説明

銀微粒子含有ポリエステルの製造方法

【課題】粉末状の銀微粒子を使用する必要のない銀微粒子含有ポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】カルボン酸とポリオールとを混合してから、エステル化し、重合させ、ポリエステルを製造する方法において、前記エステル化から重合終了までの期間中に、銀化合物溶液を添加し分散させる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銀微粒子含有ポリエステルの製造方法に関し、特に、銀微粒子のポリエステル構造体内への分散をより均一的に且つより容易にさせる銀微粒子含有ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ナノ銀微粒子の添加によりポリエステル製品に抗菌効果を付与する技術がある。この中のナノ銀微粒子のポリエステル製品への添加については、例えば、既に重合したポリエステル粒子を溶融してポリエステル製品を成型加工する際に、機械方式でナノ銀微粒子を練り込んで分散させる方法、及び、重合によりポリエステルを製造する際に、ナノ銀微粒子を添加し分散させる方法などが挙げられる。上記ナノ銀微粒子の添加方法によれば、ナノ銀微粒子をポリエステルまたはその最後の製品に分散することができるが、初めから製造し難く且つ飛散しやすい粉末状のナノ銀微粒子を用意しなければならない。特に、前記既に重合したポリエステル粒子を溶融してポリエステル製品を成型加工する際に初めてナノ銀微粒子を添加する方法では、溶融ポリエステルの粘度が高いので、粉末状のナノ銀微粒子の均一的な混入が非常に難しくて品質の良いものがなかなか得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記に鑑みて、本発明は、粉末状の銀微粒子を使用する必要のない銀微粒子含有ポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は、カルボン酸とポリオールとを混合してから、エステル化し、重合させ、ポリエステルを製造する方法において、前記エステル化から重合終了までの期間中に、銀化合物溶液を添加し分散させることを特徴とする銀微粒子含有ポリエステルの製造方法を提供する。
前記銀化合物の添加は、例えば、エチレングリコール溶液、または、水溶液の形で行うことができるが、ポリエステル製造に使われるポリオールも銀化合物を溶解することができるので、銀化合物そのままで添加しても良い。
前記いずれの添加法における銀化合物は、溶液中や反応液中に下記反応式のようにエチレングリコールやポリオールを還元剤として反応され、銀微粒子に還元されて均一に分分布することができる。
【0005】
【化1】

そして、銀化合物の中に、エチレングリコールや水、ポリオールに対し溶解度が低いものもあるが、本発明における銀化合物の添加量は最後のポリエステル総量に対し銀含量が10ppm〜20000ppmになる相当量の僅少な量を使用することで足りるので、問題にならない。
【発明の効果】
【0006】
前記製造方法は、ナノ銀微粒子に代えて銀化合物、特に銀化合物の溶液を添加するので、銀微粒子混入の難しさ及び飛散問題がないように容易に且つ均一に分散することができて品質の良い銀微粒子含有ポリエステルないしその製品を手軽に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明を好適な実施例により詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、硝酸銀0.157gをエチレングリコール20mlに溶解して、硝酸銀のエチレングリコール溶液を用意する。一方、エチレングリコール420gとテレフタル酸864gとを攪拌して均一に混合してから、260℃で3時間エステル化する。その後、反応液を重合容器に移し、触媒としての三酸化アンチモン0.4g、及び前記硝酸銀のエチレングリコール溶液を加えて10分間攪拌して、真空下において、273℃で3時間重合し溶融状態のポリエステルを製造する。最後に、前記溶融状態のポリエステルを冷却してペレットに切る。
前記方法により、本実施例は10nm〜100nm銀微粒子含有ポリエステルペレットを得た。
【実施例2】
【0009】
まず、硝酸銀0.157gをエチレングリコール20mlに溶解して、硝酸銀のエチレングリコール溶液を用意する。一方、エチレングリコール420gとテレフタル酸864gとを攪拌して均一に混合してから、260℃で3時間エステル化する。その後、反応液を重合容器に移し、273℃まで加熱してから触媒として三酸化アンチモン0.4gを添加し、真空下において、前記温度を維持しながら3.5時間重合する。また、重合進行中にいおて、前記硝酸銀のエチレングリコール溶液を添加する。このようにすると、溶融状態のポリエステルが得られる。最後に、前記溶融状態のポリエステルを冷却してペレットに切る。
前記方法により、本実施例は10nm〜100nm銀微粒子含有ポリエステルペレットを得た。
【実施例3】
【0010】
まず、硝酸銀0.157gをエチレングリコール20mlに溶解して、硝酸銀のエチレングリコール溶液を用意する。一方、エチレングリコール420gとテレフタル酸864gとを攪拌して均一に混合してから、260℃まで加熱し、3時間エステル化する。また、前記加熱が260℃に達すると、前記硝酸銀のエチレングリコール溶液を添加する。その後、反応混合物を重合容器に移し、触媒として三酸化アンチモン0.4gを添加し、真空下にいおて、273℃で3時間重合しポリエステルを製造する。最後に、前記溶融状態のポリエステルを冷却してペレットに切る。
前記方法により、本実施例は10nm〜500nm銀微粒子含有ポリエステルペレットを得た。
【実施例4】
【0011】
まず、硝酸銀0.157gをエチレングリコール20mlに溶解して、硝酸銀のエチレングリコール溶液を用意する。一方、エチレングリコール420とテレフタル酸864gとを攪拌しながら、前記硝酸銀のエチレングリコール溶液を加えて均一に混合してから、260℃で3時間エステル化する。その後、反応液を重合容器に移し、触媒としての三酸化アンチモン0.4gを添加し、真空下において、273℃で3時間重合し溶融状態のポリエステルを製造する。最後に、前記溶融状態のポリエステルを冷却してペレットに切る。
前記方法により、本実施例は10nm〜500nm銀微粒子含有ポリエステルペレットを得た。
【実施例5】
【0012】
まず、硝酸銀0.157gをエチレングリコール20mlに溶解して、硝酸銀のエチレングリコール溶液を用意する。一方、エチレングリコール420gとテレフタル酸864gとを攪拌しながら、ポリエチレングリコール42gを入れて均一に混合してから、260℃で3時間エステル化する。その後、反応液を重合容器に移し、触媒としての三酸化アンチモン0.4g、及び前記硝酸銀のエチレングリコール溶液を加えて10分間攪拌して、真空下において、273℃で3時間重合し溶融状態のポリエステルを製造する。最後に、前記溶融状態のポリエステルを冷却してペレットに切る。
前記方法により、本実施例は、10nm〜100nm銀微粒子含有ポリエステルペレットを得た上、更に、ポリエチレングリコールを添加しているので、吸湿効果がさらに向上する。
【実施例6】
【0013】
まず、硝酸銀0.157gを1,4−ブチレングリコール20mlに溶解して、硝酸銀の1,4−ブチレングリコール溶液を用意する。一方、1,4−ブチレングリコール610gとテレフタル酸864gとを攪拌して均一に混合してから、260℃で3時間エステル化する。その後、反応液を重合容器に移し、触媒としての三酸化アンチモン0.4g、及び前記硝酸銀の1,4−ブチレングリコール溶液を加えて10分間攪拌して、真空下において、273℃で3時間重合し溶融状態のポリエステルを製造する。最後に、前記溶融状態のポリエステルを冷却してペレットに切る。
前記方法により、本実施例は10nm〜100nm銀微粒子含有ポリエステルペレットを得た。
【実施例7】
【0014】
まず、硝酸銀0.157gを1,3−プロピレングリコール20mlに溶解して、硝酸銀の1,3−プロピレングリコール溶液を用意する。一方、1,3−プロピレングリコール510gとテレフタル酸864gとを攪拌して均一に混合してから、260℃で3時間エステル化する。その後、反応液を重合容器に移し、触媒としての三酸化アンチモン0.4g、及び前記硝酸銀の1,3−プロピレングリコール溶液を加えて10分間攪拌して、真空下において、273℃で3時間重合し溶融状態のポリエステルを製造する。最後に、前記溶融状態のポリエステルを冷却してペレットに切る。
前記方法により、本実施例は10nm〜100nm銀微粒子含有ポリエステルペレットを得た。
また、上記実施例には、銀化合物の添加は、硝酸銀をエチレングリコールに溶解した形で行うが、硝酸銀を水に溶解した形、または、硝酸銀の粉末そのままでカルボン酸とポリオールとの混合物に添加しても良い。
上記に述べたのは、本発明の好適な実施例だけであって、本発明を限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲及び明細書に基づく簡単な変更や修飾することも本発明の範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の製造方法によれば、銀微粒子含有ポリエステルないしその製品を製造する際、銀微粒子を均一に分散することができて品質の良いものを手軽得ることができるので、抗菌性が要求されるポリエステル製品に広く応用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸とポリオールとを混合してから、エステル化重合させ、ポリエステルを製造する方法であって、
前記混合から重合終了までの期間中に、銀化合物を添加し分散させることを特徴とする銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記銀化合物の添加は、銀化合物そのままで、または、エチレングリコール溶液、または、水溶液の形で行うことを特徴とする請求項1に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記銀化合物の添加は、前記混合進行中で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記銀化合物の添加は、前記エステル化後重合の前で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記銀化合物の添加は、前記重合進行中で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記銀化合物の添加は、前記エステル化進行中で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記銀化合物として、硝酸銀、過塩素酸銀、硫酸銀及び炭酸銀よりなる群から選んだ少なくとも1種を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記銀化合物として、最後のポリエステルの総量に対し銀含有量が10ppm〜20000ppmになる相当量を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
前記ポリオールとして、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール及びプロピレングリコールよりなる群から選んだ少なくとも1種を使用し、前記カルボン酸として、テタフタル酸、イソフタル酸よりなる群から選んだ少なくとも1種を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の銀微粒子含有ポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2006−16613(P2006−16613A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184521(P2005−184521)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(505241463)宏遠興業股▲ふん▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】