説明

銀色の金属光沢を有するフィルムおよび該フィルムの製造方法

【課題】光沢などの美粧性および水蒸気バリア性に優れる樹脂フィルムを提供すること。また、反射性能および耐熱性に優れる樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明のフィルムは、シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部と(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含むフィルムであって、前記フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上であり、かつ前記フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%である。
R3=R1−R2 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀色の金属光沢を有するフィルムおよび該フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品、電子部品、電子機器など様々な分野において、樹脂フィルムの需要が高まっている。
例えば、食品包装用のフィルムについて、特許文献1では、光沢を有し美粧性に優れるフィルムを作製する試みがなされている。具体的には、特許文献1では、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートまたはナイロンといった結晶性を有するポリマーを用いて、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂フィルムが作製されている。
【0003】
また、液晶ディスプレイに用いる反射フィルムについては、できるだけ多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上できるよう、高い反射性能が求められている。特許文献2には、プロピレン系ランダムブロック共重合体と無機充填材とを含むプロピレン系樹脂組成物によれば、反射フィルムとして好適なフィルムが製造できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190744号公報
【特許文献2】特開2009−84303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、食品包装用のフィルムに対しては、光沢を有するとともに水蒸気バリア性に優れるフィルムの需要が高まっているため、上記従来の食品包装用のフィルムには光沢と水蒸気バリア性とのバランスの点で更なる改良の余地がある。
【0006】
また、上記従来のプロピレン系樹脂組成物から得られる反射フィルムには、反射性能と耐熱性および軽量化とのバランスの点で更なる改良の余地がある。
なお、他の分野に用いる樹脂フィルムにおいても、光沢などの美粧性や反射性能の他、水蒸気バリア性や耐熱性に優れるフィルムの需要が高まっている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、光沢などの美粧性および水蒸気バリア性に優れる樹脂フィルムを提供することにある。また、反射性能および耐熱性に優れる樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフィルムは、シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部と(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含むフィルムであって、上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上であり、かつ上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%である。
R3=R1−R2 (1)
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフィルムは、銀色の金属光沢を有するとともに、水蒸気バリア性に優れる。このため、上記フィルムは食品、医薬品などの包装体に好適に用いられる。また、本発明に係るフィルムは、反射性能および耐熱性にも優れる。このため、上記フィルムは反射フィルムに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1で得られた延伸フィルムの断面についてのSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るフィルムは、シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部と(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含むフィルムであって、上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上であり、かつ上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%である。
【0012】
R3=R1−R2 (1)
上記全反射率R1および重量分率φが上記範囲にあることは、フィルムが銀色の金属光沢を有することを意味する。
【0013】
上記フィルムは、好ましくは、特定の成分を特定の量で含む樹脂組成物から得られる未延伸フィルムを延伸して作製される。この延伸によって特定のフィルム構造、すなわち内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造が形成されるため、上記全反射率R1および重量分率φが上記範囲となり、銀色の金属光沢が発現すると考えられる。
【0014】
〈樹脂組成物〉
上記樹脂組成物は、シンジオタクチックポリプロピレン(A)と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加誘導体から選ばれる樹脂(B)とを含む。
【0015】
本発明に用いるシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、ホモポリプロピレンであっても、プロピレン・炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)ランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよいが、好ましくはホモポリプロピレンまたはプロピレン・炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)ランダム共重合体である。さらに好ましくは、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンまたは炭素原子数4〜10のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンと炭素原子数4〜10のα-オレフィンとの共重合体である。得られたフィルムにおける表面粗度、表面光沢度、耐熱性の観点からはホモポリプロピレンが特に好ましい。
【0016】
ここで、プロピレン以外の炭素原子数2〜20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0017】
なお、シンジオタクチックポリプロピレン(A)がプロピレン・炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)ランダム共重合体またはプロピレンブロック共重合体である場合は、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを含む)から導かれる構成単位の合計100モル%に対して、プロピレンから導かれる構成単位は通常90モル%を超え100モル%未満の量で、好ましくは91mol%以上100モル%未満の量で含まれている。炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位は通常0モル%を超え10モル%未満の量で、好ましくは0モル%を超え9モル%以下の量で含まれている。
【0018】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)がプロピレン・α-オレフィン(プロピレンを除く)ランダム共重合体である場合は、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを含む)から導かれる構成単位の合計100モル%に対して、プロピレンから導かれる構成単位はより好ましくは93〜99.7モル%、さらに好ましくは94〜99.7モル%、特に好ましくは95〜99.7モル%の量で、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位はより好ましくは0.3〜7モル%、さらに好ましくは0.3〜6モル%、特に好ましくは0.3〜5モル%の量で含有されていることが好ましい。
【0019】
本発明で用いるシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、NMR法により測定したシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率、ペンタッドシンジオタクティシテー)が通常85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上であり、rrrr分率がこの範囲にあるシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、成形性、耐熱性、機械特性および透明性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好であるため好ましい。なおrrrr分率の上限は特に制限はないが100%以下であり通常例えば99%以下である。
【0020】
このシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率)は、以下のようにして測定される。
rrrr分率は、13C-NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求められる。
【0021】
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw (1)
NMR測定は、例えば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-500型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0022】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が通常0.1〜10dL/g、好ましくは0.5〜10dL/g、より好ましくは0.50〜8.00dL/g、さらに好ましくは0.95〜8.00dL/g、特に好ましくは1.00〜8.00dL/g、最も好ましくは1.40〜8.00dL/gの範囲にあることが望ましい。中でも1.40〜5.00dL/gの範囲にあることが好ましい。このような極限粘度[η]を有するシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、良好な流動性を示し、他の成分と配合し易く、また機械的強度に優れたフィルムが得られる傾向がある。
【0023】
極限粘度[η]の測定は後述する実施例に記載の方法で行われる。
さらに、シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、示差走査熱量計(DSC)測定により得られる融点(Tm)が、通常145℃以上、好ましくは147℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは155℃以上、最も好ましくは156℃以上である。なおTmの上限は特に制限されないが、通常例えば170℃以下である。さらに、融解熱量(ΔH)が、通常40mJ/mg以上、好ましくは45mJ/mg以上、さらに好ましくは50mJ/mg以上、特に好ましくは52mJ/mg以上、最も好ましくは55mJ/mg以上である。なおΔHの上限は特に制限されないが、通常例えば90mJ/mg以下である。
【0024】
示差走査熱量測定は後述する実施例に記載の方法で行われる。
融点(Tm)がこの範囲にあるシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、成形性、耐熱性、透明性および機械特性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好である。後述するような触媒および重合条件を用いることで、融点(Tm)がこの範囲にあるシンジオタクチックポリプロピレン(A)を製造できる。
【0025】
また、シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、示差走査熱量計(DSC)測定により得られるガラス転移温度(Tg)が通常−10〜0℃である。
ガラス転移温度は後述する実施例に記載の方法で求められる。
【0026】
また、シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、示差走査熱量計(DSC)測定で求めた等温結晶化温度をTiso、等温結晶化温度Tisoにおける半結晶化時間をt1/2とした場合、110≦Tiso≦150(℃)の範囲において、通常下記式(Eq-1)を満たし、好ましくは下記式(Eq-2)を満たし、より好ましくは下記式(Eq-3)を満たす。
【0027】
【数1】

等温結晶化測定により求められる半結晶化時間(t1/2)は、等温結晶化過程でのDSC熱量曲線とベースラインとの間の面積を全熱量とした場合、50%熱量に到達した時間である(新高分子実験講座8 高分子の物性(共立出版株式会社)参照)。
【0028】
半結晶化時間(t1/2)測定は次のようにして行われる。試料5mg程度を専用アルミパンに詰め、パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、30℃から200℃までを320℃/minで昇温し、200℃で5分間保持したのち、該温度(200℃)から各等温結晶化温度までを320℃/minで降温し、その等温結晶化温度に保持して得られたDSC曲線から得る。ここで半結晶化時間(t1/2)は等温結晶化過程開始時間(200℃から等温結晶化温度に到達した時刻)t=0として求める。本発明で用いるシンジオタクチックポリプロピレン(A)については上記のようにしてt1/2を求めることができるが、ある等温結晶化温度、例えば110℃で結晶化しない場合は、便宜的に110℃以下の等温結晶化温度で測定を数点実施し、その外挿値より半結晶化時間(t1/2)を求める。
【0029】
上記(Eq-1)を満たすシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、既存のものに比べて成形性が格段に優れる。ここで成形性が優れるとは、フィルムを作成する場合、溶融状態から固化するまでの時間が短いことを示す。また、このようなシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、高速成形性、形状安定性、長期生産安定性などが優れる。後述するような触媒および重合条件を用いることで、上記(Eq-1)を充足するシンジオタクチックポリプロピレン(A)を製造できる。
【0030】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、n-デカン可溶部量が通常1wt%以下、好ましくは0.8wt%以下、より好ましくは0.6wt%以下であることが望ましい。このn-デカン可溶部量はシンジオタクチックポリプロピレン(A)やこれから得られるフィルムのブロッキング特性に密接した指標であり、通常n-デカン可溶部量が少ないということは低結晶性成分量および低分子量成分が少ないことを意味する。すなわち、n-デカン可溶部量が上記範囲にあるシンジオタクチックポリプロピレン(A)は、極めて良好な耐ブロッキング特性を備える。
【0031】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、△H≧40mJ/mgであり、上記(Eq-1)を満たすことが好ましいが、さらにn−デカン可溶部量が1wt%以下であることが望ましい。さらに、シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、ホモポリプロピレンであるか、またはプロピレン・炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)ランダム共重合体もしくはプロピレンブロック共重合体であってプロピレンから導かれる構成単位を90モル%を超える量で含有する共重合体であり、シンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上であり、融点(Tm)が145℃以上であり、融解熱量(ΔH)が40mJ/mg以上であり、上記式(Eq-1)を満たし、かつn−デカン可溶部量が1wt%以下であることが望ましい。後述するような触媒および重合条件を適宜調整することで、上記特性を充足するシンジオタクチックポリプロピレン(A)を製造できる。
シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明で用いるシンジオタクチックポリプロピレン(A)の製造にあたっては、
(I)下記一般式[1]で表される架橋メタロセン化合物と、
(II)(II-1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(II-2)上記架橋メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および
(II-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と
からなる重合用触媒(cat-1)、または該触媒(cat-1)が粒子状担体に担持された重合用触媒(cat-2)が好適に利用される。しかし、生成する重合体がシンジオタクチックポリプロピレン(A)としての要件を満たす限りは、シンジオタクチックポリプロピレン(A)の製造に用いる触媒は特に限定されない。
【0033】
【化1】

上記一般式[1]において、R1、R2、R3およびR4は水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれ、R2とR3とは互いに結合して環を形成していてもよく、R5、R6、R8、R9、R11およびR12は水素、炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれ、R7およびR10の2つの基は水素原子ではなく、炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R5とR6、R7とR8、R8とR9、R9とR10およびR11とR12から選ばれる一つ以上の隣接基組み合わせにおいて該隣接基は相互に結合して環を形成していてもよい。
【0034】
17およびR18は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基またはケイ素原子含有基であり、相互に同一でも異なっていてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0035】
MはTi、ZrまたはHfであり、Yは炭素であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組み合わせで選んでもよく、jは1〜4の整数である。
【0036】
架橋メタロセン化合物(I)
以下に、上記一般式[1]で表される架橋メタロセン化合物(I)(本明細書において「成分(I)」ともいう。)の具体例を示す。
【0037】
シクロプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロブチリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘプチリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル(2,7-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7-テトラtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(4-メチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジナフチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0038】
ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル(2,7-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7-テトラtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(4-メチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジナフチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(他には1,3-ジフェニルイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドとも言われる。以下については別名省略)、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル(2,7-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7-テトラtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(4-メチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジナフチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0039】
ジフェネチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェネチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ベンズヒドリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ベンズヒドリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(クミル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(クミル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1-フェニル-エチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1-フェニル-エチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(シクロヘキシルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(シクロヘキシルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(シクロペンチルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(シクロペンチルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ナフチルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ナフチルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ビフェニルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ビフェニルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0040】
(ベンジル)(n-ブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(ベンジル)(n-ブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(ベンジル)(クミル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(ベンジル)(クミル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロブチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロブチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘプチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘプチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0041】
ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジメチル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジメチル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジクミル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジクミル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジ(トリメチルシリル)-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジ(トリメチルシリル)-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジフェニル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジフェニル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジベンジル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジベンジル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジメチル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジn-ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジメチル-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0042】
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m-クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m-クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m-トリフルオロメチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m-トリフルオロメチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリフルオロメチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリフルオロメチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-tert-ブチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-tert-ブチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-n-ブチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-n-ブチル-フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0043】
ジ(p-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1-ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1-ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2-ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2-ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ナフチルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ナフチルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ビフェニルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(ビフェニルメチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド。
【0044】
さらに、上記化合物の「ジルコニウム」を「ハフニウム」や「チタニウム」に変えた化合物、「ジクロリド」が「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」となったメタロセン化合物、「ジクロリド」が「ジメチル」や「メチルエチル」となったメタロセン化合物なども挙げられる。
【0045】
架橋メタロセン化合物(I)は公知の方法によって製造可能であり、特に製造法は限定されない。公知の製造方法として、例えば本出願人によるWO2001/27124号およびWO2004/087775号パンフレットに記載された製造方法を挙げることができる。
上記架橋メタロセン化合物(I)は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
有機アルミニウムオキシ化合物(II-1)
シンジオタクチックポリプロピレン(A)の製造に用いる有機アルミニウムオキシ化合物(II-1)(本明細書において「成分(II-1)」ともいう。)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用できる。具体的には、下記一般式[2]および/または一般式[3]で表される化合物を挙げることができる。
【0047】
【化2】

(上記式[2]において、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)
(上記式[3]において、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)
【0048】
特にRがメチル基であり、nが3以上、好ましくは10以上であるメチルアルミノキサンが好適に利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0049】
本発明では、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を使用することができる。また、特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、「ベンゼン不溶性の」有機アルミニウムオキシ化合物とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である有機アルミニウムオキシ化合物をいう。
【0050】
また、有機アルミニウムオキシ化合物としては下記一般式[4]で表される修飾メチルアルミノキサンも挙げられる。
【0051】
【化3】

(上記式[4]において、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基、m,nはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。)
【0052】
この修飾メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムとを用いて調製される。このような修飾メチルアルミノキサン[4]は一般にMMAOと呼ばれている。このようなMMAOはUS4960878およびUS5041584に記載された方法で調製することができる。また、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとから得られ、Rがイソブチル基であるものが、東ソー・ファインケム社などによって、MMAOやTMAOといった名称で商業的に生産されている。このようなMMAOは、各種溶媒への溶解性および保存安定性を改良したアルミノキサンであり、具体的には上記式[2]、[3]で表される化合物のようなベンゼンに対して不溶性または難溶性のアルミノキサンとは異なり、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解する。
【0053】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式[5]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0054】
【化4】

(上記式[5]中、Rcは炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す。)
なお、上記のような有機アルミニウムオキシ化合物(II-1)は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
架橋メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物(II-2)
シンジオタクチックポリプロピレン(A)の製造に用いる架橋メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物(II-2)(本明細書において「イオン性化合物」または「成分(II-2)」ともいう。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0056】
本発明において好ましく採用されるイオン性化合物は、下記一般式[6]で表される化合物である。
【0057】
【化5】

上記式[6]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf〜Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基である。
【0058】
上記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオン等の三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0059】
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0060】
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0061】
上記のうち、Re+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0062】
カルベニウム塩として具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
【0063】
アンモニウム塩としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0064】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0065】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0066】
その他、本出願人による特開2004-51676号公報に記載されているイオン性化合物も制限なく使用がである。
なお、上記のようなイオン性化合物(II-2)は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
有機アルミニウム化合物(II-3)
シンジオタクチックポリプロピレン(A)の製造に用いる有機アルミニウム化合物(II-3)(本明細書において「成分(II-3)」ともいう。)としては、例えば下記一般式[7]で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式[8]で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などを挙げることができる。
【0068】
RamAl(ORb)nHpXq ・・・・[7]
(上記式[7]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
【0069】
このような化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウム等のトリアリールアルミニウム;
ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
一般式(i-C49)xAly(C510)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)等で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
一般式Ra2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム
などを挙げることができる。
【0070】
M2AlRa4 ・・・[8]
(上記式[8]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
【0071】
このような化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などを例示することができる。
また、上記一般式[8]で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C25)2AlN(C25)Al(C25)2などを挙げることができる。
【0072】
有機アルミニウム化合物(II-3)としては、入手容易性の点から、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好んで用いられる。
なお、上記のような有機アルミニウム化合物(II-3)は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記成分(II-1)〜(II-3)は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0073】
担体(III)
必要に応じて用いられる担体(III)(本明細書において「成分(III)」ともいう。)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0074】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2またはこれらを含む複合物または混合物などが挙げられ、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、Si2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。
【0075】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩または酸化物成分を含有していてもよい。
【0076】
このような多孔質酸化物の性状は種類および製法により異なるが、上記担体は、粒径が好ましくは3〜300μm、より好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは20〜200μmであって、比表面積が好ましくは50〜1000m2/g、より好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、細孔容積が好ましくは0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて好ましくは100〜1000℃、より好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0077】
無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物はそのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕して用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させて用いることもできる。
【0078】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンは交換可能である。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物としては、天然産に限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0079】
また、粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などが挙げられる。
【0080】
このような粘土および粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0081】
このような粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上であることが好ましく、0.3〜5cc/gであることがより好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104Åの範囲について測定される。
【0082】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
粘土および粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。
【0083】
化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理などが使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0084】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換し、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解して得た重合物や、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。これらのうち、粘土および粘土鉱物が好ましく、モンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母がより好ましい。
【0086】
粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行ってから用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理を行ってから用いてもよい。さらに、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
イオン交換性層状珪酸塩を用いる場合は、担体としての機能に加えて、そのイオン交換性および層状構造を利用することにより、アルキルアルミノキサンのような有機アルミニウムオキシ化合物の使用量を減らすことも可能である。イオン交換性層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるが、特に天然産に限らず、人工合成物であってもよい。粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、カオリナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライト、テニオライト、合成雲母、合成ヘクトライト等を挙げることができる。
【0088】
有機化合物としては、粒径が好ましくは3〜300μm、より好ましくは10〜300μmの範囲にある顆粒状または微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数2〜14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、またはこれら重合体にアクリル酸、アクリル酸エステル、無水マレイン酸等の極性モノマーを共重合またはグラフト重合させて得られる極性官能基を有する重合体または変成体が挙げられる。
【0089】
これらの粒子状担体は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記シンジオタクチックポリプロピレン(A)の製造に用いられるオレフィン重合用触媒は、上記成分と共に、必要に応じて後述するような特定の有機化合物成分(IV)を含むこともできる。
【0090】
有機化合物成分(IV)
有機化合物成分(IV)(本明細書において「成分(IV)」ともいう。)は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられる。
有機化合物成分(IV)は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)の製造方法
重合の際には、上記成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が挙げられる。
【0092】
(1)成分(I)を単独で重合器に添加する方法。
(2)成分(I)および成分(II)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)成分(I)を担体(III)に担持した触媒成分、成分(II)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)成分(II)を担体(III)に担持した触媒成分、成分(I)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)成分(I)と成分(II)とを担体(III)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0093】
上記(2)〜(5)の方法においては、触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
成分(II)が担持されている上記(4)、(5)の方法においては、必要に応じて担持されていない成分(II)を、任意の順序で添加してもよい。この場合成分(II)は、同一でも異なっていてもよい。
【0094】
また、上記の成分(III)に成分(I)が担持された固体触媒成分、成分(III)に成分(I)および成分(II)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0095】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)は、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレンを単独重合することにより、またはプロピレンと炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から選ばれる1種以上のオレフィンとを共重合することにより得られる。
【0096】
重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができる。また、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0097】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて重合を行うに際して、成分(I)は、反応容積1リットル当り、通常10-9〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになるような量で用いられる。
【0098】
成分(II-1)は、成分(II-1)と、成分(I)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(II-1)/M〕が通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。成分(II-2)は、成分(II-2)と、成分(I)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(II-2)/M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。成分(II-3)は、成分(II-3)中のアルミニウム原子と、成分(I)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(II-3)/M〕が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。
【0099】
成分(IV)は、成分(II)が成分(II-1)の場合には、モル比〔(IV)/(II-1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(II)が成分(II-2)の場合は、モル比〔(IV)/(II-2)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(II)が成分(II-3)の場合には、モル比〔(IV)/(II-3)〕が通常0.01〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で用いられる。
【0100】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常-50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる二段以上に分けて行うことも可能である。得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する成分(II)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0101】
重合反応に供給されるオレフィンは、プロピレンのみであるか、またはプロピレンおよび炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から選ばれる1種以上のオレフィンである。炭素原子数4〜20のα-オレフィンとしては、炭素原子数が4〜20、好ましくは4〜10の直鎖状または分岐状のα-オレフィン、例えば1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0102】
本発明に用いられる樹脂(B)は、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる。
ロジン系樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、マレイン酸、フマル酸または(メタ)アクリル酸などで変性した変性ロジンが挙げられる。また、ロジン誘導体を用いてもよく、ロジン誘導体としては、上記天然ロジン、重合ロジンまたは変性ロジンのエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物などが挙げられる。
【0103】
また、テルペン系樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、テルペンフェノール、テルペンアルコール、テルペンアルデヒドからなる樹脂などが挙げられる。また、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテンなどにスチレンなどの芳香族モノマーを重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂なども挙げられる。
【0104】
また、石油樹脂としては、タールナフサのC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂およびそれらの共重合石油樹脂が挙げられる。すなわち、C5系石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分を重合した樹脂)、C9系石油樹脂(ナフサ分解油のC9留分を重合した樹脂)、C5C9共重合石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分とC9留分とを共重合した樹脂)が挙げられる。また、タールナフサ留分のスチレン類、インデン類、クマロン、その他ジシクロペンタジエンなどを含有しているクマロンインデン系樹脂、p−ターシャリブチルフェノールとアセチレンとの縮合物に代表されるアルキルフェノール類樹脂、ο−キシレン、p−キシレンまたはm−キシレンをホルマリンと反応させてなるキシレン系樹脂なども挙げられる。
【0105】
上述したロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂は、水素添加物であってもよい。この場合は、耐熱性、耐候性および耐変色性に優れるため好ましい。
樹脂(B)は、軟化点が通常60〜170℃、好ましくは90〜170℃である。
【0106】
軟化点の測定は次のようにして行われる。JIS K−2207に準拠し、環球法により実施する。規定の環に試料を充填し、水浴またはグリセリン浴中に水平に支え、試料の中央に規定の球を置き、浴温を5℃/minの速度で上昇させ、球を包み込んだ試料が、環台の底板に触れたときの温度を読み取る。
【0107】
また、樹脂(B)は、GPCにより測定される数平均分子量(Mn)が100〜10,000の範囲にあることが好ましい。
さらに、樹脂(B)は、示差走査熱量計(DSC)測定により得られるガラス転移温度が通常30〜100℃である。
【0108】
ガラス転移温度の測定は、次のようにして行われる。パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20ml/分)、約5mgの試料を200℃まで昇温、10分間保持した後、10℃/分で−80℃まで冷却する。−80℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時のDSC曲線からガラス転移温度を測定する。
【0109】
樹脂(B)は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂(B)としては市販品が好適に使用できる。
上記未延伸フィルムの作製に用いる樹脂組成物は、シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部、好ましくは70〜99質量部と、樹脂(B)1〜49質量部、好ましくは1〜30質量部とを含む。ここで、シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。なお、二種以上のシンジオタクチックポリプロピレン(A)を組み合わせて用いるときは、上記量は二種以上のシンジオタクチックポリプロピレン(A)の合計量である。また、二種以上の樹脂(B)を組み合わせて用いるときは、上記量は二種以上の樹脂(B)の合計量である。シンジオタクチックポリプロピレン(A)と樹脂(B)とを上記量で用いることは、内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造を有し、かつ銀色の金属光沢を有する延伸フィルムを作製する観点から好ましい。特に、シンジオタクチックポリプロピレン(A)を上記の量で用いると、得られた延伸フィルムの表面粗度および表面光沢度も好ましい範囲にすることができる。また、樹脂(B)を上記の量で用いると、得られた延伸フィルムの水蒸気バリア性も好ましい範囲にすることができる。具体的には、樹脂(B)を上記の量よりも多く用いると、水蒸気バリア性が劣る場合がある。
【0110】
なお、シンジオタクチックポリプロピレン(A)と樹脂(B)とを上記量で含む樹脂組成物を用いると、得られたフィルムにおいても、シンジオタクチックポリプロピレン(A)と樹脂(B)とは通常上記量で含まれている。
【0111】
また、樹脂組成物は、延伸フィルムにおける空孔の形成に寄与せず、また、銀色の金属光沢の他、後述する特性を損なわない範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。空孔内または空孔界面に、上記添加剤が検出される場合は、添加剤が空孔の形成に寄与すると考えられる。
【0112】
上記添加剤としては、公知の無機充填材、有機充填材、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、金属セッケン、ワックス等の滑剤、結晶核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤などが挙げられる。
【0113】
なお、本発明においては、シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)から、内部に多数の微細な空孔が存在する構造を有し、かつ銀色の金属光沢の他、後述する特性を有する延伸フィルムが得られるため、無機充填材および有機充填材は用いない方が好ましい。
【0114】
無機充填材としては、例えば球状充填剤、板状充填剤、繊維状充填剤、無機系難燃剤を挙げることができる。
球状充填剤としては、カオリン(珪酸アルミニウム)、シリカ、パーライト、シラスバルーン、セリサイト、珪藻土、亜硫酸カルシウム、焼成アルミナ、珪酸カルシウムなどが挙げられる。板状充填剤としては、タルク、マイカなどが挙げられる。繊維状充填剤としては、ウォラストナイト、マグネシウムオキシサルフェイト(商品名:モスハイジ、宇部興産社製)、チタン酸カリウム繊維、繊維状炭酸カルシウム、ガラス繊維などが挙げられる。無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水和石膏、硼酸亜鉛、硼酸バリウム、ホウ砂、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、ミョウバン、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0115】
無機充填材は用途に応じて適切な充填材を使用することができる。例えば、難燃性を付与させる場合は、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムが好適に用いられる。また、反射性能、光沢、多孔性を付与させる場合は、炭酸カルシウムが好適に用いられる。
【0116】
球状充填剤および板状充填剤の平均粒径は0.01〜100μmが好ましく、0.1〜80μmがより好ましい。この平均粒径が0.01μm未満ではフィルムの製造が困難となる場合があり、100μmを超えるとフィルムの耐衝撃性が低下する場合がある。繊維状充填剤の繊維長さは10μm〜10mmが好ましく、20μm〜3mmがより好ましい。この繊維長が10μm未満では補強効果の発現が小さくなり、10mmを超えるとフィルムの製造が困難になる場合がある。また、繊維状充填剤の直径は0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。また、無機系難燃剤の平均粒径は0.01〜80μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましい。平均粒径が80μmを超えると耐衝撃性や引張り伸びが低下するおそれがある。
【0117】
有機充填材としては、例えば木粉や木綿粉などの木質粒子、モミ殻粉末、架橋ゴム粉末、プラスチック粉末、コラーゲン粉末、レザー粉末、プロテイン粉末、シルク粉末などが挙げられる。有機充填材の粒度は10〜325メッシュが好ましく、10〜20メッシュがより好ましい。粒度が325メッシュを超えると耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0118】
無機充填材は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。有機充填材も、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填材を用いる場合には、シンジオタクチックポリプロピレン(A)100重量部に対して通常50〜200重量部、好ましくは100〜200重量部の量で用いることが望ましい。有機充填材を用いる場合には、シンジオタクチックポリプロピレン(A)100重量部に対して通常10〜100重量部、好ましくは30〜100重量部の量で用いることが望ましい。
【0119】
耐熱安定剤、老化防止剤および耐候安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系安定剤などが挙げられる。
結晶核剤としては、ポリオレフィン樹脂に一般的に使用されているタルク、マイカ、シリカ、アルミナム、ブロム化ビフェニルエーテル、アルミニウムヒドロキシジp-tert-ブチルベンゾエート(TBBA)、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、置換DBS、低級アルキルジベンジリデンソルビトール(PDTS)、有機リン酸塩、置換トリエチレングリコールテレフタレート、Terylene&Nylon繊維などが挙げられ、特に2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、PDTSが望ましい。結晶核剤は、結晶化時間や結晶化度を最適範囲内に調整できる場合がある。
【0120】
結晶核剤を用いる場合には、シンジオタクチックポリプロピレン(A)100重量部に対して通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部の量で用いることが望ましい。
【0121】
なお、無機充填剤、有機充填剤および結晶核剤以外の添加剤を用いる場合には、シンジオタクチックポリプロピレン(A)100重量部に対して通常0.01〜1重量部、好ましくは0.1〜1重量部の量で用いることが望ましい。
【0122】
樹脂組成物は、上述したシンジオタクチックポリプロピレン(A)、樹脂(B)および必要に応じて上記添加剤を上記の量で用い、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボブレンダー、タンブラブレンダー等で混合して得られる。あるいは、上記混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練し、次いで造粒または粉砕して得られる。
【0123】
〈未延伸フィルム〉
未延伸フィルムは、上記樹脂組成物から作製される。
未延伸フィルムは、膜厚が好ましくは10〜500μmである。未延伸フィルムの膜厚は後述する実施例に記載の方法で求められる。このような未延伸フィルムによれば、延伸によって、内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造をより容易に形成できる。すなわち、銀色の金属光沢の他、後述する特性を有する延伸フィルムをより容易に形成できる。
【0124】
未延伸フィルムは、例えば単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機などの押出機およびTダイ、コートハンガーダイなどのダイを用い、押出条件を適宜調整することによって、上記樹脂組成物から作製される。
【0125】
なお、上記樹脂組成物は、上述したように未延伸フィルムを作製する前に予め調製しておいてもよいが、上記樹脂組成物は、未延伸フィルムを作製する際に使用する押出機内で、シンジオタクチックポリプロピレン(A)、樹脂(B)および必要に応じて上記添加剤を混練して調製してもよい。
【0126】
〈延伸フィルム〉
延伸フィルムは、上記未延伸フィルムから作製される。
延伸フィルムは、シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部と(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含むフィルムである。なお、未延伸フィルムを作製するために用いる樹脂組成物において、シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量を上記範囲としておくと、未延伸フィルムおよび延伸フィルムにおけるシンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量も通常上記範囲となる。
【0127】
また、延伸フィルムは、上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上、すなわち80〜100%であり、好ましくは80〜99%であり、かつ上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%である。
【0128】
R3=R1−R2 (1)
上記全反射率R1および拡散反射率R2は後述する実施例に記載の方法で求められる。上記全反射率R1および重量分率φが上記特定の範囲にあることは、延伸フィルムが銀色の金属光沢を有することを意味する。このように、上記延伸フィルムは、美粧性および反射性能に優れる。
【0129】
また、延伸フィルムの表面粗度は好ましくは10nm以下、すなわち0〜10nmであり、より好ましくは0.1〜10nmである。延伸フィルムの表面光沢度は好ましくは25%以上、すなわち25〜100%であり、より好ましくは25〜99%である。表面粗度および表面光沢度は後述する実施例に記載の方法で求められる。表面粗度および表面光沢度が上記特定の範囲にあることは、美粧性、反射性能、光沢により優れることを意味する。
【0130】
上述したように、延伸フィルムにおいて全反射率R1、重量分率φ、表面粗度および表面光沢度が上記特定の範囲にあることは、特定の樹脂組成物からなる未延伸フィルムを延伸することによって形成される延伸フィルムの構造、すなわち内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造に起因すると考えられる(図1参照)。
【0131】
また、上記延伸フィルムは、延伸フィルムの膜厚と水蒸気透過速度との積が好ましくは300μm・g/(m2・day)以下、より好ましくは0.1〜300μm・g/(m2・day)である。延伸フィルムの膜厚および水蒸気透過速度は後述する実施例に記載の方法で求められる。延伸フィルムは、延伸フィルムの膜厚と水蒸気透過速度との積が上記範囲にあると、水蒸気バリア性に優れる。
【0132】
ところで、特許文献1では、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートまたはナイロンといった結晶性を有するポリマーを用いて、内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造を有する延伸フィルムが作製されている。アイソタクチックポリプロピレンから得られるフィルムは、白色光沢を有し、銀色の金属光沢を実現できない。さらに光沢の点で改善の余地がある。また、ポリブチレンテレフタレートまたはナイロンから得られるフィルムも、白色光沢を有し、銀色の金属光沢を実現できない。さらに水蒸気バリア性の点で改善の余地がある。
【0133】
これに対して、本発明では、シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)を特定の量で含む樹脂組成物を用いて、内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造を有するフィルムを作製している。このため、最終的に得られた延伸フィルムは、全反射率R1および重量分率φに関する上記要件を満たすとともに、表面粗度および表面光沢度に関する上記要件も通常満たす。さらに、延伸フィルムの膜厚と水蒸気透過速度との積に関する上記要件も通常満たす。すなわち、最終的に得られた延伸フィルムは、銀色の金属光沢を有し、美粧性に優れるとともに、水蒸気バリア性にも優れる。このように、本発明に係る延伸フィルムは、光沢、色といった美粧性と水蒸気バリア性とがバランス良く優れる。
【0134】
また、特許文献2では、プロピレン系ランダムブロック共重合体と無機充填材とを含むプロピレン系樹脂組成物を用いて、空孔を含有する延伸フィルムが作製されている。この延伸フィルムは、空孔を形成するために無機充填材を多く用いたことにより、表面平滑性、耐熱性、軽量化の点で改善の余地がある。
【0135】
これに対して、本発明に係る延伸フィルムは、シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)を特定の量で含む樹脂組成物を用いて、内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造を有するフィルムを作製している。このため、最終的に得られた延伸フィルムは、全反射率R1および重量分率φに関する上記要件を満たすとともに、表面粗度および表面光沢度に関する上記要件も通常満たす。すなわち、最終的に得られた延伸フィルムは、表面平滑性および反射性能に優れる。また、無機充填材を用いなくても内部に空孔が存在する構造を容易に実現でき、耐熱性にも優れ、軽量化も図られている。
【0136】
さらに、本発明に係る延伸フィルムは、シンジオタクチックポリプロピレン(A)と樹脂(B)とを組み合わせて用いたことにより、ブリードアウト性に優れる。これに対して、アイソタクチックポリプロピレンと樹脂(B)とを組み合わせて用いた場合は、ブリードアウト性に劣る。これについては、シンジオタクチックポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンよりも分子の絡み合いの度合いが大きいため、その絡み合いの中に樹脂(B)を保持できることによると考えられる。
【0137】
なお、本発明に係る延伸フィルムは、内部に空孔が存在する構造を有するため、断熱性、クッション性にも優れる。
また、上記延伸フィルムは、膜厚が通常5〜300μmである。
【0138】
上述のように、延伸フィルムは上記未延伸フィルムを延伸して作製される。未延伸フィルムを構成するシンジオタクチックポリプロピレンは結晶状態が一様ではないため、上記延伸により、結晶状態が異なる領域同士の界面で剥離が生じ、微細な空孔が多数形成されると考えられる。
【0139】
具体的な延伸方法は、上述のような内部に空孔が存在する構造および銀色の金属光沢を有する延伸フィルムが製造できる限り、テンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、一軸延伸法のいずれを用いてもよい。上記構造を形成する観点からは一軸延伸法が好ましい。また、一軸延伸の場合、一段で延伸しても二段以上の多段で延伸してもよい。上記構造を形成する観点からは一段で延伸することが好ましい。
【0140】
また、一軸延伸の場合、上記内部に空孔が存在する構造を実現する観点から、引取速度は通常10〜1000mm/minであることが好ましい。
本発明に係るフィルム(上記延伸フィルム)の製造方法は、上記未延伸フィルムを、示差走査熱量計(DSC)測定による上記樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)以上であって樹脂(B)の軟化温度(℃)以下の延伸温度で延伸して延伸フィルムを作製する工程を含むことが好ましい。具体的には、延伸温度は、未延伸フィルムの製造に実際に用いたシンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物についてガラス転移温度Tgを求め、また、未延伸フィルムの製造に実際に用いた樹脂(B)の軟化温度を求めておき、該ガラス転移温度Tg以上該軟化温度以下の温度から選ぶ。
【0141】
上記樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は後述する実施例に記載の方法によって求められる。シンジオタクチックポリプロピレン(A)のガラス転移温度は、上述のように通常−10〜0℃であり、樹脂(B)のガラス転移温度は、上述のように通常30〜100℃である。上記樹脂組成物のガラス転移温度は、シンジオタクチックポリプロピレン(A)のガラス転移温度と樹脂(B)のガラス転移温度との間に1つ観測され、通常−10〜100℃である。また、樹脂(B)の軟化温度は、上述のように通常60〜170℃である。ここで、同一の樹脂(B)において軟化温度はガラス転移温度よりも常に高いため、同一の樹脂(B)で比較すると樹脂(B)の軟化温度は上記樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも常に高くなる。
【0142】
上記延伸温度で延伸することにより、内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構造を有し、銀色の金属光沢を有する延伸フィルムがより容易に製造できる。
上記内部に空孔が存在する構造を実現する観点から、未延伸フィルムを2〜10倍に延伸することが好ましい。
なお、未延伸フィルムの作製と延伸フィルムの作製とは、独立して行っても連続して行ってもよい。
【0143】
〈用途〉
本発明に係るフィルム(上記のようにして得られた延伸フィルム)は上述した特性を有するため、単層のままでまたは後述する積層体として、食品、医薬品、電子部品、電子機器、農業資材、生活日用品、建築部材、化粧板、スポーツ用品装飾、自動車材、照明部材、コーティング用装飾部材など様々な分野に適用できる。具体的には、食品包装用フィルム、食品・医薬品・化粧品・日用品などの包装体、反射フィルム、遮光性包装フィルム、導光板、自動車用装飾フィルム、作物成長促進フィルム、雑草生育防止フィルム、光輝性装飾ラベル、ホログラム反射板等の防犯用部材などに好適に使用できる。
【0144】
食品としては、具体的にはあめ玉、粒ガム、ケーキ、クッキー等の菓子類、野菜、食肉等の生鮮食品、ハム、チーズ、練り物等の加工食品、ヨーグルト等の発酵乳製品、ゼリー等のデザート類、冷凍保存食品、レトルト食品、カップ麺などが挙げられる。
【0145】
これらのうちで、本発明に係るフィルムは、銀色の金属光沢を有し、水蒸気バリア性に優れるため、食品包装用フィルム、食品、医薬品などの包装体に特に好適に用いられる。すなわち、本発明に係る食品包装体は、上記フィルム(具体的には延伸フィルム)から得られる。
【0146】
ところで、食品包装用フィルム、食品、医薬品などの包装体においては、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)はブリードアウトをおそれて通常使用されていない。これに対して、本発明に係るフィルムでは、樹脂(B)をシンジオタクチックポリプロピレン(A)と組み合わせたため、ブリードアウト性が抑えられている。したがって、本発明に係るフィルムは、樹脂(B)を含んでいても、食品包装用フィルム、食品、医薬品などの包装体に好適に用いられる。
【0147】
また、本発明に係るフィルムは、銀色の金属光沢を有し、反射性能に優れるため、反射フィルムにも特に好適に用いられる。すなわち、本発明に係る反射フィルムは、上記フィルム(具体的には延伸フィルム)から得られる。
【0148】
なお、本発明に係るフィルムは、金属層を積層しなくても、優れた銀色の金属光沢、反射性能および水蒸気バリア性を発揮できる。すなわち、食品包装用フィルム、食品、医薬品などの包装体、反射フィルムなどとしての機能を十分発揮できる。したがって、このように金属層を積層していない食品包装用フィルムなどは、リサイクル性、生産性の点で好ましい。また、このように金属層を積層していない場合は、電子レンジでの処理、X線による異物検出のための検査を行う観点からも好ましい。
【0149】
〈積層体〉
本発明に係る積層体は、上述したフィルム(上記のようにして得られた延伸フィルム)を含む。具体的には、例えば上記フィルムと、他のフィルムや金属層とを積層した積層体であり、二層または三層以上の積層体である。また、上記フィルムを二層または三層以上積層した積層体であってもよい。他のフィルムや金属層は、積層体に付与したい機能に応じて適宜選択すればよいが、上記フィルム以外のポリオレフィン系樹脂からなるフィルムや、アルミニウム等の金属蒸着層などが用いられる。
【0150】
本発明に係る積層体を食品包装用フィルム、食品、医薬品などの包装体に適用する場合は、ブリードアウト性やガスバリア性をさらに向上させるため、上記フィルムに積層する他のフィルムとしてPETフィルム、EVOHフィルム、環状オレフィン樹脂フィルムを用いることが好ましい。なお、これら他のフィルムは、極性基を導入したポリオレフィンからなる接着剤層を介して上記フィルムと積層してもよい。また、アルミニウム蒸着層を用いてもよい。この場合、アルミニウム蒸着層は、上記フィルム上に直接形成してもよい。また、予め樹脂フィルム上にアルミニウム蒸着層を形成したフィルムを作製し、樹脂フィルムと上記フィルムとを例えば接着剤により接着して積層してもよい。
【0151】
本発明に係る積層体を反射フィルムに適用する場合は、さらに反射性能を向上させるため、上記フィルムの裏面側(すなわち、反射使用面とは反対側)に、金属層を形成してもよい。金属層を形成する金属としては、反射率が高い材料であれば特に制限されないが、銀、アルミニウムが挙げられ、銀がより好ましい。この場合、金属層は、上記フィルム上に直接蒸着して形成してもよい。また、予め樹脂フィルム上に金属層を形成したフィルムを作製し、樹脂フィルムと上記フィルムとを例えば接着剤により接着して積層してもよい。
【0152】
なお、本発明に係るフィルムにおいては、上述したように、上記金属層を積層しなくても、充分な金属光沢、水蒸気バリア性、反射性能を発揮できる。すなわち、食品包装用フィルム、食品、医薬品などの包装体、反射フィルムなどとしての機能を十分発揮できる。したがって、リサイクル性、生産性の点からは、金属層を積層しないことが好ましい。また、電子レンジでの処理、X線による異物検出のための検査を行う観点からも、金属層を積層しないことが好ましい。
【0153】
〈その他のフィルム〉
上述した延伸フィルムを作製する際に用いる樹脂組成物に、さらに顔料を添加すると、銀色以外の金属光沢を有するフィルムが得られる。例えば、黄色顔料、赤色顔料の添加により、それぞれ金色、銅色の金属光沢を有するフィルムが得られる。
【0154】
樹脂組成物において、上記顔料は内部に空孔が存在し、表面には空孔が存在しない構成が得られる範囲で用いればよいが、シンジオタクチックポリプロピレン(A)100重量部に対して通常0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部の量で用いることが望ましい。
【0155】
本発明の実施の態様は以下の[1]〜[8]に関する。
[1]シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部と(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含むフィルムであって、上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上であり、かつ上記フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%であるフィルム。
R3=R1−R2 (1)
上記[1]のフィルムは、銀色の金属光沢を有する。
【0156】
[2]上記フィルムの表面粗度が10nm以下であり、表面光沢度が25%以上である上記[1]に記載のフィルム。
上記[2]のフィルムは、光沢により優れる。
【0157】
[3]上記フィルムの膜厚と水蒸気透過速度との積が300μm・g/(m2・day)以下である上記[1]に記載のフィルム。
上記[3]のフィルムは、水蒸気バリア性に優れる。
【0158】
[4]上記フィルムが、シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含む樹脂組成物からなる未延伸フィルムを、示差走査熱量計(DSC)測定による上記樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)以上であって樹脂(B)の軟化温度(℃)以下の延伸温度で延伸して作製される上記[1]〜[3]に記載のフィルム。
【0159】
上記[4]のフィルムは、銀色の金属光沢を有するとともに、水蒸気バリア性に優れる。
[5]上記[1]〜[4]に記載のフィルムを含む積層体。
【0160】
[6]上記[1]〜[4]に記載のフィルムから得られる食品包装体。
[7]上記[1]〜[4]に記載のフィルムから得られる反射フィルム。
上記[1]〜[4]のフィルムは上記特性を有するため、上記[5]〜[7]のように種々の分野に適用できる。
【0161】
[8]シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部とを含む樹脂組成物から未延伸フィルムを作製し(ここで、シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)、上記未延伸フィルムを、示差走査熱量計(DSC)測定による上記樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)以上であって樹脂(B)の軟化温度(℃)以下の延伸温度で延伸して延伸フィルムを作製する工程を含み、上記延伸フィルムは、上記延伸フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上であり、かつ上記延伸フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%であるフィルムの製造方法。
【0162】
上記[8]のように特定の温度で延伸することにより、銀色の金属光沢を有するとともに、表面粗度、表面光沢および水蒸気バリア性に優れるフィルムが得られる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。
【0163】
[実施例]
≪成分(A)≫
実施例、比較例に用いたシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)は以下のようにして製造した。
【0164】
〔合成例1〕架橋メタロセン化合物(I)
ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドは、特開2004-189666号公報の合成例3に記載された方法で製造した。すなわち、以下の方法で製造した。
【0165】
(i)ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)メタン[別名:2−シクロペンタジエニル−2−[9−(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)]−1,3−ジフェニルプロパン]の合成
100mlギルダールフラスコ内に3,6−ジtert−ブチルフルオレン1.06g(3.81mmol)と脱水THF40mlを入れ窒素雰囲気にし、氷水浴で冷やしながらn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.57M)2.69ml(4.22mmol)を滴下ロートで滴下した。滴下後室温に戻し終夜攪拌した。再び、氷水浴で冷やして冷却し、6,6−ジベンジルフルベン1.09g(4.22mmol)を脱水THF30mlに溶解させた溶液を滴下ロートで滴下し、滴下後室温に戻し、終夜攪拌した。1N塩酸水溶液50ml、エーテル50mlを添加し、分液ロートにて有機相を分取した。有機相を飽和食塩水50mlで1回、水50mlで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン/トルエン=10/1)を用いて精製を行い、目的物を薄黄色の固体として得た。収量は1.15g、収率56%であった。1H NMRスペクトルの測定値を下に示す。
1H NMR (270 MHz, CDCL3) δ/ppm 6.9−7.5(mx10, CH(Flu, Ph)), 5.9−6.8(mx5,CH(Cp)),4.5(sx2,CH(Flu)),3.2(sx2,CH2(Et)),3.0(s,CH2(Cp)),2.8(s,CH2(Cp)),1.4(s, tBu)
【0166】
(ii)ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドの合成[別名:1,3−ジフェニルイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド]の合成
100mlギルダールフラスコ内にジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)メタン0.60g(1.12mmol)を入れ窒素雰囲気にし、脱水エーテル70mlを加え、氷水浴で冷やしながらn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.57M)1.46ml(2.29mmol)を滴下ロートで滴下した。滴下後室温に戻し終夜攪拌し、この溶液をメタノール/ドライアイス浴で約−78℃に冷却しながらジルコニウムテトラクロライドテトラヒドロフラン錯体(1:2)0.40g(1.07mmol)を加え、一晩かけてゆっくり室温にもどした。溶媒を乾固し、脱水ヘキサンを加え、ヘキサン可溶成分を取り除いた。次に脱水ジクロロメタンにて抽出した。溶媒を留去した後、脱水エーテル、引き続き脱水ヘキサンで洗浄を行い、目的物を赤色固体として得た。収量は0.41g、収率53%であった。1H NMRスペクトルおよびFD−MSスペクトルの測定値を下に示す。
1H NMR (270 MHz, CDCL3) δ/ppm 8.1(d, 1.6Hz, CH(Flu)),7.7(sx2,CH(Flu)),7.4(dx2,1.9Hz, CH(Flu)), 7.0−7.2(m>6, CH(Ph)), 6.4(t, 2.7 Hz,CH(Cp)),5.9(t, 2.7 Hz, CH(Cp)), 4.0−4.2(sx4, CH2(Et)), 1.4(s, tBu)
FD−MS:m/z= 696(M+
なお、上記化合物については、270MHz 1H−NMR(日本電子GSH−270)、FD−質量分析(日本電子SX−102A)を用いて決定した。
【0167】
〔重合例1〕シンジオタクチックポリプロピレン(A−1)
充分に窒素置換した内容量500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、プロピレンを150L/時間の量で流通させ、25℃で20分間保持させておいた。一方、充分に窒素置換した内容量30mlの枝付きフラスコにマグネティックスターラーを入れ、これにメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al=1.53mol/l)を5.00mmol、次いでジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液5.0μmolを加え、20分間攪拌した。この溶液を、プロピレンを流通させておいたガラス製オートクレーブのトルエンに加え、重合を開始した。プロピレンガスを150リットル/時間の量で連続的に供給し、常圧下、25℃で45分間重合を行った後、少量のメタノールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、ポリマー2.38gが得られた。重合活性は0.63kg-PP/mmol-Zr・hrであり、得られたポリマーの[η]は1.9dl/g、Tm1=152℃、Tm2=158℃であり、rrrr=94%であり、Mw/Mn=2.0であった。この操作を繰り返して、必要量のポリマーを得て実施例に使用した。
【0168】
得られたシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)の物性を表1に示す。
【0169】
【表1】

表1における物性の測定方法は以下のとおりである。なお、モノマーとしてプロピレンのみを用いたため、C3組成は100mol%であり、C2組成は0mol%である。
【0170】
〈融点(Tm)、融解熱量(ΔH)〉
パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20ml/分)、約5mgの試料を200℃まで昇温、10分間保持した後、10℃/分で30℃まで冷却した。30℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点を、ピークの積算値から融解熱量を算出した。
【0171】
なお、実施例で用いるプロピレン系重合体において2本のピークが観測された場合、低温側ピークをTm1、高温側ピークをTm2とする。このTm2を本明細書で規定するTmとする。また、本明細書では、3本以上のピークが観測された場合は、最も高温側のピークをTmとする。
【0172】
〈n-デカン可溶部量〉
シンジオタクチックポリプロピレン(A)のサンプル5gにn-デカン200mlを加え、該ポリプロピレンを145℃で30分間加熱溶解した。得られた溶液を約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(n-デカン不溶部)をろ別した。ろ液を約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させた。析出物をアセトンからろ別し、その後乾燥した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n-デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n-デカン可溶部量(wt%)=[析出物重量/サンプル重量]×100
【0173】
〈立体規則性rrrr〉
立体規則性(rrrr)は13C−NMRスペクトル測定から算出した。
【0174】
〈MFR〉
シンジオタクチックポリプロピレン(A)のMFRは、JIS K-6721に準拠して、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。
【0175】
〈極限粘度[η]〉
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0176】
〈密度〉
密度測定は、ASTM D1505に準拠して測定した。
【0177】
〈ガラス転移温度Tg〉
パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20ml/分)、約5mgの試料を200℃まで昇温、10分間保持した後、10℃/分で−80℃まで冷却する。−80℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時のDSC曲線からガラス転移温度を測定した。
【0178】
〈分子量分布(Mw/Mn)〉
分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6−HTを2本およびTSKgel GNH6−HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500μLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0179】
また、比較例において、シンジオタクチックポリプロピレン(A)の代わりに下記成分を用いた。
アイソタクチックポリプロピレン(A−2);Aldorich社製、アイソタクチックポリプロピレン(MI=35g/10min))
ランダムポリプロピレン(A−3);プライムポリマー社製、F327(MI=7.0g/10min)
ポリブチレンテレフタレート(A−4);三菱エンジニアリングプラスチック(株)社製、ノバデュラン5505S(MI=27g/10min))
ナイロン(A−5);三菱ガス化学(株)社製、MXD6 S6007(MI=2.0g/10min))
【0180】
≪成分(B)≫
実施例、比較例において、樹脂(B)として下記樹脂を用いた。
テルペン樹脂(B−1);ヤスハラケミカル社製、クリアロンP125(軟化温度:125℃)
テルペン樹脂(B−2);ヤスハラケミカル社製、クリアロンP150(軟化温度:150℃)
【0181】
また、比較例において、樹脂(B)の代わりに下記成分を用いた。
PMMA(B−3);三菱レイヨン(株)社製、アクリペットMD001(MI=6.0g/10min)
硫酸バリウム(B−4);竹原化学工業社製、W-1(平均粒径:1.5μm)
なお、実施例においては、樹脂(B)としてテルペン樹脂を用いたが、石油樹脂、ロジン系樹脂を用いた場合も、テルペン樹脂と同様の結果が得られると考えられる。
【0182】
≪樹脂組成物≫
樹脂組成物は、後述するように成形機内で成分(A)および成分(B)が混合されて調製された。
【0183】
〈樹脂組成物のガラス転移温度Tg〉
パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20ml/分)、約5mgの試料を200℃まで昇温、10分間保持した後、10℃/分で−80℃まで冷却する。−80℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時のDSC曲線からガラス転移温度を測定した。
【0184】
[実施例1]
シンジオタクチックポリプロピレン(A−1)を90wt%、テルペン樹脂(B−1)を10wt%となるような量で用い、延伸装置付25mmφT−ダイフィルム成形機(サーモ・プラスティック工業(株)社製)により、200℃で溶融させた後T−ダイから押出し、未延伸フィルム(膜厚300μm)を得た(表2参照)。なお、未延伸フィルムの膜厚は、後述する延伸フィルムと同様に測定した。
【0185】
続いて、延伸装置により、延伸温度30℃、引取速度1m/minにて、ロールによる一軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。延伸倍率は6倍(ロール回転比)とした。
図1に上記延伸フィルムの断面のSEM像を示す。なお、SEMによる観察は、延伸方向に平行なフィルム断面について、倍率600倍で行った。これにより、上記延伸フィルムでは内部に微細な空孔が多数存在し、表面に空孔が存在していないことが確認できた。また、空孔は長尺状であり延伸方向に沿って配向していた。
その他の評価結果を表2に示す。
【0186】
[実施例2〜3]
表2のようにシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)およびテルペン樹脂(B−1)の混合比を変更した以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0187】
[実施例4〜5]
表2のように延伸温度を変更した以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0188】
[実施例6]
表2のように成分(B)としてテルペン樹脂(B−2)を用いた以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0189】
[比較例1]
表3のようにシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)のみを用いた以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムの作製を試みた。しかしながら、延伸時にフィルムが破断してしまい延伸フィルムは得られなかった。
【0190】
[比較例2]
表3のようにシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)およびテルペン樹脂(B−1)の混合比を変更した以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムの作製を試みた。しかしながら、延伸時にフィルムが破断してしまい延伸フィルムは得られなかった。
【0191】
[比較例3]
表3のように延伸温度を変更した以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。この延伸フィルムでは内部に空孔が形成されていなかった。
その他の評価結果を表3に示す。
【0192】
[比較例4]
表3のように成分(B)としてPMMA(B−3)を用いた以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0193】
[比較例5]
表3のようにシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)の代わりにアイソタクチックポリプロピレン(A−2)を用い、また、延伸倍率を8倍(ロール回転比)に変更した以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0194】
[比較例6]
表3のようにシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)の代わりにランダムポリプロピレン(A−3)を用い、また、延伸倍率を10倍(ロール回転比)に変更した以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0195】
[比較例7]
表3のようにシンジオタクチックポリプロピレン(A−1)を30wt%、硫酸バリウム(B−4)を70wt%となるような量で用いた以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0196】
[比較例8]
表3のようにアイソタクチックポリプロピレン(A−2)のみを用い、また、延伸倍率を8倍(ロール回転比)に変更した以外は、実施例1と同じようにして延伸フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0197】
[比較例9]
ポリブチレンテレフタレート(A−3)のみを用い、延伸装置付25mmφT−ダイフィルム成形機(サーモ・プラスティック工業(株)社製)により、245℃で溶融させた後T−ダイから押出し、未延伸フィルム(膜厚120μm)を得た(表3参照)。なお、未延伸フィルムの膜厚は、後述する延伸フィルムと同様に測定した。
【0198】
続いて、延伸装置により、延伸温度30℃、引取速度1m/minにて、ロールによる一軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。延伸倍率は2倍(ロール回転比)とした。評価結果を表3に示す。
【0199】
[比較例10]
ナイロン(A−4)のみを用い、延伸装置付25mmφT−ダイフィルム成形機(サーモ・プラスティック工業(株)社製)により、260℃で溶融させた後T−ダイから押出し、未延伸フィルム(膜厚120μm)を得た(表3参照)。なお、未延伸フィルムの膜厚は、後述する延伸フィルムと同様に測定した。
【0200】
続いて、延伸装置により、延伸温度30℃、引取速度1m/minにて、ロールによる一軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。延伸倍率は3倍(ロール回転比)とした。評価結果を表3に示す。
【0201】
【表2】

【0202】
【表3】

表2〜3における物性の測定方法は以下のとおりである。
【0203】
〈延伸フィルムの膜厚(フィルムの総厚み(A))〉
マイクロメーターを用いて測定した。
【0204】
〈表面粗度〉
表面粗度測定は、WYKO社製非接触3次元微小表面形状観察システムNT-1100を用いて実施した。
フィルム寸法:0.9mm×0.12mmを測定範囲とし、測定モードPSIモードで表面粗度を求めた。
【0205】
〈反射率〉
φ150mmの積分球を装着した分光光度計((株)日立製作所製:U−3310)を用いて、JIS−Z8722条件d記載の方法に従って測定した波長550nmの全反射率をR1とした。φ150mmの積分球を装着した分光光度計((株)日立製作所製:U−3310)を用いて、JIS−Z8722条件d記載の方法に従い、光トラップを用いて正反射成分をカットして測定した波長550nmの反射率を拡散反射率R2とした。
【0206】
また、R1−R2を正反射率R3とした。さらに、重量分率φは、以下の式から求めた。
φ=R3/R1×100
【0207】
〈表面光沢度〉
表面光沢度測定は、ASTM D 523(入射角20°)に準拠して測定した。
【0208】
〈水蒸気透過速度(B)〉
水蒸気透過速度測定は、JIS Z0208のカップ法に準じて行った。温度40℃、相対湿度90%の雰囲気から、透湿面積25cm2以上のサンプルを通して30分間で透過する水蒸気の質量を測定し、24時間、サンプル1m2当たりに換算して求めた。なお、水蒸気透過側の雰囲気は吸湿剤で乾燥状態にした。
また、フィルムの総厚み(A)および水蒸気透過速度(B)から(A)×(B)値を求めた。
【0209】
〈フィルム色〉
延伸フィルムの色は、目視確認で実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部と(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含むフィルムであって、
前記フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上であり、かつ
前記フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%であるフィルム。
R3=R1−R2 (1)
【請求項2】
前記フィルムの表面粗度が10nm以下であり、表面光沢度が25%以上である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの膜厚と水蒸気透過速度との積が300μm・g/(m2・day)以下である請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フィルムが、シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部と(シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)を含む樹脂組成物からなる未延伸フィルムを、示差走査熱量計(DSC)測定による前記樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)以上であって樹脂(B)の軟化温度(℃)以下の延伸温度で延伸して作製される請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムを含む積層体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムから得られる食品包装体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムから得られる反射フィルム。
【請求項8】
シンジオタクチックポリプロピレン(A)51〜99質量部と、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂およびそれらの水素添加物から選ばれる樹脂(B)1〜49質量部とを含む樹脂組成物から未延伸フィルムを作製し(ここで、シンジオタクチックポリプロピレン(A)および樹脂(B)の量の合計を100質量部とする。)、
前記未延伸フィルムを、示差走査熱量計(DSC)測定による前記樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)以上であって樹脂(B)の軟化温度(℃)以下の延伸温度で延伸して延伸フィルムを作製する工程を含み、
前記延伸フィルムは、前記延伸フィルムの表面にて測定される全反射率R1が80%以上であり、かつ
前記延伸フィルムの表面にて測定される全反射率R1及び拡散反射率R2から下記の式(1)により求められる正反射率R3と、全反射率R1との重量分率φ(φ=R3/R1×100)が5〜20%であるフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−102367(P2011−102367A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258123(P2009−258123)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】