説明

金属銀部の形成方法及び金属銀膜

【課題】高いEMIシールド性と高い透明性とを同時に有する電磁波シールド材料を細線のパターンに形成可能であり、かつ安価に大量生産できる透光性電磁波シールド膜の製造に用いられる金属銀部の形成方法の提供。
【解決手段】支持体上に設けられた銀塩とバインダーをAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより光透過性部とともに金属銀部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などのディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器、プリント配線板などから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、透明性を有する電磁波遮蔽材料の製造方法とその製造方法により得られる透明性を有する電磁波遮蔽材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro-Magnetic Interference:EMI)が急増している。EMIは、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、これらの装置のオペレーターにも健康障害を与えることが指摘されている。このため、電子電気機器では、電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
上記EMIの対策には電磁波をシールドする必要があるが、それには金属の電磁波を貫通させない性質を利用すればよいことは自明である。例えば、筐体を金属体又は高導電体にする方法や、回路基板と回路基板との間に金属板を挿入する方法、ケーブルを金属箔で覆う方法などが採用されている。しかし、CRT、PDPなどではオペレーターが画面に表示される文字等を認識する必要があるため、ディスプレイにおける透明性が要求される。このため、前記の方法では、いずれもディスプレイ前面が不透明になることが多く、電磁波のシールド法としては不適切なものであった。
【0004】
特に、PDPは、CRT等と比較すると多量の電磁波を発生するため、より強い電磁波シールド能が求められている。電磁波シールド能は、簡便には表面抵抗値で表すことができ、CRT用の透光性電磁波シールド材料では、表面抵抗値は凡そ300Ω/sq以下であることが要求されるのに対し、PDP用の透光性電磁波シールド材料では、2.5Ω/sq以下が要求され、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては、1.5Ω/sq以下とする必要性が高く、より望ましくは0.1Ω/sq以下という極めて高い導電性が要求されている。
また、透明性に関する要求レベルは、CRT用として凡そ70%以上、PDP用として80%以上が要求されており、更により高い透明性が望まれている。
【0005】
上記の問題を解決するために、以下に示されるように、開口部を有する金属メッシュを利用して電磁波シールド性と透明性とを両立させる種々の材料・方法がこれまで提案されている。
【0006】
(1)導電性繊維
例えば、特開平5−327274号公報(特許文献1)には、導電性繊維からなる電磁波シールド材が開示されている。しかし、このシールド材はメッシュ線幅が太くディスプレイ画面をシールドすると、画面が暗くなり、ディスプレイに表示された文字が見えにくいという欠点があった。
【0007】
(2)無電解メッキ加工メッシュ
無電解メッキ触媒を印刷法で格子状パターンとして印刷し、次いで無電解メッキを行う方法が提案されている(例えば、特開平11−170420号公報(特許文献2)、特開平5−283889号公報(特許文献3)など)。しかし、印刷される触媒の線幅は60μm程度と太く、比較的小さな線幅、緻密なパターンが要求されるディスプレイの用途としては不適切であった。
さらに、無電解メッキ触媒を含有するフォトレジストを塗布して露光と現像を行うことにより無電解メッキ触媒のパターンを形成した後、無電解メッキする方法が提案されている(例えば、特開平11−170421号公報(特許文献4))。しかし、導電膜の可視光透過率は72%であり、透明性が不十分であった。更には、露光後に大部分を除去する無電解メッキ触媒として極めて高価なパラジウムを用いる必要があるため、製造コストの面でも問題があった。
【0008】
(3)フォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工メッシュ
フォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工により、透明基体上に金属薄膜のメッシュを形成する方法が提案されている(例えば、特開2003−46293号公報(特許文献5)、特開2003−23290号公報(特許文献6)、特開平5−16281号公報(特許文献7)、特開平10−338848号公報(特許文献8)など)。この方法では、微細加工が可能であるため、高開口率(高透過率)のメッシュを作成することができ、強力な電磁波放出も遮蔽できるという利点を有する。しかし、その製造工程は煩雑かつ複雑で、生産コストが高価になるという間題点があった。また、エッチング工法によるところから、格子模様の交点部が直線部分の線幅より太い問題があることが知られている。また、モアレの問題も指摘され、改善が要望されていた。
【0009】
次に、銀塩を用いた導電性金属銀パターンを形成する方法に関する従来技術について説明する。
銀塩を利用した感光材料は、従来主に、画像や映像を記録・伝達するため材料として利用されてきた。例えばカラーネガフィルム、黒白ネガフィルム、映画用フィルム、カラーリバーサルフィルム等の写真フィルム、カラーペーパー、黒白印画紙などの写真用印画紙等であり、更にまた、金属銀を露光パターン通りに形成できることを利用したエマルジョンマスク(フォトマスク)等が汎用となっている。これらはすべて銀塩を露光・現像して得られる画像自体に価値があり、画像そのものを利用している。
【0010】
一方、銀塩から得られる現像銀は金属銀であることから、製法次第では金属銀の導電性を利用することが可能と考えられる。この様な提案は古くから近年まで散見され、導電性銀薄膜の具体的形成法を開示した例として以下がある。1960年代に、物理現像核に銀を沈着させる銀塩拡散転写法によって金属銀薄膜パターンを形成する方法が、特公昭42−23746号公報(特許文献9)に開示されている。また同様の銀塩拡散転写法を利用して得た光透過性のない均一な銀薄膜がマイクロ波減衰機能を有することが特公昭43−12862号公報(特許文献10)に開示されている。またこの原理をそのまま用い、インスタント黒白スライドフィルムを用いて簡便に露光・現像を行って導電性パターンを形成する方法が、アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、第72巻、645項、2000年発刊(非特許文献1)、及び国際公開WO 01/51276号公報(特許文献11)に記載されている。また、銀塩拡散転写法の原理によって、プラズマディスプレイ用の表示電極に利用可能な導電性の銀膜を形成する方法が特開2000−149773号公報(特許文献12)に記載されている。
【0011】
しかし、このような方法で導電性金属銀を作成してCRTやPDPなどのディスプレイの画像表示面から放射される電磁波を、画像表示を妨害せずに、シールドする方策については全く知られていなかった。
上記5つの文献に記載された方法では、導電性金属パターンが形成される層に特別に調製された物理現像核が露光部・未露光部の区別なく均一に設けられる。このため、金属銀膜が生成しない露光部に、不透明な物理現像核が残存し、光線透過性が損なわれるという欠点があった。特に、金属パターン材料をCRTやPDP等ディスプレイの透光性電磁波シールド材料として利用する場合には、上記の欠点は重大である。
また、高い導電性を得ることも困難で、高い導電性を得るために厚い銀膜を得ようとすると、透明性が損なわれる問題があった。したがって、上記銀塩拡散転写法をそのまま用いても、電子ディスプレイ機器の画像表示面からの電磁波をシールドするのに好適な、光透過性と導電性の優れた透光性電磁波シールド材料は得ることができなかった。
また、銀塩拡散転写法を用いないで、通常の市販のネガフィルムを利用し、現像、物理現像、メッキ工程を通じて導電性を付与した場合、導電性と透明性の点において、CRTやPDPの透光性電磁波シールド材料として利用するには不十分なものであった。
【0012】
このように、電子ディスプレイ機器の発する電磁波をシールドする方策として、銀塩感光材料から導電性金属銀を製造する方法は全く知られておらず、また、既知の銀塩拡散転写法をディスプレイの電磁波シールドにそのまま利用しようとしても、透明性や導電性の点で不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−327274号公報
【特許文献2】特開平11−170420号公報
【特許文献3】特開平5−283889号公報
【特許文献4】特開平11−170421号公報
【特許文献5】特開2003−46293号公報
【特許文献6】特開2003−23290号公報
【特許文献7】特開平5−16281号公報
【特許文献8】特開平10−338848号公報
【特許文献9】特公昭42−23746号公報
【特許文献10】特公昭43−12862号公報
【特許文献11】国際公開WO 01/51276号公報
【特許文献12】特開2000−149773号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、2000年発刊、第72巻、645項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、従来の電磁波遮蔽材料やその製造方法には、それぞれ問題点があった。
近年では、透明なガラスやプラスチック基板面に金属薄膜からなるメッシュを形成した電磁波遮蔽板が、極めて高い電磁波シールド性を有し、かつ良好な光透過性が得られることから、PDP等のディスプレイ用パネル等の電磁波シールド材として特に用いられるようになってきた。しかし、その価格は非常に高価であったため、製造コストの低減化が強く要望されていた。さらに、ディスプレイでは、高い画像の明度が要求されるため、100%に近い光透過性が強く求められていた。ところが、光透過性を向上させるために、開口率(メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合)を上げると、導電性が低下して電磁波シールド効果が損なわれるため、導電性(電磁波シールド効果)と光透過性を同時に向上させることは、これまでの技術では非常に困難であった。また、ディスプレイの画像表示面の前面に設置することからモアレが発生し、問題となっていた。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高いEMIシールド性と高い透明性とを同時に有する、モアレのない電磁波シールド材料であって、細線状パターンの形成が容易であり、しかも安価に大量に製造できる方法を提供することにある。さらに本発明の別目的は、前記製造方法により得られる透光性電磁波シールド膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、高いEMIシールド性と高い透明性とを同時に得る観点から、鋭意検討した結果、上記目的は、以下の製造方法及び透光性電磁波シールド膜により効果的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明の目的は、以下の製造方法により達成される。
(1)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(2)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成し、さらに前記光透過性部及び前記導電性金属部を酸化処理することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(3)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部及び前記光透過性部を酸化処理し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(4)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部及び前記光透過性部を酸化処理し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成した後、さらに前記導電性金属部及び前記光透過性部を酸化処理することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(5)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部をPdを含有する溶液で処理し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(6)前記金属銀部がパターン状である(1)〜(5)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【0019】
(7)前記銀塩含有層中の銀塩がハロゲン化銀であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(8)前記ハロゲン化銀が臭化銀を主体とすることを特徴とする(7)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(9)前記ハロゲン化銀がロジウム化合物及び/又はイリジウム化合物を含有することを特徴とする(7)又は(8)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(10)前記ハロゲン化銀がPd(II)イオン及び/又はPd金属を含有することを特徴とする(7)〜(9)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(11)前記ハロゲン化銀がPd(II)イオン及び/又はPd金属を前記ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有することを特徴とする(10)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(12)前記銀塩含有層中のAg/バインダー体積比が1/4以上であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(13)前記銀塩含有層中のAg/バインダー体積比が1/2以上であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(14)前記銀塩含有層中の銀塩の球相当径が0.1〜100nmであることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(15)前記露光がレーザービームによる走査露光方式で行われることを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(16)前記露光がフォトマスクを介して行われることを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(17)前記銀塩含有層の現像処理で用いられる現像液が画質向上剤を含有することを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(18)前記画質向上剤が含窒素へテロ環化合物である(17)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(19)前記銀塩含有層の現像処理で用いられる現像液がリス現像液であることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(20)前記現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量が、露光前の前記露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることを特徴とする(1)〜(19)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【0020】
(21)前記メッキ処理が無電解メッキで行われることを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(22)前記メッキ処理が電解メッキで行われることを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(23)前記メッキ処理が無電解メッキ及びそれに続く電解メッキで行われることを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(24)前記無電解メッキが無電解銅メッキであることを特徴とする(21)又は(23)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(25)前記銀塩含有層の現像処理後の階調が4.0を超えることを特徴とする(1)〜(24)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(26)前記導電性金属部の表面をさらに黒化処理することを特徴とする(1)〜(25)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(27)前記光透過性部が実質的に物理現像核を有しないことを特徴とする(1)〜(26)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(28)前記物理現像及び/又はメッキ処理後の透光性電磁波シールド膜の表面抵抗が2.5Ω/sq以下であり、かつ/又は前記光透過性部の透過率が95%以上であることを特徴とする(1)〜(27)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【0021】
さらに、本発明の目的は、以下の態様からなる透光性電磁波シールド膜及びプラズマディスプレイパネルにより達成される。
(29)(1)〜(28)のいずれかの製造方法により得られることを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜。
(30)前記導電性金属部に含まれる金属成分の全質量に対する銀の質量が50質量%以上であることを特徴とする(29)に記載の透光性電磁波シールド膜。
(31)前記導電性金属部に含まれる金属成分の全質量に対する銀、銅及びパラジウムの合計の質量が80質量%以上であることを特徴とする(29)に記載の透光性電磁波シールド膜。
(32)前記導電性金属部の形状がメッシュ状であることを特徴とする(29)〜(31)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(33)前記導電性金属部の開口率が85%以上であることを特徴とする(32)に記載の透光性電磁波シールド膜。
(34)前記導電性金属部に担持された導電性金属粒子からなる層の厚さが0.1μm以上5μm未満であり、かつ表面抵抗値が3Ω/sq以下であることを特徴とする(29)〜(33)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(35)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上18μm未満であることを特徴とする(29)〜(33)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(36)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上14μm未満であることを特徴とする(29)〜(34)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(37)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上10μm未満であることを特徴とする(29)〜(34)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(38)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上7μm未満であることを特徴とする(29)〜(34)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(39)前記光透過性部の透過率が95%以上であることを特徴とする(29)〜(38)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(40)前記光透過性部の透過率が98%以上であることを特徴とする(29)〜(38)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(41)(29)〜(40)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜を有するプラズマディスプレイパネル。
【0022】
(42)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより露光部に金属銀部を形成し、未露光部に光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の製造方法によれば、高いEMIシールド性と高い透明性とを同時に有する電磁波シールド材料を細線のパターンに形成可能であり、かつ安価に大量生産できる。また、本発明の透光性電磁波シールド膜は、モアレの問題がない点で優れている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の製造方法の特徴を、従来知られている本発明に最も近い他の方法と比較して説明する。
従来の銀塩拡散転写法を利用した方法(アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、第72巻、645項、2000年発刊(非特許文献1)、国際公開WO 01/51276号公報(特許文献11)、特開2000−149773号公報(特許文献12)に記載の方法)では、物理現像核層が金属画像部及び透光性部に均一に設けられるため、金属画像部の他に透光性部にも物理現像核が残存する。したがって、銀塩拡散転写法では、残存した物理現像核が光を吸収してしまうため、透光性部における透過性が損なわれるという原理的な問題点を有していた。
【0025】
上記の問題は、特に高い透過性が要求されるディスプレイ用透光性電磁波シールド材料では重大な問題である。これに対し、本発明の方法では、物理現像核として機能する金属銀を露光部だけに発生させ、光透過性部となる未露光部には発生させない。このため、光透過性部での透過率を原理的に高くできるという利点を有する。
なお、本発明における光透過性部の「透過率」とは、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率を指し、(透光性電磁波シールド材料の透過率)/(支持体の透過率)×100(%)で表される。光透過性部の透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがさらにより好ましく、99%以上であることが最も好ましい。
【0026】
一方、国際公開WO 01/51276号公報(特許文献3)には、銀塩拡散転写法を用いないで、通常に市販されている写真フィルムを利用して、現像、物理現像、メッキ処理工程を通じて導電性を付与できる旨が記載されている。実際に、前記文献に基づいて導電性の金属膜を形成することは可能であるが、この場合、導電性と透明性の両面において、銀塩拡散転写法よりも劣っており、CRTやPDPなどに用いられる透光性電磁波シールド材料として利用するには不十分なものであった。さらに、銀塩拡散転写法では、金属画像を形成するための物理現像核層を特別に設けているのに対し、通常市販されている写真フィルムでは、物理現像核がハロゲン化銀乳剤層中に生成し、多量のバインダー中に埋没している違いがある。
【0027】
次に、本発明の製造方法及び透光性電磁波シールド膜についてさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0028】
[支持体]
本発明では、支持体として、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラスなどを用いることができる。
プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0029】
ディスプレイ用の電磁波シールド材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルム又はプラスチック板の全可視光透過率は好ましくは70〜100%であり、より好ましくは85〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフィルム及びプラスチック板を本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
本発明におけるプラスチックフィルム及びプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
【0030】
支持体がガラス板である場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用電磁波シールドの用途で用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、かつ端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0031】
[銀塩含有層]
本発明において、光センサーとして銀塩を含有する層(銀塩含有層)が支持体上に設けられる。銀塩含有層は、銀塩のほか、バインダー、溶媒等を含有することができる。
【0032】
<銀塩>
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀などの無機銀塩及び酢酸銀などの有機銀塩が挙げられるが、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0033】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀についてさらに説明する。
本発明では、光センサーとして機能させるためにハロゲン化銀を使用する。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においてもそのまま用いることもできる。
【0034】
ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。
【0035】
ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0036】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0037】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができる。
【0038】
本発明で用いられるハロゲン化銀は、さらに他の元素を含有していてもよい。例えば、写真乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特にロジウムイオンやイリジウムイオンなどの遷移金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオンなどを挙げることができる。具体的な化合物の例としては、K3Rh2Br9及びK2IrCl6などが挙げられる。
本発明において、ハロゲン化銀に含有されるロジウム化合物及び/又はイリジウム化合物の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して、10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0039】
その他、本発明では、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。またPd(II)イオンを後熟時に添加するなどの方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解メッキの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解メッキ触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4やNa2PdCl4等が挙げられる。
【0040】
本発明では、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感としては、例えば、金増感などの貴金属増感、イオウ増感などのカルコゲン増感、還元増感等を利用することができる。
本発明で使用できる乳剤としては、例えば、特開平11−305396号公報、特開2000−321698号公報、特開平13−281815号公報、特開2002−72429号公報の実施例に記載されたカラーネガフィルム用乳剤、特開2002−214731号公報に記載されたカラーリバーサルフィルム用乳剤、特開2002−107865号公報に記載されたカラー印画紙用乳剤などを好適に用いることができる。
【0041】
<バインダー>
本発明の銀塩含有層において、バインダーは、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有層と支持体との密着を補助する目的で用いることができる。本発明においては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0042】
本発明の銀塩含有層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩含有層中のバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で1/4〜100であることが好ましく、1/3〜10であることがより好ましく、1/2〜2であることがさらに好ましい。1/1〜2であることが最も好ましい。銀塩含有層中にバインダーをAg/バインダー体積比で1/4以上含有すれば、物理現像及び/又はメッキ処理工程において金属粒子同士が互いに接触しやすく、高い導電性を得ることが可能であるため好ましい。
【0043】
<溶媒>
本発明の銀塩含有層で用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の銀塩含有層に用いられる溶媒の含有量は、前記銀含有層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であることが好ましく、50〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
【0044】
[露光]
本発明では、支持体上に設けられた銀塩含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線などの光、X線などの放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0045】
上記光源としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を挙げることができる。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0046】
また本発明では、露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特にコンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザーを用いて行うことが好ましい。
【0047】
レーザー光源としては、具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザー(2001年3月の第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0048】
銀塩含有層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0049】
[現像処理]
本発明では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、例えば、富士フィルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72などの現像液、又はそのキットに含まれる現像液、また、D−85などのリス現像液を用いることができる。
本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより金属銀部、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、後述する光透過性部が形成される。
【0050】
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0051】
現像処理で用いられる現像液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールなどの含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合特に、ポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0052】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0053】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0054】
[物理現像及びメッキ処理]
本発明では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部に導電性を付与する目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はメッキ処理を行う。本発明では物理現像又はメッキ処理のみで導電性金属粒子を金属性部に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とメッキ処理を組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させることもできる。
本発明における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオンなどの金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフィルム、インスタントスライドフィルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
【0055】
本発明において、メッキ処理は、無電解メッキ(化学還元メッキや置換メッキ)、電解メッキ、又は無電解メッキと電解メッキの両方を用いることができる。本発明における無電解メッキは、公知の無電解メッキ技術を用いることができ、例えば、プリント配線板などで用いられている無電解メッキ技術を用いることができ、無電解メッキは無電解銅メッキであることが好ましい。
無電解銅メッキ液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子としてEDTAやトリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やメッキ皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。電解銅メッキ浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
【0056】
本発明におけるメッキ処理時のメッキ速度は、緩やかな条件で行うことができ、さらに5μm/hr以上の高速メッキも可能である。メッキ処理において、メッキ液の安定性を高める観点からは、例えば、EDTAなどの配位子など種々の添加剤を用いることができる。
【0057】
[酸化処理]
本発明では、現像処理後の金属銀部、並びに物理現像及び/又はメッキ処理後に形成される導電性金属部には、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後、あるいは物理現像又はメッキ処理後に行うことができ、さらに現像処理後と物理現像又はメッキ処理後のそれぞれで行ってもよい。
【0058】
本発明では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により無電解メッキ又は物理現像速度を促進させることができる。
【0059】
[導電性金属部]
次に、本発明における導電性金属部について説明する。
本発明では、導電性金属部は、前述した露光及び現像処理により形成された金属銀部を物理現像又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させることにより形成される。
金属銀は、露光部に形成させる場合と、未露光部に形成させる場合がある。物理現像核を利用した銀塩拡散転写法(DTR法)は、未露光部に金属銀を形成させるものである。本発明においては、透明性を高めるために露光部に金属銀を形成させることが好ましい。
前記金属部に担持させる導電性金属粒子としては、上述した銀のほか、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウムなどの金属、又はこれらを組み合わせた合金の粒子を挙げることができる。導電性、価格等の観点から導電性金属粒子は、銅、アルミニウム又はニッケルの粒子であることが好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、導電性金属粒子として常磁性金属粒子を用いることが好ましい。
【0060】
上記導電性金属部において、コントラストを高くし、かつ導電性金属部が経時的に酸化され退色されるのを防止する観点からは、導電性金属部に含まれる導電性金属粒子は銅粒子であることが好ましく、少なくともその表面が黒化処理されたものであることがさらに好ましい。黒化処理は、プリント配線板分野で行われている方法を用いて行うことができる。例えば、亜塩素酸ナトリウム(31g/l)、水酸化ナトリウム(15g/l)、リン酸三ナトリウム(12g/l)の水溶液中で、95℃で2分間処理することにより黒化処理を行うことができる。
【0061】
上記導電性金属部は、該導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して、銀を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。銀を50質量%以上含有すれば、物理現像及び/又はメッキ処理に要する時間を短縮し、生産性を向上させ、かつ低コストとすることができる。
さらに、導電性金属部を形成する導電性金属粒子として銅及びパラジウムが用いられる場合、銀、銅及びパラジウムの合計の質量が導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明における導電性金属部は、導電性金属粒子を担持するため良好な導電性が得られる。このため、本発明の透光性電磁波シールド膜(導電性金属部)の表面抵抗値は、103Ω/sq以下であることが好ましく、2.5Ω/sq以下であることがより好ましく、1.5Ω/sq以下であることがさらに好ましく、0.1Ω/sq以下であることが最も好ましい。
【0063】
本発明の導電性金属部は、透光性電磁波シールド材料としての用途である場合、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、これらの幾何学図形からなるメッシュ状であることがさらに好ましい。EMIシールド性の観点からは三角形の形状が最も有効であるが、可視光透過性の観点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がり可視光透過性が大きくなるので有利である。
なお、導電性配線材料の用途である場合、前記導電性金属部の形状は特に限定されず、目的に応じて任意の形状を適宜決定することができる。
【0064】
透光性電磁波シールド材料の用途において、上記導電性金属部の線幅は20μm以下、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は18μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましく、14μm未満であることがさらに好ましく、10μm未満であることがさらにより好ましく、7μm未満であることが最も好ましい。
【0065】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。
【0066】
[光透過性部]
本発明における「光透過性部」とは、透光性電磁波シールド膜のうち導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
【0067】
本発明の光透過性部は、透過性を向上させる観点から実質的に物理現像核を有しないことが好ましい。本発明は、従来の銀錯塩拡散転写法とは異なり、未露光のハロゲン化銀を溶解し、可溶性銀錯化合物に変換させた後、拡散させる必要がないため、光透過性部には物理現像核を実質的に有しないことが好ましい。
ここに、「実質的に物理現像核を有しない」とは、光透過性部における物理現像核の存在率が0〜5%の範囲であることをいう。
【0068】
本発明における光透過性部は、前記銀塩含有層を露光及び現像処理することにより、金属銀部と共に形成される。光透過性部は、透過性を向上させる観点から、前記現像処理後、さらには物理処理又はメッキ処理後に酸化処理を行うことが好ましい。
【0069】
[透光性電磁波シールド膜の層構成]
本発明の透光性電磁波シールド膜における支持体の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜200μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、かつ取り扱いも容易である。
【0070】
物理現像及び/又はメッキ処理前の支持体上に設けられる金属銀部の厚さは、支持体上に塗布される銀塩含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属銀部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部がパターン状であり、かつ2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。このようにして形成された多層構造のパターン状金属銀部を含む透光性電磁波シールド膜は、高密度なプリント配線板として利用することができる。
【0071】
導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
本発明では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに物理現像及び/又はメッキ処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する透光性電磁波シールド膜であっても容易に形成することができる。
【0072】
なお、従来のエッチングを用いた方法では、金属薄膜の大部分をエッチングで除去、廃棄する必要があったが、本発明では必要な量だけの導電性金属を含むパターンを支持体上に設けることができるため、必要最低限の金属量だけを用いればよく、製造コストの削減及び金属廃棄物の量の削減という両面から利点がある。
【0073】
[電磁波シールド以外の機能性膜]
本発明では、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波シールド材用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレアー層(共にぎらつき防止機能を有する)、近赤外線を吸収する化合物や金属からなる近赤外線吸収層、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層などを設けることができる。これらの機能層は、銀塩含有層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
これらの機能性膜はPDPに直接貼合してもよく、プラズマディスプレイパネル本体とは別に、ガラス板やアクリル樹脂板などの透明基板に貼合してもよい。これらの機能性膜を光学フィルター(または単にフィルター)と呼ぶ。
【0074】
反射防止機能を付与した反射防止層は、外光の反射を抑えてコントラストの低下を抑えるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。また必要であればノングレアー層またはアンチグレアー層を設けることもできる。ノングレアー層やアンチグレアー層は、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。インキの硬化は熱硬化あるいは光硬化等を用いることができる。また、ノングレア処理またはアンチグレア処理をしたフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。更に必要で有ればハードコート層を設けることもできる。
【0075】
近赤外線吸収層は、金属錯体化合物等の近赤外線吸収色素を含有する層、または、銀スパッタ層等である。ここで銀スパッタ層とは、誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで、近赤外線、遠赤外線から電磁波まで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層よりはじまり3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。
【0076】
特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層は、PDPが青色を発光する蛍光体が青色以外に僅かであるが赤色を発光する特性を有しているため、青色に表示されるべき部分が紫がかった色で表示されるという問題があり、この対策として発色光の補正を行う層であり、595nm付近の光を吸収する色素を含有する。
【0077】
本発明の製造方法で得られる透光性電磁波シールド膜は、良好な電磁波シールド性及び透過性を有するため、透過性電磁波シールド材料として用いることができる。さらに、回路配線などの各種の導電性配線材料として用いることができる。特に本発明の透光性電磁波シールド膜は、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)などのディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器、プリント配線板など、特にプラズマディスプレイパネルで用いられる透光性電磁波シールド膜として好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0079】
(実施例1)
水媒体中のAg60gに対してゼラチン7.5gを含む、球相当径平均0.05μmの沃臭化銀粒子(I=2モル%)を含有する乳剤を調製した。この際、Ag/ゼラチン体積比は1/1とし、ゼラチン種としては平均分子量2万の低分子量ゼラチンを用いた。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、更に塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が1g/m2となるようにポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布した。PETは塗布前にあらかじめ親水化処理したものを用いた。乾燥させた塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスク(ライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスク)を介して紫外線ランプを用いて露光し、下記の現像液を用いて25℃で45秒間現像し、さらに定着液(スーパーフジフィックス:富士写真フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0080】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0081】
さらに、メッキ液(硫酸銅0.06モル/L,ホルマリン0.22モル/L,トリエタノールアミン0.12モル/L,ポリエチレングリコール100ppm、黄血塩50ppm、α、α'−ビピリジン20ppmを含有する、pH=12.5の無電解Cuメッキ液)を用い、45℃にて無電解銅メッキ処理を行った後、10ppmのFe(III)イオンを含有する水溶液で酸化処理を行ない、本発明のサンプルAおよびサンプルBを得た。
【0082】
また、従来知られている中で最も導電性が高く且つ光透過性の高い技術と比較すべく、
前述の従来技術欄の「(3)フォトグラフィー法を利用したエッチング加工メッシュ」の代表として、特開2003−46293号公報記載の金属メッシュの作成を行った。
このサンプルは特開2003−46293号公報の実施例1と同様の実験を行って作成した。尚、本発明のサンプルとメッシュ形状(線幅、ピッチ)を一致させるために、上記と同じピッチ200μmのフォトマスクを利用した。
【0083】
このようにして得られた、導電性金属部と光透過性部とを有するサンプルの導電性金属部の線幅を測定して開口率を求め、表面抵抗値を測定した。
また、金属細線メッシュがディスプレイ画像を視認する際に悪影響を及ぼすか否かをか判断するために以下のようなモアレの評価を行った。
【0084】
(モアレ評価)
日立製PDP及び松下電器製PDP前面に、モアレが最小のバイアス角度で電磁波シールド膜を設置し、目視による官能評価を行った。PDPに正対して観察すると共に、PDPに対して視点を様々な位置に置いてPDP画像表示面に対して斜め方向から観察を行った。いずれのモアレが顕在化しなかった場合を○、モアレが顕在化したサンプルを×と評価した。
【0085】
(メッシュ細線の交点部の形状観察)
光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察・写真撮影して、メッシュをなす金属細線の交差する交点部の形状を観察した。交点部の線幅が直線部分の線幅の1.5倍未満の場合、交点の太りの問題なし(○)、1.5倍以上の場合太りの問題あり(×)と評価した。
【0086】
評価結果を、比較例のデータと共に下表に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
従来知られている最も高品質な金属メッシュからなる透光性電磁波シールド膜は、特開2003−46293号公報のものである。そこで、該公報の実施例1に記載される透光性導電膜を比較例とした。
比較例の透光性導電膜と、本発明のサンプルAを比べると、開口率と表面抵抗は同等であり、どちらも同じレベルの光透過性と導電性(電磁波シールド能)を有していることが判る。但し、PDP画像の画質(モアレ)の観点に目を向けると、比較例のサンプルではモアレが発生したのに対し、本発明のサンプルではその問題が生じないことが判った。
尚、メッシュの交点部の形態を観察した処、比較例の銅箔をエッチングしたサンプルでは交点が直線部分よりも太い形状であったのに対し、本発明のサンプルでは交点部の太りが見られなかった。モアレの有無はこの交点の形状の違いから生じていると推定される。
【0089】
(実施例2)
前述の従来技術欄の「銀塩を利用した導電性金属銀の形成方法」である、物理現像核に銀を沈着させる銀塩拡散転写法(特開2000−149773号公報及び国際公開WO01/51276号公報等)との比較を以下の様に行った。
特開2000−149773号公報に記載の方法と同様の方法で、親水化処理した透明なTAC(トリアセチルセルロース)支持体上に物理現像核層と感光層を塗布し、ピッチ200μmのメッシュ状フォトマスクを介して露光を与え、DTR法による現像を行い、比較サンプル1を作製した。
また、実施例1と同様の方法により、4cm×4cmの大きさの塗布試料を用い、本発明サンプルCを作製した。
本発明サンプルCと比較サンプル1のメッシュ形態は、線幅12μm、ピッチ200μmであり、どちらも開口率88%であった。
これらのサンプルの光透過性部の透過率と、表面抵抗とを測定した結果を下表に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
これより、本発明の透光性電磁波シールド膜は、特開2000−149773号公報に記載の物理現像核を用いた銀塩拡散転写法で得られた導電性金属膜と比較して、高い導電性を有し、且つ優れた光透過性を有することが分かる。
以上のように、光透過性部の透明性の観点から、特開2000−149773号公報等に記載の銀塩拡散転写法を用いた方法ではディスプレイ前面に設置する電磁波シールド膜として十分透明なものを得ることは困難であり、これに対し物理現像核を塗布しない方法が透明性の高いシールド膜を得ることができディスプレイ用途として、より適している。
【0092】
(実施例3)
銀塩拡散転写法を用いないで導電性金属部を得る場合、より高い導電性を得るために、高いAg/ゼラチン体積比が重要な要件であることを示すため、以下の実験を行った。
実施例1におけるゼラチン量を変更して、Ag/ゼラチン体積比が1/4〜1/0.6とし、メッシュをなす金属細線の線幅は12μm、開口率は88%である本発明サンプルD〜Gを作製した。本願の実施例1と同様の方法により表面抵抗を測定した。
また、通常のカラーネガフィルムを用いる場合に関して、比較のために述べる。市販のカラーネガフィルムのAg/バインダー(ゼラチン)体積比は、約1/17と非常に小さいため、実施例1におけるゼラチン量を変更して、Ag/ゼラチン体積比が1/17であるサンプルDを作製し、本願の実施例1、2と同様の実験を行い表面抵抗等を測定した。
結果を下表に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
本発明では、Ag/バインダー(ゼラチン)体積比を大きくすることにより、より高い導電性が得られることが分かる。また透過率の点でもAg/バインダー体積比を大きくすることが好ましい。
300Ω/sq以下の導電性が要求されるCRT用としては、Ag/ゼラチン比は1/4以上が好ましく、2.5Ω/sq以下の導電性が要求されるPDP用としては、Ag/ゼラチン比は1/3以上が好ましい。
また、通常のカラーネガフィルムのようなAg/ゼラチン比の小さい感光材料を用いると、導電性パターンの形成は可能であっても、透光性電磁波シールド材料として十分な導電性を満たすことは困難である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したとおり、本発明の製造方法であれば、高い透過率と高い導電性(電磁波シールド能)の性能を同時に満たし、かつ、モアレの問題のない透光性電磁波シールド膜を得ることができる。また、本発明の製造方法であれば、また生産性の高い製造方法を利用できる結果、透光性電磁波シールド膜を低コストで多量に生産することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に設けられた銀塩とバインダーをAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより光透過性部とともに金属銀部を形成する金属銀部の形成方法。
【請求項2】
露光部に前記金属銀部を形成し、未露光部に前記光透過性部を形成することを特徴とする請求項1に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項3】
前記光透過性部が実質的に物理現像核を有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項4】
Ag/バインダー体積比が1/2以上の銀塩含有層を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項5】
Ag/バインダー体積比が1/1以上の銀塩含有層を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項6】
Ag/バインダー体積比が100以下の銀塩含有層を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項7】
前記銀塩が光センサーとして機能することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項8】
前記バインダーが水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項9】
前記バインダーがゼラチンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項10】
前記現像処理が定着処理を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の金属銀部の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の形成方法により得られることを特徴とする、金属銀部及び光透過性部を有する金属銀膜。

【公開番号】特開2009−124180(P2009−124180A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51491(P2009−51491)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【分割の表示】特願2003−430085(P2003−430085)の分割
【原出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】