説明

金属部材

【課題】アスペクト比の高いナノピラー、ナノロッド等の金属部材、その製造方法の提供。
【解決手段】規則化度が70%以上の陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填し、充填後、不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させた金属部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスペクト比の高いナノピラー、ナノロッド等の金属部材、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノピラーとは、ナノメータレベルの柱(ピラー)が規則正しく配列した構造体をいう。ナノロッドとは、ナノワイヤーともいわれ特徴的にはナノサイズのロッド状金属微粒子が挙げられるが、基板上に金属ナノロッドが規則的に形成されたものはナノピラーとも呼ばれる。このようなナノ粒子は、量子閉じ込め効果からバルクとは全く異なる物理化学的特性を発現し、半導体や蛍光体などの電子デバイスを製造すればその特性の飛躍的向上が期待できる。
【0003】
特許文献1には、規則性のある細孔が並んだ陽極酸化皮膜構造の細孔に物質を充填して転写させることにより製造されるナノピラー構造体が記載されている。
また、特許文献2には、同様の陽極酸化皮膜を用いて金属ナノワイヤーを製造することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、有機スカホールドが実質的に除去された無機ナノワイヤで、本質的に、有機スカホールドを実質的に含まない融合無機ナノ粒子からなる、無機ナノワイヤ、が記載されている。遺伝子操作ウイルススカホールドは、ナノ粒子またはナノ結晶がスカホールド上に形成される際にテンプレートとなる。
また、特許文献3では単離した金属ナノワイヤーを熱処理する記載がある。
特許文献4には、金属ナノロッドを熱処理する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−62049号公報
【特許文献2】特開2005−256102号公報
【特許文献3】特表2007−525395号公報
【特許文献4】特開2008−192680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電解法で基板上に所定の位置、所定の形状に直流低電圧でナノ材料を作製することが出来る方法。すなわち、ポーラスアルミナをナノ材料製作におけるテンプレートとすることは既に知られ、先行技術である。しかし、多種類の応用用途において、さらに優れた特性を有するナノピラーやナノロッドの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、ナノロッド、ナノピラーを熱処理によって結晶性を向上させ、電気磁気的特性を向上させることができることを知見し、本発明を完成させた。
また、ナノピラー、ナノロッド金属部材の一部または全体を貴金属で被覆すれば、電気磁気的特性をさらに向上させることができることを知見し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)規則化度が70%以上の陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填し、充填後、不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させた金属部材。
(2)規則化度が70%以上の陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填し、充填後、不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させ、陽極酸化皮膜を除去しアスペクト比が5以上の金属部材としてなるナノピラーまたはナノロッド金属部材。
(3)直径が0.02〜0.4μm、長さが10〜200μm、アスペクト比が5以上のナノピラーまたはナノロッド金属部材で、該金属部材の一部、または全部が少なくとも1種の貴金属で被覆された金属部材。
(4)陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填し、充填後、不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させ、陽極酸化皮膜を除去しアスペクト比が5以上である金属部材を得る、金属部材の製造方法。
(5)陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填した後、陽極酸化皮膜の一部を溶解させ、金属を露出させ、該露出部を異種の金属で被覆し、その後陽極酸化皮膜を溶解し、ナノピラーまたはナノロッド金属部材を製造する方法。
(6)前記陽極酸化皮膜の一部を溶解させて金属を露出させる工程、および該露出部を異種の金属で被覆する工程を2回以上行う、(5)に記載の金属部材を製造する方法。
(7)上記(1)または(3)に記載の金属部材を用いたプローブ用探針。
(8)上記(1)または(3)に記載の金属部材を用いた磁気分離または磁気クロマトグラフィー用の磁性体。
(9)上記(3)に記載の金属部材を用いたナノバーコード。
(10)上記(2)または(3)に記載のナノロッドを樹脂中に磁場を用いて配向させて得られる異方導電性部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、結晶性の向上したナノピラー金属部材、またはナノロッド金属部材であるので、磁気記録媒体や発光素子等に用いるとそれらの性能を向上させることができる。
また、本発明は、一部または全部に貴金属が被覆されたナノピラー金属部材、またはナノロッド金属部材であるので、SPM用プローブとして、又は半導体検査用のプローブカードの探針、ナノバーコード、ナノタグとして有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(A),(B)は、本発明の金属部材の好適な実施態様の一例を示す簡略図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)の切断面線IB−IBからみた断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の金属部材を説明する断面図であり、図2(A)は,本発明のナノピラー金属部材の断面図であり、図2(B)は、ナノロッド金属部材の断面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の金属部材を説明する断面図であり、図3(A)は、本発明のナノピラー金属部材の断面図であり、図3(B)は、ナノロッド金属部材の断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の金属部材の別の態様を説明する断面図であり、図4(A)は、本発明のナノピラー金属部材の断面図であり、図4(B)は、ナノロッド金属部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の金属部材は、規則化度が70%以上の陽極酸化皮膜において、密度が200万個/mm2以上で存在する細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填しその後熱処理により結晶性を向上させた金属部材である。
また、本発明の第2の金属部材は、直径が0.02〜0.3μm、長さが10〜200μm、アスペクト比が5以上のナノピラーまたはナノロッド金属部材で、該金属部材の一部、または全体が貴金属で被覆された金属部材である。
【0012】
以下に、本発明の金属部材およびその製造方法を詳細に説明する。
本発明の第1、第2の金属部材は、金属や非金属の基板上に多数の柱状の金属がほぼ垂直に林立するナノピラー金属部材であってもよい。また、このようなナノピラー金属部材が、基板から分離された、個別のナノロッド金属部材であってもよい。また、多数の柱状の金属が絶縁性基材を厚み方向に貫通し、かつ、上記各柱状金属の一端が上記絶縁性基材の一方の面において突出し、上記各柱状金属の他端が上記絶縁性基材の他方の面において突出した状態で設けられていてもよい。
【0013】
[金属部材]
図1、図2は、本発明の第1の金属部材の好適な実施態様の一例を示す簡略図である。図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)の切断面線IB−IBからみた断面図である。
本発明の第1の金属部材1は、図2(A)に示すように、基材20上に多数の柱状の金属部材3が規則的に林立するナノピラーであってもよく、図2(B)に示すように、単独のナノロッド金属部材3であってもよい。また、図1に示すように絶縁性基材2中に複数の金属部材3を有するものであってもよい。
この金属部材3は、軸線方向の長さが絶縁性基材2の厚み6の長さ(厚み)以上で、かつ、密度が好ましくは100万個/mm2〜4000万個/mm2
150万個/mm2〜4000万個/mm2がより好ましく
200万個/mm2〜3000万個/mm2の範囲が最も好ましい。
この範囲で高アスペクトのナノロッド、ナノピラーを容易に作成できる。
更に、この金属部材3は、少なくとも絶縁性基材2内の部分が、該絶縁性基材2の厚み方向と略平行(図1においては平行)となるように設けられるのが好ましい。
【0014】
本発明の第1および第2の金属部材3のアスペクト比は5以上である。柱状金属部材の高さ/直径=アスペクト比の範囲は5以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは40以上、さらには2500以下が好ましい。アスペクト比がこの範囲であると、プローブ等の用途に有用である。
【0015】
金属部材の具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属が好適に例示される。金、銀、白金は、触媒作用や独自の光学特性を有する貴金属であり、銅は導電性が高く、鉄、ニッケル、コバルト等は強磁性金属として本発明のナノピラーまたはナノロッドの金属部材として有用である。中でも銅、金、アルミニウム、ニッケルがより好ましく、銅、金が特に金属部材として好ましい。
【0016】
本発明の第1の金属部材は、後述する熱処理がされているので結晶性が向上する。好ましくは下記の測定法によりシェーラー(Scherrer)の式から算出できる結晶子の大きさが101nm以上である。
<結晶性と表面酸化の評価>
結晶サイズの測定は、X線回折の線幅から測定できる。回折線のプロファイルは各結晶形の線幅の総和となるので、結晶子サイズが小さくなるほど回折線は広がることが知られている。結晶子の大きさが十分に大きく、格子歪みが存在しない試料のデータ一を用いて回折角に依存する装置固有の線幅を差し引いて、測定された回折線の半値幅をScherrerの式に入れて、結晶子の大きさDが算出できる。
最も強い回折線のピークを使用した。酸化の進行したものは、金属以外に金属酸化物の回折線が検出され、酸化が進行している事が確認できるので酸化の影響がないもので測定する。
【0017】
[数1]
Scherrerの式
結晶子の大きさD[Å]=K×λ/(β×cosθ)
K:Scherrer定数、λ:使用するX線管球の波長、β:回折線の半値幅
θ:回折角
【0018】
本発明の金属部材は柱状であり、その直径(図1(B)においては符号8で表される部分)は20〜400nmであるのが好ましく、20〜300nm、40〜200nmであるのがより好ましく、50〜100nmであるのが更に好ましい。金属部材の直径がこの範囲であると、電気信号を流した際に十分な応答を得ることができるため、本発明の金属部材を電子部品の検査用コネクタとして、より好適に用いることができる。
【0019】
本発明においては、隣接する各金属部材の中心間距離(図1においては符号9で表される部分。以下、「ピッチ」ともいう。)は、20〜500nmであるのが好ましく、40〜200nmであるのがより好ましく、50〜140nmであるのが更に好ましい。ピッチがこの範囲であると、金属部材直径と絶縁性基材の隔壁厚とのバランスがとりやすい。
【0020】
金属部材の長さ(図1、2における符号30の部分)は用途によって種々選択できるが10〜200μmが好ましい。
【0021】
絶縁性基材2は、上述したように、厚みが30〜1000μmであり、かつ、上記金属部材の直径が5〜500nmであるのが、高い絶縁性を維持しつつ、かつ、高密度で導通が確認できる理由から好ましい。
【0022】
本発明の第1の金属部材においては、上記絶縁性基材は、マイクロポアについて下記式(i)により定義される規則化度が70%以上である。好ましくは、75%以上、より好ましくは80%以上である。規則化度の上限は100%であるが、陽極酸化皮膜の形成に先立ちナノインプリント法やFIB法など人工的な方法でマイクロポアの起点となる窪みを形成すれば、規則化度はほぼ100%であり、自己規則化法による起点形成では、自然発生的にドメインと呼ばれる不連続境界が発生するので98%程度となる。
規則化度をこの範囲とすれば本発明の第1の金属部材の結晶性が高い。
【0023】
規則化度(%)=B/A×100 (i)
上記式(i)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポア(細孔)の全数を表す。Bは、一のマイクロポアの断面の略円の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に上記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる上記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。規則化度の測定方法の詳細については、特開2008−270157号公報に記載されている。
【0024】
[絶縁性基材]
本発明の金属部材を構成する上記絶縁性基材は、マイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜からなる構造体である。
ここで、アルミニウムの陽極酸化皮膜の素材であるアルミナは、例えば、熱可塑性エラストマー等と同様、電気抵抗率は1014Ω・cm程度である。
【0025】
本発明においては、上記絶縁性基材の厚み(図1(B)においては符号6で表される部分)は、10〜2000μmであるのが好ましく、50〜1500μmであるのがより好ましく、100〜1000μmであるのが特に好ましい。絶縁性基材の厚みがこの範囲であると、絶縁性基材の取り扱い性が良好となる。
【0026】
また、本発明においては、上記絶縁性基材における上記金属部材3の幅(図1(B)においては符号7で表される部分)は、10nm以上であるのが好ましく、30nm以上であるのが好ましく、50nm以上であるのが最も好ましい。上限は200nm以下が好ましく、180nm以下がさらに好ましく、150nm以下が最も好ましい。
絶縁性基材の幅がこの範囲であると、金属部材のアスペクト比が高くても隣接するピラーとの接触が起き難く、独立した状態で自立できる。
【0027】
本発明においては、上記絶縁性基材は、例えば、アルミニウム基板を陽極酸化し、陽極酸化により生じたマイクロポアを貫通化することにより製造することができる。
ここで、陽極酸化および貫通化の処理工程については、後述する本発明の製造方法において詳述する。
【0028】
<本発明の第1の金属部材の製造方法>
本発明の第1の金属部材の好適な製造方法は、少なくとも、
(1)アルミニウム基板を陽極酸化し、規則化度が70%以上のマイクロポアを有するアルミナ皮膜を形成する陽極酸化処理工程、
(2)前記陽極酸化処理工程の後に、前記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して前記絶縁性基材を得る貫通化処理工程、および
(3)前記貫通化処理工程の後に、得られた前記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に金属を充填する金属充填工程、および
(4)不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させる工程、
を具備する、製造方法である。必要な場合は、さらに、
(5)陽極酸化皮膜の一部または全部を除去する陽極酸化皮膜除去工程を行い
アスペクト比が5以上で結晶性が向上したナノピラー金属部材、またはナノロッド金属部材を得る製造方法である。
【0029】
[アルミニウム基板]
本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法においては、アルミニウム基板のうち、後述する陽極酸化処理工程により陽極酸化皮膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、95.0質量%以上であるのが好ましく、99.5質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、マイクロポアの配列の規則性が向上するので好ましい。
【0031】
また、本発明の製造方法においては、アルミニウム基板のうち後述する陽極酸化処理工程を施す表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理が施されるのが好ましい。
【0032】
<熱処理>
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。これにより、後述する陽極酸化処理工程により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法が挙げられる。
【0033】
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
【0034】
脱脂処理としては、具体的には、例えば、各種アルコール(例えば、メタノール等)、各種ケトン(例えば、メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
【0035】
これらのうち、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない観点から、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
【0036】
また、脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
【0037】
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基板の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
【0038】
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法等が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる場合、使用する研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
【0039】
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法等が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に例示される。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
【0040】
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
【0041】
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更する機械研磨を施し、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
【0042】
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa、0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
【0043】
[(1)陽極酸化処理工程]
上記陽極酸化工程は、上記アルミニウム基板に陽極酸化処理を施すことにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する工程である。
本発明においては、陽極酸化処理として従来公知の方法を用いることができるが、上記絶縁性基材が、上記式(i)により定義される規則化度に優れた、好ましくは、該規則化度が70%以上となるように配列するマイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜であるため、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
また、陽極酸化処理は定電圧処理として実施することが好ましい。
【0044】
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
【0045】
自己規則化法によりマイクロポアを形成するには、少なくとも後述する陽極酸化処理(A)を施せばよいが、後述する自己規則化方法Iまたは自己規則化方法IIにより形成するのが好ましい。
次に、好適態様である自己規則化方法Iおよび自己規則化方法IIについて詳述する。
【0046】
[(1−a)自己規則化方法I]
自己規則化方法Iでは、陽極酸化処理(陽極酸化処理(A))を施した後、陽極酸化皮膜を溶解する酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を完全に溶解(脱膜処理(B))した後に、再度陽極酸化(再陽極酸化処理(C))を施す。
次に、自己規則化方法Iの各処理について詳述する。
【0047】
<陽極酸化処理(A)>
陽極酸化処理(A)における電解液の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理(A)を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
【0048】
陽極酸化処理(A)は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。
陽極酸化処理(A)に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
陽極酸化処理(A)の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
【0050】
陽極酸化処理(A)の処理時間は、0.5分〜16時間であるのが好ましく、1分〜12時間であるのがより好ましく、2分〜8時間であるのが更に好ましい。
【0051】
陽極酸化処理(A)は、一定電圧下で行う以外に、電圧を断続的または連続的に変化させる方法も用いることができる。この場合は電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
【0052】
本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜300μmであるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ましく、10〜100μmであるのが更に好ましい。
【0053】
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの平均ポア密度は200万個/mm2以上であるのが好ましい。
また、マイクロポアの占める面積率は、1%〜60%の範囲が好ましく、3%〜50%の範囲がさらに好ましく、5%〜40%の範囲が最も好ましい。
ここで、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
【0054】
<脱膜処理(B)>
脱膜処理(B)は、上記陽極酸化処理(A)によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する処理である。
上記陽極酸化処理(A)によりアルミニウム基板表面に陽極酸化皮膜を形成した後、後述する貫通化処理工程を直ちに施してもよいが、上記陽極酸化処理(A)の後、更に脱膜処理(B)および後述する再陽極酸化処理(C)をこの順で施した後に、後述する貫通化処理工程を施すのが好ましい。
【0055】
陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板に近くなるほど規則性が高くなっているので、この脱膜処理(B)により、一度陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に露出させて、規則的な窪みを得ることができる。したがって、脱膜処理(B)では、アルミニウムは溶解させず、アルミナ(酸化アルミニウム)からなる陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
【0056】
アルミナ溶解液は、従来公知のものを限定せずに使用できるが、クロム化合物、硝酸、リン酸、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
【0057】
具体的なクロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。
上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
【0058】
中でも、上記アルミナ溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
【0059】
アルミナ溶解液は、−10℃以上であるのが好ましく、−5℃以上であるのがより好ましく、0℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
【0060】
アルミナ溶解液は、アルミナを溶解し、アルミニウムを溶解しない。ここで、アルミナ溶解液は、アルミニウムを実質的に溶解させなければよく、わずかに溶解させるものであってもよい。
【0061】
脱膜処理(B)は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
【0062】
浸せき法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
【0063】
<再陽極酸化処理(C)>
上記脱膜処理(B)により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
再陽極酸化処理(C)における陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(A)と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
【0064】
また、再陽極酸化処理(C)を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、再陽極酸化処理(C)を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
【0065】
本発明の製造方法においては、このような再陽極酸化処理(C)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、10〜1000μmであるのが好ましく、20〜500μmであるのが更に好ましく、30〜150μmであるのが最も好ましい。
【0066】
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(C)により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径は0.01〜0.5μmであるのが好ましく、0.03〜0.4μmであるのがより好ましい。
平均ポア密度は、200万個/mm2以上であるのが好ましい。
【0067】
[(1−b)自己規則化方法II]
自己規則化方法IIでは、アルミニウム基板表面を陽極酸化処理し(陽極酸化処理(D))、酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を部分的に溶解させ(酸化皮膜溶解処理(E))、再度陽極酸化処理を実施して前記マイクロポアを深さ方向に成長したのちに、前記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。
次に、自己規則化方法IIの各処理について詳述する。
【0068】
<陽極酸化処理(D)>
陽極酸化処理(D)は、従来公知の電解液を用いることができるが、直流定電圧条件下にて、通電時の皮膜形成速度Aと、非通電時の皮膜溶解速度Bとした時、以下一般式(ii)で表されるパラメータRが、160≦R≦200、好ましくは170≦R≦190、特に好ましくは175≦R≦185を満たす電解液を用いて処理を施すことで、孔の規則配列性を大幅に向上することができる。
【0069】
R=A[nm/s]÷(B[nm/s]×印加電圧[V]) ・・・ (ii)
【0070】
陽極酸化処理(D)における電解液の平均流速は、上述した陽極酸化処理(A)と同様、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理(D)を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、上述した陽極酸化処理(A)と同様、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。そのようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
また、陽極酸化処理液の粘度としては、25℃1気圧下における粘度が0.0001〜100.0Pa・sが好ましく、0.0005〜80.0Pa・sが更に好ましい。上記範囲の粘度を有する電解液で陽極酸化処理(D)を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
【0071】
陽極酸化処理(D)で用いる電解液には、酸性、アルカリ性いずれも使用することができるが、孔の真円性を高める観点から酸性の電解液が好適に用いられる。
具体的には、上述した陽極酸化処理(A)と同様、塩酸、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて、上記一般式(ii)の計算式より所望のパラメータに調整して用いることができる。
【0072】
陽極酸化処理(D)の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、上述した陽極酸化処理(A)と同様、一般的には電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜500V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
【0073】
本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(D)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1〜300μmであるのが好ましく、0.5〜150μmであるのがより好ましく、1〜100μmであるのが更に好ましい。
【0074】
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(D)により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの平均ポア密度は200万個/mm2であるのが好ましい。
また、マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
【0075】
<酸化皮膜溶解処理(E)>
酸化皮膜溶解処理(E)は、上記陽極酸化処理(D)により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。
【0076】
酸化皮膜溶解処理(E)は、上記陽極酸化処理(D)後のアルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
【0077】
酸化皮膜溶解処理(E)において、酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でも、クロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜60℃であるのが好ましい。
一方、酸化皮膜溶解処理(E)において、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
【0078】
また、酸化皮膜溶解処理(E)において、ポア径の拡大量は陽極酸化処理(D)の条件により異なるが、処理前後の拡大比が1.05倍〜100倍が好ましく、1.1倍〜75倍がより好ましく、1.2倍〜50倍が特に好ましい。
【0079】
自己規則化方法IIにおいては、上記酸化皮膜溶解処理(E)の後に、再度上記陽極酸化処理(D)を施すのが好ましい。
【0080】
再度の陽極酸化処理(D)により、アルミニウム基板の酸化反応が進行し、アルミニウム基板上に、マイクロポアの深さがより深い陽極酸化皮膜を有するアルミニウム部材が得られる。なお、陽極酸化皮膜のアルミニウム基板側には、バリア層が存在している。
【0081】
また、自己規則化方法IIにおいては、上記陽極酸化処理(D)、上記酸化皮膜溶解処理(E)および上記陽極酸化処理(D)をこの順に施した後に、更に上記酸化皮膜溶解処理(E)を施すのが好ましい。
【0082】
この処理により、マイクロポアの中に処理液が入るため、再度の陽極酸化処理(D)で形成された陽極酸化皮膜を全て溶解し、再度の陽極酸化処理(D)で形成されたマイクロポアのポア径を広げることができる。
即ち、再度の酸化皮膜溶解処理(E)により、陽極酸化皮膜の変曲点より表面側のマイクロポアの内部が溶解し、すなわち、マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜が除去されて、アルミニウム基板上に、直管状のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を有するアルミニウム部材が得られる。なお、陽極酸化皮膜のアルミニウム基板側には、バリア層が存在している。
【0083】
ここで、マイクロポアのポア径の拡大量は、再度の陽極酸化処理(D)の処理条件により異なるが、処理前後の拡大比が1.05倍〜100倍が好ましく、1.1倍〜75倍がより好ましく、1.2倍〜50倍が特に好ましい。
【0084】
自己規則化方法IIは、上述した陽極酸化処理(D)と酸化皮膜溶解処理(E)のサイクルを1回以上行うものである。繰り返しの回数が多いほど、上述したポアの配列の規則性が高くなる。
また、直前の陽極酸化処理(D)で形成された陽極酸化皮膜を酸化皮膜溶解処理(E)で全て溶解することにより、皮膜表面から見たマイクロポアの真円性が飛躍的に向上するため、上記サイクルを2回以上繰り返して行うのが好ましく、3回以上繰り返して行うのがより好ましく、4回以上繰り返して行うのが更に好ましい。
また、上記サイクルを2回以上繰り返して行う場合、各回の酸化皮膜溶解処理および陽極酸化処理の条件は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、最後の処理を陽極酸化処理で終えてもよい。
【0085】
本発明の製造方法においては、陽極酸化処理として、以下に述べるインプリント処理を用いた方法も好ましく用いることができる。
【0086】
[(1−c):インプリント処理を用いた方法]
インプリント処理を用いた方法では、アルミニウム基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理の前に、陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる複数の窪みを該アルミニウム基板の表面に所定の間隔および配列で形成させておく。このような窪みを形成させることにより、マイクロポアの配列およびポア径の真円度を所望の範囲に制御することが容易となる。
【0087】
窪みを形成させる方法は、特に限定されず、例えば、インプリント(転写)法を含む物理的方法、粒子線法、ブロックコポリマー法、レジストパターン・露光・エッチング法が挙げられる。なお、インプリント処理では、窪みの形成に、自己規則化方法(I)における、陽極酸化処理工程(A)および脱膜処理(B)をこの順に実施することにより窪みを形成する手順や、電気化学的粗面化処理によりくぼみを形成する手順のような電気化学的な方法は用いない。
陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる複数の窪みを所定の間隔および配列で形成させておくことにより陽極酸化により形成されるマイクロポアの起点を任意の所望の配列とすることができるようになり、得られる構造体の真円性を高くすることができる。
【0088】
<物理的方法>
例えば、インプリント法(突起を有する基板またはロールをアルミニウム基板に圧接し、凹部を形成する、転写法、プレスパターニング法)を用いる方法が挙げられる。具体的には、複数の突起を表面に有する基板をアルミニウム基板の表面に押し付けて窪みを形成させる方法が挙げられる。例えば、特開平10−121292号公報に記載されている方法を用いることができる。
また、アルミニウム基板の表面にポリスチレン球を稠密状態で配列させ、その上からSiO2を蒸着した後、ポリスチレン球を除去し、蒸着されたSiO2をマスクとして基板をエッチングして窪みを形成させる方法も挙げられる。
【0089】
<粒子線法>
粒子線法は、アルミニウム基板の表面に粒子線を照射して窪みを形成させる方法である。粒子線法は、窪みの位置を自由に制御することができるという利点を有する。
粒子線としては、例えば、荷電粒子ビーム、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)、電子ビームが挙げられる。
粒子線法としては、例えば、特開2001−105400号公報に記載されている方法を用いることもできる。
【0090】
<ブロックコポリマー法>
ブロックコポリマー法は、アルミニウム基板の表面にブロックコポリマー層を形成させ、熱アニールによりブロックコポリマー層に海島構造を形成させた後、島部分を除去して窪みを形成させる方法である。
ブロックコポリマー法としては、例えば、特開2003−129288号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0091】
<レジストパターン・露光・エッチング法>
レジストパターン・露光・エッチング法は、フォトリソグラフィあるいは電子ビームリソグラフィ法により、アルミニウム基板の表面上に形成したレジスト膜に露光および現像を施し、レジストパターンを形成した後これをエッチングする。レジストを設け、エッチングしてアルミニウム基板の表面まで貫通した窪みを形成させる方法である。
【0092】
上述した種々の窪みを形成させる方法の中でも、物理的方法、FIB法、レジストパターン・露光・エッチング法が望ましい。
【0093】
インプリント処理において、アルミニウム基板の表面に複数の窪みを所定の間隔および配列で形成する場合、特に0.1μm前後の間隔で微細な窪みを形成する場合、上記アルミニウム板表面に微細な窪みを人工的に規則正しく形成するのに、電子ビームリソグラフィやX線リソグラフィなどを用いた高解像度の微細加工技術を毎回適用することは経済的でないため、複数の突起を表面に備えた基板を陽極酸化するアルミニウム基板表面に押し付けるインプリント(転写)法が好ましい。
具体的には、突起を有する基板またはロールをアルミニウム基板表面に密着させ、油圧プレスなどを用いて圧力を印加することにより実施できる。基板に設ける突起の配列(パターン)は、陽極酸化処理によって形成する陽極酸化皮膜のマイクロポアの配列に対応させるものとし、正六角形状の周期的な配列は言うに及ばず、周期的配列の一部を欠いたような任意のパターンとすることもできる。また、突起を形成する基板は鏡面の表面を有するとともに、押し付ける圧力により突起が破壊したり、突起の配置が変形することのない強度と硬度を有するものが望ましい。このためには、アルミニウムやタンタルのような金属基板も含め、微細加工が容易で汎用的なシリコン基板等を用いることができるが、強度の高いダイヤモンドやシリコンカーバイドで構成されている基板は、繰り返し使用回数を多くすることができるので、より望ましい。これによって、突起を有する基板またはロールを1個作製しておけば、これを繰り返し使用することにより、効率的に多数のアルミニウム板に規則的な窪み配列を形成することができる。
【0094】
上記のインプリント法を用いた場合の圧力としては、基板の種類にもよるが、0.001〜100トン/cm2が好ましく、0.01〜75トン/cm2がより好ましく、0.1〜50トン/cm2が特に好ましい。
また、プレス時の温度としては、0〜300℃が好ましく、5〜200℃がより好ましく、10〜100℃が特に好ましく、プレスの時間としては、2秒〜30分が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜5分が特に好ましい。
また、プレス後の表面形状を固定化する観点から、アルミニウム基板の表面を冷却する方法も後処理として付け加えることができる。
【0095】
インプリント処理を用いた方法では、上記のようにアルミニウム基板の表面に窪みを形成した後、該アルミニウム基板表面に陽極酸化処理を施す。
このとき、陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができ、一定電圧で処理する方法や、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。
【0096】
また、陽極酸化処理を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、陽極酸化処理を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
【0097】
本発明においては、このような陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、30〜1000μmであるのが好ましく、50〜500μmであるのが更に好ましい。
【0098】
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径は0.01〜0.5μmであるのが好ましく、0.03〜0.4μmであるのがより好ましい。
平均ポア密度は、200万個/mm2以上であるのが好ましい。
本発明の製造方法においては、陽極酸化処理工程で上記(1−a)〜(1−c)の処理のいずれかを実施することが好ましい。
【0099】
<定電流処理>
定電流処理は、上述した陽極酸化処理の後に行われる。これにより、規則化配列性を落とすことなく、酸化アルミニウムの膜厚を厚くし、マイクロポアの軸方向長さを長くすることが可能となる。
【0100】
一定電圧下での陽極酸化処理後の一定電流下での陽極酸化処理では、電解時間は5分〜30時間が好ましく、30分〜5時間がより好ましい。定電流とは、好ましくは定電流設定にし、変動幅は好ましくは±10〜1A/m2に制御する。
【0101】
定電流処理、陽極酸化処理での電解液、電解液濃度、温度条件は同じでも良いが、異なっていてもよい。
一定電圧下での陽極酸化処理後の一定電流下での陽極酸化処理では、電流密度は0〜10000A/mが好ましく、0〜1000A/mが更に好ましく、0〜400A/mが最も好ましい。
【0102】
[(2)貫通化処理工程]
上記貫通化処理工程は、上記陽極酸化処理工程の後に、上記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して上記絶縁性基材を得る工程である。
上記貫通化処理工程では、下記(2−a)または(2−b)の処理を実施することが好ましい。
(2−a)酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を溶解し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理(化学溶解処理)。
(2−b)陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を機械的に研磨し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理(機械的研磨処理)。
以下(2−a)、(2−b)の処理について詳述する。
【0103】
[(2−a)化学溶解処理]
化学溶解処理では、具体的には、例えば、上記陽極酸化処理工程の後に、アルミニウム基板を溶解し、さらに、陽極酸化皮膜の底部を除去して、マイクロポアによる孔を貫通化させる。
【0104】
<アルミニウム基板の溶解>
上記陽極酸化処理工程の後のアルミニウム基板の溶解は、陽極酸化皮膜(アルミナ)は溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いる。
即ち、アルミニウム溶解速度1μm/分以上、好ましくは3μm/分以上、より好ましくは5μm/分以上、および、陽極酸化皮膜溶解速度0.1nm/分以下、好ましくは0.05nm/分以下、より好ましくは0.01nm/分以下の条件を有する処理液を用いる。
具体的には、アルミよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下8以上、好ましくは3以下9以上、より好ましくは2以下10以上の処理液を使用して浸漬処理を行う。
【0105】
このような処理液としては、酸またはアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものであるのが好ましい。
中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物をブレンドするのが好ましい。
特に、塩酸水溶液に塩化水銀をブレンドした処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅をブレンドした処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。
なお、このような処理液の組成は特に限定されず、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、王水等を用いることができる。
【0106】
また、このような処理液の酸またはアルカリ濃度は、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
【0107】
更に、このような処理液を用いた処理温度は、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
【0108】
本発明の製造方法においては、アルミニウム基板の溶解は、上記陽極酸化処理工程の後のアルミニウム基板を上述した処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
【0109】
<陽極酸化皮膜の底部の除去>
アルミニウム基板を溶解した後の陽極酸化皮膜の底部の除去は、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより行う。底部の陽極酸化皮膜が除去されることにより、マイクロポアによる孔が貫通する。
【0110】
陽極酸化皮膜の底部の除去は、予めpH緩衝液に浸漬させてマイクロポアによる孔の開口側から孔内にpH緩衝液を充填した後に、開口部の逆面、即ち、陽極酸化皮膜の底部に酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させる方法により行うのが好ましい。
【0111】
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
【0112】
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液や、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
【0113】
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
また、予めpH緩衝液に浸漬させる場合は、上述した酸/アルカリに適宜対応した緩衝液を使用する。
【0114】
[(2−b)機械的研磨処理]
機械的研磨処理では、具体的には、例えば、上記陽極酸化処理工程の後に、アルミニウム基板およびアルミニウム基板近傍の陽極酸化皮膜を機械的に研磨して除去することにより、マイクロポアによる孔を貫通化させる。
機械的研磨処理では、公知の機械的研磨処理方法を幅広く用いることができ、例えば、鏡面仕上げ処理について例示した機械研磨を用いることができる。但し、精密研磨速度が高いことから化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことが好ましい。CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPLANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
【0115】
これらの貫通化処理工程により、アルミニウム基板およびバリア層がなくなった状態の構造物、即ち、絶縁性基材が得られる。
【0116】
<加熱処理>
必要な場合は、貫通化処理後の絶縁性基材構造体を、200℃〜600℃の範囲で空気中で15分〜3時間加熱し、構造体のひずみ、残留水分等を除去する工程を行ってもよい。
【0117】
[(3)金属充填工程]
金属充填工程は、上記貫通化処理工程の後に、得られた上記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に金属を充填して金属部材を得る工程である。
上記導電性部材充填工程では、下記(3−a)〜(3−c)のいずれかの処理を実施することが好ましい。
(3−a)金属を有する液中に、前記貫通化した孔を有する絶縁性基材を浸漬し、該孔内に金属部材を充填する処理(浸漬処理)。
(3−b)電解めっきにより、前記貫通化した孔内に金属部材を充填する処理(電解めっき処理)。
(3−c)蒸着により前記貫通化した孔内に金属部材を充填する処理(蒸着処理)。
以下(3−a)〜(3−c)の処理について詳述する。
【0118】
[(3−a)浸漬処理]
金属を有する液中に、前記貫通化した孔を有する絶縁性基材を浸漬し、孔内に金属部材を充填する処理としては、無電解めっき処理や、高粘度の溶融金属浸漬処理など、公知の方法を用いることができるが、無電解めっき処理、溶融金属浸漬処理が好ましく、操作の簡易性から無電解めっき処理が好ましい。
【0119】
無電解めっきの方法としては、公知の方法及び処理液を用いることができ特に限定されないが、析出させる金属核を予め設け、その後に該金属を含む溶剤に溶ける化合物と還元剤を液に溶かし、絶縁性基材を該液に浸漬することにより、貫通化した孔内に金属を充填させる方法が好ましい。
また、後述する電解めっき処理と併用して処理しても良い。
【0120】
[(3−b)電解めっき処理]
本発明の製造方法において、電解めっきにより、貫通化した孔内に金属を充填する場合は、パルス電解または定電位電解の際に休止時間を設ける必要がある。休止時間は、10秒以上必要で、30〜60秒であるのが好ましい。
また、電解液のかくはんを促進するため、超音波を加えることも望ましい。
更に、電解電圧は、通常20V以下であって望ましくは10V以下であるが、使用する電解液における目的金属の析出電位を予め測定し、その電位+1V以内で定電位電解を行うことが好ましい。なお、定電位電解を行う際には、サイクリックボルタンメトリを併用できるものが望ましく、Solartron社、BAS社、北斗電工社、IVIUM社等のポテンショスタット装置を用いることができる。
【0121】
めっき液は、従来公知のめっき液を用いることができる。
具体的には、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1〜300g/Lであるのが好ましく、100〜200g/Lであるのがより好ましい。また、電解液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10〜20g/Lであるのが好ましい。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でめっきを行うのが望ましい。
【0122】
[(3−c)蒸着処理]
蒸着により貫通化した孔内に金属を充填する場合、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)といった公知の蒸着処理を用いることができる。蒸着処理を行う際の条件としては、その対象物質により異なるが、温度−40℃〜80℃、真空度10−3Pa以下が蒸着速度の観点から好ましく、−20℃〜60℃、真空度真空度10−4Pa以下がより好ましい。
【0123】
また、充填を均一に行うために、蒸着方向に対する絶縁性基板の面を適宜傾けて、斜め方向から蒸着する方法も好適に用いることができる。
【0124】
[(4)表面平滑処理工程]
本発明の製造方法においては、上記導電性部材充填工程の後に、上記絶縁性基材の表面および裏面を平滑化する表面平滑処理工程を具備するのが好ましい。表面平滑処理工程を実施することにより、導電性部材を充填させた後の絶縁性基材の表面および裏面の平滑化と、該表面および裏面に付着した余分な金属を除去することができる。
表面平滑処理工程では、下記(4−a)〜(4−c)のいずれかの処理を実施することが好ましい。
以下(4−a)〜(4−c)の処理について詳述する。
(4−a)化学機械研磨(CMP)による処理。
(4−b)電解研磨による処理。
(4−c)イオンミリング処理。
【0125】
[(4−a)化学機械研磨(CMP)による処理]
CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPLANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
なお、陽極酸化皮膜を研磨したくないので、層間絶縁膜やバリアメタル用のスラリーを用いるのは好ましくない。
【0126】
[(4−b)電解研磨による処理]
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
【0127】
[(4−c)イオンミリング処理]
イオンミリング処理は、上記CMPによる処理や、電解研磨処理よりもさらに精密な研磨が必要な際に施され、公知の技術を用いることができる。イオン種としては一般的なアルゴンイオンを用いることが好ましい。
【0128】
[(5)不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成(熱処理)し、結晶性を向上させる工程]
充填した金属部分の結晶性を向上させる目的で、この熱処理を行う。
陽極酸化皮膜の細孔に充填された状態で真空中または不活性ガス中で焼成すると、金属同士の熱拡散による接合、焼結などが起こり難いので、個々が単離した状態で結晶性が良く(結晶サイズの大きい)、アスペクト比が大きいナノ材料(ナノワイヤー、ナノロッド)が得られる。
焼成処理の温度は300〜1000℃、より好ましくは400〜1000℃、さらに好ましくは500〜1000℃の範囲で、数秒〜十数時間、好ましくは数分〜数時間処理することで行なうことができる。温度は金属部材の実質上の融点以下が好ましく、実質上の軟化点以上が好ましい。
但し、ここで言う実質上の意味は、一般にサイズがナノオーダーの細線になると融点や軟化点が低下する現象が知られており、必ずしも汎用データブックに記載されている固体物性値とは一致せず、固有の値を示す事があり、実質的に液状になる温度を融点、機械的強度が軟化する温度を軟化点と見なす。
【0129】
熱処理時の金属突出部の表面酸化を抑制するために、熱処理を低温で行うことや、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中または、真空中で熱処理を行うことも有効である。
真空中で熱処理をおこなう場合には、真空度としては、10〜4Pa以下が好ましく、10〜5Pa以下がさらに好ましく、10〜6Paが特に好ましい。
10〜1Pa程度の真空は、ロータリーポンプで簡易に得ることができる。10〜5Pa程度の真空度は、金属製のチャンバと銅ガスケットを用い、ターボ分子ポンプ(TMP)で排気することにより達成できる。
【0130】
不活性ガス中で熱処理を行なう場合には、不活性ガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)、Rn(ラドン)、N(窒素)等を挙げることができる。中でも入手性、価格から窒素、Ar、Heが好ましい。
不活性ガスを用いる場合、好ましい圧力は、大気圧から10〜1Paが好ましい。大気圧〜1Paが特に好ましい。
好ましい処理時間としては、0.5〜24時間が好ましく、1〜12時間が好ましく、2〜8時間が特に好ましい。
処理方法としては、連続処理、断続処理であっても良いが、連続処理が、熱による内部応力によって破損が発生し難い点で好ましい。
このような材料では、電磁気的な異方性効果が特に発現し易く、例えば、電気抵抗の低下が期待できる。
【0131】
[(6)陽極酸化皮膜の一部または全部の除去工程]
<化学溶解処理>
本発明の製造方法においては、上記(5)焼成(熱処理)工程の後に、上記絶縁性基材の表面および・または裏面から金属部材が突出した構造を形成する金属突出工程を行う。この工程により各金属の少なくとも一端が絶縁性基材の少なくとも一方の面の表面から突出した金属部材となり、該金属部材の金属の直径に対する長さの比が5以上の本発明の金属部材が得られる。
金属突出工程では、
(6−a)上記絶縁性基材の表面および・または裏面の一部を除去することにより、上記絶縁性基材の表面および・または裏面から金属部材が突出した構造を形成する処理。
または(6−b)上記金属の表面に金属部材を析出させることにより、上記絶縁性基材の表面および・または裏面から金属部材が突出した構造を形成する処理を行うことが好ましい。
【0132】
(6−a)処理
上記絶縁性基材の表面および・または裏面の一部を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより、絶縁性基材のみを一部溶解させて除去して金属部材を形成する。
上記(6−a)処理は、金属部材を溶解しない条件であれば、限定されない。特に、溶解速度を管理しやすい酸水溶液またはアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。例えば、金属が銅の場合、pH13以上のアルカリ水溶液を使用できる。例えば、KOH、NaOHの水溶液を好適に利用できる。
貴金属など耐酸性の金属の場合には、シュウ酸、りん酸、硫酸、硝酸などの水溶液も利用できる。この場合、好ましい範囲はpH、−1.0〜3.0の範囲が好ましくpH、−0.5〜2.0の範囲が好ましい。pH 0〜1.5の範囲が最も好ましい。中でも、りん酸が溶解の均一性の点で特に好ましい。好ましい濃度範囲は15〜1質量%が好ましく、濃度10〜2質量%が好ましく、濃度7〜3質量%が特に好ましい。
金属の腐食を抑制する為、金属の溶解液中にPEGなどの有機物やクロム酸などの強酸化剤など公知の腐食抑制剤を適宜添加できる。
好ましい温度範囲は0℃〜70℃であり、より好ましくは10〜50℃、20〜45℃が最も好ましい。好ましい処理時間は金属の径や周期によっても異なるが、10分〜60分の範囲が最も好ましい。この範囲では、作業性、コントロール性、実用性の観点から制御性が良く、サンプル毎の再現性を向上できる。処理液の粘度は1.2〜12cpであり、2〜6cp、2〜5cpがより好ましく、2.5〜4.8cpが最も好ましい。この粘度の範囲では、陽極酸化皮膜である絶縁性基材と金属の界面に処理液が浸透し、構造が崩壊し難いので、金属部材の突出高さを高くする事が可能となる。
【0133】
液の粘性が低い場合には、陽極酸化皮膜と金属の界面に処理液が浸透し、構造が崩壊してしまうので、水溶性の高分子成分を添加させ、粘性を向上させる事が好ましい。例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、アラビアガム、アルギニン・カルボマー(カルボキシビニルポリマー)/カルボマー、アルギン酸ナトリウム/アルギン酸Na、アルギン酸プロピレングリコール/アルギン酸プロピレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム/セルロースガム/グリコール酸ナトリウム/キサンタンガム、合成ケイ酸ナトリウム、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト/クオタニウム-18ヘクトライト、シクロデキストリン/CD、デキストリン、ポリアクリル酸ナトリウム/ポリアクリル酸Na 等を添加することができる。
中でもPEG、PVA、ポリアクリル酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコールなどの水溶性高分子合成品が入手性、制御性、安定性、純度などの観点からより好ましい。有機物の場合に、好ましい分子量は40〜5000が好ましく、60〜4000がより好ましく、80〜3000が最も好ましい。
好ましい粘度範囲に調整する容易性から、例えば、PEGでは分子量40〜5000の範囲が好ましく、80〜4000の範囲がより好ましく、120〜3000の市販品が最も好ましい。(例えば、市販試薬の他 三洋化成工業(株)製 商品名:マクロゴール)。
【0134】
[保護膜形成処理]
本発明の製造方法においては、アルミナで形成された絶縁性基材が、空気中の水分との水和により、経時により孔径が変化する場合は、上記金属充填工程前に、保護膜形成処理を施してもよい。
【0135】
保護膜としては、Zr元素および/またはSi元素を含有する無機保護膜、あるいは、水不溶性ポリマーを含有する有機保護膜が挙げられる。
【0136】
[ナノロッドの製造方法]
ナノロッドを製造する場合には、前記ナノピラー製造工程 <Al鏡面仕上げ>〜 <熱処理>は同様に行い、<熱処理> <被覆処理>工程の後に<溶解処理>工程をおこなう。溶解処理工程は、前述の(6)陽極酸化皮膜の一部または全部の除去工程の化学溶解処理と同様である。
【0137】
[第2の金属部材]
本発明の第2の金属部材は、直径が0.02〜0.4μm、好ましくは、0.02〜0.3μm、長さが10〜200μm、アスペクト比が5以上のナノピラーまたはナノロッド金属部材で、該金属部材の一部、または全体が少なくとも1種の貴金属で被覆された金属部材である。
以下にこの金属部材を図3に示す好適例を用いて説明するが本発明はこれらの例に限定されない。
【0138】
図3は本発明の第2の金属部材の模式的な断面図を示し図3(A)は、絶縁性基材20上に柱状の金属部材3が規則的に配列するナノピラーを示し、金属部材3の頂部が第1被覆(貴金属被覆)32で被覆されている。図3(B)は、1本の金属部材3であるナノロッドを示し、その頂部と底部とが第1被覆(貴金属被覆)32で被覆されている。図4(A)は、絶縁性基材20上に柱状の金属部材3が規則的に配列するナノピラーを示し、金属部材3の頂部が第1被覆(貴金属被覆)32と第2被覆(第1被覆とは異なる金属)34で被覆されている。図4(B)は、1本の金属部材3であるナノロッドを示し、その頂部と底部とが第1被覆(貴金属被覆)32および第2被覆34で被覆されている。
本発明の第2の金属部材は、第1の金属部材と同様に陽極酸化皮膜の絶縁性基材中に保持されるものであってもよいし、図3(B)、図4(B)に示すように基材から分離されていてもよい。
【0139】
以下では、第2の金属部材の特徴部分のみ説明する。説明しない部分は第1の金属部材と同様であるので省略している。
第2の金属部材の形状の説明は第1の金属部材で記載されている形状と同一であるので省略する。
第2の金属部材3は、第1の金属部材と同様に不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成(熱処理)し、結晶性を向上させたものでもよいし、このような工程を行わない金属部材3でもよい。
【0140】
<第2の金属部材の製造方法>
[(7)金属被覆処理]
上記(6)陽極酸化皮膜の一部または全部の除去工程により形成された金属部材の突出部を貴金属で被覆することによって被覆した金属部材が得られる。
突出部を貴金属で被覆する方法は、電解めっき法、還元型無電解めっき法、置換型無電解めっき法(以下、置換めっき法という。)などのめっき法、真空蒸着法、スパッタリング法等、所望の厚さで金属を被覆することができる方法であれば特に限定されない。本発明においては、突出部のみを選択的に被覆でき、かつ、厚さ数10nm程度の薄層で被覆できることから置換めっき法が好ましい。
置換めっきに用いる、めっき液としては、Au、Niなどの被覆する金属の塩を含む水溶液が用いられ、被覆する金属のイオンを1〜10g/L(濃度)含むものが好ましい。
金属の塩としては、シアン化金カリウム、塩化金酸、亜硫酸金ナトリウムなどが挙げられる。これらのうち、めっき対象物への化学的ダメージが少なくできることから、亜硫酸金ナトリウムが好ましい。金属イオン濃度としては、1〜10g/Lが好ましく、例えば、均一で緻密な膜を得る場合には析出速度を意図的に遅くするために1〜5g/Lが好ましい。pHについては、基材へのダメージを軽減するために3〜10の範囲であることが好ましく、特に5〜9範囲であることが好ましい。めっき液の温度については、めっき反応促進のために、50〜95℃であることが好ましい。被覆膜厚の制御は、先述の金属イオン濃度、pH、温度などの条件設定により行うことができるが、液条件の変更はめっき皮膜の性質(例えば、密度など)が変わる心配があるため、処理時間を変更することで行うことが好ましい。この際、基材へのダメージや作製効率などを考慮し、通常は1〜90分程度で行うことが好ましい。金属の被覆は少なくとも1種の貴金属の被覆があれば、それ以外の被覆は貴金属以外の被覆でもよい。
【0141】
図4に示す、第1の被覆と第2の被覆とを異なる金属で被覆する方法は、第2の被覆を金属部材先端全体に被覆した後、先端部にさらに第2の被覆を設けてもよい。別に第1の被覆を先端に設けその後樹脂等で第1の被覆を保護し、その後第2の被覆を設け、第1の被覆以外の部分に第2の被覆を設けてもよい。第1の被覆を保護した樹脂等はその後溶媒で溶解除去する。
【0142】
<本発明のナノピラー、ナノロッドの用途>
(1)異方導電性部材
得られた強磁性体のナノロッドを樹脂中に混ぜ、磁場を印加しながら、配列させる公知の方法によって異方導電性部材(ACF)が得られる。詳細は、特開2003-109691号公報に記載される。
(2)SPM用プローブ用途、半導体検査用のプローブカードの探針
腐食し易いFeなどの強磁性体を腐食しにくい貴金属などで被覆する事で表面酸化が防止でき、長期間、性能を維持する事が可能なので、高密度記録メディア用の磁性体への応用が期待できる。
【0143】
(3)磁気分離または磁気クロマトグラフィー用の磁性体
強磁性と耐腐食性を有し分析機器など高度な応用が期待できる。
(4)さらに、複数の貴金属をバーコード状に被覆する事で角度によって光学特性が異なるフリップフロップ挙動を示す事が知られており、その性質を使った、ナノバーコード、ナノタグとしての利用が期待できる。例えば
[ナノバーコード]
金、銀、ニッケルといった複数の金属によって独自のパターンにナノワイヤを作り、各ワイヤがそれぞれ免疫測定法的に鋭敏に反応することにより、小さく信頼性の高い検出器となりうる。詳細は、非特許文献Angewandte Chemie International Edition Volume 45 Issue 41, Pages 6900 - 6904: 4 Aug 2006に記載される。
[ナノタグ]
長さがサブミクロンレベルのバーコードは、DNAやタンパク質の生物学的検定法などに用いることが出来る優れた標識(タグ、ID)になることが知られている。詳細は、非特許文献、Submicrometer Metallic Barcodes Nicewarner-Pena et al. Science 5 October 2001: 137 ペンシルバニア州立大学、に記載される。
【0144】
(5)光抵抗スイッチ
金属アルミを陽極酸化し直径を10〜50nmに調整。この孔の中に電解析出法で太陽電池に用いられる化合物半導体を埋め込み対極の金電極を形成し電気特性測定を実施する。電気抵抗は赤外線を照射することで大きく変化する。詳細は、非特許文献、Applied Physics Letters, 79 (2001)4423 page ネブラスカ大学のN. Kouklin他に記載される。
(6)フリップフロップ
フリップフロップとは見る角度によってそれらの色彩が変化する現象。多くの製品は多層膜化したものである。詳細は、非特許文献、表面技術協会 第111回講演大会予稿集 16C-23 フリップフロップ効果を利用したAlアノード皮膜の多彩化に記載される。
(7)ナノワイヤーブラシ
本発明の、ナノピラー構造は、長い金属ナノワイヤーから構成できる。このような構造はサブμmサイズ、もしくは、ナノサイズのワイヤーブラシとしての利用が期待できる。例えば、Siウエハー上やフォトマスクなどの微細な配線上に付着したパーティクルの除去用の探針の集合体として使用できる。詳細は特開2005−84582号公報に記載される。
【実施例】
【0145】
<ナノロッド金属部材の製造>
(実施例1)
1.(a)電解研磨処理
高純度アルミ二ウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を、10cm四方の面積でカットし、以下の組成の電解研磨液を用いて、電圧10V、液温度65℃、の条件で電解研磨処理を行った。陰極はカーボン電極とし、電源はPO-250-30R(高砂製作所社製)を用いた。
<電解研磨液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 1320mL
・純水 80mL
・硫酸 600mL
2.(b)脱脂処理
上記で得られた研磨処理後のサンプルを、1.75mol/L水酸化ナトリウム、及び0.16mol/L硝酸ナトリウムの処理液を用いて、60℃の条件で30〜90秒浸漬して脱脂処理した。
3.(c)起点形成処理
上記で得られたサンプルを、5.00mol/Lマロン酸の電解液で、電圧130.0V、液温度3℃の条件で7.5分間陽極酸化処理した。電圧はGPO-250-30R(高砂製作所社製)で定電圧設定にし、で130.0V(±0.1V)に制御した。さらに得られたサンプルを、0.52mol/Lのリン酸水溶液で、40℃の条件で42.5分浸漬して皮膜溶解を行った。この処理を4回繰り返した。
【0146】
4.(d)陽極酸化処理
上記で得られたサンプルを、5.00mol/Lマロン酸の電解液で、電圧130.0V、液温度3℃の条件で7.5分間定電圧陽極酸化処理を行った。
5.(e)定電流処理
上記得られたサンプルを同様なマロン酸の電解液で電流密度120A/m2、液温度3℃の条件で90分間定電流陽極酸化処理し、電流はカレントトランス及び電圧計を用いて、導線部に流れる電流を測定し、120A/m2(±10A/m2)に制御した。アルミ二ウム基板表面にマイクロポアが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化皮膜を形成した。
6.(f)貫通化処理工程
次いで、20質量%塩酸水溶液に0.1mol/Lの塩化銅をブレンドした処理液を用い、液温15℃で、目視によりアルミニウムが除去されるまで(B)で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を浸漬することによりアルミニウム基板を溶解した。更に、得られたメンブレン全体を5%のKCl緩衝液に10分間浸漬後、0.1N KOH水溶液にバリア層側のみを片面を30℃、30分間浸漬させることにより陽極酸化皮膜の底部を除去し、ポア径を拡大したマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体(絶縁性基材)を作製した。貫通化処理後の構造体の厚さは50μmであった。この貫通化処理により、細孔周期280nm、平均細孔径80nm、細孔の長さ50μmを持つ高規則性(規則化度=78%)のマイクロポアナノホール構造を得た。
【0147】
7.(g)加熱処理
次いで、上記で得られた微細構造体に、温度400℃で1時間の加熱処理を施した。
8.(h)電極膜形成処理
次いで、上記加熱処理後の微細構造体の一方の表面に電極膜を形成する処理を施した。具体的には、0.7g/L塩化金酸水溶液を、一方の表面に塗布し、140℃で1分乾燥させ、更に500℃で1時間焼成することにより、金のめっき核を作製した。その後、無電解めっき液としてプレシャスファブACG2000基本液/還元液(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース社製)を用いて、50℃で1時間浸漬処理し、表面との空隙のない電極膜を形成した。
9.(i)金属充填処理(Ni 電解めっき処理)
次いで、上記電極膜を形成した面に銅電極板を密着させ、該銅電極板を陰極にし、Ni板を正極にして電解めっき処理を施した。
次いで、上記電極膜を形成した面にニッケル電極を密着させ、該ニッケル電極を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理を施した。電気めっき液を硫酸ニッケル300g/Lを用い、60℃に保った状態で電解液として使用し、定電圧パルス電解を実施することにより、酸化皮膜の貫通孔にニッケルを充填した。
ここで、定電圧パルス電解は、山本鍍金社製のめっき装置を用い、北斗電工社製の電源(HZ−3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後、皮膜側の電位を−2Vに設定して行った。また、定電圧パルス電解のパルス波形は矩形波であった。具体的には、電解の総処理時間が300秒になるように、1回の電解時間が60秒の電解処理を、各電解処理の間に40秒の休止時間を設けて5回施した。
貫通孔にニッケルを充填した後の酸化皮膜の表面をFE−SEMで観察すると、酸化皮膜の表面からニッケルの一部があふれるような形になっていた。
【0148】
10.(j)表面平滑化処理(両面)
次いで、貫通孔にニッケルが充填された酸化皮膜(膜厚50μm)の両面に、機械研摩処理を施した。酸化皮膜の電極形成された面は、電極のすべてとさらに陽極酸化膜部分を酸化皮膜表面から2μm研磨し、また酸化皮膜の電極形成されていない面は酸化皮膜表面から8μmを研磨することにより、酸化皮膜の表面を平滑化した。表面平滑化処理後の酸化皮膜の膜厚は40μmであった。
11.(k)焼成処理
市販の石英管の片端を酸素-アセチレンバーナーを使用して溶融して封止し、他端を熱拡散ポンプに接続して所定の真空度になるまで減圧し、封止前にArガスを注入した後、真空ポンプに接続してある方の石英をバーナーで溶融して封止した。石英管中に封止した検体を電気炉で1000℃で3時間焼成した。昇温速度は50℃/10minとした。所定の時間焼成した後、降温速度10℃/10minで室温まで徐冷した。
12.(l)溶解処理
溶解液として、KOH水溶液を選択した。
濃度0.1N、温度40℃、処理時間:4時間浸漬
ワットマン(株)製 商品名:アノディスク 型番:47φ 0.02μm を使用してろ過、水洗浄をおこなった。
得られた金属部材のアスペクト比を表1に示す。
【0149】
13.結晶性評価
結晶性の評価は、サンプルを乳鉢で粉砕し、#400のメッシュに通過した粉体を集め、スチロール樹脂粉末に混ぜて平板状に加圧成形した。
加圧成形した平板をガラス製試料ホルダーに貼り付け、市販のX線回折装置((株)リガク製RINT TTRIII)にて計測を行なった。測定条件は、
Rh菅球 50kV-300mA、発散スリット:開放、発散縦スリット:10mm
散乱スリット:0.05mm、受光スリット:0.15mm、スキャン速度:4度/min、スキャン範囲:2θ=20〜80度、シェラー係数=0.9 とした。
表1および表2に結果を示す。評価基準は、結晶サイズ:×:50nm以下、△×:50〜100nm、△:101〜500nm、○△:501nm〜1μm、○:1μm〜である。
【0150】
(実施例2)
上記(c)起点形成処理によるマイクロポア形成処理の電解条件を、0.1mol/Lリン酸の電解液で、電圧195V、液温3℃の条件で240分間陽極酸化処理し、上記(d)陽極酸化処理によるマイクロポア形成処理の電解条件を、0.5mol/Lリン酸とし、電圧195V、温度3℃の条件で30分間定電圧陽極酸化処理し、上記(e)定電流処理によるマイクロポア形成処理電解条件を、0.5mol/Lリン酸の電解液で、電流密度200A/m2、液温3℃の条件で720分間定電流陽極酸化処理とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2を得た。
【0151】
(f)貫通化処理工程
次いで、20質量%塩酸水溶液に0.1mol/Lの塩化銅をブレンドした処理液を用い、液温15℃で、目視によりアルミニウムが除去されるまで(d)で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を浸漬することによりアルミニウム基板を溶解した。更に、得られたメンブレン全体を5%のKCl緩衝液に10分間浸漬後、バリア層側のみを片面を0.1N KOH水溶液に30℃60分浸漬させることにより陽極酸化皮膜の底部を除去し、ポア径を拡大したマイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体(絶縁性基材)を作製した。貫通化処理後の構造体の厚さは50μmであった。この貫通化処理により、細孔周期490nm、平均細孔径150nm、細孔の長さ50μmを持つ高規則性(規則化度=84%)の陽極酸化皮膜マイクロポアナノホール構造を得た。
(g)加熱処理、(h)電極膜形成処理、(i)金属充填処理、(j)表面平滑化処理、(k)焼成処理、(l)溶解処理を実施例1と同じ条件で処理を行った。得られた金属部材のアスペクト比は、表1に示すように267であった。
【0152】
(実施例3)
実施例2と同様に、ただし(e)定電流処理は行わなかった。さらに、(i)金属充填処理の充填処理時間を短くした。
電極膜を形成した面にニッケル電極を密着させ、該ニッケル電極を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理を施した。電気めっき液を硫酸ニッケル300g/Lを用い、60℃に保った状態で電解液として使用し、定電圧パルス電解を実施することにより、酸化皮膜の貫通孔にニッケルを充填した。
ここで、定電圧パルス電解は、山本鍍金社製のめっき装置を用い、北斗電工社製の電源(HZ−3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後、皮膜側の電位を−2Vに設定して行った。また、定電圧パルス電解のパルス波形は矩形波であった。具体的には、電解の総処理時間が5秒になるように、1回の電解時間が1秒の電解処理を、各電解処理の間に40秒の休止時間を設けて5回施した。
貫通孔にニッケルを充填した後の酸化皮膜の断面をFE−SEMで観察すると、酸化皮膜の電極側の一部に充填された形になっていた。
細孔周期498nm、Ni充填深さ750nm、細孔径150nmのメンブレンを得た。金属部材のアスペクト比は、表1に示すように5であった。
【0153】
(実施例4〜6)
実施例2において(k)焼成処理温度を表1に示す温度とした以外は実施例2と同一条件で処理をおこなった。
【0154】
(実施例7)
実施例1の(k)焼成処理工程の処理雰囲気を真空中の処理に代わってN2(窒素)ガス雰囲気中とした。ガス分圧:150Paとした。
(実施例8)
実施例1の(k)焼成処理工程の処理雰囲気を真空中での処理に代わってArガス雰囲気中とした。Arガス分圧:150Paとした。
(実施例9)
(m)金属被覆処理
実施例1で得られた検体(ナノロッド)をさらに、金属(Ag)による被覆処理をおこなった。
めっき液の金属原料としてAgCN(Ag濃度として1g/g)とNaCNを使用し、(Na濃度として4g/L)AgCN:NaCN=1:4に調製した水溶液を用いて、室温で120秒間ナノロッドを浸漬することで置換型めっきを行い、Agで被覆された構造体を得た。被覆状態はESCA分析法によってNiとAgの強度比から置換めっきの確認をおこなった。
【0155】
(比較例1、2)
実施例2の構造体において(k)焼成処理の温度を表1に示す条件とした以外は同一条件で処理をおこなった。
(比較例3)
実施例2の構造体において(k)焼成処理の雰囲気を空気中でおこなった以外は同一条件で処理をおこなった。
(比較例4)
実施例2の構造体において、陽極酸化皮膜メンブレンを溶解させた後、アスペクト比267の金属部材を配列するナノピラーとした後に(k)焼成処理を実施例2の条件で行った以外は実施例2と同一条件で処理をおこなった。
【0156】
ナノロッド金属部材の製造条件と結果を下記表1に示す。
【表1】

【0157】
<ナノピラー金属部材の製造>
(実施例10)
(a)電解研磨処理、(b)脱脂処理、(c)起点形成処理、(f)貫通化処理工程、(g)加熱処理、(h)電極膜形成処理、(i)金属充填処理、(j)表面平滑化処理を得られる金属部材のアスペクト比が表2に示す値となるように実施例2と同様の条件で処理を行った。
(k)焼成処理を以下の条件でおこなった。
市販の石英管の方端を酸素-アセチレンバーナーを使用して溶融して封止し、他端を熱拡散ポンプに接続して所定の真空度になるまで減圧し、封止前にArガスを注入した後、真空ポンプに接続してある方の石英をバーナーで溶融して封止した。石英管中に封止した検体を電気炉で300℃で3時間焼成した。昇温速度は50℃/10minとした。所定の時間焼成した後、降温速度10℃/10minで室温まで徐冷した。
(l)溶解処理を以下の条件でおこなった。
溶解液: KOH水溶液
濃度 : 0.1N
温度 : 40℃
添加剤: PEG (分子量1000)
処理時間:1時間浸漬
片面のみが接触するように浸漬した。
【0158】
13.結晶性評価
結晶性の評価は、サンプルを乳鉢で粉砕し、#400のメッシュに通過した粉体を集め、スチロール樹脂粉末に混ぜて平板状に加圧成形した。
加圧成形した平板をガラス製試料ホルダーに貼り付け、市販のX線回折装置((株)リガク製RINT TTRIII)にて計測を行なった。測定条件
Rh菅球 50kV-300mA、発散スリット:開放、発散縦スリット:10mm
散乱スリット:0.05mm、受光スリット:0.15mm、スキャン速度:4度/min、スキャン範囲:2θ=20〜80度、シェラー係数=0.9 とした。
(実施例11〜13)
実施例10の(k)焼成処理の温度を変えた以外は実施例10と同様におこなった。
【0159】
(比較例5)
実施例10の(k)焼成処理の温度を200℃に変えた以外は実施例10と同様におこなった。
比較例5の結晶性
XRDにて計測したところ、良好な結晶性を示す半値幅の狭いピークは観測できなかった。結晶サイズは50nm以下であった。XRDにて計測したところ、ピラーの表面酸化について酸化物の存在は確認できなかった。
【0160】
(比較例6)
実施例10の(k)焼成処理の温度を1100℃に変えた以外は実施例10と同様におこなった。
1100℃で熱処理した検体をSEMにて形態観察を行なった結果、金属部分が熱で球状もしくは、不定形に変形し、ピラーとして使用できない状態になっていた。
結果を下記表2に示す。
【0161】
【表2】

【符号の説明】
【0162】
2、20 絶縁性基材
3 金属部材
6 絶縁性基材の厚み
7 金属部材間の幅
8 金属部材の直径
9 金属部材の中心間距離(ピッチ)
30 金属部材の長さ
32 第1被覆(貴金属被覆)
34 第2被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則化度が70%以上の陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填し、充填後、不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させた金属部材。
【請求項2】
規則化度が70%以上の陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填し、充填後、不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させ、陽極酸化皮膜を除去しアスペクト比が5以上の金属部材としてなるナノピラーまたはナノロッド金属部材。
【請求項3】
直径が0.02〜0.4μm、長さが10〜200μm、アスペクト比が5以上のナノピラーまたはナノロッド金属部材で、該金属部材の一部、または全部が少なくとも1種の貴金属で被覆された金属部材。
【請求項4】
陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填し、充填後、不活性ガス雰囲気中、または真空中で、300℃以上、1000℃以下の温度で焼成し、結晶性を向上させ、陽極酸化皮膜を除去しアスペクト比が5以上である金属部材を得る、金属部材の製造方法。
【請求項5】
陽極酸化皮膜の細孔内部にアスペクト比が5以上で金属を充填した後、陽極酸化皮膜の一部を溶解させ、金属を露出させ、該露出部を異種の金属で被覆し、その後陽極酸化皮膜を溶解し、ナノピラーまたはナノロッド金属部材を製造する方法。
【請求項6】
前記陽極酸化皮膜の一部を溶解させて金属を露出させる工程、および該露出部を異種の金属で被覆する工程を2回以上行う、請求項5に記載の金属部材を製造する方法。
【請求項7】
請求項1または請求項3に記載の金属部材を用いたプローブ用探針。
【請求項8】
請求項1または請求項3に記載の金属部材を用いた磁気分離または磁気クロマトグラフィー用の磁性体。
【請求項9】
請求項3に記載の金属部材を用いたナノバーコード。
【請求項10】
請求項2または請求項3に記載のナノロッドを樹脂中に磁場を用いて配向させて得られる異方導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−189695(P2010−189695A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34211(P2009−34211)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】