表面も、そのような化学的変化を受けた後の表面も含まれるが、本発明に係る酸が共存する金属表面処理液は、後者に対して好ましく使用することができる。たとえば銅配線を大気中で形成した場合や、銅配線を、酸素に触れない環境下で形成した後空気に触れた場合が該当する。
【0040】
本発明に係る酸はトリアジンチオール誘導体と共存して金属表面に作用することが重要である。たとえば、本発明に係る酸で処理した後にトリアジンチオール誘導体で処理する場合には、両処理の間に短時間でも空気に曝されると効果が減少する。両処理の間に短時間でも空気に曝さないようにする場合にはある程度の効果は得られると思われるが、装置が複雑になりコストアップにつながる。
【0041】
本発明に係る有機酸の種類については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。炭素数1〜6までの、飽和または不飽和の脂肪族または脂環族の基と1個または2個のカルボン酸基とを有する有機酸を例示することができる。ヒドロキシ基が含まれていてもよい。より具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、グリコール酸、酪酸、イソ酪酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸およびクエン酸を例示することができる。
【0042】
本発明に係る炭酸は公知のどのような方法で作製してもよい。炭酸塩を塩酸等で中和して作製してもよく、水中に炭酸ガスを吹き込んで作製してもよい。
【0043】
本発明に係る酸は、系が中性または酸性側の時にその効果を発揮する。pHが7を超えると酸化被膜を溶解する速度が極めて遅くなる。すなわち、本発明に係る金属表面処理液のpHが7以下であることが好ましい。系のpHは、本発明に係る金属表面処理液中における本発明に係る酸の種類および濃度の他に、本発明に係るトリアジンチオール誘導体の化学構造、その濃度等により変化するので、本発明に係る酸の種類と使用量は、本発明に係るトリアジンチオール誘導体の種類と使用量とを考慮して、本発明に係る金属表面処理液のpHが7以下となるように決めることが好ましい。本発明に係る金属表面処理液のpHは3〜7の範囲にあることがより好ましい。
【0044】
本発明に係るトリアジンチオール誘導体等は溶媒中に溶解して使用される。使用できる溶媒には特に制限はないが、溶解度及び使用の容易さから、水とアルコールとの少なくともいずれか一方を含むものが好ましい。水とアルコールの混合溶媒または水溶媒がより好ましい。
【0045】
本発明に係る金属表面処理液には、本発明の趣旨に反しない限り、他の剤を共存させてもよい。
【0046】
本発明に係る金属表面処理液は、金属表面と絶縁樹脂との間の密着性を向上させること、たとえば金属配線層と絶縁樹脂層との間の密着性を向上させること、を目的とする金属表面の処理に適する。具体的には金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体(たとえば多層配線構造を持つ半導体集積回路装置)において、金属配線層と絶縁樹脂層との間の密着性を向上させることができる。従って、密着性に優れた積層体、たとえば多層配線構造を持つ半導体集積回路装置を得ることができる。
【0047】
このような積層体は、上記金属表面処理液で金属配線表面を処理し、その上に絶縁樹脂層を形成することで得ることができる。この処理については特に制限はないが、金属表面処理液中への金属配線表面の浸漬または金属表面処理液による金属配線表面へのスプレーが簡便かつ確実であり好ましい。なお、金属表面処理液は、使用直前に所定の組成にすればよい。スプレーの場合には、複数の噴射源に別々の組成の処理液があり、スプレーにより本発明に係る組成になるものであってもよい場合もある。
【0048】
本発明に係る金属配線は、上述のごとく、無電解メッキ法、電解メッキ法、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等どのような方法で作製されたものでもよく、インナービアホール、スルーホール、接続端子等を含んだものでもよい。処理の際に金属配線に通電する必要もないため、孤立した配線部位への適用も可能である。
【0049】
本発明に係る金属表面上の樹脂や金属配線上に設ける絶縁樹脂層には、公知の材料を選択して使用することができる。具体的には、耐熱性や絶縁性に優れた、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、オレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等を挙げることができる。なお、これらを複数種使用してもよい。
【0050】
本発明に係る金属表面処理液による金属配線表面の処理後、絶縁樹脂層の形成前に、金属表面処理液により処理された金属配線表面をカップリング剤で処理してもよい。このようにすると、金属表面上にあるトリアジンチオール誘導体の金属と反応に関与しないメルカプト基や式(4)の基がカップリング剤と反応し、さらにカップリング剤の官能基が絶縁樹脂と反応することでトリアジンチオール誘導体のみでは反応性に乏しい絶縁樹脂に対しても高い密着力が得られるようになる。この目的のために使用できるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。特にシラン系カップリング剤が好ましい。カップリング剤の分子中に、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、イミダゾール基、ジアルキルアミノ基、ピリジン基の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0051】
シラン系カップリング剤は、公知のシラン系カップリング剤から適宜選択することができる。具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
カップリング剤による処理については特に制限はないが、カップリング剤液中への銅配線表面の浸漬またはカップリング剤液による銅配線表面へのスプレーが簡便かつ確実であり好ましい。
【0053】
なお、上記を積層体の構成の観点から見直すと、金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体であって、当該金属配線表面と当該絶縁樹脂層との間に、上記式(1)〜(3)に示す構造を有するトリアジンチオール誘導体の少なくとも一つを挟んだ積層体や、金属配線表面と絶縁樹脂層との間に、さらに、シランカップリング剤を挟んだ積層体は、金属配線層と絶縁樹脂層との間の密着性の向上した積層体であると考えることができる。
【0054】
この場合、挟まれたトリアジンチオール誘導体の存在は、オージェ分析、X線マイクロアナライザー(XMA)分析、X線光電子分光装置(XPS)、FT−IR分析等で確認することができる。挟まれたトリアジンチオール誘導体は、金属配線層や絶縁樹脂層と、これまで説明してきたような結合等を生じているものと考えられる。また、シランカップリング剤は、トリアジンチオール誘導体の層と絶縁樹脂層との間に生じさせることが好ましいと言える。ただし、本発明に係る密着効果が発揮される限り、金属配線層や絶縁樹脂層との結合が実際に生じているかどうかの検証やシランカップリング剤がどこにあるかの検証は不要である。
【0055】
本発明に係る金属表面処理液で当該金属配線表面を処理してなる積層体は、一つの積層体中に金属配線層と絶縁樹脂層との組み合わせを複数個有する場合も多い。その典型例がビルドアップ多層回路基板である。以下に、本発明の配線表面処理方法を用いてビルドアップ多層回路基板を形成する方法を図1を用いて例示的に説明する。
【0056】
図1は、ビルドアップ多層回路基板形成時の模式的断面図である。まず、図1(1)に示すように、回路を形成したガラス繊維強化樹脂基板1上に、ビルドアップ絶縁樹脂層2を形成する。絶縁樹脂層2の表面は、密着性を得るための表面粗化処理を施した後、無電解メッキやスパッタ法などで、金属の通電層3を形成する。
【0057】
次に図1(2)に示すように、レジスト4をパターニング形成し、ついで図1(3)に示すように、その開口部に電気メッキ金属5を成長させる。ついで図1(4)に示すように、レジストを剥離した後に、図1(5)に示すように通電層3をエッチングで除去する。
【0058】
次に図1(6)に示すように、本発明に係る金属表面処理液で表面処理を行う。処理方法は、浸漬法やスプレーによる吹き付け法などを用いることができる。処理後、水等の適当な液体で処理面を洗浄すると、本発明に係るトリアジン誘導体6が配線(金属メッキ部分)の上にのみ残存する。
【0059】
その後、図1(7)に示すように、配線表面にシラン系カップリング剤処理を行い、シラン系カップリング剤層7を形成してもよい。カップリング剤処理の方法としては、浸漬法、スプレーによる吹きつけ法などを用いることができる。
【0060】
この後、図1(8)に示すように、次の層である絶縁樹脂層8を形成する。絶縁樹脂層の形成には公知の方法、たとえば半硬化の樹脂シートを貼り付ける方法や溶剤を含む樹脂ワニスを塗布する方法などを採用することができる。ついで、上下の配線の導通をとるために、ビアホールを形成する。このプロセスを繰り返すことにより、多層回路基板を形成できる。
【実施例】
【0061】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。下記例中のトリアジン誘導体の番号は表1のトリアジン誘導体の番号と一致する。なお、すべての例は空気雰囲気中で行った。
【0062】
[実施例1]
0.1mol/Lの2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン1ナトリウム塩(サンチオールN−1、三協化成製)および0.1mol/Lのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903:信越化学工業製)をメチルテトラヒドロフラン中に混合し、80℃で2時間還流し、アミノ基を有するトリアジン誘導体1を得た。
【0063】
厚さ35μmの電気メッキ銅箔を、1重量%のトリアジン誘導体1および、トリアジン誘導体1を溶解させるための水酸化ナトリウム0.1重量%を溶解させた水溶液中に5分間浸漬処理し、水洗後、100℃で30分ベークし、乾燥させた。銅箔上にトリアジン誘導体が残存することをオージェ電子分光法で確認した。
【0064】
処理面に対して、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性エポキシ樹脂シートが接するように重ね、真空プレスで、150℃,1MPa,5分間の条件下、プレスした。その後、真空プレスから取り出し、大気圧下で180℃,1時間の加熱でエポキシ樹脂を硬化させた。
【0065】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、密着力としてのピール強度を測定した。1.1kgf/cm(換算値は1.1kN/m)と既存のアンカー効果と同程度の高いピール強度が得られた。
【0066】
[実施例2]
0.1mol/Lの2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン1ナトリウム塩(サンチオールN−1、三協化成製)および0.1mol/Lのγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803:信越化学工業製)をメチルテトラヒドロフラン中に混合し、80℃で2時間還流し、メルカプト基を有するトリアジン誘導体2を得た。
【0067】
厚さ35μmの電気メッキ銅箔を、1重量%のトリアジン誘導体2および水酸化ナトリウム0.1重量%を溶解させた水溶液中に5分間浸漬処理し、水洗後、100℃で30分ベークし、乾燥させた。
【0068】
処理面に対して、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性エポキシ樹脂シートが接するように重ね、真空プレスで、150℃,1MPa,5分間の条件下、プレスした。その後、真空プレスから取り出し、大気圧下で180℃,1時間の加熱でエポキシ樹脂を硬化させた。
【0069】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、ピール強度を測定した。1.0kgf/cm(換算値は1.0kN/m)と既存のアンカー効果と同程度の高いピール強度が得られた。
【0070】
[実施例3]
0.1mol/Lの2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン1ナトリウム塩(サンチオールN−1、三協化成製)および0.1mol/Lのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403:信越化学工業製)をメチルテトラヒドロフラン中に混合し、80℃で2時間還流し、エポキシ基を有するトリアジン誘導体3を得た。
【0071】
厚さ35μmの電気メッキ銅箔を、1重量%のトリアジン誘導体3および水酸化ナトリウム0.1重量%を溶解させた水溶液中に5分間浸漬処理し、水洗後、100℃で30分ベークし、乾燥させた。
【0072】
処理面に対して、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性エポキシ樹脂シートが接するように重ね、真空プレスで、150℃,1MPa,5分間の条件下、プレスした。その後、真空プレスから取り出し、大気圧下で180℃,1時間の加熱でエポキシ樹脂を硬化させた。
【0073】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、ピール強度を測定した。0.9kgf/cm(換算値は0.9kN/m)と既存のアンカー効果と同程度の高いピール強度が得られた。
【0074】
[実施例4]
0.2mol/Lの2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン1ナトリウム塩(サンチオールN−1、三協化成製)および0.1mol/Lのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903:信越化学工業製)をメチルテトラヒドロフラン中に混合し、80℃で2時間還流し、アミノ基を有するトリアジン誘導体4を得た。
【0075】
厚さ35μmの電気メッキ銅箔を、1重量%のトリアジン誘導体4および水酸化ナトリウム0.1重量%を溶解させた水溶液中に5分間浸漬処理し、水洗後、100℃で30分ベークし、乾燥させた。
【0076】
処理面に対して、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性エポキシ樹脂シートが接するように重ね、真空プレスで、150℃,1MPa,5分間の条件下、プレスした。その後、真空プレスから取り出し、大気圧下で180℃,1時間の加熱でエポキシ樹脂を硬化させた。
【0077】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、ピール強度を測定した。1.1kgf/cm(換算値は1.1kN/m)と既存のアンカー効果と同程度の高いピール強度が得られた。
【0078】
[実施例5]
0.3mol/Lの2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン1ナトリウム塩(サンチオールN−1、三協化成製)および0.1mol/Lのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903:信越化学工業製)をメチルテトラヒドロフラン中に混合し、80℃で2時間還流し、アミノ基を有するトリアジン誘導体5を得た。
【0079】
厚さ35μmの電気メッキ銅箔を、1重量%のトリアジン誘導体5および水酸化ナトリウム0.1重量%を溶解させた水溶液中に5分間浸漬処理し、水洗後、100℃で30分ベークし、乾燥させた。
【0080】
処理面に対して、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性エポキシ樹脂シートが接するように重ね、真空プレスで、150℃,1MPa,5分間の条件下、プレスした。その後、真空プレスから取り出し、大気圧下で180℃,1時間の加熱でエポキシ樹脂を硬化させた。
【0081】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、ピール強度を測定した。0.9kgf/cm(換算値は0.9kN/m)と既存のアンカー効果と同程度の高いピール強度が得られた。
【0082】
[比較例1]
厚さ35μmの電気メッキ銅箔を、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン1ナトリウム塩(サンチオールN−1、三協化成製)1重量%水溶液で5分間浸漬処理し、水洗後、100℃で30分ベークし、乾燥させた。
【0083】
処理面に対して、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性エポキシ樹脂シートが接するように重ね、真空プレスで、150℃,1MPa,5分間の条件下、プレスした。その後、真空プレスから取り出し、大気圧下で180℃,1時間エポキシ樹脂を硬化させた。
【0084】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、ピール強度を測定した。0.5kgf/cm(換算値は0.5kN/m)のピール強度しか得られなかった。
【0085】
[比較例2]
厚さ35μmの電気メッキ銅箔を、1重量%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、KBE−903:信越化学工業製)水溶液を用い、室温で5分間浸漬処理し、水洗後、100℃で30分ベークし、乾燥させ、カップリング剤処理を行った。
【0086】
処理面に対して、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性エポキシ樹脂シートが接するように重ね、真空プレスで、150℃,1MPa,5分間の条件下、プレスした。その後、真空プレスから取り出し、大気圧下で180℃,1時間エポキシ樹脂を硬化させた。
【0087】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、ピール強度を測定した。0.3kgf/cm(換算値は0.3kN/m)のピール強度しか得られなかった。
【0088】
以上の実施例1〜5、比較例1および2の結果を表1にまとめた。
【0089】
【表1】

[実施例6]
1重量%のトリアジン誘導体1および水酸化ナトリウム0.1重量%を溶解させた水溶液に代えて、1重量%のトリアジン誘導体1および水酸化ナトリウム0.1重量%および1重量%の酢酸を溶解させた水溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0090】
このようにして得た積層体を1cm幅に切り込み、密着力としてのピール強度を測定した。1.1kgf/cm(換算値は1.1kN/m)と高いピール強度が得られた。
【0091】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0092】
(付記1)
下記式(1)〜(3)に示す構造を有するトリアジンチオール誘導体の少なくとも一つを含んでなる金属表面処理液。
【0093】
【化17】

【0094】
【化18】

【0095】
【化19】

(式(1)〜(3)において、Rは、互いに独立に、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基またはエトキシ基であり、Aは、各式内および各式毎に独立に、水素、NH、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、nは、各式毎に独立に、0〜3の整数であり、Xは、各式毎に独立に、ビニル基、グリシドキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアナート基である。)
(付記2)
さらに、有機酸および炭酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの酸を含む、付記1に記載の金属表面処理液。
【0096】
(付記3)
pHが7以下である、付記1または2に記載の金属面処理液。
【0097】
(付記4)
水とアルコールとの少なくとも一つを含んでなる、付記1〜3のいずれかに記載の金属表面処理液。
【0098】
(付記5)
金属表面と絶縁樹脂との密着性を向上させるための処理液である、付記1〜4のいずれかに記載の金属表面処理液。
【0099】
(付記6)
金属配線層と絶縁樹脂層との密着性を向上させるための処理液である、付記1〜5のいずれかに記載の金属表面処理液。
【0100】
(付記7)
金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体であって、
当該金属配線表面と当該絶縁樹脂層との間に、下記式(1)〜(3)に示す構造を有するトリアジンチオール誘導体の少なくとも一つを挟んだ積層体。
【0101】
【化20】

【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

(式(1)〜(3)において、Rは、互いに独立に、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基またはエトキシ基であり、Aは、各式内および各式毎に独立に、水素、NH、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、nは、各式毎に独立に、0〜3の整数であり、Xは、各式毎に独立に、ビニル基、グリシドキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアナート基である。)
(付記8)
前記金属配線表面と前記絶縁樹脂層との間に、さらに、シランカップリング剤を挟んだ積層体。
【0104】
(付記9)
金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体であって、
付記1〜6のいずれかに記載の金属表面処理液で当該金属配線表面を処理し、その上に当該絶縁樹脂層を形成してなる積層体。
【0105】
(付記10)
前記金属表面処理液での金属配線表面の処理が、前記金属表面処理液中への金属配線表面の浸漬または前記金属表面処理液による金属配線表面へのスプレーである、付記9に記載の積層体。
【0106】
(付記11)
前記金属表面処理液による前記金属配線表面の処理後、前記絶縁樹脂層の形成前に、金属表面処理液により処理された金属配線表面をシラン系カップリング剤で処理してなる、付記9または10に記載の積層体。
【0107】
(付記12)
前記金属配線層が銅または銅合金よりなる、付記7〜11のいずれかに記載の積層体。
【0108】
(付記13)
前記積層体が多層配線構造を持つ半導体集積回路装置である、付記7〜12のいずれかに記載の積層体。
【0109】
(付記14)
前記絶縁樹脂層が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、オレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つの樹脂を含んでなるものである、付記7〜13のいずれかに記載の積層体。
【0110】
(付記15)
金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体の製造方法において、
付記1〜6のいずれかに記載の金属表面処理液で当該金属配線表面を処理し、その上に当該絶縁樹脂層を形成する、積層体の製造方法。
【0111】
(付記16)
前記金属表面処理液での金属配線表面の処理が、前記金属表面処理液中への金属配線表面の浸漬または前記金属表面処理液による金属配線表面へのスプレーである、付記15に記載の積層体の製造方法。
【0112】
(付記17)
前記金属表面処理液による前記金属配線表面の処理後、前記絶縁樹脂層の形成前に、金属表面処理液により処理された金属配線表面をシラン系カップリング剤で処理する、付記15または16に記載の積層体の製造方法。
【0113】
(付記18)
前記金属配線層が銅または銅合金よりなる、付記15〜17のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0114】
(付記19)
前記積層体が多層配線構造を持つ半導体集積回路装置である、付記15〜18のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0115】
(付記20)
前記金属表面処理液中の前記トリアジンチオール誘導体の濃度が0.1mmol/L〜1000mmol/Lの範囲にある、付記15〜19のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】ビルドアップ多層回路基板形成時の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1 ガラス繊維強化樹脂基板
2 絶縁樹脂層
3 通電層
4 レジスト
5 電気メッキ金属
6 トリアジン誘導体
7 シラン系カップリング剤層
8 絶縁樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(3)に示す構造を有するトリアジンチオール誘導体の少なくとも一つを含んでなる金属表面処理液。
【化1】

【化2】

【化3】

(式(1)〜(3)において、Rは、互いに独立に、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基またはエトキシ基であり、Aは、各式内および各式毎に独立に、水素、NH、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、nは、各式毎に独立に、0〜3の整数であり、Xは、各式毎に独立に、ビニル基、グリシドキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアナート基である。)
【請求項2】
さらに、有機酸および炭酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの酸を含む、請求項1に記載の金属表面処理液。
【請求項3】
金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体であって、
当該金属配線表面と当該絶縁樹脂層との間に、下記式(1)〜(3)に示す構造を有するトリアジンチオール誘導体の少なくとも一つを挟んだ積層体。
【化4】

【化5】

【化6】

(式(1)〜(3)において、Rは、互いに独立に、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基またはエトキシ基であり、Aは、各式内および各式毎に独立に、水素、NH、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムであり、nは、各式毎に独立に、0〜3の整数であり、Xは、各式毎に独立に、ビニル基、グリシドキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアナート基である。)
【請求項4】
金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体であって、
請求項1または2に記載の金属表面処理液で当該金属配線表面を処理し、その上に当該絶縁樹脂層を形成してなる積層体。
【請求項5】
金属配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体の製造方法において、
請求項1または2に記載の金属表面処理液で当該金属配線表面を処理し、その上に当該絶縁樹脂層を形成する、積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−16105(P2007−16105A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197806(P2005−197806)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】