説明

鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置

【課題】エンジン停止状態で低速作業走行が可能な、鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置を提供する。
【解決手段】トルクコンバータ22のタービン軸23から第1クラッチ28を介してエンジンからの動力を伝達する第1ギヤ32、33と、この第1ギヤと同軸上に遊転支持され、第2クラッチ41を介して第1ギヤと結合する第2ギヤ41と、この第2ギヤにかみ合う歯車列にギヤ比切換クラッチ45を介して連結される回転軸43に配置された、ジェネレータ/モータ4と、前記トルクコンバータのインペラホイール26により駆動される軸57に配置された発電機3と、この発電機3が発電した交流電力を直流に変換するコンバータ11と、変換された直流電力を蓄電するバッテリ14と、このバッテリ14からの直流電力を交流に変換するインバータ12を設け、ジェネレータ/モータ4がバッテリ14に蓄電された電力により電動機として作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道関係の各種設備の保守、整備等に使用される鉄道作業車、例えば、軌道モータカー、架線交換車、トンネル内点検車、バラスト交換機等において、特に、走行用動力源としてエンジンを備えた鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような鉄道作業車では、高速度で作業現場へ移動するための通常走行運転と、各種作業を行うために低速度で走行する作業走行運転とが行われる。この作業走行運転の手段として、特許文献1に開示されているように、エンジンと車軸との間に配置されたトランスミッションに歯車列を介してPTO軸を設けて油圧ポンプと油圧モータを取り付け、油圧ポンプの発生油圧によって油圧モータを駆動して低速の車速を得る静油圧駆動方式が既に提案されている。また、特許文献2に開示されているように、トランスミッションの出力軸に湿式多板ブレーキを設けてその押圧力を制御し、湿式多板ブレーキをスリップさせながら必要とする低速の車速を得る方式も行われている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−132136号公報
【特許文献2】特開2003−300456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来の鉄道作業車の駆動装置においては、次のような問題があった。すなわち、静油圧駆動方式の低速走行装置を備えた鉄道作業車では、作業走行運転時にのみ使用する高圧の油圧ポンプ、油圧モータ、フィルタ等から構成される静油圧回路がトランスミッションの油圧回路とは別系統に存在し、油圧系統が複雑な構成になると共に、高圧で使用するために油のコンタミ管理等保守点検を入念に行う必要がある。
【0005】
また、トランスミッションの出力軸に湿式多板ブレーキを設けた低速走行装置を備えた鉄道作業車では、作業走行運転時にエンジンの回転速度を低回転にセットするものの、トルクコンバータを介したエンジンの駆動力に逆らい、湿式多板ブレーキをスリップさせながら制動力を付与して低速度を得るので、スリップによる湿式多板ブレーキからの発熱量が多く、その熱を冷却するためには大型の冷却油ポンプおよび冷却油回路が必要である。
【0006】
しかも、これらのいずれの駆動方式においても、作業走行運転はエンジンの駆動状態で行う必要があるので、エンジンからの排気ガスが問題となるトンネル内の作業や騒音が制限される夜間作業等では使用できないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、特別の油圧回路や大型の冷却油ポンプ等を必要とせず、かつ、エンジンを停止した状態で低速の作業走行運転が可能な、鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、トルクコンバータを介してエンジンに連結されたトランスミッションであって、各速度段クラッチ、この各速度段クラッチに連なる歯車列、これらの歯車列を経て車輪に動力を伝達する出力軸とからなるトランスミッションを有する鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置において、トルクコンバータの出力側のタービン軸からトランスミッションの第1クラッチを介してエンジンからの動力を伝達する第1ギヤと、この第1ギヤと同軸上に遊転支持され、第2クラッチを介して第1ギヤと結合する第2ギヤと、この第2ギヤにかみ合う歯車列にギヤ比切換クラッチを介して連結される回転軸に配置された、ジェネレータ/モータと、前記トルクコンバータの入力側のインペラホイールにより駆動される回転軸に配置された発電機と、この発電機が発電した交流電力を直流電力に変換するコンバータと、変換された直流電力を蓄電するバッテリと、このバッテリからの直流電力を交流電力に変換するインバータを設け、ジェネレータ/モータがバッテリに蓄電された電力により電動機として作動することを特徴とするものである。
【0009】
なお、好適には、トランスミッションが、第1クラッチ、第1ギヤ、第2クラッチおよび第2ギヤをタービン軸上に配置されたものであることが望ましく、また、トランスミッションが、タービン軸およびそれと平行に配置した逆転軸に、第1クラッチ、第1ギヤおよび第1クラッチの入力側と一体回転するクラッチギヤをそれぞれ配置し、各軸のクラッチギヤを互いにかみ合わせると共に、上記タービン軸上または逆転軸上のいずれかに第2ギヤおよび第2クラッチを設けたものであることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄道作業車の通常走行運転はエンジンで駆動し、作業走行運転は電動機で駆動することができるので、トンネル内等の閉鎖された空間での排気ガスの問題が解消されると同時に、エンジンによる駆動に比べて騒音が格段に低下し、夜間作業等も行うことができる。また、電動機による駆動なので別の油圧系統や油圧機器を必要とせず、保守点検を簡素化することができる。また、走行中にバッテリの残容量が少なくなってきても、エンジンにより発電機を回転させて充電できるので、バッテリ交換の必要がなく、作業時間を節約することができる。また、充電のためにエンジンを使用できない場合には、エンジンが使用できる別の現場へ移動し、その走行中や作業中に充電することも可能で、充電後にはエンジンの使用ができない場所での作業を再開することができる。したがって、バッテリの容量を小さくすることが可能であり、鉄道作業車の小型化、軽量化にもつなげることができる。なお、バッテリの充電は、通常、エンジン動力による走行中の発電によってできるので、車庫を出て作業現場に到着するまでの間および作業を終えて車庫に戻るまでの間に行うことが可能で、車両区でのバッテリ充電時間を大幅に短縮することができ、バッテリの残容量管理が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1、図2および図3を参照して本発明の実施形態について述べる。図1は、本発明のハイブリッド型駆動装置を搭載した鉄道作業車の駆動系統を示す概略図である。図1において、トランスミッション2は、エンジン1からの動力をその出力軸から推進軸5、6に変速して伝達する。推進軸5,6の他方端は、車両の前方と後方の車軸に取り付けられた終減速機7、8に接続され、トランスミッションの出力軸の回転速度をさらに減速して車輪9、10に伝達する。
【0012】
トランスミッション2には、発電機軸を介して発電機3、PTO軸を介して発電機と電動機を兼用するジェネレータ/モータ4が接続されていて、発電機3により発電された交流電力は、コンバータ11を経て直流電力に変換された後、遮断器13を経てバッテリ14に蓄電される。同様に、ジェネレータ/モータ4の発電機により発電された交流電力はインバータ12を経て直流電力に変換された後、遮断器13を経てバッテリ14に蓄電される。
【0013】
そして、バッテリ14を動力源として作業走行運転を行う場合には、バッテリ14に蓄電された電力をインバータ12により交流電力に変換した後、ジェネレータ/モータ4へ出力してこれを電動機として作動させ、PTO軸からトランスミッション2の減速歯車機構を経て通常走行運転より低い回転速度を車輪に伝達する。
【0014】
なお、遮断器13は、図示されない制御装置からの動作指令に基づいて、コンバータ11からインバータ12およびバッテリ14への電力の供給および遮断をする機能と、コンバータ11とインバータ12間の直流電力をバッテリ14への供給および遮断をする機能と、コンバータ11およびバッテリ14からインバータ12への電力の供給および遮断をする機能を備えるものである。
【0015】
図2は、本発明の実施形態である鉄道作業用車のハイブリッド型駆動装置の構成を示す説明図である。この図2において、エンジン1からの動力は、トランスミッション2の入力継手21に伝達され、この入力継手21と一体のトルクコンバータ22のホイールカバー25を経てそのインペラホイール26に伝達される。このインペラホイール26が回転すると、トルクコンバータサーキット内の油の循環によるポンプ作用によってタービンホイール27が回転し、このタービンホイール27と一体のタービン軸23に動力が伝達される。
【0016】
このタービン軸23に伝達された動力は、走行方向に応じて結合される、トランスミッションの第1クラッチである正転クラッチ28または逆転クラッチ29によって第1ギヤ32または33に伝達され、歯車軸34と一体の駆動ギヤ35に伝達された後、必要な車速に応じて結合される1速クラッチ30または2速クラッチ31、およびそれらのクラッチ30およびクラッチ31により選択された各歯車列を経由して出力軸24に伝達される。(タービン軸23、逆転軸61、歯車軸34および出力軸24はそれぞれ平行に配置されていて、歯車軸34の軸心は出力軸24の垂直上方に位置し、タービン軸23と逆転軸61の軸心は歯車軸34の上方偏心位置に配置されている。そして、第1ギヤ32および33は駆動ギヤ35にそれぞれ直接かみ合っている。)
【0017】
一方、タービン軸23上には、第2ギヤ40が回転自在に支持されていて、同軸23上に設けられたトランスミッションの第2クラッチ41である油圧多板式クラッチ(作業用クラッチ)の結合により、第2ギヤ40と第1ギヤ32がタービン軸23上で一体的に回転する。タービン軸23の上方には、この軸23と平行に中間軸42とPTO軸43が設けられ、このPTO軸43上には、作業走行運転時(電動機走行時)と通常走行運転時(エンジン走行時)で第2ギヤ40とPTO軸43の間の回転速度比を切り換えるギヤ比切り換えクラッチ45が設けられている。ジェネレータ/モータ4を電動機として作動させる作業走行運転時には、低速で走行するために、このクラッチを高ギヤ比側(図の位置、L側)に結合し、作業現場への往復などエンジンによる通常走行時に発電機として使用する場合には低ギヤ比側(図と反対位置、H側)に結合し、エンジン定格回転速度でジェネレータ/モータ4を駆動した際に許容回転速度を越えないように設定されている。
【0018】
PTO軸43には、軸と一体に固定され、外周にスプラインを備えたクラッチハブ48と、PTO軸43に回転自在に支持され、外周スプライン49を備えた高速ギヤ46および外周スプライン50を備えたと低速ギヤ47と、これらのギヤのスプライン49,50とクラッチハブ48の外周スプラインにかみ合うスプラインを内周に備えたスライダ44を設けて、ギヤ比切り換えクラッチ45は構成され、このスライダ44を軸方向にスライドさせて、一方のギヤのスプラインとクラッチハブ48を連結させることにより高速と低速とを切り換える。(通常走行運転から作業走行運転に移行する際には作業車が一旦停止するので、この例では、構成が簡単な機械式クラッチを採用しているが、油圧多板式クラッチを採用しても良い。また、ギヤ比切り換えクラッチ45は設置せず、中間軸42とPTO軸43との間の回転速度比を1種類に固定し、エンジンによりジェネレータ/モータ4を駆動する際には、エンジンの回転速度を所定値以下で使用するようにしても良い。)
【0019】
この実施例では、中間軸42には、PTO軸43上の高速ギヤ46とかみ合う中間小ギヤ51とPTO軸43上の低速ギヤ47とかみ合う中間大ギヤ52が設けられ、ギヤ比切り換えクラッチ45をいずれか一方に結合することにより、PTO軸43の回転速度が増速又は減速されて、中間軸42と一体の中間ギヤ53に伝達される。
【0020】
また、トルクコンバータ22の入力側には、インペラホイール26と一体に回転する小ギヤ54が設けられ、アイドルギヤ55を介して発電機3の軸57と一体の大ギヤ56にエンジン1からの動力を伝達する。この発電機軸57には油圧多板式クラッチ58が設けられていて、このクラッチ58の出力側に発電機3が連結される。なお、この例では、発電機軸57にクラッチを設けているが、公知の手段を用いて、発電機3が回転しても電力負荷を発生させないように制御することにより、このクラッチ58を省略することもできる。
【0021】
上記のような構成のトランスミッション2を有する駆動装置において、鉄道作業車の通常走行運転時と作業走行運転時の動力伝達経路は、以下のようになる。先ず、通常走行運転時には、車両の進行方向に応じてタービン軸23上の正転クラッチ(第1クラッチ)28、または逆転軸61上の逆転クラッチ(第1クラッチ)29のいずれか一方を結合する。クラッチギヤ59と60の歯数は同一に設定されているので、タービン軸23と逆転軸61上の回転速度は同じ回転速度になる。作業走行運転時には、これらのクラッチ28、29をいずれも脱の状態に保持する。また、作業走行運転時には、ジェネレータ/モータ4を電動機として使用し、逆方向への走行はモータの回転方向を反転させて行う。
【0022】
(1)通常走行運転時(出力軸正転回転)の1速運転
エンジン→トルクコンバータ22→タービン軸23→クラッチギヤ59→正転クラッチ28→第1ギヤ32→駆動ギヤ35→1速クラッチ30→1速ギヤ36→出力大ギヤ38→出力軸24→車輪
(2)通常走行運転時(出力軸正転回転)の2速運転
エンジン→トルクコンバータ22→タービン軸23→クラッチギヤ59→正転クラッチ28→第1ギヤ32→駆動ギヤ35→2速クラッチ31→2速ギヤ37→出力ギヤ39→出力軸24→車輪
【0023】
(3)通常走行運転時(出力軸逆転回転)の1速運転
エンジン→トルクコンバータ22→タービン軸23→クラッチギヤ59→クラッチギヤ60→逆転クラッチ29(正転クラッチ28は脱)→第1ギヤ33→駆動ギヤ35→1速クラッチ30→1速ギヤ36→出力大ギヤ38→出力軸24→車輪
(4)通常走行運転時(出力軸逆転回転)の2速運転
エンジン→トルクコンバータ22→タービン軸23→クラッチギヤ59→クラッチギヤ60→逆転クラッチ29(正転クラッチ28は脱)→第1ギヤ33→駆動ギヤ35→2速クラッチ31→2速ギヤ37→出力ギヤ39→出力軸24→車輪
【0024】
(5)作業走行運転時(電動機走行)
ジェネレータ/モータ4→PTO軸43→ギヤ比切り換えクラッチ45→低速ギヤ47→中間大ギヤ52→中間軸42→中間ギヤ53→第2ギヤ40→第2クラッチ41→第1ギヤ32→駆動ギヤ35→1速クラッチ30→1速ギヤ36→出力大ギヤ38→出力軸24→車輪
【0025】
なお、この実施例では、タービン軸23上に第2ギヤ40と第2クラッチ41を設けたが、これらを逆転軸61上に設置しても同様の機能が得られ、どちらに設置するかはジェネレータ/モータ4等の配置により決定される。また、この実施例では、通常走行運転時に第1クラッチの結合を切り換えることにより前進方向と後進方向に同じ速度で走行できるよう構成されているが、これは作業車の進行方向を変えるための設備である転車台を使用して向きを変えなくても前進、後進を同一速度で走行できるようにするためである。
【0026】
本発明のハイブリッド型駆動装置を搭載した鉄道作業車は次のように運転される。
(1)作業現場への往復等、通常走行運転時には、ギヤ比切り換えクラッチ45を減速比の小さいH側に切り換え、第1クラッチである正転クラッチ28または逆転クラッチ29を結合し、1速クラッチ30または2速クラッチ31を選択的に結合して走行する。この通常走行運転時には、必要に応じてクラッチ58および/又は第2クラッチ41を結合し、発電機3および/又はジェネレータ/モータ4をエンジンで駆動し、発電機3やジェネレータ/モータ4によって発電された電力をバッテリ14に蓄電する。(発電機3はジェネレータ/モータ4に比べて小容量に設定し、基本的にはジェネレータ/モータ4で発電し、必要に応じて両方で発電するのが望ましい。)そして、公知の手段によりバッテリの容量が上限に達したことを検出したら前記クラッチ58および第2クラッチ41を遮断し、バッテリの充電を終了させる。
【0027】
また、停車中に発電機3及びジェネレータ/モータ4を用いて充電する場合には、ギヤ比切り換えクラッチ45をH側に切り換えた後、正転クラッチ28及び第2クラッチ41を結合し、エンジンを所定の回転速度で回転させる。この時、1速クラッチ30及び2速クラッチ31は脱にする。
【0028】
(2)低速で走行しながら作業を行う作業走行運転時には、エンジンを停止するか又はエンジンの回転速度を低回転に下げた状態で、ジェネレータ/モータ4をバッテリ14からの電力によって電動機として作動させることにより走行する。この電動機による走行は、正転クラッチ28を脱にしてエンジンからの動力を遮断した後、ギヤ比切り換えクラッチ45を減速比の大きいL側に切り換えた状態に保持し、第2クラッチ41を結合することにより行う。また、作業走行運転において走行方向を変える場合には、電動機の回転方向を反転させて対応する。
【0029】
図3は、図2におけるタービン軸23および中間軸42部分の断面図である。タービン軸23は、トランスミッション2のケーシング62に軸受65、66を介して支持されており、タービン軸23と同心に油圧多板式クラッチである正転クラッチ28および第2クラッチ41が設けられている。タービン軸23上には、クラッチギヤ59が正転クラッチ28の外筒部材と一体に形成されてタービン軸23に固定されており、第2ギヤ40が第2クラッチ41の外筒部材77と一体に形成されてタービン軸23に軸受を介して支持されている。第2クラッチ41は、外筒部材77の内周にスプライン係合する複数のアウタープレート75と、このアウタープレート75と1枚づつ交互に配置されたインナープレート74と、このインナープレート74がスプライン係合している第1ギヤ32と一体のクラッチハブ78と、上記アウタープレート75とインナープレート74を押圧するためのピストン73を備えたピストン室72と、そして、外筒部材77に固定され、ピストン73により押圧された各プレートの軸方向の移動を制限するバックプレート76とからなっている。
【0030】
なお、第2ギヤ40の内周部には、タービン軸23に一体に固定され外周部の溝にシールリングを挿入したシールカラー71が設けられており、第2クラッチ41のピストン室72とタービン軸23との間の作動油の受け渡しを行い、このシールカラー71の貫通孔には、軸端カバー63の供給孔64から供給された作動油がタービン軸23に加工された油路69を通して供給される。
【0031】
第1ギヤ32は、軸受を介してタービン軸23に回転自在に支持され、その両端部には、スプラインを備えたクラッチハブ78が一体に形成されている。正転クラッチ28は、第2クラッチ41と同様に構成され、そのピストン室79には軸端カバー63の供給孔から供給された作動油が軸に加工された油路70を通して供給される。(その他クラッチの詳細構造は第2クラッチ41と同じなのでその説明を省略する。)中間軸42は、軸受67、68を介してケーシング62に支持され、軸と一体に中間小ギヤ51、中間大ギヤ52および中間ギヤ53が固定されていて、この中間ギヤ53が第2ギヤ40にかみ合っている。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のハイブリッド型駆動装置を備えた鉄道作業車は、作業走行運転時における排気ガスの問題が解消されるのでトンネル内等の閉鎖された空間での作業に適すると同時に、騒音が格段に低下するので、夜間作業等にも適している。また、バッテリの残容量が少なくなっても、エンジンにより発電機を回転させて充電できるので、バッテリ交換や特別な充電設備の必要がなく、必要な場所で必要な時に利用できると共に作業時間やコストを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明のハイブリッド型駆動装置を搭載した鉄道作業車の駆動系統を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態である鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置の構成を示す説明図である。
【図3】図3は図2のタービン軸および中間軸部分の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 エンジン
2 トランスミッション
3 発電機
4 ジェネレータ/モータ
5、6 推進軸
7、8 終減速機
9、10 車輪
11 コンバータ
12 インバータ
13 遮断器
14 バッテリ
21 入力継手
22 トルクコンバータ
23 タービン軸
24 出力軸
25 ホイールカバー
26 インペラホイール
27 タービンホイール
28 正転クラッチ(第1クラッチ)
29 逆転クラッチ(第1クラッチ)
30 1速クラッチ
31 2速クラッチ
32、33 第1ギヤ
34 歯車軸
35 駆動ギヤ
36 1速ギヤ
37 2速ギヤ
38 出力大ギヤ
39 出力ギヤ
40 第2ギヤ
41 第2クラッチ
42 中間軸
43 PTO軸
44 スライダ
45 ギヤ比切換クラッチ
46 高速ギヤ
47 低速ギヤ
48 クラッチハブ
51 中間小ギヤ
52 中間大ギヤ
53 中間ギヤ
54 小ギヤ
55 アイドルギヤ
56 大ギヤ
57 発電機軸
58 発電機クラッチ
59、60 クラッチギヤ
62 ケーシング
65、66、68 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータを介してエンジンに連結されたトランスミッションであって、各速度段クラッチ、この各速度段クラッチに連なる歯車列、これらの歯車列を経て車輪に動力を伝達する出力軸とからなるトランスミッションを有する鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置において、前記トルクコンバータの出力側のタービン軸からトランスミッションの第1クラッチを介してエンジンからの動力を伝達する第1ギヤと、この第1ギヤと同軸上に遊転支持され、第2クラッチを介して第1ギヤと結合する第2ギヤと、この第2ギヤにかみ合う歯車列にギヤ比切換クラッチを介して連結される回転軸に配置された、ジェネレータ/モータと、前記トルクコンバータの入力側のインペラホイールにより駆動される回転軸に配置された発電機と、この発電機が発電した交流電力を直流電力に変換するコンバータと、変換された直流電力を蓄電するバッテリと、このバッテリからの直流電力を交流電力に変換するインバータを設け、ジェネレータ/モータがバッテリに蓄電された電力により電動機として作動することを特徴とする鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置。
【請求項2】
上記トランスミッションが、上記第1クラッチ、第1ギヤ、第2クラッチおよび第2ギヤを上記タービン軸上に配置したものであることを特徴とする請求項1記載の鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置。
【請求項3】
上記トランスミッションが、上記タービン軸およびそれと平行に配置した逆転軸に、第1クラッチ、第1ギヤおよび第1クラッチの入力側と一体回転するクラッチギヤをそれぞれ配置し、各軸のクラッチギヤを互いにかみ合わせると共に、上記タービン軸上または逆転軸上のいずれかに第2ギヤおよび第2クラッチを設けたものであることを特徴とする請求項1記載の鉄道作業車のハイブリッド型駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−30750(P2007−30750A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218863(P2005−218863)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(303025663)株式会社日立ニコトランスミッション (25)
【Fターム(参考)】