鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法
【課題】鋼管杭の製造コストを低減するとともに施工性向上および工期短縮を図ることができる鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法を提供すること。
【解決手段】鋼管杭施工用治具10を介して下杭体3を地盤に回転貫入することができ、下杭体3の杭頭部に係合コマ等を溶接固定する必要がないことから、使用する鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して製造コストを低減させることができる。さらに、鋼管杭施工用治具10の治具雄部材13と上杭体の接続雄部材とが同一部材で構成され、これらと下杭体3の接続雌部材4とが機械的に接続可能に構成されているので、下杭体3に対する鋼管杭施工用治具10の仮固定および取り外しの作業と上杭体の接続作業とが迅速に実施でき、施工性を向上して工期の短縮を図ることができる。
【解決手段】鋼管杭施工用治具10を介して下杭体3を地盤に回転貫入することができ、下杭体3の杭頭部に係合コマ等を溶接固定する必要がないことから、使用する鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して製造コストを低減させることができる。さらに、鋼管杭施工用治具10の治具雄部材13と上杭体の接続雄部材とが同一部材で構成され、これらと下杭体3の接続雌部材4とが機械的に接続可能に構成されているので、下杭体3に対する鋼管杭施工用治具10の仮固定および取り外しの作業と上杭体の接続作業とが迅速に実施でき、施工性を向上して工期の短縮を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭の杭頭部に溶接固定した係合コマに杭打ち機の回転キャップ(カップリング)を係合させ、回転キャップの回転より鋼管杭を回転して地盤に貫入する鋼管杭の施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、鋼管杭としては、上杭および下杭あるいは上杭、中杭および下杭などのように上下に複数の杭体を備え、これらの杭体同士を連結装置で接続して構成されるものがある。このような上下の杭体同士を接続する連結装置として、下側の杭体の上端部に固定されるプラグ部材と、上側の杭体の下端部に固定されるソケット部材とを備え、プラグ部材をソケット部材に嵌入するとともに、これらの側方からキーを貫通させることで上下の杭体を接続する機械的な接続構造(機械式継手)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−154456号公報
【特許文献2】特開2006−37619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の鋼管杭の施工方法では、上杭および下杭などのように杭体が複数の場合において、各杭体の杭頭部にそれぞれ係合コマを溶接固定しなければならず、使用する鋼材量や溶接量、加工工数が増加してコスト高になるという不都合がある。さらに、係合コマが杭体の径方向外側に突出して固定されている場合には、下杭を地盤中に貫入する際に、係合コマによる貫入抵抗が大きくなったり、杭周辺の地盤が乱されたりという不都合も生じる。このような不都合を防止するためには、下杭の回転貫入作業の後にその係合コマを切断してから、接続した上杭の係合コマによる回転貫入を行うことも考えられるが、係合コマの切断作業中は貫入作業を停止しなければならず、施工時間が長期化してしまうという不都合が生じる。
一方、前記特許文献2に記載されたように機械的に杭体同士を接続する構造を採用した場合には、プラグ部材やソケット部材と併せて係合コマも溶接固定するために、この場合でも鋼材量や溶接量が増加してコスト高になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、鋼管杭の製造コストを低減するとともに施工性向上および工期短縮を図ることができる鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鋼管杭施工用治具は、少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を施工する際に用いる鋼管杭施工用治具であって、前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
以上の鋼管杭施工用治具によれば、下杭体の上端部に設けられて上杭体の第2接続部と接続可能な第1接続部を利用し、この第1接続部に治具接続部を治具連結材により連結して仮固定することで、治具本体の係合部に係合させた杭打ち機の回転キャップの回転を下杭体に伝達することができる。従って、当該鋼管杭施工用治具を介して下杭体を地盤に回転貫入することができ、下杭体の杭頭部に係合コマ等を溶接固定する必要がないことから、使用する鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して製造コストを低減させることができる。さらに、鋼管杭施工用治具の治具接続部と下杭体の第1接続部とを治具連結材で仮固定することで、この治具連結材を外すだけで鋼管杭施工用治具を下杭体から取り外すことができるとともに、鋼管杭施工用治具を取り外した後の第1接続部に上杭体の第2接続部を連結材により連結するだけで、下杭体と上杭体とを接続することができる。そして、鋼管杭施工用治具の治具接続部および上杭体の第2接続部を互いに同一形状とするとともに、これらを下杭体の第1接続部に対して機械的に接続可能に構成したことで、下杭体に対する鋼管杭施工用治具の仮固定および取り外しの作業と上杭体の接続作業とが迅速に実施でき、施工性を向上させることができて工期の短縮を図ることができる。また、第1接続部に治具接続部を仮固定した状態において、脱落防止手段によって治具連結材の脱落を防止することで、治具連結材をボルト等で強固に固定する必要がなくなり、治具連結材が容易に外せるようになることから、鋼管杭施工用治具を取り外す際の作業性を一層向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の鋼管杭施工用治具では、前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体から上方に突出する第1接続凸部を有し、前記第2接続部は、前記第1接続凸部を嵌挿させる第2接続凹部を有し、これらの第1接続凸部および第2接続凹部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、前記治具接続部は、前記第2接続凹部と同一形状で前記第1接続凸部を嵌挿可能な治具接続凹部を有して形成され、この治具接続凹部には、前記第1接続凸部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凹部の外周側に前記脱落防止手段が設けられた構成が採用できる。
このような構成によれば、治具接続凹部に第1接続凸部を嵌挿するように構成したことで、治具接続凹部の外側から径方向内側に向かって治具連結材を治具連結孔および連結孔に挿通し、これにより治具接続凹部と第1接続凸部とを連結するとともに、治具接続凹部の外周側に設けた脱落防止手段で治具連結材の脱落を防止することができる。従って、治具接続凹部の外周側つまり下杭体や鋼管杭施工用治具の外部から、治具連結材の連結作業や脱落防止作業、取り外し作業を容易に実施することができ、作業性をさらに向上させることができる。
【0009】
また、本発明の鋼管杭施工用治具では、前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体の上端部にて上方に開口する第1接続凹部を有し、前記第2接続部は、前記上杭体の下端部から下方に突出して前記第1接続凹部に嵌挿可能な第2接続凸部を有し、これらの第1接続凹部および第2接続凸部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、前記治具接続部は、前記第2接続凸部と同一形状で前記第1接続凹部に嵌挿可能な治具接続凸部を有して形成され、この治具接続凸部には、前記第1接続凹部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凸部の内周側に前記脱落防止手段が設けられた構成を採用してもよい。
このような構成によれば、下杭体の上端部の第1接続凹部に治具接続凸部を嵌挿するように構成したことで、治具接続凸部の内側から径方向外側に向かって治具連結材を治具連結孔および連結孔に挿通し、これにより治具接続凸部と第1接続凹部とを連結するとともに、治具接続凸部の内周側に設けた脱落防止手段で治具連結材の脱落を防止することができる。従って、治具接続凸部の外周側に脱落防止手段が突出しないため、脱落防止手段と杭打ち機の回転キャップとが干渉することがなく、この回転キャップと係合する係合部から治具接続凸部までの距離を短くすることができ、鋼管杭施工用治具の長さ寸法を短縮して小型化を図ることができる。このように鋼管杭施工用治具が小型化できることで、杭打ち機が施工可能な長さ(高さ)寸法に対して下杭体の長さ寸法を相対的に長く設定することができ、鋼管杭全長における杭体の段数が増加することを防止できる。特に、施工現場に高さ制限があり、杭打ち機の高さが制限される場合には、杭体の段数増加を防止することで、施工効率を格段に向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の鋼管杭施工用治具では、前記脱落防止手段は、前記治具連結材に設けられる被係止部と、前記治具接続部に設けられて前記被係止部を係止する係止部とを有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、治具連結材に設けた被係止部を治具接続部に設けた係止部で係止して治具連結材の脱落を防止することで、比較的簡単な構造で脱落防止手段を構成することができるとともに、鋼管杭施工用治具の仮固定作業および取り外し作業を迅速に行うことができ、施工時間の短縮化を促進させることができる。ここで、係止部および被係止部の構造としては、下杭体および鋼管杭施工用治具を吊り上げ搬送したり、回転キャップを係合部に係合させたり、下杭体を杭打ち機で回転貫入したりする際に、発生する振動や衝撃、傾き等によって外れない程度の係止力を有したものであればよく、その具体的な構造は、特に限定されない。
【0011】
一方、本発明の鋼管杭の施工方法は、少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備える鋼管杭施工用治具を用い、前記第1接続部に前記治具接続部を前記治具連結材で連結して前記下杭体に前記鋼管杭施工用治具を仮固定し、前記杭打ち機の回転キャップを前記係合部と係合させ、当該回転キャップの回転により前記鋼管杭施工用治具を介して前記下杭体を回転させて地盤に貫入し、前記下杭体を所定深さまで貫入した後に、前記治具連結材による連結を解除して前記鋼管杭施工用治具を前記第1接続部から取り外し、前記第1接続部に前記第2接続部を前記連結材で連結して前記下杭体に前記上杭体を接続することを特徴とする。
【0012】
以上の施工方法によれば、前述した鋼管杭施工用治具と同様に、鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して鋼管杭の製造コストを低減させることができるとともに、下杭体に対する鋼管杭施工用治具の仮固定および取り外しの作業や、下杭体と上杭体との接続作業などを迅速に実施することができ、施工性を向上させて工期の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明の鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法によれば、鋼管杭の製造コストを低減するとともに施工性向上および工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る鋼管杭の接続部分を示す斜視図である。
【図2】前記鋼管杭の接続部分を示す縦断面図である。
【図3】前記鋼管杭の接続部分を示す横断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る鋼管杭施工用治具を示す側面図である。
【図5】前記鋼管杭施工用治具を示す縦断面図である。
【図6】前記鋼管杭施工用治具における脱落防止手段を示す斜視図である。
【図7】図6と異なる脱落防止手段を示す斜視図である。
【図8】図6、7と異なる脱落防止手段を示す斜視図である。
【図9】(A)〜(D)は、鋼管杭の施工手順を説明する図である。
【図10】(A)〜(D)は、図9に続く鋼管杭の施工手順を説明する図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る鋼管杭施工用治具を示す側面図である。
【図12】前記鋼管杭施工用治具を示す縦断面図である。
【図13】前記鋼管杭施工用治具における脱落防止手段を示す斜視図である。
【図14】図13と異なる脱落防止手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る鋼管杭1の接続部分を示す斜視図である。図2は、鋼管杭1の接続部分を示す縦断面図である。図3は、鋼管杭1の接続部分を示す横断面図である。
図1〜図3において、鋼管杭1は、それぞれ円形鋼管で形成された上杭体2および下杭体3と、下杭体3の上端部に固定される第1接続部としての接続雌部材4と、上杭体2の下端部に固定される第2接続部としての接続雄部材5と、これらの接続雌部材4と接続雄部材5とを連結する連結材としての複数(本実施形態では、6つ)の連結ピン6と、これらの連結ピン6を接続雄部材5に固定する固定ねじ7とを有して構成されている。そして、下杭体3の先端部には、図示しない螺旋状の羽根が固定され、後述する杭打ち機Mにより回転されることで、鋼管杭1は、地盤Gに貫入されるようになっている。
【0017】
接続雌部材4は、全体円環状の短尺鋼管からなるとともに、下杭体3の上端部内周に裏当て板41を設けた状態で当該接続雌部材4および下杭体3の端縁同士を溶接することで、下杭体3に固定されており、この接続雌部材4の略全体によって、上方に開口した第1接続凹部としての嵌合凹部42が構成されている。そして、嵌合凹部42には、その周面を径方向に貫通して連結ピン6を挿通可能な複数(6つ)の連結孔43が形成されている。
【0018】
接続雄部材5は、全体円環状で段付き状の短尺鋼管からなるとともに、上杭体2の下端部内周に裏当て板51を設けた状態で当該接続雄部材5および上杭体2の端縁同士を溶接することで上杭体2に固定され、この上杭体2に溶接固定される厚肉のリブ状部52と、このリブ状部52よりも外周径が小さくかつ下方に突出する第2接続凸部としての嵌合凸部53とを有して形成されている。そして、嵌合凸部53には、その周面を径方向に貫通して連結ピン6を挿通可能な複数(6つ)の連結孔54が形成されている。さらに、嵌合凸部53の内周面には、連結孔54の内周側を塞ぐようにして環状の帯状部材55が溶接固定されており、この帯状部材55には、固定ねじ7と螺合する複数(6つ)のねじ穴56が形成されている。
【0019】
連結ピン6は、円柱状の鋼製部材であり、嵌合凹部42の板厚寸法と嵌合凸部53の板厚寸法とを合わせた程度の長さ寸法と、連結孔43,54に挿通可能な径寸法とを有して形成されている。そして、連結ピン6には、その円柱状の径中心を貫通して固定ねじ7を挿通可能な挿通孔61が形成されている。
【0020】
以上の鋼管杭1では、接続雌部材4の嵌合凹部42に接続雄部材5の嵌合凸部53を嵌挿し、これらの連結孔43,54に連結ピン6を挿入するとともに、連結ピン6の挿通孔61に挿通した固定ねじ7を帯状部材55のねじ穴56に螺合することで、接続雌部材4と接続雄部材5とが連結され、これにより上杭体2と下杭体3とが一体に接続されるようになっている。
【0021】
次に、第1実施形態における鋼管杭施工用治具について図4〜図7も参照して説明する。ここで、図4は、本発明の第1実施形態に係る鋼管杭施工用治具10を示す側面図である。図5は、鋼管杭施工用治具10を示す縦断面図である。
鋼管杭施工用治具10は、後述する杭打ち機Mの回転キャップCと係合するとともに、接続雌部材4に仮固定されて回転キャップCの回転を下杭体3に伝達するものであって、上杭体2の下端部および接続雄部材5と略同一形状を有して構成されている。この鋼管杭施工用治具10は、上杭体2および下杭体3と同径の円形鋼管からなる治具本体11と、この治具本体11の外周から突出して溶接固定されて回転キャップCと係合可能な係合部としての2つの係合コマ12と、治具本体11の下端部に固定される治具接続部としての治具雄部材13と、この治具雄部材13を接続雌部材4に連結して仮固定する治具連結材としての治具連結ピン14と、この治具連結ピン14の脱落防止手段としての係止機構16,17とを有して構成されている。
【0022】
治具雄部材13は、前記接続雄部材5と同一断面を有した(本実施形態では、同一部材の)段付き状の短尺鋼管からなり、接続雄部材5から帯状部材55を省略したものとなっている。すなわち、治具雄部材13は、治具本体11の下端部内周に裏当て板15を設けた状態で当該治具雄部材13および治具本体11の端縁同士を溶接することで治具本体11に固定され、この治具本体11に溶接固定される厚肉のリブ状部131と、このリブ状部131よりも外周径が小さくかつ下方に突出する治具接続凸部としての嵌合凸部132とを有して形成されている。そして、嵌合凸部132には、その周面を径方向に貫通して治具連結ピン14を挿通可能な複数(6つ)の治具連結孔133が形成されている。なお、鋼管杭施工用治具10は、治具本体11と治具雄部材13とを溶接接合で一体化したものに限らず、治具雄部材13のリブ状部131を上方に延長した形態を有して一体加工により成形されるものであってもよい。
【0023】
治具連結ピン14は、前記連結ピン6と同一形状を有した鋼製部材からなり、連結ピン6から挿通孔61を省略する一方、被係止部としての係止鋼棒141を溶接固定して構成されている。また、治具連結ピン14は、連結ピン6と異なり、治具雄部材13の内周側から治具連結孔133に挿通されるようになっている。そして、嵌合凸部132の内周面には、図6に示すように、略箱状に形成されて係止鋼棒141を受け入れ可能な係止部としての係止溝134が設けられ、この係止溝134の底部に形成された孔に外れ止めピン135が挿入可能になっている。
【0024】
このような治具連結ピン14を治具連結孔133に挿通した状態において、治具連結ピン14を回転させて係止鋼棒141の先端側を係止溝134に係止させることで、治具連結ピン14が治具連結孔133から抜け出ないようにできる。さらに、外れ止めピン135を係止溝134の底部に差し込むことで、外れ止めピン135に規制されて係止鋼棒141が係止溝134から外れないようにでき、これにより治具連結ピン14が治具連結孔133から脱落することが防止できるようになっている。すなわち、治具連結ピン14の脱落防止手段としての係止機構16は、係止溝134および外れ止めピン135と係止鋼棒141とによって構成されている。
【0025】
なお、治具連結ピン14の脱落防止手段である係止機構としては、図6に示すものの他に、図7および図8に示す係止機構17,18を用いてもよい。
図7において、係止機構17は、治具連結ピン14に固定された被係止部としての係止リング142と、嵌合凸部132の内周面に固定された係止部としての上下の係止ブラケット136と、上下の係止ブラケット136に渡るとともに係止リング142に挿通される係止部としての係止ピン137とを有して構成されている。この係止機構17では、治具連結ピン14を治具連結孔133に挿通してから、上側の係止ブラケット136、係止リング142および下側の係止ブラケット136に係止ピン137を挿通させることで、この係止ピン137の重みによって係止状態が維持され、治具連結ピン14が治具連結孔133から脱落することが防止できるようになっている。
【0026】
図8において、係止機構18は、治具連結ピン14に固定された被係止部としての係止鋼棒141と、嵌合凸部132の内周面に固定された係止部としての係止リング138とを有して構成されている。係止リング138は、治具連結孔133の外周に沿った円環状の部材であって、嵌合凸部132の内部側に開口して係止鋼棒141を挿通させる2つの挿通開口138Aと、挿通開口138Aに連続して係止リング138の周方向に延びる2つの係止溝部138Bとを有して形成されている。この係止機構18では、治具連結ピン14を治具連結孔133に挿通する際に、図8(A)に示すように、係止鋼棒141を挿通開口138Aに挿通させてから、図8(B)に示すように、治具連結ピン14を回転させて係止鋼棒141を係止溝部138Bに係止させることで、係止リング138に係止された治具連結ピン14が治具連結孔133から脱落することが防止できるようになっている。
【0027】
以上の鋼管杭施工用治具10は、接続雌部材4の嵌合凹部42に治具雄部材13の嵌合凸部132を嵌挿し、嵌合凸部132の内周側から治具連結孔133および連結孔43に治具連結ピン14を挿入するとともに、治具連結ピン14の係止鋼棒141を係止溝134に係止させるか、治具連結ピン14の係止リング142および係止ブラケット136に係止ピン137を挿通することで、接続雌部材4と治具雄部材13とが連結され、これにより下杭体3と鋼管杭施工用治具10とが仮固定されるようになっている。従って、回転キャップCを治具本体11に被せて係合コマ12に係合させるとともに、杭打ち機Mにより回転キャップCを回転することで、この回転が鋼管杭施工用治具10を介して下杭体3に伝達され、下杭体3先端の羽根が地盤Gにねじ込まれて下杭体3を地盤Gに貫入できるようになる。
【0028】
次に、鋼管杭1の施工方法について、図9および図10も参照して説明する。
図9(A)〜(D)および図10(A)〜(D)は、鋼管杭1の施工手順を説明する図である。
ここでは、上下二段の杭体である上杭体2と下杭体3とを連結して鋼管杭1を構成する場合について説明するが、三段以上の杭体で鋼管杭1を構成する場合でも、略同様の手順で施工することができる。
先ず、杭頭部に接続雌部材4を固定した下杭体3に対し、建設現場において、鋼管杭施工用治具10を接続雌部材4に連結して下杭体3に仮固定しておき、この状態の下杭体3を図9(A)に示すように、杭打ち機Mで吊り上げる。
【0029】
次に、図9(B)に示すように、鋼管杭施工用治具10に回転キャップCをセットし、図4のように係合コマ12に回転キャップCを係合させる。
次に、図9(C)に示すように、杭打ち機Mによって回転キャップCを回転させ、下杭体3先端の羽根を地盤Gにねじ込むことで下杭体3を地盤Gに貫入する。
そして、図9(D)に示すように、下杭体3の杭頭部が地表付近の作業員が作業可能な位置まで下がった状態において、回転キャップCを鋼管杭施工用治具10から外すとともに、下杭体3の杭頭部から鋼管杭施工用治具10を取り外す。
【0030】
次に、杭先端部に接続雄部材5を固定するとともに杭頭部に係合コマ(不図示)を固定した上杭体2を、図10(A)に示すように、杭打ち機Mによって吊り上げ、杭頭部に回転キャップCをセットして係合コマに係合させる。一方、図1〜図3に示すように、上杭体2の杭先端部の接続雄部材5を下杭体3の杭頭部の接続雌部材4に連結し、これによって上杭体2と下杭体3とを一体に接続する。
次に、図10(B)に示すように、杭打ち機Mによって回転キャップCを回転させ、下杭体3の羽根をさらに地盤Gにねじ込むことで一体化された上下の杭体2,3を地盤Gに貫入する。そして、上杭体2の杭頭部が地表付近まで下がった状態において、図10(C)に示すように、回転キャップCに延長具C1を接続し、上杭体2の杭頭部が地表面から所定の深さ位置になるまで上下の杭体2,3を地盤Gに貫入する。
その後、杭打ち機Mによって回転キャップCを引き上げ、上杭体2の上側に土を埋め戻して鋼管杭1の施工が完了する。
【0031】
なお、上杭体2と下杭体3との間に1本または複数本の中杭体を有して三段以上の杭体で構成される鋼管杭1においては、杭先端部に接続雄部材5を固定するとともに杭頭部に接続雌部材4を固定した中杭体を準備すればよい。この中杭体の接続雌部材4に鋼管杭施工用治具10を仮固定した状態で、中杭体を杭打ち機Mで吊り上げ、杭打ち機Mの回転キャップCを鋼管杭施工用治具10に係合させる。そして、中杭体の接続雄部材5を下杭体3や他の中杭体の杭頭部の接続雌部材4に連結して一体化し、杭打ち機Mから鋼管杭施工用治具10を介して中杭体および下杭体3を回転させて地盤Gに貫入し、鋼管杭施工用治具10を取り外した中杭体の接続雌部材4に上杭体2や他の中杭体の杭先端部の接続雄部材5を連結するような施工手順を採用すればよい。
【0032】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、鋼管杭施工用治具10を介して下杭体3や中杭体を地盤Gに回転貫入することができ、下杭体3や中杭体の杭頭部に係合コマ等を溶接固定する必要がないことから、使用する鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して製造コストを低減させることができる。さらに、鋼管杭施工用治具10の治具雄部材13と上杭体2の接続雄部材5とが同一部材で構成され、これらと下杭体3の接続雌部材4とが機械的に接続可能に構成されているので、下杭体3に対する鋼管杭施工用治具10の仮固定および取り外しの作業と上杭体2の接続作業とが迅速に実施でき、施工性を向上させることができて工期の短縮を図ることができる。
【0033】
(2)さらに、鋼管杭施工用治具10の治具連結ピン14が治具連結孔133および連結孔43に治具雄部材13の内側から挿入され、治具雄部材13の内周側に係止機構16,
17が設けられていることで、鋼管杭施工用治具10の外周側に係止機構16,17が突出しないため、係止機構16,17と杭打ち機Mの回転キャップCとの干渉を防止することができる。従って、回転キャップCと係合する係合コマ12から嵌合凸部132までの距離を短くすることができ、鋼管杭施工用治具10の長さ寸法を短縮して小型化を図ることができる。
【0034】
(3)さらに、治具連結ピン14の脱落を防止する手段として、係止溝134および外れ止めピン135と係止鋼棒141とによって構成された係止機構16を用いるか、または上下の係止ブラケット136と係止リング142と係止ピン137とによって構成された係止機構17を用いることで、鋼管杭施工用治具10の仮固定作業および取り外し作業を迅速に行うことができ、施工時間の短縮化を促進させることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図11は、本発明の第2実施形態に係る鋼管杭施工用治具20を示す側面図である。図12は、鋼管杭施工用治具20を示す縦断面図である。
本実施形態において、鋼管杭1は、上杭体2および下杭体3と、下杭体3の上端部に固定される第1接続部としての接続雄部材5と、上杭体2の下端部に固定される第2接続部としての接続雌部材4とを有して構成されている。すなわち、前記第1実施形態と比較して本実施形態では、上杭体2および下杭体3に対して、接続雌部材4と接続雄部材5とが上下逆転した状態で固定され、接続雄部材5の嵌合凸部53で第1接続凸部が構成され、接続雌部材4の嵌合凹部42で第2接続凹部が構成されている。なお、接続雌部材4と接続雄部材5との連結構造は、前記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0036】
本実施形態の鋼管杭施工用治具20は、杭打ち機Mの回転キャップCと係合するとともに、下杭体3の接続雄部材5に仮固定されて回転キャップCの回転を下杭体3に伝達するものであって、上杭体2の下端部および接続雌部材4と略同一形状を有して構成されている。この鋼管杭施工用治具20は、上杭体2および下杭体3と同径の円形鋼管からなる治具本体21と、この治具本体21の外周から突出して溶接固定されて回転キャップCと係合可能な係合部としての2つの係合コマ22と、治具本体21の下端部に固定される治具接続部としての治具雌部材23と、この治具雌部材23を接続雄部材5に連結して仮固定する治具連結材としての治具連結ピン24と、この治具連結ピン24の脱落防止手段としての係止機構26,27とを有して構成されている。
【0037】
治具雌部材23は、前記接続雌部材4と同一断面を有した(本実施形態では、同一部材の)短尺鋼管から構成されている。すなわち、治具雌部材23は、治具本体21の下端部内周に裏当て板25を設けた状態で当該治具雌部材23および治具本体21の端縁同士をに溶接することで治具本体21に固定され、この治具雌部材23の略全体によって、下方に開口した治具接続凹部としての嵌合凹部231が構成されている。そして、嵌合凹部231には、その周面を径方向に貫通して治具連結ピン24を挿通可能な複数(6つ)の治具連結孔232が形成されている。なお、鋼管杭施工用治具20は、治具本体21と治具雌部材23とを溶接接合で一体化したものに限らず、治具雌部材23を上方に延長した形態を有して一体加工により成形されるものであってもよい。
【0038】
治具連結ピン24は、前記連結ピン6および治具連結ピン14と同一形状を有した鋼製部材からなり、被係止部としての回転錠受け241を有して構成されている。この治具連結ピン24は、治具雌部材23の外周側から治具連結孔232に挿通されるようになっている。そして、嵌合凹部231の外周面には、図13に示すように、回転錠受け241と係合可能な係止部としての錠部材233が回動可能に設けられ、この錠部材233と回転錠受け241との係止によって治具連結ピン24の脱落が防止できるようになっている。
【0039】
なお、治具連結ピン24の脱落防止手段である係止機構としては、図13に示すものの他に、図14に示す係止機構27を用いてもよい。
図14において、係止機構27は、治具連結ピン14に固定された被係止部としての係止鋼棒242と、嵌合凹部231の外周面に固定されて係止鋼棒242を受け入れ可能な係止部としての係止鉤部234とを有して構成されている。この係止機構27では、治具連結ピン24を治具連結孔232に挿通してから、治具連結ピン24を回転させて係止鋼棒242の先端側を係止鉤部234に係止させることで、治具連結ピン24の脱落が防止できるようになっている。
【0040】
以上の鋼管杭施工用治具20は、接続雄部材5の嵌合凸部53に治具雌部材23の嵌合凹部231を嵌挿し、嵌合凹部231の外周側から治具連結孔232および連結孔54に治具連結ピン24を挿入するとともに、治具連結ピン24の回転錠受け241と錠部材233とを係合させるか、係止鋼棒242を係止鉤部234に係合させることで、接続雄部材5と治具雌部材23とが連結され、これにより下杭体3と鋼管杭施工用治具20とが仮固定されるようになっている。このような鋼管杭施工用治具20を用いた鋼管杭1の施工手順は、前記第1実施形態と略同様であり、下杭体3の接続雌部材4に仮固定した鋼管杭施工用治具20に杭打ち機Mの回転キャップCを係合させ、この鋼管杭施工用治具20を介して下杭体3を地盤Gに貫入するとともに、下杭体3の接続雌部材4と上杭体2の接続雌部材4とを連結して上下の杭体2,3を一体化する点が第1実施形態と相違するのみである。
【0041】
このような本実施形態によれば、前記(1)と略同様の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
(4)すなわち、鋼管杭施工用治具20の治具連結ピン24が治具連結孔232および連結孔54に治具雌部材23の外周側から挿入され、治具雌部材23の外周側に係止機構26,27が設けられていることで、下杭体3や鋼管杭施工用治具20の外部から、治具連結ピン24の連結作業や係止機構26,27による脱落防止作業、治具連結ピン24の取り外し作業を容易に実施することができ、作業性をさらに向上させることができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態において、鋼管杭1を構成する上下の杭体2,3は、第1および第2の接続部としての接続雌部材4および接続雄部材5の凹凸嵌合に加えて、接続雌部材4および接続雄部材5に連結材としての連結ピン6を挿通することによって接続される構造を採用したが、杭体同士の接続構造としては、前記実施形態のものに限られない。すなわち、第1および第2の接続部としては、互いに凹凸嵌合するものに限らず、互いに複数の歯を有して噛合するものであってもよく、互いにねじを有して螺合するものであってもよい。また、連結材としても、連結ピン6に限らず、第1および第2の接続部の両方またはいずれか一方に螺合するねじ等であってもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、脱落防止手段として、係止機構16,17,18,26,27を例示したが、脱落防止手段としては、前記実施形態に限定されるものではなく、下杭体3および鋼管杭施工用治具10,20を吊り上げ搬送したり、回転キャップCを係合コマ12に係合させたり、鋼管杭施工用治具10,20を介して下杭体3を地盤Gに貫入したりする際に、発生する振動や衝撃、傾き等によって外れない程度に連結材を係止できるものであればよく、その具体的な構造は、特に限定されない。例えば、脱落防止手段として、前記連結ピン6に挿通されて帯状部材55に螺合する固定ねじ7を用いてもよいが、この場合には、帯状部材55を予め治具雄部材13の内周面に固定しておく必要があったり、鋼管杭施工用治具の仮固定および取り外しに際して固定ねじ7を回転操作する必要があったりなど、前記実施形態の係止機構16,17,18,26,27ほどの効果が期待できなくなってしまう。これに対して、本発明における脱落防止手段では、係止機構16,17,18,26,27のように、治具接続部に設けた係止部により治具連結材に設けた被係止部を係止する構成を採用することで、鋼管杭施工用治具10の仮固定作業および取り外し作業が迅速に行うことができるという効果を得ることができる。
また、前記第1実施形態では、係止機構16,17,18を鋼管杭施工用治具10の内側に設け、前記第2実施形態では、係止機構26,27を鋼管杭施工用治具20の外側に設けたが、このような構成に限られない。すなわち、係止機構16,17,18と同様の脱落防止手段を鋼管杭施工用治具の外側に設けてもよく、また係止機構26,27と同様の脱落防止手段を鋼管杭施工用治具の内側に設けてもよい。
【0044】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1…鋼管杭、2…上杭体、3…下杭体、4…接続雌部材、5…接続雄部材、6…連結ピン(連結材)、10,20…鋼管杭施工用治具、11,21…治具本体、12,22…係合コマ(係合部)、13…治具雄部材(治具接続部)、14,24…治具連結ピン(治具連結材)、16,17,18,26,27…係止機構(脱落防止手段)、23…治具雌部材(治具接続部)、42…嵌合凹部(第1接続凹部、第2接続凹部)、43…連結孔、53…嵌合凸部(第2接続凸部、第1接続凸部)、54…連結孔、141,242…係止鋼棒(被係止部)、142…係止リング(被係止部)、132…嵌合凸部(治具接続凸部)、133,232…治具連結孔、134…係止溝(係止部)、137…係止ピン(係止部)、138…係止リング(係止部)、231…嵌合凹部(治具接続凹部)、233…錠部材(係止部)、234…係止鉤部(係止部)、241…回転錠受け(被係止部)、C…回転キャップ、G…地盤、M…杭打ち機。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭の杭頭部に溶接固定した係合コマに杭打ち機の回転キャップ(カップリング)を係合させ、回転キャップの回転より鋼管杭を回転して地盤に貫入する鋼管杭の施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、鋼管杭としては、上杭および下杭あるいは上杭、中杭および下杭などのように上下に複数の杭体を備え、これらの杭体同士を連結装置で接続して構成されるものがある。このような上下の杭体同士を接続する連結装置として、下側の杭体の上端部に固定されるプラグ部材と、上側の杭体の下端部に固定されるソケット部材とを備え、プラグ部材をソケット部材に嵌入するとともに、これらの側方からキーを貫通させることで上下の杭体を接続する機械的な接続構造(機械式継手)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−154456号公報
【特許文献2】特開2006−37619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の鋼管杭の施工方法では、上杭および下杭などのように杭体が複数の場合において、各杭体の杭頭部にそれぞれ係合コマを溶接固定しなければならず、使用する鋼材量や溶接量、加工工数が増加してコスト高になるという不都合がある。さらに、係合コマが杭体の径方向外側に突出して固定されている場合には、下杭を地盤中に貫入する際に、係合コマによる貫入抵抗が大きくなったり、杭周辺の地盤が乱されたりという不都合も生じる。このような不都合を防止するためには、下杭の回転貫入作業の後にその係合コマを切断してから、接続した上杭の係合コマによる回転貫入を行うことも考えられるが、係合コマの切断作業中は貫入作業を停止しなければならず、施工時間が長期化してしまうという不都合が生じる。
一方、前記特許文献2に記載されたように機械的に杭体同士を接続する構造を採用した場合には、プラグ部材やソケット部材と併せて係合コマも溶接固定するために、この場合でも鋼材量や溶接量が増加してコスト高になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、鋼管杭の製造コストを低減するとともに施工性向上および工期短縮を図ることができる鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鋼管杭施工用治具は、少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を施工する際に用いる鋼管杭施工用治具であって、前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
以上の鋼管杭施工用治具によれば、下杭体の上端部に設けられて上杭体の第2接続部と接続可能な第1接続部を利用し、この第1接続部に治具接続部を治具連結材により連結して仮固定することで、治具本体の係合部に係合させた杭打ち機の回転キャップの回転を下杭体に伝達することができる。従って、当該鋼管杭施工用治具を介して下杭体を地盤に回転貫入することができ、下杭体の杭頭部に係合コマ等を溶接固定する必要がないことから、使用する鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して製造コストを低減させることができる。さらに、鋼管杭施工用治具の治具接続部と下杭体の第1接続部とを治具連結材で仮固定することで、この治具連結材を外すだけで鋼管杭施工用治具を下杭体から取り外すことができるとともに、鋼管杭施工用治具を取り外した後の第1接続部に上杭体の第2接続部を連結材により連結するだけで、下杭体と上杭体とを接続することができる。そして、鋼管杭施工用治具の治具接続部および上杭体の第2接続部を互いに同一形状とするとともに、これらを下杭体の第1接続部に対して機械的に接続可能に構成したことで、下杭体に対する鋼管杭施工用治具の仮固定および取り外しの作業と上杭体の接続作業とが迅速に実施でき、施工性を向上させることができて工期の短縮を図ることができる。また、第1接続部に治具接続部を仮固定した状態において、脱落防止手段によって治具連結材の脱落を防止することで、治具連結材をボルト等で強固に固定する必要がなくなり、治具連結材が容易に外せるようになることから、鋼管杭施工用治具を取り外す際の作業性を一層向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の鋼管杭施工用治具では、前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体から上方に突出する第1接続凸部を有し、前記第2接続部は、前記第1接続凸部を嵌挿させる第2接続凹部を有し、これらの第1接続凸部および第2接続凹部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、前記治具接続部は、前記第2接続凹部と同一形状で前記第1接続凸部を嵌挿可能な治具接続凹部を有して形成され、この治具接続凹部には、前記第1接続凸部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凹部の外周側に前記脱落防止手段が設けられた構成が採用できる。
このような構成によれば、治具接続凹部に第1接続凸部を嵌挿するように構成したことで、治具接続凹部の外側から径方向内側に向かって治具連結材を治具連結孔および連結孔に挿通し、これにより治具接続凹部と第1接続凸部とを連結するとともに、治具接続凹部の外周側に設けた脱落防止手段で治具連結材の脱落を防止することができる。従って、治具接続凹部の外周側つまり下杭体や鋼管杭施工用治具の外部から、治具連結材の連結作業や脱落防止作業、取り外し作業を容易に実施することができ、作業性をさらに向上させることができる。
【0009】
また、本発明の鋼管杭施工用治具では、前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体の上端部にて上方に開口する第1接続凹部を有し、前記第2接続部は、前記上杭体の下端部から下方に突出して前記第1接続凹部に嵌挿可能な第2接続凸部を有し、これらの第1接続凹部および第2接続凸部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、前記治具接続部は、前記第2接続凸部と同一形状で前記第1接続凹部に嵌挿可能な治具接続凸部を有して形成され、この治具接続凸部には、前記第1接続凹部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凸部の内周側に前記脱落防止手段が設けられた構成を採用してもよい。
このような構成によれば、下杭体の上端部の第1接続凹部に治具接続凸部を嵌挿するように構成したことで、治具接続凸部の内側から径方向外側に向かって治具連結材を治具連結孔および連結孔に挿通し、これにより治具接続凸部と第1接続凹部とを連結するとともに、治具接続凸部の内周側に設けた脱落防止手段で治具連結材の脱落を防止することができる。従って、治具接続凸部の外周側に脱落防止手段が突出しないため、脱落防止手段と杭打ち機の回転キャップとが干渉することがなく、この回転キャップと係合する係合部から治具接続凸部までの距離を短くすることができ、鋼管杭施工用治具の長さ寸法を短縮して小型化を図ることができる。このように鋼管杭施工用治具が小型化できることで、杭打ち機が施工可能な長さ(高さ)寸法に対して下杭体の長さ寸法を相対的に長く設定することができ、鋼管杭全長における杭体の段数が増加することを防止できる。特に、施工現場に高さ制限があり、杭打ち機の高さが制限される場合には、杭体の段数増加を防止することで、施工効率を格段に向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の鋼管杭施工用治具では、前記脱落防止手段は、前記治具連結材に設けられる被係止部と、前記治具接続部に設けられて前記被係止部を係止する係止部とを有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、治具連結材に設けた被係止部を治具接続部に設けた係止部で係止して治具連結材の脱落を防止することで、比較的簡単な構造で脱落防止手段を構成することができるとともに、鋼管杭施工用治具の仮固定作業および取り外し作業を迅速に行うことができ、施工時間の短縮化を促進させることができる。ここで、係止部および被係止部の構造としては、下杭体および鋼管杭施工用治具を吊り上げ搬送したり、回転キャップを係合部に係合させたり、下杭体を杭打ち機で回転貫入したりする際に、発生する振動や衝撃、傾き等によって外れない程度の係止力を有したものであればよく、その具体的な構造は、特に限定されない。
【0011】
一方、本発明の鋼管杭の施工方法は、少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備える鋼管杭施工用治具を用い、前記第1接続部に前記治具接続部を前記治具連結材で連結して前記下杭体に前記鋼管杭施工用治具を仮固定し、前記杭打ち機の回転キャップを前記係合部と係合させ、当該回転キャップの回転により前記鋼管杭施工用治具を介して前記下杭体を回転させて地盤に貫入し、前記下杭体を所定深さまで貫入した後に、前記治具連結材による連結を解除して前記鋼管杭施工用治具を前記第1接続部から取り外し、前記第1接続部に前記第2接続部を前記連結材で連結して前記下杭体に前記上杭体を接続することを特徴とする。
【0012】
以上の施工方法によれば、前述した鋼管杭施工用治具と同様に、鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して鋼管杭の製造コストを低減させることができるとともに、下杭体に対する鋼管杭施工用治具の仮固定および取り外しの作業や、下杭体と上杭体との接続作業などを迅速に実施することができ、施工性を向上させて工期の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明の鋼管杭施工用治具および鋼管杭の施工方法によれば、鋼管杭の製造コストを低減するとともに施工性向上および工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る鋼管杭の接続部分を示す斜視図である。
【図2】前記鋼管杭の接続部分を示す縦断面図である。
【図3】前記鋼管杭の接続部分を示す横断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る鋼管杭施工用治具を示す側面図である。
【図5】前記鋼管杭施工用治具を示す縦断面図である。
【図6】前記鋼管杭施工用治具における脱落防止手段を示す斜視図である。
【図7】図6と異なる脱落防止手段を示す斜視図である。
【図8】図6、7と異なる脱落防止手段を示す斜視図である。
【図9】(A)〜(D)は、鋼管杭の施工手順を説明する図である。
【図10】(A)〜(D)は、図9に続く鋼管杭の施工手順を説明する図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る鋼管杭施工用治具を示す側面図である。
【図12】前記鋼管杭施工用治具を示す縦断面図である。
【図13】前記鋼管杭施工用治具における脱落防止手段を示す斜視図である。
【図14】図13と異なる脱落防止手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る鋼管杭1の接続部分を示す斜視図である。図2は、鋼管杭1の接続部分を示す縦断面図である。図3は、鋼管杭1の接続部分を示す横断面図である。
図1〜図3において、鋼管杭1は、それぞれ円形鋼管で形成された上杭体2および下杭体3と、下杭体3の上端部に固定される第1接続部としての接続雌部材4と、上杭体2の下端部に固定される第2接続部としての接続雄部材5と、これらの接続雌部材4と接続雄部材5とを連結する連結材としての複数(本実施形態では、6つ)の連結ピン6と、これらの連結ピン6を接続雄部材5に固定する固定ねじ7とを有して構成されている。そして、下杭体3の先端部には、図示しない螺旋状の羽根が固定され、後述する杭打ち機Mにより回転されることで、鋼管杭1は、地盤Gに貫入されるようになっている。
【0017】
接続雌部材4は、全体円環状の短尺鋼管からなるとともに、下杭体3の上端部内周に裏当て板41を設けた状態で当該接続雌部材4および下杭体3の端縁同士を溶接することで、下杭体3に固定されており、この接続雌部材4の略全体によって、上方に開口した第1接続凹部としての嵌合凹部42が構成されている。そして、嵌合凹部42には、その周面を径方向に貫通して連結ピン6を挿通可能な複数(6つ)の連結孔43が形成されている。
【0018】
接続雄部材5は、全体円環状で段付き状の短尺鋼管からなるとともに、上杭体2の下端部内周に裏当て板51を設けた状態で当該接続雄部材5および上杭体2の端縁同士を溶接することで上杭体2に固定され、この上杭体2に溶接固定される厚肉のリブ状部52と、このリブ状部52よりも外周径が小さくかつ下方に突出する第2接続凸部としての嵌合凸部53とを有して形成されている。そして、嵌合凸部53には、その周面を径方向に貫通して連結ピン6を挿通可能な複数(6つ)の連結孔54が形成されている。さらに、嵌合凸部53の内周面には、連結孔54の内周側を塞ぐようにして環状の帯状部材55が溶接固定されており、この帯状部材55には、固定ねじ7と螺合する複数(6つ)のねじ穴56が形成されている。
【0019】
連結ピン6は、円柱状の鋼製部材であり、嵌合凹部42の板厚寸法と嵌合凸部53の板厚寸法とを合わせた程度の長さ寸法と、連結孔43,54に挿通可能な径寸法とを有して形成されている。そして、連結ピン6には、その円柱状の径中心を貫通して固定ねじ7を挿通可能な挿通孔61が形成されている。
【0020】
以上の鋼管杭1では、接続雌部材4の嵌合凹部42に接続雄部材5の嵌合凸部53を嵌挿し、これらの連結孔43,54に連結ピン6を挿入するとともに、連結ピン6の挿通孔61に挿通した固定ねじ7を帯状部材55のねじ穴56に螺合することで、接続雌部材4と接続雄部材5とが連結され、これにより上杭体2と下杭体3とが一体に接続されるようになっている。
【0021】
次に、第1実施形態における鋼管杭施工用治具について図4〜図7も参照して説明する。ここで、図4は、本発明の第1実施形態に係る鋼管杭施工用治具10を示す側面図である。図5は、鋼管杭施工用治具10を示す縦断面図である。
鋼管杭施工用治具10は、後述する杭打ち機Mの回転キャップCと係合するとともに、接続雌部材4に仮固定されて回転キャップCの回転を下杭体3に伝達するものであって、上杭体2の下端部および接続雄部材5と略同一形状を有して構成されている。この鋼管杭施工用治具10は、上杭体2および下杭体3と同径の円形鋼管からなる治具本体11と、この治具本体11の外周から突出して溶接固定されて回転キャップCと係合可能な係合部としての2つの係合コマ12と、治具本体11の下端部に固定される治具接続部としての治具雄部材13と、この治具雄部材13を接続雌部材4に連結して仮固定する治具連結材としての治具連結ピン14と、この治具連結ピン14の脱落防止手段としての係止機構16,17とを有して構成されている。
【0022】
治具雄部材13は、前記接続雄部材5と同一断面を有した(本実施形態では、同一部材の)段付き状の短尺鋼管からなり、接続雄部材5から帯状部材55を省略したものとなっている。すなわち、治具雄部材13は、治具本体11の下端部内周に裏当て板15を設けた状態で当該治具雄部材13および治具本体11の端縁同士を溶接することで治具本体11に固定され、この治具本体11に溶接固定される厚肉のリブ状部131と、このリブ状部131よりも外周径が小さくかつ下方に突出する治具接続凸部としての嵌合凸部132とを有して形成されている。そして、嵌合凸部132には、その周面を径方向に貫通して治具連結ピン14を挿通可能な複数(6つ)の治具連結孔133が形成されている。なお、鋼管杭施工用治具10は、治具本体11と治具雄部材13とを溶接接合で一体化したものに限らず、治具雄部材13のリブ状部131を上方に延長した形態を有して一体加工により成形されるものであってもよい。
【0023】
治具連結ピン14は、前記連結ピン6と同一形状を有した鋼製部材からなり、連結ピン6から挿通孔61を省略する一方、被係止部としての係止鋼棒141を溶接固定して構成されている。また、治具連結ピン14は、連結ピン6と異なり、治具雄部材13の内周側から治具連結孔133に挿通されるようになっている。そして、嵌合凸部132の内周面には、図6に示すように、略箱状に形成されて係止鋼棒141を受け入れ可能な係止部としての係止溝134が設けられ、この係止溝134の底部に形成された孔に外れ止めピン135が挿入可能になっている。
【0024】
このような治具連結ピン14を治具連結孔133に挿通した状態において、治具連結ピン14を回転させて係止鋼棒141の先端側を係止溝134に係止させることで、治具連結ピン14が治具連結孔133から抜け出ないようにできる。さらに、外れ止めピン135を係止溝134の底部に差し込むことで、外れ止めピン135に規制されて係止鋼棒141が係止溝134から外れないようにでき、これにより治具連結ピン14が治具連結孔133から脱落することが防止できるようになっている。すなわち、治具連結ピン14の脱落防止手段としての係止機構16は、係止溝134および外れ止めピン135と係止鋼棒141とによって構成されている。
【0025】
なお、治具連結ピン14の脱落防止手段である係止機構としては、図6に示すものの他に、図7および図8に示す係止機構17,18を用いてもよい。
図7において、係止機構17は、治具連結ピン14に固定された被係止部としての係止リング142と、嵌合凸部132の内周面に固定された係止部としての上下の係止ブラケット136と、上下の係止ブラケット136に渡るとともに係止リング142に挿通される係止部としての係止ピン137とを有して構成されている。この係止機構17では、治具連結ピン14を治具連結孔133に挿通してから、上側の係止ブラケット136、係止リング142および下側の係止ブラケット136に係止ピン137を挿通させることで、この係止ピン137の重みによって係止状態が維持され、治具連結ピン14が治具連結孔133から脱落することが防止できるようになっている。
【0026】
図8において、係止機構18は、治具連結ピン14に固定された被係止部としての係止鋼棒141と、嵌合凸部132の内周面に固定された係止部としての係止リング138とを有して構成されている。係止リング138は、治具連結孔133の外周に沿った円環状の部材であって、嵌合凸部132の内部側に開口して係止鋼棒141を挿通させる2つの挿通開口138Aと、挿通開口138Aに連続して係止リング138の周方向に延びる2つの係止溝部138Bとを有して形成されている。この係止機構18では、治具連結ピン14を治具連結孔133に挿通する際に、図8(A)に示すように、係止鋼棒141を挿通開口138Aに挿通させてから、図8(B)に示すように、治具連結ピン14を回転させて係止鋼棒141を係止溝部138Bに係止させることで、係止リング138に係止された治具連結ピン14が治具連結孔133から脱落することが防止できるようになっている。
【0027】
以上の鋼管杭施工用治具10は、接続雌部材4の嵌合凹部42に治具雄部材13の嵌合凸部132を嵌挿し、嵌合凸部132の内周側から治具連結孔133および連結孔43に治具連結ピン14を挿入するとともに、治具連結ピン14の係止鋼棒141を係止溝134に係止させるか、治具連結ピン14の係止リング142および係止ブラケット136に係止ピン137を挿通することで、接続雌部材4と治具雄部材13とが連結され、これにより下杭体3と鋼管杭施工用治具10とが仮固定されるようになっている。従って、回転キャップCを治具本体11に被せて係合コマ12に係合させるとともに、杭打ち機Mにより回転キャップCを回転することで、この回転が鋼管杭施工用治具10を介して下杭体3に伝達され、下杭体3先端の羽根が地盤Gにねじ込まれて下杭体3を地盤Gに貫入できるようになる。
【0028】
次に、鋼管杭1の施工方法について、図9および図10も参照して説明する。
図9(A)〜(D)および図10(A)〜(D)は、鋼管杭1の施工手順を説明する図である。
ここでは、上下二段の杭体である上杭体2と下杭体3とを連結して鋼管杭1を構成する場合について説明するが、三段以上の杭体で鋼管杭1を構成する場合でも、略同様の手順で施工することができる。
先ず、杭頭部に接続雌部材4を固定した下杭体3に対し、建設現場において、鋼管杭施工用治具10を接続雌部材4に連結して下杭体3に仮固定しておき、この状態の下杭体3を図9(A)に示すように、杭打ち機Mで吊り上げる。
【0029】
次に、図9(B)に示すように、鋼管杭施工用治具10に回転キャップCをセットし、図4のように係合コマ12に回転キャップCを係合させる。
次に、図9(C)に示すように、杭打ち機Mによって回転キャップCを回転させ、下杭体3先端の羽根を地盤Gにねじ込むことで下杭体3を地盤Gに貫入する。
そして、図9(D)に示すように、下杭体3の杭頭部が地表付近の作業員が作業可能な位置まで下がった状態において、回転キャップCを鋼管杭施工用治具10から外すとともに、下杭体3の杭頭部から鋼管杭施工用治具10を取り外す。
【0030】
次に、杭先端部に接続雄部材5を固定するとともに杭頭部に係合コマ(不図示)を固定した上杭体2を、図10(A)に示すように、杭打ち機Mによって吊り上げ、杭頭部に回転キャップCをセットして係合コマに係合させる。一方、図1〜図3に示すように、上杭体2の杭先端部の接続雄部材5を下杭体3の杭頭部の接続雌部材4に連結し、これによって上杭体2と下杭体3とを一体に接続する。
次に、図10(B)に示すように、杭打ち機Mによって回転キャップCを回転させ、下杭体3の羽根をさらに地盤Gにねじ込むことで一体化された上下の杭体2,3を地盤Gに貫入する。そして、上杭体2の杭頭部が地表付近まで下がった状態において、図10(C)に示すように、回転キャップCに延長具C1を接続し、上杭体2の杭頭部が地表面から所定の深さ位置になるまで上下の杭体2,3を地盤Gに貫入する。
その後、杭打ち機Mによって回転キャップCを引き上げ、上杭体2の上側に土を埋め戻して鋼管杭1の施工が完了する。
【0031】
なお、上杭体2と下杭体3との間に1本または複数本の中杭体を有して三段以上の杭体で構成される鋼管杭1においては、杭先端部に接続雄部材5を固定するとともに杭頭部に接続雌部材4を固定した中杭体を準備すればよい。この中杭体の接続雌部材4に鋼管杭施工用治具10を仮固定した状態で、中杭体を杭打ち機Mで吊り上げ、杭打ち機Mの回転キャップCを鋼管杭施工用治具10に係合させる。そして、中杭体の接続雄部材5を下杭体3や他の中杭体の杭頭部の接続雌部材4に連結して一体化し、杭打ち機Mから鋼管杭施工用治具10を介して中杭体および下杭体3を回転させて地盤Gに貫入し、鋼管杭施工用治具10を取り外した中杭体の接続雌部材4に上杭体2や他の中杭体の杭先端部の接続雄部材5を連結するような施工手順を採用すればよい。
【0032】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、鋼管杭施工用治具10を介して下杭体3や中杭体を地盤Gに回転貫入することができ、下杭体3や中杭体の杭頭部に係合コマ等を溶接固定する必要がないことから、使用する鋼材量や溶接量、加工工数を抑制して製造コストを低減させることができる。さらに、鋼管杭施工用治具10の治具雄部材13と上杭体2の接続雄部材5とが同一部材で構成され、これらと下杭体3の接続雌部材4とが機械的に接続可能に構成されているので、下杭体3に対する鋼管杭施工用治具10の仮固定および取り外しの作業と上杭体2の接続作業とが迅速に実施でき、施工性を向上させることができて工期の短縮を図ることができる。
【0033】
(2)さらに、鋼管杭施工用治具10の治具連結ピン14が治具連結孔133および連結孔43に治具雄部材13の内側から挿入され、治具雄部材13の内周側に係止機構16,
17が設けられていることで、鋼管杭施工用治具10の外周側に係止機構16,17が突出しないため、係止機構16,17と杭打ち機Mの回転キャップCとの干渉を防止することができる。従って、回転キャップCと係合する係合コマ12から嵌合凸部132までの距離を短くすることができ、鋼管杭施工用治具10の長さ寸法を短縮して小型化を図ることができる。
【0034】
(3)さらに、治具連結ピン14の脱落を防止する手段として、係止溝134および外れ止めピン135と係止鋼棒141とによって構成された係止機構16を用いるか、または上下の係止ブラケット136と係止リング142と係止ピン137とによって構成された係止機構17を用いることで、鋼管杭施工用治具10の仮固定作業および取り外し作業を迅速に行うことができ、施工時間の短縮化を促進させることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図11は、本発明の第2実施形態に係る鋼管杭施工用治具20を示す側面図である。図12は、鋼管杭施工用治具20を示す縦断面図である。
本実施形態において、鋼管杭1は、上杭体2および下杭体3と、下杭体3の上端部に固定される第1接続部としての接続雄部材5と、上杭体2の下端部に固定される第2接続部としての接続雌部材4とを有して構成されている。すなわち、前記第1実施形態と比較して本実施形態では、上杭体2および下杭体3に対して、接続雌部材4と接続雄部材5とが上下逆転した状態で固定され、接続雄部材5の嵌合凸部53で第1接続凸部が構成され、接続雌部材4の嵌合凹部42で第2接続凹部が構成されている。なお、接続雌部材4と接続雄部材5との連結構造は、前記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0036】
本実施形態の鋼管杭施工用治具20は、杭打ち機Mの回転キャップCと係合するとともに、下杭体3の接続雄部材5に仮固定されて回転キャップCの回転を下杭体3に伝達するものであって、上杭体2の下端部および接続雌部材4と略同一形状を有して構成されている。この鋼管杭施工用治具20は、上杭体2および下杭体3と同径の円形鋼管からなる治具本体21と、この治具本体21の外周から突出して溶接固定されて回転キャップCと係合可能な係合部としての2つの係合コマ22と、治具本体21の下端部に固定される治具接続部としての治具雌部材23と、この治具雌部材23を接続雄部材5に連結して仮固定する治具連結材としての治具連結ピン24と、この治具連結ピン24の脱落防止手段としての係止機構26,27とを有して構成されている。
【0037】
治具雌部材23は、前記接続雌部材4と同一断面を有した(本実施形態では、同一部材の)短尺鋼管から構成されている。すなわち、治具雌部材23は、治具本体21の下端部内周に裏当て板25を設けた状態で当該治具雌部材23および治具本体21の端縁同士をに溶接することで治具本体21に固定され、この治具雌部材23の略全体によって、下方に開口した治具接続凹部としての嵌合凹部231が構成されている。そして、嵌合凹部231には、その周面を径方向に貫通して治具連結ピン24を挿通可能な複数(6つ)の治具連結孔232が形成されている。なお、鋼管杭施工用治具20は、治具本体21と治具雌部材23とを溶接接合で一体化したものに限らず、治具雌部材23を上方に延長した形態を有して一体加工により成形されるものであってもよい。
【0038】
治具連結ピン24は、前記連結ピン6および治具連結ピン14と同一形状を有した鋼製部材からなり、被係止部としての回転錠受け241を有して構成されている。この治具連結ピン24は、治具雌部材23の外周側から治具連結孔232に挿通されるようになっている。そして、嵌合凹部231の外周面には、図13に示すように、回転錠受け241と係合可能な係止部としての錠部材233が回動可能に設けられ、この錠部材233と回転錠受け241との係止によって治具連結ピン24の脱落が防止できるようになっている。
【0039】
なお、治具連結ピン24の脱落防止手段である係止機構としては、図13に示すものの他に、図14に示す係止機構27を用いてもよい。
図14において、係止機構27は、治具連結ピン14に固定された被係止部としての係止鋼棒242と、嵌合凹部231の外周面に固定されて係止鋼棒242を受け入れ可能な係止部としての係止鉤部234とを有して構成されている。この係止機構27では、治具連結ピン24を治具連結孔232に挿通してから、治具連結ピン24を回転させて係止鋼棒242の先端側を係止鉤部234に係止させることで、治具連結ピン24の脱落が防止できるようになっている。
【0040】
以上の鋼管杭施工用治具20は、接続雄部材5の嵌合凸部53に治具雌部材23の嵌合凹部231を嵌挿し、嵌合凹部231の外周側から治具連結孔232および連結孔54に治具連結ピン24を挿入するとともに、治具連結ピン24の回転錠受け241と錠部材233とを係合させるか、係止鋼棒242を係止鉤部234に係合させることで、接続雄部材5と治具雌部材23とが連結され、これにより下杭体3と鋼管杭施工用治具20とが仮固定されるようになっている。このような鋼管杭施工用治具20を用いた鋼管杭1の施工手順は、前記第1実施形態と略同様であり、下杭体3の接続雌部材4に仮固定した鋼管杭施工用治具20に杭打ち機Mの回転キャップCを係合させ、この鋼管杭施工用治具20を介して下杭体3を地盤Gに貫入するとともに、下杭体3の接続雌部材4と上杭体2の接続雌部材4とを連結して上下の杭体2,3を一体化する点が第1実施形態と相違するのみである。
【0041】
このような本実施形態によれば、前記(1)と略同様の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
(4)すなわち、鋼管杭施工用治具20の治具連結ピン24が治具連結孔232および連結孔54に治具雌部材23の外周側から挿入され、治具雌部材23の外周側に係止機構26,27が設けられていることで、下杭体3や鋼管杭施工用治具20の外部から、治具連結ピン24の連結作業や係止機構26,27による脱落防止作業、治具連結ピン24の取り外し作業を容易に実施することができ、作業性をさらに向上させることができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態において、鋼管杭1を構成する上下の杭体2,3は、第1および第2の接続部としての接続雌部材4および接続雄部材5の凹凸嵌合に加えて、接続雌部材4および接続雄部材5に連結材としての連結ピン6を挿通することによって接続される構造を採用したが、杭体同士の接続構造としては、前記実施形態のものに限られない。すなわち、第1および第2の接続部としては、互いに凹凸嵌合するものに限らず、互いに複数の歯を有して噛合するものであってもよく、互いにねじを有して螺合するものであってもよい。また、連結材としても、連結ピン6に限らず、第1および第2の接続部の両方またはいずれか一方に螺合するねじ等であってもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、脱落防止手段として、係止機構16,17,18,26,27を例示したが、脱落防止手段としては、前記実施形態に限定されるものではなく、下杭体3および鋼管杭施工用治具10,20を吊り上げ搬送したり、回転キャップCを係合コマ12に係合させたり、鋼管杭施工用治具10,20を介して下杭体3を地盤Gに貫入したりする際に、発生する振動や衝撃、傾き等によって外れない程度に連結材を係止できるものであればよく、その具体的な構造は、特に限定されない。例えば、脱落防止手段として、前記連結ピン6に挿通されて帯状部材55に螺合する固定ねじ7を用いてもよいが、この場合には、帯状部材55を予め治具雄部材13の内周面に固定しておく必要があったり、鋼管杭施工用治具の仮固定および取り外しに際して固定ねじ7を回転操作する必要があったりなど、前記実施形態の係止機構16,17,18,26,27ほどの効果が期待できなくなってしまう。これに対して、本発明における脱落防止手段では、係止機構16,17,18,26,27のように、治具接続部に設けた係止部により治具連結材に設けた被係止部を係止する構成を採用することで、鋼管杭施工用治具10の仮固定作業および取り外し作業が迅速に行うことができるという効果を得ることができる。
また、前記第1実施形態では、係止機構16,17,18を鋼管杭施工用治具10の内側に設け、前記第2実施形態では、係止機構26,27を鋼管杭施工用治具20の外側に設けたが、このような構成に限られない。すなわち、係止機構16,17,18と同様の脱落防止手段を鋼管杭施工用治具の外側に設けてもよく、また係止機構26,27と同様の脱落防止手段を鋼管杭施工用治具の内側に設けてもよい。
【0044】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1…鋼管杭、2…上杭体、3…下杭体、4…接続雌部材、5…接続雄部材、6…連結ピン(連結材)、10,20…鋼管杭施工用治具、11,21…治具本体、12,22…係合コマ(係合部)、13…治具雄部材(治具接続部)、14,24…治具連結ピン(治具連結材)、16,17,18,26,27…係止機構(脱落防止手段)、23…治具雌部材(治具接続部)、42…嵌合凹部(第1接続凹部、第2接続凹部)、43…連結孔、53…嵌合凸部(第2接続凸部、第1接続凸部)、54…連結孔、141,242…係止鋼棒(被係止部)、142…係止リング(被係止部)、132…嵌合凸部(治具接続凸部)、133,232…治具連結孔、134…係止溝(係止部)、137…係止ピン(係止部)、138…係止リング(係止部)、231…嵌合凹部(治具接続凹部)、233…錠部材(係止部)、234…係止鉤部(係止部)、241…回転錠受け(被係止部)、C…回転キャップ、G…地盤、M…杭打ち機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を施工する際に用いる鋼管杭施工用治具であって、
前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、
前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、
前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、
前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備えることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管杭施工用治具において、
前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体から上方に突出する第1接続凸部を有し、前記第2接続部は、前記第1接続凸部を嵌挿させる第2接続凹部を有し、これらの第1接続凸部および第2接続凹部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、
前記治具接続部は、前記第2接続凹部と同一形状で前記第1接続凸部を嵌挿可能な治具接続凹部を有して形成され、この治具接続凹部には、前記第1接続凸部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凹部の外周側に前記脱落防止手段が設けられていることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項3】
請求項1に記載の鋼管杭施工用治具において、
前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体の上端部にて上方に開口する第1接続凹部を有し、前記第2接続部は、前記上杭体の下端部から下方に突出して前記第1接続凹部に嵌挿可能な第2接続凸部を有し、これらの第1接続凹部および第2接続凸部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、
前記治具接続部は、前記第2接続凸部と同一形状で前記第1接続凹部に嵌挿可能な治具接続凸部を有して形成され、この治具接続凸部には、前記第1接続凹部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凸部の内周側に前記脱落防止手段が設けられていることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼管杭施工用治具において、
前記脱落防止手段は、前記治具連結材に設けられる被係止部と、前記治具接続部に設けられて前記被係止部を係止する係止部とを有して構成されていることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項5】
少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、
前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備える鋼管杭施工用治具を用い、
前記第1接続部に前記治具接続部を前記治具連結材で連結して前記下杭体に前記鋼管杭施工用治具を仮固定し、
前記杭打ち機の回転キャップを前記係合部と係合させ、当該回転キャップの回転により前記鋼管杭施工用治具を介して前記下杭体を回転させて地盤に貫入し、
前記下杭体を所定深さまで貫入した後に、前記治具連結材による連結を解除して前記鋼管杭施工用治具を前記第1接続部から取り外し、
前記第1接続部に前記第2接続部を前記連結材で連結して前記下杭体に前記上杭体を接続することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項1】
少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を施工する際に用いる鋼管杭施工用治具であって、
前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、
前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、
前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、
前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備えることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管杭施工用治具において、
前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体から上方に突出する第1接続凸部を有し、前記第2接続部は、前記第1接続凸部を嵌挿させる第2接続凹部を有し、これらの第1接続凸部および第2接続凹部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、
前記治具接続部は、前記第2接続凹部と同一形状で前記第1接続凸部を嵌挿可能な治具接続凹部を有して形成され、この治具接続凹部には、前記第1接続凸部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凹部の外周側に前記脱落防止手段が設けられていることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項3】
請求項1に記載の鋼管杭施工用治具において、
前記鋼管杭の第1接続部は、前記下杭体の上端部にて上方に開口する第1接続凹部を有し、前記第2接続部は、前記上杭体の下端部から下方に突出して前記第1接続凹部に嵌挿可能な第2接続凸部を有し、これらの第1接続凹部および第2接続凸部の各々には、前記連結材を側方から径方向に挿通可能な連結孔が形成されており、
前記治具接続部は、前記第2接続凸部と同一形状で前記第1接続凹部に嵌挿可能な治具接続凸部を有して形成され、この治具接続凸部には、前記第1接続凹部の連結孔と連続して前記治具連結材を挿通可能な治具連結孔が形成され、当該治具接続凸部の内周側に前記脱落防止手段が設けられていることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼管杭施工用治具において、
前記脱落防止手段は、前記治具連結材に設けられる被係止部と、前記治具接続部に設けられて前記被係止部を係止する係止部とを有して構成されていることを特徴とする鋼管杭施工用治具。
【請求項5】
少なくとも上下二段の杭体と、これら上下の杭体のうち下杭体の上端部に設けられる第1接続部と、上杭体の下端部に設けられる第2接続部と、これら第1および第2の接続部を互いに連結する連結材と、を備える鋼管杭を地盤に貫入する鋼管杭の施工方法であって、
前記杭体を地盤に回転貫入する杭打ち機の回転キャップと係合可能な係合部を有した治具本体と、前記治具本体に一体に設けられ前記第2接続部と同一形状を有する治具接続部と、前記治具接続部を前記第1接続部に連結して仮固定する治具連結材と、前記仮固定した状態の治具連結材の脱落を防止する脱落防止手段とを備える鋼管杭施工用治具を用い、
前記第1接続部に前記治具接続部を前記治具連結材で連結して前記下杭体に前記鋼管杭施工用治具を仮固定し、
前記杭打ち機の回転キャップを前記係合部と係合させ、当該回転キャップの回転により前記鋼管杭施工用治具を介して前記下杭体を回転させて地盤に貫入し、
前記下杭体を所定深さまで貫入した後に、前記治具連結材による連結を解除して前記鋼管杭施工用治具を前記第1接続部から取り外し、
前記第1接続部に前記第2接続部を前記連結材で連結して前記下杭体に前記上杭体を接続することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−138687(P2010−138687A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132174(P2009−132174)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
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