説明

錠前管理システム

【課題】入院患者が貴重品を保管管理する手段として特別な保管場所を設けることなく、従来使用されているシステムに若干のセキュリティ機能を追加し入院患者が安心しかつ容易に利用できるシステムを可能とする。
【解決手段】入院患者が病室で日常的に使用する床頭台の引出しに電気錠を取付け、錠前機能を持たせる。この際、個々の床頭台に取り付けられた電気錠はそれぞれ固有の鍵としての機能が必要なので、その制御機能を入院患者がテレビ、冷蔵庫を有料で利用するためのペイテレビシステムに加え、ID信号を利用者が変わるたびに変更することでセキュリティ機能を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院の入院患者が病床で私物の保管に使用する床頭台の電気錠付き引出しをペイテレビシステムのテレビ用タイマーに内蔵された電気錠の制御装置で開閉し、貴重品の保管を容易に行うことを提供する、錠前管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院の入院患者が貴重品の保管を行なうには、病床の床頭台に設置された引出し内に、スチール製の金庫を設置するか、床頭台の引出しに錠前を取付けている。これに使われる錠前はシリンダー錠、プラスチックカード錠、暗証番号を合わせる方法などが利用されているが、シリンダー錠やプラスチックカード錠などは、鍵の紛失に備えて予備の鍵が必要であり、その管理も容易でない、又、暗証番号は利用者がその番号を忘れるとことが往々にして起こり、特に高齢者には不向きである。
【0003】
更に、シリンダー錠やプラスチックカードなどはサイズも小さく、しばしば寝具や床頭台の日常用品などに紛れて紛失することが有るので、管理が容易でないことから、ペイテレビシステムのテレビ用タイマーに床頭台の引き台しを施錠する錠前機能を設けたシステムが考案され、床頭台の引き出しがセイフティボックスとして利用されているが、床頭台の鍵となるICメモリーカセット、ICステックメモリー、ICカード、磁気カードなどの情報記憶媒体に設定されるID信号は、その床頭台に固定された番号となるため、当該情報記憶媒体を意図的にコピーすることで、施錠された当該床頭台の引き出しの開錠が可能となり、セキュリティの低下を招くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、見舞い客など不特定多数の人が出入りする病院では、不審者が病院内を徘徊し、入院患者の貴重品を盗む窃盗事件が多く起きているが、入院患者が所持する貴重品の管理がむずかしい環境にあるので、病院側が入院患者個人の貴重品の管理を行なうことは、非常に難しく、その保管管理は入院患者個人の責任において行なわれているが、貴重品管理の設備は十分では無く、入院患者の心理的負担も大きいため、入院患者個人の貴重品の保管管理を容易にして、入院患者や病院側の心理的負担を軽減する錠前管理システムを提供しそのセキュリティ機能を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は病院の入院患者が有料でテレビを利用するペイテレビシステムに錠前管理システムの機能を組み込み、テレビの利用料金決済に用いる情報記憶媒体を鍵として用い、テレビ用タイマーに内蔵されたマイコンで電気錠の制御するシステムのセキュリティ機能を高め、貴重品の保管機能の付加価値を高めることを特徴とする。
【0006】
本発明の錠前システムは、床頭台設置時に、個々の床頭台に該当する鍵を識別する必要が無いので、機材搬入の順番や病室に無関係に順次設置することが出来ることから、床頭台の設置が容易で予備の鍵を管理する必要も無いので病院側の管理が簡単で、更に、利用する入院患者はテレビの利用料金決済に用いる、ICメモリーカセットを鍵として用いることから、管理する物品が少なくなり患者に与える負担も軽くなる。
【0007】
入院患者はペイテレビシステムを利用するために、自動支払装置で利用料金を前払いすると、情報記憶媒体に前払い料金データが記録されると共に、床頭台の引出しの錠前機能を作動させるために、テレビ用タイマー個々に割り当てるID信号が、自動支払機に内蔵されたマイクロコンピュータによってランダムに選択され、当該情報記憶媒体に記録される。この時記録されるID信号は個々のテレビ用タイマーで重複しないように設定される。
【0008】
自動支払い装置でパスワードが記録された情報記憶媒体が、テレビ用タイマーに電気的に接続されると、情報記憶媒体からテレビ用タイマーにID信号が送られて、情報記憶媒体と当該テレビ用タイマーが一対の錠前としての機能を保有することになり、以後、情報記憶媒体が当該テレビ用タイマーと接続されると当該床頭台の引き出しに取り付けられた電気錠が開けられ、接続が外されると電気錠が締められることになり、床頭台の引出しが錠前機能を有して貴重品の保管管理が可能となる。
【0009】
当該情報記憶媒体を一度、当該テレビ用タイマーに接続すると、当該情報記憶媒体が他のテレビ用タイマーでは使用できないようにするための当該テレビ用タイマーに予め割り当てられたID信号が、当該テレビ用タイマーから当該情報記憶媒体に送られ記録されると、当該情報記憶媒体を、他のテレビ用タイマーに接続してもIDロック信号によって、他のテレビ用タイマーに接続されている電気錠を作動させることは出来ない。
【0010】
テレビ、冷蔵庫を利用して、情報記憶媒体の利用料金が少なくなった時は、自動支払装置で繰り返し利用料金の支払が可能であるが、追加の支払を行なっても当該ID信号は変更されることなく、継続的に当該錠前の鍵の機能を保持することができる。
【0011】
入院患者が退院する際に、情報記憶媒体を自動精算装置に接続すると、利用料金の残金が有るときは返金され、当該情報記憶媒体に当該テレビ用タイマーのID信号を消去するための消去信号が記録され、当該情報記憶媒体を当該テレビ用タイマーに戻し電気的に接続されると、当該テレビ用タイマーの錠前機能のID信号が消去され、初期状態に戻される。これは情報記憶媒体に残金が無いときも同様にID信号は消去され、次に新たな入院患者が自動支払機で利用料金を支払って当該情報記憶媒体を当該テレビ用タイマーに接続すると、改めて当該床頭台の引出しが錠前機能を有して貴重品の保管が出来るようになる。
【0012】
このことから、入院患者が入れ替わる度に、当該床頭台の錠前機能のID信号は更新されることから、セキュリティ機能が高められ、入院中における患者の貴重品管理がより一層安全になることを提供するシステムである。
【発明の効果】
【0013】
入院患者が使用する床頭台の引出しに電気錠を取付けて、その電気錠を開閉するための制御回路を、病院用ペイテレビシステムのテレビ用タイマーに組込み、自動支払装置、自動精算装置で前記床頭台を個別に認識するためのID信号の書込み、消去を自動的におこない、セキュリティ機能を高めること及び、患者が入院時に不便を感じる貴重品の保管管理を容易にし、床頭台の設置や病院側の日常的な管理運営が簡単になることを実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明のシステムを構成する機器の外観を示す。ここで、情報記憶媒体にICメモリーカセットを使用したシステムを例に説明すると、1は入院患者が日常的に使用する床頭台本体で、入院患者が私物を保管する錠前付き引出し2、テレビ受像機4、冷蔵庫5、の利用料金管理を行なうICカセットタイマー3で、15はここで使用する情報記憶媒体であるICメモリーカセットである。ICメモリーカセット15は内部にフラッシュメモリーが内蔵され、電気的なデジタル信号の読み書きにより情報の記録ができる。

6は入院患者がこれらのシステムを利用するために料金を支払う自動支払装置で、ICメモリーカセット15を接続するICメモリーカセット接続コネクタ7、支払い金額の表示器8、紙幣識別器の紙幣挿入口9、領収書発行のためのプリンター用紙出口10を有している。
【0015】
11は入院患者が退院時、ICメモリーカセット15に利用料金が残っているときに返金をするための自動精算装置で、ICメモリーカセット15を接続するICメモリーカセット接続コネクタ12、残金表示器13、返金口14を有している。
【0016】
図2は自動支払装置内の電気回路のブロック図で、今入院患者が自分の利用する病床に設置された図1の床頭台1に設けられた、錠前付き引出し2、テレビ受像機4、冷蔵庫5を利用するために、予め床頭台1に備えられているICメモリーカセット15を自動支払装置6のICメモリーカセット接続コネクタ7に差し込み、利用料金を紙幣挿入口9へ入れると、ICメモリーカセット15はICメモリーカセット接続コネクタ7を介して図2の自動支払装置の読み書き部16に接続され、入院患者の支払により紙幣識別器17に収納された紙幣の金額に相当するデータが、マイコン回路19によって作成され電気的なデジタル信号で、I/O回路18、支払装置読み書き部16を介してICメモリーカセット15に書込まれ記録される。
【0017】
その際、ICメモリーカセット15には、床頭台1の錠前付き引出し2が錠前機能を有するに必要なID信号が電気的な記録信号として書込まれる。このID信号は自動支払装置6内のマイコン回路19でランダムに計算し選択されるが、製造される自動支払装置間で重複しないように考慮され、同一のID信号は存在しないことになる。
【0018】
図3はICカセットタイマー3の電気回路のブロック図を表し、自動支払装置6で利用料金支払後、当該ICメモリーカセット15を床頭台1に設置されたICカセットタイマー3のICメモリーカセット接続コネクタ21に接続すると、読み書き部22を介してマイコン回路23で、利用料金データ信号と錠前付き引出し2の錠前機能を保有するためのID信号が読込まれ、テレビ受像機4、冷蔵庫5の利用が可能となり、錠前付き引出し2が貴重品の保管機能を保有し、ICメモリーカセット15は鍵の役目をする。
【0019】
利用料金は入院患者が利用する錠前付き引出し2、テレビ受像機4、冷蔵庫5の利用状況や、病院が予め任意に決めた有料、無料や利用日数、利用時間などの設定に応じてICメモリーカセット15に記録されている料金データから料金が決済される。
【0020】
錠前付き引出し2に接続された電気錠28は、ICカセットタイマー3のマイコン回路23にICメモリーカセット15から読み書き部22とI/O回路24を介して、自動支払装置6で記録された電気的な信号でID信号が伝達されると、マイコン回路23から電気錠28の開錠信号がI/O回路24、電気錠制御回路27を介して電気錠28は開状態となり、錠前付き引出し2を開けられる。
【0021】
入院患者が使用開始当初に自動支払装置6で錠前機能のID信号を有したICメモリーカセット15をICカセットタイマー3のICメモリーカセットコネクタ21に接続すると、マイコン回路23が電気的な記録信号としてID信号が伝達され、マイコン回路23は、当該ICメモリーカセット15が他のICカセットタイマー3では使用できないようにするためと、メモリーカセット15に自動支払機6で追加料金を支払う際に既に記録されているID信号の書換えを防止するための、IDロック信号がI/O回路24、読み書き部22を介しICメモリーカセット15に書込み記録される。
【0022】
このことから、ICメモリーカセット15には、自動支払装置6でランダムに選ばれて記録されるID信号と、ICカセットタイマー3でIDロック信号が書き込まれ、ICメモリーカセット15は個別の鍵としての機能を保有することになる。
【0023】
ICカセットタイマー3に接続しているICメモリーカセット15が抜かれICメモリーカセットコネクタ21との接続が解除されると、読み書き部22とI/O回路24を介してマイコン回路23が電気錠28を閉めるための電気信号を電気錠制御回路27に伝えることで床頭台1の錠前付き引出し2は施錠される。
【0024】
入院患者が退院などで床頭台1の利用を終了する際に、ICメモリーカセット15の残金を精算して返金するために自動精算装置11のICメモリーカセット接続コネクタ12にICメモリーカセット15を差し込むと、残金額が表示部13に表示された後、返金口14から返金される。図4は自動精算装置の電気回路のブロック図で、ICメモリーカセット15はICメモリーカセット接続コネクタ12に接続され、読み書き部30、I/O回路31を介してマイコン回路32によってICメモリーカセット15に記憶されている電気的な残金データが読込まれることで、返金信号がI/O回路31を介して返金装置33へ送られ返金口14より所定の残金が入院患者に返される。
【0025】
この際ICメモリーカセット15に記憶されているID信号とIDロック信号はそのままの状態で残され。自動精算装置11のマイコン回路32で、当該ICカセットタイマー3に記憶されているID信号の消去を行なうため、あらかじめマイコン回路33に記録されている消去信号が、電気的なデジタル信号で、I/O回路31、読み書き部30を介してICメモリーカセット15に書込み記憶される。
【0026】
ICメモリーカセット15を精算後、当該ICカセットタイマー3に接続すると、記録された消去信号が読み書き部22を介してマイコン回路23に伝達されると、ICメモリーカセット15に記憶されているID信号とIDロック信号及びICカセットタイマー3に記録されているID信号がマイコン回路23により消去されて、ICカセットタイマー15とICカセットタイマー3の電気錠機能は解除され初期状態となる。
【0027】
図1のICメモリーカセット15では、ICメモリーカセット15本体に腕に巻きつけるバンドや首から下げるための取付け穴を設けることで、入院患者がICメモリーカセット15を簡単に身に付けることができるのでICメモリーカセットの管理が容易にできるようになる。このように、本発明の錠前管理システムはペイテレビシステムに使用するICメモリーカセット15が鍵となり、床頭台1を利用する入院患者が入れ替わる毎に新たな鍵となるため、合鍵の作製が不可能で貴重品が安全に保管できるようになる。更に、予備の鍵を用意する必要が無くなり、鍵の管理も通常は入院患者本人が行なうため、病院側の手間が省け管理が簡単になる。入院患者が万が一、Cメモリーカセット15を紛失した場合は、マスターICメモリーカセットを用意することで病院内の全ての床頭台の錠前を開けるができる。
【0028】
本実施例では情報記憶媒体としてICメモリーカセットを例に示したが、ICステック、ICカード、非接触ICチップなどの情報記憶媒体メディアを用いた場合にも同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上説明したように本発明の錠前管理システムは、入院患者本人の貴重品管理が容易となることから、不特定多数の訪問者が訪れる病室内でのセキュリティが高まり、患者の心理的な安静を保つことが可能となる効果があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本錠前管理システムを構成する機器の外観である。
【図2】自動支払装置の電気回路のブロック図である。
【図3】ICカセットタイマーの電気回路のブロック図である。
【図4】自動精算装置の電気回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1 床頭台
2 錠前付き引出し
3 ICカセットタイマー
4 テレビ受像機
5 冷蔵庫
6 自動支払装置
7 ICメモリーカセット接続コネクタ
8 表示器
9 紙幣挿入口
10 プリンター用紙出口
11 自動精算装置
12 ICメモリーカセット接続コネクタ
13 表示部
14 返金口
15 ICメモリーカセット
16 読み書き部
17 紙幣識別器
18 I/O回路
19 マイコン回路
20 メモリー回路
21 ICメモリーカセット接続コネクタ
22 ICメモリーカセット読み書き部
23 マイコン回路
24 I/O回路
25 テレビ電源制御回路
26 冷蔵庫電源制御回路
27 電気錠制御回路
28 電気錠
30 読み書き部
31 I/O回路
32 マイコン回路
33 返金装置






【特許請求の範囲】
【請求項1】
病院の入院患者が、病床で私物入れとして使用する床頭台の引出しに電気錠を取り付け、入院患者が有料で利用するため病床に設置されたテレビ受像機、冷蔵庫の利用料金管理を行なうペイテレビシステムに使用する、ICメモリーカセット、ICステックメモリー、ICカード、磁気カードなどの情報記憶媒体を、当該床頭台の引出しに取付けられた電気錠の鍵として使用する為に、この情報記憶媒体に記憶されたID信号により錠前機能を有するとともに、記憶された料金データをもとに利用料金管理を行なう電気錠制御回路を内蔵したテレビ用タイマーと、入院患者が利用料金を支払う自動支払装置とペイテレビシステムの利用終了後に情報記憶媒体の残金を返金するための自動精算装置からなる錠前管理システム
【請求項2】
前記のテレビ用タイマーに、個別に錠前を管理するためのID信号を記録する方法として、自動支払装置に内蔵されたマイクロコンピュータでランダムに選択されたID信号を、情報記憶媒体に記録し、利用するテレビ用タイマーと情報記憶媒体を電気的に接続することでテレビ用タイマーがID信号を取得し、電気錠としての機能を得ることができる、錠前管理システム。
【請求項3】
前記の錠前管理システムの利用を終了する際に、自動精算装置で情報記憶媒体に残っている利用料金の精算と共に、自動精算装置で当該テレビ用タイマーのID信号を消去するためのID消去用信号が当該情報記憶媒体に記録され、当該情報記憶媒体を当該テレビ用タイマーに電気的に接続すると、利用開始時に記録されたID信号が消去され、テレビ用タイマーが初期状態に戻ることを特徴とする、錠前管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−63579(P2006−63579A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245499(P2004−245499)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(398027296)株式会社イーエスイー (8)
【Fターム(参考)】