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銅系摺動材料
説明

銅系摺動材料

【課題】 Biを含有したCu合金において、合金素地中に分散するBi相の粒の形状を制御することで、耐焼付性に優れた銅系摺動材料を提供する。
【解決手段】 Cu合金層はBiを5〜30質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅系摺動材料において、BiはCu合金層中にBi相の粒として分散し、Bi相は粒径が2〜50μmかつ円形度が0.1〜0.7を満たすものが、Cu合金層中の全Bi相のうち質量比で30%以上であることにより、Cu合金層内にBi相の粒が均一に分散した状態となるため、摺動材料の摩耗とともにCu合金層内部のBi相の粒が順次摺動面に露出する一方、溶融したBiの過度な流出が抑制されるため、良好な耐焼付性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐焼付性に優れた銅系摺動材料に係り、すべり軸受材料として良好な銅系摺動材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関用すべり軸受に使用される銅系摺動材料は、連続焼結法により製造されるのが一般的である。この連続焼結法とは、帯鋼上にCu合金粉末を連続的に散布し、焼結、圧延を連続的に施す製造方法である。また、すべり軸受用の銅系摺動材料には、近年の環境規制に対応するため、Pbフリー化が求められており、Pbの代替材料としてBiを含有した焼結Cu合金を使用するものが提案されている。ところで、連続焼結法では、帯鋼上にCu合金粉末を散布するが、図6(a)に示すようにCu合金粉末層には多くの隙間が存在している。その後、1次焼結工程にて昇温すると、図6(b)に示す様に、Biが270℃程度で溶融して液相となり、Cu合金粉末中から粉末同士の隙間に流れ出る。このとき、Cu合金粉末同士の焼結はまだ不十分であり、Cu合金同士が十分に接合していない。そのため、隙間に流れ出たBiが粉末表面を伝いながら拡がってしまい、図5に示すように、Cu合金層中のBi相の粒が網目状にネットワークを形成してしまう。Cu合金層中のBi相の粒が網目状にネットワークを形成した場合、Cu合金層の摺動面から深さ方向に繋がったBi相の粒が多くなるため、摺動環境下においてCu合金層内部のBiが溶融して摺動面へ流出して、Cu合金層内部のBiが著しく減少して、耐焼付性が低下する。そこで、Cu合金層内部のBi相の粒を微細化して、Cu合金層内部のBiが溶融して摺動面へ流出することを抑制し、耐焼付性の向上を図ろうとするものが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3421724号公報(段落0007〜0008)
【特許文献2】特開平4−28836号公報(第2頁右下欄、第4頁右下欄)
【特許文献3】特開平5−263166号公報(段落0010,0013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、Biを含有したCu合金に無機化合物を含有させることで、良好な耐焼付性を実現している。すなわち、Cu合金層中に無機化合物を含有していると、一次焼結での昇温工程において液相となったBi中に硬質粒子が混在し、Bi相の粒が網目状にネットワークを形成することが抑制されてBi相の粒が微細になり、また、Cu合金層中のBi相の粒に無機化合物が混在することで、無機化合物が溶融したBiが摺動面へ過度に流出することを抑制して、耐焼付性が向上する。
【0005】
しかし、近年はコストダウンを目的として非調質の軟らかい軸を使う傾向にあり、特許文献1に記載される発明のように無機化合物を含有したCu合金ではこのような軟らかい軸を摩耗させてしまうという欠点がある。軸が摩耗すると軸の表面形状が粗くなり、耐焼付性が低下する懸念がある。そのため、無機化合物は含有させない方が好ましい。
【0006】
このような無機化合物を含有せず、Bi相の粒を微細に分散させる方法が特許文献2,3に記載されている。特許文献2,3によれば、Biを含有したCu合金粉末をメカニカルアロイング法で作製し、このCu合金粉末を用いて比較的低温(400〜800℃、より好ましくは400〜700℃)で焼結を行うと、Bi相の粒が微細となり、相手軸との摺動時の熱により、Cu合金層中のBiが溶融してCu合金層の摺動面を覆うように流出することによって耐摩耗性が高い銅系摺動材料を得ることが可能な旨が記載されている。
【0007】
そこで、発明者らは、特許文献2,3の銅系摺動部材の性能を確認するため、メカニカルアロイング法で作製したBiを含有したCu合金粉末を、特許文献3の段落0012及び段落0013に記載の焼結条件で焼結を行ない、銅系摺動部材を作製し性能評価を行った。その結果、連続焼結法において800℃以下の温度で焼結を行うと、鋼裏金とCu合金層との接着が十分に得られないため、耐疲労性が低下してしまい、また、Cu合金層中のBiが溶融して摺動面を覆うほど流出すると耐焼付性が低下してしまうことが判明した。また、800℃を超える温度で焼結を行うと、鋼裏金との接着は良好であるが、特許文献3の段落0014に記載されているように、メカニカルアロイング粉末を使用したときのBi相の粒を微細にする効果が薄れてBi相の粒が網目状にネットワークを形成した組織となってしまうことが判明した。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、Biを含有したCu合金において、合金素地中に分散するBi相の粒の形状を制御することで、耐焼付性に優れた銅系摺動材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、鋼裏金層とCu合金層とからなる銅系摺動材料であって、Cu合金層はBiを5〜30質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅系摺動材料において、BiはCu合金層中にBi相の粒として分散し、Bi相の粒は粒径が2〜50μmかつ円形度が0.1〜0.7を満たすものが、Cu合金層中の全Bi相のうち質量比で30%以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の銅系摺動材料において、Bi相の粒は粒径の範囲が2〜30μmかつ円形度が0.1〜0.7を満たすものが、前記Cu合金層中の全Bi相のうち質量比で20%以上であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2記載の銅系摺動材料において、Cu合金層は、さらにSnを0.5〜15質量%含有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の銅系摺動材料において、Cu合金層は、さらにNi、Fe、Ag、In、Mn、Mgからなる群の中から少なくとも1種以上を総量で0.1〜20質量%含有することを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の銅系摺動材料において、Cu合金層は、さらにPを0.01〜0.5質量%含有することを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明においては、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の銅系摺動材料において、Cu合金層は、さらに平均粒径が0.5〜5μmの無機化合物を0.1〜10質量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明においては、Cu合金層中にBiを5〜30質量%含有させることで、良好な摺動特性を有する銅系摺動材料となる。Bi含有量が5質量%未満であると良好な耐焼付性が得られない。またBi含有量が30質量%を超えると、Cu合金層の強度が低下する。
【0016】
また、Cu合金層中のBi相の粒が良好な形状、すなわち、粒径2〜50μmかつ円形度が0.1〜0.7を有するものが、Cu合金層中の全Bi相のうち質量比で30%以上存在すると、良好な耐焼付性を有することを見出した。これは、以下のメカニズムによる。
【0017】
まず、Bi相の粒の粒径において、Bi相の粒の粒径が2〜50μmの範囲内である場合、Bi相の粒はCu合金層中でネットワークを形成せず独立した粒として存在するため、Cu合金層内にBi相の粒が均一に分散した状態となる。そのため、摺動環境下において、摺動材料の摩耗とともにCu合金層内部のBi相の粒が順次摺動面に露出するため、良好な耐焼付性を有する。ここで、粒径が2μm未満の場合、摺動初期において摺動面に露出しているBiが即座に溶融して流出してしまい、摺動面に露出するBi相が減少して耐焼付性が低下する。一方、粒径が50μmを超える場合、Bi相の粒は網目状にネットワークを形成した粗大な形状となるため、Cu合金層内部のBiが溶融して摺動面へ流出し、Cu合金層内部のBiが著しく減少する。その結果、摺動環境下において摺動材料が摩耗していっても、摺動面へBi相が露出しなくなり、耐焼付性が低下する。
【0018】
また、Bi相の粒の円形度とはどれだけBi相の粒の形状が円に近いかを表す指標のことであり、下記の(式1)により表される。
円形度 = (4×π×S ) / ( L )2・・・(式1)
π:円周率
S:Bi相の面積 (単位:μm2
L:Bi相の周囲長(単位:μm)
(式1)において、円形度の範囲は0を超え、1以下であり、円形度が1に近い程その形状は円に近くなり、円形度が1より小さくなればなるほど複雑な形状となる。例えば、図3に示す複雑な形状をした粒子(a)と、この粒子(a)と等しい面積の粒子(b)の円形度を算出する。ここで、粒子(a)と粒子(b)の面積は同じなので、上式における面積(S)は同じ値である。よって、粒子(a)と粒子(b)の円形度に影響を与えるのは上式の周囲長(L)である。図3より、粒子(a)と粒子(b)の周囲長を比べると、複雑形状の粒子(a)の方が円形状の粒子(b)よりも長いことが分かる。すなわち、上式の円形度において、粒子(a)の方が粒子(b)よりも分母の周囲長(L)が大きい値となるため、粒子(a)の円形度は粒子(b)よりも小さい値となる。これより、複雑な形状になればなるほど周囲長が大きくなるため円形度が小さくなることが分かる。また、粒子(b)(真円)については上式より円形度を求めると値は1となる。よって、円形度が1に近い程形状は円に近くなり、また、円形度が1より小さくなればなるほど複雑な形状を表すこととなる。
【0019】
そして、Bi相の粒の円形度が0.1〜0.7であると、溶融したBiの過度な流出が抑制されるため、耐焼付性が向上する。これは、以下の理由によるものと考えられる。摺動環境下では、軸と摺動面の接触により摺動面の温度が上昇する。このとき、低融点金属であるBiは溶融するが、Bi相の粒の円形度が0.1〜0.7の範囲にあると、Bi相は複雑な形状をしているため単位体積当たりのBi相とCuマトリクスとの接触面積が大きくなり、溶融したBiとCuマトリクスとの接触界面での流動抵抗が大きくなるので、溶融したBiの摺動面への過度な流出が抑制される。これに対し、Bi相の粒の円形度が0.7を超えるとき、すなわちBi相の粒の形状が円に近い場合、単位体積当たりのBi相の粒とCuマトリクスとの接触面積が小さいため、溶融したBiとCuマトリクスとの接触界面での流動抵抗が小さいため、溶融したBiが過度に摺動面へ流出してしまい、時間経過とともに摺動面に露出するBi相が減少して、軸と摺動面のCuマトリクスとが接触し易くなり耐焼付性が低下してしまう。また、円形度が0.1未満の場合、Bi相の粒は網目状にネットワークを形成した粗大な形状となるため、上述した通り、Cu合金層内部のBiが溶融して摺動面へ流出することで、Cu合金層内部のBiが著しく減少した状態となり、時間経過とともに摺動面に露出するBi相が減少して、耐焼付性が低下する。
【0020】
本発明では、アトマイズ法によって作製したBiを含有したCu合金粉末において、Cu合金粉末内のCu相に過飽和に固溶するBi量を少なく制御することによって、Bi相の粒の形状を上記範囲(粒径2〜50μmかつ円形度が0.1〜0.7)に制御できることを見出した。これは、以下の理由によるものと考えられる。Biを含有したCu合金では、溶解温度が高い程Cu相へのBiの固溶量は多い。そのため、アトマイズ工程で高温の溶湯状態から急冷凝固されると、Biの一部はCu相に過飽和に固溶した状態となる。このように、BiがCu相へ過飽和に固溶した状態は不安定であるため、焼結の昇温工程においてこの不安定状態の活性なBiは粉末表面へ析出し、析出したBiは液相となって粉末同士の隙間に流れ出る。その結果、図5に示すようにBi相の粒が網目状にネットワークを形成してしまう。よって、Bi相の粒が網目状にネットワークを形成することを抑制するためには、Cu相に過飽和に固溶したBiを少なくする必要がある。すなわち、急冷凝固がなされる温度を下げて溶湯時のCu相へのBiの固溶量を少なくすることが望ましい。よって、本発明では、アトマイズ時の溶湯温度を通常(1300〜1500℃)より低い1000〜1200℃の範囲に制御して、急冷開始温度を下げることでCu相へBiが過飽和に固溶する量を少なくした。このような粉末を用いると、図2(b)に示す様に焼結の昇温工程における粉末表面へのBiのしみ出し量が少なくなり、Bi相の粒が網目状にネットワークを形成することを抑制することができ、図1に示すようにBi相の粒が微細で、かつBi相の粒の輪郭が凹凸形状を有する複雑な形状(不定形)になる。そして、上記範囲(粒径2〜50μmかつ円形度が0.1〜0.7)の形状を満たすBi相の粒がCu合金層中の全Bi相のうち質量比で少なくとも30%以上存在すれば、残りのBi相の粒が上記範囲の形状を満たさなかったとしても、、常に摺動面に露出するBi相が存在するため、良好な耐焼付性を得ることが出来る。
【0021】
また、請求項2に係る発明のように、請求項1記載の銅系摺動材料から更に、Cu合金層中のBi相の粒のうち、粒径が2〜30μmかつ円形度が0.1〜0.7を有するものが、Cu合金相中の全Bi相のうち質量比で20%以上存在すると、さらに耐疲労性が向上することを見出した。
【0022】
また、請求項3に係る発明のように、Cu合金層を強化する為にSnを含有させても良い。0.5質量%未満では、この効果を得ることが出来ない。また、Cu合金層にSnを15質量%を超えて含有させると、Cuマトリクスが脆くなり耐疲労性が低下してしまう。
【0023】
また、請求項4に係る発明のように、Cu合金層を強化する為に、Ni、Fe、Ag、In、Mn、Mgからなる群の中から1種以上含有しても良い。含有量が0.1質量%未満では、Cu合金層の強化が不十分となる。総量で20質量%を超えると、Cu合金層が脆くなり耐疲労性が低下してしまう。
【0024】
また、請求項5に係る発明のように、Cu合金層を強化するためにPを含有しても良い。含有量が0.01質量%未満では、Cu合金層の強化が不十分となる。0.5質量%を超えると、Cu合金層が脆くなり耐疲労性が低下してしまう。
【0025】
更に、請求項6に係る発明のように、Cu合金層を強化する為に無機化合物を含有しても良い。無機化合物としては、炭化物、窒化物、珪化物、ホウ化物、リン化物があり、炭化物としてMoC、WC、TiC、TaC等が、窒化物としてAlN、Si等が、珪化物としてSiC、TaSi、WSi等が、ホウ化物としてMoB等が、リン化物としてFeP、FeP等が使用できる。含有量が1質量%未満では、Cu合金層の強化が不十分となる。10質量%を超えると、Cu合金層中に局部的に無機化合物が凝集して耐疲労性が低下してしまう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る銅系摺動材料のCu合金層の組織を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る銅系摺動材料のCu合金層の作製工程におけるBiのしみ出し量を説明するための図である。
【図3】円形度を説明するための図である。
【図4】試験結果の観察領域を説明するためのすべり軸受の概略図である。
【図5】従来の銅系摺動材料のCu合金層の組織を示す模式断面図である。
【図6】従来の銅系摺動材料のCu合金層の作製工程におけるBiのしみ出し量を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態として、Biを含有したCu合金を用いた実施例1〜10と比較例1〜6について、Bi相の粒の形状(粒径と円形度)及びBi相の質量比を測定するとともに、焼付試験と軸受疲労試験を行った。実施例1〜10及び比較例1〜6の組成を表1に示す。なお、軸受疲労試験については、実施例1〜10及び比較例1〜6のうち、実施例1,4,5と比較例1,4についてのみ行った。
【0028】
実施例1〜10では、表1に示す組成のCu合金のアトマイズ時の溶湯温度として、実施例1〜3及び6〜10が1100℃、実施例4が1200℃、実施例5が1000℃に制御し、Cu合金粉末中のBiがCu相へ過飽和に固溶する量を少なく制御した粉末を作製した。そして、実施例1〜9については、上記各アトマイズ法で作製したCu合金粉末を帯鋼上に散布し、焼結、圧延を繰り返して摺動材料を作製した。なお、焼結は実施例3,6は820、実施例1,4,5,9,は850℃、実施例2,7,8は900℃の温度で行った。この摺動材料を半円筒状に加工し、すべり軸受を作製した。一方、実施例10については、上記アトマイズ法で作製したCu合金粉末と無機化合物とを一般的な混合機を用いて混合し、その混合後の粉末を用いて実施例1〜9の作製方法と同じ手法で摺動材料を作製してすべり軸受を作製した。なお、実施例10の焼結は850℃の温度で行った。また、実施例10において使用した無機化合物として、平均粒径が2μmのMoCとした。
【0029】
【表1】

【0030】
一方、比較例1〜6において、比較例1,6では、アトマイズ時の溶湯温度範囲を1400℃に制御し、各実施例のものよりもCu合金粉末中のBiがCu相へ過飽和に固溶する量を多く制御した粉末を使用した。そして、比較例1においては、アトマイズ時の溶湯温度を1400℃に制御したCu合金粉末を用いて、実施例1〜9の作製方法と同じ手法にて表1の成分比率となるように摺動材料を作製してすべり軸受を作製し、比較例6においては、アトマイズ時の溶湯温度を1400℃に制御したCu合金粉末と無機化合物(本比較例6では平均粒径が2μmのMoCを使用)を一般的な混合機を用いて混合し、その混合後の粉末を用いて、実施例品1〜9の作製方法と同じ手法にて表1の成分比率となるように摺動材料を作製してすべり軸受を作製した。また、比較例2,3については、アトマイズ時の溶湯温度を1100℃に制御した粉末を用いて実施例品1〜9と同じ手法にて表1の成分比率となるように摺動材料を作製してすべり軸受を作製し、比較例4,5については、Cu合金粉末をメカニカルアロイング法にて、表1の合金成分比率となるように作製し、その作製した粉末を帯鋼上に散布し、焼結、圧延を繰返して摺動材料を作製し、この摺動材料を半円筒状に加工しすべり軸受を作製した。なお、焼結は比較例4は700℃、比較例3は820℃、比較例1,5,6は850℃、比較例2は900℃の温度で行った。
【0031】
次に、作製されたすべり軸受について、電子顕微鏡を用いて図4に示す観察視野における軸受円周方向断面の組成像を200倍で撮影し、Bi相の粒の平均粒径を測定した。具体的には、得られた組成像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image-Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて解析し、各Bi相の粒の面積を測定して、(式2)より円相当径を算出し、この円相当径をBi相の粒の粒径とした。ここで、Bi相の粒の円相当径とは、Bi相の粒を、Bi相の粒の面積と等しい円に置き換えた場合における、円の直径を意味しており、下記の(式2)に示すように定義される。
円相当径=√(4×S/π)・・・(式2)
π:円周率
S:Bi相の面積 (単位:μm
また、Bi相の粒の円形度は、得られた組成像を同解析ソフトを用いて解析し、前述した(式1)より算出して求めた。
【0032】
本発明におけるBi相の質量比として、質量比と相関関係にある面積率を代替的に用いている。ここで、面積率とは撮影した組成像の任意の視野中における、全Bi相の面積に対する上述した粒径、円形度の範囲を満たすBi相の粒の面積の比率のことである。すなわち、全Bi相の面積をA、上述した粒径、円形度の範囲を満たすBi相の粒の面積をBとした時の、B/Aのことである。Cu合金層中のBi相は三次元的に存在するため、軸受円周方向断面で観察されるBi相は、三次元的に存在するBi相の粒のある位置での切断面を見ているにすぎない。しかし、軸受円周方向断面で観察されるBi相の粒に対して十分広い視野において観察すれば、軸受円周方向断面で観察されるBi相の面積とCu合金層中のBi相の質量は相関関係を持つため、Bi相の質量比として面積率を代わりに用いることができる。このため、本発明では、得られた組成像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image−ProPlus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて解析し、測定視野中の全Bi相の面積と、上述した粒径、円形度の範囲を満たすBi相の粒の面積を測定し、これらの比率から面積率を算出し、この面積率を本発明におけるBi相の質量比として用いた。
【0033】
焼付試験の試験条件を表2に示す。この焼付試験は、軸受内面に荷重を負荷し、所定の試験時間で焼付かない最大面圧を耐焼付性として評価した。本試験では、調質をしていない鋼軸を用いて試験を行った。
【0034】
【表2】

【0035】
軸受疲労試験の試験条件を表3に示す。この軸受疲労試験は、軸受内面に動荷重を負荷し、所定の試験時間で疲労しない最大面圧を耐疲労性として評価した。本試験では、調質をしていない鋼軸を用いて試験を行った。
【0036】
【表3】

【0037】
まず、焼付試験結果について表1を参照しながら説明する。表1の最終列に示すように、本発明に係る実施例1〜10について何れも比較例1〜6と比べて良好な耐焼付性を有している。実施例1〜5において、Bi相の粒の形状が「粒径が2〜50μmかつ円形度が0.1〜0.7を満たすものが、Cu合金層中の全Bi相のうち質量比で30%以上」という範囲(以下、「適正範囲」という。)を満たすため、摺動中にCu合金層中のBiが溶融して摺動面へ過度に流出することが抑制され、実施例品1〜5の何れも比較例1〜6に対し良好な耐焼付性を有している。また、実施例6は、実施例1にSnを含有させているが、実施例1と同等の耐焼付性を有している。同様に、実施例7は、実施例1にCu合金層にNi、Fe、Agを含有させ、実施例8は、実施例品1にMn、Mgを含有させ、実施例9は、実施例1にPを含有させているが、それぞれ実施例1と同等の耐焼付性を有している。更に、実施例10は、実施例1に無機化合物を含有させているが、実施例1と同等の耐焼付性を有している。この実施例10は、焼結時にCu合金粉末表面へしみ出してくるBiの量が少ないため、無機化合物はCu合金層中のCuマトリックスおよびBi相内に均一に分散した状態となっている。そのため、無機化合物は銅系摺動材料の摺動面に均一に分散して露出する状態となり、摺動時に相手軸の摩耗が少なかった。このため、無機化合物を含有していても比較例6のように耐焼付性の低下は見られず、実施例1と同等の耐焼付性を有する結果となった。
【0038】
一方、比較例1は、アトマイズ時の溶湯温度が従来のアトマイズ粉と同等の1400℃と高いため、Bi相の粒が粗大で円形度が0.1未満のものの割合が多く、Bi相の粒の形状の適正範囲を満たさない。そのため、実施品1〜10と比べて耐焼付性が劣る。また、比較例2は、Bi含有量が少ないこと、また、Bi相の粒が微細で円形度が0.7を超えるものの割合が多く、Bi相の粒の形状の適正範囲を満たさないため実施例1〜10と比べて耐焼付性に劣る。同様に、比較例3は、Bi含有量が多いため、Bi相の粒は粗大で円形度が0.1未満のものの割合が多く、Bi相の粒の形状の適正範囲を満たさないため、実施例1〜10と比べて耐焼付性に劣り、比較例4は、メカニカルアロイング粉末を使用しているため、Bi相の粒は微細であるものの円形度が0.7を越えるものの割合が多く、Bi相の粒の形状の適正範囲を満たさないため、実施例1〜10と比べて耐焼付性に劣る。また、比較例5は、焼結温度が850℃と高いため、Cu合金粉末同士の焼結が進みすぎ、メカニカルアロイング粉末を使用したときのBi相の粒の微細化効果が薄れてBi相の粒が粗大で円形度が0.1未満のものの割合が多く、Bi相の粒の形状の適正範囲を満たさないため、実施例1〜10と比べて耐焼付性に劣る。更に、比較例6は、アトマイズ時の溶湯温度が1400℃と高いが、Cu合金層中に無機化合物を含有させることで、Biの粒が網目状にネットワークを形成することが抑制され、Bi相の粒の形状の適正範囲を満たしている。しかし、Cu合金層中の無機化合物による相手軸の摩耗により、実施例1〜10と比べて耐焼付性に劣る。比較例6では、アトマイズ時の溶湯温度が1400℃と高いため、焼結時にCu合金粉末表面へしみ出してくるBiの量が多く、粉末同士の隙間を流れる液相のBiと共に無機化合物が移動し、Bi相内に無機化合物が凝集した状態となる。そのため、摺動面で凝集した無機化合物と軸とが部分的に接触してしまい、実施例10と比べて相手軸を摩耗させやすく、相手軸の表面粗さが大きくなり、耐焼付性が低下したと考えられる。
【0039】
次に、軸受疲労試験結果について表4を参照しながら説明する。表4の最終列に示すように、実施例5の耐疲労性は、実施例1,4、比較例1,4と比較して良好な耐疲労性を有している。実施例5は、アトマイズ時の溶湯温度が1000℃と他の実施品1,4、比較例1と比べて低いため、Cu合金粉末中のCu相に過飽和に固溶するBiの量が少ない。そのため、焼結時の昇温工程においてCu合金粉末表面へしみ出してくるBiの量が少なく、Bi相の粒は微細となり、耐疲労性に優れる。
【0040】
【表4】

【0041】
また、比較例4は、メカニカルアロイング粉末を使用しているため、Bi相の粒は微細であるが、焼結温度が700℃と低いため、Cu合金層と鋼裏金層との接着が悪く、実施例1,4,5と比べて耐疲労性が著しく劣る。
【0042】
なお、本実施形態に係る銅系摺動材料は、内燃機関のすべり軸受材料に限定されず、各種産業機械のすべり軸受材料に適用できる。また、本実施形態に係る銅系摺動材料は、Cu合金層上にオーバレイ層を形成させた多層軸受としても使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼裏金層とCu合金層とからなる銅系摺動材料であって、前記Cu合金層はBiを5〜30質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅系摺動材料において、
Biは前記Cu合金層中にBi相の粒として分散し、前記Bi相は粒径が2〜50μmかつ円形度が0.1〜0.7を満たすものが、前記Cu合金層中の全Bi相のうち質量比で30%以上であることを特徴とする銅系摺動材料。
【請求項2】
前記Bi相は粒径の範囲が2〜30μmかつ円形度が0.1〜0.7を満たすものが、前記Cu合金層中の全Bi相のうち質量比で20%以上であることを特徴とする請求項1記載の銅系摺動材料。
【請求項3】
前記Cu合金層は、さらにSnを0.5〜15質量%含有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の銅系摺動材料。
【請求項4】
前記Cu合金層は、さらにNi、Fe、Ag、In、Mn、Mgからなる群の中から少なくとも1種以上を総量で0.1〜20質量%含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の銅系摺動材料。
【請求項5】
前記Cu合金層は、さらにPを0.01〜0.5質量%含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の銅系摺動材料。
【請求項6】
前記Cu合金層は、さらに平均粒径が0.5〜5μmの無機化合物を0.1〜10質量%含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の銅系摺動材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43997(P2013−43997A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180394(P2011−180394)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】