説明

鉛含有汚泥の処理方法および鉛含有廃水の処理方法

【課題】廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減し生じる汚泥量を減容でき、高純度の鉛を効率よく回収でき、新たな廃棄物を生じない簡便な鉛含有廃水および鉛含有汚泥の処理方法。
【解決手段】鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離する工程(a)と、
該工程(a)の固液分離により得られる鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離する工程(b)とを含む鉛含有廃水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛含有汚泥の処理方法および鉛含有廃水の処理方法に関する。特に、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき、高純度の鉛を効率よく回収でき、かつ、新たな廃棄物を生じない簡便な鉛含有廃水の処理方法および鉛含有汚泥の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛および/またはその塩を含有する廃水(本発明において、「鉛含有廃水」という。)の処理方法として、該廃水に塩化第2鉄、硫酸第2鉄または水酸化アルミニウム等の凝集剤を加えて液性をアルカリ性に調整し、鉄、アルミニウムおよび鉛等の化合物を金属水酸化物に変換し、これら水酸化物の共沈現象を利用して、廃水から鉛を鉄、アルミニウムと共に分別する方法(水酸化物沈殿法、中和凝集沈殿法)が知られている(非特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、該方法では、鉛の排水基準(水質汚濁防止法第3条第1項および第12条に定められている0.1mg/L)を満たすためには、廃水に含まれる鉛含有量に対して凝集剤を数〜十数倍、少なくとも5〜6倍用いる必要があり(質量換算)、上記共沈現象により沈殿する汚泥(スラッジともいう)が、非常に大量となるうえ、該汚泥中の水酸化鉛の含有量も少ない(約10質量%)。
したがって、大量かつ含有量の低い鉛含有汚泥から鉛を効率よく簡易な工程(操作)で回収することは困難であり、かつ、エネルギー消費量が多く経済的ではないという問題がある。また大量の鉛含有汚泥を廃棄する場合には莫大なコストを要し、廃棄物減量という社会的動向にも反するという問題がある。
【0004】
一方、飛灰の処理方法としては、焼却炉又は溶融炉から排出される鉛等の重金属類を含有する飛灰に、酸を加えて鉛以外の重金属類を抽出した後、固液分離し、次いで、固液分離して得られる鉛を含む残渣に、可溶化剤を加えて鉛を抽出した後、固液分離し、さらに、固液分離して得られる濾液に、不溶化剤を加えて鉛を不溶化物とした後、固液分離することを特徴とする飛灰中の鉛の回収方法が知られている(特許文献1参照。)。しかし、一般に飛灰では鉛含有率が極めて低く(約数質量%)、この数〜十数倍の含有率を有する上記鉛含有廃水または汚泥を処理する場合には、経済的ではないと考えられる。また二次廃棄物を生じ、近年の環境対策上、好ましい工業的処理方法とはいえない。
【0005】
また、他の処理方法として、5つの工程からなることを特徴とする廃棄物の焼却施設または溶融施設から排出される飛灰の再資源化処理方法が知られている(特許文献2参照。)。該方法は、5つの工程からなり、かつ、各工程の操作が煩雑であり、工業的規模には適さない。
【0006】
【特許文献1】特開平10−204552号公報
【特許文献2】特開2001−47001号公報
【非特許文献1】「公害防止の技術と法規(水質編)」、社団法人産業環境管理協会、第5版(増補)、平成6年6月30日発行、p.140〜141
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
具体的には、本発明は、大量かつ含有量の低い鉛含有廃水または鉛含有汚泥から鉛を高純度で効率よく回収できる、鉛含有廃水または鉛含有汚泥の処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、新たな廃棄物を生じない工業的規模に適した簡便(経済的)な鉛含有廃水および鉛含有汚泥の処理方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき、鉛含有廃水から生じる汚泥を減容し該汚泥の鉛含有量を高くできる鉛含有廃水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鉛含有廃水および鉛含有汚泥の処理方法について、鋭意検討した結果、鉛含有廃水から水酸化物沈殿法等により得られる鉛含有汚泥に硫酸を加えて固液分離することにより、硫酸鉛として鉛を簡便でかつ高純度で効率よく回収でき、かつ、ろ液を廃水処理用凝集剤としても再利用できることを知見した。
また、鉛、鉄等の水酸化物共沈殿法により得られる鉛含有汚泥の生成量に比して、上記方法による汚泥の生成量は少なく汚泥の減容化が達成でき、また、該ろ液を廃水処理用凝集剤として再利用することにより、凝集剤の使用量が低減でき、新たな廃棄物が生じることなく、連続的な処理が可能となることを見出した。
本発明者らは、上記知見に基づき、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
【0010】
(1)鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離する工程(b)を含む鉛含有汚泥の処理方法。
この方法により、大量かつ含有量の低い鉛含有廃水から鉛を高純度で効率よく回収でき、また、新たな廃棄物を生じることなく簡便(経済的)に処理できる。また、上記特性を有するため、該方法は工業的処理方法として好適である。
【0011】
(2)鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離する工程(a)と、
該工程(a)の固液分離により得られる鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離する工程(b)とを含む鉛含有廃水の処理方法。
【0012】
(3)前記工程(b)の固液分離により得られるろ液またはその濃縮物を、前記工程(a)の凝集剤として用いる、上記(2)に記載の鉛含有廃水の処理方法。
【0013】
上記(2)および(3)の方法により、大量かつ含有量の低い鉛含有廃水から鉛を高純度で効率よく回収でき、また、新たな廃棄物を生じることなく簡便(経済的)に処理でき、さらに、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき鉛含有廃水から得られる汚泥を減容できる。
また、上記特性を有するため、該方法は工業的処理方法として好適である。
なお、本発明において、ろ液とは、固液分離等して得られる液体部分をいい、例えば、固液分離して得られるろ液の他に、デカンテーション(傾斜法)して得られる上澄み液等を含む。
【0014】
(4)鉛含有廃水の処理方法であって、
鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離し、得られるろ液を放流する工程(c)と、
該工程(c)の固液分離により得られる鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離し、硫酸鉛を回収する工程(d)と、
該工程(d)の固液分離により得られるろ液またはその濃縮物を、別の鉛含有廃水に、凝集剤として加えさらにアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離し、得られるろ液を放流する工程(e)と、
を順に行い、引き続き、工程(d)と工程(e)を交互に繰返し行うことを特徴とする鉛含有廃水のサイクル処理方法。
【0015】
この方法により、大量かつ含有量の低い鉛含有廃水から鉛を高純度で効率よく回収でき、また、新たな廃棄物を生じることなく簡便(経済的)に処理でき、さらに、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき鉛含有廃水から得られる汚泥を減容できる。特に、鉛を処理系外に排出せずに連続的に処理でき、自動制御等も可能となる。
このような特性を有するため、該方法は工業的処理方法として特に好適である。
【0016】
なお、本発明においては、各ろ液等を放流するに際して、pH、金属含有量等を測定し、排水基準を満たしていることを確認するのが好ましい。
上記方法は、工程(d)において、固液分離するのが好ましい。
【0017】
(5)前記工程(b)または工程(d)の固液分離により得られるろ液またはその濃縮物を含有する廃水処理用凝集剤。
本発明は、上記処理方法に好適に用いられる廃水処理用凝集剤を提供することをも目的とし、該凝集剤により、新たな廃棄物を生じることなく簡便(経済的)に鉛含有廃水を処理でき、さらに、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき、また鉛含有廃水から得られる汚泥を減容できる。
上記特性を有するため、該廃水処理用凝集剤は、工業廃水、特に鉛含有廃水の処理用凝集剤として好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、大量かつ含有量の低い鉛含有廃水または鉛含有汚泥から鉛を高純度で効率よく回収できる、鉛含有廃水または鉛含有汚泥の処理方法を提供できる。
また、本発明により、新たな廃棄物を生じない工業的規模に適した簡便(経済的)な鉛含有廃水および鉛含有汚泥の処理方法を提供できる。
さらに、本発明により、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき、鉛含有廃水から生じる汚泥を減容し該汚泥の鉛含有量を高くできる鉛含有廃水の処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる鉛含有廃水および鉛含有汚泥について説明する。
【0020】
[鉛含有廃水]
本発明に用いられる鉛含有廃水に含まれる鉛は、金属鉛、そのイオン、その塩(例えば、水酸化鉛、硫酸鉛、塩化鉛等)等の無機鉛およびそれらの化合物である。
【0021】
該鉛含有廃水は、上記した鉛を含有するものであれば特に限定されない。例えば、鉛含有廃水を排出する工場等、具体的には、鉛化成品工場、鉛精錬所、バッテリー工場等から排出される鉛含有廃水が挙げられる。
また、該廃水に含まれる鉛含有量も特に限定されない。
さらに、該廃水に含まれる鉛以外の重金属は、特に限定されないが、硫酸に不溶の金属、例えば、スズ等は後述する工程(b)の汚泥(硫酸鉛)中に残存し、該汚泥中の純度を低下させるので、硫酸に溶解する金属であるのが好ましい。
該重金属は、後述する工程(b)により鉛と分別できる重金属であるのがより好ましく、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、カドミウム等が挙げられる。
【0022】
[鉛含有汚泥]
本発明において、汚泥とは、上記の工場等から発生する廃水およびその処理過程で発生するスラッジの他、既に廃棄されている鉛等の水酸化物からなるスラッジ廃棄物を含む。
本発明に用いる鉛含有汚泥は、少なくとも水酸化鉛または硫酸鉛を含有し、好ましくは、それと水酸化物共沈殿物を形成する鉄、アルミニウム等の金属の水酸化物を含有する汚泥をいう。該金属の水酸化物としては、鉄、アルミニウムの水酸化物の他に、例えば、亜鉛、銅、カドミウム等の水酸化物、該共沈現象に悪影響を与えない金属等が挙げられる。
該汚泥は、少なくとも水酸化鉛または硫酸鉛を含有し、好ましくは、他の金属の水酸化物を含有するものであれば特に限定されない。
例えば、上記鉛含有廃水を排出する工場等から排出される鉛含有汚泥等、または、これらの工場等から排出される鉛含有廃水を処理した鉛含有汚泥等が挙げられる。
また、該汚泥に含まれる鉛含有量も特に限定されない。
【0023】
[鉛含有汚泥の処理方法]
本発明の第1態様は、鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離する工程(b)を含む鉛含有汚泥の処理方法である。
【0024】
本発明の第1態様の具体的な処理方法について述べる。
鉛含有汚泥を適量の水に投入し、撹拌しながら、濃硫酸を加え、液性をpH1.3以下に調整する。ここで、「適量」とは、撹拌操作が行える状態にある量であり、撹拌が行える限り該水量は特に限定されない。また、鉛含有汚泥がスラリー状態にあるときは水を必要としない場合もある。
上記pH調整の後、常温で1時間撹拌し、硫酸鉛等の不溶成分を固液分離して、必要であれば該不溶成分を水で洗浄して汚泥(硫酸鉛)を回収する。
【0025】
該方法は上記のように不溶成分の分離操作を主としているため簡便で経済的な方法であり、大量かつ含有量の低い鉛含有汚泥から鉛を効率よく回収でき、工業的に好適である。
また、上記不溶成分の分離操作により得られるろ液は、重金属(例えば、鉄、アルミニウム等)の硫酸塩を含んでおり、そのろ液のままの状態またはろ液を濃縮した状態として後述する鉛含有廃水の処理用凝集剤として再利用できるため、本発明の方法は、新たな廃棄物を生じることなく、近年の環境対策に沿うものであり、かつ、再資源化による廃棄物減量という社会的動向にも合致する。
【0026】
本発明の工程(b)では、上記鉛含有汚泥に硫酸を加え液性をpH1.3以下に調整する。
好ましくは、上記鉛含有汚泥に撹拌下、硫酸を加え液性をpH1.3以下に調整した後、さらに撹拌する。撹拌により、系内を均一に、かつ、pH調整を正確にできる。撹拌し難い場合には、適宜溶媒、例えば、水等を、適量添加することもできる。
【0027】
硫酸の使用量は、硫酸添加後の系内の液性がpH1.3以下、好ましくは1.2以下となる量であれば特に限定されず、鉛含有汚泥の処理量、それに含まれる鉛の含有量等により任意に調整できる。pHを1.3以下に調整することにより、汚泥中に含まれる鉛以外の重金属(例えば、鉄、アルミニウム等)の硫酸塩と硫酸鉛を確実に分離できる。pHが1.5以上であると、鉛以外の重金属の溶解が不十分となり、鉛との分離能に劣る場合がある。
pH調整後に撹拌する場合には、撹拌時間は、0.2時間以上が好ましく、1〜2時間がより好ましい。この範囲であると、硫酸鉛の形成、および鉛以外の重金属の硫酸塩の溶解が確実に行われ、これら金属の分離能に優れる。
処理(撹拌)温度は、特に限定されないが、常温〜50℃程度が好ましい。
【0028】
硫酸は、特に限定されず、濃硫酸、希硫酸等を用いることができる。該硫酸は10〜50質量%の濃度のものが硫酸鉛の形成等の反応性が高く好ましい。これらは上記の金属分離能に影響しない範囲で工業用硫酸、各種工程で回収した硫酸等を用いることもできる。
【0029】
不溶成分を固液分離する方法としては、特に限定されず、通常行われる方法、例えば、各種ろ過、脱水等の重力沈降法、比重分離法等を用いることができる。
なお、本発明の第1態様は、上記工程(b)を含有する方法であれば、他の処理、例えば、水洗工程、他の不純物除去工程等を含んでもよい。
【0030】
また、上記工程(b)で得られる汚泥(硫酸鉛)には、固液分離時のろ液中に含まれる硫酸鉄、硫酸アルミニウム等の金属塩が残存する。回収される汚泥(硫酸鉛)にこれらの金属塩が含有するのが好ましくない場合、工程(b)の分離方法の条件等を変えることにより、汚泥(硫酸鉛)をより高純度で効率よく回収することもできる。そのような方法として、例えば、不溶成分の分離後に硫酸鉛を大量の水で洗浄する方法、強力な脱液力を有するろ過装置を使用する方法等が挙げられるが、これらの方法に限られない。
【0031】
工程(b)のろ液は、鉛含有廃水の凝集剤として用いる金属の硫酸塩、例えば、硫酸第2鉄、硫酸アルミニウム等を含むので、そのろ液のままの状態で、または、ろ液を濃縮した状態で、廃水用処理剤として再利用できる。
これにより、上記工程(b)のろ液は、廃水処理剤としての効果を示す。
また、該工程(b)のろ液中に鉛が含まれていても、上記したように該ろ液を廃水処理剤として再利用すれば、ろ液中の鉛を系外に排出することもなく、また、該ろ液中の鉛を除去する必要もないため、新たな廃棄物を生じることなく、簡便(経済的)な処理方法として有用である。
【0032】
[鉛含有廃水の処理方法]
本発明の第2態様は、鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離する工程(a)と、
該固液分離して得られる鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離する工程(b)とを含む鉛含有廃水の処理方法である。
【0033】
本発明の第2態様の具体的な処理方法について図1を参照して述べる。
ここで、図1は、本発明の第2態様の処理方法の一例を示す概略フロー図である。
まず、鉛含有廃水に、適量の凝集剤(好ましくは工程(b)で回収した凝集剤)とアルカリ剤を加えて液性を約pH7以上に調整する。その後、常温で1時間撹拌し、析出物を固液分離し鉛含有汚泥を得る(工程(a))。なお、ろ液中の鉛含有量は上記した排水基準値未満となる。
次に、該鉛含有汚泥を適量の水に投入し、撹拌しながら、濃硫酸を加え、液性をpH1.3以下に調整する。その後、常温で1時間撹拌し、不溶成分を固液分離して必要であれば該不溶成分を水で洗浄し汚泥(硫酸鉛)を回収する(工程(b))。
【0034】
好ましくは、工程(b)で得られるろ液は上記したように再利用する。これにより、本発明の第2態様の処理方法は、該ろ液中の鉛を系外に排出することもなく、また、該ろ液中の鉛を除去する必要もないため、新たな廃棄物を生じることなく、簡便(経済的)な処理方法である。
該ろ液の再利用方法は、第1態様で説明したのと同様である。
【0035】
該方法は固液分離を主としているため簡便で経済的な方法であり、大量かつ含有量の低い鉛含有廃水から鉛を高純度で効率よく回収でき、工業的に好適である。
また、上記工程(a)の固液分離により得られるろ液は、鉛の廃水基準を満たしており、そのまま放流(廃棄)できる。なお、放流に際しては、pH、金属含有量等を測定し、排水基準を満たしていることを確認するのが好ましい。
さらに、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき鉛含有廃水から得られる汚泥を減容できる。
さらにまた、該方法は、新たな廃棄物を生じることなく、近年の環境対策に沿うものであり、かつ、再資源化による廃棄物減量という社会的動向にも合致する。
【0036】
上記第2態様の工程(a)は、上記鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離する工程である。
好ましくは、上記鉛含有廃水に撹拌下、凝集剤およびアルカリ剤を加えた後、液性を約pH7以上に調整しさらに撹拌する。撹拌により、系内を均一に、かつ、pH調整を正確にできる。
【0037】
凝集剤としては、特に限定されず、例えば、塩化第2鉄、硫酸第2鉄、硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム等を挙げることができる。
また、凝集剤として、市販の高分子凝集剤も用いることができる。
これらの凝集剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。この中でも、塩化第2鉄、硫酸第2鉄、硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウムが後述する工程(b)で鉛と容易に分別できる点で好ましい。
【0038】
アルカリ剤は、硫酸イオンと化合して固体となる、カルシウム、バリウム等以外のアルカリ化合物またはその溶液であれば特に限定されない。
アルカリ化合物としては、水酸化鉛を形成する化合物であれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物が挙げられ、溶液としては、例えば、これらの水溶液が挙げられる。アルカリ剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
これらのアルカリ剤は、上記の金属分離能に影響しない範囲で、工業用のもの、各種工程で回収したものを用いることもできる。
【0039】
アルカリ剤の使用量は、アルカリ剤添加後の系内の液性が約pH7以上、好ましくは約9以上となる量であれば特に限定されず、処理する鉛含有廃水の容量、それに含まれる鉛の含有量等により任意に調整できる。pHを約7以上に調整することにより、廃水の凝集剤および鉛の水酸化物を該廃水から確実に沈殿分離できる。pHが約7未満の場合には、不溶化物である水酸化鉛の生成が不十分となりやすく、鉛の回収量が低下する傾向があり、固液分離したろ液を放流できない。なお、pHの調整は厳密に行う必要はなく中性、好ましくはアルカリ性にすればよい。
pH調整後に撹拌する場合には、撹拌時間は、0.5時間以上が好ましく、1〜1.5時間がより好ましい。
処理(撹拌)温度は、特に限定されないが、常温〜50℃程度が好ましい。
【0040】
固液分離する方法としては、特に限定されず、通常行われる方法、例えば、各種ろ過分離、脱水等の重力沈降法、比重分離法等を用いることができる。
なお、固液分離して得られる鉛含有汚泥の状態は、通常スラリー状または脱水汚泥状であるが、これらに限定されない。
【0041】
なお、本発明の第2態様は、上記工程(a)および(b)を含有する方法であれば、他の処理、例えば、水洗工程、他の不純物除去工程等を含んでもよい。
【0042】
工程(b)は、上記第1態様で説明したのと基本的に同様である。
また、前記したとおり工程(b)の固液分離により得られるろ液は、鉛含有廃水の処理用凝集剤として再利用することができる。すなわち、工程(b)の固液分離により得られるろ液を、上記工程(a)の凝集剤として用いるのが好ましい。
【0043】
本発明の第3態様は、鉛含有廃水の処理方法であって、鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離し、得られるろ液を放流する工程(c)と、該固液分離して得られる鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離し、硫酸鉛を回収する工程(d)と、該工程(d)の固液分離により得られるろ液またはその濃縮物を、別の鉛含有廃水に、凝集剤として加えてアルカリ性に調整した後固液分離し、得られるろ液を放流する工程(e)とを順に行い、引き続き、工程(d)と工程(e)を交互に繰返し行うことを特徴とする鉛含有廃水のサイクル処理方法である。
なお、放流に際しては、pH、金属含有量等を測定し、排水基準を満たしていることを確認するのが好ましい。
【0044】
本発明は、上記工程(b)および(d)により得られるろ液に含まれる金属硫酸塩が凝集剤として再利用でき、この場合おいて各工程操作の簡易性、鉛の分離能および第3態様の特性等に影響せずに、連続的に処理できることを見出してなされたのである。
【0045】
本発明の第3態様の特に好ましい処理方法について図2を参照して具体的に述べる。
ここで、図2は、本発明の第3態様の処理方法の好ましい一例を示す概略フロー図である。
まず、鉛含有廃水に、適量の凝集剤とアルカリ剤を加えて液性を約pH7以上に調整する。その後、常温で1時間撹拌し、析出物を固液分離鉛含有汚泥を得、ろ液を放流(廃棄)する(工程(c))。
次に、該鉛含有汚泥を適量の水に投入し、撹拌しながら、濃硫酸を加え、液性をpH1.3以下に調整する。その後、常温で1時間撹拌し、不溶成分を固液分離してこれを水で洗浄し汚泥(硫酸鉛)を得る(工程(d)、1巡目終了)。
【0046】
さらに、該ろ液を、別の新たな鉛含有廃水に投入し、アルカリ剤を加えて液性を約pH7以上に調整する。工程(c)と同様にして鉛含有汚泥を得、ろ液を放流(廃棄)する(工程(e))。引き続き、該汚泥を用いて工程(d)を行い、硫酸鉛を得る(2巡目終了)。
さらに上記工程(e)および工程(d)を交互に繰返し行い、処理サイクルを第n巡目まで行う。
【0047】
上記工程(d)の分離により得られるろ液は、後述する鉛含有廃水の処理用凝集剤として再利用することができる。
また、上記工程(c)および(e)の固液分離により得られるろ液は、鉛の廃水基準を満たしており、そのまま放流(廃棄)できる。なお、放流に際しては、pH、金属含有量等を測定し、排水基準を満たしていることを確認するのが好ましい。
【0048】
該方法は固液分離を主としているため簡便で経済的な方法であり、大量かつ含有量の低い鉛含有廃水から鉛を高純度で効率よく回収でき、工業的に好適である。
さらに、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき鉛含有廃水から得られる汚泥を減容できる。
さらにまた、該方法は、新たな廃棄物を生じることなく、近年の環境対策に沿うものであり、かつ、再資源化による廃棄物減量という社会的動向にも合致する。
特に、該方法は連続処理が可能で自動制御も容易であることから、工業的処理方法として、特に好適である。
【0049】
工程(c)は、上記工程(a)と基本的に同様である。
上記したように工程(a)のろ液中の鉛含有量は上記した排水基準値未満であり放流できる。
【0050】
工程(d)は、上記工程(b)と基本的に同様であるが、用いる鉛含有汚泥が、工程(c)で得られるものである場合(1巡目)と工程(e)得られるものである場合(2巡目以降)がある点が異なる。
【0051】
工程(e)は、上記工程(a)と基本的に同様であるが、上記工程(a)で用いた鉛含有廃水(工程(e)のときは既に処理されている)と別の新たな鉛含有廃水を用いる点、および、工程(d)で得られるろ液またはその濃縮物を凝集剤として用いる点が異なる。
なお、工程(d)の固液分離で得られるろ液中の凝集剤の含有量は、該凝集剤が鉛含有汚泥に付着し、または、ろ液として放流され、その含有量が減少するため、別の新たな鉛含有廃水の処理量に満たない場合は、通常、若干量、上記工程(a)で説明した凝集剤を添加することができる。
【0052】
該方法では、工程(d)と工程(e)を交互に繰返し行うことにより、連続的に鉛含有廃水の処理ができ、また、自動制御も可能であり工業的に好適である。
そして、該方法により、鉛を処理系内から排出する恐れもない、連続的な処理が可能なクローズドシステムが構築される。
【0053】
なお、本発明の第3態様は、上記工程(c)〜(e)を含有する方法であれば、他の処理を含んでもよい。
【0054】
なお、本発明の第1〜第3態様の処理方法で用いられる装置は、特に限定されず、一般的な装置を用いることができる。
例えば、pH調整等については、各種反応槽、混合槽、撹拌装置等が挙げられ、固液分離については、重力沈降法、比重分離法等に用いられる各種膜分離装置、遠心分離機等が挙げられる。
【0055】
本発明の鉛含有廃水および鉛含有汚泥の処理方法は、鉛含有廃水および鉛含有汚泥を排出する工場等、例えば、鉛化成品工場、鉛精錬所、バッテリー工場、廃バッテリー処理工場等に好適に利用できる。
【0056】
[廃水処理用凝集剤]
本発明の第4態様は、上記工程(b)または工程(d)の固液分離により得られるろ液またはその濃縮物を含有する廃水処理用凝集剤である。
該ろ液および濃縮物の形態は、特に限定されず、例えば、液状、乾固状、乾燥粉末状であってもよい。
該ろ液またはその濃縮物の用途は、特に限定されず、工業廃水、特に鉛含有廃水の処理用凝集剤として好適である。
【0057】
該廃水処理用凝集剤は、安価で工業的に好適に用いることができ、本発明の鉛含有廃水または汚泥の処理方法に用いると、凝集剤の使用量低減と汚泥の減容化が達成でき、新たな廃棄物が生じることなく、連続的な処理が可能となる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
上記した本発明の鉛含有廃水の処理方法を用いて、鉛含有廃水の処理を行った。
本発明の実施例で行った操作工程を図3に示す。
【0060】
<実施例1>
混合槽1に、金属鉛を30mg/L含有する鉛含有廃水を投入し、さらに適量の凝集剤(塩化第2鉄150mg/L、硫酸アルミニウム10mg/L)とアルカリ剤として20%カセイソーダ水溶液を加えて液性を約pH8に調整した。その後、常温で約0.5時間撹拌し、シックナー1にて固液分離して鉛含有汚泥I(固形分40g/L)を得た(工程(a))。
次に、該鉛含有汚泥Iを混合槽2に投入し、撹拌しながら、50%硫酸を加え、液性をpH1.0に調整した。その後、常温で1時間撹拌し、不溶成分をシックナー2により固液分離し、遠心脱水機により脱水汚泥状の汚泥(硫酸鉛)I(水分60%)および硫酸溶解ろ液Iを得た(工程(b))。
【0061】
硫酸溶解ろ液Iには、硫酸鉄、硫酸アルミニウムを含有するので、廃水処理用凝集剤として回収した。
【0062】
なお、別工程として、スラリー状の硫酸鉛Iに水を該スラリーの体積の6倍量加えて、撹拌後、放置し自然沈降させて上澄みを除去した。この沈殿物をろ過すると、汚泥として硫酸鉛含有量が51%の洗浄硫酸鉛I(水分60%)が回収できた。
【0063】
また、混合槽3に得られた硫酸溶解ろ液Iと水酸化ナトリウムとを投入し、pH8.5に調整した。その後、常温で0.5時間撹拌し、析出した結晶成分をろ過器によりろ過し、ろ液IVと中和沈殿物IVを得た。
【0064】
上記廃水処理方法により得られた、鉛含有汚泥I、汚泥(硫酸鉛)I、硫酸溶解ろ液Iおよび洗浄硫酸鉛Iのそれぞれについて、鉛、鉄、およびアルミニウムの含有量(全容量中の含有質量g/Lもしくはmg/L)または含有率(全固形分中の質量%)を測定した。また、ろ液IVについて、鉛、鉄およびアルミニウムの含有量(全容量中の含有質量、mg/L)を測定した。
その結果を第1表に示す。なお、第1表中、「−」は、該当する金属の含有量が検出できなかったことを表す。
【0065】
【表1】

【0066】
第1表に示すように、鉛含有汚泥Iには大量の鉄およびアルミニウムが含まれる。しかし、本発明の方法により、簡単な工程で、硫酸鉛含有量が高く高純度で効率よく汚泥として硫酸鉛を回収できた(汚泥(硫酸鉛)I)。
また、汚泥(硫酸鉛)I中の鉄およびアルミニウムは、該汚泥(硫酸鉛)I中に残存する水分中に硫酸塩として残存していることから、工程(b)の分離方法を変えることにより、より高純度で効率よく、硫酸鉛を回収できた(洗浄硫酸鉛I)。
また、表1〜4の汚泥(硫酸鉛)、 洗浄硫酸鉛、脱水汚泥(ケーキ)は、乾燥重量%を示しています。他のものはスラリー(湿分)での濃度表示です。鉛含有汚泥Iを脱水した脱水汚泥(ケーキ)IIの鉛濃度は、12%(乾燥ベース)であり、本発明の工程(b)により処理した洗浄硫酸鉛Iの鉛濃度は51%(乾燥ベース)と濃縮され、汚泥の発生量は約1/4に減少できた。
さらに、硫酸溶解ろ液を中和処理することにより、該ろ液IVに含まれる鉛含有量を、水質汚濁防止法第3条第1項および第12条に定められている排水基準値0.1mg/L以下とすることができた。なお、硫酸鉛の溶解度は、常温、中性条件下で、40mg/Lである。
【0067】
<実施例2>
上記鉛含有汚泥Iをさらに脱水した脱水汚泥IIと適量の水を用いて、工程(b)のpHを1.3に調整して、実施例1と同様に処理を行い、汚泥(硫酸鉛)IIおよび硫酸溶解ろ液II得た。
【0068】
上記廃水処理方法により得られた、脱水汚泥II、硫酸鉛II、および硫酸溶解ろ液IIのそれぞれについて、鉛、鉄、およびアルミニウムの含有量(全容量中の含有質量g/Lもしくはmg/L)または含有率(全固形分中の質量%)を測定した。
その結果を第2表に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
本発明の工程(b)のpHを1.3に調整しても、本発明の方法により実施例1と同様の効果を奏した。
【0071】
<実施例3>
金属鉛を25mg/L含有する鉛含有廃水に、適量の凝集剤(塩化第2鉄、高分子凝集剤(アニオン系アクリルアミド凝集剤)とアルカリ剤を加えて、実施例1の工程(a)と同様にして行い、鉛含有汚泥IIIを得た。
次に、該鉛含有汚泥IIIを適量の水に投入し、撹拌しながら、50%硫酸を加え、液性をpH1.2に調整した。その後、実施例1の工程(b)と同様に行い、ケーキ状の汚泥(硫酸鉛)IIIおよび硫酸溶解ろ液IIIを得た(工程(b))。
【0072】
上記廃水処理方法により得られた、鉛含有汚泥III、汚泥(硫酸鉛)III、および硫酸溶解ろ液IIIのそれぞれについて、鉛および鉄の含有量(全容量中の含有質量g/Lもしくはmg/L)または含有率(全固形分中の質量%)を測定した。
その結果を第3表に示す。
【0073】
【表3】

【0074】
高分子凝集剤を用いた場合でも、本発明の方法により、実施例1と同様の効果を奏した。
【0075】
<実施例4>
金属鉛を30mg/L含有する鉛含有廃水Vに、適量の凝集剤(硫酸第2鉄、硫酸アルミニウム)とアルカリ剤として20%カセイソーダ水溶液を加えて液性を約pH8以上に調整した。その後、常温で約0.5時間撹拌し、シックナーにて固液分離して鉛含有汚泥Vを得、ろ液を放流(廃棄)した(工程(c))。なお、放流に際しては、pHを中性に調整し、金属含有量等を測定し排水基準を満たしていることを確認した。
次に、該鉛含有汚泥Vを適量の水に投入し、撹拌しながら、50%硫酸を加え、液性をpH1.0に調整した。その後、常温で1時間撹拌し、不溶成分をシックナーにより固液分離し、乾燥脱水汚泥状の汚泥(硫酸鉛)Vを得た(工程(d)、1巡目終了)。
【0076】
金属鉛を30mg/L含有する別の鉛含有廃水VIに上記で得られたろ液Vと、不足分の凝集剤(硫酸第2鉄、硫酸アルミニウム)とを加え、さらにアルカリ剤を加えて液性を約pH8以上に調整した。その後、常温で約0.5時間撹拌し、シックナーにて固液分離して鉛含有汚泥VIを得、ろ液を放流(廃棄)した(工程(e))。なお、放流に際しては、同様にpHを中性に調整し、金属含有量等を測定し排水基準を満たしていることを確認した。
【0077】
引き続き、該鉛含有汚泥VIを適量の水に投入し、撹拌しながら、50%硫酸を加え、液性をpH1.0に調整した。その後、常温で1時間撹拌し、不溶成分をシックナーにより固液分離し、乾燥脱水汚泥状の汚泥(硫酸鉛)VIを得た(工程(d)、2巡目終了)。
【0078】
上記方法により得られた、鉛含有汚泥V、VI、硫酸溶解ろ液VおよびVI、ならびに、硫酸鉛Vおよび硫酸鉛VIのそれぞれについて、鉛および鉄の含有量(全容量中の含有質量g/Lもしくはmg/L)または含有率(全固形分中の質量%)を測定した。
その結果を第4表に示す。
【0079】
【表4】

本発明のサイクル処理方法においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0080】
つまり、この方法により、簡単な工程で鉛含有量が高く高純度で効率よく鉛を回収できたうえ、さらに、新たな廃棄物を生じることなく、廃水処理剤として使用する凝集剤の使用量を低減でき鉛含有廃水から得られる汚泥を減容できた。
特に、連続的に処理でき、自動制御等も可能であり、工業的処理方法として好適であるクローズドシステムが構築された。
また、工程(d)により得られたろ液を用いた2巡目においても、同様の効果を発揮し、該ろ液は、工業廃水、特に鉛含有廃水の処理用凝集剤として好適であった。
【0081】
本発明の鉛含有廃水および鉛含有汚泥の処理方法により、以下の効果が得られた。
1)鉛、鉄等の水酸化物共沈殿法により得られる汚泥の生成量に比して、上記方法による汚泥の全生成量は少なく汚泥の減容化(具体的には、容積比で1/3〜1/10程度)が達成できる。
2)硫酸鉛を高い含有量で回収できる。処理後の汚泥(硫酸鉛)中の硫酸鉛の含有量は30〜50質量%である。
3)水酸化物共沈殿法により発生する廃棄物の他に、新たな廃棄物は生じない。
4)硫酸溶解ろ液は、硫酸第2鉄の廃水処理剤として再利用できる。
5)本発明の方法は、上記効果を有するため工業的規模に適している。
【0082】
<鉛含有汚泥、硫酸鉛V、各種ろ液の金属の含有量測定>
各金属の分析方法は、JIS K0102工場廃水試験方法により行った。
【0083】
<硫酸鉛の純度測定>
上記実施例1で得られた汚泥(硫酸鉛)Iの成分をX線解析(連続スキャン法(2θ/θ法))により分析した結果を図4に示す。
図4から明らかなように、該汚泥(硫酸鉛)は、水酸化アルミニウム、水酸化鉛、硫酸アルミニウムおよび硫酸鉄が検出されず、主構成物質は硫酸鉛であった。
測定条件を以下に示す。
測定範囲(2θ):5〜80deg、管電圧:40kV、
管電流:150mA、線源:Cu、サンプリング幅:0.02deg、
走査速度:4.0deg/min、DS、SS:1.0deg、
RS=0.15mm、カウンタモノクロメータ使用
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は本発明の第2態様の処理方法の一例を示す概略フロー図である。
【図2】図2は本発明の第3態様の処理方法の好ましい一例を示す概略フロー図である。
【図3】本発明の実施例で行った操作工程を表す図である
【図4】硫酸鉛のX線解析による分析結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離する工程(b)を含む鉛含有汚泥の処理方法。
【請求項2】
鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離する工程(a)と、
該工程(a)の固液分離により得られる鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離する工程(b)とを含む鉛含有廃水の処理方法。
【請求項3】
前記工程(b)の固液分離により得られるろ液またはその濃縮物を、前記工程(a)の凝集剤として用いる、請求項2に記載の鉛含有廃水の処理方法。
【請求項4】
鉛含有廃水の処理方法であって、
鉛含有廃水に、凝集剤およびアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離し、得られるろ液を放流する工程(c)と、
該工程(c)の固液分離により得られる鉛含有汚泥に、硫酸を加えpHを1.3以下に調整して硫酸鉛を含む析出物を固相として固液分離し、硫酸鉛を回収する工程(d)と、
該工程(d)の固液分離により得られるろ液またはその濃縮物を、別の鉛含有廃水に、凝集剤として加えさらにアルカリ剤を加えてアルカリ性に調整した後固液分離し、得られるろ液を放流する工程(e)と、
を順に行い、引き続き、工程(d)と工程(e)を交互に繰返し行うことを特徴とする鉛含有廃水のサイクル処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−167709(P2007−167709A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364923(P2005−364923)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000174909)三井金属エンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】