説明

錠制御装置

【課題】不要なID情報の消去をハードウエア的に保証することにより利用者に安心感を与えることのできる錠制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】工事業者用コードおよび居住者用コードの2種類の認証コードを分別管理して格納するコード記憶部1と、
認証コード取得部2から取得した認証対象コードと前記コード記憶部1内の認証コードとの一致を条件に認証成立信号を出力する認証部3と、
認証部3からの認証成立信号の出力を条件に電気錠4のアクチュエータに錠操作信号を出力する錠駆動部5と、
所定条件充足時にコード記憶部1に認証コードを登録する登録部6と、
登録部6における居住者用コードの登録に際し、登録済み全工事業者用コードを強制消去する登録制御部7とを有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザIDに加えて工事業者ID、管理者用IDを設定し、運用状態によって使い分けるようにした錠制御装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において錠制御装置は、工事業者、および管理者用IDを格納する管理用ID記憶部と、ユーザIDを格納する居住者用ID記憶部とを有して構成される。
【0003】
管理用ID記憶部内のIDは、居住者用ID記憶部のID格納がないことを条件に認証に使用され、居住者が変わった場合、居住者用IDを消去するだけで、改めて管理用IDを設定することなく引き続き従前の管理用IDを使用した施解錠操作が可能になる。
【特許文献1】特開2003-3708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例において、居住者用IDの消去を条件とするものの、施解錠操作が可能なIDが装置内部に設定されたままであることは、居住者に不安を与えるという欠点がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、不要なID情報の消去をハードウエア的に保証することにより利用者に安心感を与えることのできる錠制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記目的は、
工事業者用コードおよび居住者用コードの2種類の認証コードを分別管理して格納するコード記憶部1と、
認証コード取得部2から取得した認証対象コードと前記コード記憶部1内の認証コードとの一致を条件に認証成立信号を出力する認証部3と、
認証部3からの認証成立信号の出力を条件に電気錠4のアクチュエータに錠操作信号を出力する錠駆動部5と、
所定条件充足時にコード記憶部1に認証コードを登録する登録部6と、
登録部6における居住者用コードの登録に際し、工事業者用コードを強制消去する登録制御部7と、
を有する錠制御装置を提供することにより達成される。
【0007】
錠制御装置は、認証コード取得部2から取得した認証対象コードの認証部3における認証成立を条件に電気錠4を操作するように構成され、認証対象コードに対する認証にはコード記憶部1内に記憶された認証コードが使用される。認証コード取得部2は、生体認証装置、利用者が所持する携帯器が発信するID信号の受信装置、暗証番号入力装置、あるいはRF-IDの読取装置として構成することができる。
【0008】
コード記憶部1への認証コードの格納は登録部6において行われ、登録された認証コードは、新築時の家屋の引き渡し前に内装業者等の工事業者により使用される工事業者用コードと、引き渡し後に居住者により使用される居住者用コードとに分けて管理される。登録制御部7は、登録対象の認証コードのコード種を監視し、当該認証コードが居住者用コードである場合には、工事業者用コードを強制消去し、2種の認証コードの併存をハードウエア的に規制する。
【0009】
したがってこの発明において、例えば施主に家屋が引き渡され、居住者が施解錠制御のために居住者用コードを登録すると、何等の消去作業を要することなく自動的に工事業者用コードが消去され、以後、工事業者用コードによる錠操作が不可能となるために、利用者に安心感を与えることができる。
【0010】
また、錠制御装置にコード記憶部1に記憶されている認証コード種に対応した表示を行うコード種別表示部8を設けると、居住者が目視で登録状態を確認できるために、より安心感を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不要なID情報の消去をハードウエア的に保証することができるために、利用者に安心感を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、錠制御装置は、ドアの室外側壁面等に設置される入力装置9と、ドア内、あるいは室内に設置されるコントローラ10とを有し、入力装置9から取得した認証対象コードをコントローラ10で認証し、認証成立時に電気錠4を駆動するように構成される。
【0013】
なお、図1においては、錠制御装置を各々異なった装置筺体に収容されるコントローラ10と入力装置9に分離する場合が示されているが、双方を同一の装置筺体に収容したり、あるいはこれらをさらに分割する等、適宜の変形が可能である。
【0014】
錠制御装置の運用は、登録用、工事業者用、および居住者用として区別された3種類の非接触ICカード(IDカード11)を使用して行われ、認証対象コードには当該IDカード11に設定された固有のIDが使用される。これらIDは、入力装置9内の制御部(CPU9a)に接続された認証コード取得部2としての読取部により読み取られ、通信部9bを介してコントローラ10に出力される。
【0015】
また、入力装置9には後述するコード記憶部1に記憶されているコード種別を表示するためのコード種別表示部8と、施解錠状態を表示するための施解錠状態表示部12、動作確認信号音を発呼するためのブザー13、およびこのブザーを駆動するブザー出力回路14を有する。コード種別表示部8はLED出力回路15により点滅制御される赤色LED8aと緑色LED8bとを図外のプリント基板に接近して実装し、単一の導光部材、あるいはレンズを通して装置筐体外から目視することができるように配置され、外部には、いずれか一方のみを点灯した赤色、緑色、および双方を点灯した黄色が表示される。
【0016】
また、施解錠状態表示部12は、装置筐体に表示された解錠マーク、あるいは施錠マークに各々近接して配置される解錠表示LED12aと施錠表示LED12bからなり、電気錠4の施解錠状態に対応していずれか一方が排他的に点灯される。
【0017】
一方、コントローラ10は、バスライン10aを介して制御部(CPU10b)に接続され、該CPU10bにより動作が制御される認証部3とコード記憶部1とを有する。コード記憶部1には、居住者用コード、工事業者用コード、および登録用コードが種別を特定することができるように登録される。
【0018】
認証部3は、通信部10cを経由して入力装置9から取得した認証対象コードをコード記憶部1内のコードと比較し、一致する場合にはCPU10bに認証成立信号を出力し、当該信号を受領したCPU10bは登録カードに対する認証成立である場合には登録部6を起動し、それ以外の場合には錠駆動部5に駆動信号をセットする。錠駆動部5への駆動信号のセットによって電気錠4の図外のアクチュエータに駆動電力が供給され、所望の施解錠操作が行われる。
【0019】
登録部6は、上記認証部3での登録カードの認証を条件に起動され、コード記憶部1への新たなIDカード11の登録を行う。IDカード11の登録は、登録モード下で登録対象カードを読取部2に翳すことにより行われる。
【0020】
登録制御部7は、登録部6での登録操作が居住者用コードに対するものであるときに、起動され、コード記憶部1に登録されている工事業者用コードを強制消去する。
【0021】
以上のように構成される錠制御装置の動作を図2以下のフローチャートを使用して説明する。まず、電源が投入されると、待機ルーチンが実行される。待機ルーチンにおいてコントローラ10はコード記憶部1を検索し、現在登録されている認証コードの種別を検出し(ステップ101)、工事業者用コードが検索された場合、入力装置9のLED出力回路15に緑色LED8bの点灯信号を出力し、コード種別表示部8に緑色の点灯色を表示する(ステップ102)。また、ステップ101で居住者用コードが登録されていると、コード種別表示部8は黄色に(ステップ103、工事業者用コード、および居住者用コードの双方が登録されていない場合には、赤色に点灯される(ステップ104)。
【0022】
上述した待機ルーチン中に読取部2が所定の読み取り可能なIDカード11を検出し(ステップ105)、当該IDカード11が登録カードである場合には登録モードへのモード変更が行われる(ステップ106)。また、検出されたIDカード11が認証部3において居住者用カード(ステップ108)、あるいは工事業者用カード(ステップ109)として認証された場合には、ID取得時の要求動作に応じて錠駆動部5に施解錠駆動信号をセットし、電気錠4を施解錠動作させた後(ステップ110)、待機ルーチンに復帰する。
【0023】
また、ステップ105において読み取り可能なIDカード11が検出されたにもかかわらず、認証部3での認証が成立しなかった場合には、システムでの運用IDカード11でないことを操作者に知らせるために、エラー処理を行った後(ステップ111)、待機ルーチンに復帰する。この実施の形態においてエラー処理は、ブザー13から予め設定されたエラー音を出力するとともに、解錠表示LED12aを点滅して行われる。
【0024】
ステップ106で移行した登録モードにおいては、登録部6によるコード記憶部1でのコード抹消と、新たな認証コードの登録操作を行うことができ、登録モード状態の維持時間を制限するために、まず、タイマをスタートさせた後(ステップ201)、登録モードにモード変更した旨の通知処理が行われる(ステップ202)。モード変更通知処理は、予め設定されたエラー音をブザーから出力するとともに、コード種別表示部8を緑色と黄色に交互点滅させることにより行われる。
【0025】
登録モードにおける認証用コードの抹消処理の選択は、登録モード移行から所定時間(この実施の形態においては5秒間)登録カードを読取部2に翳して行われ(ステップ203)、登録カードが時間内に外された後、タイムアップ前に新たなIDカード11が読取部2に翳された場合に認証用コードの新規登録処理が行われる(ステップ204)。
【0026】
これに対し、登録モード継続中に新たなIDカード11が読取部2に翳されなかった場合には(ステップ205)、コード記憶部1内に登録されている認証コードの種別を検出し(ステップ206)、工事業者用コードが格納されている場合には、工事業者用コード登録済み信号が(ステップ207)、居住者用コードが格納されている場合には居住者用コード登録済み信号が出力され(ステップ208)、この後待機ルーチンに復帰する。この実施の形態において、工事業者用コード登録済み信号の出力は、予め設定されたブザー音と、施錠表示LED12bの点灯により行われ、居住者用コード登録済み信号のそれは、所定のブザー音と施錠表示LED12bの点滅により行われる。
【0027】
一方、ステップ204で読取部2が新たな読み取り可能なIDカード11を検出し、検出したIDカード11が登録カードである場合(ステップ301、302)、制御はステップ206に移行し、終了準備ルーチンが実行される。
【0028】
またステップ204で翳されたIDカード11が居住者用カードである場合にはコード記憶部1内に既に登録限度数(本実施の形態においてはN=20)の認証用コードが登録済みであるかどうかを検出し(ステップ303)、登録スペースがある場合、すなわち、登録済みコードが20未満である場合には、重複登録を避けるために、まず翳されたIDカード11が登録済みでないことを確認した後(ステップ304)、コード記憶部1の居住者用コード格納領域に居住者用コードを追加登録する(ステップ305)。
【0029】
登録部6におけるコード記憶部1への居住者用コードが登録されると、登録制御部7はコード記憶部1の工事業者用コードの格納領域にアクセスして全工事業者用コードを消去し(ステップ306)、次いで、操作者に対して登録OK通知を出力する(ステップ307)。登録OK通知は、ブザー吹鳴と、施錠表示LED12bの点灯によって行われる。
【0030】
登録終了に伴って、さらに、新たな登録モード下の処理を行うために、一旦タイマをクリアして新たなタイマをスタートさせ(ステップ308)、次いで操作者に対する登録モード再開通知を出力した後(ステップ309)、カード検出ステップ(ステップ204)に移行する。登録モード再開通知は、所定のブザー音出力と、コード種別表示部8の緑色と黄色への交互点滅により行われる。
【0031】
一方、ステップ303で登録済みカード枚数が所定枚数以上である場合、あるいはステップ304で翳されたIDカード11が登録済みのものである場合には、操作者に対する処理NG通知を出力した後(ステップ313)、新たなIDカード11登録の準備ステップ(ステップ308)に移行する。
【0032】
これに対し、ステップ301で読取部2に翳された登録カードでも居住者用カードでない場合には、工事業者用カードか否かを判定し(ステップ311)、工事業者用カードでもない場合には処理NG通知処理(ステップ313)を実行する。また、ステップ311で工事業者用カードと判定された場合、コード記憶部1に居住者用コードが登録されているか否かを判定し(ステップ312)、登録済みである場合、居住者用コードと工事業者用コードとの排他登録を保証するために、処理NG通知処理(ステップ313)を実行する。
【0033】
一方、ステップ312で居住者用コードが未登録の場合、工事業者用コードをコード記憶部1に登録した後(ステップ313)、操作者への登録OK通知処理を行い(ステップ314)、次いで、新たなIDカード11登録の準備ステップ(ステップ308)に移行する。
【0034】
さらに、図3のステップ203で登録抹消処理が選択された場合、図5の登録抹消ルーチンが実行される。登録抹消ルーチンの開始に先立って、まず、抹消操作時間を制限するための計時を開始し(ステップ401)、次いで、抹消操作を操作者に促す削除操作開始通知信号を出力する(ステップ402)。削除操作開始通知は、所定の警報音の出力と、コード種別表示部8を黄色、赤色に交互に点滅することにより行われる。
【0035】
登録抹消の実行は、翳していた登録カードを読取部2から離した後、再び読取部2に翳すことにより行われ、所定時間内に読取部2が登録カードの交信エリアからの離脱を検知しなかった場合(ステップ403、404)、待機ルーチンに復帰する。これに対し、ステップ403において登録カードが離れると、所定時間内に読取部2が再び登録カードを検出したか否かを判定し(ステップ410)、所定時間内に登録カードが検出されなかった場合には待機ルーチンに復帰し(ステップ411)、検出された際には、居住者用コードと工事業者用コードの全てを抹消し(ステップ412)、次いで登録抹消完了通知を操作者に発行した後(ステップ413)、待機ルーチンに復帰する。
【0036】
登録抹消完了通知は、所定ビープ音と、解錠表示LED12a、および施錠表示LED12bの点灯に加えて、コード種別表示部8を黄色に点灯することにより行われる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の機能ブロック図である。
【図2】錠制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】登録モードにおける動作を示すフローチャートである。
【図4】図3から分岐した動作を示すフローチャートである。
【図5】登録抹消モードにおける動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 コード記憶部
2 認証コード取得部
3 認証部
4 電気錠
5 錠駆動部
6 登録部
7 登録制御部
8 コード種別表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事業者用コードおよび居住者用コードの2種類の認証コードを分別管理して格納するコード記憶部と、
認証コード取得部から取得した認証対象コードと前記コード記憶部内の認証コードとの一致を条件に認証成立信号を出力する認証部と、
認証部からの認証成立信号の出力を条件に電気錠のアクチュエータに錠操作信号を出力する錠駆動部と、
所定条件充足時にコード記憶部に認証コードを登録する登録部と、
登録部における居住者用コードの登録に際し、登録済み全工事業者用コードを強制消去する登録制御部と、
を有する錠制御装置。
【請求項2】
前記コード記憶部に記憶されている認証コード種に対応した表示を行うコード種別表示部を備えた請求項1記載の錠制御装置。
【請求項3】
前記コード種別表示部は稼働状態表示を兼ねる請求項2記載の錠制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−127019(P2010−127019A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303715(P2008−303715)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【Fターム(参考)】