説明

鉄筋組立工法および鉄筋籠展開装置

【課題】 複数の主鉄筋とこれらの主鉄筋を囲う複数のせん断補強筋とから構成される鉄筋籠の先組みを容易に行い、作業効率を向上させるとともに、搬送させる場合の効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】 間隔をあけて複数配筋された一方向にそれぞれ延在する主鉄筋21…と、主鉄筋21…の軸方向に直交する方向に配筋されて複数の主鉄筋21…を囲う複数のせん断補強筋22…とからなる鉄筋籠20を先組みする鉄筋組立工法において、主鉄筋21…とせん断補強筋22…とが正規の結束位置で回動可能に仮結束されているとともに、平行リンク状に折り畳まれて平板状になっている鉄筋籠20´を平置きし、この鉄筋籠20´の上側の主鉄筋21a´を上昇させることでせん断補強筋22…を回動させ、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を展開させて立体的な鉄筋籠20を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば梁や柱、杭等の鉄筋コンクリート体の鉄筋籠を先組みする鉄筋組立工法と、その鉄筋組立工法に使用される鉄筋籠展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
梁や柱等の鉄筋組立作業は、施工場所で鉄筋材を組み立てる場合が多いが、鉄筋組立作業の生産効率を向上させるため、先組み工法によって鉄筋組立作業を行う場合がある。この先組み工法は、現場内の鉄筋組立ヤードで、梁主筋や柱主筋等の主鉄筋とスタラップ筋やフープ筋等のせん断補強筋とを籠状に組み立てて、組み立てられた鉄筋籠を揚重機等で施工場所に運んで設置する工法である。
【0003】
鉄筋組立ヤードでの鉄筋材料の運搬や鉄筋を組み立てる作業は、人力で行われる場合が多いが、近年、作業効率を向上させるために、鉄筋を先組みするための装置や冶具が提供されている。例えば、鉄筋先組み装置として、主鉄筋を載置させるベース台が備えられ、このベース台上には、ベース台上の鉄筋組立空間の周りに間隔をあけて配設された複数の支柱がそれぞれ立設され、各支柱には、せん断補強筋を係止させる係止部が所定ピッチで付設されている構成からなる装置がある。この鉄筋先組み装置によれば、鉄筋の組立作業を効率良く実施することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、現場で鉄筋組立作業を行うと、設備が不十分であり、天候や気候の影響を受け易いという問題を鑑み、鉄筋組立作業を工場で行い、工場で組み立てられた鉄筋籠を現場に搬入する方法がある。鉄筋組立作業を工場で行うと、鉄筋組立作業の効率を一層向上させることができ、また、現場に鉄筋組立ヤードを確保する必要がなくなる。
【0005】
また、現場における鉄筋配筋作業を効率良く行うべく折り畳み式の鉄筋籠が提案されている。例えば、2枚平行の金網製側板の間に、複数のせん断補強筋が所定間隔をあけて配設され、せん断補強筋と金網製側板とが回転可能に取り付けられることで折り畳み可能に構成した鉄筋籠がある。このような鉄筋籠によれば、現場では、鉄筋籠を展開させることで、複数のせん断補強筋が所定間隔で配筋され、これらのせん断補強筋に主鉄筋を配筋するだけで鉄筋配筋作業が完了する(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−10884号公報
【特許文献2】実開平6−25419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した工場で鉄筋組立作業を行う従来の方法では、組み立てられた鉄筋籠を工場から現場へ搬送する際、組み立てられた鉄筋籠は容積が大きくかさばるため、搬送の効率が低下するという問題が存在する。つまり、組み立てられた鉄筋籠を搬送する場合、一台の搬送車両で搬送できる鉄筋量は、組立前の鉄筋材料を搬送する場合と比較して、著しく少なくなる。したがって、鉄筋籠の搬入には、搬入回数を増加させる、或いは搬送車両を大型化させることになり、搬入費用が大幅に増大することになる。
【0007】
また、上記した鉄筋籠を使用した従来の方法では、鉄筋籠を展開させた後、主鉄筋を配筋する必要があり、複数の主鉄筋を囲うようにせん断補強筋を配筋させる場合には、主鉄筋をせん断補強筋の内側に通す必要があって配筋し難いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、複数の主鉄筋とこれらの主鉄筋を囲う複数のせん断補強筋とから構成される鉄筋籠の先組みを容易に行うことができ、作業効率を向上させることができるとともに、搬送させる場合の効率を向上させることができる鉄筋組立工法および鉄筋籠展開装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、間隔をあけて複数配筋された一方向にそれぞれ延在する主鉄筋と、主鉄筋の軸方向に直交する方向に配筋されて複数の主鉄筋を囲う複数のせん断補強筋とからなる鉄筋籠を先組みする鉄筋組立工法において、主鉄筋とせん断補強筋とが正規の結束位置で回動可能に仮結束されているとともに、平行リンク状に折り畳まれて平板状になっている鉄筋籠を平置きし、この鉄筋籠の上側の主鉄筋を上昇させることでせん断補強筋を回動させ、折り畳まれた状態の鉄筋籠を展開させて立体的な鉄筋籠を形成することを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、鉄筋籠は、折り畳まれた状態では平板状になっており、容積が小さく、かさばらない。また、立体的な鉄筋籠を形成する作業としては、折り畳まれた状態にある鉄筋籠の上側の主鉄筋を上昇させるだけである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の鉄筋組立工法に使用され、折り畳まれた状態の鉄筋籠を展開させて立体的な鉄筋籠を形成する鉄筋籠展開装置であって、上側の主鉄筋を上昇させる主鉄筋上昇機と、展開された鉄筋籠の上側の主鉄筋を支持する支持スタンドとが備えられていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、折り畳まれた状態の鉄筋籠の上側の主鉄筋は、主鉄筋上昇機によって上昇させられる。これによって、せん断補強筋は回動し、折り畳まれた状態の鉄筋籠は、平行リンク状に変形して立体的な鉄筋籠に展開される。そして、立体的な鉄筋籠に展開された後、上側の主鉄筋は支持スタンドで支持され、鉄筋籠は立体的な展開状態で保持される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鉄筋組立工法によれば、鉄筋籠は、折り畳まれた状態では容積が小さく、かさばらないため、当該鉄筋籠を搬送する際、一度に多くの鉄筋籠を搬送することができ、鉄筋籠の搬送効率を向上させることができる。また、折り畳まれた状態の鉄筋籠は、鉄筋籠の上側の主鉄筋を上昇させるだけで、立体的な鉄筋籠に展開されるため、容易に立体的な鉄筋籠を形成することができ、作業効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る鉄筋籠展開装置によれば、折り畳まれた状態の鉄筋籠の上側の主鉄筋は、主鉄筋上昇機によって上昇して立体的な鉄筋籠に展開し、その後、上側の主鉄筋が支持スタンドで支持されて鉄筋籠の立体的な展開状態は維持されるため、折り畳まれた状態の鉄筋籠を立体的な鉄筋籠に展開させる作業を容易に行うことができる。また、展開後は支持スタンドで上側の主鉄筋を確実に支持することができるため、上昇した主鉄筋が落下することがなく、作業の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る鉄筋組立工法および鉄筋籠展開装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0016】
はじめに、鉄筋籠展開装置について説明する。
図1は鉄筋籠展開装置1を表す側面図であり、図2は鉄筋籠展開装置1を表す平面図であり、図3は鉄筋籠展開装置1の断面を表す図であって図2に示すA−A間の断面図である。なお、下記の実施の形態において、説明の便宜上、図1,図2における左側を前方向とし、図1,図2における右側を後方向とし、図2における上下方向および図3における左右方向を幅方向とする。
【0017】
図1,図2,図3に示すように、鉄筋籠展開装置1は、後述する図5(a)に示す折り畳まれた状態の鉄筋籠20´に備えられた上主筋21a…を上昇させる主鉄筋上昇機2と、後述する図5(b)に示す展開された鉄筋籠20の上主筋21a…を支持する複数の支持スタンド3…と、主鉄筋上昇機2と複数の支持スタンド3…とを繋ぐ繋ぎ材4とから構成されている。主鉄筋上昇機2は最前側に設置されており、主鉄筋上昇機2の後方に、複数の支持スタンド3…が前後方向に間隔をあけて一列に配設されている。
【0018】
主鉄筋上昇機2は、後述する図5(a)に示す最上段の上主筋21a´…の端部を吊り上げて折り畳まれた鉄筋籠20´を展開させる装置であって、地表面等に載置される盤状のベース5と、ベース5上に間隔をあけて立設された2つのフレーム6,6と、ベース5上に設置されたワイヤー巻上機7と、2つのフレーム6,6間に架設された回転ローラ8と、ワイヤー巻上機7によって巻き上げられるとともに回転ローラ8に巻回された複数のワイヤー9…とから構成されている。
【0019】
ワイヤー巻上機7は、幅方向に延在するドラム体7aをモータ等の駆動機構7bによって軸回転させることで、ドラム体7aの外周面に巻き付けられた複数のワイヤー9…を巻き取る機械である。回転ローラ8は、幅方向に延在するドラム状の部材であって、ワイヤー巻上機7よりも上方に配置され、軸回転自在に保持されている。この回転ローラ8の外周面には、複数のワイヤー9…が上方からそれぞれ巻き掛けられており、これらのワイヤー9…が進退することで回転ローラ8が軸回転される。ワイヤー9…は、鋼製鉄線を編み込んだ引張強度が高いものが使用され、一端がワイヤー巻上機7のドラム体7aに巻き付けられ、中間部が回転ローラ8に巻き掛けられ、他端が回転ローラ8から垂れ下げられている。複数のワイヤー9…は、幅方向に所定間隔をあけて並設されており、これら複数のワイヤー9…の間には、後述する図5(a)に示す最上段の上主筋21a´…の幅方向の間隔に相当する間隔があけられている。
【0020】
支持スタンド3…は、幅方向に間隔をあけて立設された2つ一組のフレーム10,10と、2つのフレーム10,10の下端部間に架設されて後述する図5(a)に示す鉄筋籠20´を載置する支持ローラ11と、2つのフレーム10,10の上端部間に脱着自在に架設される支持パイプ12と、2つのフレーム10,10の上端部にそれぞれ付設されて支持パイプ12の端部を吊持する吊りワイヤー13,13と、吊りワイヤー13,13をそれぞれ締め付けるハンドル14,14とから構成されている。
【0021】
各フレーム10,10は、略鉛直方向に延在する門形の部材であり、各フレーム10,10の下端部側面には、外側に張り出された三角形状の脚部15,15がそれぞれ付設されている。支持ローラ11は、幅方向に延在されており、両端部がフレーム10,10の下端部で回転自在に挟持されている。支持パイプ12は、幅方向に延在されており、両端部が門形のフレーム10,10の上端部にそれぞれ緩挿されるとともにU字状の吊りワイヤー13,13内に挿通されてこの吊りワイヤー13,13によって支持されている。また、支持パイプ12は、フレーム10,10や吊りワイヤー13,13内から引き抜くことで取り外し可能であり、さらにフレーム10,10や吊りワイヤー13,13内に挿入することで取り付け可能である。吊りワイヤー13は、ハンドル14を回すことで締め付けられて、支持パイプ12の端部を支持する円弧部分が上昇され、ハンドル14を反対に回すことで、支持パイプ12の端部を支持する円弧部分が下降する。
【0022】
繋ぎ材4は、前後方向に延在する2本平行の部材であり、主鉄筋上昇機2のベース5の上面およびフレーム6,6の外側面にそれぞれ接合されているとともに、複数の支持スタンド3…のフレーム10,10の各外側面にそれぞれ接合されている。主鉄筋上昇機2及び複数の支持スタンド3…は、この繋ぎ材4によって一体に形成されている。
【0023】
ここで、鉄筋籠20,20´の構成について説明する。図4(a)は展開された状態の鉄筋籠20の側面図であり、図4(b)は折り畳まれた状態の鉄筋籠20´の側面図である。
【0024】
図4(a)に示すように、展開された状態の鉄筋籠20は、梁鉄筋を構成する鉄筋籠であり、間隔をあけて複数配筋された一方向にそれぞれ延在する主鉄筋21…と、主鉄筋21…の軸方向に直交する方向に配筋されて複数の主鉄筋21…を囲う複数のせん断補強筋22…とから構成されている。主鉄筋21…には、複数の上主筋21a…と複数の下主筋21b…とがあり、上主筋21a…および下主筋21b…は、それぞれ2段配筋されているとともに、主鉄筋21…の延在方向に直交する水平方向(幅方向)に所定の間隔をあけてそれぞれ配筋されている。複数のせん断補強筋22…は、主鉄筋21…の延在方向(軸方向)に所定の間隔をあけて配筋されている。
【0025】
図4(b)に示すように、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´は、上記した展開された状態の鉄筋籠20の主鉄筋21…およびせん断補強筋22…を平行リンク状に折り畳んで平板状にした構成からなっている。具体的には、複数の主鉄筋21…は、一方の方向(幅方向)の配筋間隔については正規の間隔(展開された状態における配筋間隔)で配筋されているとともに、他方の方向(高さ方向)の配筋間隔については互いに詰めて配筋されている。また、間隔を詰めて配筋された複数の主鉄筋21…は、軸方向にずらされて配筋されており、上側の主鉄筋21…程後方にずらされている。また、複数のせん断補強筋22…は、軸方向側に傾けて配筋され、且つ、主鉄筋21…とせん断補強筋22…とが、正規の結束位置(展開された状態における結束位置)で回動可能に仮結束されている。この仮結束は、結束線等によって、結束が外れることなく回転出来る程度に緩く結束された状態である。
【0026】
次に、上記した構成からなる鉄筋籠展開装置1を使用して、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を展開させて立体的な鉄筋籠20を形成する鉄筋組立工法について説明する。
図5(a)は鉄筋籠展開装置1によって鉄筋籠20´を展開させる前の状態を表す側面図であり、図5(b)は鉄筋籠展開装置1によって鉄筋籠20´を展開させた後の状態を表す側面図であり、図6は鉄筋籠展開装置1によって鉄筋籠20´を展開させた後の断面を表す図であって図5(b)に示すB−B間の断面図である。
【0027】
まず、図5(a)に示すように、上記した構成からなる折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を鉄筋籠展開装置1にセットする工程を行う。具体的には、まず、下主筋21b…を下にして、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を複数の支持ローラ11の上に架設させるように平置きする。このとき、鉄筋籠20´を支持スタンド3…のフレーム10,10間に上から吊り降ろしできるように、支持スタンド3…から図1に示す支持パイプ12を引き抜いておき、鉄筋籠20´をクレーン等の図示せぬ揚重機で吊り、鉄筋籠20´をセットする。なお、鉄筋籠20´を後方側からスライドさせて支持ローラ11上にセットしてもよい。
【0028】
次いで、上側の主鉄筋21…(最上段の上主筋21a´…)の主鉄筋上昇機2側(前側)の端部に、吊上冶具23…をそれぞれ取り付けるとともに、複数のワイヤー9…をそれぞれ引き出してワイヤー9…の先端部に吊上冶具23…にそれぞれ連結させる。
【0029】
次に、図5(b),図6に示すように、鉄筋籠展開装置1によって、鉄筋籠20´の最上段の上主筋21a´…を上昇させることでせん断補強筋22…を回動させ、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を展開させて立体的な鉄筋籠20を形成する工程を行う。具体的には、駆動機構7bを稼動させ、ワイヤー巻上機7によって複数のワイヤー9…を巻き取る。このとき、ワイヤー9の中間部は回転ローラ8に掛けられており、ワイヤー9…の先端部に連結された吊上冶具23…は斜め上方に引き上げられる。これによって、端部に吊上冶具23…が取り付けられた最上段の上主筋21a´…は上昇させられ、折り畳まれた鉄筋籠20´は平行リンク状に変形して立体的な鉄筋籠20になる。
【0030】
次いで、支持パイプ12を吊りワイヤー13内に挿入して支持スタンド3…に取り付けて、支持パイプ12によって上主筋21a…を支持させる。このとき、ハンドル14を回して吊りワイヤー13を締め上げて、支持パイプ12の高さを調節して上主筋21a…の支持高さを所定位置に合わせる。その後、主鉄筋21…とせん断補強筋22…とを固く本結束して鉄筋組みを完了する。
【0031】
上記した構成からなる鉄筋組立工法によれば、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を平置きし、この鉄筋籠20´の最上段の上主筋21a´…を上昇させることで、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を展開させて立体的な鉄筋籠20を形成するため、鉄筋籠20は、折り畳まれた状態では平板状になっており、容積が小さく、かさばらない。これによって、当該鉄筋籠20´を搬送する際、一度に多くの鉄筋籠20´を搬送することができ、鉄筋籠20´の搬送効率を向上させることができる。また、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´は、最上段の上主筋21a´…を上昇させるだけで、立体的な鉄筋籠20に展開されるので、容易に立体的な鉄筋籠20を形成することができ、作業効率を向上させることができる。
【0032】
また、上記した構成からなる鉄筋籠展開装置1によれば、最上段の上主筋21a´…を上昇させる主鉄筋上昇機2と、展開された鉄筋籠20の上主筋21a…を支持する支持スタンド3とが備えられているため、折り畳まれた状態にある鉄筋籠20´の最上段の上主筋21a´…は、主鉄筋上昇機2によって吊り上げられて上昇する。これによって、せん断補強筋22…は回動し、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´は立体的な鉄筋籠20に展開する。そして、立体的な鉄筋籠20に展開された後、上主筋21a…は支持スタンド3の支持パイプ12で支持され、鉄筋籠20の立体的な展開状態が維持される。このように、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を立体的な鉄筋籠20に展開させる作業を容易に行うことができる。また、展開後は支持スタンド3で上主筋21a…を確実に支持することができるため、上昇した上主筋21a…が落下することがなく、作業の安全性を向上させることができる。
【0033】
以上、本発明に係る鉄筋組立工法および鉄筋籠展開装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した鉄筋籠展開装置についての実施の形態では、最上段の上主筋21a´…の端部に吊上冶具23…を介して連結されたワイヤー9…を、ワイヤー巻上機7で巻き上げる構成の主鉄筋上昇機2が使用されているが、本発明は、ワイヤーに替えてチェーンを使用するとともに、このチェーンを巻き取るホイストを鉄筋籠20,20´の上方に設置し、ホイストによってチェーンを巻き取ることで、上側の主鉄筋を吊り上げる構成の主鉄筋上昇装置でもよい。また、シリンダーやその他の移動機構によって上側の主鉄筋を上昇させる主鉄筋上昇機でもよく、上側の主鉄筋を上昇させる機構であれば如何なる機構であってもよい。
【0034】
また、上記した鉄筋籠展開装置についての実施の形態では、2つ一組のフレーム10,10と、これらのフレーム10,10の上端部間に脱着自在に架設される支持パイプ12とが備えられた支持スタンド3…が使用されているが、本発明は、上側の主鉄筋を支持する部材がフレームに固定された支持スタンドでもよい。また、支持スタンド自体が脱着自在のものでもよく、上側の主鉄筋を上昇させて鉄筋籠を展開させた後、上側の主鉄筋の下方に支持スタンド自体を配置して上側の主鉄筋を支持させてもよい。
【0035】
また、上記した鉄筋組立工法についての実施の形態では、鉄筋籠展開装置1を使用して、折り畳まれた状態の鉄筋籠20´を展開させているが、本発明は、鉄筋籠展開装置を使用しないで展開させてもよく、例えが、鉄筋量が少なく鉄筋籠が軽量である場合には、手作業によって展開させてもよい。
また、上記した実施の形態では、梁の鉄筋籠20を例に挙げて説明しているが、本発明は、柱や杭の鉄筋籠であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための鉄筋籠展開装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための鉄筋籠展開装置の平面図である。
【図3】図2に示すA−A間の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための鉄筋籠の側面図であって、(a)は展開された状態の鉄筋籠を表し、(b)は折り畳まれた状態の鉄筋籠を表している。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための鉄筋組立工法を表す側面図であって、(a)は展開前の状態を表し、(b)は展開後の状態を表している。
【図6】図5(b)に示すB−B間の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 鉄筋籠展開装置
2 主鉄筋上昇機
3 支持スタンド
20 鉄筋籠
21 主鉄筋
22 せん断補強筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて複数配筋された一方向にそれぞれ延在する主鉄筋と、主鉄筋の軸方向に直交する方向に配筋されて複数の主鉄筋を囲う複数のせん断補強筋とからなる鉄筋籠を先組みする鉄筋組立工法において、
主鉄筋とせん断補強筋とが正規の結束位置で回動可能に仮結束されているとともに、平行リンク状に折り畳まれて平板状になっている鉄筋籠を平置きし、
この鉄筋籠の上側の主鉄筋を上昇させることでせん断補強筋を回動させ、折り畳まれた状態の鉄筋籠を展開させて立体的な鉄筋籠を形成することを特徴とする鉄筋組立工法。
【請求項2】
請求項1記載の鉄筋組立工法に使用され、折り畳まれた状態の鉄筋籠を展開させて立体的な鉄筋籠を形成する鉄筋籠展開装置であって、
上側の主鉄筋を上昇させる主鉄筋上昇機と、展開された鉄筋籠の上側の主鉄筋を支持する支持スタンドとが備えられていることを特徴とする鉄筋籠展開装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−283475(P2006−283475A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107364(P2005−107364)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】