説明

銅系素材用置換ビスマスメッキ浴

【課題】 銅系素材上への置換ビスマスメッキに際して、白色の緻密なビスマス皮膜を形成する。
【解決手段】 可溶性ビスマス塩とベース酸を含有し、銅溶解剤に特定のチオアミノカルボン酸又はその塩(メチオニンなど)、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩(メルカプトコハク酸など)、スルフィド類(チオジグリコール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオールなど)、チオ尿素誘導体(1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素など)を選択した置換ビスマスメッキ浴である。上記特定の含イオウ化合物を銅溶解剤に使用するため、錯化した銅イオンとビスマスイオンの電極電位差をほど良く調整でき、白色で緻密なビスマス皮膜を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅系素材用の置換ビスマスメッキ浴に関して、銅系素材上に白色で緻密なビスマス皮膜を形成できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に特許文献1で、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、グルタミン酸、システインなどのアミノカルボン酸類と、チオ尿素類との混合物を錯化剤とする置換ビスマスメッキ浴を開示した(請求項1〜2、段落15参照)。
また、ビスマスを含む合金の無電解メッキ浴として、特許文献2で、アミン系化合物とチオ尿素類の混合物を使用した無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を開示した(請求項1〜2参照)。当該アミン系化合物としては、上記特許文献1と同様のアミノカルボン酸類を初め、エチレンジアミンなどのポリアミン類、ベンジルアミンなどのモノアミン類、ジエタノールアミンなどのアミノアルコール類を開示した(段落14参照)。
【0003】
一方、特許文献3又は4には、錯化剤にクエン酸塩、NTA、EDTAなどを使用した無電解ビスマスメッキ浴が開示され、特許文献5にも、同様に、EDTA、DTPA、HEDTA、ジカルボキシチメルグルタミン酸などのアミノカルボン酸類を使用したビスマスを金属イオンとして選択可能なメツキ液が開示されている(請求項9〜13参照)。また、特許文献6には、錯化剤としてイミダゾール−2−チオン化合物(1−メチル−3−プロピルイミダゾール−2−チオンなど:請求項7)を使用した、ビスマスを金属イオンとして選択可能な水性無電解メッキ液が開示されている(請求項1〜2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−105553号公報
【特許文献2】特開2000−87252号公報
【特許文献3】特開平5−214549号公報
【特許文献4】特開平7−258861号公報
【特許文献5】特開2002−180259号公報
【特許文献6】特開平9−176863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銅系素材上に置換ビスマスメッキを行う場合、従来使用されているチオ尿素類(上記特許文献1〜2参照)では、銅の電極電位を卑の方向に遷移させる作用が強く、錯体を形成した銅イオンとビスマスイオンの電極電位差が大きくなり過ぎるため、ビスマスの析出が過剰に促進されて、黒色の粗いメッキ皮膜になってしまう。
また、特許文献1〜5に開示されているEDTAなどのアミノカルボン酸類では銅の電極電位を卑に遷移させる作用が弱く、置換メッキが起こりにくい。
そこで、例えば、上記特許文献1の置換ビスマスメッキ浴では、チオ尿素類とアミノカルボン酸類を併用して、ビスマスの析出の円滑化を図っているが、緻密なビスマス皮膜の形成には不充分な点が残る。
本発明は、銅系素材上への置換ビスマスメッキに際して、白色の緻密なビスマス皮膜を形成することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、銅系素材に置換ビスマスメッキを行う場合、前述の通り、チオ尿素類が銅イオンへの強い錯化作用を有することに鑑みて、チオ尿素類が属する含窒素化合物又は含イオウ化合物を置換ビスマスメッキに適用した際に、メッキ皮膜への影響を鋭意研究した結果、特定の脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、或はピリジン環を有するチオ尿素誘導体よりなる含イオウ化合物を限定的に選択すると、錯体を形成した銅イオンとビスマスイオンの電極電位差をほど良く調整して、白色の緻密なメッキ皮膜が形成できることを見い出して、本発明を完成した。
【0007】
本発明1は、可溶性ビスマス塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸又はその塩とを含有する置換ビスマスメッキ浴において、
下記の銅溶解剤(a)〜(e)の少なくとも一種
(a)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
(b)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
(c)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
Ra−(A)j−S−(B)k−Rb …(1)
(式(1)中、j及びkは1〜100の整数である;A及びBは同一又は異なっても良く、夫々メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、又はこれらのC2〜C4のオキシアルキレンである;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々H(但し、AとBが共にメチレン、C2〜C4アルキレンの場合にはRaとRbのどちらか一方はHでない)、OH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基である;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(d)次の一般式(2)で表されるスルフィド類
Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(2)
(式(2)中、nは1〜3の整数である;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rcである;mは0又は1〜5の整数である;Rcはmが0の場合はピリジル基又はアミノフェニル基であり、mが1〜5の整数の場合はOH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基であり;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(e)次の一般式(3)で表されるチオ尿素誘導体
Rd−NH−C(=S)−NH−Re …(3)
(式(3)中、Rd及びReは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)p−Rfである;pは1〜5の整数である;Rfはピリジル基である)
を含有することを特徴とする銅系素材用置換ビスマスメッキ浴である。
【0008】
本発明2は、上記本発明1において、さらに、アミノカルボン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、ホスホノカルボン酸又はその塩、ポリアミン類、アミノアルコール類、オキシカルボン酸類又はその塩、ポリカルボン酸類又はその塩の少なくとも一種を含有することを特徴とする銅系素材用置換ビスマスメッキ浴である。
【0009】
本発明3は、上記本発明2において、アミノカルボン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸又はこれらの塩が、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノプロパントリカルボン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンよりなる群から選ばれた化合物又はこれらの塩の少なくとも一種であることを特徴とする銅系素材用置換ビスマスメッキ浴である。
【0010】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、さらに、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた界面活性剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする銅系素材用置換ビスマスメッキ浴である。
【0011】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかの置換メッキ浴を用いて、銅系素材上にビスマスメッキ皮膜を形成することを特徴とする置換ビスマスメッキ方法である。
【0012】
本発明6は、上記本発明1〜4のいずれかの置換メッキ浴を用いて、ビスマスメッキ皮膜を形成したプリント回路板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサー、フィルター、インダクター、サーミスター、水晶振動子、スイッチ、リード線などの電子部品である。
【発明の効果】
【0013】
銅系素材上に置換ビスマスメッキを行う場合、銅の電極電位はビスマスの電極電位とほぼ同等であるため、置換メッキ浴に銅に錯化する各種の銅溶解剤を含有して当該電極電極の調整を図っているが、前述したように、銅溶解剤がチオ尿素類では、錯化した銅イオンの電極電位を卑の方向に遷移する作用が強過ぎ、また、EDTAなどのアミノカルボン酸類ではその作用が弱いので、緻密なビスマス皮膜を形成させることは容易でない。
本発明では、銅溶解剤に特定のチオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体を限定的に選択することにより、錯化した銅イオンとビスマスイオンの電極電位差をほど良く調整できるため、ビスマスの析出を円滑化して、白色で緻密なビスマス皮膜を得ることができる。
従って、プリント基板、フィルムキャリアなどの電子部品の表面処理などに有効である。また、本発明の置換メッキ浴を用いてビスマス皮膜を形成し、これを下地皮膜として上層にスズメッキ皮膜を形成すると、スズ皮膜のホイスカーを良好に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、第一に、可溶性ビスマス塩と、ベース酸と、特定のチオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、ピリジン環を有するチオ尿素誘導体より選択された銅溶解剤とを含有する銅系素材用の置換ビスマスメッキ浴であり、第二に、このメッキ浴を用いて銅系素材上にビスマス皮膜を形成する置換ビスマスメッキ方法であり、第三に、このメッキ浴を用いてビスマス皮膜を形成した(銅系素材としての)各種電子部品である。
本発明では、銅系素材は銅又は銅合金を材質とする電子部品などの素材をいう。
【0015】
本発明の置換ビスマスメッキ浴は、上述の通り、基本的に有機酸浴、無機酸浴、或はその塩をベースとする浴である。
有機酸としては、排水処理が比較的容易なアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸などが好ましい。
無機酸としては、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等が挙げられる。
上記の酸(又は塩)は単用又は併用でき、その含有量は0.1〜300g/Lであり、好ましくは20〜120g/Lである。
【0016】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式CnH2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0017】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0018】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0019】
上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0020】
上記可溶性ビスマス塩は、浴中でBi3+を生成する可溶性の塩類であれば任意のものが使用でき、特段の制限はない。
可溶性ビスマス塩は、例えば、上記有機スルホン酸や無機酸の塩類などであり、具体的には、メタンスルホン酸ビスマス、エタンスルホン酸ビスマス、p−フェノールスルホン酸ビスマス、硝酸ビスマス、塩化ビスマスなどが挙げられる。
当該可溶性ビスマス塩の金属塩換算の含有量は、0.01〜200g/Lであり、好ましくは0.1〜80g/Lである。
【0021】
本発明の置換ビスマス浴は、特定のチオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体より選択した含イオウ化合物を銅溶解剤に使用することに特徴がある。
これらの含イオウ化合物は夫々を単用又は併用でき、或は、異種を複用(例えば、チオアミノカルボン酸とスルフィド類とを複用)できる。含イオウ化合物の添加量は浴中ビスマスイオンに対して0.1〜100倍モルであり、好ましくは1〜50倍モルである。0.1倍モルより少ないと銅の電極電位を卑にシフトしてビスマスイオンの電極電位との間に好適な電位差を生ぜしめ、効果的な置換メッキにより、所望する膜厚のメッキ皮膜を得るのに長時間を要する。一方、100倍モルを越えても当該効果にあまり差異はなく、コストの無駄である。
【0022】
上記脂肪族チオアミノカルボン酸は、メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選択でき、メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステインが好ましい。
上記脂肪族メルカプトカルボン酸は、メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選択でき、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、メルカプトコハク酸が好ましい。
【0023】
上記スルフィド類は一般式(1)又は一般式(2)で表される特定の化合物である。
一般式(1)で表されるスルフィド類としては、チオジグリコール、チオジグリコール酸、2,2′−チオビス(エチルアミン)、チオジプロピオン酸、チオジエタンスルホン酸、チオジプロパノール、3,3′−チオビス(プロピルアミン)、チオジ酪酸、チオジプロパンスルホン酸、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(トリエチレングリコール)チオエーテルなどが挙げられる。好ましい例は、チオジグリコール、チオジグリコール酸、2,2′−チオビス(エチルアミン)、チオジプロピオン酸、チオジエタンスルホン酸、チオジプロパノール、3,3′−チオビス(プロピルアミン)、チオジ酪酸、チオジプロパンスルホン酸、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(トリエチレングリコール)チオエーテルである。
例えば、一般式(1)において、A及びBがエチレンであり、その付加数であるj及びkが共に1であり、Ra及びRbがOHの場合には、HO−CH2CH2−S−CH2CH2−OHを表し、チオジグリコールを意味する。A及びBがメチレンであり、その付加数であるj及びkが共に1であり、Ra及びRbがCOOHの場合には、HOOC−CH2−S−CH2−COOHを表し、チオジグリコール酸を意味する。A及びBがエチレンであり、その付加数であるj及びkが共に1であり、Ra及びRbがNH2の場合には、H2N−CH2CH2−S−CH2CH2−NH2を表し、2,2′−チオビス(エチルアミン)を意味する。A及びBがオキシエチレンであり、その付加数であるj及びkが共に11であり、Ra及びRbがHの場合には、H−(OCH2CH2)11−S−(CH2CH2O)11−Hを表し、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテルを意味する。A及びBがオキシエチレンであり、その付加数のj及びkが共に15であり、Ra及びRbがHの場合には、H−(OCH2CH2)15−S−(CH2CH2O)15−Hを表し、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテルを意味する。
【0024】
一般式(2)で表されるスルフィド類としては、4,7,10−トリチアトリデカン−1,2,12,13−テトラオール、6,9,12−トリチア−3,15−ジオキサヘプタデカン−1,17−ジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオール、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジアミン、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジカルボン酸、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸、4,7,10,13−テトラチアヘキサデカン−1,16−ジスルホン酸、1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6−ジチアオクタンなどが挙げられる。好ましい例は、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオール、1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6―ジチアオクタン、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸である。
例えば、一般式(2)において、付加数nが1であり、Ra及びRbが共に−(CH2)2−OH(m=2、Rc=OHである)の場合には、HO−CH2CH2−S−CH2CH2−S−CH2CH2−OHを表し、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオールを意味する。付加数nが1であり、Ra及びRbが共に−(CH2)3−OH(m=3、Rc=OHである)の場合には、HO−CH2CH2CH2−S−CH2CH2−S−CH2CH2CH2−OHを表し、4,7−ジチアデカン−1,10―ジオールを意味する。付加数nが2であり、Ra及びRbが共に−(CH2)3−SO3Na(m=3、Rc=SO3M(M=Na)である)の場合には、NaO3S−CH2CH2CH2−S−(CH2CH2S)2−CH2CH2CH2−SO3Naを表し、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウムを意味する。
【0025】
上記チオ尿素誘導体は一般式(3)で表されるピリジン環を有するチオ尿素系化合物である。当該チオ尿素誘導体としては、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(4−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(3−ピリジルエチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(4−ピリジルペンチル)−2−チオ尿素などが挙げられ、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(3−ピリジルエチル)−2−チオ尿素が好ましい。
例えば、一般式(3)において、Rd及びReが共に−(CH2)−Py(p=1、Py=ピリジン環である)の場合には、Py−CH2−NH−C(=S)−NH−CH2−Pyを表し、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、又は1,3−ビス(4−ピリジルメチル)−2−チオ尿素を意味する。
【0026】
本発明2に示すように、本発明の置換ビスマスメッキ浴には、さらに、ビスマスイオンと銅溶解剤によって卑にシフトした銅イオンとの電位差を好適に調整し、ビスマスイオンを安定化し、また、銅系素材金属から溶出した不純物金属イオンのメッキ浴への悪影響を防止し、浴の安定化を補完・促進する、いわば隠蔽作用を発揮させる見地から、アミノカルボン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、ホスホノカルボン酸又はその塩、ポリアミン類、アミノアルコール類、オキシカルボン酸類又はその塩、ポリカルボン酸類又はその塩などの少なくとも一種を添加することができる。
これらの化合物の浴中での添加量は0.01〜500g/L、好ましくは1〜300g/Lである。
上記アミノカルボン酸としては、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、イミノジプロピオン酸、メタフェニレンジアミンテトラ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−テトラ酢酸、アミノプロピオン酸、ジアミノプロピオン酸、アミノ吉草酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、アスパラギン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、イミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンなどが挙げられる。
上記ホスホン酸としては、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸などが挙げられる。
上記ホスホノカルボン酸としては、ホスホノプロパントリカルボン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ホスホノペンタントリカルボン酸などが挙げられる。
上記ポリアミン類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩などが挙げられる。
上記アミノアルコール類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどが挙げられる。
上記オキシカルボン酸類としては、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、グルコヘプトン酸又はその塩などが挙げられるが、浴に添加するベースの酸にこれらのオキシカルボン酸を選択するときは、このベースの酸で兼用することができる。
上記ポリカルボン酸としては、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸又はその塩などが挙げられる。
【0027】
特に、錯化した銅イオンとビスマスイオンの電位差の調整、ビスマスイオンの安定化、或は隠蔽作用などを効果的に促進するためには、列挙した上記化合物の中でも、特定のアミノカルボン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸、又はこれらの塩が好適である。
本発明3に示すように、特定のアミノカルボン酸には、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、アスパラギン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンが挙げられる。
同様に、特定のホスホン酸には、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が挙げられる(本発明3参照)。
同様に、特定のホスホノカルボン酸には、ホスホノプロパントリカルボン酸、ホスホノブタントリカルボン酸が挙げられる(本発明3参照)。
尚、上述の通り、これらの特定のアミノカルボン酸の塩、ホスホン酸の塩、又はホスホノカルボン酸の塩も同様に好適である。
【0028】
本発明の置換ビスマスメッキ浴には、上述の成分以外に、目的に応じて公知の界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤、緩衝剤、防腐剤などの各種添加剤を混合できることはいうまでもない。
【0029】
上記界面活性剤は、析出するビスマス皮膜の緻密性、平滑性、密着性などの補助的改善を目的として含有され、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤を単用又は併用できる(本発明4参照)。
その添加量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0030】
当該ノニオン系界面活性剤の具体例としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
【0031】
上記エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。同じく上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。上記(ポリ)C1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。上記アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。上記C1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。上記ポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられる。
【0032】
上記C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
【0033】
上記ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙げられる。
【0034】
更に、上記ノニオン系界面活性剤としては、
1N(R2)2→O
(上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異なるC1〜C5アルキルを示す。)などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
【0035】
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジルを示す。)或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
6−(C54N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、C54Nはピリジン環、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0036】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0037】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0038】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0039】
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0040】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0041】
上記平滑剤としては、β−ナフトール、β−ナフトール−6−スルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、、ベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、(o−、p−)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4−、2,6−)ジクロロベンズアルデヒド、(o−、p−)クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2(4)−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2(4)−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2(3)−チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)−フルアルデヒド、3−インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1−ベンジリデン−7−ヘプタナール、2,4−ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン−アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン−3,4、アセチルアセトン、ベンジリデンアセトン、3−クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4−(1−ナフチル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−フリル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−チオフェニル)−3−ブテン−2−オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4−、3,4−)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2−シンナミルチオフェン、2−(ω−ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン−1,3−ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o−、m−、p−)トルイジン、(o−、p−)アミノアニリン、アニリン、(o−、p−)クロロアニリン、(2,5−、3,4−)クロロメチルアニリン、N−モノメチルアニリン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N−フェニル−(α−、β−)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−ベンズトリアジン、イミダゾール、2−ビニルピリジン、インドール、キノリン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、モノエタノールアミンとo−バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、ゼラチン、ポリペプトン、N−(3−ヒドロキシブチリデン)−p−スルファニル酸、N−ブチリデンスルファニル酸、N−シンナモイリデンスルファニル酸、2,4−ジアミノ−6−(2′−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−エチル−4−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
上記ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
【0042】
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられる。
上記緩衝剤としては、ホウ酸類、ホスフィン酸やホスホン酸、リン酸、トリポリリン酸などのリン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類など塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
上記消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
【0043】
本発明5は、本発明1〜4の置換ビスマス浴を用いて、銅系素材上にビスマス皮膜を形成する置換ビスマスメッキ方法である。
置換ビスマスメッキを行う場合、PHは8.0以下が好ましく、浴の攪拌は必要に応じて行う場合もある。また、浴温は10〜80℃程度であり、メッキ時間は膜厚に依存して決定される。
当該置換ビスマスメッキは、基本的に、被メッキ物をメッキ液に通常1秒〜30分間浸漬し、所望の膜厚までメッキ皮膜を析出させることにより行う。
【0044】
本発明6は、銅系素材としての電子部品に本発明の置換ビスマスメッキを適用したものである。即ち、本発明1〜4の置換ビスマス浴を用いてビスマス皮膜を形成した電子部品あり、好ましい電子部品としては、プリント回路板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサー、フィルター、インダクター、サーミスター、水晶振動子、スイッチ、リード線などが挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の置換ビスマスメッキ浴の実施例、当該メッキ浴から得られたビスマス皮膜の外観評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0046】
《置換ビスマスメッキ浴の実施例》
実施例1〜17のうち、実施例1〜2は銅溶解剤として脂肪族チオアミノカルボン酸を単用した例、実施例3と5は一般式(1)に属するスルフィド類の単用例、実施例4と6は脂肪族メルカプトカルボン酸の単用例、実施例7〜10と12は一般式(2)に属するスルフィド類の単用例、実施例11は一般式(3)に属するチオ尿素誘導体の単用例、実施例13は脂肪族チオアミノカルボン酸と一般式(1)に属するスルフィド類の併用例、実施例14と16〜17は一般式(1)と一般式(2)に属する各スルフィド類の併用例、実施例15は一般式(1)に属するスルフィド類と一般式(3)に属するチオ尿素誘導体の併用例である。実施例3、12〜13、15は本発明2の特定のアミノカルボン酸を添加しない例、その他の実施例は全て同アミノカルボン酸を添加した例である。
また、比較例1は本発明の銅溶解剤を含まないブランク例である。比較例2は本発明の銅溶解剤に代えて、冒述の特許文献1〜2に準拠してチオ尿素を含有した例である。比較例3は本発明の銅溶解剤に代えて、冒述の特許文献3〜4に準拠してクエン酸を含有した例である。比較例4は本発明の銅溶解剤に代えて、冒述の特許文献1〜2に準拠してDTPAを含有した例である。比較例5は本発明の銅溶解剤に代えて、冒述の特許文献1〜2に準拠してグルタミン酸とDTPAを併用した例である。
尚、下記の実施例1〜17及び比較例2〜5の各メッキ浴の組成において、カッコ内の数値は所定の銅溶解剤のビスマスイオンに対する含有量(単位:倍モル)を表し、例えば、(×20)はビスマスイオンに対して20倍モルの含有量を意味する。
【0047】
(1)実施例1
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
N−アセチルシステイン 47g/L
ヒドロキシエチルイミノジ酢酸 80g/L(×20)
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 8g/L
【0048】
(2)実施例2
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
2−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸ビスマス(Bi3+として) 7g/L
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 100g/L
メチオニン 150g/L(×30)
ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA) 55g/L
【0049】
(3)実施例3
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
2−ブタンスルホン酸 80g/L
ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル 96g/L(×20)
【0050】
(4)実施例4
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
p−フェノールスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
エタンスルホン酸 30g/L
2,3−ジメルカプトこはく酸 13.1g/L(×15)
N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸 30g/L
N−ラウリル−N,N−ジメチル
−N−カルボキシメチルベタイン 3g/L
【0051】
(5)実施例5
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 5g/L
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 75g/L
チオジグリコール 146.3g/L(×50)
N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン 55g/L
ドデシルアミンポリエトキシレート(EO15モル) 10g/L
【0052】
(6)実施例6
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
エタンスルホン酸 65g/L
メルカプトコハク酸 43.2g/L(×20)
ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA) 45g/L
β−ナフトール−ポリエトキシレート(EO15モル) 6g/L
【0053】
(7)実施例7
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 5g/L
メタンスルホン酸 70g/L
3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール 43.5g/L(×10)
ジヒドロキシエチルグリシン 90g/L
ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15モル) 7g/L
【0054】
(8)実施例8
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
p−フェノールスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
p−フェノールスルホン酸 95g/L
4,7−ジチアデカン−1,10−ジオール 15.1g/L(×5)
ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA) 30g/L
N−ミリスチル−N,N
−ジメチル−N−カルボキシメチルベタイン 6g/L
【0055】
(9)実施例9
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
硝酸ビスマス(Bi3+として) 5g/L
メタンスルホン酸 100g/L
4,7,10−トリチアトリデカン
−1,13−ジスルホン酸二ナトリウム 158.5g/L(×15)
【0056】
(10)実施例10
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
塩化ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸 70g/L
3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸 3.6g/L(×1)
N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸 8g/L
【0057】
(11)実施例11
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
2−ブタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
p−フェノールスルホン酸 50g/L
1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素 24.8g/L(×6)
ヒドロキシエチルイミノジ酢酸 40g/L
【0058】
(12)実施例12
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
p−フェノールスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
クレゾールスルホン酸 20g/L
1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6−ジチアオクタン 35g/L(×8)
【0059】
(13)実施例13
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
メチオニン 42.8g/L(×20)
3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール 13.1g/L(×5)
クエン酸 30g/L
ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム 2g/L
【0060】
(14)実施例14
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
2,2′−チオビス(エチルアミン) 0.17g/L(×0.1)
3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール 52.3g/L(×20)
ヒドロキシエチルイミノジ酢酸 80g/L
トリエタノールアミン 10g/L
ジメチルベンジルラウリルアンモニウムクロリド 1g/L
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 8g/L
【0061】
(15)実施例15
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオジグリコール 26.3g/L(×15)
1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素 16.4g/L(×4)
コハク酸 25g/L
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 8g/L
【0062】
(16)実施例16
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオジグリコール 26.3g/L(×15)
3,6−ジチアオクタン−1,8−ジスルホン酸 17.8g/L(×4)
ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸 99.8g/L(×25)
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 8g/L
pH 5.5(KOHにて調整)
【0063】
(17)実施例17
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオジグリコール 26.3g/L(×15)
3,6−ジチアオクタン−1,8−ジスルホン酸 17.8g/L(×4)
ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸 99.8g/L(×25)
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 8g/L
pH 8.0(NaOHにて調整)
【0064】
(18)比較例1
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
ドデシルアミンポリエトキシレート(EO14モル) 8g/L
【0065】
(19)比較例2
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオ尿素 54.6g/L(×50)
ドデシルアミンポリエトキシレート(EO14モル) 8g/L
【0066】
(20)比較例3
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
クエン酸 82.7g/L(×30)
【0067】
(21)比較例4
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオ尿素 32.7g/L(×30)
ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) 65.4g/L(×10)
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 8g/L
【0068】
(22)比較例5
下記の組成で置換ビスマスメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 70g/L
グルタミン酸 63.3g/L(×30)
ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) 65.4g/L(×10)
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 8g/L
【0069】
《ビスマスメッキ皮膜の外観評価試験例》
そこで、上記実施例1〜17及び比較例1〜5の各置換ビスマスメッキ浴について、メッキ温度を20℃、50℃、70℃に個別に保持して、25×25mmの圧延銅板の試験片を夫々の温度の浴に、5秒、30秒、1分、10分、30分間の条件ごとに浸漬させることにより、銅板表面に0.005〜10μの膜厚の置換ビスマスメッキを施した。即ち、各実施例及び比較例について、例えば、20℃に保持したメッキ浴の場合、5秒〜30分間の5通りの条件で浸漬させ、これを他の温度の浴についても5通りのメッキ時間ごとに繰り返したものである。
尚、浴のpHは、実施例16はpH5.5、実施例17はpH8.0とし、その他の全ての実施例及び比較例ではpH1以下とした。
そして、上記実施例及び比較例の夫々について、浴温並びにメッキ時間を変化させた夫々の浸漬条件で得られたビスマスメッキ皮膜を目視観察して、当該皮膜の外観の優劣を下記の基準で評価した。
○:白色で緻密且つ均一な光沢を具備していた。
△:均一な光沢を有していたが、少し黄色がかっていた。
×:茶色の色調ムラが認められた。
【0070】
下表はその試験結果である。
外観評価 外観評価
実施例1 ○ 実施例13 ○
実施例2 ○ 実施例14 ○
実施例3 ○ 実施例15 ○
実施例4 ○ 実施例16 ○
実施例5 ○ 実施例17 ○
実施例6 ○ 比較例1 ×
実施例7 ○ 比較例2 ×
実施例8 ○ 比較例3 ×
実施例9 ○ 比較例4 △
実施例10 ○ 比較例5 ×
実施例11 ○
実施例12 ○
【0071】
上表によると、本発明の銅溶解剤を含まない比較例1では、茶色の色調ムラが認められ、均一光沢性のある皮膜は得られなかった。本発明の銅溶解剤に代えてチオ尿素、或は、オキシカルボン酸に属するクエン酸を含有した比較例2〜3でも同様に茶色の色調ムラが見られた。さらに、本発明の銅溶解剤に代えてアミノカルボン酸に属するグルタミン酸とDTPAを併用した比較例5では、比較例1〜3と同様にメッキ外観に劣り、また、DTPAを単用した比較例4では、均一光沢性を具備しながらも、白色の美麗な外観は得られなかった。
これに対して、本発明の銅溶解剤を含む実施例1〜17では全て美麗な白色を呈し、且つ、均一光沢性を具備したビスマス皮膜が得られた。
従って、比較例1(ブランク例)と実施例1〜17を対比すると、白色で均一光沢性のあるビスマス皮膜を得るためには、置換ビスマス浴に特定の脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトスルホン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体より選ばれた限定的な含イオウ化合物を銅溶解剤として含有させることが重要である点が確認できた。また、比較例2、4〜5と実施例1〜17を対比すると、含イオウ化合物に属する点で本発明の特定含イオウ化合物(殊に、ピリジン環を有するチオ尿素誘導体)に共通するチオ尿素、或は、アミノカルボン酸類に属する点で本発明の脂肪族チオアミノカルボン酸に共通するDTPAやグルタミン酸を使用しても、ビスマス皮膜の外観を改善できず、従って、皮膜の改善には、含イオウ化合物の中でも本発明の通り種類の特定化が必要であることが明らかになった。尚、比較例3のようなオキシカルボン酸では、本発明の含イオウ化合物のようなビスマス皮膜の外観の改善は達成できないことも確認された。
【0072】
一方、実施例1〜17に見るように、本発明の特定の含イオウ化合物にあっては、脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトスルホン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体のいずれの種類を選択しても、或はその含有量を問わず、共にビスマス皮膜の外観を良好に改善できることが認められた。
その際、当然ながら、本発明の特定含イオウ化合物を単用しても、種類の異なるものを複用しても(実施例13〜17参照)、同様の効果が期待できることは勿論である。
ちなみに、置換ビスマス浴に本発明の含イオウ化合物に加えて、本発明3の特定アミノカルボン酸又はその塩を併用添加すると(実施例1〜2、実施例4〜11、実施例14、実施例16〜17参照)、ビスマス皮膜の改善機能を保持しながら、浴の寿命を有効に延長できることが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性ビスマス塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸又はその塩とを含有する置換ビスマスメッキ浴において、
下記の銅溶解剤(a)〜(e)の少なくとも一種
(a)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
(b)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
(c)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
Ra−(A)j−S−(B)k−Rb …(1)
(式(1)中、j及びkは1〜100の整数である;A及びBは同一又は異なっても良く、夫々メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、又はこれらC2〜C4のオキシアルキレンである;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々H(但し、AとBが共にメチレン、C2〜C4アルキレンの場合にはRaとRbのどちらか一方はHでない)、OH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基である;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(d)次の一般式(2)で表されるスルフィド類
Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(2)
(式(2)中、nは1〜3の整数である;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rcである;mは0又は1〜5の整数である;Rcはmが0の場合はピリジル基又はアミノフェニル基であり、mが1〜5の整数の場合はOH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基であり;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(e)次の一般式(3)で表されるチオ尿素誘導体
Rd−NH−C(=S)−NH−Re …(3)
(式(3)中、Rd及びReは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)p−Rfである;pは1〜5の整数である;Rfはピリジル基である)
を含有することを特徴とする銅系素材用置換ビスマスメッキ浴。
【請求項2】
さらに、アミノカルボン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、ホスホノカルボン酸又はその塩、ポリアミン類、アミノアルコール類、オキシカルボン酸類又はその塩、ポリカルボン酸類又はその塩の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の銅系素材用置換ビスマスメッキ浴。
【請求項3】
アミノカルボン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸又はこれらの塩が、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノプロパントリカルボン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンよりなる群から選ばれた化合物又はこれらの塩の少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の銅系素材用置換ビスマスメッキ浴。
【請求項4】
さらに、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた界面活性剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅系素材用置換ビスマスメッキ浴。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の置換メッキ浴を用いて、銅系素材上にビスマスメッキ皮膜を形成することを特徴とする置換ビスマスメッキ方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の置換メッキ浴を用いて、ビスマスメッキ皮膜を形成したプリント回路板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサー、フィルター、インダクター、サーミスター、水晶振動子、スイッチ、リード線などの電子部品。

【公開番号】特開2006−183079(P2006−183079A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376489(P2004−376489)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】