説明

針一体型バイオセンサー

【課題】 被検体の皮膚を突き刺すことによりその体液を採取するための穿刺針と、採取した体液の分析を行うためのセンサ本体とが一体となって構成され、穿刺針が外部の駆動手段によって駆動され、皮膚を突き刺す針一体型バイオセンサーであって、穿刺針が外部からの駆動により誤作動なく移動することを可能とし、かつバイオセンサーの構成が簡単で、容易にその製造を行いうるものを提供する。
【解決手段】 上記針一体型バイオセンサーにおいて、穿刺針後部には穿刺針支持体が装着され、穿刺針支持体には、外部からの駆動を穿刺針支持体へ伝達するための、電気絶縁性基板を貫通してバイオセンサー外部へ突出した外部駆動接続部が一体化され、バイオセンサーが、針先端部をセンサー内からセンサー外へ突出させるための穿刺針支持体移動溝を有すると共に、少なくとも1枚の基板に、外部駆動接続部の移動に必要とされる貫通穴を有する針一体型バイオセンサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針一体型バイオセンサーに関する。さらに詳しくは、皮膚を突き刺して血液を得るための穿刺針と、皮膚の表面に取り出された体液を採取し、分析するためのバイオセンサーとを一体化した構成を有する針一体型バイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、糖尿病患者自らが採血して血中のグルコース値である血糖値を測定する場合がある。この場合、患者は採血針を着脱するランセットと称される採血器具を用い、自分の指先や腕などに採血針を刺して採血し、採血した血液を血糖値分析計に移して血糖値を測定している。このような測定方式では、患者は血糖値分析器、ランセット、採血針および分析素子といった数点からなる測定器具の一式を携帯所持し、必要時にそれらを組み合わせて測定しなければならず、操作法も長い訓練を要し、確実な測定を患者自身で行うことができるようになるまでかなりの時間を要する。実際に、指先、前腕以外の部位(腹壁、耳たぶ等)での測定は、熟練者ですら困難である。また、近年においては、より痛みの少ない低侵襲検体供給のニーズから、検体量が1μl以下で測定可能なバイオセンサーが開発されており、このような極微量な場合、またバイオセンサーへの検体を正確に供給する作業は非常に困難になる。その結果、測定の失敗を招き、被測定者である患者は再度穿刺して、またバイオセンサーも交換し、測定をやり直さなければならないという不都合がある。
【特許文献1】特許第3,621,502号公報
【特許文献2】特公平8−20412号公報
【0003】
そこで、いくつかの針一体型バイオセンサーが考え出された。まず、特許文献3に示された針一体型バイオセンサーでは、穿刺針の駆動部を備えたペン型(2色ボールペン様)の測定装置の内部に、穿刺針とバイオセンサーがそれぞれ別の位置にセットされており、ペン様の測定装置の先端部を被検体の皮膚にあて、穿刺した後、バイオセンサーを先端部に露出させ、採血を行なうことで血糖測定が行なわれる。しかし、この方法では、針およびバイオセンサーを測定装置にそれぞれセットするという煩わしさは解消されていない。
【特許文献3】特開2000−217804号公報
【0004】
かかる不都合を解決すべく、特許文献4では被検体の皮膚を突き刺すことによりその体液を採取するための穿刺針と、採取した体液の分析を行うためのセンサ本体とが一体となって構成され、穿刺針が外部の駆動手段によって駆動され、皮膚を突き刺す針一体型のセンサが提案されている。しかるに、上記文献に記載されているセンサでは、針先とは反対側の端部がセンサ本体より突出しており、これが外部の駆動手段と係合することにより穿刺針が駆動されるものであるため、バイオセンサーを測定装置にセットする際に、針先とは反対側の端部を誤って押してしまうといったおそれがあった。また、穿刺針の移動範囲を規定するため、穿刺針と一体化された突起部を収容する窪みをセンサー内部に形成する必要があり、バイオセンサーの製造過程が複雑になるといった問題もあった。
【特許文献4】再公表2002−056769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被検体の皮膚を突き刺すことによりその体液を採取するための穿刺針と、採取した体液の分析を行うためのセンサ本体とが一体となって構成され、穿刺針が外部の駆動手段によって駆動され、皮膚を突き刺す針一体型バイオセンサーであって、穿刺針が外部からの駆動により誤作動なく移動することを可能とし、かつバイオセンサーの構成が簡単で、容易にその製造を行いうるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、少なくとも2枚の電気絶縁性基板間に、電極、スペーサーおよび外部からの駆動手段により被検体の皮膚を突き刺して血液を採取するための穿刺針が一体となって構成されたバイオセンサーにおいて、穿刺針後部には穿刺針支持体が装着され、穿刺針支持体には、外部からの駆動を穿刺針支持体へ伝達するための、電気絶縁性基板を貫通してバイオセンサー外部へ突出した外部駆動接続部が一体化され、バイオセンサーが、針先端部をセンサー内からセンサー外へ突出させるための穿刺針支持体移動溝を有すると共に、少なくとも1枚の基板に、外部駆動接続部の移動に必要とされる貫通穴を有する針一体型バイオセンサーによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る針一体型バイオセンサーは、バイオセンサーの電気絶縁性基板上に突出した外部駆動接続部端部に外部駆動が作用することによって、穿刺針の移動が行われるため、バイオセンサーを測定装置へセットする際の穿刺針の誤作動を防止することができるとともに、穿刺針に装着した支持体が移動する穿刺針支持体移動溝をスペーサーにより穿刺針駆動軌道とともに形成し、穿刺針の移動方向および範囲については、穿刺針支持体と一体化された外部駆動接続部端部を電気絶縁性基板に設けた貫通穴よりバイオセンサー外へ突出させ、この移動可能な範囲により規定されるので、構成が簡単で、バイオセンサーの製造を容易に行うことを可能とするといったすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
穿刺針は、被検体の皮膚から体液を採取するために用いられるものであり、被検体を穿刺する必要があるため、これに耐え得る強度を持ち、鋭利であることが望ましく、また穿刺時の痛みを抑えるために、細い穿刺針であることが好ましい。以上の条件を満たす穿刺針であれば、金属製、樹脂製など公知の材質の針のいずれも用いることができ、具体的には、例えばテルモ社製で、21〜33ゲージのものが用いられる。穿刺針は被検体の皮膚を突き破ることができれば中空針であっても棒状針でも良い。さらに、穿刺針は使用されるまでバイオセンサー内に衛生的に収納されている必要があることから、抗菌・抗ウィルスに効果がある光触媒機能を針の先端表面に付与させても良い。その場合、酸化チタンまたは二酸化チタンの膜が望ましい。
【0009】
かかる穿刺針には、その後部に穿刺針支持体が装着される。穿刺針支持体としては、穿刺針をバイオセンサー内で安定に保持しうるものであればその形状は特に限定されないが、バイオセンサーの小型化といった観点からは、好ましくは平板状のものが用いられる。
【0010】
また、穿刺針支持体には、外部駆動を穿刺針支持体へ伝達する役割を担う外部駆動接続部が一体化される。外部駆動接続部は、バイオセンサー内に配置される穿刺針支持体から電気絶縁性基板を貫通してバイオセンサー外部へ突出する形状のものであれば足り、例えば円柱状、角柱状、平板状など、好ましくは角柱状、平板状、さらに好ましくは平板状の形状ものが用いられる。外部駆動接続部は、穿刺針支持体として平板状のものが用いられる場合には、これと垂直な状態、例えば円柱状または角柱状の外部駆動接続部にあっては、その長軸方向が穿刺針支持体の片面または両面に対して垂直な状態で、また平板状の外部駆動接続部にあっては、平面が穿刺針の長軸方向に沿って穿刺針支持体の片面または両面に対して垂直な状態で穿刺針支持体と一体化される。
【0011】
外部駆動接続部と一体化された穿刺針支持体を装着した穿刺針(以下、穿刺針部という。)は、少なくとも2枚の電気絶縁性基板間に、電極、スペーサーとともに配置される。このとき、穿刺針支持体として平板状のものが用いられる場合には、穿刺針支持体は電気絶縁性基板と水平な状態でセットされる。
【0012】
基板としては、電気絶縁性のものであれば足り、例えばプラスチック、生分解性材料、紙などが用いられ、好ましくはポリエチレンテレフタレートが用いられる。また、酸素透過性材料を用いることもでき、この場合には試薬の還元を防ぐことができるため、還元の状態に依存した測定値の変動を抑えるといった効果を奏する。
【0013】
かかる電気絶縁性基板の少なくとも1枚には、外部駆動接続部の移動に必要とされる貫通穴が設けられる。この貫通穴は、穿刺針の移動方向および範囲を規定するといった重要な役割を担うが、その形成は例えば、基板を打ち抜くことによって簡単に行うことが可能であるため、ひいてはバイオセンサーの製造を容易にすることができる。
【0014】
基板上には、穿刺針部の配置に先だって電極、スペーサーなどの形成が行われる。
【0015】
電極は、基板上にスクリーン印刷法、蒸着法、スパッタリング法、箔貼り付け法、メッキ法などにより形成され、その材料としては、カーボン、銀、銀/塩化銀、白金、金、ニッケル、銅、パラジウム、チタン、イリジウム、鉛、酸化錫、白金黒などが挙げられる。ここで、カーボンとしては、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、フラーレン、デンドリマーもしくはそれらの誘導体を用いることができる。
【0016】
電極は、作用極と対極で形成される2極法または作用極と対極、参照極で形成される3極法、あるいはそれ以上の極数の電極法であってもよい。ここで、3極法を採用すると、測定対象物質の電気化学測定の他に、搬送路内に導入される採血の移動速度の計測ができ、これによりヘマトクリット値が測定できる。また、2組以上の電極系で構成されていても良い。これらの電極は、一枚の基板上にまとめて、あるいは2枚の基板上に分かれて形成される。
【0017】
電極が形成された基板上には、試薬層(電極反応部)を形成することができる。試薬層はスクリーン印刷法またはデスペンサー法により形成され、この試薬層の電極表面または基板表面への固定化は、乾燥を伴う吸着法または共有結合法により行うことができる。バイオセンサーの電極反応部に配置する試薬としては、例えば血糖値測定用に構成する場合、酸化酵素であるグルコースオキシターゼおよびメディエータとしてのフェリシアン化カリウムを含むものが挙げられる。試薬が血液によって溶解されると、酵素反応が開始される結果、反応層に共存させているフェリシアン化カリウムが還元され、還元型の電子伝達体であるフェロシアン化カリウムが蓄積される。その量は、基質濃度、すなわち血液中のグルコース濃度に比例する。一定時間蓄積された還元型の電子伝達体は、電気化学反応により酸化される。後述する測定装置本体内の電子回路は、このとき測定される陽極電流から、グルコース濃度(血糖値)を演算・決定し、本体表面に配置された表示部に表示する。
【0018】
また、採血口の周辺および電極あるいは試薬層(電極反応部)表面に界面活性剤、脂質を塗布することができる。界面活性剤や脂質の塗布により、試料の移動を円滑にさせることが可能となる。
【0019】
ここで、試料搬送路を穿刺針が移動する場合には、試料搬送路内への試薬層、界面活性剤あるいは脂質の塗布により、その内部に収まる穿刺針が汚染される可能性がある。このような汚染を防ぐために、穿刺針先端の周囲にこれらの試薬を塗布しないようにするか、あるいは試料搬送路とは別の部位を穿刺針が移動するような構成とすることが好ましい。
【0020】
以上の採血が満たされる電極上に試薬層が設けられたバイオセンサーは、採血口から送り込まれる採血が電極上の試薬層と接触することにより、採血と試薬とが反応する。この反応は、電極における電気的な変化としてモニタリングされる。
【0021】
絶縁性基板上には、電極以外にスペーサーが形成される。スペーサーは、接着剤、レジストおよび絶縁性基板の少なくとも一種により構成され、バイオセンサー内に穿刺針支持体が移動する溝を形成するといった役割を果たす。穿刺針支持体が移動する溝は、上記穿刺針支持体が移動可能な空間をバイオセンサー内に形成するものであれば、その形状は特に限定されず、穿刺針支持体が移動する範囲が最低限確保されるパターンのほか、これよりも広い幅のものなどであっても良い。
【0022】
接着剤は、基板同士を接着するために用いられるものであるため、基板と反応あるいは溶解しないものであって、基板を接着可能なものであれば特に限定されないが、例えばアクリル樹脂系接着剤などが用いられる。接着剤層は、スクリーン印刷法により形成することが可能であり、約5〜500mm、好ましくは約10〜100mmの厚さで形成され、かかる接着剤層は上述の如くスペーサーとしても作用する。なお、接着剤層中に上記試薬を含有させることもできる。
【0023】
レジストは、電極面積を規定するために用いられるものであり、接着剤層と同様に基板と反応あるいは溶解しないものであれば足り、特に限定されないが、例えば、紫外線硬化型のビニル・アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂などが挙げられる。レジスト層もスクリーン印刷などで、約5〜500mm、好ましくは約10〜100mmの厚さで形成され、かかるレジスト層は上述の如くスペーサーとしても作用する。レジストの使用の目的は、上述の如く主に電極パターンを明確にし、電極面積の規定する以外にも、試薬層が存在しない試料搬送路を絶縁するなどの目的もある。従って、レジスト層は接着剤層と同様のパターンを形成しても、形成しなくてもどちらでもよい。後者の場合、レジスト層は絶縁のために電極基板上に形成させるのが好ましい。
【0024】
スペーサーとして用いられる電気絶縁性基板は、電極が形成された絶縁性基板に接続部によって繋がれていてもよく、基板間に接続部が設けられている場合にあってはこれに沿って折畳むことにより、位置合わせ等の行程を経ることなく簡単にスペーサーを形成することが可能となる。接続部としては、その長さが0.5〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.0mmのものが、好ましくは2枚の基板間に少なくとも2箇所以上設けられる。このような接続部は、電気絶縁性基板に、0.5〜0.9mm程度の長さであれば、例えば歯車状の薄い円盤であって、その凸部が刃となっているものを用いて、破線状のミシン目として形成され、また1〜3mm程度の長さの接続部については、電気絶縁性基板を型で打ち抜くことによりヒンジ成形される。ここで、1〜3mm程度の長さの接続部とした場合には、折畳み部分を熱圧着したり固定具を使って固定して反り返しを防ぐといった必要がない。
【0025】
接着剤、レジストおよび絶縁性基板の少なくとも一種により構成されるスペーサーによって、穿刺針支持体が移動する溝とともに穿刺針が駆動する軌道および血液を電極上へ導く試料搬送路が形成される。これらが、スペーサーにより同時に形成されることは、バイオセンサーの製造をより容易とするといった効果を奏する。
【0026】
穿刺針が駆動する軌道と血液を電極上へ導く試料搬送路とは、同一箇所または異なる箇所のいずれにも設けることができるが、好ましくは被検体の皮膚を穿刺するための穿刺口と血液を採取するための採血導入口とが同一箇所となるように穿刺採血口として設けられたうえで、これらが、穿刺採血口から分岐した配置となるように構成される。かかる態様としては、下記の態様が例示される。
(1) 採血導入口以外の試料搬送路上に電気絶縁性基板よりなる隔離板を介して穿刺口以外の穿刺針駆動軌道を設ける。このとき、試料搬送路と穿刺針駆動軌道とは上下逆のパターンとすることもできる。
(2) 採血導入口以外の試料搬送路を、穿刺口以外の穿刺針駆動軌道が設けられた位置とは異なる電気絶縁性基板上に設ける。
【0027】
このようにして形成された穿刺針駆動軌道の穿刺口端部には、空気排出穴が設けられる。空気排出穴は、(1)の場合にあっては穿刺針駆動軌道を形成する隔離板に相対して位置する電気絶縁性基板に、また(2)の場合にあっては、穿刺針駆動軌道を形成している絶縁性基板の少なくとも一枚に形成される。この空気排出穴により、穿刺針駆動軌道内への採血の流入を停止することができるため、血液試料の無駄を防止し、かつ規定された血液試料体積による血中成分の定量が可能となるといった効果を奏する。
【0028】
電極、スペーサーなどを形成した電気絶縁性基板上には、穿刺針部が配置される。具体的には、バイオセンサー内にスペーサーによって形成された穿刺針支持体移動溝に穿刺針支持体が、絶縁性基板に設けられた貫通穴に外部駆動接続部が、また穿刺針駆動軌道に空気排出穴と重なり合わない状態で穿刺針がセットされる状態で、穿刺針部が配置される。
【0029】
穿刺針部を配置した以上の構成よりなる基板は、2枚の基板間に接続部が設けられている場合にあってはこれに沿って折畳むことにより、折畳み成形体としてのバイオセンサーを製造することもできる。接続部としては、その長さがスペーサーの厚さ以上、すなわち0.5〜4mm、好ましくは1.0〜3.0mmのものが、好ましくは2枚の基板間に少なくとも2箇所以上設けられる。このような接続部は、電気絶縁性基板に、0.5〜0.9mm程度の長さであれば、例えば歯車状の薄い円盤であって、その凸部が刃となっているものを用いて、破線状のミシン目として形成され、また1〜4mm程度の長さの接続部については、電気絶縁性基板を型で打ち抜くことによりヒンジ成形される。ここで、1〜4mm程度の長さの接続部とした場合には、折畳み部分を熱圧着したり固定具を使って固定して反り返しを防ぐといった必要がない。このような折り畳み成形体であるバイオセンサーであれば、長大な基板の長軸方向に水平となるように折畳み線としての接続部を設け、貫通穴を打ち抜いたうえで、さらに電極等を形成して接続部に沿って折りたたんだ後、センサー形状に打ち抜くことにより、一度に大量のバイオセンサーを製造できる。このような製造方法により作製される針一体型バイオセンサーは、再現性も大変に良くなり、従来の積層法によっては成しえなかった特長を有している。
【0030】
本発明の針一体型バイオセンサーは穿刺駆動を備えた測定装置により穿刺・採血・測定の一連の操作が成されることが望ましい。測定装置は、針一体型バイオセンサーより突出する外部駆動接続部端部と係合することにより、穿刺針を駆動して穿刺針先端をバイオセンサー内外に移動させる駆動手段を有するものが用いられる。
【0031】
針一体型バイオセンサー用測定装置としては、針一体型バイオセンサーを使用した測定が繰り返し確実に行なえるための操作性および耐久性が確保され、かつ持ち運びが容易であるものが用いられ、測定装置は、例えば下部にある導入部に針一体型バイオセンサーを穿刺針が下を向くように挿入させ、バイオセンサーの端子が測定装置のコネクターと接続することで測定が可能な状態となり、次に、穿刺駆動を針一体型バイオセンサー内部に与えるために引き金を引くことで測定の準備が完了し、あとは穿刺開始ボタンのスイッチを押すことで穿刺・採血・測定の順序で自動的に作動し、最終的に測定結果が導かれる仕組みのものが用いられる。
【0032】
測定装置の構造上の特徴の一例を、さらに詳しく述べる。本測定装置は穿刺針駆動部と測定装置部が一体化しており、穿刺針駆動部は引き金部、穿刺開始ボタン部、バネなどの弾性体による駆動部から構成される。一方、測定装置部については、センサー導入部、コネクター、電気化学測定用回路、メモリ部、操作パネル、バイオセンサーの電極における電気的な値を計測する計測部および計測部における計測値を表示する表示部を基本構成としており、さらに、無線手段として電波、例えばブルートゥース(登録商標)を搭載することもできる。かかるスライド構造により、針一体型バイオセンサーを確実にホールドした状態を保ったまま穿刺駆動を受けるので、測定装置全体としての強度を高めることができる。測定装置には、さらに針一体型バイオセンサーの穿刺針を中心線とした左右非対称構造を測定用端子の突出部で認識できる機構を備えることができる。
【0033】
測定装置の穿刺駆動は、針一体型バイオセンサー上部を鉛直方向にたたいた後、速やかに戻る機構がよく、さらに被検体の皮膚を穿刺する深度が調整可能な機構を有することが好ましい。
【0034】
測定装置には糖尿病疾患による視覚障害に対応した音声ガイド機能及び音声認識機能、電波時計の内臓による測定データ管理機能、測定データなどの医療機関などへの通信機能、充電機能などを併せ持たせることができる。
【0035】
測定装置の計測部における計測方法としては、特に限定はしないがポテンシャルステップクロノアンペロメトリー法、クーロメトリー法またはサイクリックボルタンメトリー法などを用いることができる。
【0036】
以上より、本発明の針一体型バイオセンサーは、使用者を限定することのない、すなわち、ユニバーサルな企画に対応し得るものとなっている。
【実施例】
【0037】
本発明による実施態様の針一体型バイオセンサーについて、それぞれ図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に制限されるものではない。
【0038】
図1は、本発明に係る針一体型バイオセンサーの一例を示す。a)には電気絶縁性基板1と接着剤層6が示されている。電気絶縁性基板1は、電極および端子を構成する導電体5が設けられた基底部2とカバー部3、スペーサー部4が接続部をなすミシン目8によって繋がっている。基底部2およびカバー部3には、後述する穿刺針支持体と一体化された外部駆動接続部の移動に必要とされる貫通穴17が設けられ、また接着剤層6およびスペーサー部4は、バイオセンサー構成時に穿刺針支持体移動溝21および穿刺針駆動軌道18を形成するためのパターンを成し、その厚みはスペーサーとしても利用される。なお、この図では穿刺針支持体移動溝21を形成するためのパターンが穿刺針支持体が移動する範囲と一致するものが示されているが、穿刺針支持体の移動範囲は、外部駆動接続部の移動に必要とされる貫通穴17によって規定されるものであるため、穿刺針支持体移動溝21を形成するためのパターンとしては、穿刺針支持体が移動する範囲が最低限確保されるパターンであれば足り、例えばこれよりも広い幅のものであっても良い。したがって、穿刺針支持体移動溝21の形成にあたっては、前記特許文献4に示されたセンサーのように、穿刺針と一体化された突起部を収容する窪みをセンサー内部に形成するにあたって、その大きさを厳密に設定する必要がなく、バイオセンサーの製造をより容易なものとすることができる。
【0039】
b)は、電気絶縁性基板1上に接着剤層6が形成され、スペーサー部4が基底部2に折り重ねられる前の状態を示している。電気絶縁性基板1上の穿刺針駆動軌道18には丸い空気排出口7が設けられている。さらに、電気絶縁性基板1上に設けられた接着剤層6の基底部2用パターンは、カバー部3用パターンとは異なっており、基底部2用パターンにより試料搬送路9(電極反応部10)が形成される。また、これらの接着剤層4のパターンにより、スペーサー部4を形成する絶縁性基板とともに、穿刺針支持体移動溝21および穿刺針駆動軌道18が形成される。ここに例示されたバイオセンサーでは、穿刺針駆動軌道18と試料搬送路9は穿刺採血口16にて分岐して、穿刺針が電極と接触し得ない構成となっている。また、穿刺針駆動軌道18の穿刺採血口16端部に設けられた空気排出穴7によって、センサー内部への採血の流入を防ぐことができる機構を採っている。この様な構成とした場合には、穿刺針への採血の回り込みを防ぎ、試料体液の無駄な導入がなくなるため、規定された血液体積による血中成分の定量が可能となるといったすぐれた効果を奏する。
【0040】
c)i)には穿刺針部13の側面図を示す。穿刺針部13は穿刺針11とそれを支える穿刺針支持体12からなり、穿刺針支持体12はさらに外部からの駆動を穿刺針11に伝える外部駆動接続部19が一体化されている。c)ii)は、穿刺針部13を正面から見た図を示す。中心には穿刺針11が配置され、その後部には外部駆動接続部19と穿刺針支持体12が示されている。これらの図においては、平板状の穿刺針支持体12が用いられ、これに対して垂直に平板状の外部駆動接続部19が穿刺針の長軸方向に沿って形成された穿刺針部13が示されている。c)iii)は、c)i)に示した穿刺針部13を電気絶縁性基板1に対して穿刺針支持体12が水平になるように、組立て途中のバイオセンサーの穿刺針支持体移動溝21にはめ込む前の状態を示す。
【0041】
d)は、穿刺針部13をバイオセンサーの穿刺針支持体移動溝21に穿刺針支持体12が、貫通穴17に外部駆動接続部19が、また穿刺針駆動軌道18に空気排出穴7と重なり合わない状態で穿刺針11が配置された状態を示している。ここで、穿刺針支持体12は、バイオセンサーの穿刺針支持体移動溝21内を水平移動できる厚さ、すなわち穿刺針支持体移動溝21の厚みよりも薄く設定される。d)はカバー部3を基底部2に向かって折畳むことで穿刺針部13をバイオセンサー内部に格納する前の状態が示されている。ここでは、穿刺針部13の外部駆動接続部19が基底部2とカバー部3に設けられた貫通穴17の範囲でのみ移動が可能であり、穿刺針11の先端は穿刺前後には基底部2上の空気排出穴7よりもセンサー内部側に収まるようになっていることが示されている。このため、穿刺後の採血はこの空気排出穴7よりも奥へは入り込めないため、穿刺針11と採血との接触は起こらない構造となっている。
【0042】
e)は、以上の工程により組み立てられた針一体型バイオセンサー14の平面図(e)i))および底面図(e)ii))を示している。この図に示されるように、穿刺針部13の外部駆動接続部19とバイオセンサーの貫通穴17によって穿刺針部13の移動範囲が規定されている。f)i)は針一体型バイオセンサー14の正面図を示す。ここで示されるように、バイオセンサー本体からは穿刺針部13の外部駆動接続部19が突出している。この凸部は測定装置に内蔵された穿刺駆動部と係合することにより外部駆動を受ける部位である。f)ii)は針一体型バイオセンサー14の左側面図を示す。f)iii)は針一体型バイオセンサー14の右側面図を示す。
【0043】
g)はe)i)と同一のバイオセンサーに関する図であるが、h)i)〜iv)で示す針一体型バイオセンサー14の各図の断面部分をそれぞれi〜ivで示している。h)i)およびiii)では、接続部によりつながれた電気絶縁性基板1を基底部2とスペーサー部4、カバー部3となるように接着剤層6を使用して折畳んでできたバイオセンサーを示している。h)ii)では、穿刺針11と穿刺針駆動軌道18は接触しない構造を採っており、さらに穿刺前および穿刺後のいずれにおいても、穿刺針の位置が空気排出穴7よりも穿刺口からみて奥であることが示されている。h)iv)では、穿刺針駆動軌道18中に穿刺針11が配置している状態が示されている。穿刺針11は、穿刺針駆動軌道18とは直接接触しておらず、この状態は一連の穿刺動作においても同じである。
【0044】
図2は針一体型バイオセンサー14の使用例を示す。a)は穿刺前、b)は穿刺中、c)は穿刺後の状態をそれぞれ示す。またi)は針一体型バイオセンサー14の平面図を示し、ii)は針一体型バイオセンサー14の底面図を示す。これらの図からも明らかなように、穿刺針部13は穿刺時には穿刺採血口16から穿刺針11が突出するが、その移動は電気絶縁性基板1に設けられた貫通穴17に勘合された外部駆動接続部19によって規定される。この穿刺針11の移動範囲を規定する貫通穴17は、例えば基板を打ち抜くことによって容易に形成可能であるため、本発明に係る針一体型バイオセンサーは、構成が簡単であり、その製造が容易であるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る針一体型バイオセンサーの一例を示す図である。
【図2】本発明に係る針一体型バイオセンサーの一使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 電気絶縁性基板
2 基底部
3 カバー部
4 スペーサー部
5 導電体
6 接着剤層
7 空気排出穴
8 ミシン目(接続部)
9 試料搬送路
10 電極(試薬層)
11 穿刺針
12 穿刺針支持体
13 穿刺針部
14 針一体型バイオセンサー
15 端子
16 穿刺採血口
17 貫通穴
18 穿刺針駆動軌道
19 外部駆動接続部
21 穿刺針支持体移動溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の電気絶縁性基板間に、電極、スペーサーおよび外部からの駆動手段により被検体の皮膚を突き刺して血液を採取するための穿刺針が一体となって構成されたバイオセンサーにおいて、
穿刺針後部には穿刺針支持体が装着され、
穿刺針支持体には、外部からの駆動を穿刺針支持体へ伝達するための、電気絶縁性基板を貫通してバイオセンサー外部へ突出した外部駆動接続部が一体化され、
バイオセンサーが、針先端部をセンサー内からセンサー外へ突出させるための穿刺針支持体移動溝を有すると共に、少なくとも1枚の基板に、外部駆動接続部の移動に必要とされる貫通穴を有する
ことを特徴とした針一体型バイオセンサー。
【請求項2】
基板に設けられた貫通穴により、外部駆動接続部の移動可能範囲が決定され、これにより穿刺針の移動方向および移動範囲が規定される請求項1記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項3】
穿刺針支持体が平板状であり、電気絶縁性基板と水平にセットされる請求項1記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項4】
外部駆動接続部が、平板状であり、平面が穿刺針の直軸方向に沿って穿刺針支持体に対して垂直に形成される請求項3記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項5】
外部駆動接続部が、円柱状または角柱状であり、その長軸方向が穿刺針支持体平面に対して垂直に形成される請求項3記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項6】
穿刺針支持体移動溝が、接着剤、レジストおよび電気絶縁性基板の少なくとも一種により形成される請求項1記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項7】
電極が形成された絶縁性基板に、穿刺針支持体移動溝形成用の電気絶縁性基板が接続部によって繋がれた請求項6記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項8】
穿刺針が駆動する軌道であって、バイオセンサー内に格納された穿刺針とは重なり合わない電気絶縁性基板に空気排出穴を設けた請求項1記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の針一体型バイオセンサーを着脱可能であり、測定試料液が導入されたバイオセンサーの電極に電圧を印可することにより出力される電流値を測定可能な測定装置であって、
針一体型バイオセンサーより突出する外部駆動接続部端部と係合することにより、穿刺針を駆動して穿刺針先端をバイオセンサー内外に移動させる駆動手段を備えたことを特徴とする針一体型バイオセンサー用測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−209503(P2007−209503A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32133(P2006−32133)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】