説明

金属錯体化合物、光学記録媒体、光記録材料及び色素

【課題】いわゆる青色レーザによる読み出し操作並びに書き込み操作を好適に行なうことができ、且つ、生産性及び耐久性に優れた光学記録媒体を提供する。
【解決手段】光学記録媒体10は、波長350〜530nmのレーザ光を吸収し得るものであって、一般式[I]に示すピリジンN−オキシド化合物をジアゾ成分として少なくとも含んでいることを特徴とする金属錯体化合物からなる色素aを光記録材料とすることにより記録層2を構成したものである。具体的には光学記録媒体10は、光透過性材料からなる基板1と、基板1上に設けられた記録層2と、記録層2上に積層された反射層3及び保護層4とが順番に積層されているディスク100を、接着剤5を介して互いに貼り合わせてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVDなどの光ディスクについて、具体的には、有機金属錯体化合物を記録層に用いた光学記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線レーザ或いは赤色レーザ光線をデータの記録・読取りに用いる光学ディスク技術の普及に伴い、当該レーザ光線に対して好適に適用し得る有機色素が種々開発されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0003】
そして近年、青色レーザに対応する記録層を構成し得る素材として、種々の有機色素が開発されている。波長405nmの所謂青色に対応し得る有機色素もまた開発されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
そして現状において、青色レーザに対応する記録層を設けるには、従来のDVD等に比べて小さいトラック寸法を設け、記録層の膜が、例えば、5〜100nmといった薄さで、且つ高い精度で均一に設けることが必要とされている。
【特許文献1】特開平10−81069号公報
【特許文献2】特開2006−256294号公報
【特許文献3】特開2006−306070号公報
【特許文献4】国際公開第06/061398号パンフレット
【特許文献5】特開2007−45147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に当該技術の場合、2層式DVDや、それ以上の複数の記録層を一枚のディスクに設ける場合には、各々の記録層を、より精密に設けなければならない。具体的には、精密に記録層を設けるために求められる有機色素の特性として、溶媒への溶解性が高いことが要求される。溶媒への溶解性が低いと、溶解させる際に部分的に濃度が高い箇所において、再結晶を起こしてしまう可能性がある。その結果として、溶液内において、所定濃度から部分的にばらついた箇所が存在してしまうこととなり、そのばらつきがコートする際の記録層の厚みを不均一にする要因となってしまう。
【0006】
また他方、記録層を薄く構成した場合においても耐久性を好適に高くするためには、斯かる記録層自体の耐光性も、よりいっそう高くすることが求められることとなる。
【0007】
本発明はこのような不具合に着目したものであり、本発明の所期の目的は、いわゆる青色レーザによる読み出し操作並びに書き込み操作を好適に行なうことができ、且つ、生産性及び耐久性に優れた光学記録媒体を提供すること、並びに、青色レーザ付近の波長の光を好適に吸収し得る色素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明は、波長350〜530nmのレーザ光を吸収し得るものであって、上記一般式[I]で表わされるピリジンN−オキシド化合物をジアゾ成分として少なくとも含んでいることを特徴とするものである。ここで、一般式[I]中、Aは、含酸素複素芳香環、又は上記一般式[II]又は[III]に示す反応基を表わし、Mは、二価又は三価の金属元素を表わし、Xは、ヘテロ原子を表わし、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の官能基である。また一般式[II]及び[III]中、X2及びX3は、ヘテロ原子を表わし、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の官能基である。
【0009】
また、本発明は斯かる金属錯体化合物を含んでいることを特徴とする色素である。併せて本発明は、斯かる金属錯体化合物を基層の上側に設けられる光記録材料である。また本発明は基層と、当該基層上に設けられた記録層とを具備してなり、当該記録層に斯かる金属錯体化合物を少なくとも含んでいることを特徴とする光学記録媒体である。
【0010】
ここで、一般式[I]で表すピリジンN−オキシド化合物における1価の官能基R1〜R4について説明する。
【0011】
一般式[I]で表すピリジンN−オキシド化合物において、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3〜炭素数18の環状アルキル基、炭素数2〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルケニル基、飽和または不飽和の複素環基、炭素数6〜炭素数18のアリール基、炭素数7〜炭素数20のアラルキル基、炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルコキシ基、炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバメート基、カルボン酸エステル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、スルファモイル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基から選ばれるいずれか1種が挙げられる。
【0012】
そして一般式[I]で表すピリジンN−オキシド化合物において、Xは、ヘテロ原子を表わしたものとすることが望ましいが、硫黄原子又は酸素原子とすることが更に望ましく、酸素原子とすることが特に望ましい。
【0013】
次に、一般式[I]で表すピリジンN−オキシド化合物における金属イオンを示すMについて説明する。
【0014】
一般式[I]で表すピリジンN−オキシド化合物と配位して含金属ピリジンN−オキシド化合物を形成する金属イオンを示すMとしては、ピリジンN−オキシド化合物との配位形成能力があれば特に限定されず、遷移元素、典型元素から選択される。金属の酸化数は限定されない。また、後述する金属錯体化合物において、金属とピリジンN−オキシド化合物との比は特に限定されない。また、金属及びピリジンN−オキシド化合物以外に、金属錯体化合物は、電荷を有する対イオンを含む形で錯体を形成してもよい。
【0015】
金属とピリジンN−オキシド化合物とが形成する錯体の好ましい構造としては、ピリジンN−オキシド化合物が3座配位子となるため、錯体形成のしやすさから、2価の金属1個に対しピリジンN−オキシド化合物が2個の割合で配位した構造が好ましい。即ち、一般式[I]で表すピリジンN−オキシド化合物とともに金属錯体を形成する金属イオンは、周期表(長周期型)の3族〜12族から選ばれる2価の金属であることが好ましい。これらの2価の金属の中でも、特に、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、銅、マンガン及びパラジウムから選ばれる少なくとも1 種の金属が特に好ましい。さらに詳細には金属原子たるMとして、ニッケル又は銅とすることが好ましい。
【0016】
尚、含金属ピリジンN−オキシド化合物としては、複数種のピリジンN−オキシド化合物が金属に配位した構造でもよい。また、後述する光学記録媒体の記録層に、複数種の含金属ピリジンN−オキシド化合物を含有していてもよい。
【0017】
ここで、上述の通り、一般式[I]で表すピリジンN−オキシド化合物におけるAとしては、含酸素複素芳香環とするか、又は上記一般式[II]、及び[III]に示すものとする。
【0018】
斯かる一般式[II]におけるR5、R6及び[III]におけるR7、R8は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へプチル基等の置換されてもよい炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルキル基; シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の置換されてもよい炭素数3〜炭素数18の環状アルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の置換されてもよい炭素数2 〜 炭素数18の直鎖又は分岐のアルケニル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピペリジル基、モルホリノ基等の置換されてもよい飽和または不飽和の複素環基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等の置換されてもよい炭素数6〜炭素数18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の置換されてもよい炭素数7〜炭素数20のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の置換されてもよい炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の置換されてもよい炭素数1〜 炭素数18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;ヒドロキシ基;ホルミル基;アシル基;アミノ基;アシルアミノ基;カルバメート基;カルボン酸エステル基;アシルオキシ基;カルバモイル基;スルホニル基;スルフィニル基;で表されるスルファモイル基;スルホン酸エステル基;スルホンアミド基から選ばれるいずれか1種の官能基である。
【0019】
そして一般式[II]及び[III]において、X2及びX3は、ヘテロ原子を表わしたものとすることが望ましいが、硫黄原子又は酸素原子とすることが更に望ましく、酸素原子とすることが特に望ましい。
【0020】
そして同じく前記Aを含酸素芳香族環とした場合、そのより望ましいものとして、Aを、β―ジケトン誘導体又はメルドラム酸誘導体とすることが好ましい。
【0021】
そして本発明は、上に記したもののうち、特に波長385〜410nmのレーザ光を吸収し得るものとすることが望ましい。
【0022】
また一般式[I]で表されるピリジンN−オキシド化合物の分子量は、好ましい範囲としては、1500以下、特に好ましくは1000以下である。分子量が過度に大きいとグラム吸光係数が減少し、色素の量に対して吸収が小さくなるので好ましくはない。
【0023】
そして、一般式[I]で表されるピリジンN−オキシド化合物の好ましい例としては、具体的には、下記に示された(1)及び(2)の化合物が挙げられる。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、いわゆる青色レーザによる読み出し操作並びに書き込み操作を好適に行なうことができ、且つ、生産性及び耐久性に優れた光学記録媒体を提供することが可能となる。
【0027】
また、青色レーザ付近の波長の光を好適に吸収し得る色素を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
本発明の実施形態が適用される光学記録媒体について説明する。
【0030】
本実施の形態が適用される光学記録媒体は、少なくとも、基板と、一般式[I]で表されるピリジンN−オキシド化合物の金属錯体化合物を含有する記録層とから構成される。尚、必要に応じて、更に下引き層、反射層、保護層等を設けても良い。
【0031】
図1は、本実施の形態が適用される光学記録媒体の外観図である。図2は、本発明をHD DVDに対して適用した第一実施形態に係る構成説明図であり、図3は、本発明をBD DVDに対して適用した第二実施形態に係る構成説明図である。
【0032】
<第一実施形態>
図2に示される光学記録媒体10は、光透過性材料からなる基層たる基板1と、基板1上に設けられた記録層2と、記録層2上に積層された反射層3及び保護層4とが順番に積層されているディスク100を、接着剤5を介して互いに貼り合わせてなるものである。そして光学記録媒体10は、それぞれの基板1側から照射されるレーザ光Lにより、情報の記録・再生が行われるものとなっている。
【0033】
接着剤5は、本実施形態では、例えば紫外線硬化樹脂接着剤(大日本インキ化学工業社製DVD802)を採用している。
【0034】
ここで説明の便宜上、光学記録媒体10において、図2において下側に配されたディスク100に設けられた保護層4が存在する側を上方、基板1が存在する側を下方とし、これらの方向に対応する各層の各面を、それぞれ各層の上面及び下面とする。
【0035】
基板1は、本実施形態では直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート円盤の表面に、溝深さ約600Åすなわち60nm、溝底部の幅が約0.24μm、トラックピッチ0.40μmの案内溝凹凸パターンを有するHD DVDフォーマットに準拠したものとしている。
【0036】
また基板1は、基本的に記録光及び再生光の波長において透明な材料であれば、様々な材料を使用することができる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に、非晶質ポリオレフィン) 、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂; ガラスが挙げられる。また、ガラス上に光硬化性樹脂等の放射線硬化性樹脂からなる樹脂層を設けた構造が挙げられる。中でも、高生産性、コスト、耐吸湿性等の観点からは、射出成型法にて使用されるポリカーボネート樹脂、耐薬品性及び耐吸湿性等の観点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。更に、高速応答等の観点からは、ガラスが好ましい。
【0037】
樹脂製の基板1を使用した場合、又は、記録層と接する側(上側)に樹脂層を設けた基板1を使用した場合には、上面に、記録再生光の案内溝やピットを形成してもよい。案内溝の形状としては、光学記録媒体10の中心を基準とした同心円状の形状やスパイラル状の形状が挙げられる。スパイラル状の案内溝を形成する場合には、溝ピッチが0.2〜1.2μm程度であることが好ましい。
【0038】
記録層2は、上記において(1)及び(2)で示した金属錯体化合物たる色素aを0.85wt%となる様に2,2,3,3,−テトラフルオロプロパノールに溶解した塗布液をスピンコートし、さらに90℃で15分間アニールすることにより基板1表面に形成されたものである。
【0039】
すなわち記録層2は、基板1の上側に直接、又は必要に応じて基板1上に設けた下引き層等の上側に形成され、一般式[I]で表されるピリジンN−オキシド化合物の金属錯体化合物が含まれるものとなっている。記録層2の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等、一般に行なわれている様々な薄膜形成法が挙げられる。量産性やコストの観点からは、スピンコート法が好ましく、均一な厚みの記録層2が得られるという観点からは、塗布法よりも真空蒸着法等の方が好ましい。スピンコート法による成膜の場合、回転数は500〜15000rpmが好ましい。また、場合によっては、スピンコートの後に、加熱する、溶媒蒸気にあてる等の処理を施しても良い。
【0040】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布法により記録層2を形成する場合に、一般式[I]で表されるピリジンN−オキシド化合物の金属錯体化合物を溶解させて基板1に塗布するために使用する塗布溶媒は、基板1を侵食しない溶媒であれば特に限定されない。
【0041】
具体的には、例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒; 乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【0042】
また、記録層2には、一般式[I]で表される金属錯体化合物に加えて、安定性や耐光性の向上のために、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等を含有させたり、記録感度の向上のために、金属系化合物等の記録感度向上剤を含有させたりしても良い。
【0043】
ここで、金属系化合物とは、遷移金属等の金属が、原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えば、エチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。
【0044】
尚、記録層2には、必要に応じて、一般式[I]で表される金属錯体化合物を複数種類併用しても良い。更に、記録層2には、ピリジンN−オキシド化合物の金属錯体化合物に加え、必要に応じて他系統の色素を併用することもできる。
【0045】
他系統の色素としては、主として記録用レーザ光Lの発振波長域に適度な吸収を有するものであればよく、特に制限されない。また、CD−R等に使用され、770nm〜830nmの波長帯域中に発振波長を有する近赤外レーザ光を用いた記録・再生に適する色素や、DVD−R等に使用され、620nm〜690nmの波長帯域中に発振波長を有する赤色レーザ光を用いた記録・再生に適する色素等を、ピリジンN−オキシド化合物と併用して記録層2に含有させることにより、異なる波長帯域に属する複数種のレーザ光を用いた記録・再生に対応する光学記録媒体10を製造することもできる。また、上記CD−RあるいはDVD−Rの色素の中で耐光性が良好なものを選び、本発明の化合物に混合することにより、耐光性をさらに向上させることが可能となる。
【0046】
更に、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0047】
記録層2の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なる為、特に限定するものではないが、記録を可能とするためにはある程度の膜厚が必要とされるため、通常、少なくとも1nm以上であり、好ましくは5nm以上である。但し、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。記録層2の膜厚が過度に厚いと、良好な記録が行なえないおそれがある。
【0048】
反射層3は、記録層2の上に形成されているものであり、本実施形態では、Arをスパッタガスとして用い、スパッタ法によりAgを約1000Åすなわち100nmの厚さに設けたものである。また一般的に反射層3の膜厚は、好ましくは50nm〜300nmである。
【0049】
そして反射層3の材料としては、再生光の波長において十分高い反射率を有する材料、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を、単独あるいは合金にして用いることができる。これらの中でもAu、Al、Ag、Cuは反射率が高く、反射層3の材料として適している。また、これらの金属を主成分とした上で、加えて他の材料を含有させても良い。ここで主成分とは、含有率が50%以上のものをいう。主成分以外の他の材料としては、例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ta、Ti、Pt、Pd、Nd等の金属及び半金属を挙げることができる。これらの金属及び半金属の中でも、Agを主成分とするものは、コストが安い点、高反射率が出やすい点、後述する印刷受容層を設けた場合に地色が白く美しいものが得られる点等から、特に好ましい。
【0050】
反射層3を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、基板1の上や反射層3の下に、反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために、公知の無機系又は有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0051】
保護層4は、反射層3の上に形成されるものであり、本実施形態では紫外線硬化樹脂(大日本インキ化学工業社製SD390)からなる保護層を約4μmの厚さに設けることにより、基板1、記録層2及び反射層とともにディスク100を作成したものとしている。また保護層4の材料は、反射層3を外力から保護するものであれば、特に限定されない。有機物質の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、MgF2、SnO2等が挙げられる。
【0052】
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いる場合は、適当な溶剤に溶解して調製した塗布液を反射層3の上に塗布して乾燥させれば、保護層4を形成することができる。UV硬化性樹脂を用いる場合は、そのまま反射層3の上に塗布するか、又は適当な溶剤に溶解して調製した塗布液を反射層3の上に塗布し、UV光を照射して硬化させることによって、保護層4を形成することができる。
【0053】
UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は、単独で用いても、複数種を混合して用いても良い。また、保護層は、単層として形成しても、多層として形成してもよい。
【0054】
保護層4の形成方法としては、記録層2と同様に、スピンコート法やキャスト法等の塗布法や、スパッタリング法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、中でもスピンコート法が好ましい。保護層4の膜厚は、その保護機能を果たすためにはある程度の厚みが必要とされるため、一般に0.1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。但し、通常100μm以下であり、好ましくは30μm以下である。保護層4の膜厚が過度に厚いと、効果が変わらないだけでなく保護層4の形成に時間を要し、またコストが高くなるおそれがある。
【0055】
上述したように、光学記録媒体10の層構造として、基板1、記録層2、反射層3、保護層4をこの順に積層して成る構造を例に採って説明したが、この他の層構造を採っても構わない。
【0056】
例えば、上例の層構造から保護層4を省略して反射層3の上面に、更に別の基板1を貼り合わせてもよい。この際の基板1は、何ら層を設けていない基板そのものであってもよく、貼り合わせ面又はその反対面に反射層3等任意の層を有するものでも良い。また、同じく上例の層構造を有する光学記録媒体10や、上例の層構造から保護層4を省略した光学記録媒体10を、それぞれの保護層4及び/又は反射層3の上面を相互に対向させて2枚貼り合わせてもよい。
【0057】
<第二実施形態>
次に、光学記録媒体の第二実施形態について説明する。
【0058】
図3は、光学記録媒体の第二実施形態を説明する図である。第一実施形態の光学記録媒体10と共通する部分は同じ符号を付し、説明を省略する。同図に示される光学記録媒体20は、光透過性材料からなる基板1と、基板1上に設けられた反射層3と、反射層3上に積層された記録層2及び保護被膜5とが順番に積層されている。光学記録媒体20は、保護被膜5側から照射されるレーザ光Lにより、情報の記録・再生が行われる。
【0059】
保護被膜5は、フィルム又はシート状のものを接着剤によって貼り合わせてもよく、また、前述の保護層4と同様の材料を用い、成膜用の塗液を塗布し硬化又は乾燥することにより形成しても良い。保護被膜5の厚さは、その保護機能を果たすためにはある程度の厚さが必要とされるため、一般に0.1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。但し、通常、300μm以下、好ましくは200μm以下である。保護被膜5が過度に厚いと、効果が変わらないだけでなく保護被膜5の形成に時間を要し、また、コストが高くなるおそれがある。
【0060】
尚、記録層2、反射層3等の各層は通常、前述の光学記録媒体10と同様のものが用い得る。但し、本層構成では基板1は透明である必要はなく、従って、前述の材料以外にも、不透明な樹脂、セラミック、金属(合金を含む)等が用いられる。このような層構成においても、上記各層間には、本発明の特性を損なわない限り、必要に応じて任意の層を有してよい。
【0061】
ところで、光学記録媒体10、20の記録密度を高めるための一つの手段として、対物レンズの開口数を増大させることが挙げられる。これにより、情報記録面に集光される光スポットを微小化できる。しかしながら、対物レンズの開口数が増大すると、記録・再生を行なうためにレーザ光Lを照射した際に、光学記録媒体10、20の反り等に起因する光スポットの収差が大きくなりやすいため、良好な記録再生信号が安定して得られない場合がある。
【0062】
このような収差は、レーザ光Lが透過する透明基板や保護被膜の膜厚が厚いほど大きくなりやすいので、収差を小さくするためには基板や保護被膜をできるだけ薄くするのが好ましい。ただし、通常、基板1は、光学記録媒体10、20の強度を確保するためにある程度の厚みを要するので、この場合、光学記録媒体20の構造(基板1、反射層3、記録層2、保護被膜5からなる基本的層構成の光学記録媒体20)を採用するのが好ましい。光学記録媒体10の基板1を薄くするのに比べると、光学記録媒体20の保護被膜5は薄くしやすいため、好ましくは光学記録媒体20を用いる。
【0063】
但し、光学記録媒体10の構造(基板1、記録層2、反射層3、保護層4なる基本的層構成の光学記録媒体10)であっても、記録・再生用レーザ光Lが通過する透明な基板1の厚さを50μm〜300μm程度にまで薄くすることにより、収差を小さくして使用できるようになる。
【0064】
また、他の各層の形成後に、記録・再生レーザ光Lの入射面(通常は、基板1の下面)に、表面の保護やゴミ等の付着防止の目的で、紫外線硬化樹脂層や無機系薄膜等を成膜形成してもよく、記録・再生レーザ光Lの入射面ではない面(通常は、反射層3や保護層4の上面)に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、あるいは各種筆記具を用いて記入や印刷が可能な印刷受容層を設けてもよい。
【0065】
本実施の形態が適用される光学記録媒体10、20において、情報の記録・再生のために使用するレーザ光Lは、高密度記録を実現する観点から波長が短いほど好ましいが、特に、波長350nm〜530nmのレーザ光Lが好ましい。斯かるレーザ光Lの代表例として、中心波長405nm、410nm、515nmのレーザ光が挙げられる。
【0066】
波長350nm〜530nmのレーザ光Lは、波長405nm、410nmの青色又は515nmの青緑色の高出力半導体レーザ光を使用することによって得られる。また、その他にも、例えば、(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザ光、及び(b)半導体レーザ光によって励起こされる基本発振波長740nm〜960nmの連続発振可能な固体レーザ光の何れかの発振レーザ光を、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによっても得られる。尚、SHGとしては、既存の種々のものを採用することができる。第二高調波の具体例として、基本発振波長が860nmの半導体レーザ光の場合には、その基本発振波長の倍波である430nm、また、半導体レーザ光励起の固体レーザ光の場合には、CrドープしたLiSrAlF結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の430nm等が挙げられる。
【0067】
本実施の形態が適用される光学記録媒体10、20に、情報の記録を行なう際には、記録層2に対して(通常は、基板1側から基板1を透過させ)、通常、0.4μm〜0.6μm程度に集束したレーザ光Lを照射する。記録層2のレーザ光が照射された部分は、レーザ光Lのエネルギーを吸収することによって分解、発熱、溶解等の熱的変形を起こすため、光学的特性が変化する。
【0068】
記録層2に記録された情報の再生を行なう際には、同じく記録層2に対して(通常は、記録時と同じ方向から)、よりエネルギーの低いレーザ光Lを照射する。記録層2において、光学的特性の変化が起きた部分(すなわち、情報が記録された部分)の反射率と、変化が起きていない部分の反射率との差を読取ることにより、情報の再生が行なわれる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0070】
例えば、本実施形態では、本発明に係る金属錯体化合物を光学記録媒体に好適に適用させた態様を開示したが、当該金属錯体化合物は、特定の波長を吸収し得る色素として、例えばフィルタ等の他の用途に用いても良い。さらに、上記実施形態では光学記録媒体2並びにディスク100において、単一の記録層2を設けたものとしたが、勿論、光学記録媒体の記憶容量を増大させるべく記録層2を複数積層させた構成としてもよい。
【0071】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【実施例】
【0072】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
当該実施例では、上記(1)及び(2)で示した金属錯体化合物をそれぞれ化合物1、化合物2として、後述する各参考例並びに比較例として用いた化合物との差異について検討する。なお参考例1、参考例2及び参考例3として用いた化合物をそれぞれ化合物3、化合物4及び化合物5としてそれぞれ記す。これら化合物3、化合物4及び化合物5は、いわゆる青色レーザに対する記録特性が優れているとされる金属錯体化合物である。比較例1として用いた化合物6は、上述した特許文献5において開示された構造を示す金属錯体化合物である。
【0074】
具体的には、第一実施例において、本発明に係る金属錯体化合物の合成手順を示し、第二実施例において、実施例、参考例及び比較例として用いた化合物により作成された光学記録媒体における記録特性について検証し、さらに第三実施例において実施例、参考例及び比較例に係るそれぞれの金属錯体化合物の特性について検証する。
【0075】
<第一実施例>
本実施例では、上記化合物1を合成する手順について示した。併せて、この化合物に対する溶解性、紫外可視吸収スペクトル並びに熱分解温度を調査した。
化合物1の合成
温度計、還流管を付した100ml反応フラスコに2−アミノ−6−メチルピリジン−1−オキシピリジン1.6g(10.0mmol)、35%塩酸3.0g(30mmol)、及び水20mlを仕込み、この混合物を0℃以下に冷却した。ここに撹拌しながら亜硝酸ナトリウム0.69g(10mmol)を水5mlに溶解した溶液を0℃以下で滴下した。その後、この混合物を0℃以下で30分撹拌してジアゾニウム塩溶液を得た。
【0076】
温度計、還流管を付した200ml反応フラスコにメルドラム酸1.44g(10mmol)、酢酸ナトリウム3.0g(36mmol)、酢酸10ml、水30ml、及びメタノール20mlを仕込み、この混合物を0℃以下に冷却した。ここに撹拌しながら先に得たジアゾニウム塩溶液を5℃を超えないように徐々に加えた。その後、この混合物を5℃以下で2時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、析出固体を濾取し、水洗、乾燥して化合物1の配位子2.0gを得た(収率72%)。
【0077】
温度計、還流管を付した50ml反応フラスコに化合物1の配位子0.56g(2.0mmol)、酢酸ニッケル4水和物0.25g(1.0mmol)、及びメタノール25mlを仕込み、この混合物を60℃で2時間撹拌した。放冷後、析出固体を濾取し、水、次いでメタノールで、線上、乾燥して化合物1を0.52g得た(収率85%)。
【0078】
なお、当該化合物1の紫外可視吸収スペクトルをクロロホルム中で測定したところ、λmaxは417nmであり、モル吸光係数εは3.85×104であった。TGにより熱分解温度を測定したところ、244℃であった。また、2,2,3,3,−テトラフルオロプロパノール(TFP)に対する溶解度は、1.5wt%以上であった。
【0079】
<第二実施例>
上述の化合物1に加え、下記の構造を有する化合物3、化合物4、化合物5及び化合物6をそれぞれ実施例、参考例1、参考例2、参考例3、及び比較例に係る金属錯体化合物とし、これらを用いて、以下のように光学記録媒体を作成した。そして、当該光学記録媒体をそれぞれ実施例1、参考例1、参考例2、参考例3及び比較例とし、光学記録媒体としての記録特性についてそれぞれ評価を行なった。
【0080】
【化6】

【0081】
【化7】

【0082】
【化8】

【0083】
【化9】

【0084】
実施例
直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート円盤の表面に、溝深さ約600Åすなわち60nm、溝底部の幅が約0.24μm、トラックピッチ0.40μmの案内溝凹凸パターンを有するHD DVDフォーマットに準拠した基板を用意し、色素材料として化合物1を0.85wt%となる様に2,2,3,3,−テトラフルオロプロパノールに溶解した色素記録層の塗布液を調整した。この塗布液をスピンコートし、さらに90℃で15分間アニールすることにより基板表面に色素記録層を形成した。
上記色素記録層の最大光吸収波長は417nm、この波長での光吸収(Abs.)は0.48であった。
次に、色素記録層の上に、Arをスパッタガスとして用い、スパッタ法によりAgを約1000Åすなわち100nmの厚さに設け、反射層とした。
更に、その上に紫外線硬化樹脂(大日本インキ化学工業社製SD390)からなる保護層を約4μmの厚さに設けてディスク体を作成し、基板と同形状のポリカーボネート製のダミー基板を、紫外線硬化樹脂接着剤(大日本インキ化学工業社製DVD802)により貼り合わせて、HD DVD−Rを作成した。
この媒体1の記録特性をパルステック社製ディスク評価装置ODU−1000を用いて評価した。評価条件は以下の様にした。なお、評価条件はシステム規格
DVD specifications for High Density Recordable Disk (HD DVD-R) part 1
PHISICAL SPECIFICATIONS Version 1.1
に準拠した方法である。
[信号記録]
波長406nm、NA:0.65、線速度:2×(13.22/s)の条件でHD DVD信号を記録した。記録条件は上記HD DVD−Rに準拠したマルチパス発光パターンを採用した。
[信号再生]
波長406nm、NA:0.65、線速度1×(6.61m/s)の条件で未記録状態並びに記録後の信号を測定した。
【0085】
参考例1
上記媒体実施例に係る記載において、色素材料を化合物3に変更した以外は、媒体参考例1−1と同様に本発明の実施例4−1を作成し、記録特性を評価した。
なお、色素記録層の最大吸収波長は432nm、この波長での光吸収(Abs.)は0.53であった。
【0086】
参考例2
上記参考例1に係る記載において、色素材料を化合物4に変更した以外は、媒体参考例1と同様に本発明の参考例2を作成し、記録特性を評価した。
なお、色素記録層の最大吸収波長は427nm、この波長での光吸収(Abs.)は0.47であった。
【0087】
参考例3
上記参考例1に係る記載において、色素材料を化合物5に変更した以外は、媒体参考例1と同様に本発明の参考例3を作成し、記録特性を評価した。
なお、色素記録層の最大吸収波長は432.5nm、この波長での光吸収(Abs.)は0.48であった。
【0088】
比較例1
上記参考例1に係る記載において、色素材料を化合物6に変更したこと以外は、媒体参考例1と同様に比較例1を作成し、各記録特性を評価した。
なお、色素記録層の最大光吸収波長は422nm、この波長での光吸収(Abs.)は0.39であった。
【0089】
上記各光学記録媒体における評価の結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
本発明の参考例1、参考例2並びに実施例については、上述したHD DVD−R規格を満足する特性が得られた。他方、比較例は規格値を満足するPRSNR値が得られなかった。
【0092】
<第三実施例>
実施例に用いた化合物1及び化合物2、並びに参考例1、参考例2に用いた化合物3及び化合物4、そして化合物5の各金属錯体化合物に対して、改めて、紫外可視吸収スペクトル、熱分解温度並びに2,2,3,3,−テトラフルオロプロパノールに対する溶解度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
同表に示す通り、上記第一実施例において調査していない化合物2についても化合物1同様に、測定した各項目について、化合物3、化合物4及び化合物5に比べて遜色無い値を示した。すなわち、本発明に係る化合物2についても、参考例1及び参考例2に用いた化合物3及び化合物4同様に、光学記録媒体の記録層として好適に適用し得ることが考察される。
【0095】
以上のように、これら実施例に係る光学記録媒体により、いわゆる青色レーザによる読み出し操作並びに書き込み操作を好適に行なうことができ、且つ、生産性及び耐久性に優れた光記録材料並びに当該光記録材料を用いた光学記録媒体を提供することが可能となることが実証された。また本発明に斯かる金属錯体化合物よれば、青色レーザ付近の波長の光を好適に吸収し得る色素を提供することが可能となることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態に係る外観図。
【図2】同第一実施形態に係る構成説明図。
【図3】同第二実施形態に係る構成説明図。
【符号の説明】
【0097】
1…基層(基板)
2…記録層
3…反射層
10、20…光学記録媒体
100…ディスク
a…金属錯体化合物、色素(色素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長350〜530nmのレーザ光を吸収し得るものであって、
下記一般式[I]で表わされるピリジンN−オキシド化合物をジアゾ成分として少なくとも含んでいることを特徴とする金属錯体化合物。
【化1】

(一般式[I]中、Aは、含酸素複素芳香環、又は下記一般式[II]、又は[III]に示す反応基を表わし、Mは、二価又は三価の金属元素を表わし、Xは、ヘテロ原子を表わし、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の官能基である。)
【化2】

【化3】

(一般式[II]及び[III]中、X2及びX3は、ヘテロ原子を表わし、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の官能基である。)
【請求項2】
前記Aを、含酸素複素芳香環としている請求項1記載の金属錯体化合物。
【請求項3】
前記Aを、β―ジケトン誘導体としている請求項2記載の金属錯体化合物。
【請求項4】
前記Aを、メルドラム酸誘導体としている請求項2記載の金属錯体化合物。
【請求項5】
前記Xを、酸素原子又は硫黄原子としている請求項1、2、3又は4記載の金属錯体化合物。
【請求項6】
前記Mを、周期表の7A属、8属、1B属及び2B属から選ばれる金属元素としている請求項1、2、3、4又は5記載の金属錯体化合物。
【請求項7】
前記Mを、ニッケル、コバルト、亜鉛、銅、マンガン、パラジウムから選ばれる少なくとも何れかの金属元素としている請求項6記載の金属錯体化合物。
【請求項8】
前記Mを、ニッケル又は銅としている請求項7記載の金属錯体化合物。
【請求項9】
前記R1、R2、R3、R4を、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3〜炭素数18の環状アルキル基、炭素数2〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルケニル基、飽和または不飽和の複素環基、炭素数6〜炭素数18のアリール基、炭素数7〜炭素数20のアラルキル基、炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルコキシ基、炭素数1〜炭素数18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバメート基、カルボン酸エステル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、スルファモイル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基から選ばれるいずれか1種を表わすものとしている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の金属錯体化合物。
【請求項10】
波長385〜410nmのレーザ光を吸収し得るものとしている請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の金属錯体化合物。
【請求項11】
分子量が1500以下であるものとしている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の金属錯体化合物。
【請求項12】
基層と、当該基層上に設けられた記録層とを具備してなり、
当該記録層に、請求項1乃至11の何れかに記載の金属錯体化合物を少なくとも含んでいることを特徴とする光学記録媒体。
【請求項13】
基層の上側に設けられるものであって、
請求項1乃至11の何れかに記載の金属錯体化合物を少なくとも含んでいることを特徴とする光記録材料。
【請求項14】
請求項1乃至11の何れかに記載の金属錯体化合物を少なくとも含んで少なくとも含んでなり、波長350〜530nmのレーザ光を吸収し得ることを特徴とする色素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−114345(P2009−114345A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289519(P2007−289519)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000179306)山田化学工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】