説明

銀、バナジウムおよび推進剤金属を含有する多金属酸化物およびその使用

一般式I
Aga−c・eHO I
(式中、aは0.3〜1.9の値であり、QはP、As、Sbおよび/またはBiから選択される1つの元素であり、bは0〜0.3の値であり、MはNb、Ce、W、Mn、Ta、Pd、Pt、Ruおよび/またはRhから選択される1つの金属であり、cは0.001〜0.5の値であり、ただし(a−c)は0.1以上であり、dは一般式Iの酸素以外の元素の原子価および頻度により決定される数であり、eは0〜20の値である)の多金属酸化物およびこれから製造される芳香族炭化水素の部分酸化のためのプレ触媒および触媒が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銀、バナジウムおよび推進剤金属を含有する多金属酸化物、芳香族炭化水素の気相部分酸化のためのプレ触媒および触媒を製造するための多金属酸化物の使用、こうして得られた(プレ)触媒および前記触媒を使用してアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を製造する方法に関する。
【0002】
周知のように、多くの無水物、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物は固定層反応器、有利にシェル形および管形反応器中でベンゼン、o−。m−またはp−キシレン、ナフタレン、トルエンまたはジュロレン(=1,2,4,5−テトラメチルベンゼン)のような芳香族炭化水素の接触気相酸化により工業的に製造される。出発物質に依存してこれらの酸化は例えばベンズアルデヒド、安息香酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、またはピロメリット酸無水物を生じる。酸化は一般に分子酸素を有するガスの混合物、例えば空気および酸化される出発物質を、反応器に配置され、少なくとも1個の触媒の層を有する多数の管を通過させることにより実施する。
【0003】
WO00/27753号およびWO01/85337号は酸化銀および酸化バナジウムを含有する多金属酸化物および芳香族炭化水素の部分酸化のための多金属酸化物の使用を記載する。
【0004】
本発明の課題は、これらの触媒を使用して達成される収率を選択率に不利な作用を有することなく改良することである。
【0005】
前記課題は一般式I
Aga−c・eHO I
(式中、
aは0.3〜1.9の値であり、
QはP、As、Sbおよび/またはBiから選択される1つの元素であり、
bは0〜0.3の値であり、
MはNb、Ce、W、Mn、Ta、Pd、Pt、Ruおよび/またはRhから選択される1つの金属であり、
cは0.001〜0.5の値であり、ただし(a−c)は0.1以上であり、
dは一般式Iの酸素以外の元素の原子価および頻度により決定される数であり、
eは0〜20の値である)の多金属酸化物により解決される。
【0006】
本発明は更に芳香族炭化水素の気相部分酸化のための触媒に変換することができ、不活性非孔質担体および担体に被覆された前記多金属酸化物を有する少なくとも1個の層を有するプレ触媒に関する。
【0007】
本発明は更に不活性非孔質担体および担体に被覆された、触媒活性組成物として銀−バナジウム酸化物ブロンズを有する少なくとも1個の層を有する、芳香族炭化水素の気相部分酸化のための触媒に関し、前記酸化物ブロンズはNb、Ce、W、Mn、Ta、Pd、Pt、Ruおよび/またはRhからなる群から選択される少なくとも1個の金属Mを含有し、前記ブロンズにおいてAg:V原子比は0.15〜0.95であり、M:V原子比は0.0005〜0.25、有利に0.001〜0.15である。
【0008】
本発明は更にアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を製造する方法に関し、前記方法において芳香族炭化水素および分子酸素を含有するガスからなるガス流を高温で前記触媒と接触する。
【0009】
本発明の多金属酸化物は有利に粉末X線パターンが、15.23±0.6、12.16±0.4、10.68±0.3、3.41±0.04、3.09±0.04、3.02±0.04、2.36±0.04および1.80±0.04Åの格子平面間隔dでの回折反射により特徴付けられる結晶構造で存在する。
【0010】
本発明においてX線回折反射は、使用されるX線の波長に無関係な格子平面間隔d[Å]の形で表示され、前記間隔は測定される回折角からブラッグの式により計算できる。
【0011】
一般式Iの多金属酸化物において、変数aは有利に0.5〜1.0、特に有利に0.6〜0.9の値であり、変数bは有利に0〜0.1の値であり、変数cは有利に0.005〜0.2、特に0.01〜0.1の値である。
【0012】
dは一般式Iの多金属酸化物中の酸素以外の元素の原子価および頻度により決定される。含水量の尺度である数eは有利に0〜5である。
【0013】
国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)の勧告(Recommendation1984)(Pure and Appl.Chem.57、603(1985))にもとづき、DIN66131により測定されるBET比表面積は一般に1m/gより大きく、有利に3〜250m/g、特に10〜250m/g、特に有利に20〜80m/gである。
【0014】
金属MとしてNb、Ce、W、MnおよびTaが有利であり、特にCeおよびMnであり、このうちCeが最も有利である。
【0015】
本発明の多金属酸化物を製造するために、五酸化バナジウム(V.O)の懸濁液を銀化合物の溶液および金属成分Mの化合物の溶液および場合によりQの化合物の溶液と一緒に加熱することが有利である。この反応の溶剤としてポリオール、ポリエーテル、またはアミン、例えばピリジンのような極性有機溶剤または有利に水を使用することができる。銀塩として硝酸銀を使用することが有利であるが、他の可溶性銀塩、例えば酢酸銀、過塩素酸銀またはフッ化銀の使用も同様に可能である。
【0016】
使用する場合に、P、As、Sbおよび/またはBiからなる群からの1つまたは複数の元素Qは元素の形でまたは酸化物または水酸化物として使用できる。しかし前記元素は有利にその可溶性化合物、特に有機または無機水溶性化合物の形で使用する。これらの中で無機水溶性化合物、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、特にこれらの元素の部分的に中和された酸または遊離酸、例えばリン酸、ヒ素酸、アンチモン酸、リン酸水素アンモニウム、ヒ素酸水素アンモニウム、アンチモン酸水素アンモニウム、ビスマス酸水素アンモニウム、およびアルカリ金属リン酸水素塩、アルカリ金属ヒ素酸水素塩、アルカリ金属アンチモン酸水素塩、アルカリ金属ビスマス酸水素塩が有利である。元素Qとしてリンを単独に、特にリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸アンモニウムまたはリン酸エステルの形で、特にリン酸二水素アンモニウムとして使用することがきわめて有利である。
【0017】
金属成分Mの塩として、一般に使用される溶剤に溶解する塩を選択する。本発明の多金属酸化物の製造に溶剤として水を使用する場合は、例えば金属成分Mのカルボン酸の過塩素酸塩、特に酢酸塩を使用できる。適当な金属成分Mの硝酸塩、特に硝酸セリウムまたは硝酸マンガンを使用することが有利である。
【0018】
と銀化合物、金属成分Mの化合物、および場合によりQとの反応は一般に室温でまたは高温で行うことができる。反応は一般に20〜375℃、有利に20〜100℃、特に60〜100℃で実施する。反応の温度が使用される溶剤の沸点より高い場合は、反応を有利に圧力容器中で反応系の固有圧下で行う。反応条件は有利に気圧で反応を実施できるように選択する。反応の継続時間は反応する出発物質の種類および使用される温度条件に依存して10分〜3日であることができる。反応の反応時間を、例えば5日以上に延長することができる。一般にVと銀化合物および金属成分Mの化合物から本発明の多金属酸化物を形成する反応は6〜24時間の時間にわたり行う。V懸濁液のオレンジ−赤色が反応の間に変化し、濃い褐色の懸濁液の形の新しい化合物が形成される。
【0019】
一般式Iの多金属酸化物の所望の化学組成に応じて、一般式Iのaおよびcにより決定されるV、銀化合物、および金属成分Mの化合物の量を互いに反応させ、多金属酸化物を製造する。従って銀化合物を一般に五酸化バナジウムと、0.15〜0.95、有利に0.25〜0.5のAg:Vの原子比に相当する比で、0.3〜1.9または0.5〜1.0の一般式I中のaの値に相当して反応させる。銀化合物は得に有利に五酸化バナジウムに対する量で0.3〜0.45のAg:Vの原子比に相当して、0.6〜0.9の一般式I中のaの値に相当して使用する。金属成分Mの化合物はVに対して一般に0.0005〜0.25、有利に0.001〜0.1の量で使用する。反応が終了後、繊維結晶形状を有する本発明の多金属酸化物が得られる。
【0020】
こうして形成される新規多金属酸化物を反応混合物から単離し、使用するために貯蔵することができる。多金属酸化物を、例えば懸濁液を濾過し、得られた固形物を乾燥させ、することにより単離し、乾燥は通常の乾燥機および例えば凍結乾燥機中で行うことができる。得られた多金属酸化物懸濁液の乾燥は特に有利に噴霧乾燥により行う。反応中に得られた多金属酸化物を有利に洗浄し、乾燥の前に塩を分離することができる。噴霧乾燥は一般に気圧または減圧で行う。乾燥ガス、一般に空気の導入温度は、窒素/アルゴンのような他の乾燥ガスもちろん使用できるが、使用される圧力および使用される溶剤により選択する。乾燥ガスを噴霧乾燥機に導入する温度は有利に溶剤の蒸発により冷却された乾燥ガスの排出温度が延長した時間にわたり200℃を上まわらないように選択する。一般に乾燥ガスの排出温度は50〜150℃、有利に100〜140℃に設定する。多金属酸化物の貯蔵を目的としない場合は、得られた多金属酸化物懸濁液を、多金属酸化物を予め単離し、乾燥せずに被覆することにより、他の使用、例えば本発明のプレ触媒の製造に導入することができる。
【0021】
本発明の多金属酸化物は分子酸素を有するガスを使用して芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を形成する気相酸化に使用される触媒の触媒活性組成物を製造するための前駆化合物として使用する。
【0022】
本発明の多金属酸化物は、有利に被覆触媒の製造に使用する場合においても、一般的な担体触媒または全活性触媒、すなわち担体材料を含有しない触媒を製造するための前駆物質として使用することができる。
【0023】
芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる部分酸化のための、本発明の多金属酸化物からの触媒の製造は有利にプレ触媒の段階を介して実施し、プレ触媒は貯蔵し、そのまま処理することができ、プレ触媒から熱処理によりまたはその場で、酸化反応器中で、酸化反応条件下で活性触媒を製造することができる。従ってプレ触媒は非孔質担体材料およびシェルの形で担体材料に被覆された少なくとも1個の層を有する触媒の前駆物質であり、この層は有利にこの層の全質量に対して30〜100質量%、特に50〜100質量%の一般式Iの多金属酸化物を含有する。前記層は得に有利に全部が一般式Iの多金属酸化物からなる。触媒活性層が一般式Iの多金属酸化物のほかに更に付加的成分を含有する場合は、付加的成分は例えば酸化珪素またはステアタイトのような不活性材料または芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる酸化のための、酸化バナジウム/アナターゼをベースとする他の公知の触媒であってもよい。プレ触媒は有利にプレ触媒の全質量に対して5〜25質量%の多金属酸化物を含有する。
【0024】
本発明のプレ触媒および被覆触媒のための不活性非孔質担体材料として、芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる酸化のための被覆触媒の製造に有利に使用される技術水準のほとんどすべての担体材料、例えば石英(SiO)。磁器、酸化マグネシウム、二酸化錫、炭化珪素、ルチル、アルミナ(Al2O3)、珪酸アルミニウム、ステアタイト(珪酸マグネシウム)、珪酸ジルコニウム、珪酸セリウム、またはこれらの担体材料の混合物を使用できる。本発明に関して非孔質の表現は技術的に有効でない量の孔を除いた非孔質であると理解すべきであり、それというのも理想的に孔を全く含まない担体材料中の少ない数の孔は技術的に避けられないからである。有利な担体材料として、ステアタイトおよび炭化珪素を特に記載することができる。担体材料の形状は本発明のプレ触媒および被覆触媒に関して一般に重要でない。例えば球、リング、ペレット、らせん、管、押出品または顆粒の形の触媒担体を使用することができる。これらの触媒担体の寸法は芳香族炭化水素の気相部分酸化のための被覆触媒を製造するために一般的な触媒担体に相当する。記載されたように、前記担体材料は粉末の形で混合して本発明の被覆触媒の触媒活性成分を形成できる。
【0025】
本発明の多金属酸化物のシェルによる不活性担体材料の被覆は原則的に技術水準の公知方法を使用して行うことができる。例えば五酸化バナジウムと銀化合物、金属成分Mおよび場合によりQの反応で得られた懸濁液を、ドイツ特許第1692938号およびドイツ特許第1769998号により、不活性担体材料からなる触媒担体に、高温で、加熱被覆ドラム中でプレ触媒の全質量に対して所望の量の多金属酸化物が得られるまで噴霧することができる。被覆ドラムの代わりに、ドイツ特許第2106796号と同様の方法で、本発明の多金属酸化物をシェルの形で触媒担体に被覆するために、ドイツ特許第1280756号に記載される流動層被覆装置を使用することができる。反応中に得られる本発明の多金属酸化物の懸濁液の代わりに、特に有利に前記被覆工程で単離および乾燥後得られる本発明の多金属酸化物の粉末のスラリーを使用することができる。ドイツ特許第744214号に記載されるように、有機結合剤、有利にコポリマーを、水または有機溶剤、例えば高級アルコール、多価アルコール、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオールまたはグリセリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、または環状尿素、例えばN,N′−ジメチルエチレン尿素、またはN,N′−ジメチルプロピレン尿素またはこれらの有機溶剤と水の混合物に溶解した形または有利に水性分散液の形の、製造中に形成される本発明の多金属酸化物の懸濁液または本発明の乾燥した多金属酸化物の粉末のスラリーに添加することができ、本発明の多金属酸化物の懸濁液またはスラリーの固形分に対して10〜20質量%の含量の結合剤を一般に使用する。適当な結合剤は例えばビニルアセテート−ビニルラウレート、ビニルアセテート−アクリレート、スチレン−アクリレート、ビニルアセテート−マレエート、またはビニルアセテート−エチレンコポリマーである。有機コポリマーポリエステル、例えばアクリレート−ジカルボン酸無水物−アルカノールアミンをベースとするコポリマーを有機溶剤に溶解して本発明の多金属酸化物のスラリーに添加する場合は、ドイツ特許第19823262.4号の説明に類似の方法で結合剤の含量を懸濁液またはスラリーの固形分に対して1〜10質量%に減少することができる。
【0026】
本発明の多金属酸化物による触媒担体の被覆は一般に20〜500℃の被覆温度で実施し、被覆装置中で気圧または減圧下で実施することができる。本発明のプレ触媒を製造するために、被覆を一般に0〜200℃、有利に20〜150℃で、特に室温から100℃までの音素で実施する。触媒担体を本発明の多金属酸化物の湿った懸濁液で被覆する場合は、より高い被覆温度、例えば200〜500℃の温度を使用することが有利である。前記の低い温度で被覆工程に使用されるポリマー結合剤の部分が触媒担体に被覆された層に残ることがある。
【0027】
200℃より高く500℃までの温度での熱処理によりプレ触媒を本発明による被覆触媒に後で変換する間に、被覆された層から熱分解および/または燃焼により結合剤を除去する。プレ触媒から本発明による被覆触媒への変換は500℃より高い、例えば650℃までの温度で、有利に200〜500℃、特に300〜450℃の温度の熱処理により実施することができる。
【0028】
200℃より高い、特に300℃より高い温度で、本発明の多金属酸化物は分解して触媒活性銀バナジウム酸化物ブロンズを形成する。
【0029】
本発明の目的のために、銀バナジウム酸化物ブロンズはAgとVの原子比が1未満である銀バナジウム酸化物化合物である。前記化合物は一般に半導電性または金属導電性酸化物固形物であり、固形物は有利にシートまたはトンネル構造中に結晶化され、[V]宿主格子中のバナジウムが部分的にV(IV)として還元された形で存在する。
【0030】
適当な高い被覆温度で、触媒担体に被覆される多金属酸化物の部分が触媒活性銀−バナジウム酸化物ブロンズおよび/または銀−バナジウム酸化物化合物に分解することがあり、前記化合物は結晶学構造が解明されていないが、前記銀−バナジウム酸化物ブロンズに変換できる。300〜500℃の被覆温度でこの分解は実質的に終了し、300〜500℃での被覆はプレ触媒の前駆物質段階を通過せずに本発明の被覆触媒を生じる
本発明の被覆触媒は有利に本発明のプレ触媒から製造するかまたはその場で前記プレ触媒から芳香族炭化水素の酸化のための反応器中で製造する。
【0031】
200℃より高く650℃まで、有利に250℃より高く500℃まで、特に300〜450℃の温度での本発明のプレ触媒の熱処理の間に、プレ触媒に存在ずる多金属酸化物が分解して銀−バナジウム酸化物ブロンズを形成する。プレ触媒に存在する本発明の多金属酸化物の銀−バナジウム酸化物ブロンズへのこの変換は、本発明による被覆触媒の代わりに本発明によるプレ触媒をこの反応に使用する場合は、特にその場で芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる気相部分酸化のための反応器中で、例えばo−キシレンおよび/またはナフタレンから無水フタル酸を製造する反応器中で、300〜450℃の通常の温度で実施する。この場合に本発明の多金属酸化物の銀−バナジウム酸化物ブロンズへの変換が終了するまで被覆触媒の選択率の規則的増加が一般に認められる。こうして形成される銀−バナジウム酸化物ブロンズは本発明の被覆触媒の触媒活性層の触媒活性成分である。
【0032】
本発明の多金属酸化物から銀バナジウム酸化物ブロンズを生じる熱的変換は連続する還元反応および酸化反応を介して進行するが、これらの反応はまだ詳しく理解されていない。
【0033】
本発明による被覆触媒を製造する他の可能な1つの方法は本発明の多金属酸化物粉末を200℃より高く650℃までの温度で熱処理し、不活性非孔質触媒担体を、場合により結合剤を添加して、こうして得られた銀−バナジウム酸化物ブロンズで被覆するからなる。
【0034】
しかし本発明の被覆触媒は特に有利に本発明のプレ触媒から1つの工程でまたは場合により複数の工程で、熱処理の後に、触媒担体の被覆の間または後に、特に1つの工程で、それぞれその場で、酸化反応器中で、芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる酸化条件下で製造する。
【0035】
本発明により製造される被覆触媒の触媒活性シェルはこうして製造した銀−バナジウム酸化物ブロンズを触媒活性シェルの全質量に対して一般に30〜100質量%、有利に50〜100質量%含有し、触媒活性シェル中の銀とバナジウムは一般にAg:Vの原子比、0.15〜0.95、有利に0.25〜0.5、特に0.3〜0.45で存在する。本発明の被覆触媒の触媒活性層は特に有利に全部が本発明により製造される銀−バナジウム酸化物ブロンズからなる。1つまたは複数の触媒活性層が本発明により製造された銀−バナジウム酸化物ブロンズのほかに他の成分を含有する場合は、前記成分は例えば技術水準による不活性材料、例えば炭化珪素またステアタイト、または芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/または無水カルボン酸を生じる酸化のための本発明によらない他の触媒化合物、例えば技術水準の前記議論で例示された五酸化バナジウム/アナターゼにもとづく触媒であってもよい。触媒活性成分を含有する触媒シェルの厚さは一般に10〜250mmである。これは触媒シェルが連続して被覆された複数の層からなる場合にも該当する。
【0036】
本発明の被覆触媒のBET表面積は一般に2〜100m/g、有利に2〜40m/gおよび特に3〜20m/gである。
【0037】
本発明の被覆触媒は分子酸素を有するガスを使用して、芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる部分酸化に、特にo−キシレンおよび/またはナフタレンから無水フタル酸を生じるまたはトルエンから安息香酸および/またはベンズアルデヒドを生じる気相部分酸化に使用する。この目的のために、本発明の触媒は単独にまたは異なる活性の他の触媒、例えば酸化バナジウム/アナターゼをベースとする技術水準の触媒と組み合わせて使用することができ、異なる触媒は一般に別々の触媒帯域に配置され、前記帯域は反応器に1個以上の固定触媒層に配置される。
【0038】
本発明の被覆触媒またはプレ触媒はこの目的のために外部から、例えば溶融塩を使用して反応温度に温度調節されたシェル形および管状反応器の反応管に導入する。本発明によるプレ触媒を本発明による被覆触媒の代わりに使用する場合は、芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる部分酸化、特にo−キシレンおよび/またはナフタレンから無水フタル酸を生じる部分酸化またはトルエンから安息香酸およびベンズアルデヒドを生じる部分酸化の温度条件下でプレ触媒を本発明の被覆触媒に変換する。反応ガスを100〜650℃、有利に250〜480℃の温度および一般に0.1〜2.5バール、有利に0.3〜1.5バールのゲージ圧および一般に750〜5000h−1の空間速度で、こうして製造した触媒層の上に導入する。
【0039】
触媒に供給される反応ガスは一般に分子酸素を有し、更に酸素のほかに水蒸気、二酸化炭素および/または窒素のような適当な反応調節剤および/または希釈剤を有するガスを酸化される芳香族炭化水素と混合することにより製造する。分子酸素を有するガスは一般に酸素1〜100容積%、有利に2〜50容積%、特に10〜30容積%、水蒸気0〜30容積%、有利に0〜20容積%、二酸化炭素0〜50容積%、有利に0〜1容積%、残り窒素を含有することができる。反応ガスを製造するために、分子酸素を有するガスに、ガス標準1m当たり酸化される芳香族炭化水素、一般に30〜300g、有利に70〜150gを負荷する。
【0040】
気相部分酸化は有利に異なる反応温度に温度調節された反応管に存在する触媒層の2個以上の帯域、有利に2つの帯域で実施し、前記温度は、ドイツ特許第2201528号またはドイツ特許第2830765号に記載されるように、例えば別々の塩浴を有する反応器を使用して達成することができる。反応をドイツ特許第4013051号に記載されるように2つの反応帯域で実施する場合は、一般に全触媒体積の30〜80容積%を形成する反応ガスの入口に最も近い反応帯域を一般にガス出口に最も近い反応帯域の温度より1〜20℃高い、有利に1〜10℃高い、特に2〜8℃高い反応温度に温度調節する。この運転形式は反応器の二帯域または多帯域構造化と呼ばれる。選択的に気相酸化を均一な反応温度で温度帯域に分けずに実施することができる。
【0041】
o−キシレンおよび/またはナフタレンから無水フタル酸を製造するために特に有利であることが見出された、芳香族炭化水素からアルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を生じる部分酸化法の1つの有利な構成において、芳香族炭化水素をまず本発明の被覆触媒層の上で反応させ、部分的に変換して反応混合物を生じる。得られた反応混合物またはその断片を引き続き少なくとも1種の他の触媒と接触することができ、前記触媒の触媒活性組成物は五酸化バナジウムおよびアナターゼを含有する。
【0042】
ガス流を有利に上流に配置された触媒層および下流に配置された触媒層に順次導入し、上流に配置された触媒層は本発明による触媒を有し、下流に配置された触媒層は少なくとも1種の触媒を有し、触媒の触媒活性組成物は五酸化バナジウムおよびアナターゼを有する。一般に下流に配置された触媒の触媒活性組成物は酸化バナジウム、V.Oとして計算して1〜40質量%、二酸化チタン、TiOとして計算して60〜99質量%、セシウム化合物、Csとして計算して1質量%まで、リン化合物、Pとして計算して1質量%まで、および酸化アンチモン、Sbとして計算して10質量%までを含有する。下流に配置された触媒層は有利に少なくとも2個の触媒層から形成され、触媒の触媒活性組成物は異なるCs含量を有し、Cs含量はガス流の流動方向に減少する。
【0043】
o−キシレンから無水フタル酸を製造する場合は、部分的に反応した反応混合物は例えば無水フタル酸およびo−トルアルデヒド、o−トルエンカルボン酸、およびフタリドおよび未反応o−キシレンのような他の酸化生成物を含有する。引き続き、
a)無水フタル酸およびo−キシレンから無水フタル酸を生じる反応経路で中間生成物である他の酸化生成物からo−キシレンを分離し、o−キシレンを再循環し、無水フタル酸および中間生成物の流れを、例えば酸化バナジウム/アナターゼをベースとする被覆触媒を有する2個以上の他の触媒層に供給し、中間生成物が選択的に無水フタル酸に酸化することにより、または
b)生成物混合物を更に処理せずに、すなわちo−キシレンを分離せずに、第2触媒層の上にまたは場合により他の触媒層に導入することにより
更に処理することができる。
【0044】
この反応を実施する方法は酸化バナジウム/アナターゼをベースとする触媒系のみを使用する場合より著しく高い全体的な無水フタル酸収率を達成し、それというのも本発明の被覆触媒がo−キシレンおよび/またはナフタレンを著しく高い選択率で無水フタル酸または前記中間生成物に酸化することができるからである。
【0045】
トルエンからベンズアルデヒドおよび/または安息香酸を生じる酸化は同様の方法で実施できる。ベンズアルデヒドは例えば香味料として使用される。
【0046】
実施例
A.触媒
A1.Ce0.02Ag0.71(本発明による触媒)
.O102g(0.56モル)を60℃で攪拌しながら脱イオン水71に添加した。懸濁液をCeNO・6HO4.94g(=0.011モル、Aldrich、純度99%)の水溶液と混合した。水1l中のAgNO68g(=0.398モル)の水溶液を得られたオレンジ色の懸濁液に添加し、この間攪拌を継続した。引き続き得られた懸濁液の温度を2時間かけて90℃に上昇し、混合物をこの温度で24時間攪拌した。引き続き得られた濃い褐色の懸濁液を冷却し、噴霧乾燥した(入口温度(空気)=350℃、出口温度(空気)=110℃)。
【0047】
得られた粉末は61m/gのBET法により決定した比表面積を有した。Siemens社、D5000回折計により、Cu−Kα放射線(40kV、30mA)を使用して、得られた粉末のX線粉末回折パターンが記録された。回折計は自動第1および第2ダイヤフラム装置および二次モノクロメーターおよびシンチレーション検知器を備えていた。X線粉末回折パターンで以下の格子平面間隔d[Å]および該当する相対強度Irel[%]が観察された。
15.04(11.9)、11.99(8.5)、10.66(15.1)、5.05(12.5)、4.35(23)、3.85(16.9)、3.41(62.6)、3.09(55.1)、3.02(100)、2.58(23.8)、2.48(27.7)、2.42(25.1)、2.36(34.2)、2.04(26.4)、1.93(33.2)、1.80(35.1)、1.55(37.8)。
【0048】
A2.Mn0.02Ag0.71(本発明による触媒)
102g(0.56モル)を60℃で攪拌しながら脱イオン水71に添加した。懸濁液をMn(NO・4HO2.76g(=0.011モル、Chempur、純度98.5%)の水溶液と混合した。水1l中のAgNO68g(=0.398モル)の水溶液を得られたオレンジ色の懸濁液に添加し、この間攪拌を継続した。引き続き得られた懸濁液の温度を2時間かけて90℃に上昇し、混合物をこの温度で24時間攪拌した。引き続き得られた濃い褐色の懸濁液を冷却し、噴霧乾燥した(入口温度(空気)=350℃、出口温度(空気)=110℃)。
【0049】
得られた粉末は58m/gのBET法により決定した比表面積を有した。得られた粉末のX線粉末回折パターンが記録された。X線粉末回折パターンで以下の格子平面間隔d[Å]および該当する相対強度Irel[%]が観察された。
15.09(6.8)、11.98(5.7)、10.61(9.4)、4.36(16.8)、3.84(14.7)、3.40(81.7)、3.09(61.1)、3.01(100)、2.58(26.4)、2.47(27.9)、2.41(21.6)、2.36(37.8)、2.04(32.2)、1.93(28.9)、1.80(42.2)、1.55(43.4)。
【0050】
A3.Ag0.73(比較触媒)
102g(0.56モル)を60℃で攪拌しながら脱イオン水71に添加した。水1l中のAgNO69.5g(=0.409モル)の水溶液を得られたオレンジ色の懸濁液に添加し、この間攪拌を継続した。引き続き得られた懸濁液の温度を2時間かけて90℃に上昇し、混合物をこの温度で24時間攪拌した。引き続き得られた濃い褐色の懸濁液を冷却し、噴霧乾燥した(入口温度(空気)=350℃、出口温度(空気)=110℃)。得られた粉末は56m/gのBET法により決定された比表面積を有した。
【0051】
以下の例B1に関して、こうして製造した粉末を以下のように珪酸マグネシウム球に被覆した。直径3.5〜4mmを有するステアタイト球300gを、被覆ドラム中で、20℃で20分経過して水60質量%およびグリセリン40質量%の混合物35.3gを添加して粉末40gおよび蓚酸4.4gで被覆し、引き続き乾燥した。得られたプレ触媒の試料で測定した、こうして被覆した触媒活性組成物の質量は、400℃で1時間の熱処理後、完成した触媒の全質量に対して10質量%であった。
【0052】
例B2〜B4に関して、粉末を以下のように珪酸マグネシウムリングに被覆した。外径7mm、長さ3mmおよび壁厚1.5mmを有するステアタイトリング350gを、被覆ドラム中で、20℃で20分経過して水60質量%およびグリセリン40質量%の混合物66.7gを添加して粉末84.4gおよび蓚酸9.4gで被覆し、引き続き乾燥した。こうして被覆した触媒活性組成物の質量は、450℃で1時間の熱処理後、完成した触媒の全質量に対して18質量%であった。
【0053】
A4.参考例(V/TiO二層触媒)
外径8mm、長さ6mmおよび壁厚1.6mmを有するステアタイト(珪酸マグネシウム)リング1400gを被覆ドラム中で160℃に加熱し、アクリル酸/マレイン酸コポリマー(質量比=75:25)からなる有機結合剤13.8gと一緒に、21m/gのBET表面積を有するアナターゼ466g、バナジルオキサレート67.2g、三酸化アンチモン14.4g、リン酸水素アンモニウム3.15g、硫酸セシウム2.87g、水721gおよびホルムアミド149gからなる懸濁液を噴霧した。こうして被覆した触媒活性組成物は平均してリン(Pとして計算して)0.16質量%、バナジウム(Vとして計算して)7.5質量%、アンチモン(Sbとして計算して)3.2質量%、セシウム(Csとして計算して)0.40質量%および二酸化チタン88.74質量%からなる。
【0054】
こうして得られた被覆触媒を被覆ドラム中で160℃に加熱し、アクリル酸/マレイン酸コポリマー(質量比75:25)からなる有機結合剤14gと一緒に、21m/gのBET比表面積を有するアナターゼ502g、バナジルオキサレート35.8g、硫酸セシウム2.87g、水720gおよびホルムアミド198gからなる懸濁液を噴霧した。こうして被覆した触媒活性組成物は平均してバナジウム(Vとして計算して)4.0質量%、セシウム(Csとして計算して)0.4質量%および二酸化チタン88.8質量%を有した。被覆した層の質量は完成した触媒の全質量の9.3質量%であった。
【0055】
A5.参考触媒(V/TiO触媒)
外径8mm、長さ6mmおよび壁厚1.6mmを有するステアタイト(珪酸マグネシウム)リング1400gを被覆ドラム中で160℃に加熱し、21m/gのBET表面積を有するアナターゼ468g、バナジルオキサレート67.2g、三酸化アンチモン16.8g、リン酸水素アンモニウム2.95g、硫酸セシウム0.72g、水719gおよびホルムアミド150gからなる懸濁液を、被覆される層の質量が(450℃で1時間の熱処理後に)完成した触媒の全質量の10.5質量%になるまで噴霧した。こうして被覆した触媒活性組成物、すなわち触媒シェルは平均してリン(Pとして計算して)0.15質量%、バナジウム(Vとして計算して)7.5質量%、アンチモン(Sbとして計算して)3.2質量%、セシウム(Csとして計算して)0.1質量%および二酸化チタン89.05質量%からなっていた。
【0056】
B.酸化
B1.例A1およびA2からの本発明による触媒および例3からの比較触媒を使用する無水フタル酸の製造
内径16mmを有する長さ80cmの鉄管に触媒A1、A2またはA3(被覆したステアタイト球)を層長さ66cmに充填した。温度を調節するために、鉄管を電気加熱ジャケットにより包囲した。空気標準m当たり98.5質量%o−キシレン60gを充填した空気360標準l/hを管に上から下に貫流した。得られた結果を以下の表に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

1)CO選択率は燃焼生成物(CO、CO)に変換されたo−キシレンの割合に相当し、100%に対する残りの選択率は所望の生成物無水フタル酸および中間生成物o−トルアルデヒド、o−トルイル酸およびフタリドおよび無水マレイン酸、シトラコン酸無水物および安息香酸のような副生成物に変換されるo−キシレンの割合に相当する。
【0059】
反応器から除去された触媒A1の試料は活性組成物のBET表面積6.7m/gおよびバナジウム酸化状態4.63を有することが見出された。X線粉末回折パターンで以下の格子平面間隔d[Å]および該当する相対強度Irel[%]が観察された。
4.85(9.8)、3.50(14.8)、3.25(39.9)、2.93(100)、2.78(36.2)、2.55(35.3)、2.43(18.6)、1.97(15.2)、1.95(28.1)、1.86(16.5)、1.83(37.5)、1.52(23.5)。
【0060】
B2.例A3からの比較触媒および参考触媒A4およびA5の組合せを使用する1つの管での無水フタル酸の製造
触媒A5.0.80モル、触媒A4.1.40モルおよび引き続きプレ触媒A3(被覆したステアタイトリング)0.80モルを、内径25mmを有する長さ3.85mの鉄管に下から上に導入した。温度を調節するために、鉄管を塩溶融物により包囲した。空気標準m当たり98.5質量%o−キシレン80gを充填した空気4.0標準m/hを管に上から下に貫流した。353〜360℃の塩浴温度で115.5質量%の平均PA収率が達成された(この収率は100%純粋o−キシレンに対する無水フタル酸質量%の量である)。変換率は99.94%より高く、反応器出口での残留フタリド含量は0.35質量%未満であった。
【0061】
B3.例A1からの本発明による触媒および参考触媒A4およびA5の組合せを使用する1つの管での無水フタル酸の製造
触媒A5.0.80モル、触媒A4.1.40モルおよび引き続きプレ触媒A1.0.80モルを使用して例B2の工程を繰り返した。平均PA収率117.2質量%が達成された。
【0062】
B4.例A2からの本発明による触媒および参考触媒A4およびA5の組合せを使用する1つの管での無水フタル酸の製造
触媒A5.0.90モル、触媒A4.1.60モルおよび引き続きプレ触媒A1.0.50モルを使用して例B3の工程を繰り返した。平均PA収率116.7質量%が達成された。変換率は999.94%より高く、反応器出口での残留フタル酸含量は0.35質量%未満であった。この例は本発明の触媒を使用する場合に、銀−酸化バナジウム触媒の層の長さが例B1よりかなり短くても高いPA収率が達成できることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
Aga−c・eHO I
(式中、
aは0.3〜1.9の値であり、
QはP、As、Sbおよび/またはBiから選択される1つの元素であり、
bは0〜0.3の値であり、
MはNb、Ce、W、Mn、Ta、Pd、Pt、Ruおよび/またはRhから選択される1つの金属であり、
cは0.001〜0.5の値であり、ただし(a−c)は0.1以上であり、
dは一般式Iの酸素以外の元素の原子価および頻度により決定される数であり、
eは0〜20の値である)の多金属酸化物。
【請求項2】
bが0の値であり、かつcが0.01〜0.1の値である請求項1記載の多金属酸化物。
【請求項3】
粉末X線パターンが、15.23±0.6、12.16±0.4、10.68±0.3、3.41±0.04、3.09±0.04、3.02±0.04、2.36±0.04および1.80±0.04Åの格子平面間隔dでの回折反射により特徴付けられる結晶構造で存在する請求項1または2記載の多金属酸化物。
【請求項4】
3〜250m/gのBET比表面積を有する請求項1から3までのいずれか1項記載の多金属酸化物。
【請求項5】
MがCeまたはMnである請求項1から4までのいずれか1項記載の多金属酸化物。
【請求項6】
芳香族炭化水素の気相部分酸化のためのプレ触媒および触媒を製造するための請求項1から5までのいずれか1項記載の多金属酸化物の使用。
【請求項7】
芳香族炭化水素の気相部分酸化のための触媒に変換することができ、不活性非孔質担体および前記担体に被覆された請求項1から5までのいずれか1項記載の多金属酸化物を有する少なくとも1つの層からなるプレ触媒。
【請求項8】
プレ触媒の全質量に対して5〜25質量%の多金属酸化物を含有する請求項6記載のプレ触媒。
【請求項9】
不活性非孔質担体材料がステアタイトからなる請求項7または8記載のプレ触媒。
【請求項10】
不活性非孔質担体および前記担体に被覆された少なくとも1つの層からなる芳香族炭化水素の気相部分酸化のための触媒であり、前記層は触媒活性組成物として銀−酸化バナジウムブロンズを有し、前記ブロンズはNb、Ce、W、Mn、Ta、Pd、Pt、Ruおよび/またはRhからなる群から選択される少なくとも1種の金属Mを含有し、前記ブロンズにおいてAg:V原子比が0.15〜0.95であり、M:V原子比が0.0005〜0.25である、芳香族炭化水素の気相部分酸化のための触媒。
【請求項11】
銀−バナジウムブロンズがCeまたはMnを含有する請求項10記載の触媒。
【請求項12】
触媒活性組成物が2〜100m/gのBET表面積を有する請求項10または11記載の触媒。
【請求項13】
請求項1記載の多金属酸化物組成物または請求項7記載のプレ触媒から製造される請求項10から12までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項14】
アルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を製造する方法において、芳香族炭化水素および分子酸素を有するガスを有するガス流を、高温で請求項10から13までのいずれか1項記載の触媒と接触させることを特徴とする、アルデヒド、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を製造する方法。
【請求項15】
触媒を請求項7から9までのいずれか1項記載のプレ触媒からその場で製造する請求項14記載の方法。
【請求項16】
得られた反応混合物またはその部分を、触媒活性組成物が五酸化バナジウムおよびアナターゼを含有する少なくとも1つの他の触媒と接触させる請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
ガス流を上流に配置された触媒層および下流に配置された触媒層に順次導入し、その際上流に配置された触媒層が請求項10記載の触媒を有し、下流に配置された触媒層が、触媒活性組成物が五酸化バナジウムおよびアナターゼを含有する少なくとも1つの触媒を有する請求項16記載の方法。
【請求項18】
下流に配置された触媒の触媒活性組成物がVとして計算して酸化バナジウム1〜40質量%、TiOとして計算して二酸化チタン60〜99質量%、Csとして計算してセシウム化合物1質量%まで、Pとして計算してリン化合物1質量%までおよびSbとして酸化アンチモン10質量%までを含有する請求項17記載の方法。
【請求項19】
下流に配置された触媒層が少なくとも2個の触媒層を有し、この触媒活性組成物が異なるCs含量を有し、その際ガス流の流動方向にCs含量が減少する請求項18記載の方法。
【請求項20】
芳香族炭化水素としてo−キシレンまたはナフタレンまたはo−キシレンとナフタレンの混合物を無水フタル酸に酸化する請求項14から19までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2007−533577(P2007−533577A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521492(P2006−521492)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008296
【国際公開番号】WO2005/012216
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】