鉛蓄電池
【課題】静電気による放電火花が電池内部に侵入して、電池内部の滞留ガスに引火破損することを防止し、かつ液絡の弊害が発生しない鉛蓄電池を提供すること。
【解決手段】複数セルを有した鉛蓄電池において、蓋に装着した液口栓の周囲もしくはその一部に導電層を備え、前記導電層の少なくとも一つが前記蓋に設けた一方の端子に接触するか距離xをもって離間し、各導電層は互いに接することなく距離dをもって離間した構成とする。そして、前記した距離xおよび離間距離dは静電気が、導電層と端子間および隣接しあう導電層間を移行するに十分短い距離に設定する。このような本発明の構成により、静電気放電火花が電池内部に侵入して引火破損するのを防止し、かつ導電層を経由した液絡とこれによる電池の容量低下を抑制する。
【解決手段】複数セルを有した鉛蓄電池において、蓋に装着した液口栓の周囲もしくはその一部に導電層を備え、前記導電層の少なくとも一つが前記蓋に設けた一方の端子に接触するか距離xをもって離間し、各導電層は互いに接することなく距離dをもって離間した構成とする。そして、前記した距離xおよび離間距離dは静電気が、導電層と端子間および隣接しあう導電層間を移行するに十分短い距離に設定する。このような本発明の構成により、静電気放電火花が電池内部に侵入して引火破損するのを防止し、かつ導電層を経由した液絡とこれによる電池の容量低下を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、充電時に希硫酸電解液中の水の電気分解により水素ガス及び酸素ガスを発生し、電池内部の空間に滞留する。これらのガスは、放置することにより液口栓のガス排気口より大気中に放出されていくが、充電直後は電池内の空間にガスが滞留しており、電池内部に火点が発生した場合、ガスに引火して電池破損に至る可能性がある。
【0003】
破損の原因となる火点としては様々なものが考えられるが、その一つとして静電気があげられる。静電気による破損は、電池周辺で静電気による放電火花が発生して、これが液口栓の外周部やガス排気口部にある隙間から、電池内部に侵入することによって生ずるものと考えられる。
【0004】
上記の課題に対する対策として、例えば、特許文献1では、蓋上の液口栓周辺部に、上部に絶縁性を有した絶縁層を、下部に導電性を有した導電層を設置し、その導電層の一部を負極端子もしくは電池締付金具に接続させることで、放電火花が液口栓の外周部やガス排気口部から電池内部に侵入することなく導電層に吸収され、鉛蓄電池の破損を抑制できることが示されている。
【0005】
また、導電層の外側表面は絶縁層により保護されているため、工具等により、誤って導電層と正極端子間とを接触させ、短絡させることもない。
【0006】
このように、静電気による放電火花が液口栓の外周部やガス排気口部から電池内に侵入することに起因する破損の防止対策として、鉛蓄電池の蓋上に負極端子に接続された導電層を設置し、導電層の外側表面を絶縁層により保護することが考えられる。
【特許文献1】特開平4−101353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した特許文献1では、鉛蓄電池を構成するセルの液口栓周辺で電解液の漏出や、水分の結露や付着が起きた場合、セルと負極端子間、隣接するセル間で、液絡が発生し、鉛蓄電池を構成する、一部もしくはすべてのセルで液絡による放電が発生し、鉛蓄電池の容量が低下したり、過放電に至るという課題があった。
【0008】
特に、すべてのセルで均一に放電が進行する場合は、鉛蓄電池端子間で補充電することにより、容量が回復する場合があるが、一部のセルが放電したり、過放電した場合、鉛蓄電池を補充電すると、液絡による放電がなかったセルが過充電されることになり、補充電によっても、元の放電容量まで回復しない場合があった。
【0009】
本発明は、鉛蓄電池の液口栓近傍に静電気火花による引火を防止するための導電層を電池の蓋上に配置した電池において、液絡によるセルの放電を抑制した、信頼性に優れた鉛蓄電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、 前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1の鉛蓄電池において、前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、前記蓋の表面上で、前記非導電性シートが係止手段によって、前記蓋に固定され、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面の前記貫通孔の周囲の一部に前記導電層を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、前記蓋の表面上に、非導電性シートが、粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に独立した導電層を備え、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかの鉛蓄電池において、前記導電層の比抵抗が10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の鉛蓄電池において、前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記距離xを0〜5.0mmとした鉛蓄電池を示すものである。
【0015】
そして、本発明の請求項6に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、 前記セルを収納する電槽を、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、かつ、前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を備え、前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【0016】
また、本発明の請求項7に係る発明は、請求項6の鉛蓄電池において、前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、係止手段によって固定され、かつ、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面に前記導電層と前記第2の導電層を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0017】
また、本発明の請求項8に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、あるいは係止手段によって固定され、かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に導電層を備え、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、かつ、前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を、前記非導電性シートの前記蓋と対向する面に備え、前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0018】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項6〜8のいずれかに記載の鉛蓄電池において、前記導電層および前記第2の導電層の比抵抗が、いずれも10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【0019】
また、本発明の請求項10に係る発明は、請求項6〜9の鉛蓄電池において、前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の距離yを0〜5.0mmとした鉛蓄電池を示すものである。
【0020】
さらに、本発明の請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれかの鉛蓄電池において、前記電池端子が負極端子であることを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【発明の効果】
【0021】
前記した本発明の構成によれば、鉛蓄電池の液口栓から電解液が漏出したり、あるいは液口栓付近に水分が結露や付着しても、蓋表面に設けた静電気火花除去のための導電層によって、隣接するセル間で液絡による放電が発生することがなく、信頼性に優れた鉛蓄電池を提供できるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態による鉛蓄電池を図面を用いて説明する。なお、以下に述べる実施形態は、6セルが直列接続された、公称電圧12Vの始動用鉛蓄電池に、本発明を適用した形態例を述べたものであって、本発明は、12Vの始動用鉛蓄電池のみに限定されるものではなく、複数のセルを有した鉛蓄電池に適用することができる。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池1の天面を示す図、図2は、図1における鉛蓄電池1のL−L′断面を示す図である。
【0024】
本発明の鉛蓄電池1は、図2に示したように、電槽6に設けたセル室6aに、電解液10とともに収納された極板群8から導出された極柱9が、電槽6に接合した蓋2にインサート成型された負極端子4に接続された構成を有している。なお、図2に示した、鉛蓄電池のL−L′断面を示す図は、負極端子4が接続された、正極端子3が接続された第1番目のセルから負極方向へ数えて第6番目のセルの断面を示しており、第1番面のセルには、正極の極柱(図示せず)が存在、第2〜第5番目のセルには、極柱は存在せず、隣接する極板群8間を接続するための接続体が存在することは、従来の鉛蓄電池と変わるところはない。
【0025】
本発明の鉛蓄電池1では、そのセルに対応した、第1セル液口C1〜第6セル液口C6を有しており、第1セル液口C1〜第6セル液口C6のそれぞれに、液口栓Aが装着されている。液口栓Aには、セル室6a内部の滞留ガスを大気中に排出するための排気口5を有している。なお、図示はしないが、液口栓A内に、電解液飛沫の排気口5からの漏出を抑制するための防沫体、あるいは減液抑制や、外部発火源からのセル室6aへの炎の引き込みを抑制する、いわゆるフレームアレスタとして機能する多孔質フィルタを配置してもよい。また、液口栓Aと蓋2との装着部の液密性を確保するために、必要に応じてパッキンAaを備える。
【0026】
本発明の鉛蓄電池1を特徴付ける点は、図1に示したように、第1セル液口C1〜第6セル液口C6の周囲もしくは、周囲の一部に、第1セル液口C1〜第6セル液口C6に対応して、それぞれ第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6が配置され、これらはすべて独立して蓋2の表面上に配置されている。すなわち、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は互いに接することなく、それぞれの間に非導電部7aを有して配置されており、非導電部7aの最も狭い部位の間隔寸法をd1、d2、d3、d4およびd5とする。なお、非導電部7aは蓋2の表面上に何らかの層を形成してもよいが、ただ単に、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間の、隙間であってもよい。
【0027】
一般的な始動用鉛蓄電池用の蓋に用いられるポリプロピレン樹脂の比抵抗は1012Ω・cm〜1016cmであり、絶縁体と見なせることから、非導電部7aとして、別途の絶縁材料を、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間に配置する必要はない。
【0028】
本発明の鉛蓄電池1では、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の中の任意の導電層から、正極端子3、さらに好ましくは、負極端子4に接触する、もしくは近接する導出部が設けられる。図1に示した例では、負極端子4に最も近接する第6セル導電層B6から導出部B6aを負極端子4に間隔xを有して近接配置した例を示している。
【0029】
蓋2の表面に設ける第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および導出部B6aとして、比抵抗値が104Ω・cm以下の材料、より好ましくは、10Ω・cm以下の材料を用いる。また実際には、比抵抗が10-6Ω・cm以下の材料は、コストが高いため、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および導出部B6aとして用いる材料としては、金属系でAl、Cu、Ag又はPb、もしくはTi、SnおよびZnの導電性金属酸化物層や、カーボン、あるいはこれらの導電性物質の粉体や繊維を分散した導電性合成樹脂を用いることができ、これらの材料の比抵抗値として10-6Ω・cm〜10Ω・cmであるものが好ましい。
【0030】
そして、上記の導電性材料による第1セルB1〜第6セル導電層B6および導出部B6aの蓋2の表面への形成方法としては、前記した導電性材料を溶媒に分散させた塗量を蓋2の表面上に塗布する塗工工法、あるいは蒸着工法、印刷による形成等の手法が適用できる。また、さらに、前記した導電性合成樹脂の成型部品を、第1セル液口C1〜第6セル液口C6の周囲、もしくは、その周囲の一部に嵌合固定や、接着固定あるいは熱溶着によって固定してもよい。さらには、この導電性合成樹脂からなる成型部品を蓋2の第1セル液口C1〜第6セル液口C6にインサート成型してもよい。
【0031】
本発明では、隣接しあう第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の中の任意の隣接しあう導電層の対間の離間距離をdとしたとき、すなわち、本実施形態においては、図1に示した、第1セル導電層B1と第2セル導電層B2の離間距離をd1、第2セル導電層B2と第3セル導電層B3の離間距離をd2、第3セル導電層B3と第4セル導電層の離間距離をd3、第4セル導電層B4と第5セル導電層B5の離間距離をd4、第5セル導電層B5と第6セル導電層B6の離間距離d5としたとき、これら離間距離d1〜d5は0を含まず、0を越え(すなわち、d1>0、d2>0、d3>0、d4>0、d>0)とし、かつ、これら離間距離d1〜d5を、任意の導電層に静電気が帯電したときに、この静電気を隣接する導電層に移動するに十分な短い距離に設定する。例えば、この値としては、d1、d2、d3、d4およびd5を、好ましくは、0.1mm以上、5.0mm以下、特に、より好ましくは、0.1mm以上、2.0mm以下とする。
【0032】
さらに、本発明では、導電層と端子の距離をxとしたとき、すなわち、本実施形態においては、図1に示した第6セル導電層B6より延出した導出部B6aと負極端子4との距離をxとしたときに、x=0mm。すなわち、第6導電層B6が導出部B6aを介して負極端子4に接する、もしくは、この導出部B6aから負極端子4に静電気の移行が行なわれるに十分短い距離に設定する。この距離xとしては、前記した離間距離dと同様、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは、2.0mm以下とする。したがって、距離xの範囲は、好ましくは、0mm以上5.0mm以下、より好ましくは0mm以上2.0mm以下とする。
【0033】
上記した、本発明の第1の実施形態によれば、液口栓周囲に帯電した静電気は、隣接する液口栓周囲に形成した導電層に移行し、最終的には電池端子に設置される。より具体的に図1を用いて説明すると、例えば、第1セル導電層B1に帯電した静電気は、第2セル導電層B2、第3セル導電層B3、第4セル導電層B4、第5セル導電層B5を介して第6セル導電層B6に移行し、第6セル導電層B6から導出部B6aを介して負極端子4に移行するため、第1セル導電層B1に帯電した静電気の、第1セル液口あるいは、排気口5を介してセル室6aの内部への移行が抑制され、結果として、セル室6aにおいて、内部の帯電した樹脂部品から、極柱9、極板群8および電解液10への火花放電の発生が抑制され、安全性に優れた鉛蓄電池を提供できる。
【0034】
なお、上記では、第1セル導電層B1に静電気が帯電した例を示したが、第2セル導電層B2〜第6セル導電層B6に静電気が帯電した場合にも、前記したと同様のメカニズムにより、対応するセル室6a内での火花放電の発生が抑制され、安全性に優れた鉛蓄電池を提供できる。
【0035】
さらに、本実施の形態例では、第6セル導電層B6に導出部B6aを設けたが、第1セル導電層B1〜第5セル導電層B5に設けてもよい。また、導出部B6aを設けず、例えば、第6セル導電層B6を他の第1セル導電層B1〜第5セル導電層B5に比較して面積を大とし、第6セル導電層B6の端部が負極端子4に接するか、前記した距離xを有して離間した状態としても、本発明の効果が得られることは明らかである。
【0036】
また、本実施の形態例では、静電気を負極端子4に誘導する構成を示したが、正極端子3に誘導する構成としてもよい。この場合、例えば、図1に示した鉛蓄電池1では、第1セル導電層B1と、正極端子3とを直接接触させるか、あるいは前記した距離xを有して離間させてもよい。また、図1に示したような導出部B6aと同様の導出部を第1のセル導電層B1に形成してもよい。
【0037】
なお、前記した例では、端のセルに設けた導電層から正極端子3あるいは負極端子4に静電気を移行させる形態を示したが、電池端子とセルとの位置関係によっては、第2セル導電層B2〜第5セル導電層B5のいずれか一つに、正極端子3あるいは負極端子4のいずれか一方に接触もしくは前記した距離xで近接する導出部(図示せず)を形成することによっても本発明の効果を得ることができる。
【0038】
前記した構成によれば、蓋2あるは電槽6に静電気が帯電しても、液口栓A周囲に設けた第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を介して正極端子3あるいは負極端子4に静電気が移行するため、液口栓Aからセル室6a内部への静電気の侵入が抑制され、結果としてセル室6a内での静電気による放電火花発生と、これを着火源とする、セル室6a内部に滞留した水素ガスへの着火と、これによる電槽6や蓋2の破損が抑制される。
【0039】
なお、上記した例では、静電気を正極端子3あるいは負極端子4のいずれか一方に誘導する例を示したが、負極端子4に誘導することがより好ましい。一般的に、始動用鉛蓄電池では、負極端子側が設置され、鉛蓄電池を固定するステーも負極端子と同通している可能性があり、静電気を正極端子3に誘導する構成では、このステーが導電層を接触すると、鉛蓄電池が短絡するためである。
【0040】
なお、図1に示した例では、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は、液口栓Aの全周にわたって配置されているが、液口栓Aおよび液口栓Aと各液口、すなわち第1セル液口C1〜第6セル液口C6との隙間を介しての静電気の侵入が抑制できる程度に非連続、すなわち、周囲の一部に導電層が配置されていない部位があってもよい。
【0041】
さらに、本発明では、前記した効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。すなわち、鉛蓄電池1に装着された液口栓Aから、振動や過充電等によって内部の電解液や水分が漏出したり、あるいは結露や、誤って液口栓A周辺に水分や電解液添加剤等をこぼすことによって、液口栓Aおよびその周辺に水分や希硫酸を含む導電性の液体が付着した場合においても隣接するセル間での液絡と、これによる鉛蓄電池を構成するセルの放電を抑制することができる。これは液口栓Aの周囲に配置した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが、離間距離d1〜d5を有して互いに離間していることによって得られる効果である。
【0042】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池11の天面を示す図である。第2の実施形態による鉛蓄電池11は、第1の実施形態による鉛蓄電池1において、第2の導電層Eを蓋2の表面に付加した構成を有する。そして、第2の実施形態による鉛蓄電池11においては、後述する理由により、第1の実施形態による鉛蓄電池1の構成であった、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の一つが直接あるいは導出部B6aを介して正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方と接触もしくは距離xを有して離間する構成を有していない。
【0043】
本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池11は、前記した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のいずれか一つが、正極端子3もしくは負極端子のいずれか一方と接触もしくは、距離xを有した離間する構成に替えて、図3に示したように、第2の導電層Eを設ける。なお、第2の導電層Eは、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に第2の離間距離d′を有して蓋2の表面に配置される。
【0044】
なお、第2の離間距離d′は、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6についてすべて同一の値としてもよいが、異なる値としてもよい。図3では、異なる値としてもよいことを示すために、第2の離間距離d′の最も狭い部位の寸法を、それぞれ第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に対応して、それぞれ、d1′、d2′、d3′、d4′、d5′およびd6′で示した。
【0045】
なお、これらd1′〜d6′の値は、前記した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6が、第2の導電層Eを介して間接的に接触しないよう、0を含まず、0を越える量である。すなわち、d11′>0、d2′>0、d3′>0、d4′>0、d5′>0およびd6′>0である。
【0046】
また、これらd1′〜d6′の上限値は、任意の導電層、すなわち第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に生じた静電気が、第2の導電層Eに移行しうる程度の非導電部7cを設ける。このようなd1′〜d6′の上限値は、第1の実施形態で示したd1〜d2と同様、好ましくは、0.1mm以上、5.0mm以下、特に、より好ましくは、0.1mm以上、2.0mm以下とする。
【0047】
さらに、第2の導電層Eは、正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方、好ましくは、第1の実施の形態で述べたのと同様の理由により、負極端子4と接触する、もしくは第2の距離yを有して近接配置する。なお、この第2の距離yは、第2の導電層Eに帯電した静電気が正極端子3、好ましくは負極端子4に移行しうる距離とする。すなわち、第1の距離yは0以上(y=0においては、第2の導電層Eと正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方が接触している状態である。)、かつ好ましくは、5.0mm以下、特により好ましくは2.0mm以下とする。なお、第2の距離y>0の場合、第2の導電層Eと正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方の間には、非導電部7cが形成されているが、この非導電部7cおよび前記した非導電部7bのいずれも、各導電層の間に形成された間隙として形成すればよい。また、第1の実施形態で述べた非導電部7a、第2の実施形態における非導電部7b,7cも、前記したような間隙上に、蓋2とは別体の絶縁物層を配置してもよい。
【0048】
なお、第2の実施形態による第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および第2の導電層Eは、第1の実施形態で示した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6と同様の比抵抗を有した材料で構成され、その形成方法も、第1の実施形態に例示したものを適用することができる。
【0049】
前記した第2の実施形態によれば、第1の実施形態に比較して、第1セル導電層B1〜第5セル導電層B5に帯電した静電気を正極端子3もしくは負極端子4に移行するにあたり、通過する非導電部7b,7cの数が少なくできるため、静電気の正極端子3もしくは負極端子4への移行をより円滑に行なうことができる。例えば、第1セル導電層B1に帯電した場合に、第1の実施形態のように、隣接する第2セル導電層B1へ静電気を移行させることなく、第2の導電層Eを介して、直接、正極端子3もしくは負極端子のいずれか一方に静電気を移行することができるため、第1の実施形態に比較して、より円滑に静電気を正極端子3あるいは負極端子4に接地することができ、より好ましい。
【0050】
その結果として、蓋2や電槽6に静電気が帯電しても、この静電気は第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6と、第2の導電層Eを介して、速やかに正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地されるため、液口栓Aの内部あるいは液口栓Aの外周を介した静電気のセル室6aの内部への移行と、これによるセル室6a内での放電火花の発生が抑制できるため、この放電火花によるセル室6a中の滞留ガスへの引火と、これによる蓋2あるいは電槽6等の、鉛蓄電池11の構成する各部品の破損を抑制できる。
【0051】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態同様、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間の絶縁性は確保されているため、任意の液口栓Aから、振動や過充電等によって内部の電解液や水分が漏出したり、あるいは結露や、誤って液口栓A周辺に水分や電解液添加剤等をこぼすことによって、液口栓Aおよびその周辺に水分や希硫酸を含む導電性の液体が付着した場合においても隣接するセル間での液絡と、これによる鉛蓄電池を構成するセルの放電を抑制することができる。これは液口栓Aの周囲に配置した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが、離間距離d1〜d5を有して互いに離間し、かつ、これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが、第2の離間距離d1′、d2′、d3′、d4′、d5′およびd6′を有して第2の導電層Eと離間することによって、これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが直接接触していないことによって得られる効果である。
【0052】
以上、本発明の第2の実施形態によれば、電槽6あるいは蓋2に静電気が帯電しても、この静電気は、すみやかに正極端子3あるいは負極端子4に接地されるため、静電気の液口栓Aの周囲や内部を介してのセル室6aへの侵入を抑制でき、その結果、セル室6aでの火花放電の発生と、これによって引き起こされるセル室6aの内部滞留ガスへの引火と、これによる鉛蓄電池21の破損を抑制できるとともに、液口栓A周囲に電解液や水分が付着しても、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間での液絡が抑制され、鉛蓄電池を構成するセルの全てあるいは一部の放電を抑制することができる。
【0053】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態による鉛蓄電池21の天面を示す図である。第3の実施形態による鉛蓄電池21は、前記した第2の実施形態による鉛蓄電池11の第2の導電層Eの長さを短縮化した第2の導電層E′を有している他は、第2の実施形態による鉛蓄電池11と変わるところはない。第2の実施形態による鉛蓄電池11においては、第2の導電層Eは、第1のセル導電層B1〜第6のセル導電層B6のすべてに対向する位置に配置されていたが、第3の実施形態による鉛蓄電池21において、第2の導電層E′は、第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6に対向配置した例を示している。
【0054】
第3の実施形態では、第2の導電層E′を第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6にわたって配置した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第2セル導電層B2〜第6セル導電層B6にわたってもよく、例えば、第6セル導電層B6のみに対向して配置してもよい。なお、例えば、図4に示したように、第2の導電層E′に対応しない第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3と第2の導電層E′との離間距離は考慮する必要がない。なぜならば、これらの第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3のいずれかの導電層に帯電した静電気は、結局は、第4セル導電層B4から第2導電層E′を介して正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地されるからである。
【0055】
本発明の第3の実施形態によれば、前記した第1〜第2の実施形態による鉛蓄電池1,11と同様、電槽6と蓋2に帯電した静電気の、液口栓Aの周囲や内部を介したセル室6aへの移行を抑制でき、結果として、第1〜第2の実施形態で述べたと同様、セル室6a内で発生する、火花放電と、これによるセル室6a内に滞留したガスへの引火およびこれによる鉛蓄電池21の破損を抑制できる。また、液口栓A付近に付着した電解液や水分によるセル間の液絡を抑制できる。
【0056】
本発明の第1〜第3の実施形態の鉛蓄電池1,11,21は、それぞれ前記した作用効果を奏するが、その効果の度合いは、第1および第2の実施の形態による鉛蓄電池1,21において顕著に得られるが、第2の実施形態による鉛蓄電池11において最も顕著に現れる。
【0057】
しかしながら、これら第1〜第3の実施形態の鉛蓄電池1,11,21の製造コストは、第1の実施形態による鉛蓄電池1が最も安価であり、次に第3の実施形態による鉛蓄電池21が若干効果となり、第2の実施形態による鉛蓄電池が最も高価となるため、本発明を実施するにあたっては、鉛蓄電池1,11,21の設置される環境条件、すなわち、静電気が発生しやすい状況にあるかどうかを勘案して、前記した第1〜3の実施形態から、最も好ましい形態を採用すればよい。
【0058】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池31の天面を示す図、図6は、本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池31の要部断面(図5におけるM−M′断面)を示す図である。
【0059】
本発明の鉛蓄電池31は、本発明の鉛蓄電池1における第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6をポリプロピレン樹脂シート等の非導電性シート32上に形成し、この非導電性シート32を蓋2上に粘着剤33で貼り合せたものである。なお、非導電性シート32には、第1セル液口C1〜第6セル液口C6に対応した貫通孔34が設けられている。なお、本発明において、非導電性シート32は、厚み0.1mm〜0.5mm程度のシート状のものであってもよく、厚み0.5mmを越え、5.0mm程度以下のプレート状のものであってもよい。
【0060】
なお、非導電性シート32は、電槽6および蓋2と同等の比抵抗(1012Ω・cm〜1016cm)あるいは、これ以上の比抵抗を有しているものを用いる。したがって、このような非導電性シート32は、前記したような比抵抗値を有した、実質的な絶縁体であり、かつ、電解液と接触する可能性を有していることから、これに耐え得る、耐酸性、および鉛蓄電池が暴露される環境(例えば、始動用鉛蓄電池においては、−20℃〜90℃)に耐え得る耐候性を有しているものであれば、前記したポリプロピレン樹脂シートに限定されず、他の材料を用いることができる。
【0061】
本発明の第4の実施の形態によれば、本発明の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、さらに、蓋2を専用部品とせず、既存の蓋2に第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を形成した非導電性シート32を装着するだけで、本発明の構成を得ることができ、蓋2の共通化といった観点で好ましい。
【0062】
なお、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および正極端子3あるいは負極端子4との位置関係は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、また、導電層としても同様の材料を用いることができる。また、非導電性シート32の蓋2への貼り付けにあたって、本例では、粘着剤をもちいた例を示したが、この粘着剤として、例えば、水性エマルジョン系のものが環境的側面で好ましい。また、粘着剤に限らず、接着剤でもよい。また、粘着、接着といった面と面との接合を行なう必要はなく、例えば、非導電性シート32の本体を、プレート状の樹脂成型部品としておき、そのコーナー部に蓋2と係止めする嵌合構造を設けることによって、非導電性シート32を蓋2の上で固定する構造としてもよい。
【0063】
例えば、係止手段の一例として、非導電性シート32のコーナー部に突起部(図示せず)を設けるとともに、この突起部と嵌合する凹部(図示せず)を蓋2に設けることができる。
【0064】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態による鉛蓄電池41の天面を示す図である。本発明の鉛蓄電池41は、本発明の第2の実施形態の鉛蓄電池11における第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6をポリプロピレン樹脂シート等の非導電性シート32上に形成し、この非導電性シート32を蓋2上に粘着剤33で貼り合せたものである。なお、非導電性シート32には、第1セル液口C1〜第6セル液口C6に対応した貫通孔34が設けられている。
【0065】
本発明の第5の実施の形態によれば、本発明の第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、さらに、蓋2を専用部品とせず、既存の蓋2に第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および第2の導電層Eを形成した非導電性シート32を装着するだけで、本発明の構成を得ることができ、蓋2の共通化といった観点で好ましい。
【0066】
なお、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6と第2の導電層E、および正極端子3あるいは負極端子4との位置関係は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、また、導電層としても同様の材料を用いることができる。また、非導電性シート32の蓋2への貼り付けにあたって、本例では、粘着剤をもちいた例を示したが、この粘着剤として、例えば、水性エマルジョン系のものが環境的側面で好ましい。また、粘着剤に限らず、接着剤でもよい。また、粘着、接着といった面と面との接合を行なう必要はなく、例えば、非導電性シート32の本体を樹脂成型部品としておき、そのコーナー部に蓋2と係止めする嵌合構造を設けることによって、非導電性シート32を蓋2の上で固定する構造としてもよいことは、前記した第4の実施形態と変わるところはない。
【0067】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池51の天面を示す図を図8に、この鉛蓄電池51の要部断面(図8におけるN−N′断面)を図9に示す。
【0068】
図8および図9に示したように、本発明の鉛蓄電池51は、前記した第1〜第5の実施形態による鉛蓄電池1,11,21,31,41と同様、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを構成する極板群8および電解液10とが電槽6を区画形成するセル室6aと、この電槽6を閉じる蓋2とを備え、この蓋2には、前記セルに対応した液口、すなわち、本実施形態においては、第1セル液口C1〜第6セル液口C6を備えている。
【0069】
そして、これら第1セル液口C1〜第6セル液口C6のぞれぞれに装着され、かつ電槽6の内部、すなわちセル室6aの内部で発生した酸素ガスや水素ガスを大気中に排出するための排気口5を有した液口栓Aを備えている。
【0070】
本実施形態による鉛蓄電池51は、その蓋2の表面に、非導電性のシート32′が粘着剤33あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、これら液口栓Aを覆うよう貼り合わされ、かつ、この非導電性シート32′の、液口栓Aに対向する部位に、液口栓A毎に対応した導電層、すなわち、本実施形態においては、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を備えている。
【0071】
これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6とは、互いに接触せず、隣接しあうこれら導電層間は互いに離間距離d(d>0)、すなわち、図8においては、離間距離d1、d2、d3、d4、d5を有して互いに離間するよう、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の間には、非導電部7aが配置されている。
【0072】
そして、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の、少なくとも一つが、蓋2に設けた正極端子3あるいは負極端子4に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6において、隣接しあう導電層間の離間距離d(本実施形態においては、d1、d3、d3、d4、d5)と、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の中の少なくとも一つの導電層と、正極端子3もしくは負極端子4との距離xとを、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のうち、任意の導電層に帯電した静電気を、正極端子もしくは負極端子のいずれか一方に放電可能となるよう短くする。
【0073】
離間距離d(d1、d2、d3、d4、d5)は、前記した第1〜第5の実施形態と同様、0を含まず0を越える値であって、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下とする。
【0074】
また、距離xについても、前記した第1〜第5の実施形態と同様、0以上の値であって、好ましくは、5.0mm以下、より好ましくは、2.0mm以下とする。なお、x=0mmは、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のいずれか一つが、正極端子3もしくは負極端子4と接触していることを意味するものであり、この点は、前記した第1〜第5の実施形態および、ここで述べている第6の実施形態および後述する第7の実施形態において変わるところはない。
【0075】
本発明の第6の実施形態では、前記した第1〜第5の実施形態とは異なり、第1セル液口C1〜第6セル液口C6、これらの各液口に装着された液口栓Aおよび各液口栓Aに設けた排気口5を、各セル毎に配置された第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6で覆うことができるため、前記した各実施形態に比較して、電槽6および蓋2に帯電した静電気は、これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を介して、より速やかに正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地される。なお、図8および図9では第6セル導電層B6に一体に導出部B6aを設け、この導出部B6aの先端が、負極端子4に距離x(x≧0)を有して近接した形態を示している。
【0076】
第6の実施形態による鉛蓄電池51は、第1〜第5の実施形態で示した鉛蓄電池1,11,21,31,41に比較して、電槽6や蓋2に帯電した静電気が、液口栓Aと第1セル液口C1〜第6セル液口C6との装着面および液口栓Aに設けた排気口5からのセル室6aへの侵入がより効果的に抑制され、セル室6a内への静電気の侵入と、放電火花の発生、セル室6a内に滞留した水素ガスへの引火と、これによる電槽6や蓋2等の鉛蓄電池51を構成する各部品の破損が、より効果的に抑制できる。
【0077】
また、第6の実施形態においても、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は互いに直接接触せず、隣接する導電層の間には非導電部7aが形成されているため、液口A、特に排気口Aから排出された酸霧や、水分が付着しても、隣接するセル間での液絡が抑制され、鉛蓄電池を構成する、各セルの一部あるいはすべてが液絡によって放電し、容量不足となる事態を回避できる点は、前記した第1〜第5の実施形態と同様の作用効果である。
【0078】
さらに、第6の実施形態においては、排気口5からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも排気口5から非導電性シート32′の端部にかけて、非導電性シート32′と蓋2とが貼り合わされていない非接合部52を設ける。なお、この非接合部52は、図8および後述する図10において、破線で示したP−P′間に帯状に形成することができる。ただ、本発明では、非接合部52の形状を帯状に限定するものではなく、それぞれの液口栓Aに設けた排気口5からの排出ガスが、大気中に放出可能な形状であればよいことは言うまでもない。
【0079】
なお、排気経路として機能する非接合部52を形成する関係上、非導電性シート32′と蓋2との貼り合せは、粘着剤33、あるいは接着剤によって為されることが好ましい。すなわち、非導電性シート32′の蓋2との貼り合せ面に、非接合部52を形成する部分を除く部位に粘着剤33あるいは接着剤を塗工しておき、非導電性シート32′と蓋2とを貼り合せることが好ましい。このような手法は、非接合部52の寸法形状や形成位置のばらつきを抑制する上で好ましい。
【0080】
このような、本発明の第6の実施形態によれば、排気口5が鉛蓄電池51の外部に露出しないため、鉛蓄電池51の外部の空気流によって、排気口5からのセル室6a内部の水蒸気の排出が抑制されるため、蒸発による電解液中の水分減少の抑制という効果を併せて得ることができ、好ましい。
【0081】
排気口5が鉛蓄電池の外部に露出している場合、特に、排気口5周辺に空気流が存在する場合、セル室6a内が大気圧に対して負圧となり、セル室6aの内部の水蒸気が大気中に排出されるとともに、セル室6a内に大気が導入され、電解液中の水分蒸発が促進され、鉛蓄電池の液面低下をもたらす。本発明の第6の実施形態によれば、このような液面低下が抑制され、セル室6a内の空間容積の増大も抑制されるため、セル室6a内に滞留する水素ガス量が、他の実施形態に比較して少なくなるため、安全性に上で、より好ましい。
【0082】
本発明の第6の実施の形態において、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は、第1〜第5の実施形態に採用したものを用いることができる。但し、非導電性シート32′と蓋2の表面間にこれら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を形成する必要上、その形成厚みがなるべく薄いものが好ましいことは言うまでもない。
【0083】
例えば、カーボン、チタン等の導電性物質を溶媒に分散した導電性インクを用い、インクジェット方式により、導電性インクを非導電性シート32′に吐出し、所望形状の第1のセル導電層B1〜第6のセル導電層B6を形成することができる。また、スズ、チタンあるいは亜鉛等の導電性酸化物を分散した導電性インクを用いてもよい。
【0084】
また、導電性インクを用いず、前記したような導電性物質を非導電性シート32′上に蒸着することによって、所望形状の第1のセル導電層B1〜第6のセル導電層B6を形成することができる。
【0085】
なお、これらの材料を用いた導電層の形成手法は、本実施形態のみならず、第1〜第5の実施形態および後述する第7の実施形態にも適用できる。また、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のみならず、第2の導電層E,E′の形成にも適用することができる。
【0086】
(第7の実施形態)
図10に、第7の実施形態による鉛蓄電池61の天面を示す。鉛蓄電池61は、前記した第6の実施形態による鉛蓄電池51の第1セル導電層B1〜第6セル導電層のいずれか一つを、正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方と接するか、距離x(x≧0、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下)をもって近接配置した構成に替えて、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のいずれも正極端子3もしくは負極端子4に接することなく、本発明の第2の実施形態および第3の実施形態で述べたと同様の第2の導電層Eもしくは第2の導電層E′を非導電性シート32′の蓋2との貼り合せ面に形成したものである。
【0087】
図10に示した第2の導電層Eは、液口栓A上に配置した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6より第2の離間距離d′(d′>0、図10においては、それぞれd1′、d2′、d3′、d4′、d5′)を有して離間するとともに、蓋2の表面に設けた正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置される。なお、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の互いに隣接しあう導電層間の離間距離d(d>0、図10においては、それぞれd1、d2、d3、d4、d5)としたときに、これら第2の距離y、離間距離dおよび第2の離間距離d′を、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の任意の導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短く設定する。
【0088】
このような本発明の第7の実施形態の構成によれば、第6の実施形態に比較して、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に帯電した静電気が、第2の導電層Eを経由して、より速やかに、正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地でき、安全性の上でより好ましい。
【0089】
なお、図10において、第2の導電層Eを第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6にわたって均一に配置した例を示したが、図4に示した第3の実施形態の如く、第2の導電層E′を第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の一部(図4においては第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6)に対応して配置してもよい。この場合、第2の導電層E′に対応しない第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3と第2の導電層E′との離間距離は考慮する必要がない。なぜならば、これらの第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3のいずれかの導電層に帯電した静電気は、結局は、第4セル導電層B4から第2導電層E′を介して正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地されるからである。
【0090】
なお、第7の実施形態では、第2の導電層E′を第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6にわたって配置した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第2セル導電層B2〜第6セル導電層B6にわたってもよく、例えば、第6セル導電層B6のみに対向して配置してもよい。
【0091】
本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池61において、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の隣接しあう導電層間の第2の離間距離d′、すなわち、図10における、d1′、d2′、d3′、d4′およびd5′を前記したように、0を含まず0を越えた寸法とするが、好ましくは、5.0mm、より好ましくは2.0mmとすることができる。但し、この距離は、ポリプロポレン樹脂製(PPホモポリマー、PP−PEコポリマーのどちらでもよく、シリカ、タルク等のフィラーを含んでもよい)について好ましい値であって、他の形状、樹脂材料、用途の鉛蓄電池については別途の実験により、その最適値を定める必要があり、前記した第1〜第6の実施形態においても同様である。
【0092】
さらに、本発明の鉛蓄電池61では、液口栓Aに設けた排気口5から排出されるガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくともこれら排気口5から非導電性シート32′の端部にかけて、この非導電性シート32′と蓋2とが貼り合わされていない非接合部52を有しており、この非接合部52が電池内部で発生したガスの大気中への排出経路となることは第6の実施形態による鉛蓄電池51と変わるところはない。
【0093】
本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池61の作用効果は、前記した本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池51で記載した作用効果と共通であるが、第2の導電層E(もしくは第2の導電層E′)を設けたことにより、帯電した静電気が、より速やかに正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地され、安全上、より好ましいことは既述した通りである。
【0094】
以上、記載したように、本発明によれば、鉛蓄電池の電槽や蓋に帯電した静電気は、液口周囲あるいは液口を覆って配置された導電層によって集められ、直接あるいは第2の導電層を介して、正極端子あるいは負極端子に接地される。その結果、従来発生していた、蓋と液口栓との隙間、あるいは液口栓に設けた排気口を介した静電気の電池内部への移行が顕著に抑制される。その結果、電池内部に引き込まれた外部静電気による放電火花が発生することがないため、この放電火花による電池内部に滞留した水素ガスへの引火と、引火時の衝撃による鉛蓄電池の破損を顕著に抑制することができる。
【0095】
また、各液口栓の周囲、あるいはこれらを覆う導電層は、各液口栓毎に互いに独立して接することなく設けられているので、液口栓もしくはその近傍に、例えば充電時に発生する酸霧が付着したり、あるいは蒸発水分が結露して付着した場合でも、隣接するセル間で液絡が発生しないため、従来の特許文献1で示された鉛蓄電池において、液絡によって生ずる、鉛蓄電池を構成する、一部あるいはすべてのセルの容量低下が顕著に抑制することができる。
【実施例】
【0096】
(実施例1)
本発明の効果を確認するために、本発明例および従来例の鉛蓄電池を作成した。電池形式としては、JIS D5301:2006(始動用鉛蓄電池)に規定された95D31形電池(公称電圧12V、5時間率定格容量64Ah)を製作し、それらの供試電池に静電気試験機により静電気の印加を行い、液口栓の周辺で放電火花が発生した際における引火破損の状況の確認実験を行った。各供試電池の構成を以下に示す。なお、供試電池の電槽および蓋はいずれもPP−PEのコポリマーであって、シリカおよび酸化チタンのフィラーおよび強化剤を含み、いずれの比抵抗も1016Ω・cmである。
【0097】
(本発明例による電池A1〜A8)
本発明例による電池A1〜A8は、本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池1に相当するものであり、離間距離d(但し、d1=d2=d3=d4=d5)を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、距離xを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離dおよびxの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0098】
(本発明例による電池B1〜B8)
本発明例による電池B1〜B8は、本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池11に相当するものである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d1′=d2′=d3′=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0099】
(本発明例による電池C1〜C8)
本発明例による電池C1〜C8は、本発明の第3の実施形態による鉛蓄電池21に相当するものである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0100】
(本発明例による電池D1〜D8)
本発明例による電池D1〜D8は、本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池31に相当するものである。非導電層は0.3mm厚みのポリプロピレン樹脂シートである。離間距離d(但し、d1=d2=d3=d4=d5)を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、距離xを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離dおよびxの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0101】
(本発明例による電池E1〜E8)
本発明例による電池E1〜E8は、本発明の第5の実施形態による鉛蓄電池41に相当するものである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d1′=d2′=d3′=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表2に示す。
【0102】
(本発明例による電池F1〜F8)
本発明例による電池F1〜F8は、本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池51に相当するものである。非導電層は0.15mm厚みのPET樹脂シートである。離間距離d(但し、d1=d2=d3=d4=d5)を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、距離xを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離dおよびxの組み合わせは、後述する表2に示す。
【0103】
(本発明例による電池G1〜G8)
本発明例による電池G1〜G8は、本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池61に相当するものである。非導電層は0.15mm厚みのPET樹脂シートである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d1′=d2′=d3′=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表2に示す。
【0104】
前記した本発明例の各電池に使用した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および第2の導電層E,E′は、カーボンを含有したオレフィン系インクを30μm厚で塗工したものであり、比抵抗値は、102Ω・cmである。
【0105】
また、本発明例の各電池において、ポリプロピレン樹脂シートおよびPET樹脂シートの蓋への固定は、水性アクリルエマルジョン系の粘着剤を用いて行なった。
【0106】
(従来例による電池H)
従来例による電池Hは、図11に示す鉛蓄電池71であり、第1の実施形態の電池、すなわち、本発明例の電池A1〜A8において離間距離dを0mmとし、かつ距離xを0mmとした電池であり、すべての液口栓Aの周囲を囲うとともに、負極端子4に直接接続された、一括導電層Fを蓋2の表面上に備えた電池である。なお、一括導電層Fは、本発明例と同様、カーボンを含有したオレフィン系インクを30μm厚で塗工したものであり、比抵抗値は、102Ω・cmである。
【0107】
(従来例による電池I)
従来例による電池Iは、従来例の電池Hに一括導電層Fを設けない電池である。
【0108】
上記した本発明例の電池A1〜A8、電池B1〜B8、電池C1〜C8および電池D1〜D8の離間距離d(第2の離間距離)および距離x(距離y)の組み合わせを表1に、本発明例の電池E1〜E8、電池F1〜F8および電池G1〜G8の離間距離d(第2の離間距離)および距離x(距離y)の組み合わせを表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
表1および表2に示した本発明例の電池および従来例の電池Hおよび電池Iについて、以下に示す条件で、静電気印加試験を行なった。
【0112】
すなわち、各供試電池を満充電状態とした後、試験温度を25℃、試験湿度を50RH%の気相雰囲気下に24時間放置した。その後、同じ気相雰囲気中にて、各供試電池を6.4A定電流で30分間連続充電を行うことにより、電池内に水素ガスと酸素ガスを滞留させた。そして、各供試電池に装着された液口栓Aの天面から上方に5mm離間した位置に静電気印加用電極の先端を位置させ、前記した30分間の連続充電の終了直後に、静電気印加用電極に+30kVの電位を印加することによって、供試電池に静電気を帯電させた。なお、静電気印加用電極は、正極端子より数えて一番目のセルに装着された液口栓Aの直上に配置した。また、試験のn数は、各供試電池についてn=24とした。
【0113】
そして、静電気を印加した場合での各供電池の外観を観察し、電槽や蓋の破損の有無を確認したこれらの結果を表3および表4に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
表3および表4に示した結果から、本発明の構成によれば、従来例の電池Iに対して顕著に静電気印加時の電池の破損を顕著に抑制できることがわかる。
【0117】
本発明の電池破損を抑制する効果をより顕著とするために、距離x(距離y)が0mmの場合には、離間距離d(第2の離間距離d′)を5.0mm以下とすることが好ましく、距離x(距離y)が5.0mmの場合には、離間距離d(第2の離間距離d′)を2.0mm以下とすることが好ましい。
【0118】
なお、表3および表4には示していないが、本発明例の電池A7、電池E7および電池G8は、距離xもしくは距離yを5.0mmから2.0mmとすることにより、電池破損数は0とすることができた。
【0119】
なお、従来例の電池Hについては、電池破損数は0であった。従来例の電池Hでは、一括導電層Fが負極端子4に接触しているため、本発明例では、距離x(距離y)を0.0mmとした電池と比較すべきであり、このような比較によれば、距離x(距離y)を0.0mmとした本発明例の電池においては、すべて電池破損数は0であり、従来例の電池Iと同等の電池破損抑制効果を有していた。
【0120】
なお、本実施例において、すべての導電層(第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6、第2の導電層E,E′および一括導電層F)の比抵抗を102Ω・cmとしたが、本発明の発明者らが別途に行なった実験では、上記の各導電層の比抵抗を104Ω・cmとした場合においても本実施例と同様の結果が得られた。なお、各導電層102Ω・cm未満としたときに、本発明の効果が得られることは自明であり、本発明の高価を得る上で、その下限値を定める必要はないが、が、本発明においては、上記の各導電層を蓋2の表面上に配置するという構成からくる導電層の厚みの制限から、比抵抗の下限は10−8Ω・cm程度になると考えられる。
【0121】
(実施例2)
前記した実施例1において、表1〜表2に示した本発明例による電池(電池A1〜A8、電池B1〜B8、電池C1〜C8、電池D1〜D8、電池E1〜E8、電池F1〜F8おおよび電池G1〜G8)および比較例による電池Hおよび電池Iの各1個を作成し、溢液時でのセル間の液絡の発生の有無を確認することを目的として、以下に示す条件で液絡試験を行なった。
【0122】
上記の各供試電池について、溢液を再現するために、各セルに20℃時の換算密度1.280の希硫酸を追加で補液し、電解液面を、規定の上限液面線よりも20mm高い位置に調整した。
【0123】
次に、各供試電池を、25℃雰囲気中にて14.7V定電圧充電(最大充電電流50A)で12時間充電することにより、各供試電池を満充電状態とした上で、6.4Aで10.5Vまで定電流放電することにより初期容量確認を行ない、各供試電池の容量が正常であることを確認した。その後、再度、前記した定電圧充電によって供試電池を満充電状態とした後、さrに6.4Aの定電流で10時間充電することにより、補充電を行なった。補充電電気量は64Ahであり、供試電池の5時間率定格容量と同一である。補充電終了状態において、各供試電池に装着された液口栓の排気口から排出された酸霧および水蒸気が結露して、液口栓およびその周囲近傍に酸性の液体が付着した状態となっていた。
【0124】
次にこれら液口栓およびその周囲近傍に酸性の液体が付着した各供試電池について、25℃、80RH%の恒温恒湿条件で72時間放置し、その後すべての各供試電池について6.4Vの定電流で10.5Vまで放電することにより、残存容量を測定し、初期容量と比較することによって、液絡による放電容量の低下の有無とその程度を確認した。
【0125】
その結果、本発明例の電池および比較例の電池Iでは、残存容量は初期容量より0.2〜0.25Ahの低下が認められたが、この程度の低下は自己放電レベルであって、何ら異常のない範囲であった。
【0126】
一方、比較例の電池Hの残存容量は、初期容量より4.6Ah低下しており、前記した自己放電レベルを明らかに越える量の放電容量の低下が認められた。これは比較例の電池Hにおいては、液口栓から排出された酸霧および水分が、蓋表面上に形成した一括導電層Fに付着し、この一括導電層Fが各液口にわたって連続して形成されているがために、液絡が発生し、これによりセルの放電が行なわれたと推測される。
【0127】
一方、本発明例の電池では、導電層は各液口間で非導電部7aによって遮断されているために、比較例の電池Hで発生したような液絡と、これによる電池の容量低下が顕著に抑制できたものである。
【0128】
さらに、本発明の第6および第7の実施形態によれば、他の実施形態に比較して、保存中の減液量を30%削減できることが別途の実験により明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の構成によれば、静電気に起因する引火破損が顕著に抑制され、さらに、液絡による容量低下を顕著に抑制した鉛蓄電池を提供することができ、工業上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池の要部断面を示す図
【図3】本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図4】本発明の第3の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図5】本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図6】本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池の要部断面を示す図
【図7】本発明の第5の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図8】本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図9】本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池の要部断面を示す図
【図10】本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図11】従来例の鉛蓄電池の天面を示す図
【符号の説明】
【0131】
1 (第1の実施形態による)鉛蓄電池
2 蓋
3 正極端子
4 負極端子
5 排気口
6 電槽
6a セル室
7a,7b,7c 非導電部
8 極板群
9 極柱
10 電解液
11 (第2の実施形態による)鉛蓄電池
21 (第3の実施形態による)鉛蓄電池
31 (第4の実施形態による)鉛蓄電池
32,32′ 非導電性シート
33 粘着剤
34 貫通孔
41 (第5の実施形態による)鉛蓄電池
51 (第6の実施形態による)鉛蓄電池
52 非接合部
61 (第7の実施形態による)鉛蓄電池
71 (従来例による)鉛蓄電池
A 液口栓
Aa パッキン
B1 第1セル導電層
B2 第2セル導電層
B3 第3セル導電層
B4 第4セル導電層
B5 第5セル導電層
B6 第6セル導電層
B6a 導出部
C1 第1セル液口
C2 第2セル液口
C3 第3セル液口
C4 第4セル液口
C5 第5セル液口
C6 第6セル液口
E,E′第2の導電層
F 一括導電層
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、充電時に希硫酸電解液中の水の電気分解により水素ガス及び酸素ガスを発生し、電池内部の空間に滞留する。これらのガスは、放置することにより液口栓のガス排気口より大気中に放出されていくが、充電直後は電池内の空間にガスが滞留しており、電池内部に火点が発生した場合、ガスに引火して電池破損に至る可能性がある。
【0003】
破損の原因となる火点としては様々なものが考えられるが、その一つとして静電気があげられる。静電気による破損は、電池周辺で静電気による放電火花が発生して、これが液口栓の外周部やガス排気口部にある隙間から、電池内部に侵入することによって生ずるものと考えられる。
【0004】
上記の課題に対する対策として、例えば、特許文献1では、蓋上の液口栓周辺部に、上部に絶縁性を有した絶縁層を、下部に導電性を有した導電層を設置し、その導電層の一部を負極端子もしくは電池締付金具に接続させることで、放電火花が液口栓の外周部やガス排気口部から電池内部に侵入することなく導電層に吸収され、鉛蓄電池の破損を抑制できることが示されている。
【0005】
また、導電層の外側表面は絶縁層により保護されているため、工具等により、誤って導電層と正極端子間とを接触させ、短絡させることもない。
【0006】
このように、静電気による放電火花が液口栓の外周部やガス排気口部から電池内に侵入することに起因する破損の防止対策として、鉛蓄電池の蓋上に負極端子に接続された導電層を設置し、導電層の外側表面を絶縁層により保護することが考えられる。
【特許文献1】特開平4−101353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した特許文献1では、鉛蓄電池を構成するセルの液口栓周辺で電解液の漏出や、水分の結露や付着が起きた場合、セルと負極端子間、隣接するセル間で、液絡が発生し、鉛蓄電池を構成する、一部もしくはすべてのセルで液絡による放電が発生し、鉛蓄電池の容量が低下したり、過放電に至るという課題があった。
【0008】
特に、すべてのセルで均一に放電が進行する場合は、鉛蓄電池端子間で補充電することにより、容量が回復する場合があるが、一部のセルが放電したり、過放電した場合、鉛蓄電池を補充電すると、液絡による放電がなかったセルが過充電されることになり、補充電によっても、元の放電容量まで回復しない場合があった。
【0009】
本発明は、鉛蓄電池の液口栓近傍に静電気火花による引火を防止するための導電層を電池の蓋上に配置した電池において、液絡によるセルの放電を抑制した、信頼性に優れた鉛蓄電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、 前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1の鉛蓄電池において、前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、前記蓋の表面上で、前記非導電性シートが係止手段によって、前記蓋に固定され、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面の前記貫通孔の周囲の一部に前記導電層を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、前記蓋の表面上に、非導電性シートが、粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に独立した導電層を備え、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかの鉛蓄電池において、前記導電層の比抵抗が10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の鉛蓄電池において、前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記距離xを0〜5.0mmとした鉛蓄電池を示すものである。
【0015】
そして、本発明の請求項6に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、 前記セルを収納する電槽を、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、かつ、前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を備え、前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【0016】
また、本発明の請求項7に係る発明は、請求項6の鉛蓄電池において、前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、係止手段によって固定され、かつ、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面に前記導電層と前記第2の導電層を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0017】
また、本発明の請求項8に係る発明は、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、あるいは係止手段によって固定され、かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に導電層を備え、前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、かつ、前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を、前記非導電性シートの前記蓋と対向する面に備え、前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池を示すものである。
【0018】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項6〜8のいずれかに記載の鉛蓄電池において、前記導電層および前記第2の導電層の比抵抗が、いずれも10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【0019】
また、本発明の請求項10に係る発明は、請求項6〜9の鉛蓄電池において、前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の距離yを0〜5.0mmとした鉛蓄電池を示すものである。
【0020】
さらに、本発明の請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれかの鉛蓄電池において、前記電池端子が負極端子であることを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【発明の効果】
【0021】
前記した本発明の構成によれば、鉛蓄電池の液口栓から電解液が漏出したり、あるいは液口栓付近に水分が結露や付着しても、蓋表面に設けた静電気火花除去のための導電層によって、隣接するセル間で液絡による放電が発生することがなく、信頼性に優れた鉛蓄電池を提供できるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態による鉛蓄電池を図面を用いて説明する。なお、以下に述べる実施形態は、6セルが直列接続された、公称電圧12Vの始動用鉛蓄電池に、本発明を適用した形態例を述べたものであって、本発明は、12Vの始動用鉛蓄電池のみに限定されるものではなく、複数のセルを有した鉛蓄電池に適用することができる。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池1の天面を示す図、図2は、図1における鉛蓄電池1のL−L′断面を示す図である。
【0024】
本発明の鉛蓄電池1は、図2に示したように、電槽6に設けたセル室6aに、電解液10とともに収納された極板群8から導出された極柱9が、電槽6に接合した蓋2にインサート成型された負極端子4に接続された構成を有している。なお、図2に示した、鉛蓄電池のL−L′断面を示す図は、負極端子4が接続された、正極端子3が接続された第1番目のセルから負極方向へ数えて第6番目のセルの断面を示しており、第1番面のセルには、正極の極柱(図示せず)が存在、第2〜第5番目のセルには、極柱は存在せず、隣接する極板群8間を接続するための接続体が存在することは、従来の鉛蓄電池と変わるところはない。
【0025】
本発明の鉛蓄電池1では、そのセルに対応した、第1セル液口C1〜第6セル液口C6を有しており、第1セル液口C1〜第6セル液口C6のそれぞれに、液口栓Aが装着されている。液口栓Aには、セル室6a内部の滞留ガスを大気中に排出するための排気口5を有している。なお、図示はしないが、液口栓A内に、電解液飛沫の排気口5からの漏出を抑制するための防沫体、あるいは減液抑制や、外部発火源からのセル室6aへの炎の引き込みを抑制する、いわゆるフレームアレスタとして機能する多孔質フィルタを配置してもよい。また、液口栓Aと蓋2との装着部の液密性を確保するために、必要に応じてパッキンAaを備える。
【0026】
本発明の鉛蓄電池1を特徴付ける点は、図1に示したように、第1セル液口C1〜第6セル液口C6の周囲もしくは、周囲の一部に、第1セル液口C1〜第6セル液口C6に対応して、それぞれ第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6が配置され、これらはすべて独立して蓋2の表面上に配置されている。すなわち、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は互いに接することなく、それぞれの間に非導電部7aを有して配置されており、非導電部7aの最も狭い部位の間隔寸法をd1、d2、d3、d4およびd5とする。なお、非導電部7aは蓋2の表面上に何らかの層を形成してもよいが、ただ単に、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間の、隙間であってもよい。
【0027】
一般的な始動用鉛蓄電池用の蓋に用いられるポリプロピレン樹脂の比抵抗は1012Ω・cm〜1016cmであり、絶縁体と見なせることから、非導電部7aとして、別途の絶縁材料を、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間に配置する必要はない。
【0028】
本発明の鉛蓄電池1では、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の中の任意の導電層から、正極端子3、さらに好ましくは、負極端子4に接触する、もしくは近接する導出部が設けられる。図1に示した例では、負極端子4に最も近接する第6セル導電層B6から導出部B6aを負極端子4に間隔xを有して近接配置した例を示している。
【0029】
蓋2の表面に設ける第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および導出部B6aとして、比抵抗値が104Ω・cm以下の材料、より好ましくは、10Ω・cm以下の材料を用いる。また実際には、比抵抗が10-6Ω・cm以下の材料は、コストが高いため、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および導出部B6aとして用いる材料としては、金属系でAl、Cu、Ag又はPb、もしくはTi、SnおよびZnの導電性金属酸化物層や、カーボン、あるいはこれらの導電性物質の粉体や繊維を分散した導電性合成樹脂を用いることができ、これらの材料の比抵抗値として10-6Ω・cm〜10Ω・cmであるものが好ましい。
【0030】
そして、上記の導電性材料による第1セルB1〜第6セル導電層B6および導出部B6aの蓋2の表面への形成方法としては、前記した導電性材料を溶媒に分散させた塗量を蓋2の表面上に塗布する塗工工法、あるいは蒸着工法、印刷による形成等の手法が適用できる。また、さらに、前記した導電性合成樹脂の成型部品を、第1セル液口C1〜第6セル液口C6の周囲、もしくは、その周囲の一部に嵌合固定や、接着固定あるいは熱溶着によって固定してもよい。さらには、この導電性合成樹脂からなる成型部品を蓋2の第1セル液口C1〜第6セル液口C6にインサート成型してもよい。
【0031】
本発明では、隣接しあう第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の中の任意の隣接しあう導電層の対間の離間距離をdとしたとき、すなわち、本実施形態においては、図1に示した、第1セル導電層B1と第2セル導電層B2の離間距離をd1、第2セル導電層B2と第3セル導電層B3の離間距離をd2、第3セル導電層B3と第4セル導電層の離間距離をd3、第4セル導電層B4と第5セル導電層B5の離間距離をd4、第5セル導電層B5と第6セル導電層B6の離間距離d5としたとき、これら離間距離d1〜d5は0を含まず、0を越え(すなわち、d1>0、d2>0、d3>0、d4>0、d>0)とし、かつ、これら離間距離d1〜d5を、任意の導電層に静電気が帯電したときに、この静電気を隣接する導電層に移動するに十分な短い距離に設定する。例えば、この値としては、d1、d2、d3、d4およびd5を、好ましくは、0.1mm以上、5.0mm以下、特に、より好ましくは、0.1mm以上、2.0mm以下とする。
【0032】
さらに、本発明では、導電層と端子の距離をxとしたとき、すなわち、本実施形態においては、図1に示した第6セル導電層B6より延出した導出部B6aと負極端子4との距離をxとしたときに、x=0mm。すなわち、第6導電層B6が導出部B6aを介して負極端子4に接する、もしくは、この導出部B6aから負極端子4に静電気の移行が行なわれるに十分短い距離に設定する。この距離xとしては、前記した離間距離dと同様、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは、2.0mm以下とする。したがって、距離xの範囲は、好ましくは、0mm以上5.0mm以下、より好ましくは0mm以上2.0mm以下とする。
【0033】
上記した、本発明の第1の実施形態によれば、液口栓周囲に帯電した静電気は、隣接する液口栓周囲に形成した導電層に移行し、最終的には電池端子に設置される。より具体的に図1を用いて説明すると、例えば、第1セル導電層B1に帯電した静電気は、第2セル導電層B2、第3セル導電層B3、第4セル導電層B4、第5セル導電層B5を介して第6セル導電層B6に移行し、第6セル導電層B6から導出部B6aを介して負極端子4に移行するため、第1セル導電層B1に帯電した静電気の、第1セル液口あるいは、排気口5を介してセル室6aの内部への移行が抑制され、結果として、セル室6aにおいて、内部の帯電した樹脂部品から、極柱9、極板群8および電解液10への火花放電の発生が抑制され、安全性に優れた鉛蓄電池を提供できる。
【0034】
なお、上記では、第1セル導電層B1に静電気が帯電した例を示したが、第2セル導電層B2〜第6セル導電層B6に静電気が帯電した場合にも、前記したと同様のメカニズムにより、対応するセル室6a内での火花放電の発生が抑制され、安全性に優れた鉛蓄電池を提供できる。
【0035】
さらに、本実施の形態例では、第6セル導電層B6に導出部B6aを設けたが、第1セル導電層B1〜第5セル導電層B5に設けてもよい。また、導出部B6aを設けず、例えば、第6セル導電層B6を他の第1セル導電層B1〜第5セル導電層B5に比較して面積を大とし、第6セル導電層B6の端部が負極端子4に接するか、前記した距離xを有して離間した状態としても、本発明の効果が得られることは明らかである。
【0036】
また、本実施の形態例では、静電気を負極端子4に誘導する構成を示したが、正極端子3に誘導する構成としてもよい。この場合、例えば、図1に示した鉛蓄電池1では、第1セル導電層B1と、正極端子3とを直接接触させるか、あるいは前記した距離xを有して離間させてもよい。また、図1に示したような導出部B6aと同様の導出部を第1のセル導電層B1に形成してもよい。
【0037】
なお、前記した例では、端のセルに設けた導電層から正極端子3あるいは負極端子4に静電気を移行させる形態を示したが、電池端子とセルとの位置関係によっては、第2セル導電層B2〜第5セル導電層B5のいずれか一つに、正極端子3あるいは負極端子4のいずれか一方に接触もしくは前記した距離xで近接する導出部(図示せず)を形成することによっても本発明の効果を得ることができる。
【0038】
前記した構成によれば、蓋2あるは電槽6に静電気が帯電しても、液口栓A周囲に設けた第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を介して正極端子3あるいは負極端子4に静電気が移行するため、液口栓Aからセル室6a内部への静電気の侵入が抑制され、結果としてセル室6a内での静電気による放電火花発生と、これを着火源とする、セル室6a内部に滞留した水素ガスへの着火と、これによる電槽6や蓋2の破損が抑制される。
【0039】
なお、上記した例では、静電気を正極端子3あるいは負極端子4のいずれか一方に誘導する例を示したが、負極端子4に誘導することがより好ましい。一般的に、始動用鉛蓄電池では、負極端子側が設置され、鉛蓄電池を固定するステーも負極端子と同通している可能性があり、静電気を正極端子3に誘導する構成では、このステーが導電層を接触すると、鉛蓄電池が短絡するためである。
【0040】
なお、図1に示した例では、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は、液口栓Aの全周にわたって配置されているが、液口栓Aおよび液口栓Aと各液口、すなわち第1セル液口C1〜第6セル液口C6との隙間を介しての静電気の侵入が抑制できる程度に非連続、すなわち、周囲の一部に導電層が配置されていない部位があってもよい。
【0041】
さらに、本発明では、前記した効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。すなわち、鉛蓄電池1に装着された液口栓Aから、振動や過充電等によって内部の電解液や水分が漏出したり、あるいは結露や、誤って液口栓A周辺に水分や電解液添加剤等をこぼすことによって、液口栓Aおよびその周辺に水分や希硫酸を含む導電性の液体が付着した場合においても隣接するセル間での液絡と、これによる鉛蓄電池を構成するセルの放電を抑制することができる。これは液口栓Aの周囲に配置した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが、離間距離d1〜d5を有して互いに離間していることによって得られる効果である。
【0042】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池11の天面を示す図である。第2の実施形態による鉛蓄電池11は、第1の実施形態による鉛蓄電池1において、第2の導電層Eを蓋2の表面に付加した構成を有する。そして、第2の実施形態による鉛蓄電池11においては、後述する理由により、第1の実施形態による鉛蓄電池1の構成であった、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の一つが直接あるいは導出部B6aを介して正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方と接触もしくは距離xを有して離間する構成を有していない。
【0043】
本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池11は、前記した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のいずれか一つが、正極端子3もしくは負極端子のいずれか一方と接触もしくは、距離xを有した離間する構成に替えて、図3に示したように、第2の導電層Eを設ける。なお、第2の導電層Eは、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に第2の離間距離d′を有して蓋2の表面に配置される。
【0044】
なお、第2の離間距離d′は、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6についてすべて同一の値としてもよいが、異なる値としてもよい。図3では、異なる値としてもよいことを示すために、第2の離間距離d′の最も狭い部位の寸法を、それぞれ第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に対応して、それぞれ、d1′、d2′、d3′、d4′、d5′およびd6′で示した。
【0045】
なお、これらd1′〜d6′の値は、前記した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6が、第2の導電層Eを介して間接的に接触しないよう、0を含まず、0を越える量である。すなわち、d11′>0、d2′>0、d3′>0、d4′>0、d5′>0およびd6′>0である。
【0046】
また、これらd1′〜d6′の上限値は、任意の導電層、すなわち第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に生じた静電気が、第2の導電層Eに移行しうる程度の非導電部7cを設ける。このようなd1′〜d6′の上限値は、第1の実施形態で示したd1〜d2と同様、好ましくは、0.1mm以上、5.0mm以下、特に、より好ましくは、0.1mm以上、2.0mm以下とする。
【0047】
さらに、第2の導電層Eは、正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方、好ましくは、第1の実施の形態で述べたのと同様の理由により、負極端子4と接触する、もしくは第2の距離yを有して近接配置する。なお、この第2の距離yは、第2の導電層Eに帯電した静電気が正極端子3、好ましくは負極端子4に移行しうる距離とする。すなわち、第1の距離yは0以上(y=0においては、第2の導電層Eと正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方が接触している状態である。)、かつ好ましくは、5.0mm以下、特により好ましくは2.0mm以下とする。なお、第2の距離y>0の場合、第2の導電層Eと正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方の間には、非導電部7cが形成されているが、この非導電部7cおよび前記した非導電部7bのいずれも、各導電層の間に形成された間隙として形成すればよい。また、第1の実施形態で述べた非導電部7a、第2の実施形態における非導電部7b,7cも、前記したような間隙上に、蓋2とは別体の絶縁物層を配置してもよい。
【0048】
なお、第2の実施形態による第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および第2の導電層Eは、第1の実施形態で示した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6と同様の比抵抗を有した材料で構成され、その形成方法も、第1の実施形態に例示したものを適用することができる。
【0049】
前記した第2の実施形態によれば、第1の実施形態に比較して、第1セル導電層B1〜第5セル導電層B5に帯電した静電気を正極端子3もしくは負極端子4に移行するにあたり、通過する非導電部7b,7cの数が少なくできるため、静電気の正極端子3もしくは負極端子4への移行をより円滑に行なうことができる。例えば、第1セル導電層B1に帯電した場合に、第1の実施形態のように、隣接する第2セル導電層B1へ静電気を移行させることなく、第2の導電層Eを介して、直接、正極端子3もしくは負極端子のいずれか一方に静電気を移行することができるため、第1の実施形態に比較して、より円滑に静電気を正極端子3あるいは負極端子4に接地することができ、より好ましい。
【0050】
その結果として、蓋2や電槽6に静電気が帯電しても、この静電気は第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6と、第2の導電層Eを介して、速やかに正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地されるため、液口栓Aの内部あるいは液口栓Aの外周を介した静電気のセル室6aの内部への移行と、これによるセル室6a内での放電火花の発生が抑制できるため、この放電火花によるセル室6a中の滞留ガスへの引火と、これによる蓋2あるいは電槽6等の、鉛蓄電池11の構成する各部品の破損を抑制できる。
【0051】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態同様、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間の絶縁性は確保されているため、任意の液口栓Aから、振動や過充電等によって内部の電解液や水分が漏出したり、あるいは結露や、誤って液口栓A周辺に水分や電解液添加剤等をこぼすことによって、液口栓Aおよびその周辺に水分や希硫酸を含む導電性の液体が付着した場合においても隣接するセル間での液絡と、これによる鉛蓄電池を構成するセルの放電を抑制することができる。これは液口栓Aの周囲に配置した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが、離間距離d1〜d5を有して互いに離間し、かつ、これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが、第2の離間距離d1′、d2′、d3′、d4′、d5′およびd6′を有して第2の導電層Eと離間することによって、これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のそれぞれが直接接触していないことによって得られる効果である。
【0052】
以上、本発明の第2の実施形態によれば、電槽6あるいは蓋2に静電気が帯電しても、この静電気は、すみやかに正極端子3あるいは負極端子4に接地されるため、静電気の液口栓Aの周囲や内部を介してのセル室6aへの侵入を抑制でき、その結果、セル室6aでの火花放電の発生と、これによって引き起こされるセル室6aの内部滞留ガスへの引火と、これによる鉛蓄電池21の破損を抑制できるとともに、液口栓A周囲に電解液や水分が付着しても、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6間での液絡が抑制され、鉛蓄電池を構成するセルの全てあるいは一部の放電を抑制することができる。
【0053】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態による鉛蓄電池21の天面を示す図である。第3の実施形態による鉛蓄電池21は、前記した第2の実施形態による鉛蓄電池11の第2の導電層Eの長さを短縮化した第2の導電層E′を有している他は、第2の実施形態による鉛蓄電池11と変わるところはない。第2の実施形態による鉛蓄電池11においては、第2の導電層Eは、第1のセル導電層B1〜第6のセル導電層B6のすべてに対向する位置に配置されていたが、第3の実施形態による鉛蓄電池21において、第2の導電層E′は、第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6に対向配置した例を示している。
【0054】
第3の実施形態では、第2の導電層E′を第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6にわたって配置した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第2セル導電層B2〜第6セル導電層B6にわたってもよく、例えば、第6セル導電層B6のみに対向して配置してもよい。なお、例えば、図4に示したように、第2の導電層E′に対応しない第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3と第2の導電層E′との離間距離は考慮する必要がない。なぜならば、これらの第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3のいずれかの導電層に帯電した静電気は、結局は、第4セル導電層B4から第2導電層E′を介して正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地されるからである。
【0055】
本発明の第3の実施形態によれば、前記した第1〜第2の実施形態による鉛蓄電池1,11と同様、電槽6と蓋2に帯電した静電気の、液口栓Aの周囲や内部を介したセル室6aへの移行を抑制でき、結果として、第1〜第2の実施形態で述べたと同様、セル室6a内で発生する、火花放電と、これによるセル室6a内に滞留したガスへの引火およびこれによる鉛蓄電池21の破損を抑制できる。また、液口栓A付近に付着した電解液や水分によるセル間の液絡を抑制できる。
【0056】
本発明の第1〜第3の実施形態の鉛蓄電池1,11,21は、それぞれ前記した作用効果を奏するが、その効果の度合いは、第1および第2の実施の形態による鉛蓄電池1,21において顕著に得られるが、第2の実施形態による鉛蓄電池11において最も顕著に現れる。
【0057】
しかしながら、これら第1〜第3の実施形態の鉛蓄電池1,11,21の製造コストは、第1の実施形態による鉛蓄電池1が最も安価であり、次に第3の実施形態による鉛蓄電池21が若干効果となり、第2の実施形態による鉛蓄電池が最も高価となるため、本発明を実施するにあたっては、鉛蓄電池1,11,21の設置される環境条件、すなわち、静電気が発生しやすい状況にあるかどうかを勘案して、前記した第1〜3の実施形態から、最も好ましい形態を採用すればよい。
【0058】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池31の天面を示す図、図6は、本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池31の要部断面(図5におけるM−M′断面)を示す図である。
【0059】
本発明の鉛蓄電池31は、本発明の鉛蓄電池1における第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6をポリプロピレン樹脂シート等の非導電性シート32上に形成し、この非導電性シート32を蓋2上に粘着剤33で貼り合せたものである。なお、非導電性シート32には、第1セル液口C1〜第6セル液口C6に対応した貫通孔34が設けられている。なお、本発明において、非導電性シート32は、厚み0.1mm〜0.5mm程度のシート状のものであってもよく、厚み0.5mmを越え、5.0mm程度以下のプレート状のものであってもよい。
【0060】
なお、非導電性シート32は、電槽6および蓋2と同等の比抵抗(1012Ω・cm〜1016cm)あるいは、これ以上の比抵抗を有しているものを用いる。したがって、このような非導電性シート32は、前記したような比抵抗値を有した、実質的な絶縁体であり、かつ、電解液と接触する可能性を有していることから、これに耐え得る、耐酸性、および鉛蓄電池が暴露される環境(例えば、始動用鉛蓄電池においては、−20℃〜90℃)に耐え得る耐候性を有しているものであれば、前記したポリプロピレン樹脂シートに限定されず、他の材料を用いることができる。
【0061】
本発明の第4の実施の形態によれば、本発明の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、さらに、蓋2を専用部品とせず、既存の蓋2に第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を形成した非導電性シート32を装着するだけで、本発明の構成を得ることができ、蓋2の共通化といった観点で好ましい。
【0062】
なお、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および正極端子3あるいは負極端子4との位置関係は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、また、導電層としても同様の材料を用いることができる。また、非導電性シート32の蓋2への貼り付けにあたって、本例では、粘着剤をもちいた例を示したが、この粘着剤として、例えば、水性エマルジョン系のものが環境的側面で好ましい。また、粘着剤に限らず、接着剤でもよい。また、粘着、接着といった面と面との接合を行なう必要はなく、例えば、非導電性シート32の本体を、プレート状の樹脂成型部品としておき、そのコーナー部に蓋2と係止めする嵌合構造を設けることによって、非導電性シート32を蓋2の上で固定する構造としてもよい。
【0063】
例えば、係止手段の一例として、非導電性シート32のコーナー部に突起部(図示せず)を設けるとともに、この突起部と嵌合する凹部(図示せず)を蓋2に設けることができる。
【0064】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態による鉛蓄電池41の天面を示す図である。本発明の鉛蓄電池41は、本発明の第2の実施形態の鉛蓄電池11における第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6をポリプロピレン樹脂シート等の非導電性シート32上に形成し、この非導電性シート32を蓋2上に粘着剤33で貼り合せたものである。なお、非導電性シート32には、第1セル液口C1〜第6セル液口C6に対応した貫通孔34が設けられている。
【0065】
本発明の第5の実施の形態によれば、本発明の第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、さらに、蓋2を専用部品とせず、既存の蓋2に第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および第2の導電層Eを形成した非導電性シート32を装着するだけで、本発明の構成を得ることができ、蓋2の共通化といった観点で好ましい。
【0066】
なお、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6と第2の導電層E、および正極端子3あるいは負極端子4との位置関係は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、また、導電層としても同様の材料を用いることができる。また、非導電性シート32の蓋2への貼り付けにあたって、本例では、粘着剤をもちいた例を示したが、この粘着剤として、例えば、水性エマルジョン系のものが環境的側面で好ましい。また、粘着剤に限らず、接着剤でもよい。また、粘着、接着といった面と面との接合を行なう必要はなく、例えば、非導電性シート32の本体を樹脂成型部品としておき、そのコーナー部に蓋2と係止めする嵌合構造を設けることによって、非導電性シート32を蓋2の上で固定する構造としてもよいことは、前記した第4の実施形態と変わるところはない。
【0067】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池51の天面を示す図を図8に、この鉛蓄電池51の要部断面(図8におけるN−N′断面)を図9に示す。
【0068】
図8および図9に示したように、本発明の鉛蓄電池51は、前記した第1〜第5の実施形態による鉛蓄電池1,11,21,31,41と同様、複数のセルを有する鉛蓄電池であって、前記セルを構成する極板群8および電解液10とが電槽6を区画形成するセル室6aと、この電槽6を閉じる蓋2とを備え、この蓋2には、前記セルに対応した液口、すなわち、本実施形態においては、第1セル液口C1〜第6セル液口C6を備えている。
【0069】
そして、これら第1セル液口C1〜第6セル液口C6のぞれぞれに装着され、かつ電槽6の内部、すなわちセル室6aの内部で発生した酸素ガスや水素ガスを大気中に排出するための排気口5を有した液口栓Aを備えている。
【0070】
本実施形態による鉛蓄電池51は、その蓋2の表面に、非導電性のシート32′が粘着剤33あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、これら液口栓Aを覆うよう貼り合わされ、かつ、この非導電性シート32′の、液口栓Aに対向する部位に、液口栓A毎に対応した導電層、すなわち、本実施形態においては、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を備えている。
【0071】
これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6とは、互いに接触せず、隣接しあうこれら導電層間は互いに離間距離d(d>0)、すなわち、図8においては、離間距離d1、d2、d3、d4、d5を有して互いに離間するよう、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の間には、非導電部7aが配置されている。
【0072】
そして、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の、少なくとも一つが、蓋2に設けた正極端子3あるいは負極端子4に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6において、隣接しあう導電層間の離間距離d(本実施形態においては、d1、d3、d3、d4、d5)と、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の中の少なくとも一つの導電層と、正極端子3もしくは負極端子4との距離xとを、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のうち、任意の導電層に帯電した静電気を、正極端子もしくは負極端子のいずれか一方に放電可能となるよう短くする。
【0073】
離間距離d(d1、d2、d3、d4、d5)は、前記した第1〜第5の実施形態と同様、0を含まず0を越える値であって、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下とする。
【0074】
また、距離xについても、前記した第1〜第5の実施形態と同様、0以上の値であって、好ましくは、5.0mm以下、より好ましくは、2.0mm以下とする。なお、x=0mmは、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のいずれか一つが、正極端子3もしくは負極端子4と接触していることを意味するものであり、この点は、前記した第1〜第5の実施形態および、ここで述べている第6の実施形態および後述する第7の実施形態において変わるところはない。
【0075】
本発明の第6の実施形態では、前記した第1〜第5の実施形態とは異なり、第1セル液口C1〜第6セル液口C6、これらの各液口に装着された液口栓Aおよび各液口栓Aに設けた排気口5を、各セル毎に配置された第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6で覆うことができるため、前記した各実施形態に比較して、電槽6および蓋2に帯電した静電気は、これら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を介して、より速やかに正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地される。なお、図8および図9では第6セル導電層B6に一体に導出部B6aを設け、この導出部B6aの先端が、負極端子4に距離x(x≧0)を有して近接した形態を示している。
【0076】
第6の実施形態による鉛蓄電池51は、第1〜第5の実施形態で示した鉛蓄電池1,11,21,31,41に比較して、電槽6や蓋2に帯電した静電気が、液口栓Aと第1セル液口C1〜第6セル液口C6との装着面および液口栓Aに設けた排気口5からのセル室6aへの侵入がより効果的に抑制され、セル室6a内への静電気の侵入と、放電火花の発生、セル室6a内に滞留した水素ガスへの引火と、これによる電槽6や蓋2等の鉛蓄電池51を構成する各部品の破損が、より効果的に抑制できる。
【0077】
また、第6の実施形態においても、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は互いに直接接触せず、隣接する導電層の間には非導電部7aが形成されているため、液口A、特に排気口Aから排出された酸霧や、水分が付着しても、隣接するセル間での液絡が抑制され、鉛蓄電池を構成する、各セルの一部あるいはすべてが液絡によって放電し、容量不足となる事態を回避できる点は、前記した第1〜第5の実施形態と同様の作用効果である。
【0078】
さらに、第6の実施形態においては、排気口5からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも排気口5から非導電性シート32′の端部にかけて、非導電性シート32′と蓋2とが貼り合わされていない非接合部52を設ける。なお、この非接合部52は、図8および後述する図10において、破線で示したP−P′間に帯状に形成することができる。ただ、本発明では、非接合部52の形状を帯状に限定するものではなく、それぞれの液口栓Aに設けた排気口5からの排出ガスが、大気中に放出可能な形状であればよいことは言うまでもない。
【0079】
なお、排気経路として機能する非接合部52を形成する関係上、非導電性シート32′と蓋2との貼り合せは、粘着剤33、あるいは接着剤によって為されることが好ましい。すなわち、非導電性シート32′の蓋2との貼り合せ面に、非接合部52を形成する部分を除く部位に粘着剤33あるいは接着剤を塗工しておき、非導電性シート32′と蓋2とを貼り合せることが好ましい。このような手法は、非接合部52の寸法形状や形成位置のばらつきを抑制する上で好ましい。
【0080】
このような、本発明の第6の実施形態によれば、排気口5が鉛蓄電池51の外部に露出しないため、鉛蓄電池51の外部の空気流によって、排気口5からのセル室6a内部の水蒸気の排出が抑制されるため、蒸発による電解液中の水分減少の抑制という効果を併せて得ることができ、好ましい。
【0081】
排気口5が鉛蓄電池の外部に露出している場合、特に、排気口5周辺に空気流が存在する場合、セル室6a内が大気圧に対して負圧となり、セル室6aの内部の水蒸気が大気中に排出されるとともに、セル室6a内に大気が導入され、電解液中の水分蒸発が促進され、鉛蓄電池の液面低下をもたらす。本発明の第6の実施形態によれば、このような液面低下が抑制され、セル室6a内の空間容積の増大も抑制されるため、セル室6a内に滞留する水素ガス量が、他の実施形態に比較して少なくなるため、安全性に上で、より好ましい。
【0082】
本発明の第6の実施の形態において、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6は、第1〜第5の実施形態に採用したものを用いることができる。但し、非導電性シート32′と蓋2の表面間にこれら第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6を形成する必要上、その形成厚みがなるべく薄いものが好ましいことは言うまでもない。
【0083】
例えば、カーボン、チタン等の導電性物質を溶媒に分散した導電性インクを用い、インクジェット方式により、導電性インクを非導電性シート32′に吐出し、所望形状の第1のセル導電層B1〜第6のセル導電層B6を形成することができる。また、スズ、チタンあるいは亜鉛等の導電性酸化物を分散した導電性インクを用いてもよい。
【0084】
また、導電性インクを用いず、前記したような導電性物質を非導電性シート32′上に蒸着することによって、所望形状の第1のセル導電層B1〜第6のセル導電層B6を形成することができる。
【0085】
なお、これらの材料を用いた導電層の形成手法は、本実施形態のみならず、第1〜第5の実施形態および後述する第7の実施形態にも適用できる。また、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のみならず、第2の導電層E,E′の形成にも適用することができる。
【0086】
(第7の実施形態)
図10に、第7の実施形態による鉛蓄電池61の天面を示す。鉛蓄電池61は、前記した第6の実施形態による鉛蓄電池51の第1セル導電層B1〜第6セル導電層のいずれか一つを、正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方と接するか、距離x(x≧0、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下)をもって近接配置した構成に替えて、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6のいずれも正極端子3もしくは負極端子4に接することなく、本発明の第2の実施形態および第3の実施形態で述べたと同様の第2の導電層Eもしくは第2の導電層E′を非導電性シート32′の蓋2との貼り合せ面に形成したものである。
【0087】
図10に示した第2の導電層Eは、液口栓A上に配置した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6より第2の離間距離d′(d′>0、図10においては、それぞれd1′、d2′、d3′、d4′、d5′)を有して離間するとともに、蓋2の表面に設けた正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置される。なお、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の互いに隣接しあう導電層間の離間距離d(d>0、図10においては、それぞれd1、d2、d3、d4、d5)としたときに、これら第2の距離y、離間距離dおよび第2の離間距離d′を、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の任意の導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短く設定する。
【0088】
このような本発明の第7の実施形態の構成によれば、第6の実施形態に比較して、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6に帯電した静電気が、第2の導電層Eを経由して、より速やかに、正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地でき、安全性の上でより好ましい。
【0089】
なお、図10において、第2の導電層Eを第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6にわたって均一に配置した例を示したが、図4に示した第3の実施形態の如く、第2の導電層E′を第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の一部(図4においては第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6)に対応して配置してもよい。この場合、第2の導電層E′に対応しない第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3と第2の導電層E′との離間距離は考慮する必要がない。なぜならば、これらの第1セル導電層B1〜第3セル導電層B3のいずれかの導電層に帯電した静電気は、結局は、第4セル導電層B4から第2導電層E′を介して正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地されるからである。
【0090】
なお、第7の実施形態では、第2の導電層E′を第4セル導電層B4〜第6セル導電層B6にわたって配置した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第2セル導電層B2〜第6セル導電層B6にわたってもよく、例えば、第6セル導電層B6のみに対向して配置してもよい。
【0091】
本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池61において、第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6の隣接しあう導電層間の第2の離間距離d′、すなわち、図10における、d1′、d2′、d3′、d4′およびd5′を前記したように、0を含まず0を越えた寸法とするが、好ましくは、5.0mm、より好ましくは2.0mmとすることができる。但し、この距離は、ポリプロポレン樹脂製(PPホモポリマー、PP−PEコポリマーのどちらでもよく、シリカ、タルク等のフィラーを含んでもよい)について好ましい値であって、他の形状、樹脂材料、用途の鉛蓄電池については別途の実験により、その最適値を定める必要があり、前記した第1〜第6の実施形態においても同様である。
【0092】
さらに、本発明の鉛蓄電池61では、液口栓Aに設けた排気口5から排出されるガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくともこれら排気口5から非導電性シート32′の端部にかけて、この非導電性シート32′と蓋2とが貼り合わされていない非接合部52を有しており、この非接合部52が電池内部で発生したガスの大気中への排出経路となることは第6の実施形態による鉛蓄電池51と変わるところはない。
【0093】
本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池61の作用効果は、前記した本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池51で記載した作用効果と共通であるが、第2の導電層E(もしくは第2の導電層E′)を設けたことにより、帯電した静電気が、より速やかに正極端子3もしくは負極端子4のいずれか一方に接地され、安全上、より好ましいことは既述した通りである。
【0094】
以上、記載したように、本発明によれば、鉛蓄電池の電槽や蓋に帯電した静電気は、液口周囲あるいは液口を覆って配置された導電層によって集められ、直接あるいは第2の導電層を介して、正極端子あるいは負極端子に接地される。その結果、従来発生していた、蓋と液口栓との隙間、あるいは液口栓に設けた排気口を介した静電気の電池内部への移行が顕著に抑制される。その結果、電池内部に引き込まれた外部静電気による放電火花が発生することがないため、この放電火花による電池内部に滞留した水素ガスへの引火と、引火時の衝撃による鉛蓄電池の破損を顕著に抑制することができる。
【0095】
また、各液口栓の周囲、あるいはこれらを覆う導電層は、各液口栓毎に互いに独立して接することなく設けられているので、液口栓もしくはその近傍に、例えば充電時に発生する酸霧が付着したり、あるいは蒸発水分が結露して付着した場合でも、隣接するセル間で液絡が発生しないため、従来の特許文献1で示された鉛蓄電池において、液絡によって生ずる、鉛蓄電池を構成する、一部あるいはすべてのセルの容量低下が顕著に抑制することができる。
【実施例】
【0096】
(実施例1)
本発明の効果を確認するために、本発明例および従来例の鉛蓄電池を作成した。電池形式としては、JIS D5301:2006(始動用鉛蓄電池)に規定された95D31形電池(公称電圧12V、5時間率定格容量64Ah)を製作し、それらの供試電池に静電気試験機により静電気の印加を行い、液口栓の周辺で放電火花が発生した際における引火破損の状況の確認実験を行った。各供試電池の構成を以下に示す。なお、供試電池の電槽および蓋はいずれもPP−PEのコポリマーであって、シリカおよび酸化チタンのフィラーおよび強化剤を含み、いずれの比抵抗も1016Ω・cmである。
【0097】
(本発明例による電池A1〜A8)
本発明例による電池A1〜A8は、本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池1に相当するものであり、離間距離d(但し、d1=d2=d3=d4=d5)を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、距離xを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離dおよびxの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0098】
(本発明例による電池B1〜B8)
本発明例による電池B1〜B8は、本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池11に相当するものである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d1′=d2′=d3′=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0099】
(本発明例による電池C1〜C8)
本発明例による電池C1〜C8は、本発明の第3の実施形態による鉛蓄電池21に相当するものである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0100】
(本発明例による電池D1〜D8)
本発明例による電池D1〜D8は、本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池31に相当するものである。非導電層は0.3mm厚みのポリプロピレン樹脂シートである。離間距離d(但し、d1=d2=d3=d4=d5)を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、距離xを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離dおよびxの組み合わせは、後述する表1に示す。
【0101】
(本発明例による電池E1〜E8)
本発明例による電池E1〜E8は、本発明の第5の実施形態による鉛蓄電池41に相当するものである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d1′=d2′=d3′=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表2に示す。
【0102】
(本発明例による電池F1〜F8)
本発明例による電池F1〜F8は、本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池51に相当するものである。非導電層は0.15mm厚みのPET樹脂シートである。離間距離d(但し、d1=d2=d3=d4=d5)を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、距離xを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離dおよびxの組み合わせは、後述する表2に示す。
【0103】
(本発明例による電池G1〜G8)
本発明例による電池G1〜G8は、本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池61に相当するものである。非導電層は0.15mm厚みのPET樹脂シートである。離間距離dおよび第2の離間距離d′は同一の値とし(d1=d2=d3=d4=d5=d1′=d2′=d3′=d4′=d5′=d6′)た上で、これらの値を0.1〜7.0mmの範囲で変化させるとともに、第2の距離yを0もしくは5.0mmとした電池である。離間距離d(第2の離間距離d′)および第2の距離yの組み合わせは、後述する表2に示す。
【0104】
前記した本発明例の各電池に使用した第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6および第2の導電層E,E′は、カーボンを含有したオレフィン系インクを30μm厚で塗工したものであり、比抵抗値は、102Ω・cmである。
【0105】
また、本発明例の各電池において、ポリプロピレン樹脂シートおよびPET樹脂シートの蓋への固定は、水性アクリルエマルジョン系の粘着剤を用いて行なった。
【0106】
(従来例による電池H)
従来例による電池Hは、図11に示す鉛蓄電池71であり、第1の実施形態の電池、すなわち、本発明例の電池A1〜A8において離間距離dを0mmとし、かつ距離xを0mmとした電池であり、すべての液口栓Aの周囲を囲うとともに、負極端子4に直接接続された、一括導電層Fを蓋2の表面上に備えた電池である。なお、一括導電層Fは、本発明例と同様、カーボンを含有したオレフィン系インクを30μm厚で塗工したものであり、比抵抗値は、102Ω・cmである。
【0107】
(従来例による電池I)
従来例による電池Iは、従来例の電池Hに一括導電層Fを設けない電池である。
【0108】
上記した本発明例の電池A1〜A8、電池B1〜B8、電池C1〜C8および電池D1〜D8の離間距離d(第2の離間距離)および距離x(距離y)の組み合わせを表1に、本発明例の電池E1〜E8、電池F1〜F8および電池G1〜G8の離間距離d(第2の離間距離)および距離x(距離y)の組み合わせを表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
表1および表2に示した本発明例の電池および従来例の電池Hおよび電池Iについて、以下に示す条件で、静電気印加試験を行なった。
【0112】
すなわち、各供試電池を満充電状態とした後、試験温度を25℃、試験湿度を50RH%の気相雰囲気下に24時間放置した。その後、同じ気相雰囲気中にて、各供試電池を6.4A定電流で30分間連続充電を行うことにより、電池内に水素ガスと酸素ガスを滞留させた。そして、各供試電池に装着された液口栓Aの天面から上方に5mm離間した位置に静電気印加用電極の先端を位置させ、前記した30分間の連続充電の終了直後に、静電気印加用電極に+30kVの電位を印加することによって、供試電池に静電気を帯電させた。なお、静電気印加用電極は、正極端子より数えて一番目のセルに装着された液口栓Aの直上に配置した。また、試験のn数は、各供試電池についてn=24とした。
【0113】
そして、静電気を印加した場合での各供電池の外観を観察し、電槽や蓋の破損の有無を確認したこれらの結果を表3および表4に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
表3および表4に示した結果から、本発明の構成によれば、従来例の電池Iに対して顕著に静電気印加時の電池の破損を顕著に抑制できることがわかる。
【0117】
本発明の電池破損を抑制する効果をより顕著とするために、距離x(距離y)が0mmの場合には、離間距離d(第2の離間距離d′)を5.0mm以下とすることが好ましく、距離x(距離y)が5.0mmの場合には、離間距離d(第2の離間距離d′)を2.0mm以下とすることが好ましい。
【0118】
なお、表3および表4には示していないが、本発明例の電池A7、電池E7および電池G8は、距離xもしくは距離yを5.0mmから2.0mmとすることにより、電池破損数は0とすることができた。
【0119】
なお、従来例の電池Hについては、電池破損数は0であった。従来例の電池Hでは、一括導電層Fが負極端子4に接触しているため、本発明例では、距離x(距離y)を0.0mmとした電池と比較すべきであり、このような比較によれば、距離x(距離y)を0.0mmとした本発明例の電池においては、すべて電池破損数は0であり、従来例の電池Iと同等の電池破損抑制効果を有していた。
【0120】
なお、本実施例において、すべての導電層(第1セル導電層B1〜第6セル導電層B6、第2の導電層E,E′および一括導電層F)の比抵抗を102Ω・cmとしたが、本発明の発明者らが別途に行なった実験では、上記の各導電層の比抵抗を104Ω・cmとした場合においても本実施例と同様の結果が得られた。なお、各導電層102Ω・cm未満としたときに、本発明の効果が得られることは自明であり、本発明の高価を得る上で、その下限値を定める必要はないが、が、本発明においては、上記の各導電層を蓋2の表面上に配置するという構成からくる導電層の厚みの制限から、比抵抗の下限は10−8Ω・cm程度になると考えられる。
【0121】
(実施例2)
前記した実施例1において、表1〜表2に示した本発明例による電池(電池A1〜A8、電池B1〜B8、電池C1〜C8、電池D1〜D8、電池E1〜E8、電池F1〜F8おおよび電池G1〜G8)および比較例による電池Hおよび電池Iの各1個を作成し、溢液時でのセル間の液絡の発生の有無を確認することを目的として、以下に示す条件で液絡試験を行なった。
【0122】
上記の各供試電池について、溢液を再現するために、各セルに20℃時の換算密度1.280の希硫酸を追加で補液し、電解液面を、規定の上限液面線よりも20mm高い位置に調整した。
【0123】
次に、各供試電池を、25℃雰囲気中にて14.7V定電圧充電(最大充電電流50A)で12時間充電することにより、各供試電池を満充電状態とした上で、6.4Aで10.5Vまで定電流放電することにより初期容量確認を行ない、各供試電池の容量が正常であることを確認した。その後、再度、前記した定電圧充電によって供試電池を満充電状態とした後、さrに6.4Aの定電流で10時間充電することにより、補充電を行なった。補充電電気量は64Ahであり、供試電池の5時間率定格容量と同一である。補充電終了状態において、各供試電池に装着された液口栓の排気口から排出された酸霧および水蒸気が結露して、液口栓およびその周囲近傍に酸性の液体が付着した状態となっていた。
【0124】
次にこれら液口栓およびその周囲近傍に酸性の液体が付着した各供試電池について、25℃、80RH%の恒温恒湿条件で72時間放置し、その後すべての各供試電池について6.4Vの定電流で10.5Vまで放電することにより、残存容量を測定し、初期容量と比較することによって、液絡による放電容量の低下の有無とその程度を確認した。
【0125】
その結果、本発明例の電池および比較例の電池Iでは、残存容量は初期容量より0.2〜0.25Ahの低下が認められたが、この程度の低下は自己放電レベルであって、何ら異常のない範囲であった。
【0126】
一方、比較例の電池Hの残存容量は、初期容量より4.6Ah低下しており、前記した自己放電レベルを明らかに越える量の放電容量の低下が認められた。これは比較例の電池Hにおいては、液口栓から排出された酸霧および水分が、蓋表面上に形成した一括導電層Fに付着し、この一括導電層Fが各液口にわたって連続して形成されているがために、液絡が発生し、これによりセルの放電が行なわれたと推測される。
【0127】
一方、本発明例の電池では、導電層は各液口間で非導電部7aによって遮断されているために、比較例の電池Hで発生したような液絡と、これによる電池の容量低下が顕著に抑制できたものである。
【0128】
さらに、本発明の第6および第7の実施形態によれば、他の実施形態に比較して、保存中の減液量を30%削減できることが別途の実験により明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の構成によれば、静電気に起因する引火破損が顕著に抑制され、さらに、液絡による容量低下を顕著に抑制した鉛蓄電池を提供することができ、工業上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態による鉛蓄電池の要部断面を示す図
【図3】本発明の第2の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図4】本発明の第3の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図5】本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図6】本発明の第4の実施形態による鉛蓄電池の要部断面を示す図
【図7】本発明の第5の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図8】本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図9】本発明の第6の実施形態による鉛蓄電池の要部断面を示す図
【図10】本発明の第7の実施形態による鉛蓄電池の天面を示す図
【図11】従来例の鉛蓄電池の天面を示す図
【符号の説明】
【0131】
1 (第1の実施形態による)鉛蓄電池
2 蓋
3 正極端子
4 負極端子
5 排気口
6 電槽
6a セル室
7a,7b,7c 非導電部
8 極板群
9 極柱
10 電解液
11 (第2の実施形態による)鉛蓄電池
21 (第3の実施形態による)鉛蓄電池
31 (第4の実施形態による)鉛蓄電池
32,32′ 非導電性シート
33 粘着剤
34 貫通孔
41 (第5の実施形態による)鉛蓄電池
51 (第6の実施形態による)鉛蓄電池
52 非接合部
61 (第7の実施形態による)鉛蓄電池
71 (従来例による)鉛蓄電池
A 液口栓
Aa パッキン
B1 第1セル導電層
B2 第2セル導電層
B3 第3セル導電層
B4 第4セル導電層
B5 第5セル導電層
B6 第6セル導電層
B6a 導出部
C1 第1セル液口
C2 第2セル液口
C3 第3セル液口
C4 第4セル液口
C5 第5セル液口
C6 第6セル液口
E,E′第2の導電層
F 一括導電層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、
前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、前記蓋の表面上で、前記非導電性シートが係止手段によって、前記蓋に固定され、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面の前記貫通孔の周囲の少なくとも一部に前記導電層を設けた請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記蓋の表面上に、非導電性シートが、粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、
かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に独立した導電層を備え、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、
前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、
かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池。
【請求項4】
前記導電層の比抵抗が10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とする請求項1〜3に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記距離xを0〜5.0mmとした請求項1〜4に記載の鉛蓄電池。
【請求項6】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽を、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
かつ、
前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を備え、
前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項7】
前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、係止手段によって固定され、
かつ、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面に前記導電層と前記第2の導電層を設けた請求項6に記載の鉛蓄電池。
【請求項8】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、あるいは係止手段によって固定され、かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に導電層を備え、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
かつ、前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を、前記非導電性シートの前記蓋と対向する面に備え、
前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、
かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池。
【請求項9】
前記導電層および前記第2の導電層の比抵抗が10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とする請求項6〜8に記載の鉛蓄電池。
【請求項10】
前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の距離yを0〜5.0mmとした請求項6〜9に記載の鉛蓄電池。
【請求項11】
前記電池端子が負極端子であることを特徴とする請求項1〜10に記載の鉛蓄電池。
【請求項1】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、
前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、前記蓋の表面上で、前記非導電性シートが係止手段によって、前記蓋に固定され、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面の前記貫通孔の周囲の少なくとも一部に前記導電層を設けた請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記蓋の表面上に、非導電性シートが、粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、
かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に独立した導電層を備え、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
少なくとも、前記導電層の一つが、前記蓋に設けた電池端子に接触もしくは、距離x(x≧0)を有して配置され、
前記導電層間の離間距離dと、前記距離xとを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、
かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池。
【請求項4】
前記導電層の比抵抗が10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とする請求項1〜3に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記距離xを0〜5.0mmとした請求項1〜4に記載の鉛蓄電池。
【請求項6】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽を、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記液口栓に近接した前記蓋の表面上の一部に、前記液口栓毎に独立した導電層を有するとともに、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
かつ、
前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を備え、
前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くしたことを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項7】
前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の、貼り合わせ手段で貼り合わされ、あるいは、係止手段によって固定され、
かつ、前記非導電性シートには、前記液口に対応した貫通孔が設けられるとともに、前記非導電性シートの外表面に前記導電層と前記第2の導電層を設けた請求項6に記載の鉛蓄電池。
【請求項8】
複数のセルを有する鉛蓄電池であって、
前記セルを収納する電槽と、前記電槽を閉じる蓋とを備え、
前記蓋には、前記セルに対応した液口と、前記液口に装着され、かつ電槽内のガスを大気中に排出するための排気口を有した液口栓を備え、
前記蓋の表面上に、非導電性シートが粘着剤あるいは接着剤等の貼り合わせ手段で、前記液口栓を覆うよう貼り合わされ、あるいは係止手段によって固定され、かつ、前記非導電性シートの前記液口栓に対向する部位に、前記液口栓毎に導電層を備え、
前記導電層間は互いに離間距離d(d>0)を有して互いに離間し、
かつ、前記導電層より第2の離間距離d′(d′>0)を有して離間するとともに、前記蓋の表面に設けた電池端子に接触、もしくは第2の距離y(y≧0)を有して配置された第2の導電層を、前記非導電性シートの前記蓋と対向する面に備え、
前記離間距離d、前記第2の離間距離d′と前記第2の距離yを、任意の前記導電層に帯電した静電気を前記電池端子に放電可能となるよう短くし、
かつ前記排気口からのガスの大気中への排出経路を形成するよう、少なくとも前記排気口から前記非導電性シートの端部にかけて、前記非導電性シートと前記蓋とが貼り合わされていない非接合部を設けた鉛蓄電池。
【請求項9】
前記導電層および前記第2の導電層の比抵抗が10-8Ω・cm〜104Ω・cmであることを特徴とする請求項6〜8に記載の鉛蓄電池。
【請求項10】
前記離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の離間距離dを0.1mm〜5.0mm、前記第2の距離yを0〜5.0mmとした請求項6〜9に記載の鉛蓄電池。
【請求項11】
前記電池端子が負極端子であることを特徴とする請求項1〜10に記載の鉛蓄電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−113931(P2010−113931A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285127(P2008−285127)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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