説明

鉄道編成車両の駆動システム

【課題】鉄道編成車両の駆動システムおいて、特に、複数の電力供給手段を設備し、これらの手段より得られる電力の供給先である駆動システムを効果的に選択する機能を設け、鉄道車両の駆動システムの冗長性を向上させる。
【解決手段】編成車両に複数の電力発生手段を設け、前述の複数の電力発生手段を複数の電力供給手段を介して接続する。また、複数の電力供給手段のいずれか、または任意の複数の電力供給手段に電力を出力することを可能とする第一の系統選択器を設備する。さらに、駆動システムを構成するインバータ手段は、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択することを可能とする第二の系統選択器を設備する。同じく、駆動システムを構成する補助電源手段は、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択することを可能とする第三の系統選択器を設備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道編成車両の駆動システムに係り、特に、鉄道車両の駆動システムの冗長性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両を駆動するためには動力源が不可欠であり、車両の運行中は継続的に動力源、および動力源を基に車両を駆動するための動力を発生させ、かつ車輪を回転させる駆動系が健全に動作することが重要である。
【0003】
鉄道車両を走行させるための動力源は、一般的に次の2通りが考えられる。
(1)地上側の発電設備から架線等の給電設備を通じて車両に電力を供給する。(電気車)
(2)車両上にエンジン等を搭載する。(内燃車)
【0004】
動力源が電力の場合、架線等の給電設備より給電された電力をもとに、電力変換器等により電動機を駆動して車輪とレールの間に引張力を発生させる。また、動力源が車両上のエンジンによる場合は、エンジンで発電機を駆動して発生させた電力をもとに電力変換器等を用いて電動機を駆動して車輪とレールの間に引張力を発生させる場合と、エンジンの軸出力を変速機等で制御して直接、車輪を駆動し、車輪とレールの間に引張力を発生させる場合がある。
【0005】
ところで、列車編成中に上記の動力源(電気車の場合は架線等の給電設備あるいは電力変換器,内燃車の場合はエンジン・発電機等)を唯一つしか持たない動力集中型編成車両では、動力源が故障したときは車両の駆動に必要な動力を得られないため運行を続けることが難しい。このように車両の動力源の故障した場合でも、車両の継続運行を可能とする方式のひとつとして、編成内に複数の動力源を搭載する方式が考えられる。
【0006】
動力源を複数搭載した動力集中型編成車両の構成,制御方式については、例えば特許文献1の鉄道車両駆動システムにおいて述べられている。
【0007】
図7に特許文献1の図1に示されている鉄道車両駆動システムの機器構成図を示す。発電手段110と電力変換装置120と駆動電動機を搭載した第一の鉄道車両101と、電力変換装置120と駆動電動機と電力蓄積手段150を搭載した第二の鉄道車両102と、各手段を電力伝達手段140によって接続した鉄道車両駆動システムにおいて、発電手段110の発電電力および電力蓄積手段150の蓄電量を制御する電力管理手段200を備え、電力蓄積手段150が、発電手段110が発電する電力および回生電力を蓄積し、発電手段110と電力蓄積手段150を電源として電力変換装置120によって駆動電動機を駆動し、列車を駆動する。
【0008】
このように、特許文献1の図1に示されている鉄道車両駆動システムでは、発電手段110を備えた第一の鉄道車両から、電車と同様の駆動システムである電力変換装置120と駆動電動機と電力蓄積手段150を備えた第二の鉄道車両102に電力を供給して、車両の走行を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4184879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の鉄道車両駆動システムによれば、動力源として発電手段110と電力蓄積手段の二つの動力源を搭載しているので、発電手段110が故障した場合でも、電力蓄電手段150に蓄電された電力で、電力変換装置120を動作させ、駆動電動機を駆動して走行を継続できる。しかし、この場合、車両に搭載できる電力蓄電手段150の数量、および電力蓄電手段150に蓄電できる電力量には限りがあるため、これにより走行を継続できる距離には制限があると考えられる。さらに、発電手段110が健全なときでも、発電手段110により発電された電力を電力変換装置120に伝達する電力伝達手段に異常が発生し、かつその異常が全ての電力変換装置120に伝達できない箇所(発電手段の直後等)に発生した場合についても、鉄道車両の走行を続けることが難しくなる。
【0011】
本発明は、複数の電力供給手段を設備した鉄道編成車両の駆動システムおいて、鉄道車両の駆動システムの冗長性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
編成車両に複数の電源装置を設け、前述の複数の電源装置を複数の電力供給手段を介して接続し、各電源装置は、前述の複数の電力供給手段に電力を出力するとき、複数の電力供給手段のいずれか、または任意の複数の電力供給手段に電力を出力することを可能とする第一の系統選択器と接続され、各電源装置について出力電圧または出力電流を制御可能な電源制御装置を備え、複数の第一の系統選択手段により複数の前記電源装置が同一の電力供給手段と接続された場合には、一方の電源制御装置は接続された電力供給手段の電圧を制御し、他方の電源制御装置は接続された電力供給手段の電流を制御し、2つの第一の系統選択手段により2つの前記電源装置が互いに異なる電力供給手段と接続された場合には、一方の電源制御装置は接続された電力供給手段の電圧を制御し、他方の電源制御装置は接続された電力供給手段の電圧を制御する。さらに、駆動システムを構成するインバータ手段は、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択することを可能とする第二の系統選択器を設備しても良い。同じく、駆動システムを構成する補助電源手段は、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択することを可能とする第三の系統選択器を設備しても良い。
【0013】
また、本発明によれば、複数の電力発生手段が発電する電力の負担割合を、鉄道編成車両全体で必要な電力量に応じて変化させても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の電力供給手段をもつ鉄道編成車両の駆動システムにおいて、冗長性が高く、かつ高効率な鉄道編成車両の駆動システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の鉄道車両の駆動システムにおける一実施形態の機器構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態における第一の系統選択器の詳細を示す図。
【図3】本発明の一実施形態における第二および第三の系統選択器の詳細を示す図。
【図4】本発明の一実施形態におけるインバータ装置,補助電源装置に電力を供給する第一の方式を示す図。
【図5】本発明の一実施形態におけるインバータ装置,補助電源装置に電力を供給する第二の方式を示す図。
【図6】本発明の一実施形態におけるインバータ装置,補助電源装置に電力を供給する第三の方式を示す図。
【図7】従来の鉄道車両駆動システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施例〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明していく。
【0017】
図1は、本発明の鉄道車両の駆動システムにおける一実施形態の機器構成を示す図である。
【0018】
車両1a,1b,1c,1dは、列車編成を構成する車両の一部である。車両1aは車間連結器114a、車両1bは車間連結器14b、車両1cは車間連結器14c、車両1dは車間連結器14dを、車両1aと車両1bは車間連結器14a、車両1bと車両1cは車間連結器14c、車両1cと車両1dは車間連結器14c、さらに車両1dと次位車両間との間は車間連結器14dを備えており、互いの車両を連結している。
【0019】
車両1aは、台車2aを介して輪軸3a,3bにより、また、台車2bを介して輪軸3c,3dにより、図示していないレール面上に支持されている。車両1bは、台車2cを介して輪軸3e,3fにより、また、台車2dを介して輪軸3g,3hにより、図示していないレール面上に支持されている。車両1cは、台車2eを介して輪軸3i,3jにより、また、台車2fを介して輪軸3k,3lにより、図示していないレール面上に支持されている。車両1dは、台車2gを介して輪軸3m,3nにより、また、台車2hを介して輪軸3o,3pにより、図示していないレール面上に支持されている。
【0020】
以下、車両1a,1b,1c,1d毎に、各車両に搭載する機器の構成について説明する。
【0021】
まず、車両1aの機器構成について説明する。
【0022】
車両1aには、電源装置6a,系統選択器8a,駆動システム制御装置11a,情報制御装置12a,電力供給手段(A)9a,電力供給手段(B)10a,情報伝送手段13aの各機器を設備する。
【0023】
電源装置6aは、編成車両内に搭載する駆動システムに電力を供給する。編成車両内の駆動システムは、列車の運行、即ち車両を加速,減速して乗客を安全かつ快適に輸送するために必要な機器設備であり、後述のインバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bがその代表である。電源装置6aから駆動システムへの電力供給は、電力供給手段(A)9a、電力供給手段(B)10aによりおこなう。隣接車両の車両1bは、車両1aと同様に、電力供給手段(A)9b,電力供給手段(B)10bを備え、電力供給手段(A)9aと電力供給手段(A)9bの間は電力供給手段連結器15aにより接続され、電力供給手段(B)10aと電力供給手段(B)10bの間は電力供給手段連結器15bにより接続される。
【0024】
電源装置6aから駆動システムに電力を供給する経路は、電力供給手段(A)9aと電力供給手段(B)10aの両方、あるいは電力供給手段(A)9aのみ、または電力供給手段(B)10aのみのいずれかを用いて構成される。これら3通りの電力供給経路は、系統選択器8aにより選択する。
【0025】
駆動システム制御装置11aは、電源装置6aが出力する電力を制御するとともに、前述した系統選択器8aにより駆動システムに電力を供給する経路を選択するため、図示していない切替装置23a,23b(ともに系統選択器8a内に設備する)の動作を制御する。
【0026】
情報制御装置12aは、駆動システム制御装置11aに対して制御指令を与えるとともに、駆動システム制御装置11aのもつ状態情報を集約する。また、情報制御装置12aは、隣接する車両1bに設備する情報制御装置12bと、情報伝送手段13a,13bを介して接続する。同様に、情報制御装置12bと車両1cに設備する情報制御装置12cは、情報伝送手段13b,13cを介して、情報制御装置12cと車両1dに設備する情報制御装置12dは、情報伝送手段13c,13dを介して接続する。これにより、情報制御装置12aは、情報伝送手段13a,13b,13c,13d、を経て編成内の他車両の情報制御装置12b,12c,12dとの間で共有できる。
【0027】
次に、車両1dの機器構成について説明する。
【0028】
車両1dには、電源装置6b,系統選択器8b,駆動システム制御装置11d,情報制御装置12d,電力供給手段(A)9d,電力供給手段(B)10d,情報伝送手段13dの各機器を設備する。
【0029】
電源装置6bは、編成車両内に搭載する駆動システムに電力を供給する。列車編成内の駆動システムは、列車の運行、即ち車両を加速,減速して乗客を安全かつ快適に輸送するために必要な機器設備であり、後述のインバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bがその代表である。電源装置6bから駆動システムへの電力供給は、電力供給手段(A)9d,電力供給手段(B)10dによりおこなう。隣接車両の車両1cは、車両1dと同様に、電力供給手段(A)9c,電力供給手段(B)10cを備え、電力供給手段(A)9dと電力供給手段(A)9cの間は電力供給手段連結器15cにより接続され、電力供給手段(B)10dと電力供給手段(B)10cの間は電力供給手段連結器15cにより接続される。
【0030】
電源装置6bから駆動システムに電力が供給される経路は、電力供給手段(A)9dと電力供給手段(B)10dの両方、あるいは電力供給手段(A)9dのみ、または電力供給手段(B)10dのみ、のいずれかを用いて構成される。これら3通りの電力供給経路は、系統選択器8bで選択する。
【0031】
駆動システム制御装置11dは、電源装置6bが出力する電力を制御するとともに、前述した系統選択器8bにより駆動システムに電力を供給する経路を選択するため、図示していない切替装置23a,23b(ともに系統選択器8b内に設備する)の動作を制御する。
【0032】
情報制御装置12dは、駆動システム制御装置11dに対して制御指令を与えるとともに、駆動システム制御装置11dのもつ状態情報を集約する。また、情報制御装置12dは、隣接する車両1cに設備する情報制御装置12cと、情報伝送手段13d,13cを介して接続する。
【0033】
同様に、情報制御装置12cと車両1bに設備する情報制御装置12bは、情報伝送手段13c,13bを介して接続され、情報制御装置12bと車両1aに設備する情報制御装置12aは、情報伝送手段13b,13aを介して接続される。これにより、情報制御装置12dは、情報伝送手段13d,13c,13b,13a、を経て編成内の他車両の情報制御装置12c,12b,12aとの間で情報を共有できる。
【0034】
次に、車両1bの機器構成について説明する。
【0035】
車両1bには、インバータ装置4a,補助電源装置5a,系統選択器8c,駆動システム制御装置11b,情報制御装置12b,電力供給手段(A)9b,電力供給手段(B)10b,情報伝送手段13bがそれぞれ設備されている。
【0036】
インバータ装置4aは、電力供給手段(A)9bと電力供給手段(B)10bの両方、あるいは電力供給手段(A)9bのみ、または電力供給手段(B)10bのみにより供給される直流電力を3相交流電力に変換して、図示していない電動機を駆動する。電動機の出力は、図示していない動力伝達手段を介して、輪軸3e,3f,3g,3hの全て、またはいずれかを駆動して車両1bに加速力・減速力を与える。
【0037】
補助電源装置5aは、電力供給手段(A)9bと電力供給手段(B)10bの両方、あるいは電力供給手段(A)9bのみ、または電力供給手段(B)10bのみにより供給される直流電力を、列車の運行に必要な補機に電力を供給するための三相交流電力に変換する。列車の運行に必要な補機とは、おもに車内照明,空調,情報機器である。これらの機器の多くは商用交流電源仕様(三相交流400V程度)に準拠しており、補助電源装置5aの出力も三相交流400V程度を想定する。また、前述の商用交流電源は、直流変換した上で蓄電池に充電し、駆動システム制御装置11,情報制御装置12に代表される制御装置の制御電源として使うことも考えられる。
【0038】
インバータ装置4aを動作させる電力は、電力供給手段(A)9bと電力供給手段(B)10bの両方、あるいは電力供給手段(A)9bのみ、または電力供給手段(B)10bのみにより供給されるが、これら3通りの電力供給経路は、系統選択器8cで選択する。同様に、補助電源装置5aを動作させるための、3通りの電力供給経路についても系統選択器8cで選択する。
【0039】
駆動システム制御装置11bは、図示していない電動機を駆動するインバータ装置4a,補機に電力を供給する補助電源装置5aを制御するとともに、前述した系統選択器8cにより駆動システムに電力を供給する経路を選択するため、図示していない切替装置23c,23d,23e,23f(いずれも系統選択器8c内に設備する)の動作を制御する。
【0040】
情報制御装置12bは、駆動システム制御装置11bに対して制御指令を与えるとともに、駆動システム制御装置11bのもつ状態情報を集約する。また、情報制御手段12bは、隣接する車両1aに設備する情報制御装置12aと、情報伝送手段13b,13aを介して接続する。同様に、情報制御手段12bと車両1cに設備する情報制御装置12cは、情報伝送手段13b,13cを介して、情報制御装置12cと車両1dに設備する情報制御装置12dは、情報伝送手段13c,13dを介して接続する。これにより、情報制御装置12bは、情報伝送手段13a,13b,13c,13d、を経て編成内の他車両の情報制御装置12a,12c,12dとの間で情報を共有できる。
【0041】
次に、車両1cの機器構成について説明する。
【0042】
車両1cには、インバータ装置4b,補助電源装置5b,系統選択器8d,駆動システム制御装置11c,情報制御装置12c,電力供給手段(A)9c,電力供給手段(B)10c,情報伝送手段13cがそれぞれ設備されている。
【0043】
インバータ装置4bは、電力供給手段(A)9cと電力供給手段(B)10cの両方、あるいは電力供給手段(A)9cのみ、または電力供給手段(B)10cのみにより供給される直流電力を3相交流電力に変換して、図示していない電動機を駆動する。電動機の出力は、図示していない動力伝達手段を介して、輪軸3i,3j,3k,3lの全て、またはいずれかを駆動して車両1cに加速力・減速力を与える。
【0044】
補助電源装置5bは、電力供給手段(A)9cと電力供給手段(B)10cの両方、あるいは電力供給手段(A)9cのみ、または電力供給手段(B)10cのみにより供給される直流電力を、列車の運行に必要な補機に電力を供給するための三相交流電力に変換する。列車の運行に必要な補機とは、おもに車内照明,空調,情報機器である。これらの機器の多くは商用交流電源仕様(三相交流400V程度)に準拠しており、補助電源装置5bの出力も三相交流400V程度を想定する。また、前述の商用交流電源は、直流変換した上で蓄電池に充電し、駆動システム制御装置11,情報制御装置12に代表される制御装置の制御電源に利用として使うことも考えられる。
【0045】
インバータ装置4bを動作させる電力は、電力供給手段(A)9cと電力供給手段(B)10cの両方、あるいは電力供給手段(A)9cのみ、または電力供給手段(B)10dのみにより供給されるが、これら3通りの電力供給経路は、系統選択器8dで選択する。同様に、補助電源装置5bを動作させるための、3通りの電力供給経路についても系統選択器8dで選択する。
【0046】
駆動システム制御装置11cは、図示していない電動機を駆動するインバータ装置4b,補機に電力を供給する補助電源装置5bを制御するとともに、前述した系統選択器8dにより駆動システムに電力を供給する経路を選択するため、図示していない切替装置23c,23d,23e,23f(いずれも系統選択器8dに設備する)の動作を制御する。
【0047】
情報制御装置12cは、駆動システム制御装置11cに対して制御指令を与えるとともに、駆動システム制御装置11cのもつ状態情報を集約する。また、情報制御手段12cは、隣接する車両1dに設備する情報制御装置12dと、情報伝送手段13c,13dを介して接続する。同様に、情報制御手段12cと車両1bに設備する情報制御装置12bは、情報伝送手段13c,13bを介して、情報制御装置12bと車両1aに設備する情報制御装置12aは、情報伝送手段13b,13aを介して接続する。これにより、情報制御装置12cは、情報伝送手段13a,13b,13c,13d、を経て編成内の他車両の情報制御装置12a,12b,12dとの間で情報を共有できる。
【0048】
本発明における鉄道編成車両の駆動用電源システムとしては、一般に用いられている、 (1)地上側の発電設備から架線等の給電設備を通じて車両に供給される電力を収集する集電装置
(2)車両上に搭載された軽油などを燃料として発電されるエンジン発電機
を想定しているが、将来の技術革新によりエネルギ密度,パワー密度等の機器仕様の向上を実現できた際には、
(3)車両上に搭載された水素などを燃料として発電される燃料電池システム
(4)車両上に搭載されたリチウムイオン電池などの蓄電システム
を用いることも考えられる。
【0049】
なお、本発明における複数の電源装置6a,6bは、同一種類の上記した駆動用電源システムを適用することができるが、複数の電源装置6a,6bの一部、あるいは全てが異なる種類の駆動用電源システムを適用することも可能である。異なる種類の駆動用電源システムを適用した場合には、複数の駆動用電源システムからの給電が同時に不可能となるリスクを低減することができる。例えば、一方の駆動用電源システムとして集電装置、他方の駆動用電源システムとしてエンジン発電機を適用した場合には、編成車両は架線等の給電設備が設置されていない区間をエンジン発電機による電力で走行可能であり、架線の異常時にもエンジン発電機による電力で走行可能である。
【0050】
本発明によれば、編成車両に複数の電源装置を設け、前述の複数の電源装置を複数の電力供給手段を介して接続し、さらに、各電源装置は、前述の複数の電力供給手段に電力を出力する際に第一の系統選択器により、複数の電力供給手段のいずれか、または任意の複数の電力供給手段に電力を出力することを選択できる。また、駆動システムを構成するインバータ手段は、第二の選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。さらに、駆動システムを構成する補助電源手段は、第三の系統選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。
【0051】
また、本発明によれば、複数の電源装置が発電する電力の負担割合を、鉄道編成車両全体で必要な電力量に応じて変化させることができる。このため、例えば、鉄道編成車両全体で必要な電力量が極めて小さい場合は、ある特定の電源装置で鉄道編成車両全体に必要な電力量を負担し、他の電源装置を停止させることにより、電源装置が動作することによる機器損失を低減できるという効果も得られる。
【0052】
すなわち、複数の電力供給手段をもつ鉄道編成車両の駆動システムにおいて、これらの電力供給手段より得られる電力の供給先である駆動システムを効果的に選択する機能を設けることにより、冗長性が高く、かつ高効率な鉄道編成車両の駆動システムを提供できる。
【0053】
図2は、本発明の一実施形態における第一の系統選択器の詳細を示す図である。
【0054】
電源装置6は、交流電源17,電力変換器18,平滑コンデンサ19,電圧検出器20,平滑リアクトル21a,21b,電流検出器22a,22bで構成する。
【0055】
交流電源17としては、(1)車両上に設備され、軽油などを燃料にディーゼルエンジンで発電機を駆動して得られる三相交流電力、(2)車両外部から架線,集電装置を経由して車両上に取り込まれる単相交流電力、などを想定している。
【0056】
電力変換器18は、交流電源17が発生した電力をもとに、これを直流電力に変換する。平滑コンデンサ19と、平滑リアクトル21a,21bにより、フィルタ回路(低域通過フィルタ)を構成し、それらの定数を適切に選択して電力変換器18で発生した変換リップルを軽減して、電力供給手段(A)9,電力供給手段(B)10に供給する。電圧検出器20より得られる電圧情報、電流検出器22a,22bより得られる電流情報は、それぞれ駆動システム制御装置11に入力され、電力変換器18において直流部の電力を制御するために必要な制御データとして使う。
【0057】
系統選択器8は、切替装置23a,23bで構成する。電源装置6で発生した電力を、電力供給手段(A)9に供給するときは、切替装置23aをオン(通流状態)にする。
【0058】
電源装置6で発生した電力を、電力供給手段(B)10に供給するときは、切替装置23bをオン(通流状態)にする。この切替装置23a,23bのオン/オフの各状態を組み合わせることで、電源装置6から駆動システムに電力が供給される経路を、電力供給手段(A)9と電力供給手段(B)10の両方、あるいは電力供給手段(A)9のみ、または電力供給手段(B)10のみのいずれかに決定できる。
【0059】
本発明によれば、編成車両に複数の電源装置を設け、前述の複数の電源装置を複数の電力供給手段を介して接続し、さらに、各電源装置は、前述の複数の電力供給手段に電力を出力する際に第一の系統選択器により、複数の電力供給手段のいずれか、または任意の複数の電力供給手段に電力を出力することを選択できる。
【0060】
すなわち、複数の電力供給手段をもつ鉄道編成車両の駆動システムにおいて、これらの電力供給手段より得られる電力の供給先である駆動システムを効果的に選択する機能を設けることにより、冗長性の高い鉄道編成車両の駆動システムを提供できる。
【0061】
図3は、本発明の一実施形態における第二,第三の系統選択器の詳細を示す図である。
【0062】
系統選択器8は、切替装置23a,23b,23c,23dで構成する。
【0063】
切替装置23aがオンのとき、電力供給手段(A)9からインバータ装置4に電力が供給される。
【0064】
切替装置23bがオンのとき、電力供給手段(B)10からインバータ装置4に電力が供給される。
【0065】
切替装置23cがオンのとき、電力供給手段(A)9から補助電源装置5に電力が供給される。
【0066】
切替装置23dがオンのとき、電力供給手段(B)10から補助電源装置5に電力が供給される。
【0067】
すなわち、切替装置23a,23bのオン/オフ組合せにより、インバータ装置4の電力供給源を、電力供給手段(A)9と電力供給手段(B)10の両方、あるいは電力供給手段(A)9のみ、または電力供給手段(B)10のみのいずれかに決定できる。また、切替装置23c,23dのオン/オフ組合せにより、補助電源装置5の電力供給源を、電力供給手段(A)9と電力供給手段(B)10の両方、あるいは電力供給手段(A)9のみ、または電力供給手段(B)10のみのいずれかに決定できる。
【0068】
インバータ装置4は、インバータ回路26,平滑コンデンサ19a,電圧検出器20a,平滑リアクトル21a,電流遮断機24a,減流抵抗器25a,電流検出器22aで構成する。
【0069】
インバータ装置4の入力電力は、電力供給手段(A)9と電力供給手段(B)10の両方、あるいは電力供給手段(A)9のみ、または電力供給手段(B)10のみにより供給され、系統選択器8で選択する。
【0070】
電流遮断器24aは、減流抵抗器25aへの電流通流可否を選択する。以下、その動作を説明する。
【0071】
インバータ装置4を動作させないとき、電流遮断器24aを開放しておく。
【0072】
インバータ装置4を動作させるとき、まず切替装置23a,23bの両方、またはいずれかを投入することにより、インバータ装置4に電力を供給する予定の電力供給系に接続する。このとき、電源装置6から供給される電力を、まず減流抵抗器25aを経由して平滑コンデンサ19aに充電する。平滑コンデンサ19aの充電により、その両端電圧が電力供給系の電圧に漸近したことを確認して電流遮断器24aを投入する。これにより、電力供給系からインバータ回路26の電力供給が完了し、インバータ回路26のスイッチング動作をはじめることで、図示していない電動機の駆動が開始される。電圧検出器20aは、前述のように平滑コンデンサ19aの両端電圧を測定する。電流検出器22aは、電力供給系からインバータ装置4に入力される電流量を測定する。電圧検出器20aより得られる電圧情報,電流検出器22bより得られる電流情報は、それぞれ駆動システム制御装置11に入力され、インバータ回路26において図示していない電動機の制御に必要な制御データとして使う。
【0073】
補助電源装置5は、補助電源回路27,平滑コンデンサ19b,電圧検出器20b,平滑リアクトル21b,電流遮断機24b,減流抵抗器25b,電流検出器22bで構成する。
【0074】
補助電源装置5の入力電力は、電力供給手段(A)9と電力供給手段(B)10の両方、あるいは電力供給手段(A)9のみ、または電力供給手段(B)10のみにより供給され、系統選択器8で選択する。
【0075】
電流遮断器24bは、減流抵抗器25bへの電流通流可否を選択する。以下、その動作を説明する。
【0076】
補助電源装置5を動作させないとき、電流遮断器24bを開放しておく。
【0077】
補助電源装置5を動作させるときは、まず切替装置23c,23dの両方、またはいずれかを投入することにより、補助電源装置5に電力を供給する予定の電力供給系に接続する。このとき、電源装置6から供給される電力は、まず減流抵抗器25bを経由して平滑コンデンサ19bに充電する。平滑コンデンサ19bの充電により、その両端電圧が電力供給系の電圧に漸近したことを確認して電流遮断器24bを投入する。これにより、電力供給系から補助電源回路27に電力供給が完了し、補助電源回路27のスイッチング動作をはじめることで、図示していない補機への電力供給が開始される。電圧検出器20bは、前述のように平滑コンデンサ19bの両端電圧を測定する。電流検出器22bは、電力供給系から補助電源装置5に入力される電流量を測定する。電圧検出器20bより得られる電圧情報,電流検出器22bより得られる電流情報は、それぞれ駆動システム制御装置11に入力され、補助電源回路27において図示していない補機の制御に必要な制御データとして使う。
【0078】
本発明によれば、駆動システムを構成するインバータ手段は、第二の系統選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。さらに、駆動システムを構成する補助電源手段は、第三の系統選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。
【0079】
すなわち、複数の電力供給手段をもつ鉄道編成車両の駆動システムにおいて、これらの電力供給手段より得られる電力の供給先である駆動システムを効果的に選択する機能を設けることにより、冗長性の高い鉄道編成車両の駆動システムを提供できる。
【0080】
図4は、本発明の一実施形態におけるインバータ装置,補助電源装置に電力を供給する第一の方式を示す図である。
【0081】
電源装置6aと、電源装置6bは、電力供給手段(A)9を介して互いに接続する。この電力供給経路は、系統選択器8a,8bを構成する切替装置により設定する。
【0082】
インバータ装置4aは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9から電力の供給を受ける。インバータ装置4bは、系統選択器8dを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9から電力の供給を受ける。
【0083】
補助電源装置5aは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9から電力の供給を受ける。補助電源装置5bは、系統選択器8dを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9から電力の供給を受ける。
【0084】
上記の構成により、電源装置6aが出力する電力と、電源装置6bが出力する電力は、電力供給手段(A)9を介して、インバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bの全てに供給できる。例えば、電力供給手段(B)10が故障などにより利用できないとき、上記の構成を確立すれば各機器に電力を供給できるため、非常走行モードとして利用できる。このとき、電源装置6aと電源装置6bからの電力が集中するため、電力供給手段(A)9の電気的仕様によっては、電力供給手段(A)9の許容電流仕様を超過することが考えられる。このとき、インバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bへの供給電力を制限して、非常走行モードとして必要最小限の走行性能(最大出力)による連続走行を可能とするように設計することで、車両の立ち往生を防ぐことは可能と考えられる。
【0085】
また、図4の構成においては、電源装置6aと電源装置6bが電力供給手段(A)9を介して接続されているため、電源装置6aと電源装置6bの電力制御は、両者の干渉を防ぐために機能分担することが望ましい。例えば、電源装置6aは、電力供給手段(A)9の電圧を規定する定電圧(AVR)制御,電源装置6bは、電力供給手段(A)9への供給電流を補償する定電流(ACR)制御をすることにより、電源装置6aと電源装置6bの制御干渉を回避する方法が考えられる。これらの制御方式の概略を以下に示す。
【0086】
駆動システム制御装置11aは、電源装置6aの電力を制御する定電圧(AVR)制御部を備える。直流部電圧指令Vdc_refと、電圧検出器20aで検出した直流部電圧Vdcの差分ΔVdcを加減算器28aで演算し、ΔVdcをゼロに漸近させる電源装置6aの動作指令Ipaを安定化制御器29aで演算する。
【0087】
駆動システム制御装置11dは、電源装置6bの電力を制御する定電流(ACR)制御部を備える。直流部電流指令Idc_refと、電流検出器22aで検出した直流部電流Idcの差分ΔVdcを加減算器28bで演算し、ΔIdcをゼロに漸近させる電源装置6bの動作指令Ipbを安定化制御器29bで演算する。
【0088】
本発明によれば、編成車両に複数の電源装置を設け、前述の複数の電源装置を複数の電力供給手段を介して接続し、さらに、各電源装置は、前述の複数の電力供給手段に電力を出力する際に第一の系統選択器により、複数の電力供給手段のいずれか、または任意の複数の電力供給手段に電力を出力することを選択できる。また、駆動システムを構成するインバータ手段は、第二の選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。さらに、駆動システムを構成する補助電源手段は、第三の系統選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。
【0089】
また、本発明によれば、複数の電源装置が発電する電力の負担割合を、鉄道編成車両全体で必要な電力量に応じて変化させることができる。このため、例えば、鉄道編成車両全体で必要な電力量が極めて小さい場合は、ある特定の電力発生手段で鉄道編成車両全体に必要な電力量を負担し、他の電源装置を停止させることにより、電源装置が動作することによる機器損失を低減できるという効果も得られる。
【0090】
すなわち、複数の電力供給手段をもつ鉄道編成車両の駆動システムにおいて、これらの電力供給手段より得られる電力の供給先である駆動システムを効果的に選択する機能を設けることにより、冗長性の高く、かつ高効率な鉄道編成車両の駆動システムを提供できる。
【0091】
図5は、本発明の一実施形態におけるインバータ装置,補助電源装置に電力を供給する第二の方式を示す図である。
【0092】
電源装置6aと、電源装置6bは、電力供給手段(A)9、および電力供給手段(B)10を介して互いに接続する。この電力供給経路は、系統選択器8a,8bを構成する切替装置により設定する。
【0093】
インバータ装置4aは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9と、電力供給手段(B)10の両方から電力の供給を受ける。インバータ装置4bは、系統選択器8dを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9と、電力供給手段(B)10の両方から電力の供給を受ける。
【0094】
補助電源装置5aは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9と、電力供給手段(B)10の両方から電力の供給を受ける。補助電源装置5bは、系統選択器8dを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9と、電力供給手段(B)10の両方から電力の供給を受ける。
【0095】
上記の構成により、電源装置6aが出力する電力と、電源装置6bが出力する電力は、電力供給手段(A)9、および電力供給手段(B)10、を介して、インバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bの全てに供給できる。2系統の電力供給手段により、電源装置6aと電源装置6bの電力負担量を調整しながら、インバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bに供給できるため、例えば、インバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bが消費する電力が小さいうちは、電源装置6bを停止し、電源装置6aだけで負担することで、電源装置6a,6bの小電力動作を回避して機器損失を低減できる。また、電源装置6a,6bのうち一方が故障して利用できなくなったときは、健全な電源装置のみでインバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bに電力供給できる。このとき、一方の電源装置だけでインバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bに電力を供給するため、通常の走行に必要な電力を供給できない場合も考えられる。このとき、インバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bへの供給電力を制限して、非常走行モードとして必要最小限の走行性能(最大出力)による連続走行を可能とするように設計することで、車両の立ち往生を防ぐことは可能と考えられる。
【0096】
また、本図5の構成においては、複数の電力供給手段を介して、電源装置6aと電源装置6bからインバータ装置4a,4bおよび補助電源装置5a,5bへ電力を供給するため、電流経路が分散される。そのため、大電流をインバータ装置4a,4bおよび補助電源装置5a,5bへ供給することが可能となる。
【0097】
また、図5の構成においては、電源装置6aと電源装置6bが電力供給手段(A)9と、電力供給手段(B)10を介して接続されているため、電源装置6aと電源装置6bの電力制御は、両者の干渉を防ぐために機能分担することが望ましい。例えば、電源装置6aは、電力供給手段(A)9,電力供給手段(B)10の電圧を規定する定電圧(AVR)制御、電源装置6bは、電力供給手段(A)9,電力供給手段(B)10への供給電流を補償する定電流(ACR)制御をすることにより、電源装置6aと電源装置6bの制御干渉を回避する方法が考えられる。これらの制御方式の概略を以下に示す。
【0098】
駆動システム制御装置11aは、電源装置6aの電力を制御する定電圧(AVR)制御部を備える。直流部電圧指令Vdc_refと、電圧検出器20aで検出した直流部電圧Vdcの差分ΔVdcを加減算器28aで演算し、ΔVdcをゼロに漸近させる電源装置6aの動作指令Ipaを安定化制御器29aで演算する。
【0099】
駆動システム制御装置11dは、電源装置6bの電力を制御する定電流(ACR)制御部を備える。直流部電流指令Idc_refと、電流検出器22a,電流検出器22bで検出した電流の合計値である直流部電流Vdcの差分ΔIdcを加減算器28bで演算し、ΔIdcをゼロに漸近させる電源装置6bの動作指令Ipaを安定化制御器29bで演算する。
【0100】
本発明によれば、編成車両に複数の電源装置を設け、前述の複数の電源装置を複数の電力供給手段を介して接続し、さらに、各電源装置は、前述の複数の電力供給手段に電力を出力する際に第一の系統選択器により、複数の電力供給手段のいずれか、または任意の複数の電力供給手段に電力を出力することを選択できる。また、駆動システムを構成するインバータ手段は、第二の選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。さらに、駆動システムを構成する補助電源手段は、第三の系統選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。
【0101】
また、本発明によれば、複数の電源装置が発電する電力の負担割合を、鉄道編成車両全体で必要な電力量に応じて変化させることができる。このため、例えば、鉄道編成車両全体で必要な電力量が極めて小さい場合は、ある特定の電源装置で鉄道編成車両全体に必要な電力量を負担し、他の電源装置を停止させることにより、電源装置が動作することによる機器損失を低減できるという効果も得られる。
【0102】
すなわち、複数の電力供給手段をもつ鉄道編成車両の駆動システムにおいて、これらの電力供給手段より得られる電力の供給先である駆動システムを効果的に選択する機能を設けることにより、冗長性の高く、かつ高効率な鉄道編成車両の駆動システムを提供できる。
【0103】
図6は、本発明の一実施形態におけるインバータ装置,補助電源装置に電力を供給する第三の方式を示す図である。
【0104】
電源装置6aは、電力供給手段(A)9と、電源装置6bは、電力供給手段(B)10とそれぞれ接続する。この電力供給経路は、系統選択器8a,8bを構成する切替装置により設定する。
【0105】
インバータ装置4aは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9から電力の供給を受ける。インバータ装置4bは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(B)10から電力の供給を受ける。
【0106】
補助電源装置5aは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(A)9から電力の供給を受ける。補助電源装置5bは、系統選択器8cを構成する切替装置の設定により、電力供給手段(B)10から電力の供給を受ける。
【0107】
上記の構成により、電源装置6aが出力する電力は、電力供給手段(A)9を介して、インバータ装置4a,補助電源装置5aに供給する。また、電源装置6bが出力する電力は、電力供給手段(B)10を介して、インバータ装置4b,補助電源装置5bに供給する。すなわち、電源装置毎に電力を供給する機器(インバータ装置4,補助電源装置5)を固定することにより、電源装置6a,電源装置6bの負担する電力を平準化できる。また、インバータ装置4a,4b,補助電源装置5a,5bのうちいずれかひとつが故障して利用できないとき、少なくともインバータ装置,補助電源装置の各一台に電力を供給できる。このとき、2台の電源装置のいずれか、または2台のインバータ装置のいずれか動作できない。このため、通常の走行に必要な電力を供給できない場合も考えられるが、非常走行モードとして必要最小限の走行性能(最大出力)による連続走行を可能とするように設計することで、車両の立ち往生を防ぐことは可能と考えられる。
【0108】
また、図6の構成においては、電源装置6aは電力供給手段(A)9,電源装置6bは電力供給手段(B)10と、電力の供給先が独立しているため、電源装置6aと電源装置6bの電力制御の機能分担は必ずしも必要ではない。例えば、電源装置6aは、電力供給手段(A)9の電圧を規定する定電圧(AVR)制御を行い、電源装置6bは、電力供給手段(B)10の電圧を規定する定電圧(AVR)制御を行うことができる。これらの制御方式の概略を以下に示す。
【0109】
駆動システム制御装置11aは、電源装置6aの電力を制御する定電圧(AVR)制御部を備える。直流部電圧指令Vdc_refと、電圧検出器20aで検出した直流部電圧Vdcの差分ΔVdcを加減算器28aで演算し、ΔVdcをゼロに漸近させる電源装置6aの動作指令Ipaを安定化制御器29aで演算する。
【0110】
駆動システム制御装置11dは、電源装置6aの電力を制御する定電圧(AVR)制御部を備える。直流部電圧指令Vdc_refと、電圧検出器20bで検出した直流部電圧Vdcの差分ΔVdcを加減算器28bで演算し、ΔVdcをゼロに漸近させる電源装置6aの動作指令Ipaを安定化制御器29bで演算する。
【0111】
本発明によれば、編成車両に複数の電源装置を設け、前述の複数の電源装置を複数の電力供給手段を介して接続し、さらに、各電源装置は、前述の複数の電力供給手段に電力を出力する際に第一の系統選択器により、複数の電力供給手段のいずれか、または任意の複数の電力供給手段に電力を出力することを選択できる。また、駆動システムを構成するインバータ手段は、第二の選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。さらに、駆動システムを構成する補助電源手段は、第三の系統選択器により、各々電力の供給を受ける電力系統を前述の複数の電力供給手段から任意に選択できる。
【0112】
また、本発明によれば、複数の電源装置が発電する電力の負担割合を、鉄道編成車両全体で必要な電力量に応じて変化させることができる。このため、例えば、鉄道編成車両全体で必要な電力量が極めて小さい場合は、ある特定の電源装置で鉄道編成車両全体に必要な電力量を負担し、他の電源装置を停止させることにより、電源装置が動作することによる機器損失を低減できるという効果も得られる。
【0113】
すなわち、複数の電力供給手段をもつ鉄道編成車両の駆動システムにおいて、これらの電力供給手段より得られる電力の供給先である駆動システムを効果的に選択する機能を設けることにより、冗長性の高く、かつ高効率な鉄道編成車両の駆動システムを提供できる。
【符号の説明】
【0114】
1 車両
2 台車
3 輪軸
4 インバータ装置
5 補助電源装置
6 電源装置
8 系統選択器
9 電力供給手段(A)
10 電力供給手段(B)
11 駆動システム制御装置
12 情報制御装置
13 情報伝送手段
14 車両連結器
15 電力供給手段連結器
16 情報伝送手段連結器
17 交流電源
18 電力変換器
19 コンデンサ
20 電圧検出器
21 リアクトル
22 電流検出器
23 切替装置
24 電流遮断機
25 減流抵抗器
26 インバータ回路
27 補助電源回路
28 加減算器
29 安定化制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両により構成される鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
電力を供給する複数の電源装置と、
前記複数の電源装置を接続する複数の電力供給ラインと、
前記電力を電圧/周波数可変交流電力に変換する電力変換手段と、前記交流電力で駆動され車両の牽引力を発生する交流電動機と、
車両の補助機器への電力を供給する補助電源装置と、
前記複数の電源装置に各々接続され、前記電源装置と前記複数の電力供給ラインのいずれか一つ、または任意の前記複数の電力供給ラインを接続可能に構成され、当該接続した一つまたは複数の電力供給ラインに電力を出力することを可能とする複数の第一の系統選択器と、
複数の前記電源装置の各々について出力電圧または出力電流を制御可能な複数の電源制御装置と、を備え、
前記複数の第一の系統選択手段により複数の前記電源装置が同一の前記電力供給ラインと接続された場合には、一方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電圧を制御し、他方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電流を制御し、
前記複数の第一の系統選択手段により複数の前記電源装置が互いに異なる前記電力供給ラインと接続された場合には、一方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電圧を制御し、他方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電圧を制御することを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項2】
請求項1の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記電力変換手段へ電力を供給する電力系統を前記複数の電力供給ラインから任意に選択することを可能とする第二の系統選択器を設備することを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項3】
請求項1の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記補助電源装置へ電力を供給する電力系統を前記複数の電力供給ラインから任意に選択することを可能とする第三の系統選択器を備えることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項4】
請求項1の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記電力変換手段へ電力を供給する電力系統を前記複数の電力供給ラインから任意に選択することを可能とする第二の系統選択器と、
前記補助電源装置へ電力を供給する電力系統を前述の複数の電力供給ラインから任意に選択することを可能とする第三の系統選択器を備えることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項5】
請求項2の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第二の系統選択器は、少なくとも前記複数の電源装置のいずれか一つと前記複数の電力変換手段のいずれか一つとが、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項6】
請求項3の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第三の系統選択器は、少なくとも前記複数の電源装置のいずれか一つと前記複数の補助電源装置のいずれか一つとが、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項7】
請求項4の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第二の系統選択器は、少なくとも前記複数の電源装置のいずれか一つと前記複数の電力変換手段のいずれか一つとが、前記電力供給ラインを介して接続されるように、経路選択を行い、
前記第一の系統選択器および前記第三の系統選択器は、少なくとも前記複数の電源装置のいずれか一つと前記複数の補助電源装置のいずれか一つとが、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項8】
請求項2の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第二の系統選択器は、少なくとも前記複数の電源装置のいずれか一つと前記複数の電力変換手段の全てとが、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項9】
請求項3の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第三の系統選択器は、少なくとも前記複数の電源装置のいずれか一つと前記複数の電力変換手段の全てとが、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項10】
請求項4の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第二の系統選択器および前記第三の系統選択器は、前記複数の電力変換手段の全てと、前記複数の補助電源手段の全てと、前記複数の電源装置の少なくとも一つとが、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項11】
請求項2または4の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第二の系統選択器は、前記複数の電源装置が、それぞれ異なる前記電力変換手段と、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項12】
請求項3または4の鉄道編成車両の駆動システムにおいて、
前記第一の系統選択器および前記第三の系統選択器は、前記複数の電源装置が、それぞれ異なる前記補助電源装置と、前記電力供給ラインを介して接続される経路選択を可能とすることを特徴とする鉄道編成車両の駆動システム。
【請求項13】
複数の車両により構成される鉄道編成車両において、
架線からの電力を供給する第一の電源装置と、エンジンにより駆動される発電機により電力を供給する第二の電源装置と、
前記第一の電源装置と前記第二の電源装置を接続する複数の電力供給ラインと、
少なくとも前記複数の電力供給ラインのいずれかと接続されて、前記電力を電圧/周波数可変交流電力に変換する電力変換手段と、
前記交流電力で駆動され車両の牽引力を発生する交流電動機と、
少なくとも前記複数の電力供給ラインのいずれかと接続されて、車両の補助機器への電力を供給する補助電源装置と、
前記第一及び第二の電源装置に各々接続され、前記電源装置と前記複数の電力供給ラインの間に接続され、任意の前記電源装置と任意の前記電力供給ラインとを接続可能な2つの第一の系統選択器と、
前記第一及び第二の電源装置の各々について出力電圧または出力電流を制御可能な2つの電源制御装置と、
を備え、
前記2つの第一の系統選択手段により2つの前記電源装置が同一の前記電力供給ラインと接続された場合には、一方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電圧を制御し、他方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電流を制御し、
前記2つの第一の系統選択手段により2つの前記電源装置が互いに異なる前記電力供給ラインと接続された場合には、一方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電圧を制御し、他方の前記電源制御装置は接続された前記電力供給ラインの電圧を制御することを特徴とする鉄道編成車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−85465(P2013−85465A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257032(P2012−257032)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2010−65418(P2010−65418)の分割
【原出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】