説明

金属錯体残基を含む共役系高分子化合物及びそれを用いた素子

【課題】発光素子等の場合、駆動電圧が低く、十分な発光特性が得られる高分子化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1):


(Xはハロゲン原子、R1〜R10は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、又はハロゲン原子、Mは、イリジウム、白金、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、レニウム、又はコバルト、nは、1又は2、Lは、1価又は2価の複素環基である金属錯体残基を含む共役系高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体残基を含む共役系高分子化合物及びそれを用いた素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な金属錯体化合物が発光材料、電荷輸送材料等として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の発光素子の作製に用いられている。有機EL素子の発光層に用いる発光材料としては、少なくとも1つの金属錯体部分を有する高分子化合物であって、該金属錯体部分は、金属原子が直接、高分子主鎖骨格の構成原子と結合し、さらに前記金属原子が少なくとも一つの炭素原子、又は酸素原子との間で結合している高分子化合物が提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−73480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この高分子化合物を発光素子等の素子の作製に用いた場合、該素子は駆動電圧が高く、発光特性が不十分であった。
【0005】
そこで、本発明は、発光素子等の素子の作製に用いた場合、該素子の駆動電圧が低く、十分な発光特性が得られる高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一に、下記式(1):

(式中、Xはハロゲン原子を表す。R1〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基、又はハロゲン原子を表す。Mは、イリジウム原子、白金原子、オスミウム原子、ルテニウム原子、パラジウム原子、ロジウム原子、レニウム原子、又はコバルト原子を表す。nは、1又は2である。R1〜R10が複数存在する場合、各々、同一であっても異なっていてもよい。破線は配位結合を表す。Lは、下記式(2a)で表される1価の複素環基又は下記式(2b)で表される2価の複素環基である。

(式中、R11は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基、又はハロゲン原子を表す。複数存在するR11は、同一であっても異なっていてもよい。*Nは、前記式(1)中のMと配位結合する窒素原子を表す。))
で表される金属錯体残基を含む共役系高分子化合物を提供する。
【0007】
本発明は第二に、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料と前記共役系高分子化合物とを含む組成物、並びに前記組成物が溶媒を含有してなる液状組成物を提供する。
【0008】
本発明は第三に、前記組成物を用いてなる薄膜、素子及び該素子からなる発光素子、並びに該発光素子を備えた面状光源、表示装置及び照明を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の共役系高分子化合物は、発光素子等の素子の作製に用いた場合、該素子の駆動電圧が低く、十分な発光特性が得られるものであり、通常、溶媒に対する溶解性にも優れているものである。したがって、本発明の組成物は、有機EL素子等の発光素子、面状光源、表示装置、照明、有機トランジスタ等の製造に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
<共役系高分子化合物>
本発明の共役系高分子化合物は、前記式(1)で表される金属錯体残基を含むものである。本明細書において、「金属錯体残基」とは、前記式(1)で表されるh価の基(hは1以上の整数であり、通常、1又は2である)を意味する。
【0011】
−金属錯体残基−
前記式(1)中、Mで表される金属原子としては、イリジウム原子、白金原子が好ましい。また、nは1又は2であるが、これはMで表される金属原子Mの価数から1を減じた整数である。
【0012】
前記式(1)中、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0013】
前記式(1)中、R1〜R10で表されるハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。該アルキル基の炭素数は、通常、1〜12程度であり、好ましくは1〜8である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0014】
前記式(1)中、R1〜R10で表されるハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。該アルコキシ基の炭素数は、通常、1〜12程度であり、好ましくは1〜8である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基が好ましい。
【0015】
前記式(1)中、R1〜R10で表されるハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基は、芳香族炭化水素(縮合環を有するもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものを含む。)から、水素原子1個を除いた原子団である。該アリール基の炭素数は、通常、6〜60程度であり、好ましくは6〜48である。該アリール基としては、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(「C1〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基(「C1〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様である。)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられ、フェニル基、メチルフェニル基、t−ブチルフェニル基が好ましい。
1〜C12アルコキシフェニル基としては、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、ドデシルオキシフェニル基等が挙げられる。
1〜C12アルキルフェニル基としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が挙げられる。
【0016】
前記式(1)中、R1〜R10で表されるハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基は、その炭素数は通常6〜60程度、好ましくは6〜48である。該アリールオキシ基としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられ、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基が好ましい。
1〜C12アルコキシフェノキシ基としては、例えば、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ドデシルオキシフェノキシ基等が挙げられる。
1〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基等が挙げられる。
【0017】
前記式(1)中、R1〜R10で表されるハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団を意味し、その炭素数は通常4〜60程度、好ましくは4〜20である。なお、複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。前記複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する原子が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、燐原子、硼素原子等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。該1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、アクリジル基、フェナントロリル基等が挙げられ、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、及びC1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0018】
前記式(1)中、R1〜R10で表されるハロゲン原子、R1〜R10で表される上記の基が置換基として有していてもよいハロゲン原子は、前記Xで表されるハロゲン原子の項で説明し例示したものと同じである。
【0019】
前記式(1)中、R1〜R10としては、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子が好ましく、水素原子、メチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基、フッ素原子、臭素原子がより好ましい。
【0020】
前記式(2a)、(2b)中、R11で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子は、前記R1〜R10で表される基、原子として説明し例示したものと同じである。
【0021】
前記式(2a)で表されるLとしては、以下のものが挙げられる。

【0022】
前記式(2b)で表されるLとしては、以下のものが挙げられる。

(式中、R11は前記と同じ意味を有する。複数存在するR11は、同一であっても異なっていてもよい。*Nは、前記式(1)中のMと配位結合する窒素原子を表す。結合手は、後述の高分子主鎖に結合する部位を意味する。)
【0023】
前記式(1)で表される金属錯体残基の中でも、配位子合成の容易さの観点から、下記式(1a):

(式中、X、R1〜R10及びLは、前記と同じ意味を有する。R1〜R10が複数存在する場合、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される金属錯体残基、下記式(1b):

(式中、X、R1〜R10及びLは、前記と同じ意味を有する。R1〜R10が複数存在する場合、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される金属錯体残基が好ましい。
【0024】
前記式(1)で表される金属錯体残基としては、以下のものが挙げられる。



(式中、X2は、塩素原子又は臭素原子を表す。各式に5個存在するR12のうち、3〜4個のR12は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基、又はハロゲン原子を表し、残りのR12は、結合手を表す。各式に5個存在するR12は、同一であっても異なっていてもよい。R’は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基を表す。R’が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0025】
前記式中、R12、R’で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子は、前記R1〜R10で表される基、原子として説明し例示したものと同じである。
【0026】
−高分子鎖−
本発明の共役系高分子化合物における前記金属錯体残基以外の部分(以下、「高分子鎖」という)を説明する。なお、本明細書において、「共役系」とは、主鎖の繰り返し単位の個数の80〜100%、好ましくは85〜100%、より好ましくは90〜100%が共役しているものを意味する。
【0027】
本発明の共役系高分子化合物は、導電性の観点から、主鎖に芳香環を含む共役系高分子化合物であることが好ましく、該共役系高分子化合物が下記式(3)で表される繰り返し単位を有する共役系高分子化合物であることがさらに好ましい。

(式中、Yは、−O−、−S−、−Se−、−B(R18)−、−Si(R19)(R20)−、−P(R21)−、−P(R22)(=O)−、−C(R23)(R24)−、−C(R25)(R26)−C(R27)(R28)−、−O−C(R29)(R30)−、−S−C(R31)(R32)−、−N(R33)−C(R34)(R35)−、−Si(R36)(R37)−C(R38)(R39)−、−Si(R40)(R41)−Si(R42)(R43)−、−C(R44)=C(R45)−、−N(R46)−、−N=C(R47)−、又は−Si(R48)=C(R49)−を表す。R18〜R49はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。R16及びR17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基を表す。複数存在するR16及びR17は、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【0028】
前記式(3)中、R16及びR17並びにR18〜R49で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子は、前記R1〜R10で表される基、原子の項で説明し例示したものと同じである。
【0029】
前記式(3)中、R18〜R49で表されるアルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、その炭素数は、通常、1〜12程度であり、好ましくは1〜8である。該アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等が挙げられる。
【0030】
前記式(3)中、R18〜R49で表されるアリールチオ基は、その炭素数は通常6〜60程度、好ましくは炭素数6〜48である。該アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が挙げられる。
【0031】
前記式(3)中、R18〜R49で表されるアリールアルキル基は、その炭素数は通常7〜60程度、好ましくは7〜48である。該アリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、及びC1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基が好ましい。
【0032】
前記式(3)中、R18〜R49で表されるアリールアルキルオキシ基は、その炭素数は通常7〜60程度、好ましくは炭素数7〜48である。該アリールアルキルオキシ基としては、例えば、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基等のフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基等が挙げられる。
【0033】
前記式(3)中、R18〜R49で表されるアリールアルキルチオ基は、その炭素数は通常7〜60程度、好ましくは炭素数7〜48である。該アリールアルキルチオ基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基等が挙げられる。
【0034】
前記式(3)中、R18〜R49で表されるアリールアルケニル基は、その炭素数は通常8〜60程度、好ましくは炭素数8〜48である。該アリールアルケニル基としては、例えば、フェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基等が挙げられる。
【0035】
前記式(3)中、R18〜R49で表されるアリールアルキニル基は、その炭素数は通常8〜60程度、好ましくは炭素数8〜48である。該アリールアルキニル基としては、例えば、フェニル−C2〜C12アルキニル基(「C2〜C12アルキニル」は、アルキニル部分の炭素数2〜12であることを示す。以下、同様である。)、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基等が挙げられる。
【0036】
前記式(3)で表される繰り返し単位としては、以下の構造のものが挙げられる。
【0037】

(式中、R*は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。複数存在するR16及びR17は、各々、同一であっても異なっていてもよい。R16及びR17は、前記と同じ意味を有する。R*は、複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0038】
前記式中、R*は、R18〜R49で表される基、原子と同じである。
【0039】
前記主鎖に芳香環を含む共役系高分子は、発光素子の発光強度の観点から、前記式(3)で表される繰り返し単位と下記式(4)で表される繰り返し単位とを有する共役系高分子化合物であってもよい。

(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。Ar1〜Ar7は置換基を有していてもよい。x及びyはそれぞれ独立に、0又は1を示し、0≦x+y≦1である。)
【0040】
前記式(4)中、「アリーレン基」とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団を意味し、通常炭素数は6〜60程度、好ましくは6〜20である。前記芳香族炭化水素は、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環の2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものを含む。前記アリーレン基としては、以下の構造のものが挙げられる。

(式中、R**は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。複数存在するR**は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0041】
前記式中、R**で表される基、原子は、R18〜R49で表される基、原子と同じである。
【0042】
本発明の共役系高分子化合物において、前記金属錯体残基の位置は、前記高分子鎖の外部(末端、側鎖等)であっても、前記高分子鎖の内部(複数の高分子鎖の間等)であってもよい。
【0043】
前記金属錯体残基が前記高分子鎖の内部に結合してなる共役系高分子化合物は、例えば、下記式(8a)、(8b)で表される。

(式中、X、R1〜R10は、前記と同じ意味を有する。L1は前記Lが2価である場合の複素環基を表す。vは、重合度(通常、1×101〜1×106の整数であり、好ましくは1×102〜5×105の整数である。)を表す。Z1及びZ2はそれぞれ独立に、前記高分子鎖を表す。該高分子鎖Z1及びZ2は、L1に結合している。R1〜R10、X及びL1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0044】
前記式(8a)及び(8b)中、L1で表される2価の複素環基は、前記式(2b)で表されるLとして挙げたものと同じである。
【0045】
前記金属錯体残基が前記高分子鎖の外部・末端に結合してなる共役系高分子化合物は、例えば、下記式(9a)、(9b)で表される。

(式中、X及びR1〜R10は、前記と同じ意味を有する。L2は1価の複素環基を表す。wは、1若しくは2(金属錯体残基が高分子鎖の末端に結合してなる場合)又は重合度(金属錯体残基が高分子鎖の外部に結合してなる場合)を表す。Z3は、前記高分子鎖を表す。該高分子鎖Z3は、L2に結合している。R1〜R10が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0046】
前記式(9a)及び(9b)中、L2で表される1価の複素環基は、前記式(2a)で表されるLとして挙げたものと同じである。
【0047】
本発明の共役系高分子化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えば、ブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。これらの中でも、発光量子収率の高い共役系高分子化合物を得る観点からは、ブロック性を帯びたランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。本発明の共役系高分子化合物は、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上あるもの、デンドリマーを含む。
【0048】
本発明の共役系高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、通常、1×103〜1×108であり、好ましくは1×104〜1×107である。
【0049】
本発明の共役系高分子化合物としては、合成の行いやすさと素子特性の観点から、下記式(C)、(D):

(式中、R1〜R11、R16、R17及びXは、前記と同じ意味を有する。複数存在するR1〜R11、R16、R17及びXは、各々、同一であっても異なっていてもよい。Y1及びY2は前記Yと同じ意味を有するが、Y1とY2は異なる。i及びjはそれぞれ独立に、0又は1を示し、0<i+j≦2である。p及びqは、2種の繰り返し単位の共重合比を表す数(具体的には、0≦p≦1、0≦q≦1)であり、p+q=1である。rは重合度(通常、1×101〜1×106の整数であり、好ましくは1×102〜5×105の整数である。)を表す。)
で表される共役系高分子化合物、下記式(A)、(B):

(式中、R1〜R11、R16、R17、Ar1〜Ar7、X、Y、x、y、i及びjは、前記と同じ意味を有する。複数存在するR1〜R11、R16、R17、Ar1〜Ar7及びXは、各々、同一であっても異なっていてもよい。s及びtは、2種の繰り返し単位の共重合比を表す数(具体的には、0≦s≦1、0≦t≦1)であり、s+t=1である。uは重合度(通常、1×101〜1×106の整数であり、好ましくは1×102〜5×105の整数である。)を表す。)
で表される共役系高分子化合物が好ましい。
【0050】
前記式(A)で表される共役系高分子化合物としては、以下のものが挙げられる。

(式中、uは前記と同じ意味を有する。)
【0051】
前記式(B)で表される共役系高分子化合物としては、以下のものが挙げられる。

(式中、uは前記と同じ意味を有する。)
【0052】
前記式(C)で表される共役系高分子化合物としては、以下のものが挙げられる。

(式中、rは前記と同じ意味を有する。)
【0053】
前記式(D)で表される共役系高分子化合物としては、以下のものが挙げられる。

(式中、rは前記と同じ意味を有する。)
【0054】
また、本発明の共役系高分子化合物としては、以下のものも挙げられる。

(式中、s、t及びuは、前記と同じ意味を有する。)
【0055】
−共役系高分子化合物の合成方法−
本発明の共役系高分子化合物は、例えば、下記式(10a)又は(10b)で表されるとおり、イリジウム錯体又は白金錯体を、分子内に窒素原子を含む複素環基Lを1個又は2個以上有する化合物(L−[高分子鎖];即ち、高分子鎖にLが1個又は2個以上結合した化合物)と反応させることで合成でき、具体的には、Scientific Papers of the Institute of Physical and Chemical Research(Japan)、vol.78(4)、97-106(1984)に記載の方法に準じて合成できる。前記イリジウム錯体は、塩化イリジウム(III)n水和物と二座配位子となる化合物を反応させることで合成でき、例えば、Bulletin of the Chemical Society of Japan, vol.47, 767-768(1974)に記載の方法に準じて合成できる。

(式中、X、L及びR1〜R10は、前記と同様の意味を有する。破線は配位結合を表す。複数存在するXは同一であっても異なっていてもよい。R1〜R10が複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【0056】
具体的には、フラスコ内に溶媒を入れ、これを攪拌しながら、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスでバブリングを行って脱気した後、錯体(即ち、金属含有化合物)と、配位子となる化合物を添加する。必要に応じて塩基や銀塩化合物を添加してもよい。こうして得られた反応液を攪拌しながら、不活性ガス雰囲気下で、配位子交換が行われるまで攪拌を続ける。必要に応じて加熱してもよい。反応の終点は、TLCモニター、高速液体クロマトグラフィー、NMR等を用いて、原料の減少が停止したこと、又はどちらかの原料が消失したことを確認することにより、決定することができる。反応時間は、通常30分間から150時間程度である。反応終了後に得られた反応混合液からの目的物の取り出しと精製の条件は、目的とする共役系高分子化合物によって異なるが、例えば、目的物の取り出しは、反応溶媒の留去、反応で生じる沈殿物の濾過で行えばよく、精製は、カラムクロマトグラフィー、溶媒洗浄、昇華、再結晶等の方法で行えばよい。また、得られた共役系高分子化合物の同定・分析は、CHN元素分析、質量分析、ゲル浸透クロマトグラフィー及びNMRにより行うことができる。
【0057】
・L−[高分子鎖]の合成方法
以下、本発明の共役系高分子化合物の代表的な合成方法である前記式(10a)、(10b)で表される方法を例として、その原料として用いるL−[高分子鎖]について説明する。
−共役系高分子−
前記L−[高分子鎖](共役系)としては、主鎖に芳香環を含むもの等の共役系高分子、例えば、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、置換基を有していてもよいジベンゾチオフェンジイル基、置換基を有していてもよいジベンゾフランジイル基、ジベンゾシロールジイル基等を繰り返し単位として主鎖に含むもの、それらのユニットとの共重合体等から誘導されるもの;置換基を有していてもよいベンゼン環、及び/又は下記式(3)を部分構造として有する高分子等から誘導されるもの;具体的には、特開2003−231741、2004−059899、特開2004−002654、特開2004−292546、US5708130、WO9954385,WO0046321,WO02077060、「有機ELディスプレイ」(時任静士、安達千波矢、村田英幸 共著、オーム社)、111頁、月刊ディスプレイ、vol9、No9、2002年47−51頁等に記載の高分子から誘導されるものが挙げられる。
【0058】
前記L−[高分子鎖](共役系)は、例えば、モノマーとなる反応性置換基を複数有する化合物を、必要に応じて、有機溶媒に溶解し、アルカリや適当な触媒を用いて、有機溶媒の融点以上沸点以下で反応(縮合重合)させることにより合成することができる。そのほかにも、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第14巻,270−490頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1965年、“オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)”,コレクティブ第6巻(Collective Volume VI),407−411頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1988年、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)、ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.),第576巻,147頁(1999年)、マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Makromol.Chem.,Macromol.Symp.),第12巻,229頁(1987年)等に記載の公知の方法で合成することができる。
【0059】
前記L−[高分子鎖](共役系)の合成は、通常、縮合重合を経て行われるが、該縮合重合は、既知の方法で行えばよい。縮合重合において、二重結合を生成する場合には、例えば、特開平5−202355号公報に記載の方法が挙げられ、具体的には、ホルミル基を有する化合物とホスホニウムメチル基を有する化合物との、若しくはホルミル基とホスホニウムメチル基とを有する化合物のWittig反応による重合、ビニル基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とのHeck反応による重合、モノハロゲン化メチル基を2つあるいは2つ以上有する化合物の脱ハロゲン化水素法による重縮合、スルホニウムメチル基を2つあるいは2つ以上有する化合物のスルホニウム塩分解法による重縮合、ホルミル基を有する化合物とシアノ基を有する化合物とのKnoevenagel反応による重合等の方法、ホルミル基を2つあるいは2つ以上有する化合物のMcMurry反応による重合等の方法が挙げられる。縮合重合において、三重結合を生成する場合には、例えば、Heck反応が利用できる。縮合重合において、二重結合も三重結合も生成しない場合には、例えば、該当するモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)錯体により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法等が利用できる。これらの中でも、Wittig反応による重合、Heck反応による重合、Knoevenagel反応による重合、及びSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、ニッケルゼロ価錯体により重合する方法が、構造制御がしやすいので好ましい。
【0060】
前記反応性置換基が、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基である場合には、前記縮合重合はニッケルゼロ価錯体存在下で行うことが好ましい。
【0061】
前記反応性置換基が、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、又はホウ酸エステル残基(−B(OR632(ここで、R63はアルキル基を表す。2つのR63は同一であっても異なっていてもよく、また、結合していてもよい。))である場合には、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基及びアリールアルキルスルホネート基のモル数の合計と、ホウ酸残基及びホウ酸エステル残基のモル数の合計との比が実質的に1(通常、0.7〜1.2の範囲)であり、かつ前記縮合重合はニッケル触媒又はパラジウム触媒の存在下で行うことが好ましい。
【0062】
前記L−[高分子鎖](共役系)の合成の原料となる化合物としては、ジハロゲン化合物、ビス(アルキルスルホネート)化合物、ビス(アリールスルホネート)化合物又はビス(アリールアルキルスルホネート)化合物と、ジホウ酸化合物又はジホウ酸エステル化合物との組み合わせ;ハロゲン−ホウ酸化合物、ハロゲン−ホウ酸エステル化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールスルホネート−ホウ酸化合物、アリールスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物等が挙げられる。
【0063】
前記有機溶媒は、通常、副反応を抑制するために該有機溶媒は十分に脱酸素処理、脱水処理を施し、不活性雰囲気化で反応を進行させることが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応等の水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0064】
前記縮合重合には、適宜、アルカリや適当な触媒を添加する。これらのアルカリ及び触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリ又は触媒は、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリ又は触媒の溶液を添加しても、アルカリ又は触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加してもよい。
【0065】
本発明の共役系高分子化合物は、上記方法以外にも、例えば、下記式(12a)又は(13a)のとおり、反応性を持つ基を有する錯体を重合反応の末端処理剤に用いることで合成することができる。



【0066】
<用途>
本発明の共役系高分子化合物は、素子等の作製に用いた場合、その純度が発光特性等の素子の性能に影響を与えるため、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理を行ったものであることが好ましい。
【0067】
本発明の共役系高分子化合物中の前記金属錯体残基の割合は、共役系高分子化合物の重量に対して、通常、0.001〜70重量%、好ましくは0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%である。
【0068】
<組成物>
本発明の組成物は、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料と、前記共役系高分子化合物とを含むものである。
【0069】
前記正孔輸送材料としては、TAPC(1,1-ビス[4-(ジ-p-トリル)アミノフェニル]シクロヘキサン)、TPD(N,N'-ジメチル-N,N'-(3-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン)、α-NPD(4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル)、m-MTDATA(4,4',4''-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、TCTA(4,4-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4',4''-トリス(N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ)-トリフェニルアミン)等が挙げられる。
【0070】
前記電子輸送材料としては、Alq3(トリス(8-キノリノール)アルミニウム)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、tBu-PBD(2-(4'-t-ブチルフェニル)-5-(4''-ビフェニルイル)-1,3,4-オキサジアゾール)等のオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
【0071】
前記発光材料としては、公知のものが使用でき、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等が挙げられる。
【0072】
本発明の組成物において、前記正孔輸送材料、前記電子輸送材料及び前記発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料の合計量は、前記共役系高分子化合物100重量部に対して、通常、0.01〜50重量部であり、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0073】
<液状組成物>
本発明の組成物は、特に液状組成物として、発光素子や有機トランジスタの作製に有用である。液状組成物は、本発明の組成物がさらに溶媒を含有してなるものである。本明細書において、「液状組成物」とは、素子作製時において液状であるものを意味する。また、液状組成物は、典型的には、常圧(即ち、1気圧)、25℃において液状のものを意味し、インク、インク組成物、溶液等と呼ばれることがある。
【0074】
発光素子の作製の際に、この液状組成物(例えば、溶液状態の組成物等)を用いて成膜する場合、該液状組成物を塗布した後、乾燥により溶媒を除去するだけでよく、製造上非常に有利である。なお、乾燥の際には、50〜150℃程度に加温した状態で乾燥してもよく、また、10-3Pa程度に減圧して乾燥させてもよい。
【0075】
液状組成物を用いて成膜する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができる。
【0076】
液状組成物中の溶媒の割合は、該液状組成物の全重量に対して、通常、1〜99.9重量%であり、好ましくは60〜99.9重量%であり、さらに好ましく90〜99.8重量%である。液状組成物の25℃における粘度は、印刷法によって異なるが、0.5〜500mPa・sの範囲が好ましく、インクジェットプリント法等の液状組成物が吐出装置を経由するものの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が0.5〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0077】
液状組成物に含まれる溶媒としては、該液状組成物中の該溶媒以外の成分を溶解又は分散できるものが好ましい。該溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルベンゾエート、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。また、これらの溶媒は、1種単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。前記溶媒のうち、ベンゼン環を含む構造を有し、かつ融点が0℃以下、沸点が100℃以上である有機溶媒を含むことが、粘度、成膜性等の観点から好ましい。
【0078】
前記溶媒は、液状組成物中の溶媒以外の成分の有機溶媒への溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メシチレン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、メチルベンゾエート、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンが好ましく、キシレン、アニソール、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシルメチルベンゾエートがより好ましい。
【0079】
液状組成物に含まれる溶媒の種類は、成膜性の観点や素子特性等の観点から、2種類以上であることが好ましく、2〜3種類であることがより好ましく、2種類であることがさらに好ましい。
【0080】
液状組成物に2種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、1種類の溶媒は沸点が180℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることが好ましく、1種類の溶媒は沸点が200℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることがより好ましい。また、粘度の観点から、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、2種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶解することが好ましい。
【0081】
液状組成物に3種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1〜2種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃未満の溶媒であることが好ましく、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が200〜300℃以下の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃未満の溶媒であることがより好ましい。また、粘度の観点から、3種類の溶媒のうちの2種類の溶媒には、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、3種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましい。
【0082】
液状組成物に2種類以上の溶媒が含まれる場合、粘度及び成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、液状組成物に含まれる全溶媒の重量の40〜90重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましく、65〜85重量%であることがさらに好ましい。
【0083】
液状組成物に含まれる溶媒としては、粘度及び成膜性の観点から、アニソール及びビシクロヘキシルの組み合わせ、アニソール及びシクロヘキシルベンゼンの組み合わせ、キシレン及びビシクロヘキシルの組み合わせ、キシレン及びシクロヘキシルベンゼンの組み合わせ、メシチレン及びメチルベンゾエートの組み合わせが好ましい。
【0084】
液状組成物に含まれる溶媒以外の成分の溶媒への溶解性の観点から、溶媒の溶解度パラメータと、該液状組成物に含まれる溶媒以外の成分との溶解度パラメータとの差が10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。これらの溶解度パラメータは、「溶剤ハンドブック(講談社刊、1976年)」に記載の方法で求めることができる。
【0085】
<薄膜>
本発明の薄膜は、前記組成物又は前記液状組成物(以下、組成物、液状組成物を総称して「組成物等」という。)を用いてなるものである。薄膜の種類としては、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜が例示される。
【0086】
発光性薄膜は、素子の輝度や発光電圧等の観点から、発光の量子収率が高いことが好ましい。
【0087】
導電性薄膜は、表面抵抗が1KΩ/□以下であることが好ましい。薄膜に、ルイス酸、イオン性化合物等をドープすることにより、電気伝導度を高めることができる。表面抵抗が100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることがさらに好ましい。
【0088】
有機半導体薄膜は、電子移動度又は正孔移動度のいずれか大きいほうが、好ましくは10-5cm2/V/秒以上であり、より好ましくは10-3cm2/V/秒以上であり、さらに好ましくは10-1cm2/V/秒以上である。また、有機半導体薄膜を用いて、有機トランジスタを作製することができる。具体的には、SiO2等の絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に有機半導体薄膜を形成し、Au等でソース電極とドレイン電極を形成することにより、有機トランジスタとすることができる。
【0089】
<素子>
本発明の素子は、前記組成物を用いてなるもの、例えば、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ前記組成物を用いてなる層とを有するものである。この素子は、例えば、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子として用いることができる。
【0090】
−発光素子−
以下、代表的な用途である発光素子を例に説明する。
本発明の発光素子は、例えば、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ前記組成物を用いてなる層(発光層)とを有するものであり、さらに、電荷輸送層(正孔輸送層、電子輸送層)、電荷阻止層(正孔阻止層、電子阻止層)等を有していてもよい。
【0091】
具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
発光層とは、発光機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ2層以上用いてもよい。
電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0092】
電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記電荷注入層又は絶縁層(平均膜厚は、通常、0.5〜4nmである)を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。さらに、電子を輸送し、かつ正孔を閉じ込めるために発光層との界面に正孔阻止層を挿入してもよい。
積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して調整すればよい。
【0093】
本発明において、電荷注入層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子が挙げられる。
例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0094】
電荷注入層としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が挙げられる。
【0095】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5〜103S/cmであることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5〜102S/cmがより好ましく、10-5〜101S/cmがさらに好ましい。通常、該導電性高分子の電気伝導度を10-5〜103S/cmとするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0096】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン等が挙げられ、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0097】
電荷注入層の材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が例示される。電荷注入層の膜厚は、通常、1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0098】
絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。絶縁層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して絶縁層を設けた発光素子、陽極に隣接して絶縁層を設けた発光素子が挙げられる。
【0099】
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/絶縁層/陰極
s)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
t)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
v)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
w)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
y)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
z)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
ab)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
【0100】
正孔阻止層の材料は、発光層の材料のイオン化ポテンシャルよりも大きなイオン化ポテンシャルを有する材料、例えば、バソクプロイン、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体等から構成される。正孔阻止層の膜厚は、通常、1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0101】
具体的には、例えば、以下のac)〜an)の構造が挙げられる。
ac)陽極/電荷注入層/発光層/正孔阻止層/陰極
ad)陽極/発光層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ae)陽極/電荷注入層/発光層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
af)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/陰極
ag)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ah)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ai)陽極/電荷注入層/発光層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
aj)陽極/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
ak)陽極/電荷注入層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
al)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
am)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
an)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0102】
本発明の発光素子を作製する際に、発光層を溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料(具体的には、前記のとおり)を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上非常に有利である。
【0103】
溶液から成膜する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、キャピラリーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。なお、これらの方法は、後述の正孔輸送層、電子輸送層等の成膜にも適用することができる。
【0104】
本発明の発光素子が正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等が挙げられ、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等の高分子量の正孔輸送材料が好ましく、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体がより好ましい。低分子量の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0105】
正孔輸送層の成膜の方法としては、低分子量の正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液から成膜する方法が用いられ、高分子量の正孔輸送材料では、溶液から成膜する方法が用いられる。
【0106】
溶液から成膜する場合に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであればよく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0107】
正孔輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚は、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0108】
本発明の発光素子が電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられ、アミノキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0109】
電子輸送層の成膜は、低分子量の電子輸送材料の場合、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態から成膜すればよく、高分子量の電子輸送材料の場合、溶液又は溶融状態から成膜すればよい。溶液又は溶融状態から成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0110】
溶液から成膜する場合に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させるものであればよく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0111】
電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚は、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0112】
本発明の発光素子は、通常、基板上に形成される。該基板は、電極を形成し、該発光素子の各層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板等が例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0113】
通常、陽極及び陰極からなる電極のうち少なくとも一方が透明又は半透明であり、陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。なお、陽極、陰極は、各々、1層でも2層以上の積層構造でもよい。
【0114】
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0115】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0116】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる絶縁層を設けてもよい。
【0117】
陰極の材料は、仕事関数の小さいものが好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、若しくはそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0118】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0119】
陰極の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極作製後、該発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。該発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0120】
前記保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。また、前記保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が傷付くのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にダメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、1つ以上の方策を採ることが好ましい。
【0121】
本発明の発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス、液晶表示装置のバックライト又は照明に用いることができる。
【0122】
本発明の発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる発光材料を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は発光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動としてもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0123】
−光電変換素子−
次に、本発明の金属錯体の用途として、光電変換素子について説明する。
光電変換素子としては、例えば、少なくとも一方が透明又は半透明な二組の電極間に本発明の組成物を用いてなる層を挟持させた素子や、基板上に成膜した本発明の組成物を用いてなる層上に形成した櫛型電極を有する素子が挙げられる。特性を向上するために、フラーレンやカーボンナノチューブ等を混合してもよい。
【0124】
光電変換素子の製造方法としては、特許第3146296号公報に記載の方法が例示される。具体的には、第一の電極を有する基板上に本発明の共役系高分子化合物を用いてなる薄膜を形成し、その上に第二の電極を形成する方法、基板上に形成した一組の櫛型電極の上に本発明の共役系高分子化合物を用いてなる薄膜を形成する方法が例示される。第一又は第二の電極のうち一方が透明又は半透明である。前記薄膜の形成方法やフラーレンやカーボンナノチューブを混合する方法としては、発光素子で例示したものが好適に利用できる。
【実施例】
【0125】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
<合成例1>(イリジウム錯体(Ir-dimer-1)の合成)
反応容器に、1−フェニルイソキノリン(2.46g、12mmol)、塩化イリジウム三水和物(1.93、5.5mmol)、2-エトキシエタノール(24mL)及び水(8mL)を量り取り、窒素気流下、140℃で9時間加熱した。空冷後、得られた反応物を濾別し、水、メタノール、ヘキサンの順で洗浄することにより、赤茶色固体のイリジウム錯体(Ir-dimer-1)(2.96g)を得た。

【0127】
<実施例1>(共役系高分子化合物(H−3)の合成)
ジムロートを接続した200mLセパラブルフラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル 2.71g(5.1mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 3.40g(6.0mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ社製)0.79g、及びトルエン60mLを加えた。窒素雰囲気下、酢酸パラジウム2.1mg及びトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン12.9mgを加え、95℃に加熱した。得られた溶液に、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液17mLを33分かけて滴下しながら105℃に加熱した後、105℃で3時間攪拌した。次に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン369mgを溶解させたトルエン溶液30mL、酢酸パラジウム2.2mg及びトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン12.7mgを加え、さらに105℃で21時間攪拌した。
得られた溶液から、水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物3.65g、イオン交換水36mLを加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水78mL(2回)、3重量%酢酸水溶液78mL(2回)、イオン交換水78mL(2回)の順番で洗浄した。
有機層をメタノール930mLに滴下し、沈殿物を濾過後乾燥し、固体を得た。この固体をトルエン186mLに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液した。ロータリーエバポレーターを使って、濾液中のトルエンを一部留去した。この溶液をメタノール930mLに滴下し、沈殿物を濾過後乾燥し、下記式:

で表される構造を有する高分子化合物(L−1)1.54gを得た。1H NMRから見積もったこの高分子化合物(L−1)の構造のモル比は上記のとおりであった。高分子化合物(L−1)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.9×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.1×104であった。
【0128】
不活性雰囲気下、50mLシュレンク反応管に高分子化合物(L−1)414mg、イリジウム錯体(Ir-dimer-1)6.5mg、塩化メチレン10mlを混合し、18時間還流した。放冷後、得られた反応溶液をヘキサンに滴下して生じる黄色沈殿物を濾別回収し、該沈殿物をヘキサン、メタノールの順で洗浄することで、下記式:

で表される構造を有する共役系高分子化合物(H−3)336mgを得た。共役系高分子化合物(H−3)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.3×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.6×104であった。共役系高分子化合物(H−3)は、橙〜赤色発光を示した。
【0129】
<実施例2>(共役系高分子化合物(H−4)の合成)
実施例1において、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンの代わりに4−ピリジンボロン酸222mg(1.8mmol)を用い、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル 2.77g(5.2mmol)及び9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 3.40g(6.0mmol)の量を変更した以外は、実施例1と同様にして、下記式:

で表される構造を有する高分子化合物(L−2)2.40gを合成した。1H NMRから見積もったこの高分子化合物(L−2)の構造のモル比は上記のとおりであった。高分子化合物(L−2)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.4×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは5.3×104であった。
【0130】
下記式:

で表される金属錯体(Pt-dimer-1)は、Aust. J. Chem., 47, 217-227, 1994.に記載の方法に準じて合成した。
不活性ガス雰囲気下で、高分子化合物(L−2)(0.53 g)、金属錯体(Pt-dimer-1)(0.0049 g, 0.0056 mmol)、及び塩化メチレン(10 ml)を混合させ、得られた溶液を16時間還流させた。放冷後、得られた反応溶液をヘキサンに滴下して生じる黄色沈殿物を濾別回収し、該沈殿物をヘキサンで洗浄することで、下記式:

で表される構造を有する共役系高分子化合物(H−4)0.41gを得た。共役系高分子化合物(H−4)は、橙色発光を示した。
【0131】
<実施例3>(有機EL素子Aの作製)
ジムロートを接続した200mLセパラブルフラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル 2.77g(5.2mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 2.72g(4.8mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N−4−s−ブチルフェニルアミン 0.551g(1.2mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ社製)0.79g、及びトルエン 60mLを加えた。窒素雰囲気下、酢酸パラジウム2.2mg及びトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン12.9mgを加え、95℃に加熱した。得られた溶液に、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液16.5mLを35分かけて滴下しながら105℃に加熱した後、105℃で3時間攪拌した。次に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン369mgを溶解させたトルエン溶液30mLを加え、さらに105℃で21時間攪拌した。
得られた溶液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物3.65g、イオン交換水36mLを加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水78mL(2回)、3重量%酢酸水溶液78mL(2回)、イオン交換水78mL(2回)の順番で洗浄した。
有機層をメタノール930mLに滴下し、沈殿物を濾過後乾燥し、固体を得た。この固体をトルエン 186mLに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液した。ロータリーエバポレーターを使って、濾液中のトルエンを一部留去した。この溶液をメタノール930mLに滴下し、沈殿物を濾過後乾燥し、下記式:

で表される構造を有する高分子化合物(L−3)1.26gを得た。1H NMRから見積もったこの高分子化合物(L−3)の構造のモル比は上記のとおりであった。高分子化合物(L−3)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.1×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.0×104であった。
【0132】
不活性雰囲気下、20mLシュレンク反応管に高分子化合物(L−3)243mg、イリジウム金属錯体(Ir-dimer-1)3.8mg、塩化メチレン6mlを混合し、16時間還流した。放冷後、得られた反応溶液をヘキサンに滴下して生じる黄〜橙色沈殿物を濾別回収し、該沈殿物をヘキサン、メタノールの順で洗浄することで、下記式:

で表される構造を有する共役系高分子化合物(H−5)168mgを得た。共役系高分子化合物(H−5)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.7×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.7×104であった。
【0133】
次いで、共役系高分子化合物(H−5)の1重量%キシレン溶液(以下、「溶液1」という)を調製した。
【0134】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、商品名:BaytronP)を用いて、スピンコートにより50nmの厚みで該溶液を塗布して成膜を行い、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。次に、溶液1を用いてスピンコートにより800rpmの回転速度で、共役系高分子化合物(H−5)の膜(膜厚:約90nm)を形成した。得られた膜を窒素雰囲気中60℃で20分乾燥した後、陰極として、バリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、有機EL素子Aを作製した。なお、真空度が1×10-4Pa以下に到達した後、金属の蒸着を開始した。有機EL素子Aに電圧を印加することにより、620nmにピークをもつEL発光が得られた。有機EL素子Aは、約3.2Vで発光を開始し、約4.7Vで1000cd/m2の発光を示した。
【0135】
<実施例4>(有機EL素子Bの作製)
実施例3において、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンの代わりに4−ピリジンボロン酸221mg(1.8mmol)を用い、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル 2.86g(5.4mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 2.72g(4.8mmol)及びN,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N−4−s−ブチルフェニルアミン 0.551g(1.2mmol)の量を変更した以外は、実施例3と同様にして、下記式:

で表される構造を有する高分子化合物(L−4)2.35gを得た。1H NMRから見積もったこの高分子化合物(L−4)の構造のモル比は上記のとおりであった。高分子化合物(L−4)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.9×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは5.6×104であった。
【0136】
不活性ガス雰囲気下で、高分子化合物(L−4)(0.56g)、金属錯体(Pt-dimer-1)(0.0049 g, 0.0055 mmol)、塩化メチレン(10ml)を混合させ、得られた溶液を16時間還流させた。放冷後、得られた溶液をヘキサンに滴下して生じる黄色沈殿物を濾別回収し、該沈殿物をヘキサンで洗浄することで、下記式:

で表される構造を有する共役系高分子化合物0.19gを得た。共役系高分子化合物(H−6)は、橙色発光を示した。
【0137】
次いで、共役系高分子化合物(H−6)の0.6重量%クロロホルム溶液(以下、「溶液2」という)を調製した。
【0138】
実施例3において、溶液1の代わりに溶液2を用い、スピンコートの回転速度を3000rpmで塗布した以外は、実施例3と同様にして有機EL素子Bを作製した。得られた有機EL素子Bに電圧を印加することにより、605nmにピークをもつEL発光が得られた。有機EL素子Bは、約5.7Vで発光を開始し、約13.6Vで1000cd/m2の発光を示した。
【0139】
<比較例1>(有機EL素子Cの作製)
下記式:

で表される構造を有する高分子化合物(L−5)は、Journal of Applied Polymer Science, Vol. 104, 3317-3323 (2007)に記載の方法で合成した(収量:1.1g)。1H NMRから見積もったこの高分子化合物(L−5)の構造のモル比は上記のとおりであった。高分子化合物(L−5)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは9.6×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは2.6×106であった。
【0140】
不活性ガス雰囲気下で、イリジウム金属錯体(Ir-dimer-1)(0.13 g, 0.10 mmol)を塩化メチレン(10ml)に溶解させた。この溶液に、高分子化合物(L−5)(0.18 g)を加え、14時間還流させた。放冷後、得られた反応溶液をヘキサンに滴下して生じる橙赤色沈殿物を濾別回収し、該沈殿物をヘキサンで洗浄することで、下記式:

で表される構造を有する非共役系高分子化合物(H−7)0.29gを得た。非共役系高分子化合物(H−7)は、橙色発光を示した。
【0141】
<比較例2>
不活性ガス雰囲気下で、金属錯体(Pt-dimer-1)8.8mg(0.010mmol)を塩化メチレン10mlに溶解させた。得られた溶液に、高分子化合物(L−5)18mgを加え、19時間還流させた。放冷後、得られた反応溶液をヘキサンに滴下して生じる黄色沈殿物を濾別回収し、該沈殿物をヘキサンで洗浄することで、下記式:

で表される構造を有する非共役系高分子化合物(H−8)25mgを得た。非共役系高分子化合物(H−8)は、黄〜橙色発光を示した。
【0142】
<比較例3>
非共役系高分子化合物(H−8)の0.6重量%クロロホルム溶液(以下、「溶液3」という)を調製した。
【0143】
実施例3において、溶液1の代わりに溶液3を用い、スピンコートの回転速度を3000rpmで塗布した以外は、実施例3と同様にして有機EL素子Cを作製した。得られた有機EL素子Cに電圧を印加したが、20V印加しても発光を観測することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):

(式中、Xはハロゲン原子を表す。R1〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基、又はハロゲン原子を表す。Mは、イリジウム原子、白金原子、オスミウム原子、ルテニウム原子、パラジウム原子、ロジウム原子、レニウム原子、又はコバルト原子を表す。nは、1又は2である。R1〜R10が複数存在する場合、各々、同一であっても異なっていてもよい。破線は配位結合を表す。Lは、下記式(2a)で表される1価の複素環基又は下記式(2b)で表される2価の複素環基である。

(式中、R11は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基、又はハロゲン原子を表す。複数存在するR11は、同一であっても異なっていてもよい。*Nは、前記式(1)中のMと配位結合する窒素原子を表す。))
で表される金属錯体残基を含む共役系高分子化合物。
【請求項2】
前記式(1)で表される金属錯体残基が、下記式(1a)で表される金属錯体残基である請求項1に記載の共役系高分子化合物。

(式中、X、R1〜R10及びLは、前記と同じ意味を有する。R1〜R10が複数存在する場合、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記式(1)で表される金属錯体残基が、下記式(1b)で表される金属錯体残基である請求項1に記載の共役系高分子化合物。

(式中、X、R1〜R10及びLは、前記と同じ意味を有する。R1〜R10が複数存在する場合、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記R1〜R11がすべて水素原子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の共役系高分子化合物。
【請求項5】
主鎖に芳香環を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の共役系高分子化合物。
【請求項6】
前記主鎖に芳香環を含む共役系高分子化合物が、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する共役系高分子化合物である請求項5に記載の共役系高分子化合物。

(式中、Yは、−O−、−S−、−Se−、−B(R18)−、−Si(R19)(R20)−、−P(R21)−、−P(R22)(=O)−、−C(R23)(R24)−、−C(R25)(R26)−C(R27)(R28)−、−O−C(R29)(R30)−、−S−C(R31)(R32)−、−N(R33)−C(R34)(R35)−、−Si(R36)(R37)−C(R38)(R39)−、−Si(R40)(R41)−Si(R42)(R43)−、−C(R44)=C(R45)−、−N(R46)−、−N=C(R47)−、又は−Si(R48)=C(R49)−を表す。R18〜R49はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。R16及びR17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基を表す。複数存在するR16及びR17は、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
下記式(C)又は(D)で表される請求項5又は6に記載の共役系高分子化合物。

(式中、R1〜R11、R16、R17及びXは、前記と同じ意味を有する。複数存在するR1〜R11、R16、R17及びXは、各々、同一であっても異なっていてもよい。Y1及びY2は前記Yと同じ意味を有するが、Y1とY2は異なる。i及びjはそれぞれ独立に、0又は1を示し、0<i+j≦2である。p及びqは、2種の繰り返し単位の共重合比を表す数であり、p+q=1である。rは重合度を表す。)
【請求項8】
前記主鎖に芳香環を含む共役系高分子化合物が、前記式(3)で表される繰り返し単位と下記式(4)で表される繰り返し単位とを有する共役系高分子化合物である請求項5又は6に記載の共役系高分子化合物。

(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。Ar1〜Ar7は置換基を有していてもよい。x及びyはそれぞれ独立に、0又は1を示し、0≦x+y≦1である。)
【請求項9】
下記式(A)又は(B)で表される請求項8に記載の共役系高分子化合物。

(式中、R1〜R11、R16、R17、Ar1〜Ar7、X、Y、x、y、i及びjは、前記と同じ意味を有する。複数存在するR1〜R11、R16、R17、Ar1〜Ar7及びXは、各々、同一であっても異なっていてもよい。s及びtは、2種の繰り返し単位の共重合比を表す数であり、s+t=1である。uは重合度を表す。)
【請求項10】
正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料と、請求項1〜9のいずれか一項に記載の共役系高分子化合物とを含む組成物。
【請求項11】
溶媒を含有する請求項10に記載の組成物からなる液状組成物。
【請求項12】
25℃における粘度が0.5〜500mPa・sである請求項11に記載の液状組成物。
【請求項13】
請求項10に記載の組成物を用いてなる薄膜。
【請求項14】
請求項10に記載の組成物を用いてなる素子。
【請求項15】
請求項14に記載の素子からなる発光素子。
【請求項16】
請求項15に記載の発光素子を備えた面状光源。
【請求項17】
請求項15に記載の発光素子を備えた表示装置。
【請求項18】
請求項15に記載の発光素子を備えた照明。

【公開番号】特開2009−91560(P2009−91560A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232963(P2008−232963)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】