説明

錠剤の製造方法

【課題】クエン酸を使用した上で、輸送しても錠剤の形状を維持して問題なく、保存による炭酸ガスの発生も無く、使用に際し全部が水に溶解する錠剤の製造方法を提供する。
【解決手段】実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Aと、同様に炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Bを1対2〜1対10の比率で混合し、圧縮成型して錠剤を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品としての長期、保存性が良く、かつ水中で炭酸ガスを発泡しつつ速やかに溶解する発泡性組成物である錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸塩又は重炭酸塩と有機酸とを含む混合物を打錠等によって成型し、発泡性組成物とすることは、洗浄剤、浴剤、風呂水清浄剤、プール用殺菌剤等の製品に適用されている。これらの製品は、水に投入すると、その成分が反応して炭酸ガスを発生しつつ速やかに溶解する利点を有すると同時に、消費者に快適な使用感を与えるので商品価値を高める効果があり、特に浴剤においては、発生する炭酸ガスの血行促進効果が積極的に利用されている。
【0003】
しかしながら、炭酸塩又は重炭酸塩と有機酸とを共存させると、微量の水分の存在であっても反応が起きてしまうので、炭酸ガスが発生してしまい、錠剤の形状が崩れたり、包装容器の内圧が高まり、容器が膨れたり、場合によっては、破損を引き起こすことがある。このような事態が発生すると、商品価値が著しく損なわれるばかりでなく、消費者の信用をも失墜する恐れさえあった。
【0004】
このように炭酸塩又は重炭酸塩と有機酸を混合した上で安定な製品を得るためには、水分の混入を厳格に防ぐことが最も重要である。そこで製造時に原料及び工程の管理を厳重に行い、水分の混入を防ぐことに細心の注意が払われている。更に製造してから消費者が使用するまで安定に保つために密封包装をし、製品の吸湿を防いでいる。それにも拘らず、問題が解決されたとは言いがたい現状にある。
【0005】
この現状を解決するために、炭酸塩と芒硝の復塩を予め調整しておき、これに有機酸を調整する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
又、平均分子量950〜3,700のポリエチレングリコール(以下「PEG」と略記する。)30〜70質量%と他の発泡性成分70〜30質量%とを配合した後、加熱してPEGを溶融せしめ、発泡成分をPEG中に埋め込む方法が提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、これらの方法では、製品の安定化のために、多量の成分を混合することは、炭酸ガスの発生量がそれだけ低下し、消費者の快適な使用感を損なうのみならず、製品目的を発現する有効成分の配合量が減少することになるので、発生する炭酸ガス量が減少し、一回あたりの使用量も増えるため、結局コストが高くなる。更に発生する炭酸ガスを積極的に利用する浴剤や発生する泡沫を利用する洗浄剤では、発生する炭酸ガス量の低下は、致命的な欠点とも言える。
【0008】
一方、生産性の面からは、特に打錠製品において、錠剤の機械的強度を得ること、及び臼や杵への付着が問題となり、結合剤や離型剤の使用が不可欠であるが、これらの成分も、炭酸ガスの発生量の低下をもたらす一因となり、しかも、一般に使われる離型剤としての金属石鹸の微粉末は、水に不溶のために使用時に不快感を与える恐れさえも懸念された。これらの問題を解決する手段として、実質的に水を含まないか或いは50℃以下で結晶水を遊離しない有機酸とPEGとを60〜100℃で加熱溶融混合後、内部にパドル又はプロペラ状の攪拌翼を取り付けた空気式流動層で攪拌しながら冷却、粉末化し、これに重炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウムを添加して打錠成型する錠剤の製造方法が提案されており、前記実質的に水を含まないか或いは50℃以下で結晶水を遊離しない有機酸として、フマル酸、酒石酸、蓚酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸又はアジピン酸が挙げられている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−213714号公報
【特許文献2】特開昭58−105910号公報
【特許文献3】特公平7−47532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、有機酸として、疲労回復作用があり、きれいな血管を作る血液サラサラ効果があるクエン酸を使用した上で、輸送しても錠剤の形状を維持して問題がなく、保存による炭酸ガスの発生も無く、使用に際し、水中での、気泡が細かく良好な発泡により、溶解する炭酸イオン濃度が高く、全部が水に溶解する錠剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
1.実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Aと、同様に炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Bを1対2〜1対10の比率で混合して圧縮成型する錠剤の製造方法。
【0012】
2.実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Aと、同様に炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Bを1対4〜1対6の比率で混合して圧縮成型する錠剤の製造方法。
【0013】
3.実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物にエタノールを添加し、粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Aと、同様に炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物にエタノールを添加し、粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Bを1対2〜1対10の比率で混合して圧縮成型する錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に示す発明によれば、
流動層のうち実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層を用いることによって,及び、有機酸とPEG、炭酸水素ナトリウムとPEGからなる造粒物AとBとの混合比率の特定によって上記本発明の目的を達成する効果がより顕著となり、有機酸の中でもクエン酸を用いた上で、輸送しても問題なく、硬度が高い錠剤が得られ、保存中も安定で、炭酸ガスの発生も無く、錠剤が使用に際し水に完全に溶解する効果が得られる。また、浴中での溶解後の溶解炭酸イオン濃度が高く、経皮での炭酸イオン吸収が高まり、血流向上が見られ、糖尿病やリュウマチ、腎臓病等の症状改善効果が期待出来たり、疲労時に発生する乳酸をクエン酸が分解し、疲労回復作用があるとか、腎臓の働きを助け老廃物を排出するため、きれいな血管を作る血液サラサラ効果があるとかの利点を発揮する。
【0015】
請求項2に示す発明によれば、造粒物AとBとの混合比率の特定によって上記本発明の効果がより顕著となる。
【0016】
請求項3に示す発明によれば、エタノールの添加により、更に本発明の効果が向上して発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について説明する。
本発明で使用する実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機とは、横型ドラムの中にすき状ショベルを配し、遠心拡散及び渦流作用を起こさせ三次元流動させる混合機の事で、例えば、ドイツレーディゲ社製又は松坂技研社製として上市されている。これを利用し造粒する場合は、充填する粉体の体積比率は、40%以上80%以下が、本発明の効果を奏する上で特に好ましい。本造粒機には、減圧するための真空ポンプが付いていることが、冷却時に減圧し、少しでも水分が飛ぶように操作して、本発明の効果をより向上させる上で好ましい。更に、造粒した顆粒が冷却時に粗大粒子になるのを防止するためのチョッパーが付いていることが、冷却時に作動させて、整粒して本発明の効果をより向上させる上で好ましい。
【0018】
打錠用造粒機としては、例えば、前記特許文献3に開示された空気を攪拌作用に利用したものが知られているが、この造粒機は、いわゆる湿式破壊造粒及び攪拌造粒が技術思想である打錠用顆粒製造で、空気により粉体を浮遊させ造粒するもので、造粒した顆粒は、ポーラスで、この顆粒を打錠すると硬度が出て、高速で打錠できるメリットがある。即ち、コーディングするためには、極めて優れた技術であり、ポーラスな顆粒なので硬度が出やすく、溶解性も良い。
【0019】
ところが、本発明者が検討した結果、この技術は有機酸としてたとえばコハク酸やフマル酸などでは良好な錠剤を形成できるが、本発明が対象とするクエン酸に適用すると次のような欠点ないし不都合がある事が判明した。即ち、エアーで流動させるため、完全に水分が除去できず、ランニングコストが多大にかかかってしまう。空気から水分を完全に除去することは難しく 微量の水分を含んだ空気であっても、流動させると、多量の空気中の水分で、造粒中にクエン酸及び炭酸水素ナトリウムが吸湿してしまい、製造中は もとより 製品の保存中や流通中であっても、いろいろな問題が起こることが明らかになった.フマル酸やコハク酸等では問題とならない水分であっても、クエン酸を使用する場合においては、この現象が顕著であり、水分が少しでもあると、打錠時に付着等が発生し、生産性が悪化するばかりか、錠剤保存中に炭酸ガスが発生し、最悪の場合錠剤が輸送中の振動で崩壊してしまい、商品価値がなくなることが判明した。
【0020】
この点、本発明の実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機は、空気で流動することなく、ショベルと言われる羽根を用い機械式にて流動させるため、造粒中に水分を吸湿する事もなく、特に、クエン酸の造粒にはベストであるし、加えて、造粒中に減圧ポンプで真空にすることが可能となり、乾燥効果を上げることさえできるため、クエン酸が吸湿することなく、造粒することができるという利点がある。
【0021】
本発明者は、上記特許文献3に記載の空気攪拌式流動層造粒機以前の技術についても、種々検討した。即ち、例えば、空気を使用しないヘンシェル造粒機(湿式破壊造粒機)が知られているが流動させる事ができず、作成する顆粒の粒度分布が広く、打錠するためには、分級する等の工程が必要で、時間がかかるばかりか、コスト的にデメリットとなってしまい、また、顆粒は、密度が高く、よって硬度がでず、輸送で割れたり、粉々になったりした。また密度が高いため、溶解発泡しにくく、ダマになり沈殿してしまうという不都合があり、有機酸の中でクエン酸に適用するのは困難であることが判明した。
【0022】
本発明における粉体温度とは、実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機の缶体中に粉体温度を測定するための熱電対を設け、これで測定し、表示された温度を示す。この粉体温度は、ジャケットに温度をコントロールできる温水タンクから温水を流しコントロールする事ができ、かつ冷却し、粉体温度を短時間で下げるために、冷水(約5℃)を予め準備した冷水タンクと切り替えができる構成である事が好ましい。
【0023】
本発明の粉体温度は、60℃以上65℃以下が本発明の効果を奏する上で好ましい。60℃未満であると粉体の摩擦によりポリエチレングリコール、PEGの一部が融け造粒が進むが時間が掛かり効率が悪いし、65℃超であると造粒終了後、完全にPEGが溶解しているため表面が固化しても内部がなかなか固化せず、冷却するのに時間が掛かり効率が悪い。
【0024】
本発明で使用するPEGは、平均分子量が4000〜8000のものが本発明の効果を奏する点で好ましくい。ロータリー式打錠機の如き圧縮成形打錠機による成形安定性、杵付着耐性、キャッピング、錠剤成型速度の向上の点より、平均分子量6000のPEGが、最も好ましい。
【0025】
造粒物Aにおけるクエン酸100質量部に対するPEGの比率は、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部であり、PEGの比率が少ないと、品質安定性及び打錠性が劣ることとなり、PEGの比率が多いと、品質安定性及び製造コストの点で劣る。
【0026】
造粒物BにおけるPEGの比率は、炭酸水素ナトリウム100質量部当り1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部であり、PEGの比率が少ないと、品質安定性及び打錠性が劣ることとなり、PEGの比率が多いと、品質安定性及び製造コストの点で劣る。
また、造粒物Bが炭酸水素ナトリウム単独でPEGを含まない場合は、打錠後の商品を常温で2ヶ月位経過すると炭酸ガスが自然に発生し崩壊してしまう欠点がある。
【0027】
更に、造粒物Bは、炭酸水素ナトリウムと共に、炭酸ナトリウムを含有してもよく、炭酸ナトリウムとしては、10水和物、1水和物及び無水塩があるが本発明の効果を奏する上で無水塩が好ましい。即ち、後記実施例における操作12において無水炭酸ナトリウムを、炭酸水素ナトリウム量の1/10〜1/30量だけ使用することにより、サンプルNo.15と同等の効果が得られた。更にこのサンプル15のようにエタノールによる噴霧を併用することにより、本発明の効果が、より良く発揮された。
造粒物Aに対する造粒物Bの比率は、1対4から1対6質量部であることが本発明の効果を得る上で特に望ましい。
【0028】
本発明において、離型剤を使用することができ、この離型剤としては、n−ヘキサンスルホン酸ソーダ及びn−オクタンスルホン酸ソーダが、本発明の効果を奏する上で好ましい。特にn−オクタンスルホン酸ソーダは、本発明に係る錠剤を安定に連続で、かつ高速で成型するために最も好ましい。
【0029】
エタノールは、市販されている99%エチルアルコールを原料に、三井造船社製ゼオライト膜を使用し、99.9%エチルアルコールを作成し、これを使用することが本発明の効果を奏する上で好ましい。
尚、エタノールは、水と共沸し、水の沸点を下げる効果があるが、メタノールには、無い、即ち、エタノールがあると、水が飛び易く乾燥しやすいが、メタノールには、その効果が無いので、本発明においてはエタノールを用いることがより好ましい効果を発揮する。
【0030】
造粒物Aにおけるクエン酸100質量部に対するエタノールの比率は、0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜1質量部であり、エタノールの比率が少ないと、品質安定性が劣ることとなり、エタノールの比率が多いと、品質安定性及び製造コストの点で劣る。
【0031】
造粒物Bにおけるエタノールの比率は、クエン酸100質量部当り0.05〜5質量部、好ましくは0,1〜1質量部であり、エタノールの比率が少ないと、品質安定性及び打錠性が劣ることとなり、エタノールの比率が多いと、品質安定性及び製造コストの点で劣る。
【0032】
本発明には、その他の成分を必要に応じて混合することができる。その他の成分としては、造粒物Aには 香料、色素、界面活性剤等が挙げられる。造粒物Bには 炭酸ナトリウムや、香料、色素、界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
造粒物Aと造粒物Bとの混合比率は、1対2〜1対10、好ましくは1対4〜1対6であり、この範囲外であると、本発明の効果が得られない(後記実施例におけるサンプル8、9及び11参照)。
錠剤を作製する圧縮成形には、例えば油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンなどを用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げ本発明を詳細に説明するが、本発明の態様は、これらに限定されない。
実施例1
1.比較錠剤Aの作成
Powrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
(操作1)比較用 顆粒Aの作成
23℃60%に空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに無水クエン酸390Kg及びPEG#6000、20Kgを投入し、65℃に設定した流動エアーで粉体を流動させ、粉体温度が65℃に到達したら、流動エアーを15℃に設定し、粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管、顆粒Aを得た。
【0035】
(操作2)比較用 顆粒Bの作成
23℃60%に空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに炭酸水素ナトリウム390Kg及びPEG#6000、20Kgを65℃に設定した流動エアーで粉体を流動させ、粉体温度が65℃に到達したら、流動エアーを15℃に設定し、粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管し、顆粒Bを得た。
【0036】
(操作3)比較用 混合物Aの作成
松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に顆粒A100Kg、顆粒B500Kg、及び無水炭酸ナトリウム25Kg及びn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで3分攪拌し、混合物Aを得た。
(操作4)錠剤Aの作成
操作3で作成した混合物Aを菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量12gの錠剤Aを作成した。
【0037】
(操作5)評価サンプル1の作成
操作4で作成した錠剤Aをアルミバリア袋に50ケ入れ、減圧、密閉し、評価用サンプル1を作成した。
【0038】
2.比較錠剤Bの作成
Powrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
(操作6)比較用 顆粒Cの作成
23℃60%に空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに無水クエン酸390Kg及びPEG#6000、20Kgを投入し、65℃に設定した流動エアーで粉体を流動させ、粉体温度が65℃に到達したら、流動エアーを15℃に設定し、粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管、顆粒Cを得た。
【0039】
(操作7)比較用 混合物Bの作成
松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に顆粒C100Kg、及び炭酸水素ナトリウム500Kg、及び無水炭酸ナトリウム25Kg及びn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで3分攪拌し、混合物Bを得た。
(操作8)錠剤Bの作成
操作7で作成した混合物Bを菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量12gの錠剤Bを作成した。
【0040】
(操作9)評価サンプル2の作成
操作8で作成した錠剤Bをアルミバリア袋に50ケ入れ、減圧、密閉し、評価用サンプル2を作成した。
【0041】
3.本発明錠剤の作成
(操作10)顆粒A2の作成
23℃60%に空調された造粒室に設置された松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型(横型ドラムの中にすき状ショベル及び減圧するための真空ポンプを有し、かつ造粒した顆粒が冷却時に粗大粒子になるのを防止するためのチョッパーを有し、しかもジャケットに温度をコントロールできる温水タンクから温水を流しコントロールする事ができるし、冷却し、粉体温度を短時間で下げるために、冷水(約5℃)を予め準備した冷水タンクと切り替えができる構成を有する。以下、同じ。)に、無水クエン酸390Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌しながら、約65℃の温水を循環させ加温した。粉体温度が約60℃に到達したところで、PEG#6000、20Kgを投入し、粉体温度が65℃に到達したら、水温15℃の水でジャケット内の温水を置き換え、加えて10トールの減圧下で冷却した。粉体温度が約35℃に到達したら、底部排出口より、粉体を排出し、密閉容器に保管し、顆粒A2を得た。
【0042】
(操作11)顆粒B2の作成
23℃60%に空調された造粒室に設置された松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に、炭酸水素ナトリウム390Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌しながら、約65℃の温水を循環させた。粉体温度が約60℃に到達したところで、PEG#6000、20Kgを投入し、粉体温度が65℃に到達したら、水温15℃の水でジャケット内の温水を置き換え、加えて10トールの減圧下で冷却した。粉体温度が約35℃に到達したら、底部排出口より、粉体を排出し、密閉容器に保管し、顆粒B2を得た。
【0043】
(操作12)混合物A2の作成
松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に顆粒A2を100Kg、顆粒B2を500Kg及びn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで3分攪拌し、混合物A2を得た。
(操作13)錠剤A2の作成
操作12で作成した混合物A2を菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量12gの錠剤A2を作成した。
【0044】
(操作14)評価サンプル3の作成
操作13で作成した錠剤A2をアルミバリア袋に50ケ入れ、減圧、密閉し、評価用サンプル3を作成した。
【0045】
(評価方法)
アルミバリア袋入り評価用サンプル1、2及び3を45℃で10日保存し、開封後下記の評価を行った。
振動試験:
アイデックス社製振動試験機BF−50UCを用い、JISZ0232の条件で2000Km輸送相当の振動を与え、開封後の錠剤について、割れ及び欠けが発生した錠剤の個数を数えた。尚、3ヶ以下であれば、実用に耐える。
【0046】
発泡試験:
45℃保存前と保存後のアルミバリア袋の体積変化を測定した。尚、5ml以下であれば、実用に耐える。
溶解試験:
40℃に保温した水1000mlに錠剤1ヶを入れ、錠剤が溶解するまでの様子を観察し、以下の基準で評価した。
【0047】
◎:8分以内に激しく発砲しながら全部溶解した。
○:10分以内に発砲しながら全部溶解した。
△:10分以内に発砲しなくなり、20分経過後微量の固形物が残っていた。
×:10分以内に発砲しなくなり、20分経過して残っている固形物の量が多かった。
××:×の数が増えると20分経過後の残っている固形物の量が多いことを示す。
尚、○以上であれば、実用に耐える。
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果より、本発明は、クエン酸と炭酸水素ナトリウムを含有する錠剤が、輸送しても問題なく、(錠剤の形状を維持し)、保存による炭酸ガスの発生もなく、使用に際して錠剤が完全に溶解する事がわかる。尚保存期間を20日まで延長すると本発明以外のサンプルは、袋が破裂することを確認した。
【0050】
実施例2
表2に、実施例1のサンプル3の操作12で顆粒A2に対する顆粒B2の比率を変え、その後の操作は、同様に行いサンプルを作成し、評価を行った結果をまとめた。尚、サンプル1及び3についても併記した。
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果より、顆粒Bの顆粒Aの比率が4〜6の場合、本発明の効果をさらに良好に奏する事が分かる。
【0053】
実施例3
(操作15)エタノールの作成
市販されている99%エチルアルコールを三井造船製ゼオライト膜を使用し、99.9%エチルアルコール(以下エタノールという)を作成した。
表3に、実施例1のサンプル3の操作10及び11において、PEG#6000を投入した後、操作15で作成したエタノールをクエン酸100質量部当り0.3質量部となる量だけ200ml/minの速度で噴霧する。
その後は同様に操作し顆粒を作成した。その他は、実施例1と同様にサンプルを作成し、評価した。結果をまとめて表3に示す。尚、サンプル1及び3についても併記した。
【0054】
【表3】

【0055】
表3の結果より、本発明におけるエタノールの噴霧が有る場合が、本発明の効果をより良く奏することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Aと、同様に炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Bを1対2〜1対10の比率で混合して圧縮成型する錠剤の製造方法。
【請求項2】
実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Aと、同様に炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物の粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Bを1対4〜1対6の比率で混合して圧縮成型する錠剤の製造方法。
【請求項3】
実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物にエタノールを添加し、粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Aと、同様に炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物にエタノールを添加し、粉体温度を60〜65℃にあげ、冷却して得た造粒物Bを1対2〜1対10の比率で混合して圧縮成型する錠剤の製造方法。

【公開番号】特開2011−105615(P2011−105615A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260079(P2009−260079)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(501083481)
【Fターム(参考)】