説明

鋼帯の蛇行防止方法および装置

【課題】鋼帯を搬送しながら連続的に処理する鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、複数台のペイオフリールから交互に鋼帯(コイル)を払い出す入側設備を有している場合に、ペイオフリールから尻抜けした鋼帯の尾端の蛇行を適切に防止することができる鋼帯の蛇行防止方法および装置を提供する。
【解決手段】先行鋼帯5aの尾端がペイオフリール11から払い出される前に、切断装置・溶接装置間ピンチロール16と溶接装置出側ピンチロール32とで先行鋼帯5aを挟み込み、溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrを先行鋼帯5aの搬送速度(ブライドルロール33の周速度)Vsより遅くするとともに、切断装置・溶接装置間ピンチロール16の周速度Vqを溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrより遅くするようにする(すなわち、Vs>Vr>Vq)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯の焼鈍、メッキ、塗装、洗浄等の処理を搬送しながら連続的に行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、その鋼帯連続処理装置への入側設備として、鋼帯(コイル)を交互に払い出す複数台のペイオフリールを有する場合に、払い出した鋼帯の尾端の蛇行を適切に防止する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の焼鈍、メッキ、塗装、洗浄等の処理を搬送しながら連続的に行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいては、その鋼帯連続処理装置への入側設備として、一般的に、複数台(例えば2台)のペイオフリールを有しており、一方のペイオフリールから鋼帯(先行鋼帯)の払い出しが完了すると、他方のペイオフリールから次の鋼帯(後行鋼帯)の先端を払い出し、その後行鋼帯の先端と先行鋼帯の尾端とを溶接装置により溶接し、鋼帯の払い出しを続ける。詳しくは、先行鋼帯の尾端部の不良部分と後行鋼帯の先端部の不良部分をそれぞれ切断装置によって切断・除去し、それによって新たに形成された先行鋼帯の尾端と後行鋼帯の先端とを溶接装置により溶接する。
【0003】
その際に、ペイオフリールから尻抜けした、すなわちペイオフリールから払い出されてしまった先行鋼帯の尾端は、ペイオフリールからの拘束がなくなるので、溶接装置に搬送されて後行鋼帯の先端と溶接されるまでの間は、蛇行を生じやすい。そして、この蛇行が大きくなると、鋼帯耳部がガイドに当たって損傷したり、溶接装置に到着するまでに搬送ローラから外れて、鋼帯の搬送を停止しなければならなくなったり、溶接時に後行鋼帯の先端と幅方向にズレが生じて、再溶接の実施が必要となったり、その後のライン搬送中に破断し易くなるといった問題が生じる。このような鋼帯の搬送停止や再溶接や破断は、ライン全体の停止に繋がる。
【0004】
そこで、そのような先行鋼帯の尾端の蛇行を防止する方法として、溶接装置出側のピンチロールを閉じ、その溶接装置出側のピンチロールでブレーキをかけて、ライン内にバックテンションを付与する方法(特許文献1参照)や、溶接装置出側に設置されたピンチロールを鋼帯幅方向に回動可能にして、先行鋼帯の尾端の蛇行に応じて、そのピンチロールを回動させて蛇行を防止する方法(特許文献2参照)や、溶接装置出側に鉛直方向に傾動可能な傾動ロールを設置し、先行鋼帯の尾端の蛇行に応じて、その傾動ロールを傾動させて蛇行を制御する方法(特許文献3参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−321011号公報
【特許文献2】特開平09−010836号公報
【特許文献3】特開平10−263694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の方法では、先行鋼帯の尾端がペイオフリールから尻抜けして、すなわち先行鋼帯の尾端がペイオフリールから払い出されて溶接装置に到達するまでの間、先行鋼帯は溶接装置出側のピンチロールにて挟み込まれながら搬送されるが、このとき、溶接装置出側のピンチロールよりも上流側の先行鋼帯の尾端は、張力がかからない状態となっており、先行鋼帯の尾端が幅方向に自由に動けるため、先行鋼帯の蛇行現象が発生する。
【0007】
また、特許文献2に記載の方法では、先行鋼帯の尾端が蛇行することを許容し、その蛇行に応じてピンチロールを回動させているので、発生した蛇行量によっては適切に防止することができない場合が考えられる。
【0008】
また、特許文献3に記載の方法では、新たに傾動ロールを設置する必要があり、そのための設備費や設置スペースの確保が問題となる。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鋼帯の焼鈍、メッキ、塗装、洗浄等の処理を搬送しながら連続的に行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、前記鋼帯連続処理装置への入側設備として、複数のペイオフリールから交互に鋼帯(コイル)を払い出す入側設備を有している場合に、ペイオフリールから払い出された後の鋼帯の尾端の蛇行を適切に防止することができる鋼帯の蛇行防止方法および装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有する。
【0011】
[1]鋼帯を搬送しながら連続的に処理を行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、前記鋼帯連続処理装置への入側設備として、鋼帯を交互に払い出す複数のペイオフリールと、該複数のペイオフリールから交互に払い出される鋼帯の先端部の不良部分と尾端部の不良部分を切断・除去する切断装置と、一方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で尾端部の不良部分を切断・除去された後の先行鋼帯の尾端と他方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で先端部の不良部分を切断・除去された後の後行鋼帯の先端とを溶接する溶接装置と、前記切断装置と前記溶接装置の間に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置・溶接装置間ピンチロール)と、前記溶接装置の出側に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(溶接装置出側ピンチロール)とを有している場合に、
先行鋼帯の尾端がペイオフリールから払い出される前に、先行鋼帯を前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールとで挟み込み、先行鋼帯の尾端が後行鋼帯の先端と前記溶接装置で溶接されるまでの搬送中は、前記溶接装置出側ピンチロールの周速度を先行鋼帯の搬送速度より遅くするとともに、前記切断装置・溶接装置間ピンチロールの周速度を前記溶接装置出側ピンチロールの周速度より遅くすることを特徴とする鋼帯の蛇行防止方法。
【0012】
[2]前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールは、ロール幅中央部が凸形状になったピンチロールであることを特徴とする前記[1]に記載の鋼帯の蛇行防止方法。
【0013】
[3]鋼帯を搬送しながら連続的に処理を行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、前記鋼帯連続処理装置への入側設備として、鋼帯を交互に払い出す複数のペイオフリールと、該複数のペイオフリールから交互に払い出される鋼帯の先端部の不良部分と尾端部の不良部分を切断・除去する切断装置と、一方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で尾端部の不良部分を切断・除去された後の先行鋼帯の尾端と他方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で先端部の不良部分を切断・除去された後の後行鋼帯の先端とを溶接する溶接装置と、前記切断装置と前記溶接装置の間に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置・溶接装置間ピンチロール)と、前記溶接装置の出側に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(溶接装置出側ピンチロール)と、前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールの動きを制御するピンチロール制御装置とを有し、
前記ピンチロール制御装置は、先行鋼帯の尾端がペイオフリールから払い出される前に、先行鋼帯を前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールとで挟み込み、先行鋼帯の尾端が後行鋼帯の先端と前記溶接装置で溶接されるまでの搬送中は、前記溶接装置出側ピンチロールの周速度を先行鋼帯の搬送速度より遅くするとともに、前記切断装置・溶接装置間ピンチロールの周速度を前記溶接装置出側ピンチロールの周速度より遅くすることを特徴とする鋼帯の蛇行防止装置。
【0014】
[4]前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールは、ロール幅中央部が凸形状になったピンチロールであることを特徴とする前記[3]に記載の鋼帯の蛇行防止装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、鋼帯の焼鈍、メッキ、塗装、洗浄等の処理を搬送しながら連続的に行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、複数のペイオフリールから交互に鋼帯(コイル)を払い出す入側設備を備えている場合に、ペイオフリールから尻抜けした、すなわちペイオフリールから払い出された後の鋼帯の尾端の蛇行を適切に防止することができる。その結果、鋼帯耳部の損傷や鋼帯の搬送停止を防ぐことができて、能率良く良好に鋼帯の処理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における鋼帯連続処理ラインを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態において用いるピンチロールの例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態における鋼帯の搬送速度とピンチロールの周速度との時間的推移を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例1における本発明例と比較例の蛇行量の比較結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態における鋼帯連続処理ライン1を示す側面図である。
【0019】
図1に示すように、この実施形態における鋼帯連続処理ライン1においては、鋼帯5を搬送しながら連続的に処理を行う鋼帯連続処理装置3と、鋼帯連続処理装置3への入側設備2と、鋼帯連続処理装置3からの出側設備4とを備えている。
【0020】
そして、入側設備2は、上側パスライン10と、下側パスライン20と、溶接装置31と、溶接装置31の出側に配置されて鋼帯5を挟み込んで回転駆動するピンチロール(溶接装置出側ピンチロール)32とを備えている。
【0021】
ここで、上側パスライン10には、鋼帯5(5a)を払い出すペイオフリール11と、ペイオフリール11から払い出された鋼帯5(5a)の先端部の不良部分と尾端部の不良部分を切断・除去する切断装置15と、ペイオフリール11の出側に配置されて鋼帯5(5a)を挟み込んで回転駆動するピンチロール(ペイオフリール出側ピンチロール)12と、ペイオフリール11と切断装置15の中間位置に配置されて鋼帯5(5a)を挟み込んで回転駆動するピンチロール(中間位置ピンチロール)13と、切断装置15の入側に配置されて鋼帯5(5a)を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置入側ピンチロール)14と、切断装置15と溶接装置31の間に配置されて鋼帯5(5a)を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置・溶接装置間ピンチロール)16とが設置されている。
【0022】
また、下側パスライン20には、鋼帯5(5b)を払い出すペイオフリール21と、ペイオフリール21から払い出された鋼帯5(5b)の先端部の不良部分と尾端部の不良部分を切断・除去する切断装置25と、ペイオフリール21の出側に配置されて鋼帯5(5b)を挟み込んで回転駆動するピンチロール(ペイオフリール出側ピンチロール)22と、切断装置25の入側に配置されて鋼帯5(5b)を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置入側ピンチロール)24と、切断装置25と溶接装置31の間に配置されて鋼帯5(5b)を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置・溶接装置間ピンチロール)26とが設置されている。
【0023】
なお、上記の各ピンチロール12、13、14、16、22、24、26、32の動きは、ピンチロール制御装置(図示せず)によって制御されるようになっている。
【0024】
一方、出側設備4はブライドルロール33を備えており、このブライドルロール33によって鋼帯5の搬送速度が制御される
上記のように構成された鋼帯連続処理ライン1においては、上側パスライン10のペイオフリール11と下側パスライン20のペイオフリール21から交互に鋼帯5を払い出して、鋼帯5の払い出しが途切れないようにしている。
【0025】
すなわち、例えば、上側パスライン10のペイオフリール11から鋼帯(先行鋼帯)5aの払い出しが完了すると、下側パスライン20のペイオフリール21から次の鋼帯(後行鋼帯)5bの先端を払い出し、その後行鋼帯5bの先端と先行鋼帯5aの尾端とを溶接装置31により溶接し、鋼帯5の払い出しを続ける。詳しくは、先行鋼帯5aの尾端部の不良部分を切断装置15で切断・除去し、後行鋼帯5bの先端部の不良部分を切断装置25で切断し、それぞれ新たに形成された先行鋼帯5aの尾端と後行鋼帯5bの先端とを溶接装置31により溶接する。
【0026】
同様に、下側パスライン20のペイオフリール21で鋼帯5の払い出しが完了すると、上側パスライン10のペイオフリール11から次の鋼帯5の先端を払い出し、鋼帯5の払い出しを続ける。
【0027】
その上で、この実施形態においては、例えば、上側パスライン10のペイオフリール11から払い出された鋼帯(先行鋼帯)5aの尾端と下側パスライン20のペイオフリール21から払い出された次の鋼帯(後行鋼帯)5bの先端とを溶接装置31により溶接するに際して、先行鋼帯5aが該鋼帯の尾端のペイオフリール11からの払い出しを控えて搬送速度Vsを減速し始めると、それまでは開放状態であった切断装置・溶接装置間ピンチロール16と溶接装置出側ピンチロール32とで先行鋼帯5aを挟み込み、先行鋼帯5aの尾端と後行鋼帯5bの先端とを溶接装置31で溶接するまでの搬送中は、溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrを先行鋼帯5aの搬送速度(ブライドルロール33の周速度)Vsより遅くするとともに、切断装置・溶接装置間ピンチロール16の周速度Vqを溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrより遅くするようにしている。すなわち、Vs>Vr>Vqとする。より具体的には、例えば、速度差(Vs−Vr)/Vs=3〜7%とし、速度差(Vr−Vq)/Vr=3〜7%とする。
【0028】
これによって、先行鋼帯5aの尾端が後行鋼帯5bの先端と溶接装置31で溶接されるまでの搬送中は、ブライドルロール33と溶接装置出側ピンチロール32の間の先行鋼帯5aに張力が発生するとともに、溶接機装置出側ピンチロール32と切断装置・溶接装置間ピンチロール16の間の先行鋼帯5aにも張力が発生するので、先行鋼帯5aの尾端の蛇行を適切に防止することができる。
【0029】
図3は、上記で述べた手順を模式的に示したものであり、先行鋼帯5aの搬送速度Vsと溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrおよび切断装置・溶接装置間ピンチロール16の周速度Vqの時間的推移を示す模式図である。
【0030】
すなわち、図3においては、以下のような時間的推移をたどる。
【0031】
(時刻A)先行鋼帯5aがペイオフリール11からの該鋼帯5aの尾端の払い出しを控えて搬送速度Vsを減速し始める。
【0032】
(時刻B)切断装置・溶接装置間ピンチロール16と溶接装置出側ピンチロール32とで先行鋼帯5aを挟み込む。そして、溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrを先行鋼帯5aの搬送速度Vsより遅くするとともに、切断装置・溶接装置間ピンチロール16の周速度Vqを溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrより遅くする(Vs>Vr>Vq)。
【0033】
(時刻C)先行鋼帯5aの尾端がペイオフリール11から払い出される。
【0034】
(時刻D)先行鋼帯5aの尾端部が切断装置15に到着し、搬送を一時停止する(Vs=0、Vr=0、Vq=0)。
【0035】
(時刻E)先行鋼帯5aの尾端部の不良部分を切断装置15で切断・除去し、新しい尾端を形成する。
【0036】
(時刻F)先行鋼帯5aの搬送を再開する(Vs>Vr>Vq)。
【0037】
(時刻G)先行鋼帯5aの尾端が切断装置・溶接装置間ピンチロール16を通過する。
【0038】
(時刻H)先行鋼帯5aの尾端が溶接装置31に到着し、搬送を一時停止する(Vs=0、Vr=0)。
【0039】
(時刻I)先行鋼帯5aの尾端を後行鋼帯5bの先端と溶接装置31で溶接する。
【0040】
(時刻J)溶接装置出側ピンチロール32を開放する。
【0041】
(時刻K)先行鋼帯5a+後行鋼帯5bの搬送を開始する。
【0042】
なお、上記において、さらに、ペイオフリール11と切断装置15の中間位置に配置されている中間位置ピンチロール13で先行鋼帯5aの尾端部を挟み込み、その中間位置ピンチロール13の周速度Vpを切断装置・溶接装置間ピンチロール16の周速度Vqより遅くなるようにしてもよい(Vq>Vp)。例えば、速度差(Vq−Vp)/Vq=3〜7%とする。
【0043】
これによって、中間位置ピンチロール13と切断装置・溶接装置間ピンチロール16の間の先行鋼帯5aにも張力が発生するようになり、先行鋼帯5aの尾端の蛇行をさらに適切に防止することができる。
【0044】
また、上記において用いる各ピンチロール13、16、32は、図2に示すような、ロール幅中央部が凸形状になったピンチロールであることが好ましい。ちなみに、図2(a)はロール稜線が楕円形状になったピンチロール41、図2(b)はロール稜線が台形形状になったピンチロール42、図2(c)はロール稜線の中央部が台形形状になったピンチロール43、図2(d)はロール稜線が凸形状になったピンチロール44である。
【0045】
このように、ロール幅中央部が凸形状になったピンチロール41〜44を用いることによって、鋼帯5の耳伸び起因の蛇行を防止することができる。
【0046】
すなわち、ピンチロール41〜44によって鋼帯5の幅方向中央部に最大の圧下をかけることにより、鋼帯5の幅方向中央部に幅方向の中で最大の張力をかけることができ、鋼帯5の形状が均一でない場合でも、鋼帯5の幅方向の張力バランスを均一に保つことができる。
【0047】
そして、上記では、上側パスライン10のペイオフリール11から鋼帯5の払い出しが完了して、下側パスライン20のペイオフリール21から次の鋼帯5を払い出す場合について述べたが、下側パスライン20のペイオフリール21から鋼帯5の払い出しが完了して、上側パスライン10のペイオフリール11から次の鋼帯5を払い出す場合も、上記と同様に行えばよい。
【実施例1】
【0048】
本発明の実施例1として、図1に示した鋼帯連続処理ライン1において、鋼帯の連続処理を行った。
【0049】
その際に、本発明例として、上記の本発明の一実施形態に基づいて、鋼帯の蛇行防止を行った。すなわち、例えば、上側パスライン10のペイオフリール11から払い出された鋼帯(先行鋼帯)5aの尾端と下側パスライン20のペイオフリール21から払い出された次の鋼帯(後行鋼帯)5bの先端とを溶接装置31により溶接するに際して、切断装置・溶接装置間ピンチロール16と溶接装置出側ピンチロール32とで先行鋼帯5aを挟み込み、先行鋼帯5aの尾端と後行鋼帯5bの先端とを溶接装置31で溶接するまでの搬送中は、溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrを先行鋼帯5aの搬送速度(ブライドルロール33の周速度)Vsより遅くするとともに、切断装置・溶接装置間ピンチロール16の周速度Vqを溶接装置出側ピンチロール32の周速度Vrより遅くするようにした。
【0050】
これに対して、比較例として、前記特許文献1に記載の技術に基づいて、鋼帯の蛇行防止を行った。すなわち、例えば、上側パスライン10のペイオフリール11から払い出された鋼帯(先行鋼帯)5aの尾端と下側パスライン20のペイオフリール21から払い出された次の鋼帯(後行鋼帯)5bの先端とを溶接装置31により溶接するに際して、溶接装置出側ピンチロール32のみで先行鋼帯5aを挟み込み、その溶接装置出側ピンチロール32でブレーキをかけて、ライン内にバックテンションを付与した。
【0051】
図4は、本発明例と比較例における、先行鋼帯の尾端が溶接装置31に到着した際の蛇行量を比較したものである。図4に示すように、本発明例では比較例に比べて鋼帯の蛇行量が大幅に低減している。
【0052】
これによって、本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0053】
1 鋼帯連続処理ライン
2 入側設備
3 鋼帯連続処理装置
4 出側設備
5 鋼帯
5a 先行鋼帯
5b 後行鋼帯
10 上側パスライン
11 ペイオフリール
12 ペイオフリール出側ピンチロール
13 中間位置ピンチロール
14 切断装置入側ピンチロール
15 切断装置
16 切断装置・溶接装置間ピンチロール
20 下側パスライン
21 ペイオフリール
22 ペイオフリール出側ピンチロール
24 切断装置入側ピンチロール
25 切断装置
26 切断装置・溶接装置間ピンチロール
31 溶接装置
32 溶接装置出側ピンチロール
33 ブライドルロール
41 ロール稜線が楕円形状になったピンチロール
42 ロール稜線が台形形状になったピンチロール
43 ロール稜線の中央部が台形形状になったピンチロール
44 ロール稜線が凸形状になったピンチロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を搬送しながら連続的に処理を行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、前記鋼帯連続処理装置への入側設備として、鋼帯を交互に払い出す複数のペイオフリールと、該複数のペイオフリールから交互に払い出される鋼帯の先端部の不良部分と尾端部の不良部分を切断・除去する切断装置と、一方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で尾端部の不良部分を切断・除去された後の先行鋼帯の尾端と他方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で先端部の不良部分を切断・除去された後の後行鋼帯の先端とを溶接する溶接装置と、前記切断装置と前記溶接装置の間に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置・溶接装置間ピンチロール)と、前記溶接装置の出側に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(溶接装置出側ピンチロール)とを有している場合に、
先行鋼帯の尾端がペイオフリールから払い出される前に、先行鋼帯を前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールとで挟み込み、先行鋼帯の尾端が後行鋼帯の先端と前記溶接装置で溶接されるまでの搬送中は、前記溶接装置出側ピンチロールの周速度を先行鋼帯の搬送速度より遅くするとともに、前記切断装置・溶接装置間ピンチロールの周速度を前記溶接装置出側ピンチロールの周速度より遅くすることを特徴とする鋼帯の蛇行防止方法。
【請求項2】
前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールは、ロール幅中央部が凸形状になったピンチロールであることを特徴とする請求項1に記載の鋼帯の蛇行防止方法。
【請求項3】
鋼帯を搬送しながら連続的に処理を行う鋼帯連続処理装置を備えた鋼帯連続処理ラインにおいて、前記鋼帯連続処理装置への入側設備として、鋼帯を交互に払い出す複数のペイオフリールと、該複数のペイオフリールから交互に払い出される鋼帯の先端部の不良部分と尾端部の不良部分を切断・除去する切断装置と、一方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で尾端部の不良部分を切断・除去された後の先行鋼帯の尾端と他方のペイオフリールから払い出されて前記切断装置で先端部の不良部分を切断・除去された後の後行鋼帯の先端とを溶接する溶接装置と、前記切断装置と前記溶接装置の間に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(切断装置・溶接装置間ピンチロール)と、前記溶接装置の出側に配置されて鋼帯を挟み込んで回転駆動するピンチロール(溶接装置出側ピンチロール)と、前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールの動きを制御するピンチロール制御装置とを有し、
前記ピンチロール制御装置は、先行鋼帯の尾端がペイオフリールから払い出される前に、先行鋼帯を前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールとで挟み込み、先行鋼帯の尾端が後行鋼帯の先端と前記溶接装置で溶接されるまでの搬送中は、前記溶接装置出側ピンチロールの周速度を先行鋼帯の搬送速度より遅くするとともに、前記切断装置・溶接装置間ピンチロールの周速度を前記溶接装置出側ピンチロールの周速度より遅くすることを特徴とする鋼帯の蛇行防止装置。
【請求項4】
前記切断装置・溶接装置間ピンチロールと前記溶接装置出側ピンチロールは、ロール幅中央部が凸形状になったピンチロールであることを特徴とする請求項3に記載の鋼帯の蛇行防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−13917(P2013−13917A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148750(P2011−148750)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】