説明

金属部材と組立品

【課題】 連結するアーマチュアの差込孔とトーションダンパの差込孔の間に座金を挟む必要があるため、座金の分だけコストアップし、座金のセットが面倒であり、座金の入れ忘れがあり、製品への組込み後の異常発生の原因となる。
【解決手段】 座金を使用せずに座金を使用したときと同様の効果を得ることができるようにするため、金属部材に突出部を設けて座金代用部とした。突出部の突出高は座金の肉厚と同じ又はほぼ同じにしてある。前記金属部材の突出部の外側にトーションダンパを重ね、突出部の連結孔とトーションダンパの連結孔を位置合わせし、両連結孔に連結具を差し込んでアーマチュアとトーションダンパを連結固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカークーラー、電磁クラッチ等の各種機器に使用される金属部材、例えば、電磁クラッチのアーマチュア、トーションダンパ等と、それらを組立てた組立品に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、電磁クラッチのアーマチュアAは、金属板の中心部にハブ差込孔Bが、外周に連結孔Cが開口されている。トーションダンパDはリング状のアウタープレートEの内側に皿状のインナープレートFが同心円状に配置され、両プレートE、F間にゴムGが加硫されて一体化されている。アウタープレートEの外周縁Hには連結孔Iが、インナープレートFの平板部Jには差込孔Kが開口されている。前記アーマチュアAとトーションダンパDは、図4、5のように重ねて両者の連結孔C、Iが位置合わせされ、その両連結孔C、IにリベットLが差し込まれ、そのリベットLをカシメることにより連結される。また、アーマチュアAのハブ差込孔BからインナープレートFの平板部JにハブMを突き当て、ハブMの差込孔Nと平板部Jの差込孔KにリベットLを差し込み、そのリベットLをカシメることによりインナープレートFにハブMが連結固定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のアーマチュアAとトーションダンパDの連結には次のような課題があった。
(1)アーマチュアAの連結孔Cと、アウタープレートEの連結孔Iとの間に座金O(図4、5)を挟む必要があるため座金Oのセットが面倒である。手袋を嵌めて作業すると座金Oをセットしにくいという課題もある。
(2)座金Oをセットし忘れることもあり、その場合は異常発生の原因となる。異常が製品に組込んでから発生すると製品全体が欠陥品となる虞がある。
(3)座金Oの分だけコストアップする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は座金を使用せずに、座金を使用したのと同様の効果を得ることができるようにした金属部材、例えば、トーションダンパのアウターリングやアーマチュアといった金属部材と、それら金属部材を組立てた組立品を提供するものである。
【0005】
本発明の金属部材は、請求項1記載のように、連結孔が開口されている金属部材であり、連結孔が開口されている他の金属部材と連結孔同士を位置合わせして重ねられ、両連結孔に連結具を差し込み、重ねた金属部材同士を前記連結具で連結する金属部材において、前記一方又は双方の金属部材の重ね面に金属部材の肉厚方向に突出して、重ねた両金属部材間に空間を確保できる突出部が設けられたものである。また請求項2記載のように、連結具を差し込む連結孔が突出部又は/及び他の個所に設けられたものとすることもできる。
【0006】
本発明の組立品は、請求項3記載のように、請求項1又は請求項2記載の金属部材がトーションダンパのアウタープレート又は/及びアーマチュアであり、突出部を挟んで前記トーションダンパと前記アーマチュアを重ね、トーションダンパの連結孔とアーマチュアの連結孔を位置合わせし、その両連結孔に連結具を差し込んでトーションダンパとアーマチュアを連結固定したものである。本発明の組立品は請求項4記載のように、前記組立品のトーションダンパのインナープレートにハブを連結固定することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属部材は次のような効果がある。
(1)金属部材の重ね面に金属部材の肉厚方向に突出する突出部を設けたので、その突出部を座金の代用にすることができ、座金を使用しなくとも座金を使用した場合と同様の機能と効果がある。
(2)座金を使用しないためコストが低減し、金属部材同士の連結作業が容易になるため作業性も向上し、座金の入れ忘れがないため入れ忘れによる異常発生も無い。
【0008】
本発明の組立品は前記金属部材を使用するので組立てが容易であり、構成が簡潔である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
本発明の金属部材と組立品は、他の金属部材と重ねて組立てるものであれば、どのような形状、構造のものであってもよいが、この実施形態では電磁クラッチ用のトーションダンパのアウターリングを一例として図1〜図3に基づいて説明する。
【0010】
本発明の金属部材は、図1に示すアウタープレート1にはリング状の周壁2とその外側に鍔3があり、鍔3の数箇所に鍔3の外側に突出する突起4(図3)を設け、その突起4に金属部材の肉厚方向に突出する突出部を設け、これに連結孔5をあけて孔あき突出部6としてある。図1の孔あき突出部6は、アウタープレート1の鍔3に設けられた三箇所の突起4に形成されているが、その形成箇所、形成数はこれ以外とすることもできる。突起4の形状も図示したものと異なるものとすることができる。孔あき突出部6は他の金属部材を重ねる面に突出させる。孔あき突出部6の突出高は任意とすることができるが、座金の肉厚と同じ又は同じ程度にすると座金の代用に適する。
【0011】
前記アウタープレート1は図1、2のように皿状のインナープレート7の外側に配置され、両者間にゴム8が加硫され、一体化されてトーションダンパ9が形成される。トーションダンパ9はアーマチュア10と組立てることができる。アーマチュア10は従来品と同じものであり、円板状の金属板11の中心部にハブセット孔12が開口され、その外側に円弧状の細長溝13が形成され、外周部三箇所に丸孔(連結孔)14が開口されている。
【0012】
本発明の組立品は図1、2のように前記トーションダンパ9とアーマチュア10とハブ15を組立てたものである。図1、2ではトーションダンパ9のアウタープレート1とアーマチュア10を重ね、アウタープレート1の連結孔5とアーマチュア10の連結孔14を位置合わせし、両連結孔5、14にリベット16を差し込み、そのリベット16をカシメることによりトーションダンパ9とアーマチュア10が連結される。
【0013】
本発明の組立品は図1、2のように、前記アーマチュア10のハブセット孔12からインナープレート7の平板部17にハブ15を押し当て、ハブ15の差込孔18と前記平板部17の差込孔19を位置合わせし、両差込孔18、19にリベット16を差し込み、そのリベット16をカシメることにより、前記平板部17にハブ15が連結固定されている。
【0014】
(実施形態2)
本発明の金属部材と組立品の第二の実施形態を説明する。この実施形態は、連結孔5が金属部材の肉厚方向に突出する突出部とは異なる場所にある形態を説明するものであって、基本的形態は実施形態1と共通する。
【0015】
図6に示すアウタープレート1は、リング状の周壁2の外側に鍔3があり、鍔3の数箇所に金属部材の肉厚方向に突出する突出部20が設けられ、鍔3は突出部20を備えるだけの幅を有する。図6に示す突出部20は、アウタープレート1の鍔3の三箇所に形成され、鍔3の周方向に長く幅が細い円弧形状を呈し、金属部材の肉厚方向であってアーマチュア10と重ねられる面側に突出している。なお、この突出部20の形成箇所や形成数はこれ以外とすることもでき、その形状も半球状突起、角錐状起又は図3に示す孔あき突出部6から連結孔5を除いた形状など、他の形状とすることもできる。
【0016】
(その他の実施形態)
図1に示す孔あき突出部6や図6に示す突出部20は、トーションダンパ9に設けることも、アーマチュア10に設けることも、トーションダンパ9とアーマチュア10の両方に設けることもできるし、それぞれ孔あき突出部6と突出部20を組み合わせて備えることもできる。なお、トーションダンパ9とアーマチュア10の両方に突出部(孔あき突出部6や突出部20)を設け、かつ両者の突出部が付き合わされる場合は、両突出部の突出高さの合計高さが所定の空間となるよう留意する必要がある。また、アーマチュア10に突出部(孔あき突出部6や突出部20)を設ける場合、トーションダンパ9と組み合わせる際に表裏を取り違えないよう、金属板11の両面に突出部を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の金属部材は前記した金属部品以外のものであってもよく、金属部材同士の連結に座金を必要とする各種箇所に利用可能である。組立品も自動車部品、家電品をはじめとして各種部品に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の金属部材及び組立品の説明図。
【図2】本発明の組立品の断面図。
【図3】本発明の金属部材及び組立品の突起の詳細図。
【図4】従来の金属部材及び組立品の説明図。
【図5】従来の組立品の断面図。
【図6】本発明の金属部材及び組立品の他の実施例を示す説明図。
【図7】本発明の組立品の他の実施例を示す断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 アウタープレート
2 周壁
3 鍔
4 突起
5 連結孔
6 孔あき突出部
7 インナープレート
8 ゴム
9 トーションダンパ
10 アーマチュア
11 金属板
12 ハブセット孔
13 細長溝
14 丸孔(連結孔)
15 ハブ
16 リベット
17 平板部
18 ハブの差込孔
19 平板部の差込孔
20 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結孔が開口されている金属部材であり、連結孔が開口されている他の金属部材と連結孔同士を位置合わせして重ねられ、両連結孔に連結具を差し込んで、重ねた金属部材同士を前記連結具で連結する金属部材において、前記一方又は双方の金属部材の重ね面に金属部材の肉厚方向に突出して、重ねた両金属部材間に空間を確保できる突出部が設けられたことを特徴とする金属部材。
【請求項2】
請求項1記載の金属部材において、連結具を差し込む連結孔が突出部又は/及び他の個所に設けられたことを特徴とする金属部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の金属部材がトーションダンパのアウタープレート又は/及びアーマチュアであり、突出部を挟んで前記トーションダンパと前記アーマチュアを重ね、トーションダンパの連結孔とアーマチュアの連結孔を位置合わせし、両連結孔に連結具を差し込んでトーションダンパとアーマチュアを連結固定したことを特徴とする組立品。
【請求項4】
請求項3記載の組立品のトーションダンパのインナープレートにハブを連結固定したことを特徴とする組立品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−264581(P2009−264581A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306281(P2008−306281)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000247971)株式会社マルナカ (10)
【Fターム(参考)】