説明

銅・アルミニウム接合方法および装置

【課題】銅素材とアルミニウム素材との接触点を直接的にかつ短時間に所定温度(共晶温度〜+50℃)の範囲にまで加熱することができ、また、接触面の融液相を電極の変位可能性によって管理することができ、確実に精度よく銅素材とアルミニウム素材とを共晶反応を利用して拡散接合することができる銅・アルミニウム接合方法および装置を提供すること。
【解決手段】抵抗溶接用の2つの電極間に融点以下において共晶反応を生じる銅素材とアルミニウム素材とを相互の接合領域を接触させて一次加圧した状態において、前記両電極を通して前記両金属素材間に通電して前記接合領域における前記両金属の接触部を共晶温度以上融点未満の温度に加熱して共晶反応により当該接触部に融液相を形成させて前記両電極が変位可能となった時に通電を停止するとともに前記両金属素材を二次加圧して前記接触部から前記融液相を外部に排出させて前記両金属を前記接合領域において接合させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅素材とアルミニウム素材とを両金属の共晶反応を利用して接合する銅・アルミニウム接合方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から異種の金属を直接接合する方法として拡散接合法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この拡散接合法においては、融点以下で共晶反応を生じる少なくとも2種の金属、例えば、銅とアルミニウムを接触させ、高周波誘導加熱により該接触面を上記少なくとも2種の金属の共晶点以上融点未満で加熱して、接触面に融液相を形成し、その後金属を相互に押しつけて融液相を接触面の外部へ排出させて接触面を拡散接合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−133450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の拡散接合法には下記の通りの不都合がある。
【0006】
第1に、高周波誘導加熱によって金属の接触面を加熱するものであるために、接触面のみならず接触面の周囲の金属部分も同時に加熱されるので、接触面の温度制御を精度よく実行することに難点があった。具体的には、共晶温度〜+50℃の範囲に接触面のみの温度を制御することが困難であった。
【0007】
第2に、高周波誘導加熱を利用するために加熱および冷却する場合の所定温度までに温度変化させるために長時間を要するという欠点があった。
【0008】
第3に、金属の接触面を共晶温度〜+50℃の範囲に加熱する場合において、当該接触面部分の温度を正確に検出することが困難であった。例えば、赤外線を測定して温度を検出する放射温度計を用いる方法では、銅・アルミニウムの放射率が低い為、正確に温度検出することができなかった。また、加熱時間と温度の関係から加熱時間で温度をコントロールする方法があるが、温度コントロール精度が悪く、拡散接合を安定的に行うことに難点があった。
【0009】
第4に、高周波加熱では高周波加熱コイル内に被接合物体を位置させる必要がある為、形状・大きさの制限を受けることおよび量産における被接合物体の搬送に難点があった。
【0010】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、抵抗溶接方式を利用して金属の接触部を加熱することにより、従来法の問題点を解消し、銅素材とアルミニウム素材とを接合する方法および装置を提供することを目的とする。具体的には、本発明は接触点を直接的にかつ短時間に所定温度(共晶温度〜+50℃)の範囲にまで加熱することができ、且つ接合部の温度を測定することなく、所定温度になり共晶反応(反応融液生成)が起きたかどうかについては接触面の融液相を電極の変位可能性によって管理することができ、これにより確実に精度よく銅素材とアルミニウム素材とを共晶反応を利用して拡散接合することができる銅・アルミニウム接合方法および装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は銅素材とアルミニウム素材との接合位置を電極間へ容易に搬送させることができ、電源制御も容易な銅・アルミニウム接合方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究し、抵抗溶接方式を利用して銅素材とアルミニウム素材とを2つの電極間に挟持して一次加圧しながら通電して両金属素材の接触部を加熱し、両金属素材の共晶温度以上融点未満の範囲に昇温させて二次加圧するタイミングを求めた。ところが、両金属素材の接触部の実際の温度を熱伝対や放射温度計を用いて正確に測定することは困難であることが判明した。そこで、両金属素材の接触部が共晶反応を起こして融液相が発生すると加圧している電極が変位可能となるタイミングが生じ、このタイミングで通電を停止するとともに両金属素材を二次加圧すると、前記融液相が両金属素材の接触部から外部に排出され、両金属素材が良好に拡散接合されることを発見して本発明を完成させた。
【0013】
このようにして得られた本発明の第1の態様の銅・アルミニウム接合方法は、抵抗溶接用の2つの電極間に融点以下において共晶反応を生じる銅素材とアルミニウム素材とを相互の接合領域を接触させて一次加圧した状態において、前記両電極を通して前記両金属素材間に通電して前記接合領域における前記両金属の接触部を共晶温度以上融点未満の温度に加熱して共晶反応により当該接触部に融液相を形成させて前記両電極が変位可能となった時に通電を停止するとともに前記両金属素材を二次加圧して前記接触部から前記融液相を外部に排出させて前記両金属を前記接合領域において接合させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第2の態様の銅・アルミニウム接合方法は、前記接触部から前記融液相を外部に排出させて前記両金属を前記接合領域において接合させた後に当該接合領域を冷却することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第3の態様の銅・アルミニウム接合方法は、前記二次加圧の加圧力が、前記一時加圧の加圧力と同一若しくは高く設定されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第4の態様の銅・アルミニウム接合方法は、前記銅素材は純銅または銅合金からなり、前記アルミニウム素材は純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第5の態様の銅・アルミニウム接合方法は、前記両金属の前記接合領域の少なくとも一方に両金属の共晶温度以下の融点を有するメッキ層が形成されている場合には、前記共晶温度以下において溶融された前記メッキ層を前記一次加圧の加圧力により前記接触部から外部に排出させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第6の態様の銅・アルミニウム接合方法は、前記電極はタングステン製であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第1の態様の銅・アルミニウム接合装置は、銅素材とアルミニウム素材とを挟持自在であるとともに加圧自在な抵抗溶接用の2つの電極と、前記両電極を通して前記両電極間に相互の接合領域を接触させて一次加圧された状態に挟持された前記両金属素材間に通電して前記両金属の接触部を共晶温度以上融点未満の温度に加熱させる電源と、前記両金属素材が共晶反応により前記接触部に融液相が形成されて前記両電極が変位可能となることを検出する変位検出手段と、前記変位検出手段が前記両電極の変位可能状態を検出した際に前記両電極への通電を停止するとともに更に二次加圧させて前記接触部から前記融液相を外部に排出させて前記両金属を前記接合領域において接合させる動作制御手段とを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第2の態様の銅・アルミニウム接合装置は、前記両金属の前記接合領域を冷却する冷却手段を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第3の態様の銅・アルミニウム接合装置は、前記二次加圧の加圧力は、前記一時加圧の加圧力と同一若しくは高く設定されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第4の態様の銅・アルミニウム接合装置は、前記銅素材は純銅または銅合金からなり、前記アルミニウム素材は純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第5の態様の銅・アルミニウム接合装置は、前記両金属の前記接合領域の少なくとも一方に両金属の共晶温度以下の融点を有するメッキ層が形成されている場合には、前記共晶温度以下において溶融された前記メッキ層を前記一次加圧の加圧力により前記接触部から外部に排出させるように動作されることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第6の態様の銅・アルミニウム接合装置は、前記電極はタングステン製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明装置を本発明方法によって動作させることにより、抵抗溶接方式を利用して金属の接触部を加熱することにより、銅素材とアルミニウム素材との接触点を直接的にかつ短時間に所定温度(共晶温度〜+50℃)の範囲にまで加熱することができ、また、接合部の温度を測定することなく、所定温度になり共晶反応(反応融液生成)が起きたかどうかについては接触面の融液相を電極の変位可能性によって管理することができ、また、確実に精度よく銅素材とアルミニウム素材とを共晶反応を利用して拡散接合することができる。
【0026】
また、本発明によれば、銅素材とアルミニウム素材との接合位置を電極間へ容易に搬送させて拡散接合させることができ、接合処理時の電源制御も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の銅・アルミニウム接合装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明の銅・アルミニウム接合方法の工程を示すフローチャート
【図3】本発明の銅・アルミニウム接合方法における加圧力、通電電流、接合部温度の時間変化を示す特性図
【図4】A〜Eはそれぞれ本発明の銅・アルミニウム接合方法を行う場合の銅とアルミニウムの試験片の形状を示す正面図および平面図等の組合せ
【図5】図4Dの試験片の接合部分を示す拡大図
【図6】図5の試験片の接合部分の銅とアルミニウムとの状態図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図1から図6について説明する。
【0029】
図1は本発明の銅・アルミニウム接合装置の実施形態を示す。
【0030】
本実施形態の銅・アルミニウム接合装置1は、抵抗溶接方式の固定側の電極2と追従側の電極3とを有している。両電極2、3の間には2種の異なる金属であって共晶点を有する金属の例としての銅素材4とアルミニウム素材5とが挿入されて、接合される。銅素材としては、純銅や黄銅等の銅合金が含まれる。アルミニウム素材としては、純アルミニウムやAl−Mn(アルミ−マンガン)系合金、Al−Mg(アルミ−マグネシウム)系合金、Al−Sn(アルミ−錫)系合金等のアルミニウム合金が含まれる。特に、Al−Mn(アルミ−マンガン)系合金は銅素材との接合性に優れている。追従側の電極3は固定側の電極2に向けて図示しない公知の駆動機構によって移動自在とされて、両金属素材4、5を両電極2、3間に挟持し、所定の加圧力を付与できるように形成されている。両金属素材4、5は相互の接合領域における両金属の接触部を接触させて接合されるように配置される。本実施形態においては、両電極2、3は両金属素材4、5の加熱温度差を最小限に抑えるためにタングステン素材をもって形成されている。また、両電極2、3に対しては電源6が接続されていて、両金属4、5の接触部を共晶温度以上融点未満の温度に加熱させるための所定の電力を供給できるように形成されている。本実施形態においては、数KAの電流値で、直流から所定周波数の交流の通電若しくはパルス通電できるように形成されている。追従側の電極3には、電極3の加圧方向における変位量を検出する変位検出手段としての変位センサ7が添設されている。この変位検出手段としての変位センサ7は、両金属素材4、5が共晶反応により接触部に融液相が形成されて両電極2、3が変位可能となることを検出するように形成されている。また、本実施形態においては、両金属素材4、5の接合部に向けてアルゴン等の冷却媒体を噴射させて冷却する冷却手段8が設けられている。本実施形態においては構成各部を関連動作させるための動作制御手段9が設けられている。この動作制御手段9はCPUやメモリ等を備えており、変位検出手段7が両電極2、3の変位可能状態を検出した際に、両電極2、3への通電を停止するとともに更に二次加圧させて両金属素材4、5の接触部から融液相を外部に排出させて両金属4、5を接合領域において接合させるように追従側の電極3、電源6、変位検出手段7、冷却手段8等を関連動作させる。
【0031】
次に、本発明装置1を本発明方法によって作用させて両金属素材4、5を拡散接合させる工程を図2および図3により説明する。
【0032】
接合される両金属素材4、5は、図1に示すように、相互の接合領域として加圧方向に直角な平面を接触面として接触させられるように形成されている。
【0033】
このように形成されている両金属素材4、5の拡散接合を開始すると、ステップSTIにおいて、両電極2、3間に両金属素材4、5を設置するとともに追従側の電極3を固定側の電極2に向けて移動させて両金属素材4、5を挟持して一次加圧を行うとともに一次加圧を継続する(図3における実線の加圧力線aのt0時〜参照)。一次加圧力は0.1〜5kg/mmとされる。
【0034】
次に、ステップST2において、電源6を作動させて両電極2、3を通して両金属素材4、5に通電を開始するとともに通電を継続する(図3における電流線bのt2時〜参照)。通電が開始されると、抵抗溶接方式のために両金属素材4、5の接触部の温度が集中的に上昇する(図3の電流線bのt2時〜参照)。
【0035】
次に、ステップST3において、変位センサ7により追従側の電極3が変位可能か否かを判断し、判断が肯定(Y)となるまで継続する(図3における電流線bのt2〜t3時参照)。t2〜t3時の通電時間は1〜3秒程度である。この判断が肯定(Y)となる時には、両金属素材4、5の接触部の温度が銅とアルミニウムの共晶温度(約550℃)+50℃の範囲に上昇し、接触部において共晶反応が起こり、接触部に融液相が形成され始めて、追従側の電極3が一次加圧力によって更に固定側の電極2に向けて移動を始めることとなる。
【0036】
次に、追従側の電極3が一次加圧力によって更に固定側の電極2に向けて移動を始めたことを変位センサ7が検出してステップST3の判断が肯定(Y)となると、ステップST4に進んで、動作制御手段9が電源6による通電を停止させ(図3における電流線bのt3時参照)、電極3に一次加圧力よりも大きい加圧力を付与して二次加圧を開始させる(図3における加圧力線aのt4時〜参照)。これにより両金属素材4、5の接触部に存在する融液相が接触部から外部に強制的に排出され、当該接触部は融液相がほとんど存在しない状態となって両金属による拡散接合が形成される。この二次加圧力としては、図3のt4時〜に示す波線の加圧力線a1のように、一次加圧力と同一の加圧力であってもよく、接合する両金属4、5の特性に応じて一次加圧力と同一若しくはそれより高い値から選択するとよい。
【0037】
次に、二次加圧力が付与された図3におけるt5時以降に必要であればステップST5に示す冷却が施される。両金属素材4、5の接触部は抵抗溶接方式による加熱のために自然冷却によって早期に冷却するが、接触部に共晶反応による融液相がそのままの組成で冷却固化することを確実に防止するために冷却手段8よりアルゴン等の冷却媒体を接触部に噴射して強制冷却するとよい。
【0038】
次に、ステップST6において、接触部の温度が共晶反応によって融液相が形成されることがない温度まで低下したか否かを判断し、判断が肯定(Y)となるまで二次加圧を継続する(図3における加圧力線aのt5〜t6時参照)。
【0039】
次に、ステップST6の判断が肯定(Y)となると、ステップST7に進んで、二次加圧力を解放して追従側の電極3を引き戻して両電極2、3間より拡散接合された両金属素材4、5を取り出して接合処理を終了する。その後、両金属素材4、5の接触部の温度が常温まで低下される(図3の温度曲線c参照)。
【0040】
また、両金属素材4、5の接合領域の少なくとも一方に両金属素材4、5の共晶温度(例えば、銅とアルミニウムの共晶温度は約550℃)以下の融点を有するメッキ層(例えば、錫メッキ(融点が約232℃)や亜鉛メッキ(融点が約420℃)等)が形成されている場合には、前記共晶温度以下において溶融されたメッキ層を一次加圧の加圧力により両金属素材4、5の接触部から外部へ排出させるとよい。その後、両金属素材4、5がさらに加熱されて接合部に融液相が形成されると前記ステップST3以降と同様にして両金属素材4、5の接合が実行される。
【0041】
このように本発明によれば、抵抗溶接方式を利用して金属の接触部を加熱することにより、銅素材4とアルミニウム素材5との接触点を直接的にかつ短時間に所定温度(共晶温度〜+50℃)の範囲にまで加熱することができ、また、接合部の温度を測定することなく、所定温度になり共晶反応(反応融液生成)が起きたかどうかについては接触面の融液相を電極3の変位可能性によって管理することができ、また、確実に精度よく銅素材4とアルミニウム素材5とを共晶反応を利用して拡散接合することができる。
【0042】
<実施例>
<銅素材とアルミニウム素材との接合部の等速温度上昇について>
抵抗溶接方式によって銅素材とアルミニウム素材とを加熱する場合において、両金属素材の接合部における各金属側の温度上昇速度を等速にする必要がある。温度上昇速度が等速であると、接触部において両金属が共晶反応を起こして両金属のそれぞれに融液相が発生して両金属の拡散接合ができる条件が満たされる。さもないと十分な強度の接合が実現されない。
【0043】
銅とアルミニウムとの熱伝導率および比熱、電気抵抗には差があるために、抵抗溶接方式において各金属側の温度上昇速度を等速にする困難性があるので、当該条件を満たす形状を実験によって求めた。
【0044】
具体的には図4のA〜Eに示す銅素材とアルミニウム素材とを前記実施形態に示す方法によって接合する試験を行った。
【0045】
Aは、直径10mmの丸棒状の純アルミニウムの軸方向に直角の平端面に、厚さ4mmの純銅板の鋭角端部を接合する場合を示す。
【0046】
Bは、直径5mmの丸棒の軸方向に直角の平端面を直径3mmにテーパ状に形成した両金属(純銅と純アルミニウム)の前記平端面同士を接合する場合を示す。
【0047】
Cは、直径5mmの丸棒状の純アルミニウムの軸方向に直角の平端面に、直径5mmの丸棒の端部を直径3mmの細径とするとともに頂角を90度のテーパ状とした純銅の尖端部を接合する場合を示す。
【0048】
Dは、平板状の純アルミニウム板の平面に形成した三角状溝に、平板状の純銅板の平面部に形成した三角状突部を接合する場合を示す。
【0049】
Eは、平板状の両金属(純銅と純アルミニウム)の端部を二分の一の厚さに形成した凹部の平面部を接合する場合を示す。
【0050】
その結果、DおよびEの形状の素材が各金属側の温度上昇速度を等速にすることができた。これらの形状の場合には接合強度の測定のために引張試験を行うと、接合部ではなく金属の母材部分に破壊が発生する程度に極めて高強度で接合されていることが判明した。特に、Eの場合においては、電流を2.5〜3.3KA、通電時間を1.4〜5.3秒、一次加圧力を100N、二次加圧力を250〜270N、変位センサ7によって測定する変位可能長さを0.1〜0.15mm、二次加圧による潰し量を0.5〜0.9mmとして複数の試験片について本発明方法によって拡散接合を施した。両金属の接合界面における反応層の厚さは1μm前後であった。これらの接合後の資料に対して引張試験を行ったところ、全部においてアルミニウム母材に破断が発生したので、確実に拡散接合が行われていることが判明した。
【0051】
A〜Cの形状の素材では各金属側の温度上昇速度を等速にすることができず、接合強度の測定のために引張試験を行うと、接合部における接合が破壊され十分な接合ができないことが判明した。
【0052】
<接合部の組成について>
図4のDに示す試験片の接合物について図5に示す測定点a〜cにおける接合界面を走査型オージェ電子分光分析装置により調べた。
【0053】
その結果、二次加圧によって押し出された部分の成分は、aではAl:75重量%(以下同じ)・Cu:25%、bではAl:96.5%・Cu:3.5%であり、接合界面部分の成分は、aではAl:54.5%・Cu:45.5%、bではAl:72.7%・Cu:27.3%、cではAl:72.3%・Cu:27.7%であった。その組成は、図6の状態図に5本の縦線によって示すアルミニウムの各成分%(54.5%、72.3%、72.7%、75%、96.5%)位置に相当する。
【0054】
上記の結果より、両金属の接合界面部分には溶融した組織が認められないので、純銅と純アルミニウムとによる拡散接合が形成されていることが判明した。
【0055】
なお、本発明は必要に応じて種々に変更可能であり、融点以下において共晶反応を生じる金属の組合せにも同様にして適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 銅・アルミニウム接合装置
2、3 電極
4 銅素材
5 アルミニウム素材
6 電源
7 変位センサ
8 冷却手段
9 動作制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗溶接用の2つの電極間に融点以下において共晶反応を生じる銅素材とアルミニウム素材とを相互の接合領域を接触させて一次加圧した状態において、前記両電極を通して前記両金属素材間に通電して前記接合領域における前記両金属の接触部を共晶温度以上融点未満の温度に加熱して共晶反応により当該接触部に融液相を形成させて前記両電極が変位可能となった時に通電を停止するとともに前記両金属素材を二次加圧して前記接触部から前記融液相を外部に排出させて前記両金属を前記接合領域において接合させることを特徴とする銅・アルミニウム接合方法。
【請求項2】
前記接触部から前記融液相を外部に排出させて前記両金属を前記接合領域において接合させた後に当該接合領域を冷却することを特徴とする請求項1に記載の銅・アルミニウム接合方法。
【請求項3】
前記二次加圧の加圧力は、前記一時加圧の加圧力と同一若しくは高く設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅・アルミニウム接合方法。
【請求項4】
前記銅素材は純銅または銅合金からなり、前記アルミニウム素材は純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の銅・アルミニウム接合方法。
【請求項5】
前記両金属の前記接合領域の少なくとも一方に両金属の共晶温度以下の融点を有するメッキ層が形成されている場合には、前記共晶温度以下において溶融された前記メッキ層を前記一次加圧の加圧力により前記接触部から外部に排出させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の銅・アルミニウム接合方法。
【請求項6】
前記電極はタングステン製であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の銅・アルミニウム接合方法。
【請求項7】
銅素材とアルミニウム素材とを挟持自在であるとともに加圧自在な抵抗溶接用の2つの電極と、
前記両電極を通して前記両電極間に相互の接合領域を接触させて一次加圧された状態に挟持された前記両金属素材間に通電して前記両金属の接触部を共晶温度以上融点未満の温度に加熱させる電源と、
前記両金属素材が共晶反応により前記接触部に融液相が形成されて前記両電極が変位可能となることを検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段が前記両電極の変位可能状態を検出した際に前記両電極への通電を停止するとともに更に二次加圧させて前記接触部から前記融液相を外部に排出させて前記両金属を前記接合領域において接合させる動作制御手段とを
有することを特徴とする銅・アルミニウム接合装置。
【請求項8】
前記両金属の前記接合領域を冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項7に記載の銅・アルミニウム接合装置。
【請求項9】
前記二次加圧の加圧力は、前記一時加圧の加圧力と同一若しくは高く設定されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の銅・アルミニウム接合装置。
【請求項10】
前記銅素材は純銅または銅合金からなり、前記アルミニウム素材は純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の銅・アルミニウム接合装置。
【請求項11】
前記両金属の前記接合領域の少なくとも一方に両金属の共晶温度以下の融点を有するメッキ層が形成されている場合には、前記共晶温度以下において溶融された前記メッキ層を前記一次加圧の加圧力により前記接触部から外部に排出させるように動作されることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の銅・アルミニウム接合装置。
【請求項12】
前記電極はタングステン製であることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の銅・アルミニウム接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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