鉄骨用連結金具
【課題】ボルト・ナット締め作業によって、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結を簡単に、かつ効率的に実施可能にする。
【解決手段】方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片1、水平片2、折曲部3およびリップガイド切欠4を有し、水平片2とともに垂直片1の下部を前記リップ溝型鋼7の対向する一対のリップ7a,7b間からそのリップ溝型鋼7内へ挿入して水平回動することにより、リップガイド切欠4内にリップ7a,7bが嵌り込んで、垂直片1が前記リップ7a,7b上に起立保持されるような構成である。
【解決手段】方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片1、水平片2、折曲部3およびリップガイド切欠4を有し、水平片2とともに垂直片1の下部を前記リップ溝型鋼7の対向する一対のリップ7a,7b間からそのリップ溝型鋼7内へ挿入して水平回動することにより、リップガイド切欠4内にリップ7a,7bが嵌り込んで、垂直片1が前記リップ7a,7b上に起立保持されるような構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結にL字金具が広く用いられている。このL字金具は、例えば前記リップ溝形鋼どうしが直交する部位に添接され、この添接部にボルトを通してナット締めすることによりリップ溝型鋼どうしが連結される。しかし、このようなL字金具の添接およびボルト、ナット締めによる連結構造によれば、その連結作業が容易であるものの、L字金具および両リップ溝型鋼相互間の位置ずれや移動を完全になくすることができないという不都合がある。また、前記ナット(またはボルト)を締め付けた後も、L字金具が移動するなどの不都合があった。
【0003】
一方、リップ溝形鋼同士を垂直に突合わせ、位置ずれしないように連結する鉄骨連結構造が、例えば特許文献1に示されている。この鉄骨連結構造においては、骨材の交差する部分を、図13に示すように、鋼材を屈曲して形成したL形金具51を用いて連結している。このL字形金具51は一方の屈曲片51aをリップ溝形鋼52の所定位置に溶接54して固定し、他方の屈曲片51bをリップ溝形鋼55にボルト53で固定している。これによればL字形金具51の屈曲片51aとリップ溝型鋼52とは溶接によって固定されているので、これら相互間での位置ズレや移動は発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−291159公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の鉄骨連結構造にあっては、連結金具51は、L字状に曲折した曲折片51bをボルト53にて固定する際に、リップ溝形鋼55の裏面側に手を廻して図示しない当て金やナットを配置しなければならないために作業が煩雑となる。また、屈曲片51aは溶接にてリップ溝型鋼52に固定するために歪みが生じるとともに簡単に位置の変更ができないという問題ある。
【0006】
また、溶接作業では溶接時の火花が光フィルタ(遮光板)を通して目に入るほか、光フィルタを着けていない周囲の作業者の目に悪影響を及ぼす。また、リップ溝型鋼にはさび防止のために表面にメッキ加工が施されており、前記溶接によってメッキ効果が失われ、この溶接部付近に錆が発生し易くなる。更に、鉄骨の組付け現場へ溶接機などの設備を搬入したうえで、溶接専門の熟練者が作業を行わなければならず、組み付けの作業効率が悪いばかりか、作業コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熟練者による溶接作業をなくし、一般の組立の作業工でも簡単、確実に、かつ効率的に実、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結を施できるようにする鉄骨用連結金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る鉄骨用連結金具は、リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、前記垂直片と水平片とが連続する折曲部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、前記垂直片および水平片のそれぞれに貫通形成されたボルト孔と、を備え、前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする。
【0009】
この構成により、前記折曲部の幅方向の両端に形成されたリップガイド切欠内に、リップ溝型鋼の対向する二つのリップが嵌り込む。従って、水平片の幅方向の両端部が各リップの下端に密接するとともに、ガイド溝の下面が各リップの上面に接することとなる。この結果、ボルト・ナットを用いなくても、また溶接を行わなくても、垂直片をリップ面に対し垂直に起立した姿勢を保つように固定できる。従って、その垂直片がリップ面方向に倒れるようなことはない。また、この垂直片を、補助部材を介してまたは直接に鋼材からなる支柱等にボルト・ナットを用いて固定することで、前記リップ溝型鋼を前記支柱に簡単、確実に固定または保持させることができる。
【0010】
また、本発明に係る鉄骨用連結金具は、リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成され、その長手方向に短寸の垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、前記垂直片と水平片とが連続する曲折部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、前記水平片に貫通形成されたボルト孔と、を備え、前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする。
【0011】
これにより、前記垂直片自体を支柱などの鋼材に直接取り付けまたは接続しないような用途、例えばL字状等の補助部材を介して支柱などの鋼材に取り付ける場合等に有用となる。また、その垂直片の短寸化によって鉄骨用連結金具全体の鋼材使用量を減らすことができる。さらに、その短寸の垂直片を前記補助部材の位置決め用部材として利用でき、かつリップ溝型鋼材のリップ面に対し垂直に起立した姿勢を保つように固定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リップガイド切欠を折曲部に持つ鉄骨用連結金具の使用によって、組付け現場において、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結作業を、専門の熟練者による溶接によらずに、通常の組立作業工が容易かつ効率的に実施することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による鉄骨用連結金具を示す斜視図である。
【図2】図1に示す鉄骨用連結金具の正面図である。
【図3】図1に示す鉄骨用連結金具の側面図である。
【図4】図1に示す鉄骨用連結金具をリップ溝型鋼に取り付けた状態の正面図である。
【図5】図1に示す鉄骨用連結金具をリップ溝型鋼に取り付けた状態の側面断面図である。
【図6】図1に示す鉄骨用連結金具をリップ溝型鋼に取り付ける状態の平面図である。
【図7】本発明の他の実施形態による鉄骨用連結金具を示す斜視図である。
【図8】図1および図7に示す鉄骨用連結金具を用いてリップ溝型鋼どうしを連結する連結状態およびリップ溝型鋼を支柱に連結した実装状態を示す正面図である。
【図9】図8に示す連結状態および実装状態の下面図である。
【図10】図9におけるA‐A断面図である。
【図11】図9におけるB−B断面図である。
【図12】図9におけるC‐C断面図である。
【図13】従来の鉄骨連結構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による鉄骨用連結金具を、図1乃至図12を参照して説明する。
図1〜図3は、本実施の形態による鉄骨用連結金具の斜視図、正面図および側面図である。同図に示すように、この鉄骨用連結金具Kは方形の鋼板を長手方向(図3において、矢印X方向)にL字状に曲折したものからなり、この鋼板の曲折によって垂直片1と水平片2とが折曲部3で連続する構成となっている。この鉄骨用連結金具Kの表面には、錆止め用のメッキが施されている。
【0016】
水平片2は、これの幅方向の寸法L2が垂直片1の幅方向の寸法L1よりも小さく、これらの垂直片1と水平片2とが連続する折曲部3には、これの幅方向の両側縁から水平片1および垂直片2の幅方向における中心線に向かってリップガイド切欠4が切り込み形成されている。なお、前記寸法L1,L2は、後述のリップ溝型鋼の対向する二つのリップの間隔より大きい。また、対向する二つのリップガイド切欠4、4間の距離L3は、その二つのリップの間隔よりも僅かに小さい。
【0017】
また、折曲部3に形成されたリップガイド切欠4は、鉄骨用連結金具Kの板厚Dを4.5mmとした場合に、図に示すように、垂直片1側に形成される切欠面から水平片2の上面までの間隔d1が2mm、水平片2側に形成されたる切欠面から垂直片1側の側面(右側面)までの間隔d2が2mmに形成される。これらの間隔d1、d2は、リップ溝型鋼のリップの板厚より僅かに大きい値である。
【0018】
垂直片1には、この垂直片1および水平片2の幅方向における中心線に対して対称となる位置に1個ずつのボルト孔5が形成されている。同じく、水平片2にも、前記中心線に対して対称となる位置に1個ずつのボルト孔6が形成されている。なお、これらのボルト孔5,6の個数や形状は任意に決められる。
【0019】
かかる構成になる鉄骨用連結金具Kは、次のようにしてリップ溝型鋼に装着される。図4〜図6はその鉄骨用連結金具Kのリップ溝型鋼7に対する装着状態を示す。このリップ溝型鋼7は、全体として略C字状(またはコ字状)断面を持つ周知のチャンネル形態をなし、その幅方向の両端にリップ7a,7bを有する。これらのリップ7a,7bどうしは互いに平行に対向している。なお、このリップ溝型鋼7の板厚は2mm以下の、例えば1.9mm程度の鋼板からなる。このリップ溝型鋼7の表面には予め錆止め用のメッキが施されている。
【0020】
先ず、鉄骨用連結金具Kを、リップ7a,7bを上方に向けた状態のリップ溝型鋼7の上方にかざし、その向きを調整しながら、図6の鎖線Eに示す状態に保持する。また、リップ7a,7b間からリップ溝型鋼7内に、鉄骨用連結金具Kの水平片2と垂直片1の下部のみを挿し入れる。水平片2の上面がリップ7a,7b の下面に位置したとき、鉄骨用連結金具Kを鎖線Eの位置から矢印H方向に水平回動操作する。この水平回動操作により前記折曲部3にある各リップガイド切欠4が対向する各一のリップ7a,7bに嵌まり込み、鉄骨用連結金具Kが鎖線Fに示す状態となる。
【0021】
ここで更に、鉄骨用連結金具Kを水平回動操作し続けると、各リップガイド切欠4はリップ7a,7bにスムースに案内されながら矢印I方向に水平回動する。そして垂直片1がリング溝型鋼7の長手方向に対し直交する向きとなったとき、前記水平回動操作を止める。このとき、鉄骨用連結金具Kは実線Gで示す状態になる。これにより、水平片2における幅方向の両端部の上面がリップ7a,7bの下面に支えられて(当接されて)、垂直片1は水平片2方向とは反対方向への倒れが規制される。また、リップガイド切欠4の下面が各リップ7a,7bの上面に支えられて、垂直片1の水平片2方向への倒れが規制される。
【0022】
この場合において、リップガイド切欠4,4と各リップ7a,7bとの嵌合によって、鉄骨用連結金具Kのリング溝型鋼7に対する幅方向の大きなズレが防止され、相互間のガタツキを抑えることができる。リップガイド切欠4はリップ7a,7bに嵌合される関係になるため、垂直片1は、図6において、鎖線Eの位置に回動操作されなくなり、リップ溝型鋼7から脱落することはなく、鉄骨用連結金具Kがリップ溝型鋼7に安定的に保持される。
【0023】
図7は、本実施形態による他の鉄骨用連結金具Mを示す斜視図である。前記鉄骨用連結金具Kの垂直片1はそれ自体が他の鋼材等へのボルト止めに利用するものであるのに対し、この鉄骨用連結金具Mでは短寸の垂直片1Aとしている。従って、この垂直片1Aはこれ自体が他の鋼材等への取り付けに利用されるのではなく、水平片2と折曲部3とともに鉄骨用連結金具Mの強度を維持するように機能する。また、短寸の垂直片1Aは、リップ溝型鋼7Aを支柱へ取り付けるための後述のL字金具を位置決めする補助部材としても利用される。
【0024】
図8および図9は、前述の鉄骨用連結金具KおよびMを用いて、胴縁として用いられるリップ溝型鋼どうしを連結した状態と、リップ溝型鋼Mと他の鋼材(例えば、柱)を連結した状態を示す正面図および下面図である。また、図10、図11および図12は、図9におけるA-A断面図、B−B断面図およびC-C断面図であり、前記連結の構造を具体的に示している。これらのうち、図10は胴縁としてのリップ溝型鋼7Aを、鉄骨用連結金具Mを用いて、支柱としての鋼材8に取り付けた状態をなす。
【0025】
ここでは、リップ7a,7bを上方に向けた状態のリップ溝型鋼7A上で向きを調整しながら、図6について述べた方法と同様にして、リップ7a,7b間からリップ溝型鋼7A内に、鉄骨用連結金具Mの水平片2と垂直片1Aの下部のみを挿し入れる。そして、水平片2の上面がリップ7a,7bの下面に位置したとき、鉄骨用連結金具Mを回動操作する。
【0026】
この回動操作により折曲部3にある各リップガイド切欠4が対向する各一のリップ7a,7bに嵌まり込み、更に、これらのリップ7a,7bに案内されながら鉄骨用連結金具Mが水平回動する。そして垂直片1Aがリング溝型鋼7Aの長手方向に対し直交する向きとなったとき、前記回動操作を止める。これにより、垂直片1Aは水平片2における幅方向の両端の上面がリップ7a,7bの下面に支えられて水平片2方向とは反対方向への倒れが規制される。また、リップガイド切欠4の下面が各リップ7a,7bの上面に支えられて、垂直片1Aの水平片2方向への倒れが規制される。
【0027】
また、リップガイド切欠4はリップ7a,7bに嵌合される関係になるため、垂直片1Aは、前記とは逆方向に回動操作されない限り、リップ溝型鋼7から脱落することはなく、鉄骨用連結金具Mがリップ溝型鋼7に安定的に保持される。つまり、鉄骨用連結金具Mを前記逆方向に回動操作した場合には、鉄骨用連結金具Mをリップ溝型鋼7から任意に分離、分解することが可能になる。
【0028】
次に、鉄骨用連結金具Mの水平片2に対応する位置の両リップ7a、7b上に、別途用意された補強用のL字金具(補助部材)9の水平片9aを当接する。そして、水平片2に形成されたボルト孔6およびその水平片9aに設けられたボルト孔(図示しない)にボルト10を通して、その先にナット11をねじ込む。
【0029】
一方、そのL字金具9の垂直片9bを、支柱としての鋼材8の一側面に当接し、この垂直片9bと鋼材8とをボルト・ナット(図示しない)を用いて、または必要に応じて溶接により、連結する。これによりリップ溝型鋼7Aを鉄骨用連結金具Mを用いて鋼材8に対しガタツキなく堅固に固定することができる。
【0030】
図11は、2本のリップ溝型鋼7B,7Cを鋼材8に取り付けた構造を示す。ここでは、リップ溝型鋼7B,7Cを水平状態に保って各一端を対向させ、それぞれの一端部ごとの各リップ7a,7bに前述の方法、手順で鉄骨用連結金具Mを取り付ける。このとき、各鉄骨用連結金具Mの垂直片1A、1Aが互いに遠ざかる位置に向ける。そこで、前記垂直片1A,1A間に介在するように、幅広のL字金具12の水平片12aを、リップ溝型鋼7B,7Cの各リップ7a,7b上に載せる。
【0031】
また、各鉄骨用連結金具Mの水平片2およびL字金具12の水平片12aに設けられたボルト孔(図示しない)に水平片2の下方からボルト10を通し、水平片12a上に突出したボルト10の先にナット11を締め込む。更に、L字金具12の垂直片12bをボルト・ナットを用いて鋼材8に固着する。これにより、二つの鉄骨用連結金具Mを用いて2本のリップ溝型鋼7B,7Cが相互に連結されるとともに、支柱などの鋼材8に堅固に支持させることができる。
【0032】
図12は、胴縁としてのリップ溝型鋼7Cを間柱としてのリップ溝型鋼7Dに連結する構造を示す。ここでは、図7に示すような鉄骨用連結金具Mをリップ溝型鋼7Cの一端部に対して前述のように取り付け、一方、図1に示すような鉄骨用連結金具Kをリップ溝型鋼7Dの途中に前述の方法で取り付ける。続いて、鉄骨用連結金具Kの垂直片1をリップ溝型鋼7Cのリップ7a,7b上に載せる。このとき、垂直片1の上端縁(図上、左端縁)を鉄骨用連結金具Mの垂直片1Aの内側に衝き当てる。そして、この鉄骨用連結金具Mの水平片2とこれにリップ7a,7bを介して対向する鉄骨用連結金具Kの垂直片1の各ボルト孔(図示しない)に、水平片2の下部からボルト10を挿通し、垂直片1上に突出するボルト10の先にナット11をねじ込む。
【0033】
更に、鉄骨用連結金具Kの水平片2に対向する部位のリップ溝型鋼7Dのリップ7a,7b上に当て鋼板13を当接する。そして、この水平片2および当て鋼板13にボルト10を通して当て鋼板13から突出するボルト10の先にナット11をねじ込む。これにより、鉄骨用連結金具Mと鉄骨用連結金具Kとを用いて、間柱としてのリップ溝型鋼7Dに対し胴縁であるリップ溝型鋼7Cがボルト・ナットである締結部材によって簡単、迅速に取り付け可能となる。なお、図4、図5、図10〜図12では、各リップ溝型鋼7A〜7Dのリップ7a,7bを上方に向けた図とし、その上方を上側として説明を行ったが、実際の組み付けでは、リップ7a,7bを下方に向けて(天地が逆に)実装されるものである。
【0034】
このように、本実施形態の鉄骨用連結金具Kは、方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片1およびこの垂直片1より幅方向のサイズが小さい水平片2と、垂直片1と水平片2とが連続する曲折部3に、その垂直片1および水平片2の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼7のリップ7a,7b厚相当のリップガイド切欠4と、垂直片1および水平片2のそれぞれに貫通形成されたボルト孔5,6と、を備え、水平片2とともに垂直片1の下部を前記リップ溝型鋼7の対向する一対のリップ7a,7b間からそのリップ溝型鋼7内へ挿入して水平回動することにより、リップガイド切欠4内にリップ7a,7bが嵌り込んで、垂直片1が前記リップ7a、7b上に起立保持されるような構成とした。
【0035】
従って、鉄骨用連結金具Kの折曲部3における幅方向の両端に形成されたリップガイド切欠4内に、リップ溝型鋼7Aの対向する二つのリップ7a,7bが嵌り込み、水平片2の幅方向の両端部が各リップ7a,7bの下端に密接するとともに、リップップガイド切欠4の下面が各リップ7a,7bの上面に接する。この結果、垂直片1はリップ7a,7b面上に垂直に起立した姿勢を保ち、そのリップ7a,7b面方向に倒れるようなことはない。この垂直片1を、補助部材9を介してまたは直接に支柱である鋼材8にボルト・ナット10,11を用いて固定することで、リップ溝型鋼7を鋼材8等に簡単、確実に固定または保持させることができる。また、二つの鉄骨用連結金具Mを用いて二つのリップ溝型鋼7B,7Cを相互に確実かつ堅固に連結することができる。
【0036】
また、本実施形態の鉄骨用連結金具Mは、前記垂直片1を、前記水平片2に比べてその垂直片1および水平片2の長手方向に短寸としたことで、垂直片1自体を他の鋼材に直接取り付けまたは接続する必要がない用途に有用となり、その短寸化によって鉄骨用連結金具M全体の鋼材使用量を減らすことができる。合わせて、垂直片1をリップ溝型鋼7のリップ7a,7b面に対し垂直に起立した姿勢を保つように固定できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の鉄骨用連結金具は、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結を簡単に、かつ効率的に実施することができるという効果を有し、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具等に有用である。
【符号の説明】
【0038】
K,M…鉄骨用連結金具、1…垂直片、2…水平片、3…折曲部、4…リップガイド切欠、5,6…ボルト孔、7,7A〜7E…リップ溝型鋼、7a,7b…リップ、8…鋼材、9…L字金具(補助部材)、10…ボルト、11…ナット、12…L字状板(補助部材)、13…当て鋼板
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結にL字金具が広く用いられている。このL字金具は、例えば前記リップ溝形鋼どうしが直交する部位に添接され、この添接部にボルトを通してナット締めすることによりリップ溝型鋼どうしが連結される。しかし、このようなL字金具の添接およびボルト、ナット締めによる連結構造によれば、その連結作業が容易であるものの、L字金具および両リップ溝型鋼相互間の位置ずれや移動を完全になくすることができないという不都合がある。また、前記ナット(またはボルト)を締め付けた後も、L字金具が移動するなどの不都合があった。
【0003】
一方、リップ溝形鋼同士を垂直に突合わせ、位置ずれしないように連結する鉄骨連結構造が、例えば特許文献1に示されている。この鉄骨連結構造においては、骨材の交差する部分を、図13に示すように、鋼材を屈曲して形成したL形金具51を用いて連結している。このL字形金具51は一方の屈曲片51aをリップ溝形鋼52の所定位置に溶接54して固定し、他方の屈曲片51bをリップ溝形鋼55にボルト53で固定している。これによればL字形金具51の屈曲片51aとリップ溝型鋼52とは溶接によって固定されているので、これら相互間での位置ズレや移動は発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−291159公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の鉄骨連結構造にあっては、連結金具51は、L字状に曲折した曲折片51bをボルト53にて固定する際に、リップ溝形鋼55の裏面側に手を廻して図示しない当て金やナットを配置しなければならないために作業が煩雑となる。また、屈曲片51aは溶接にてリップ溝型鋼52に固定するために歪みが生じるとともに簡単に位置の変更ができないという問題ある。
【0006】
また、溶接作業では溶接時の火花が光フィルタ(遮光板)を通して目に入るほか、光フィルタを着けていない周囲の作業者の目に悪影響を及ぼす。また、リップ溝型鋼にはさび防止のために表面にメッキ加工が施されており、前記溶接によってメッキ効果が失われ、この溶接部付近に錆が発生し易くなる。更に、鉄骨の組付け現場へ溶接機などの設備を搬入したうえで、溶接専門の熟練者が作業を行わなければならず、組み付けの作業効率が悪いばかりか、作業コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熟練者による溶接作業をなくし、一般の組立の作業工でも簡単、確実に、かつ効率的に実、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結を施できるようにする鉄骨用連結金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る鉄骨用連結金具は、リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、前記垂直片と水平片とが連続する折曲部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、前記垂直片および水平片のそれぞれに貫通形成されたボルト孔と、を備え、前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする。
【0009】
この構成により、前記折曲部の幅方向の両端に形成されたリップガイド切欠内に、リップ溝型鋼の対向する二つのリップが嵌り込む。従って、水平片の幅方向の両端部が各リップの下端に密接するとともに、ガイド溝の下面が各リップの上面に接することとなる。この結果、ボルト・ナットを用いなくても、また溶接を行わなくても、垂直片をリップ面に対し垂直に起立した姿勢を保つように固定できる。従って、その垂直片がリップ面方向に倒れるようなことはない。また、この垂直片を、補助部材を介してまたは直接に鋼材からなる支柱等にボルト・ナットを用いて固定することで、前記リップ溝型鋼を前記支柱に簡単、確実に固定または保持させることができる。
【0010】
また、本発明に係る鉄骨用連結金具は、リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成され、その長手方向に短寸の垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、前記垂直片と水平片とが連続する曲折部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、前記水平片に貫通形成されたボルト孔と、を備え、前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする。
【0011】
これにより、前記垂直片自体を支柱などの鋼材に直接取り付けまたは接続しないような用途、例えばL字状等の補助部材を介して支柱などの鋼材に取り付ける場合等に有用となる。また、その垂直片の短寸化によって鉄骨用連結金具全体の鋼材使用量を減らすことができる。さらに、その短寸の垂直片を前記補助部材の位置決め用部材として利用でき、かつリップ溝型鋼材のリップ面に対し垂直に起立した姿勢を保つように固定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リップガイド切欠を折曲部に持つ鉄骨用連結金具の使用によって、組付け現場において、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結作業を、専門の熟練者による溶接によらずに、通常の組立作業工が容易かつ効率的に実施することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による鉄骨用連結金具を示す斜視図である。
【図2】図1に示す鉄骨用連結金具の正面図である。
【図3】図1に示す鉄骨用連結金具の側面図である。
【図4】図1に示す鉄骨用連結金具をリップ溝型鋼に取り付けた状態の正面図である。
【図5】図1に示す鉄骨用連結金具をリップ溝型鋼に取り付けた状態の側面断面図である。
【図6】図1に示す鉄骨用連結金具をリップ溝型鋼に取り付ける状態の平面図である。
【図7】本発明の他の実施形態による鉄骨用連結金具を示す斜視図である。
【図8】図1および図7に示す鉄骨用連結金具を用いてリップ溝型鋼どうしを連結する連結状態およびリップ溝型鋼を支柱に連結した実装状態を示す正面図である。
【図9】図8に示す連結状態および実装状態の下面図である。
【図10】図9におけるA‐A断面図である。
【図11】図9におけるB−B断面図である。
【図12】図9におけるC‐C断面図である。
【図13】従来の鉄骨連結構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による鉄骨用連結金具を、図1乃至図12を参照して説明する。
図1〜図3は、本実施の形態による鉄骨用連結金具の斜視図、正面図および側面図である。同図に示すように、この鉄骨用連結金具Kは方形の鋼板を長手方向(図3において、矢印X方向)にL字状に曲折したものからなり、この鋼板の曲折によって垂直片1と水平片2とが折曲部3で連続する構成となっている。この鉄骨用連結金具Kの表面には、錆止め用のメッキが施されている。
【0016】
水平片2は、これの幅方向の寸法L2が垂直片1の幅方向の寸法L1よりも小さく、これらの垂直片1と水平片2とが連続する折曲部3には、これの幅方向の両側縁から水平片1および垂直片2の幅方向における中心線に向かってリップガイド切欠4が切り込み形成されている。なお、前記寸法L1,L2は、後述のリップ溝型鋼の対向する二つのリップの間隔より大きい。また、対向する二つのリップガイド切欠4、4間の距離L3は、その二つのリップの間隔よりも僅かに小さい。
【0017】
また、折曲部3に形成されたリップガイド切欠4は、鉄骨用連結金具Kの板厚Dを4.5mmとした場合に、図に示すように、垂直片1側に形成される切欠面から水平片2の上面までの間隔d1が2mm、水平片2側に形成されたる切欠面から垂直片1側の側面(右側面)までの間隔d2が2mmに形成される。これらの間隔d1、d2は、リップ溝型鋼のリップの板厚より僅かに大きい値である。
【0018】
垂直片1には、この垂直片1および水平片2の幅方向における中心線に対して対称となる位置に1個ずつのボルト孔5が形成されている。同じく、水平片2にも、前記中心線に対して対称となる位置に1個ずつのボルト孔6が形成されている。なお、これらのボルト孔5,6の個数や形状は任意に決められる。
【0019】
かかる構成になる鉄骨用連結金具Kは、次のようにしてリップ溝型鋼に装着される。図4〜図6はその鉄骨用連結金具Kのリップ溝型鋼7に対する装着状態を示す。このリップ溝型鋼7は、全体として略C字状(またはコ字状)断面を持つ周知のチャンネル形態をなし、その幅方向の両端にリップ7a,7bを有する。これらのリップ7a,7bどうしは互いに平行に対向している。なお、このリップ溝型鋼7の板厚は2mm以下の、例えば1.9mm程度の鋼板からなる。このリップ溝型鋼7の表面には予め錆止め用のメッキが施されている。
【0020】
先ず、鉄骨用連結金具Kを、リップ7a,7bを上方に向けた状態のリップ溝型鋼7の上方にかざし、その向きを調整しながら、図6の鎖線Eに示す状態に保持する。また、リップ7a,7b間からリップ溝型鋼7内に、鉄骨用連結金具Kの水平片2と垂直片1の下部のみを挿し入れる。水平片2の上面がリップ7a,7b の下面に位置したとき、鉄骨用連結金具Kを鎖線Eの位置から矢印H方向に水平回動操作する。この水平回動操作により前記折曲部3にある各リップガイド切欠4が対向する各一のリップ7a,7bに嵌まり込み、鉄骨用連結金具Kが鎖線Fに示す状態となる。
【0021】
ここで更に、鉄骨用連結金具Kを水平回動操作し続けると、各リップガイド切欠4はリップ7a,7bにスムースに案内されながら矢印I方向に水平回動する。そして垂直片1がリング溝型鋼7の長手方向に対し直交する向きとなったとき、前記水平回動操作を止める。このとき、鉄骨用連結金具Kは実線Gで示す状態になる。これにより、水平片2における幅方向の両端部の上面がリップ7a,7bの下面に支えられて(当接されて)、垂直片1は水平片2方向とは反対方向への倒れが規制される。また、リップガイド切欠4の下面が各リップ7a,7bの上面に支えられて、垂直片1の水平片2方向への倒れが規制される。
【0022】
この場合において、リップガイド切欠4,4と各リップ7a,7bとの嵌合によって、鉄骨用連結金具Kのリング溝型鋼7に対する幅方向の大きなズレが防止され、相互間のガタツキを抑えることができる。リップガイド切欠4はリップ7a,7bに嵌合される関係になるため、垂直片1は、図6において、鎖線Eの位置に回動操作されなくなり、リップ溝型鋼7から脱落することはなく、鉄骨用連結金具Kがリップ溝型鋼7に安定的に保持される。
【0023】
図7は、本実施形態による他の鉄骨用連結金具Mを示す斜視図である。前記鉄骨用連結金具Kの垂直片1はそれ自体が他の鋼材等へのボルト止めに利用するものであるのに対し、この鉄骨用連結金具Mでは短寸の垂直片1Aとしている。従って、この垂直片1Aはこれ自体が他の鋼材等への取り付けに利用されるのではなく、水平片2と折曲部3とともに鉄骨用連結金具Mの強度を維持するように機能する。また、短寸の垂直片1Aは、リップ溝型鋼7Aを支柱へ取り付けるための後述のL字金具を位置決めする補助部材としても利用される。
【0024】
図8および図9は、前述の鉄骨用連結金具KおよびMを用いて、胴縁として用いられるリップ溝型鋼どうしを連結した状態と、リップ溝型鋼Mと他の鋼材(例えば、柱)を連結した状態を示す正面図および下面図である。また、図10、図11および図12は、図9におけるA-A断面図、B−B断面図およびC-C断面図であり、前記連結の構造を具体的に示している。これらのうち、図10は胴縁としてのリップ溝型鋼7Aを、鉄骨用連結金具Mを用いて、支柱としての鋼材8に取り付けた状態をなす。
【0025】
ここでは、リップ7a,7bを上方に向けた状態のリップ溝型鋼7A上で向きを調整しながら、図6について述べた方法と同様にして、リップ7a,7b間からリップ溝型鋼7A内に、鉄骨用連結金具Mの水平片2と垂直片1Aの下部のみを挿し入れる。そして、水平片2の上面がリップ7a,7bの下面に位置したとき、鉄骨用連結金具Mを回動操作する。
【0026】
この回動操作により折曲部3にある各リップガイド切欠4が対向する各一のリップ7a,7bに嵌まり込み、更に、これらのリップ7a,7bに案内されながら鉄骨用連結金具Mが水平回動する。そして垂直片1Aがリング溝型鋼7Aの長手方向に対し直交する向きとなったとき、前記回動操作を止める。これにより、垂直片1Aは水平片2における幅方向の両端の上面がリップ7a,7bの下面に支えられて水平片2方向とは反対方向への倒れが規制される。また、リップガイド切欠4の下面が各リップ7a,7bの上面に支えられて、垂直片1Aの水平片2方向への倒れが規制される。
【0027】
また、リップガイド切欠4はリップ7a,7bに嵌合される関係になるため、垂直片1Aは、前記とは逆方向に回動操作されない限り、リップ溝型鋼7から脱落することはなく、鉄骨用連結金具Mがリップ溝型鋼7に安定的に保持される。つまり、鉄骨用連結金具Mを前記逆方向に回動操作した場合には、鉄骨用連結金具Mをリップ溝型鋼7から任意に分離、分解することが可能になる。
【0028】
次に、鉄骨用連結金具Mの水平片2に対応する位置の両リップ7a、7b上に、別途用意された補強用のL字金具(補助部材)9の水平片9aを当接する。そして、水平片2に形成されたボルト孔6およびその水平片9aに設けられたボルト孔(図示しない)にボルト10を通して、その先にナット11をねじ込む。
【0029】
一方、そのL字金具9の垂直片9bを、支柱としての鋼材8の一側面に当接し、この垂直片9bと鋼材8とをボルト・ナット(図示しない)を用いて、または必要に応じて溶接により、連結する。これによりリップ溝型鋼7Aを鉄骨用連結金具Mを用いて鋼材8に対しガタツキなく堅固に固定することができる。
【0030】
図11は、2本のリップ溝型鋼7B,7Cを鋼材8に取り付けた構造を示す。ここでは、リップ溝型鋼7B,7Cを水平状態に保って各一端を対向させ、それぞれの一端部ごとの各リップ7a,7bに前述の方法、手順で鉄骨用連結金具Mを取り付ける。このとき、各鉄骨用連結金具Mの垂直片1A、1Aが互いに遠ざかる位置に向ける。そこで、前記垂直片1A,1A間に介在するように、幅広のL字金具12の水平片12aを、リップ溝型鋼7B,7Cの各リップ7a,7b上に載せる。
【0031】
また、各鉄骨用連結金具Mの水平片2およびL字金具12の水平片12aに設けられたボルト孔(図示しない)に水平片2の下方からボルト10を通し、水平片12a上に突出したボルト10の先にナット11を締め込む。更に、L字金具12の垂直片12bをボルト・ナットを用いて鋼材8に固着する。これにより、二つの鉄骨用連結金具Mを用いて2本のリップ溝型鋼7B,7Cが相互に連結されるとともに、支柱などの鋼材8に堅固に支持させることができる。
【0032】
図12は、胴縁としてのリップ溝型鋼7Cを間柱としてのリップ溝型鋼7Dに連結する構造を示す。ここでは、図7に示すような鉄骨用連結金具Mをリップ溝型鋼7Cの一端部に対して前述のように取り付け、一方、図1に示すような鉄骨用連結金具Kをリップ溝型鋼7Dの途中に前述の方法で取り付ける。続いて、鉄骨用連結金具Kの垂直片1をリップ溝型鋼7Cのリップ7a,7b上に載せる。このとき、垂直片1の上端縁(図上、左端縁)を鉄骨用連結金具Mの垂直片1Aの内側に衝き当てる。そして、この鉄骨用連結金具Mの水平片2とこれにリップ7a,7bを介して対向する鉄骨用連結金具Kの垂直片1の各ボルト孔(図示しない)に、水平片2の下部からボルト10を挿通し、垂直片1上に突出するボルト10の先にナット11をねじ込む。
【0033】
更に、鉄骨用連結金具Kの水平片2に対向する部位のリップ溝型鋼7Dのリップ7a,7b上に当て鋼板13を当接する。そして、この水平片2および当て鋼板13にボルト10を通して当て鋼板13から突出するボルト10の先にナット11をねじ込む。これにより、鉄骨用連結金具Mと鉄骨用連結金具Kとを用いて、間柱としてのリップ溝型鋼7Dに対し胴縁であるリップ溝型鋼7Cがボルト・ナットである締結部材によって簡単、迅速に取り付け可能となる。なお、図4、図5、図10〜図12では、各リップ溝型鋼7A〜7Dのリップ7a,7bを上方に向けた図とし、その上方を上側として説明を行ったが、実際の組み付けでは、リップ7a,7bを下方に向けて(天地が逆に)実装されるものである。
【0034】
このように、本実施形態の鉄骨用連結金具Kは、方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片1およびこの垂直片1より幅方向のサイズが小さい水平片2と、垂直片1と水平片2とが連続する曲折部3に、その垂直片1および水平片2の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼7のリップ7a,7b厚相当のリップガイド切欠4と、垂直片1および水平片2のそれぞれに貫通形成されたボルト孔5,6と、を備え、水平片2とともに垂直片1の下部を前記リップ溝型鋼7の対向する一対のリップ7a,7b間からそのリップ溝型鋼7内へ挿入して水平回動することにより、リップガイド切欠4内にリップ7a,7bが嵌り込んで、垂直片1が前記リップ7a、7b上に起立保持されるような構成とした。
【0035】
従って、鉄骨用連結金具Kの折曲部3における幅方向の両端に形成されたリップガイド切欠4内に、リップ溝型鋼7Aの対向する二つのリップ7a,7bが嵌り込み、水平片2の幅方向の両端部が各リップ7a,7bの下端に密接するとともに、リップップガイド切欠4の下面が各リップ7a,7bの上面に接する。この結果、垂直片1はリップ7a,7b面上に垂直に起立した姿勢を保ち、そのリップ7a,7b面方向に倒れるようなことはない。この垂直片1を、補助部材9を介してまたは直接に支柱である鋼材8にボルト・ナット10,11を用いて固定することで、リップ溝型鋼7を鋼材8等に簡単、確実に固定または保持させることができる。また、二つの鉄骨用連結金具Mを用いて二つのリップ溝型鋼7B,7Cを相互に確実かつ堅固に連結することができる。
【0036】
また、本実施形態の鉄骨用連結金具Mは、前記垂直片1を、前記水平片2に比べてその垂直片1および水平片2の長手方向に短寸としたことで、垂直片1自体を他の鋼材に直接取り付けまたは接続する必要がない用途に有用となり、その短寸化によって鉄骨用連結金具M全体の鋼材使用量を減らすことができる。合わせて、垂直片1をリップ溝型鋼7のリップ7a,7b面に対し垂直に起立した姿勢を保つように固定できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の鉄骨用連結金具は、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結を簡単に、かつ効率的に実施することができるという効果を有し、リップ溝型鋼どうしの連結やリップ溝形鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具等に有用である。
【符号の説明】
【0038】
K,M…鉄骨用連結金具、1…垂直片、2…水平片、3…折曲部、4…リップガイド切欠、5,6…ボルト孔、7,7A〜7E…リップ溝型鋼、7a,7b…リップ、8…鋼材、9…L字金具(補助部材)、10…ボルト、11…ナット、12…L字状板(補助部材)、13…当て鋼板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、
方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、
前記垂直片と水平片とが連続する曲折部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、
前記垂直片および水平片のそれぞれに貫通形成されたボルト孔と、
を備え、
前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする鉄骨用連結金具。
【請求項2】
リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、
方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成され、その長手方向に短寸の垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、
前記垂直片と水平片とが連続する曲折部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、
前記水平片に貫通形成されたボルト孔と、
を備え、
前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする鉄骨用連結金具。
【請求項1】
リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、
方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成された垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、
前記垂直片と水平片とが連続する曲折部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、
前記垂直片および水平片のそれぞれに貫通形成されたボルト孔と、
を備え、
前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする鉄骨用連結金具。
【請求項2】
リップ溝型鋼どうしの連結またはリップ溝型鋼と他の鋼材との連結に用いる鉄骨用連結金具であって、
方形の鋼板を長手方向にL字状に曲折して形成され、その長手方向に短寸の垂直片およびこの垂直片より幅方向のサイズが小さい水平片と、
前記垂直片と水平片とが連続する曲折部に、その垂直片および水平片の幅方向の中心線に向かって切り込まれた、リップ溝型鋼のリップ厚相当のリップガイド切欠と、
前記水平片に貫通形成されたボルト孔と、
を備え、
前記水平片とともに前記垂直片の下部を前記リップ溝型鋼の対向する一対のリップ間からそのリップ溝型鋼内へ挿入して水平回動することにより、前記リップガイド切欠内に前記リップが嵌り込んで、前記垂直片が前記リップ上に起立保持されることを特徴とする鉄骨用連結金具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−169006(P2011−169006A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32887(P2010−32887)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(599047929)松山鋼材株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(599047929)松山鋼材株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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