説明

鉛フリー太陽電池コンタクト

太陽電池の構成及び製造方法を開示する。本発明は、概して、固体部分と有機部分を含む混合物から作られる太陽電池コンタクトを提供するものであって、該太陽電池コンタクトは、該固体部分が、約85〜約99重量%の金属成分、及び約1〜約15重量%の鉛フリーガラス成分を含む。前面コンタクトと裏面コンタクトの両者が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛フリー及びカドミウムフリーのペースト組成物、及び太陽電池のコンタクト作成方法、さらには光電池の作製において使用する他の関連物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、通常、太陽光を有用な電気エネルギーに変換するシリコン(Si)のような半導体によって製造される。太陽電池は、一般的に、Siの薄ウェハーから作られ、このウェハーは好適なリン源からリン(P)をP型Siウェハーへと拡散することにより形成されるPN接合を要する。シリコンウェハーの太陽光が入射する側は、入射する太陽光の反射損失を防ぐため、通常反射防止膜(ARC)で覆われており、これによって太陽電池の効率が高められる。前面コンタクト(front−contact)として知られる二次元の電極グリッドパターンはN型シリコンへの連絡を形成し、もう一方の側(裏面コンタクト;back−contact)は、アルミニウム(Al)コーティングによってP型シリコンへと連絡する。また、銀リアコンタクト(silver−rear contact)として知られるコンタクトは、銀、又は銀−アルミニウムペーストにより作成され、シリコンのN側に印刷、焼成することで、タブを固くつなぎ、太陽電池モジュールにおいて一つのセルを次のセルへと電気的に連絡することを可能としている。これらのコンタクトは、PN接合部から外部へと出力するための電気的な出力路である。
【0003】
太陽電池コンタクトに用いられる従来のペーストは、鉛フリットを含んでいる。太陽電池ペーストのガラス成分中にPbOを含有することによって、(a)ペースト組成物の焼結温度を低く抑える、(b)シリコン基盤との促進作用、焼結の際にシリコンとの低い接触抵抗の形成を促進する、といった所望の効果が得られる。これら及び他の理由によって、PbOは、従来の太陽電池ペースト組成物における重要な成分となっている。しかしながら、環境問題への懸念から、ペースト組成物におけるPbO(同様にCdO)の使用は、現在、可能な限り強く忌避されている。このため、光電池産業においては、鉛フリー及びカドミウムフリーのペースト組成物、鉛フリー及びカドミウムフリーのガラスを用いた太陽電池コンタクトペーストとして好適な特性を与えることのできる組成物の必要性が存在する。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、太陽電池コンタクトのペースト原料に用いるための鉛フリー及びカドミウムフリーのガラス組成物を提供するものであって、これらは高性能(効率(η)及び曲線因子(FF)によって計測される)の太陽電池を得るための低い直列抵抗(R)及び高い並列抵抗(Rsh)を備えている。本発明には、概略、焼成前に、固体部分と有機部分とを含む混合物から作成される太陽電池コンタクトが含まれる。固体部分は、約85〜約99重量%の導電性金属成分、及び約1〜約15重量%の鉛フリーのガラス成分を含む。
【0005】
本発明の組成物及び方法は、コンタクト成分間(典型的にはシリコンと、Ag(前面コンタクト)、Al(裏面コンタクト)あるいはAg(銀リアコンタクト)のいずれかである)において、鉛フリーのガラス媒体を通じ、最適な相互作用、結合、及び接触の形成を促進することによって、従来技術の欠点を克服するものである。ガラス及び銀、あるいはガラス及びアルミニウムを含有する導電性のペーストは、シリコン基板上に印刷された後に焼成され、ガラスが熔融し、金属が焼結する。銀リアコンタクトにおいて、金属成分は銀、あるいは銀とアルミニウム粉末及び/又はフレークとの組み合わせを含んでいてもよい。焼成後、Ag/Siの導電性単独系統が形成され、バルクペーストとシリコンウェハーとの間に導電性のブリッジが得られる。前面コンタクトにおいて、温度変化により生じるガラス、金属及びシリコン間での反応の順序及び速度は、銀ペーストとシリコンウェハーとの間で低い抵抗のコンタクトを形成するための要因である。界面構造は、シリコン基盤、Ag/Si単独系統、絶縁性ガラス層内のAg沈殿物、及びバルク銀といった複数の相からなる。ガラスは、シリコン界面とバルク銀との間にほぼ連続した層を形成する。裏面コンタクトにおいては、焼成時に、液相エピタキシーによってシリコン基板上にp層を形成する。これは、アルミニウム−シリコン(Al−Si)溶融物が再び固化する間に生じる。高ビスマスの鉛フリー及びカドミウムフリーのガラスは、低温で比較的優れたフロー特性を示すことから、低温での焼成を可能にする。比較的高シリコン、低ビスマスの鉛フリー及びカドミウムフリーのガラスは、裏側のSiと過剰な相互作用を生じることがなく、裏面コンタクトとしての好ましい特性を与える。同様に、高ビスマスの鉛フリー及びカドミウムフリーのガラスは、Siと裏面Alの双方で最適な相互作用を生じ、裏側Si上での最適な鉛フリーの銀リアコンタクトを形成することが可能となる。
【0006】
本発明の上記及び他の特徴は、以下、さらに詳しく記載され、特に請求項や以下の記載(本発明における特定の具体的な実施例を詳細に説明している)において指摘されている。しかしながら、これらは本発明の原理が採用される多様な方法が少なからずあることを示している。
【発明の詳細な説明】
【0007】
概略、本発明は、焼成の前に、固体部分と有機部分とを含む混合物から作成される太陽電池コンタクトを提供するものであり、該固体部分は、約85〜約99重量%、好ましくは約88〜約96重量%の導電性金属成分、及び約1〜約15重量%、好ましくは約2〜約9重量%、さらに好ましくは約3〜約8重量%のガラス成分を含み、該ガラス成分は鉛及びカドミウムを含まない。また、本発明のいずれかの太陽電池を含むソーラーパネルも想定される。太陽電池コンタクトが前面コンタクトである場合、金属成分は好ましくは銀を含み、ガラス成分は約5〜約85モル%のBi、及び約1〜約70モル%のSiOを含む。前面コンタクトの形成に使用される組成物は、また、太陽電池の裏面コンタクトのバス・バー(銀リアコンタクト)の形成にも有用である。裏面コンタクトのAlも直接Siと連絡しているにもかかわらず、裏面での銀(又は銀−アルミニウム)リアコンタクトは、Si及びAl裏面コンタクト層の双方にコンタクトを形成する。裏面コンタクト中での銀リアコンタクトは、タブの太陽電池への連絡を強固にし、太陽電池モジュールにおいて一つのセルを次のセルへと連絡する。裏面コンタクトにおいて、金属成分は好ましくはアルミニウムを含み、ガラス成分は約5〜約55モル%のBi、約20〜約70モル%のSiO、及び約0.1〜約35モル%のBを含む。
【0008】
銀−及びガラス−含有の厚膜フィルムペーストは、光照射によって発生する電流を集電するため、シリコンベース太陽電池の前面コンタクトの形成に使用される。ペーストは一般的にスクリーン印刷で塗布されるものの、噴出、パッド印刷、及びホットメルト印刷のような方法も使用される。スクリーン印刷された前面コンタクトを有する太陽電池は、比較的低温(ウェハー温度550℃〜850℃、焼成炉の設定温度650℃〜1000℃)で焼成され、リンをドープしたシリコンウェハーのN側と銀ベースのペーストとの間に低い抵抗のコンタクトを形成する。また、ここでは太陽電池の製造方法も想定される。
【0009】
アルミニウム−、及びガラス含有の裏面コンタクトは、太陽電池裏側の低い抵抗のオーム接触形成に使用される。これは、Alドープ(p)エピタキシャル成長Si層の広範囲での溶融及び再固化により生じ、裏面電界の改善によって太陽電池性能を向上する。性能の最適化のため、厚いP再成長領域が理想的であると考えられている。また、エピタキシャル成長P層からの金属不純物の排除によって高キャリヤ寿命を生じるとも考えられている。これらの2つの因子は、開放電圧を増大し、より重要なことには、バルク抵抗の増加によって開放電圧がわずかにしか降下しない。したがって、Al裏面コンタクト中での実質的なエピタキシャル再成長P層の形成によって、太陽電池の性能が向上する。裏面コンタクトペースト中の鉛フリー及びカドミウムフリーガラスの相互作用によって、Siは最小化され、また、そのAlとの相互作用は固まりの無い連続したAl層の形成に十分であると考えられる。
【0010】
ペーストガラス。ペーストのガラス成分は、焼成前において、1種もしくはそれ以上のガラス組成物を含む。それぞれのガラス組成物は、Bi、及びSiOを最小限含む酸化物フリットを含有している。特に、本発明の各種実施例において、前面コンタクトのガラス組成物は表1に示される。裏面コンタクトのガラス組成物は、表2に示される。1種以上のガラス組成物を使用してもよく、また、同一表中の異なるカラムにおける量を含む組成物も想定される。使用されるガラス組成物の数に関係なく、ガラス成分中のBi及びSiOの総量は、好ましくは、約5〜約85モル%Bi、及び約1〜約70モル%SiOの範囲内である。第2のガラス組成物を用いる場合、シリコンとペーストとの相互作用の程度、及びこの結果得られる太陽電池特性を制御するために、ガラス組成物の組成を変化させることができる。例えば、ガラス成分中、第1及び第2のガラス組成物は、約1:20〜約20:1、好ましくは、約1:3〜約3:1の重量比で存在させることができる。好ましくは、ガラス成分は、鉛及び鉛の酸化物、カドミウム及びカドミウムの酸化物を含まない。
【表1】

【表2】

【0011】
表1及び表2の酸化物に加えて、追加の酸化物をガラス成分中に含んでいてもよく、例えば、Al,B,La,Y,Ga,In,Ce及びCrのうちの1種以上の三価の酸化物約1〜約20モル%、Ti,Zr及びHfのうちの1種以上の四価の酸化物約0.1〜約15モル%、P,Ta,Nb及びSbのうちの1種以上の五価の酸化物約0.1〜約20モル%を含んでいてもよい。AgOは、銀ペースト中の銀原料として、約0.1〜約12モル%含んでいてもよい。
【0012】
金属成分。太陽電池コンタクトにおいて、金属は導電性でなければならない。前面コンタクトにおいて、金属成分は銀を含んでいる。銀原料は、1又はそれ以上の銀金属又は銀合金の微粉末とすることができる。銀の一部は、酸化銀(AgO)、もしくは塩化銀(AgCl)、硝酸銀(AgNO)又は酢酸銀(AgOOCCH)のような銀塩として添加できる。ペーストに使用される銀粒子は、球状、フレーク状、又はコロイド懸濁液としての提供、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、ペーストの固体部分は、約80〜約99重量%の球状銀粒子、もしくは約75〜約90重量%の銀粒子、及び約1〜10重量%の銀フレークを含んでいてもよい。あるいは固体部分は、約75〜90重量%の銀フレーク、及び約1〜約10重量%のコロイダルシルバー、もしくは約60〜95重量%の銀粉末又は銀フレーク、及び約0.1〜約20重量%のコロイダルシルバーを含んでいてもよい。適当な市販の銀粒子の例として、球状銀粉末Ag3000−1、銀フレークSF−29、及びコロイダルシルバー懸濁液RDAGCOLBが挙げられ、これらはすべてFerro Corporation(オハイオ州クリーブランド)にて市販されている。
【0013】
裏面コンタクトにおいて、金属成分はアルミニウム又はアルミニウム合金を含んでいる。アルミニウム金属成分は、適当な形態で用いることができ、前面コンタクトの銀として以上に記載したようなものが含まれる。
【0014】
銀リアコンタクトにおいて、金属成分は、以上に記載したような銀又は銀及びアルミニウムペーストの組み合わせを含んでもよい。
【0015】
他の添加物。約30重量%まで、好ましくは約25重量%まで、さらに好ましくは約20重量%までの他の(例えば、無機の)添加物を、必要に応じて含んでいてもよい。リンは、前面コンタクトの抵抗を減少させるため、様々な方法によってペーストに添加することができる。例えば、ある種のガラスでは、粉末状又は酸化物フリット状でPとともに処理するか、あるいはリンを、リン酸エステル及びその他の有機リン化合物としてペーストへ添加することができる。より簡単には、ペーストの調製に先立って、リンを銀粒子の被覆物として添加できる。このような場合、ペースト化する前に、銀粒子は液状リン及び溶媒とともに混合される。例えば、約85〜約95重量%の銀粒子、約5〜約15重量%の溶媒、及び約0.5〜約10重量%の液状リンを混合し、溶媒を蒸発させる。リン被覆銀粒子の使用により、本発明のペーストにおけるリンと銀との緊密な混合が確実になされる。
【0016】
シリコン又は炭素微粉末、もしくはその両方のような他の添加物を、金属成分とシリコンとの反応を抑えるために添加することができる。例えば、これらの微粒子シリコン又は炭素粉は、銀の還元及び沈殿反応を抑えるために前面銀ペーストへと添加することができる。前面コンタクト及び銀リアコンタクトの両者の銀ペーストにおいて、Ag/Si界面又はバルクガラス中での銀の沈殿は、焼成雰囲気(例えば、N又はN/H/HO混合物フローでの焼成)の調整によっても抑えることができる。Pb、Bi、In、Ga、Sn、Zn、及びこれと少なくとも1種の他の金属との合金のような、低融点の金属添加物(すなわち、金属酸化物とは異なる元素金属添加物)の微粒子は、低温条件でコンタクトを提供するため、あるいは焼成温度範囲を拡大するために添加することができる。亜鉛は好適な金属添加物であり、亜鉛−銀合金は前面コンタクトにおいて最も好適である。
【0017】
(a)ガラスの混合物、(b)結晶性添加剤とガラスの混合物、あるいは(c)1種以上の結晶性添加剤の混合物を、所望の組成範囲でガラス成分中に処方して用いることができる。その目的は、接触抵抗を減少し、太陽電池の電気的性能を向上することにある。例えば、Bi,Sb,In,Ga,SnO,ZnO,SiO,ZrO,Al,B,V,Ta,各種アルミノケイ酸塩,12Bi・SiO,2Bi・SiO,3Bi・5SiO,Bi・4SiOのようなビスマスホウ酸塩,6Bi・SiO,Bi・SiO,2Bi・3SiOのようなビスマスケイ酸塩,Bi・2TiO,2Bi・3TiO,2Bi・4TiO,6Bi・TiOのようなビスマスチタン酸塩,MgO・V,SrO・V,CaO・V,BaO・V,ZnO・V,NaO・17V,KO・4V,2LiO・5Vのような各種バナジウム酸塩,6Bi・V,BiVO,2Bi・3V,BiVのようなビスマスバナジウム酸塩,6.5Bi・2.5V・TiOのようなビスマスバナジウムチタン酸塩,2ZnO・3TiOのような亜鉛チタン酸塩,ZnO・SiOのような亜鉛ケイ酸塩,ZrO・SiOのようなジルコニウムケイ酸塩等の第2相の結晶性材料、これらの反応性生物及びこれらの組み合わせを、コンタクト性能を調整するために、ガラス成分に添加してもよい。しかしながら、上記酸化物の総量は、ここに記載された各種実施例に特定された範囲内としなければならない。
【0018】
有機ビヒクル。ペーストは、ビヒクル又はキャリヤーを含み、これらは、一般に、溶媒に溶解した樹脂溶液であり、その多くは樹脂とチキソトロープ剤の両者を含む溶媒溶液である。ペーストの有機部分は、(a)少なくとも約80重量%の有機溶媒;(b)約15重量%までの熱可塑性樹脂;(c)約4重量%までのチキソトロープ剤;及び(d)約2重量%までの湿潤剤を含む。1種以上の溶媒、樹脂、チキソトロープ、及び/又は湿潤剤の使用も想定される。固体部分と有機部分の重量比は各種想定されるが、一実施例においては、固体部分と有機部分の重量比が、約20:1〜約1:20であり、好ましくは約15:1〜約1:15であり、より好ましくは約10:1〜1:10である。
【0019】
エチルセルロースは、一般的に用いられる樹脂である。しかしながら、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロース及びフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリル酸塩、およびエチレングリコールモノ酢酸のモノブチルエーテル等を用いることもできる。約130〜約350℃の沸点(1atm)を有する溶媒が好ましい。広く使用される溶媒としては、α又はβテルピネオールのようなテルペン、もしくは、Dowanol(登録商標;ジエチレングリコールモノエチルエーテル)のような高沸点アルコール、又はそれらとbutyl Carbitol(登録商標;ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、dibutyl Carbitol(登録商標;ジエチレングリコールジブチルエーテル)、butyl Carbitol acetate(登録商標;ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ヘキシレングリコール、Texanol(登録商標;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート)のような他の溶媒との混合物、並びにその他のアルコールエステル、ケロシンやフタル酸ジブチルがある。ビヒクルは、コンタクトを調整するために、例えば、ニッケル、リンもしくは銀をベースとする有機金属化合物を含有することができる。N−DIFFUSOL(登録商標)は、リン元素と同程度の拡散係数を持つn型拡散剤を含有する安定な液体製剤である。これらと他の溶媒との様々な組み合わせによって、それぞれの用途に求められる所望の粘度や揮発性を得ることができる。通常、厚膜ペースト処方に使用される他の分散剤、界面活性剤及び流動性改質剤を含んでいてもよい。このような製品の市販品は、以下の商標にて販売されている:Texanol(登録商標;Eastman Chemical Company,テネシー州キングスポート);Dowanol及びCarbitol(登録商標;Dow Chemical Co.,ミシシッピ州ミッドランド);Triton(登録商標;Union Carbide Division of Dow Chemical Co.,ミシシッピ州ミッドランド)、Thixatrol(登録商標;Elementis Company,ニュージャージー州ハイツタウン)、及びDiffusol(登録商標;Transene Co. Inc.,マサチューセッツ州ダンバー)。
【0020】
一般的に使用される有機チキソトロープ剤は、硬化ヒマシ油及びそれらの誘導体である。チキソトロープ剤は、懸濁液のずり流動化能を有する溶媒においてのみ好適であるため、常に必要とされるものではない。さらに、湿潤剤として脂肪酸エステル、例えば、N−タロー−1,3−ジアミノプロパンジオレート、N−タロートリメチレンジアミンジアセテート、N−ココトリメチレンジアミン、ベータジアミン、N−オレイルトリメチレンジアミン、N−タロートリメチレンジアミン及びN−タロートリメチレンジアミンジオレート、及びそれらの組み合わせが用いられる。
【0021】
以上の組成範囲は好適なものであって、これらの範囲に限定されるものではないことに注意すべきであり、当業者は製品の製造・形成において、特定の用途、特定の組成物及び条件に応じて、これらの組成範囲を変更し得ることを認識するであろう。
【0022】
ペースト組成物。本発明にかかるペーストは、3本ロールミルによって簡便に調製することができる。使用されるキャリアーの量及びタイプは、主に、最終的に必要とされる処方の粘性、ペーストの粉の細かさ、及びウェットプリントの厚さによって決定される。本発明にかかる組成物の調製においては、3本ロールミルのような適当な装置によって、微粒子無機固体をキャリアーと混合・分散し、懸濁液を生成する。この結果得られた組成物は、ブルックフィールドHTB型粘度計を用い、スピンドル14、25℃で測定したせん断速度9.6sec−1での粘性が、約100〜約500kcps、好適には約300〜約400kcpsとなる。
【0023】
ペーストのプリント及び焼成。以上のペースト組成物は、太陽電池コンタクトあるいは他の太陽電池部品の製造工程で用いられる。本発明の太陽電池コンタクトの形成方法においては、(1)シリコン基板に銀含有ペーストを塗布し、(2)ペーストを乾燥し、(3)ペーストを焼成して金属を焼結し、シリコンへのコンタクトを形成する工程、が含まれる。ペーストのプリントパターンは、炉設定温度約650〜950℃、又はウェハー温度約550〜850℃といった好適な温度で焼成される。好ましくは、炉設定温度は、約750〜930℃であり、ペーストは空気中で焼成される。焼成中、反射防止SiN層がガラスによって酸化、腐食され、Si基板との反応によってAg/Si単独系統が形成し、これがシリコンに対してエピタキシャルに結合していると考えられる。焼成条件は、シリコンウェハー上のシリコン/ペースト界面において、十分な密度のAg/Si単独系統を生成するために選択され、これが低い抵抗性、高い変換効率、高い曲線因子を有する前面コンタクト及び太陽電池の生産につながる。
【0024】
また、鉛フリー銀ペーストは、裏面Ag銀リアコンタクトの形成にも使用することができる。裏面Ag銀リアコンタクトの形成方法においては、(1)バス・バー構成中のシリコンウェハーのP側に銀ペーストを塗布し、(2)ペーストを乾燥し、(3)Al裏面コンタクトをプリント及び乾燥し、(4)以上で説明した銀前面コンタクトペーストを塗布及び乾燥し、(5)炉設定温度約650〜950℃、又はウェハー温度約550〜850℃といった好適な温度で、全3種のペーストを共焼成する工程、が含まれる。
【0025】
本発明の太陽電池裏面コンタクトの形成方法においては、(1)予め裏面銀リアコンタクトペーストが塗布、乾燥されたシリコンウェハーのP側にAl含有ペーストを塗布し、(2)ペーストを乾燥し、(3)前面コンタクト銀ペーストを塗布し、(4)前面コンタクト、銀リアコンタクト、及びAl裏面コンタクトを共焼成する工程、が含まれる。銀リアコンタクトAgペースト、Al裏面コンタクトペースト、及びAg前面コンタクトペーストがプリントされた太陽電池は、炉設定温度約650〜950℃、又はウェハー温度約550〜850℃といった好適な温度で焼成される。Al焼成時に、ウェハー温度がAl−Siの共融温度である577℃を超えると、裏面コンタクトAlは基板のSiを溶解し、液体Al−Si層を形成する。さらにピーク温度まで加熱する間、このAl−Si液体は基板Siを溶解し続ける。冷却の間、Al−Si溶融物からSiが沈殿する。この沈殿したSiは、Si基板上にエピタキシャル層として成長し、より純粋なp+層を形成する。溶融物の冷却が、Al−Siの共融温度に達すると、残部の液体はAl−Si共融層として凝固する。純粋なP+層によって裏面電界(BSF)が得られ、これにより太陽電池性能が向上すると考えられる。このため、Al裏面コンタクト中のガラスは、効果的なBSF層の形成に過度な悪影響を与えないように、Al及びSiとの相互作用を最適化すべきである。
【0026】
標準的なARCは、Siのような総称してSiNと呼ばれる窒化ケイ素等のシリコン化合物から作られ、通常、シリコン基板の前面コンタクト側にある。この層は絶縁体として働き、接触抵抗を増加させる傾向にある。したがって、ガラス成分によるこのARC層の腐食は、前面コンタクトの形成に必要な工程である。シリコンウェハーとペースト間の抵抗の減少は、太陽電池効率を向上し、前面コンタクトのAg/Si界面におけるエピタキシャルな銀/シリコンの導電性単独系統の形成によって促進される。すなわち、シリコン上の銀単独系統は、シリコン基板において見られるものと同様の結晶構造であると考えられる。これまでは、低抵抗のエピタキシャルな銀/シリコン界面を得るための加工条件においては、鉛含有ガラスを含むAgペーストの使用が含まれていた。ここに記載されるAgペースト及び製法によれば、鉛フリーの前面コンタクトの形成において、幅広い加工条件下−最小焼成温度約650℃から最大850℃(ウェハー温度)まで−で、(低抵抗を有するコンタクトの形成につながる)エピタキシャルな銀/シリコン界面の形成することが可能となる。本発明のペーストは空気中で焼成することができ、すなわち、特別な雰囲気条件は必要とされなない。
【0027】
シリコン太陽電池における低抵抗の鉛フリー前面コンタクトの形成は、技術的な挑戦を伴うものである。ペースト構成成分(銀金属、ガラス、添加剤、有機物)中の相互作用、及びペースト構成成分とシリコン基板間の相互反応は、両者ともに複雑であるが、制御しなければならない。急速な炉工程では、すべての反応が反応速度論に大きく依存するようになる。さらに、この興味深い反応は、P−N接合を保持するために、シリコンの非常に狭い領域内(<0.5ミクロン)で行われなければならない。同様に、シリコン太陽電池における鉛フリー裏面コンタクトの形成も、技術的な挑戦である。
【0028】
前面コンタクトの製造方法。本発明にかかる太陽電池の前面コンタクトは、表1に示される鉛フリー及びカドミウムフリーガラスを含む銀粉末を混合して得られるAgペーストを、Ag銀リアコンタクトペースト及びAl裏面ペーストをプレコーティングしたシリコン基板のN側に塗布することによって製造することでき、例えば、スクリーン印刷によって、約40〜80ミクロンの所望のウェット厚さとすることができる。
【0029】
銀リアコンタクトの製造方法。本発明にかかる太陽電池の銀リアコンタクトは、表1に示される鉛フリーガラスを含む銀又は銀合金粉末を混合して得られるAgペーストを、シリコン基板のP側に塗布することによって製造することでき、例えば、スクリーン印刷によって、約40〜80ミクロンの所望のウェット厚さとすることができる。
【0030】
裏面コンタクトの製造方法。本発明にかかる太陽電池の裏面コンタクトは、表2に示される鉛フリーガラスを含むアルミニウム粉末を混合して得られるAgペーストを、Ag銀リアコンタクトペーストをプレコーティングしたシリコン基板のP側に塗布することによって製造することでき、例えば、スクリーン印刷によって、約30〜50ミクロンの所望のウェット厚さとすることができる。
【0031】
以下は、前面コンタクト、裏面コンタクト及び銀リアコンタクトの製造において共通する。自動スクリーン印刷技術では、200−325メッシュスクリーンを使用することができる。その後、印刷パターンは、焼成の前に、200℃以下、好適には約120℃で約5−15分間乾燥される。乾燥された印刷パターンは、ピーク温度にて、最低1秒から最大約5分の間、ベルトコンベヤー式炉内、空気中で、銀リアコンタクトとAl裏面コンタクトペーストとともに共焼成することができる。
【0032】
窒素(N)又はその他の不活性雰囲気を必要に応じて用いてもよいが、必須ではない。焼成は、通常、有機物質の完全燃焼が可能な約300℃〜約550℃の温度プロフィールで行なわれ、約650℃〜約1000℃の炉設定温度ピークは、最低1秒間しか持続しないが、低温で焼成した場合には、1、3、及び5分程度のより長い焼成時間が可能である。例えば、3ゾーン焼成プロフィールを、ベルト速度約1〜約4m(40〜160インチ)/minで使用することができる。当然、4、5、6、又は7ゾーンもしくはそれ以上といった3ゾーン以上の焼成配列も本発明により想定され、それぞれのゾーンの長さは約5〜約20インチ、焼成温度は650〜1000℃である。
【実施例】
【0033】
実施例。12.5cm×12.5cm、厚さ250〜300μmの多結晶シリコンウェハーのSiのN側に窒化ケイ素反射防止膜を被覆した。これらのウェハーのシート抵抗は約1Ω−cmであった。本発明の鉛フリー及びカドミウムフリーガラスの例を表3に列記する。
【表3】

【0034】
表4に例示されるAg−あるいはAl−ペースト処方は、通常使用される2〜5μmの銀粉末又はフレーク、あるいは4〜10μmのアルミニウム粉末、及びFerro Corporation(クリーブランド,オハイオ州)より市販の有機ビヒクルV131,V132,V148,V205,及びV450とともに調製される。N−DiffusolはTransene Co.Incより市販されている。Anti−Tera204はBYK−Chemie GmbH(ヴェーゼル,ドイツ)より市販されている湿潤剤である。Cabosil(登録商標)は、Cabot Corporation(ビルリカ,マサチューセッツ州)より市販されているヒュームドシリカである。表4に示す量は、すべて固体部分及び有機部分を含むペーストの重量%である。
【0035】
【表4】

【0036】
表4に例示した鉛フリーペ−ストを、シリコン太陽電池の前面コンタクト、裏面銀リアコンタクト、又は裏面コンタクトとしてそれぞれプリントし、表5に示すように、その太陽電池性能について従来技術の鉛含有ペーストと比較した。その他の2つのペーストは、Ferro Corporation(クリーブランド,オハイオ州)より市販されている前面コンタクトペースト(CN33−462)、銀リアコンタクトペースト(3368,33−451又は33−466)、あるいは裏面コンタクトペースト(FX53−038,CN53−100又はCN53−101)を用いた。前面コンタクトパターンは、280メッシュスクリーンを使用し、フィンガーラインのオープニング100μm、ライン間のスペース約2.8mmでプリントした。銀リアコンタクト及び裏面コンタクトは、200メッシュスクリーンを用いてプリントした。プリントしたウェハーは、3ゾーン赤外線(IR)ベルト炉を使用し、約3m(120”)/minのベルト速度で、3つのゾーンの設定温度がそれぞれ780℃、810℃、930℃から970℃の条件で、共焼成した。ゾーンは、それぞれ長さ7”、16”、7”であった。ほとんどのサンプルの焼成後のフィンガー幅は、約120〜約170μmで、焼成後の厚さは、約10〜15μmであった。
【0037】
これらの鉛フリーペースト及び比較の先行技術の鉛含有ペーストは、以上に説明した焼成プロフィールにしたがい、並べて焼成した。これらの太陽電池の電気的性能は、Oriel Instrument Co.社(ストラトフォード,コネチカット州)のModel91193−1000を用いて、AM1.5の太陽光条件で、ASTMG−173−03に準じて測定した。得られた太陽電池の電気的性能は表5に示すとおりである。
【表5】

【0038】
先行技術のペースト3398,CN−33−462,FX53−038は、Ferro Corporation(クリーブランド,オハイオ州)より市販されている。Iscとは、出力電圧0で測定された短絡電流を意味し、Vocとは、出力電流0で測定された開回路電圧を意味する。R及びRshは前記定義の通りである。効率及び曲線因子は、当該分野において公知である。
【0039】
表5には、本発明の鉛フリーペーストによって、適当な従来技術の鉛含有ペーストを用いた場合と同程度の太陽電池性能が得られることが明確に示されている。
付加的な利点及び変更を、当業者は容易に思いつくであろう。このため、本発明は、その広範な態様において、本明細書に示され、記載された特定の詳細又は具体的実施例に限定されるものではない。したがって、添付の請求項及びその均等物により定義される全般的な発明概念の精神あるいはその範囲から逸脱しない限りにおいて、多様な変更を行ってよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物から作成されるコンタクトを含む太陽電池であって、焼成の前に、該混合物が、
a.固体部分と、
b.有機部分と、を含み、
c.該固体部分が、
i.導電性金属成分約85〜約99重量%と、
ii.ガラス成分約1〜約15重量%と、を含み、該ガラス成分が鉛を含まない
ことを特徴とする太陽電池
【請求項2】
請求項1の太陽電池コンタクトにおいて、該コンタクトが前面コンタクトであり、該金属成分が銀を含み、該ガラス成分が、Bi約5〜約85モル%と、SiO約1〜約70モル%とを含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項3】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、V約0.1〜約30モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項4】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、Al,B,La,Y,Ga,In,Ce及びCrからなる群から選ばれる元素の三価の酸化物約1〜約20モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項5】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、Ti,Zr及びHfからなる群から選ばれる元素の四価の酸化物約0.1〜約15モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項6】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、P,Ta,Nb及びSbからなる群から選ばれる元素の五価の酸化物約0.1〜約20モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項7】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、アルカリ酸化物約0.1〜約25モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項8】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、アルカリ土類酸化物約0.1〜約20モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項9】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、ZnO約0.1〜約25モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項10】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、AgO約0.1〜約12モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項11】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該固体部分が、Bi,Sb,In,Ga,SnO,ZnO,SiO,ZrO,Al,B,V,Ta,12Bi・SiO,2Bi・SiO,3Bi・5SiO,Bi・4SiO,6Bi・SiO,Bi・SiO,2Bi・3SiO,Bi・2TiO,2Bi・3TiO,2Bi・4TiO,6Bi・TiO,6Bi・V,BiVO,2Bi・3V,BiV,6.5Bi・2.5V・TiO,2ZnO・3TiO,ZnO・SiO,ZrO・SiO,MgO・V,SrO・V,CaO・V,BaO・V,ZnO・V,NaO・17V,KO・4V,2LiO・5V,これらの反応物及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる結晶性添加物をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項12】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該固体部分が、Pb,Bi,Zn,In,Ga,Sb及びこれらの合金からなる群から選ばれる金属約0.5〜約25重量%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項13】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該銀成分が、フレーク状、粉末状、又はコロイド粒子として存在する群から選ばれる銀を含み、該固体部分がさらにリンを含み、そのリンの少なくとも一部が銀フレーク、粉末、コロイド粒子の少なくとも一部の上に被覆されて存在していることを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項14】
請求項1に記載の太陽電池において、混合物から作成される銀リアコンタクトをさらに含み、焼成の前に、該混合物が、
a.固体部分と、
b.有機部分と、を含み、
c.該固体部分が、
i.導電性金属成分約85〜約99重量%と、
ii.ガラス成分約1〜約15重量%と、を含み、該ガラス成分が鉛を含まない
ことを特徴とする太陽電池
【請求項15】
請求項1の太陽電池コンタクトにおいて、該コンタクトが裏面コンタクトであり、該金属成分がアルミニウムを含み、該ガラス成分が、Bi約5〜約65モル%と、SiO約15〜約70モル%とを含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項16】
請求項15の太陽電池コンタクトにおいて、B約0.1〜約35モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項17】
請求項15の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、アルカリ酸化物約0.1〜約25モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項18】
請求項15の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、ZnO約0.1〜約25モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項19】
請求項15の太陽電池コンタクトにおいて、該ガラス成分が、TiO約0.1〜約10モル%をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
【請求項20】
請求項1に記載の太陽電池を含むことを特徴とするソーラーパネル。

【公表番号】特表2008−543080(P2008−543080A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514675(P2008−514675)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/018790
【国際公開番号】WO2006/132766
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(503468695)フエロ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】