説明

鋼管建込み用治具および鋼管沈設方法

【課題】回転させながら杭または矢板を地中に埋設される沈設施工を極めて経済的、且つ、効率的に行えるようにする。
【解決手段】建込み用の鋼管1の上端の継手4と係合される継手3を備えた筒状の治具本体を設け、治具本体を吊るための吊り用金具と、治具本体を筒軸芯周りに回転させるための回転用金具6とを兼用化させて治具本体に一体に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管建込み用治具および鋼管沈設方法に関し、詳しくは、杭または矢板として使用される鋼管を必要に応じて回転させながら地中に設置する際に適用される鋼管建込み用治具および鋼管沈設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、杭や矢板などとして鋼管が広く使用されており、従来、鋼管を杭や矢板などとして地中に設置する方法として、鋼管を地上に垂直に建て付けて頭部をハンマーで打撃する打込み工法や、アースオーガー等であらかじめ地盤に形成した孔に鋼管を挿入する埋込み工法や、ソイルセメント柱を築造しながら同時に鋼管杭を沈設したり、ソイルセメント柱築造後に鋼管杭を挿入する方法等が知られている。
【0003】
このため、鋼管の上部側面には普通、鋼管を吊って杭施工機に建て込むための吊込み用金具が突設されている。また特に、鋼管を回転させながら地中に挿入する場合には、吊込み用金具の他に杭施工機からの回転力を受ける回転用金具が突設される。
【0004】
ところで、鋼管どうしを接合する方法として、最近では、現場溶接の信頼性や管理上の問題から溶接継手よりも機械式継手が要望されるようになってきた。
【0005】
機械式継手としては、これまで様々な継手が開発されており、特に当出願人などが開発し、すでに出願もしている雌雄嵌合式の機械式継手(例えば、特許文献1参照)は、継手接続時の泥土などの清掃が容易なことから、上下に接合される下側の鋼管に雄継手を、上側の鋼管に雌継手をそれぞれ形成することにより施工されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−36285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、吊込み用金具と回転用金具はともに、各鋼管の上部側面に溶接によって取付ける必要があるため、これら金具の製作と取付けに多大な労力とコストがかかる等の問題があった。
【0008】
また、雌雄嵌合方式の機械式継手を有する鋼管を回転させながら地中に挿入する場合、杭施工機に設けられた回転力伝達用の回転用キャップを該鋼管杭上部に固設された回転用金具に嵌合する必要があるが、回転用金具は雄継手の下方部に突設されているため、回転用キャップを嵌合させる際に、雄継手部が邪魔になって回転用金具に嵌合できなかったり、雄継手に接触して雄継手を損傷してしまうおそれがある等の問題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、特に回転させながら杭または矢板として地中に設置される鋼管の建込みと沈設施工をきわめて効率的に行えるようにした鋼管建込み用治具および鋼管沈設方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴構成は、図1,2に例示するごとく、杭または矢板として設置される鋼管1の上端部に形成された継手と係合される継手の下端部に、少なくとも2個の回転用金具6を外周部にそれぞれ有するところにある。
【0011】
本発明の第1の特徴構成によれば、特に回転させながら杭または矢板として地中に設置される沈設施工をきわめて経済的、かつ、効率的に行うことができる。
つまり、従来は、極厚の回転用金具を各鋼管の上部側面に溶接によって取付けておく必要があったため、それだけ回転用金具の数が多くなり、回転用金具の製作と各鋼管に対する取付け作業に多大な労力とコストがかかるものであった。
ところが、外周部に回転用金具を取付けた鋼管建込み用治具を使用する本発明のものだと、鋼管の上端部に形成された継手に前記鋼管建込み用治具を係合接続させるだけで鋼管の上部側面に回転用金具を設けたのと同じ構成にでき、かつ、施工後は前記鋼管建込み用治具の係合接続を解除して繰り返し使用することが可能なため、鋼管の建込みと沈設施工に際して、あらかじめ各鋼管の上部側面に溶接によって取付けておく必要があった極厚の回転用金具を鋼管自体に設ける必要がなくなり、その数を大幅に省略することができる。
また、鋼管建込み用治具は、鋼管の上端部に形成された継手と係合接続可能で、かつ、その外周部に回転用金具を取付け可能な長さがあれば良いため、鋼管建込み用治具における杭軸芯方向の長さを短く形成することができる。そのため、前記鋼管建込み用治具を長い鋼管に対して使用したとしても、鋼管全体としてさほど長くなることなく鋼管の上端側面に回転用金具を設けたのと同じ構成にすることができる。
その結果、鋼管の長さに関係なく利用することができ、大幅なコストダウンが図れると共に、沈設施工の作業性を向上させることができる鋼管建込み用治具を提供できるようになった。
【0012】
本発明の第2の特徴構成は、図1,2に例示するごとく、回転用金具6は貫通孔6aを有するところにある。
【0013】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、別途支持部を設けることなく鋼管建込み用治具を移動可能に吊り支持することができる。
つまり、鋼管建込み用治具を鋼管の上端部に形成された継手に嵌合接続させようとした場合、鋼管軸芯方向への近接移動により両者を嵌合させる必要があるため、鋼管建込み用治具を移動可能に支持する必要がある。そのため、鋼管建込み用治具に支持部を設ける必要が生じるが、本発明のものだと、回転用金具に貫通孔を設けるだけの構成で、貫通孔に吊りワイヤー等を通したり、またはフック等を引っ掛けたりすることが可能となるから、別途支持部を設けることなく鋼管建込み用治具を移動可能に吊り支持することができる。
その結果、回転用金具に鋼管建込み用治具を吊り支持する際の吊込み用金具を兼ねさせることができるから、その分の部材点数を減らすことができ、別途支持部を設けるものに比して、取付けの手間及び部材コストを低減することができるようになった。
【0014】
本発明の第3の特徴構成は、図1〜3に例示するごとく、鋼管1の上端部に形成された継手に係合される継手は雌継手3であるところにある。
【0015】
本発明の第3の特徴構成によれば、本発明の第1又は2の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、雄継手の損傷を防止することができる。
つまり、例えば、従来のように鋼管の上端に雄継手を設けると共に、雄継手の下方部に回転用金具を突設させたものだと、回転力伝達用の回転用キャップを回転用金具に嵌合させようとした場合、雄継手が邪魔になって回転用金具に嵌合できなかったり、雄継手に回転用キャップが接触して雄継手を損傷してしまうおそれがあった。
また、雄継手が損傷した場合は、修理に時間がかかるだけでなく、損傷が激しい場合には鋼管自体を取り替える必要性を生じるため手間のかかるものであった。
ところが、本発明のものだと、鋼管建込み用治具の雌継手を嵌合させることによって、前記雄継手が外に露出しないように保護することができるから、前記回転用キャップが雄継手に接触して雄継手を損傷してしまうといったことを防止することができる。
その結果、雄継手の修理や鋼管自体の取り替えを行う必要性がなくなるため、鋼管の建込み及び回転による沈設施工の作業性を向上させることができるようになった。
【0016】
本発明の第4の特徴構成は、図6に例示するごとく、杭または矢板として設置される鋼管1の上端部に形成された継手に請求項1、2または3の鋼管建込み用治具14を嵌合させて取付け、次に回転用金具6を杭施工機の回転用キャップ18に嵌合させ、かつ回転用キャップ18で鋼管1を必要に応じて回転させながら地中に沈設するところにある。
【0017】
本発明の第4の特徴構成によれば、特に回転させながら杭または矢板として地中に設置される鋼管の沈設施工をきわめて経済的、かつ、効率的に行うことができる。
つまり、外周部に回転用金具を取付けた鋼管建込み用治具を使用する本発明のものだと、鋼管の上端部に形成された継手に前記鋼管建込み用治具を嵌合接続させるだけで鋼管の上部側面に回転用金具を設けたものと同じ構成にでき、かつ、施工後は前記鋼管建込み用治具の係合を解除して繰り返し使用することが可能なため、鋼管の沈設施工に際して、あらかじめ各鋼管の上部側面に溶接によって取付けておく必要があった極厚の回転用金具を鋼管自体に設ける必要がなくなり、その数を大幅に省略することができると共に、鋼管建込み用治具の雌継手を嵌合させることによって、鋼管の上端部に設けた雄継手が外に露出しないように保護できるから、回転用キャップを回転用金具に嵌合させようとしたときに、雄継手が邪魔になったり、接触して雄継手を損傷してしまうといったことを防止できる。
その結果、沈設施工の作業性を向上できると共に、大幅なコストダウンを図ることができる鋼管沈設方法を提供できるようになった。
【0018】
本発明の第5の特徴構成は、図6に例示するごとく、上端部に継手と吊込み用金具5がそれぞれ突設され、杭または矢板として設置される鋼管1の上端部に請求項1、2または3の鋼管建込み用治具14を双方の継手を嵌合させて取付け、次に吊込み用金具5を利用して鋼管建込み用治具14とともに鋼管1を吊り上げて建て込み、次に回転用金具6を杭施工機の回転用キャップ18に嵌合させ、次に回転用キャップ18で鋼管1を必要に応じて回転させながら地中に沈設するところにある。
【0019】
本発明の第5の特徴構成によれば、特に回転させながら杭または矢板として地中に設置される鋼管の建込みと沈設施工をきわめて経済的、かつ、効率的に行うことができる。
つまり、外周部に回転用金具を取付けた鋼管建込み用治具を使用する本発明のものだと、鋼管の上端部に形成された継手に前記鋼管建込み用治具を嵌合接続させるだけで鋼管の上部側面に回転用金具を設けたものと同じ構成にでき、かつ、施工後は前記鋼管建込み用治具を繰り返し使用することが可能なため、鋼管の沈設施工に際して、あらかじめ各鋼管の上部側面に溶接によって取付けておく必要があった極厚の回転用金具の係合接続を解除して鋼管自体に設ける必要がなくなり、その数を大幅に省略することができると共に、吊込み用金具を利用して鋼管建込み用治具とともに鋼管を吊り上げて建込むことができる。
鋼管建込み用治具の雌継手を鋼管の上端部に設けた雄継手に嵌合接続させることによって、雄継手が外に露出しないように保護できるから、回転用キャップを回転用金具に嵌合させようとしたときに、雄継手が邪魔になったり、接触して雄継手を損傷してしまうといったことを防止できる。
その結果、鋼管の建て込みと回転による沈設施工の作業性を向上できると共に、大幅なコストダウンを図ることができる鋼管沈設方法を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図5は、この発明に係る鋼管建込み用治具の一例を示し、図において、杭または矢板として使用される鋼管1と同径の筒体2の下端部に、機械式継手として雌雄嵌合式継手の一方の雌継手3が突設され、この雌継手3と接合される他方の雄継手4が鋼管1の上端部に吊込み用金具5とともに突設されている。
【0022】
また、筒体2の外周部には埋込み工法などで鋼管1を回転させながら地中に挿入する際、杭施工機からの回転力を受ける回転用金具6が突設されている。
【0023】
筒体2は鋼管1とほぼ同じ外径の鋼管から形成され、一方雌継手3は鋳造または鍛造、あるいは板厚の厚い鋼管を機械加工する等して形成され、かつ筒体2の下端部に一体的に溶接されている。なお、筒体2は雌継手3と同じように鋳造などで形成され、筒体2の下端部に雌継手3が直接形成されていてもよい。
【0024】
雌継手3の内側には少なくとも1個のキー溝7が形成され、キー溝7内にリングキー8が挿入されている。キー溝7は雌継手3の円周方向に所定長さ連続し、かつ雌継手3の円周方向に所定間隔おきに形成されているか、もしくは雌継手3の円周方向に環状(リング状)に連続して形成され、さらに何れの場合にも一段ないし複数段(例えば二段)に形成されている。
【0025】
リングキー8は、鋼管1を吊り込む際の荷重に充分耐えられる大きさ(断面および長さ)に形成され、例えば雌継手3の円周方向に沿って所定長さ連続し、かつキー溝7内に嵌め込めるような大きさの矩形断面形、凸形断面形あるいは凹形断面形に形成されている。
【0026】
さらに、雌継手3の外側からキー溝7内にセットボルト9がそれぞれめじ込まれ、セットボルト9の先端がリングキー8にそれぞれ連結されていることで、リングキー8はキー溝7内にそれぞれ保持されている。
【0027】
そして、セットボルト9を左右に適宜回すことにより、リングキー8は雌継手3の半径方向に移動して雄継手4のキー溝10と係合し、かつキー溝10との係合が解除されるようになっている。
【0028】
雄継手4は雌継手3と同様に鋳造または鍛造、あるいは板厚の厚い鋼管を機械加工する等して形成され、鋼管1の上端部に一体的に溶接されている。
【0029】
また、雄継手4の略上半分4aは雌継手3に挿入可能な外径に形成され、かつ上半分4aの外周部に前述したキー溝10が形成されている。キー溝10は雄継手4の円周方向に環状に連続して形成され、かつ雌継手3のキー溝7に合わせて一段ないし複数段(例えば二段)に形成されている。
【0030】
また、雌継手3の下端部と雄継手4の上端部に複数のキースリット11(本実施形態では8個)がそれぞれ形成されている。キースリット11は雌継手3と雄継手4の双方に跨がり、かつ雌継手3と雄継手4の円周方向に所定間隔おきに形成されている。(図15参照)
【0031】
そして、このキースリット11内に回転抑えキー12が双方のキースリット11に跨がってそれぞれ嵌め込まれていることで、雌継手3側から雄継手4側に、ひいては筒体2側から鋼管1側に回転力が伝えられるようになっている。
【0032】
なお、回転抑えキー12は固定ボルト13または簡単な溶接によってキースリット11内に固定されている。
【0033】
回転用金具6は筒体2の外周部に溶接することにより1組ないし複数組、突設されている。また、回転用金具6には鋼管建込み用治具(以下「治具14」という)を吊る際の吊込み用金具を兼ねるように、吊りワイヤー等を通すための貫通孔6aが形成されている。
【0034】
さらに、例えば図6に図示するように、治具14は鋼管1を横に仮置きした状態で鋼管1の上端部に吊って取付けられることから、回転用金具6の部分を吊り上げても治具14が水平状態を保持するように、回転用金具6は治具14の重心を通る線上に突設されている。
【0035】
吊込み用金具5は、鋼管1の中心を通る水平軸線上で互いに対向する2個の金具を1組とし、鋼管1上端の外周部に溶接などで固着することにより1組ないし複数組、突設されている。
【0036】
なお、上記説明では、治具14側と鋼管1側に機械式継手として雌雄嵌合式継手の雌継手3と雄継手4がそれぞれ設けられているが、この種の機械式継手に限られるものではなく、例えば雄ねじとねじ孔とからなる簡単な機械式継手が設けられていてもよい。
【0037】
図4と図5はリングキー8の他の例を示し、図4は特に、上下のリングキー8が一体に形成され、かつセットボルト9が兼用されている例を示し、また図5はリングキー8が一段に配置されている例を示したものである。
【0038】
このような構成において、次にこの発明に係る治具14を使った、杭などとして地中に設置される鋼管1の沈設方法を図6(a)〜(g)に基いて説明する。
【0039】
[1] あらかじめ、治具14のリングキー8はすべて、キー溝7内に挿入しておくものとし、また鋼管1は地上に略水平に横倒しにしておく。
【0040】
[2] 次に、鋼管1の雄継手4を有する側の近くに治具14をクレーン15等で吊る。そして、人力により双方の材軸が一致するように治具14の位置合わせを行い、そして治具14を鋼管1側に引き寄せて雄継手4の先端側半分4aを雌継手3と嵌合させる。
その際、クレーン15のフック15aは治具14の回転用金具6の孔6aに通した吊りワイヤー16に引っ掛けるが、回転用金具6が治具14の重心を通る位置に突設されていることで、治具14は吊られても水平状態を保持し、かつ治具14の軸芯を鋼管1の軸芯と一致するように回転させることが容易なため、治具14の位置合わせおよび雌金具3と雄金具4との嵌合をきわめて容易に行うことができる。なお、例えば図6(e)に図示するように、片方の回転用金具6のみで治具14を吊り込んでもよい。
【0041】
[3] 次に、セットボルト9を締め付けてリングキー8をキー溝7から突出させ、かつ先端側を雄継手4のキー溝10に係合する。また、雌継手3と雄継手4のキースリット11内に双方に跨がる回転抑えキー12をそれぞれ嵌め込み、固定ボルト13によってそれぞれ固定する。
なお、回転抑えキー12は簡単なボルト止めで固定してもよいが、治具14に溶接するほうが治具14と鋼管1との連結と切り離しを簡単に行うことができる。
以上の作業で治具14は鋼管1の上端部に完全に固定され、治具14の取付けは完了したことになる。
【0042】
[4] 次に、クレーン15のフック15aを鋼管1の上端部に突設された吊込み用金具5に取付けられた吊りワイヤー16に付け替える。
【0043】
[5] 次に、治具14とともに鋼管1をクレーン15で除々に吊り上げ、そして地上に立ち上げ、図示しない杭の施工機に接続する。
【0044】
[6] 次に、例えば図6(f)、図6(g)に図示するように、杭の施工機に設けられた回転力伝達用の回転用キャップ18に回転用金具6を嵌合させる。そして、杭の施工機を駆動させ、回転用キャップ18で鋼管1を回転させながら地中に沈設する。なお、図6(f)に図示する回転用キャップ18は、鋼管1を沈設するための孔を先に掘削し、その後、先行掘削した孔に鋼管1を沈設する場合に使用されるものである。
また、図6(g)に図示する回転用キャップ18は、鋼管1の沈設作業と鋼管1を沈設する孔の掘削作業を同時に行う場合に使用されるもので、このため回転用キャップ18の中央部分にアースオーガー等の接続ロッドを通すための開口部18aが設けられており、上部は回転用の図示しないオーガーモーターに接続されている。また、鋼管1を地中に矢板として沈設する場合には、特に鋼管1は回転させなくてもよい。
【0045】
[7] 次に、鋼管1の沈設施工が完了したら、必要に応じて固定ボルト13を弛めて回転抑えキー12を取り出し、またセットボルト9を弛めてリングキー8を雄継手4のキー溝10から抜き取り、リングキー8とキー溝10との係合を解除する。
【0046】
以上の作業で治具14は鋼管1の上端部から完全に解き放され、治具14の取外しは完了したことになる。よって、治具14を上に引き上げるだけで雌継手3と雄継手4との係合が外れ、治具14は鋼管1の上端部から離れる。
【0047】
以下、同様にして一つの治具14を使って2本目、3本目と、多くの鋼管1をきわめて効率的に建て込み、沈設することができる。
【0048】
なお、上記の施工方法において、上下の鋼管1どうしが雌雄嵌合式の機械式継手で接合される場合、上側の鋼管1には雌継手3が、下側の鋼管1には雄継手4がそれぞれ突設されているが、鋼管1が杭または矢板として地中に設置されるまでの間、継手を保護する必要から、例えば図7と図8に図示するように雌継手3には養生キャップ19が、雄継手4には養生キャップ20がそれぞれ取付けられている。
【0049】
養生キャップ19と20はそれぞれ、雌継手3と雄継手4と略同径のリング状に形成され、また雌継手3と雄継手4を挿入できるように断面略溝状に形成されている。
【0050】
さらに、養生キャップ19には内側から溝状部19a内に突出する固定ねじ21が、養生キャップ20には外側から溝状部20a内に突出する固定ネジ22がそれぞれ螺合されている。なお、固定ねじ21は養生キャップ19の内側に溶接された固定ナット23に、固定ネジ22は養生キャップ20の外側に溶接された固定ナット24にそれぞれ螺合されている。
【0051】
さらに、雌継手3と雄継手4に取付けられた養生キャップ19と20はそれぞれ、固定ねじ21と22を締め付け、その先端をキー溝7と10に突出させることで雌継手3と雄継手4に仮固定される。
【0052】
また、固定ねじ21と22を弛め、その先端をキー溝7と10から引き抜くことで、養生キャップ19と20はともに雌継手3と雄継手4から簡単に取り外すことができる。
【0053】
また、地中に沈設された鋼管1の上端部に次の鋼管を接合する場合には、例えば図9に図示するように、地中に沈設された鋼管1の上端部に受け台25を設置し、この受け台25の上に鋼管1の上端部に突設された吊込み用金具5を係止させることで、鋼管1の沈下を防止することができる。
【0054】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0055】
〈1〉 養生キャップは先の実施形態で説明した雌継手3と略同径の一体のリング状に形成すると共に、環状の溝部に雌継手3を挿入して、固定ねじ21を内側から締め付けて雌継手3に養生キャップを仮固定する構成のものに限るものではなく、例えば、図10に示すように、複数の分割リング27(本実施形態では3分割)により雌継手3と略同径のリング状に形成すると共に、分割リング27夫々に複数の固定ねじ取付け片27a(本実施形態では一つの分割リング27に対して2つ)を設け、分割リング27と固定ねじ取付け片27aとの間に雌継手3を挿入して、固定ねじ取付け片27aの外側に溶接された固定ナット23に螺合する固定ねじ21を外側から締め付けることにより、雌継手3に養生キャップ26を仮固定する構成のものであっても良い。
これだと、養生キャップ26が複数の分割リング27により形成されているため、一体のリング状の養生キャップに比して、一つ一つの重量を軽くできるので雌継手3への取付け作業が容易となるだけでなく、固定ねじ取付け片27aを部分的に設けたことにより、リングの外周全てに設けるものに比して養生キャップ26を形成する際の材料を減らすことができるため、製作コストを抑制できると共に、重量を軽量化することが可能となる。
さらに、固定ねじ21を外側から締め付ける構成にしてあるから、雌継手3内部にねじ頭が突出することがないと共に、養生キャップ26の内周面にテーパー面27bを形成してあることにより、掘削装置や攪拌装置等を備えた回転ロッド等を鋼管1内に挿通させる際に、ねじ頭に引っ掛かることが無くなるだけでなく、テーパー面27bによって案内することができるから挿通作業が容易となる。
〈2〉 養生キャップは先の実施形態で説明した雄継手4と略同径の一体のリング状に形成すると共に、環状の溝部に雄継手4を挿入して、固定ねじ22により養生キャップ20を雄継手4に仮固定する構成のものに限るものではなく、例えば、図11に示すように、複数の分割リング29(本実施形態では3分割)により雄継手4と略同径のリング状に形成すると共に、分割リング夫々に複数の係止片29a(本実施形態では一つの分割リング29に対して2つ)を設け、分割リング29と係止片29aとの間に雄継手4を挿入して、分割リング29の外側に溶接された固定ナット24に螺合する固定ねじ22を外側から締め付けることにより雄継手4に養生キャップ28を仮固定する構成のものであっても良い。
これだと、養生キャップ28が複数の分割リング29により形成されているため、一体のリング状の養生キャップに比して、一つ一つの重量を軽くできるので雄継手4への取付け作業が容易となるだけでなく、係止片29aを部分的に設けたことにより、リングの内周全てに設けるものに比して養生キャップ28を形成する際の材料を減らすことができるため、製作コストを抑制できると共に、重量を軽量化することが可能となる。
また、雄継手4と雌継手3を嵌合させたときの姿勢を安定させるために形成してある雄継手4における環状凹部4aに嵌入係合可能な凸部29bを夫々の分割リング29に設ける構成であっても良い。これだと、仮固定したときの養生キャップ28の姿勢を安定させることができる。
尚、固定ねじ22による締め付けは、外側から行うものに限らず、前記係止片29aに固定ナット24を溶接して、固定ねじ22を固定ナット24に螺合して内側から締め付けて雄継手4に養生キャップ28を仮固定するものであっても良い。
〈3〉 雌継手3に取付ける養生キャップ26におけるテーパー面27bは上記実施形態で説明した同厚の板体を内側に折り曲げてテーパー面27bを形成するものに限るものではなく、例えば、図12に示すように、養生キャップ26の内面に雌継手内周面3Aに接当する肉厚形状のテーパー面27bを形成したものであっても良い。
これだと、掘削装置や攪拌装置等を備えた回転ロッド等を鋼管1内に挿通させる際に、テーパー面27bと激しく接触してもテーパー面27bを変形し難くすることができる。
〈4〉 養生キャップ26の形状は上記実施形態で説明したものに限るものではなく、上記実施形態の構成に加えて例えば、図13に示すように、雄継手4と雌継手3を嵌合させたときの姿勢を安定させるために雌継手3における環状凹部3aに嵌入係合可能な凸部27cを設けたものであっても良い。これだと、固定ねじ21の締め付けだけでなく雌継手3における環状凹部3aに凸部27cを嵌入係合させることで、仮固定したときの養生キャップ26の姿勢をさらに安定させることが可能となる。
〈5〉 上記実施形態では、回転抑えキー12を双方のキースリット11に跨る状態に嵌め込んで、2本の固定ボルト13または簡単な溶接によってキースリット11内に固定して筒体2と鋼管1との相対回転を防止し、筒体2側から鋼管1側に回転力が伝えられるように構成した例について説明したが、固定ボルト13の数は2本のものに限らず、図14に示すように、1本の固定ボルト13で回転抑えキー12を取付ける構成のものであっても良い。
つまり、双方のキースリット11に跨る状態に回転抑えキー12を嵌め込んだときの隙間を少なくすることにより、回転抑止キー12自体が固定ボルト13を軸芯として揺動するのを防止でき、キースリット11との係合を外れないようにできるため、1本の固定ボルト13で筒体2と鋼管1との相対回転を防止することが可能となる。そして、固定ボルト13の本数を減らせる分、回転抑えキー12を取付ける際の取付け作業の作業性を向上させることができる。
〈6〉 上記実施形態では、筒体2の外周部に溶接して突設させた2個の回転用金具6夫々に貫通孔6aを形成し、この貫通孔6aに吊りワイヤー16を通して治具14を吊り上げる構成について説明したが、治具14を吊り上げる箇所は回転用金具6だけではなく、図15、図16に示すように筒体2の内周面に吊りワイヤー16を通すための貫通孔30aを形成した複数の吊り用金具30(本実施形態では3個)を溶接して突設させ、夫々の回転用金具6の貫通孔6aと吊り用金具30の貫通孔30aに吊りワイヤー16を通して治具14を吊り上げる構成のものであっても良い。
これだと、2個の回転用金具6だけで治具14を吊り上げた構成のものに比して、吊り上げた治具14の姿勢を安定させることができる。
つまり、2個の回転用金具6だけで治具14を吊り支持するものだと、2点支持となるため治具14の吊り姿勢が不安定となり易いが、上記構成のものだと、さらに治具14を吊り支持するための支持点が増えるため(本実施形態では5点支持となる)治具14の吊り姿勢を安定させることができる。(図18参照)
尚、吊り用金具30を筒体2の内周面に設ける数は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、その数は任意である。
〈7〉 また、治具14に、図15、図17、図18に示すような筒体外周面より出退自在な取手部31を設けたものであっても良い。
前記取手部31は、筒体2に形成した取手用の開口2AにU字状に折り曲げ形成した棒材32を挿入し、筒体外周面より棒材32を突出させたときに筒体の内周面に接当して棒材32が筒体2から外に抜け出さないようにその両端部にナット33等を溶接固定して形成されている。
そして、治具14を吊りワイヤー16で吊り上げて搬送する際や、治具14の雌継手3を鋼管1の雄継手4に嵌合させる際等に取手部31を筒体2内から引き出し(図17(a)参照)、取手部31に対する作業員の把持操作によって、治具14搬送時の搬送姿勢を安定させることができると共に、継手同士の位置合わせを行い易くなる。
また、必要でないときは取手部31を筒体2内に引退させる(図17(b)参照)ことで他の作業の邪魔になるのを防止することができる。
【0056】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】鋼管建込み用治具の一例を示す分解斜視図
【図2】鋼管建て込み用治具の一例を示し、(a)はその平面図、(b)はその一部切欠き断面正面図
【図3】雌継手の一部を示す縦断面図
【図4】雄継手の一部を示す縦断面図
【図5】鋼管建て込み用治具の他の例を示し、(a)はその平面図、(b)はその一部切欠き断面正面図
【図6】(a)〜(g)は鋼管建て込み用治具を使った、鋼管の沈設方法を示す工程図
【図7】雌継手の養生キャップを示し、(a)はその斜視図、(b)は一部切欠き側面図
【図8】雄継手の養生キャップを示し、(a)はその斜視図、(b)は一部切欠き側面図
【図9】上下の鋼管どうしを接合する方法を示し、(a)はその正面図、(b)は平面図
【図10】雌継手の養生キャップの他の例を示し、(a)はその斜視図、(b)は一部切欠き側面図
【図11】雄継手の養生キャップの他の例を示し、(a)はその斜視図、(b)は部分拡大断面図
【図12】雌継手の養生キャップの他の例を示す部分拡大断面図
【図13】雌継手の養生キャップの他の例を示す部分拡大断面図
【図14】鋼管建込み用治具の他の例を示す分解斜視図
【図15】鋼管建込み用治具の他の例を示す底面図
【図16】鋼管建込み用治具の他の例を示す縦断側面図
【図17】鋼管建込み用治具に設けた取手部を示し、(a)はその引退状態、(b)はその突出状態を示す部分拡大断面図
【図18】鋼管建込み用治具の他の例を示す側面図
【符号の説明】
【0058】
1 杭又は矢板として使用される鋼管
3 雌継手
5 吊込み用金具
6 回転用金具
6a 貫通孔
14 治具(鋼管建込み用治具)
18 回転用キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建込み用の鋼管の上端の継手と係合される継手を備えた筒状の治具本体を設け、前記治具本体を吊るための吊り用金具と、前記治具本体を筒軸芯周りに回転させるための回転用金具とを兼用化させて前記治具本体に一体に設けてある鋼管建込み用治具。
【請求項2】
前記鋼管と前記治具本体との継手間に介在して前記治具本体から前記鋼管に筒軸芯周りの回転力を伝達する回転抑えキーを嵌め込み自在なキースリットを、治具本体に形成してある請求項1に記載の鋼管建込み用治具。
【請求項3】
上端部に継手と吊込み用金具がそれぞれ突設され、杭または矢板として設置される鋼管の上端部に、請求項1又は2の鋼管建込み用治具の前記吊り用金具を吊って双方の継手を嵌合させて取付け、次に前記鋼管の吊込み用金具を利用して鋼管建込み用治具とともに鋼管を吊り上げて建て込み、次に回転用金具を杭施工機の回転用キャップに嵌合させ、次に回転用キャップで鋼管を必要に応じて回転させながら地中に沈設することを特徴とする鋼管沈設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−52399(P2009−52399A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285510(P2008−285510)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【分割の表示】特願2004−112921(P2004−112921)の分割
【原出願日】平成13年2月21日(2001.2.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】